統合失調症患者の幻聴への対処方略

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− 95 − 統合失調症患者の幻聴への対処方略 人間教育専攻 臨床心理士養成コース 大 嶺 愛 実 1.問題と目的 統合失調症とは「妄想,幻覚,まとまりのな し噴話(頻繁な脱線または減裂),ひどくまとま りのない,または緊張病性の行動,陰性症状(情 動表出の減少,意欲欠如)のうち2つ以上の症状 が

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か月間ほとんどし、つも宿主し,これらのう ち少なくとも

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つは妄想か,幻覚,あるいはま とまりのない発話であること」と定義された精 神 疾 患 で あ る ( A m

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, 2013)。統合失調症患者の外来受 診者数推計値は 2002年の 4万 4,000人から 2014年には 5万 5,000人へと推移しており, 統合失調症患者の外来受診率は増力回頃向にある ことが報告されている(厚生労働省, 2014)。 わが国においては,精神手i材育院入院患者総数の 減少を目指すための政策の効果によって,精神 科病院入院患者の多くを占めていた統合失調症 患者の外来受診率は増加傾向にあることから, 従来の入院を中心とした支援から外来通院を中 心とした支援へと移行した統合失調症患者の生 指導教員 古川│洋和 要な活動が阻害されないように支援することが 重要であると考えられる。

Hayashi

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, (2007) の研究では,幻聴への対処方略として 17項目 の対処方略が抽出され,抽出された対処方略ご とに,幻聴ならびに幻聴によって生じる問題に 対する有効性についてデータ解析が行われてい る。しかしながら,

Hayashi e

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(2007)の研 究においては,対処方略の効果は一時的な効果 のみが角特庁されており,幻聴への対処方略に関 する長期的効果については明らかにされていな い。つまり,幻聴が生起した際にどのような対 処方略を採用することで,陰性症状だけではな く長期的効果としての

QOL

を向上できるかを 検言すすることは,統合失調症患者の幻聴に対す る対処方略の持続的な効果を明らかにすること が可能になるといえる。 そこで本研究では,統合失調症患者の幻聴に 対する対処方略と

QOL

との関連について明ら かにすることを目的とした。

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方法 活の質

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会:以下,

QOL)

を維持・ 研究デザイン:質問紙を用いた横断研究によっ 向上するための有効な介入法を立案することに て 幻 聴 に 対 す る 対 処 方 略jと「統合失調症患 は意義があるといえる。 者の

QOLJ

との関連を検討した。 ところで,統合失調症患者とその家族は,統合 対象者:首都圏の医療機関において実施されて 失調症の主症状によって

QOL

が低下すること いる精神科デイ・ケアを利用する統合失調症患 が指摘されている

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,1997)。つまり, 者を対象とした。 幻聴によって低下した

QOL

を向上するために 調査材料:①日本語版

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は,幻聴への対処方略の獲得によって,生活に必 .

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(以下,

JSQIβ.

兼田・

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− 96 − 今倉・大森, 2004),②幻聴への対処方略に対 するリスト (Hayashiet

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, 2007)を参考に 作成したもの③陽性・陰性症状評価尺度 (Positiveand Negative Symptom Scale:以 下, PANSS;

Ka

y, 1991)を用いた。 分析方法:JSQLS (兼田ら, 2004)の評定値 についての言己主統計量(平均値・標準偏差)を 算出した。基本属性

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年齢J,I↑甥IJJ,I幻聴の 種類(対話性幻聴,注釈性幻聴・考想化声,命 令性幻聴.)J),対処方略の17項目およびP必 JSS

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y, 1991)を独立変数, JSQLS (兼田ら, 2004)を従属変数左したロジスッティック回帰 分析を行い,独立変数と従属変数の関連の強さ を示す指標としてオッズ、比および、その 95%信 頼区間を算出した。 3.結果 統合失調症患者の幻聴に対する対処方略が QOLに与える影響を明らかにするため十生別J, 「年齢J,I幻聴の干郵賓J

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対話性幻聴JI注釈性 幻聴・考想化声JI命令性幻聴J),I対処方略の リストJ

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反作用型の対処スキノレJおよび「気 晴らし型の対処スキルJ),ならびに I

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JSS

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y, 1991)Jを独立変数, JSQIβ(兼田ら, 2004)を従属変数とするロジスティック回帰分 析を行った結果対処方略のリストJ(オッズ、 比:10.74,95%信頼区間:1.96-58.70)の変 数において有意なオッズ比が算出された。つま り,幻聴に対する対処方略として「気晴らし型 の対処スキノレJを用いている対象者は「反作用 型の対処スキノレ」を用いている対象者に比べて QOLが高いと判断される割合が 10.74倍高い ことが明らかにされ気晴らし型の対処スキノレ」 は「反作用型の対処スキノレJよりも QOLを向 上できる可能性が示唆された。 4.考察 本研究の目的は,幻聴が生起した際に採用す る対処方略と QOLとの関連を明らかにし幻 聴への対処方略の長期的効果を検討することで あった。本研究の結果,幻聴に対する対処方略 として「気晴らし型の対処方略Jを採用してい る対象者の方が反作用型の対処方略」を採用 している対象者に比べて QOLが高いことが明 らかにされた。つまり反作用型の対処方略」 を採用している対象者については,幻聴が生起 した際に「気晴らし型の対処方略jへと対処方 略を変容することによって QOLを向上できる と考えられる。しかしながら,本研究では気 晴らし型の対処方略」には, 8つの対処方略が 含まれており, I気晴らし型の対処方略」の中で さらに QOLとの関連を明らかにするための解 析は支橡者数の制限のため行っていない。「気晴 らし型の対処方略」の下位分類であるそれぞれ の対処方略と QOLとの関連を検討することに よって,さらに対処方略の脳舵行うことが可 能になると考えられる。また,JSQLS(兼田ら, 2004)は3つの因子で、構成される尺度で、あるた め,仮定された要因が3因子間のそれぞれに与 える影響を調べることによって, QOLの向上 につながる要因をより細かく選定することがで きると考えられる。「反作用型の対処方略jから 「気晴らし型の対処方略jへと変換する介入の 方法は,現時点で仮定されたものであり,実際 に「反作用型の対処方略」から「気晴らし型の 対処方略」へと分化強化が可能なのかどうかが 明らかにされていない。し た が っ て 反 作 用 型 の対処方略」から「気晴らし型の対処方略」へ と分化強化を行う実際の介入的研究が今後必要 になってくると考えられる。

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参照

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