ドイツ労働者派遣にみる失業保障の課題(三・完)
著者名(日)
上田 真理
雑誌名
東洋法学
巻
55
号
1
ページ
63-90
発行年
2011-07
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000819/
目次 はじめに Ⅰ 問題の所在 Ⅱ 派遣労働者の低賃金化・貧困化の現状と背景 1 派遣労働者の現状 2 低賃金をめぐる最近の訴訟動向 ( 1 )協約による派遣労働者の低賃金化 (以上、五四巻二号) ( 2 )ベルリン労働裁判所二〇〇九年決定と社会保障行政の課題 Ⅲ 労働行政の使用者に対する償還請求権の行使 1 賃金請求権の労働行政への移転(社会法典一〇編一一五条) 2 協約の無効又は賃金が良俗に違反する場合の未払い賃金請求権 Ⅳ 派遣労働に対する社会保険法の適用関係(以上、五四巻三号) Ⅴ 生活保障責任における使用者と雇用保険の役割 おわりに(以上、本号) 《 論 説 》
ドイツ労働者派遣にみる失業保障の課題(三・完)
上
田
真
理
Ⅴ 生活保障責任における使用者と雇用保険の役割 1 労働関係の喪失 ( 1 ) 問題の所在 (ⅰ) 「派 遣 切 り」 に 顕 著 に 示 さ れ た よ う に、 派 遣 先 の 要 望・ 派 遣 契 約 の 解 除 に よ り、 派 遣 期 間 中 に 一 方 的 に 労 働 関係が終了することもある。病気により健康上の問題をかかえれば、労働者は不本意ながらも退職する。本来、労 働 者 の 失 業 や 傷 病 に は 雇 用 保 険 法 や 健 康 保 険 法 が 所 得 を 保 障 す る が、 派 遣 労 働 者 は 加 入 し な い 運 用 が な さ れ て き た。二〇一〇年四月から、雇用保険法の被保険者は「三一日以上雇用される見込み」の者とされ、拡大している。 被保険者の拡大は重要であるが、期間の定めのある雇用を、期間満了をもって終了=失業させ、雇用保険を利用す るならば、それは使用者のモラルハザードではないのだろうか。労働者を有期雇用・派遣として雇用するのは、失 業を前提にしたものであり、使用者が労働者の離職日を一方的に決定し、失業を惹起する、といえよう。そこで、 本章では、まず、労働関係の終了の責任を問うことなく、失業を前提に、雇用保険の生活保障責任を論じることは 適切ではないという立場から、生活保障責任を検討したい。期間の満了による労働関係の終了、退職の強要・不本 意な終了等、使用者の一方的な行為による労働関係の終了に伴う生活保障責任に、雇用保険・社会保険法は代替す るものではない。というのも、雇用保険法・被用者保険各法は、一つに、使用者が、自らの恣意的な行為により、 本来労働関係が存続すれば生じる保険料負担を免れる結果になることを認めるものではないからである。二つに、 そうした行為により被保険者である労働者には、受給に必要な資格期間が満たされない、といった実体的な不利益 が生じるからである。派遣・有期雇用の場合には、期間満了をもって終了することを予定しているので、合理的な
理由がない期間の定めは使用者が恣意的に終了日を決定しているといえる。 雇用保険における派遣労働者の待機期間を、二〇〇九年三月まで、次の派遣先が決まっていない場合に「失業」 とみなかったが、二〇〇九年四月から運用を変更している。有期雇用が通常であるため期間途中の解除以外には賃 金支払い義務は問われることなく、雇用保険法での運用の変更により、雇用保険による基本手当の要件である「失 業」として認定され、受給が可能になる。休業手当の支給すら行わず失業手当に転嫁していることは正当に批判さ れてい ( 1) る。本章では、労働者を雇用する使用者が本来引き受けるべき負担を、労働者、そして雇用保険や公的扶助 に転嫁していないのか、を問いたい。 その上で、失業時の基本手当受給権や傷病により就業が中断する際の傷病手当金の受給権の実現を検討する。そ の 際、 細 切 れ 雇 用 や 不 本 意 に 労 働 関 係 が 終 了 し た 場 合 に 受 給 に 必 要 な 保 険 加 入 期 間 を 充 足 し な い こ と が 問 題 に な る。 不 当 な 解 雇 で も、 労 働 関 係 の 終 了 を「離 職」 (雇 用 保 険 法 四 条 二 項) と し、 使 用 者 が 雇 用 関 係 の 終 了 を 一 方 的 に 判 断 し、 適 用 事 業 に 係 る 被 保 険 者 で な く な っ た こ と を 届 け 出 れ ば (七 条 一 項) 、「離 職 日」 以 前 に 一 定 の 被 保 険 者 期 間を充たさず、基本手当の受給資格を取得できない不利益が生じることになる。被保険者資格の届け出を使用者が 行うことを通じて、労働者は被保険者の地位を喪失する結果になる。そもそも、派遣労働者は雇用保険法・被用者 保険法では被保険者として加入しない運用がなされてきたので、一方的に労働関係が終了しても、派遣労働者の社 会 保 険 上 の 不 利 益 は、 労 働 事 件 で も 社 会 保 障 で も、 従 来 問 題 に な る こ と は あ ま り な か っ ( 2) た。 雇 用 関 係 の 終 了 及 び 「離 職 日」 を だ れ が ど の よ う に 判 断 す る の か、 そ し て 仮 に、 解 雇 無 効 が 確 認 さ れ た 場 合 で も、 受 給 に 必 要 な 加 入 期 間を満たす前に労働関係が一方的に終了していれば、失業手当も傷病手当金も受給権は成立しないことになる、と いう問題がある。
以 上 の 問 題 関 心 か ら、 順 に、 派 遣 に 特 有 の 問 題 で あ る 派 遣 期 間 終 了 後 に 新 た な 派 遣 先 が 決 ま ら な い 期 間 (待 機 期 間) の 生 活 保 障 を と り あ げ、 賃 金 支 払 い 義 務 を 確 認 し た い。 そ し て、 わ が 国 で は、 不 本 意 な 終 了 の 仕 方 で も 労 働 者 は退職することも少なくないし、派遣労働者にとって退職をめぐる訴訟も、雇用保険や傷病手当金の受給権に対す る訴訟も、提起することは容易ではない。訴訟を容易に提起できるためにも、ドイツ法を参考に、労働関係の終了 を争う状態やその期間自体を、雇用保険・被用者保険法上の被保険者として捉えることを検討したい。労働者の職 業生活において生じる要保障事故を適切に捉えるには、意思と能力のある労働者に、社会保険・雇用保険法の「雇 用されている」という地位を保持する利益を認めることが適切なのではないか。それは、派遣のみに限定される考 え方ではなく、一般的に妥当するものである。そうでなければ、被保険者の範囲が拡大しても、基本手当の受給権 が成立しないだろうし、保障されないために劣悪な条件の仕事につかざるをえない状況は変わらない。 (ⅱ) 雇 用 保 険 の 濫 用、 い わ ゆ る「モ ラ ル ハ ザ ー ド」 が 使 用 者 に 問 わ れ る 場 合 の 特 徴 は、 使 用 者 と 労 働 者 の 間 の 雇用契約の終了という労使関係の問題を、使用者の雇用の責任ではなく、雇用保険による保障責任に転化すること にある。職業生活がある程度安定的に継続することが標準的なモデルとされた状況では、わが国でも「失業」は定 年退職を前にした労働者に生じるものであった。ドイツでも一九八〇年代から一九九〇年代に「モラルハザード」 を 回 避 し な け れ ば な ら な い、 と 問 題 が 提 起 さ れ た の は、 と く に 早 期 年 金 生 活 へ の 移 行 時 の 雇 用 保 険 の「濫 用」 で あっ ( 3) た。近年、派遣労働者の低賃金雇用や不安定雇用による生活保障が雇用保険による生活保障責任にすり替わっ てしまうことが新たに問題になっている。ドイツでは派遣労働者にも雇用保険法が適用されているが、労働者派遣 の 派 遣 先 で の 短 期 の 不 安 定 な 雇 用 で あ る こ と と、 派 遣 先 従 業 員 と 比 較 す れ ば ほ ぼ 半 額 の 時 給 (二 〇 〇 六 年 の フ ル タ イ ム の 期 間 の 定 め の な い 労 働 関 係 の 平 均 は 時 給 一 八 ・ 〇 四 ユ ー ロ、 派 遣 の 平 均 時 給 は 九 ・ 七 一 ユ ー ロ) で あ る こ と、 と い う
二つの特徴があ ( 4) る。そのため、旧西ドイツでは、派遣労働者の約四分の三が失業手当Ⅰを受給している状況に対し て (七 三 ・ 五 ( 5) %) 、 よ り 多 く の 労 働 者 に 失 業 手 当 Ⅰ 受 給 権 の 成 立 を 目 指 す こ と だ け で は な く、 失 業 手 当 Ⅰ の 受 給 権 が あ る こ と を 前 提 に 雇 用 保 険 と い う 制 度 に 雇 用 の リ ス ク を 肩 代 わ り さ せ て い る に す ぎ な い こ と を 看 過 し て は な ら な い、と指摘されてい ( 6) る。失業手当Ⅱを受給する元派遣労働者についても、連帯に基づく被用者保険に負担させるの ではないが、公共が負担している。そもそも使用者が派遣を短期間雇用することは、失業を予定したものであり、 労働者の失業というリスクを使用者自らが負うのではなく、社会保障制度に負担させている。わが国では、雇用保 険 す ら 派 遣 労 働 者 の リ ス ク を 負 担 し て い な い こ と 自 体 に 問 題 が あ る が、 同 時 に、 ド イ ツ の 裁 判 例 で は、 「労 働 者 を 雇 用 す る 負 担 ( Beschäftigungsrisik ( 7) o )」 と い う 概 念 を 用 い て、 使 用 者 と し て 派 遣 元 事 業 主 が 労 働 者 に 転 嫁 す る こ と が許されない責任を負うことを判示していることに注目したい。 ( 2 ) 派遣の待機期間は失業か (ⅰ) 日 本 で は、 「派 遣 切 り」 に あ っ て 生 活 が で き な く な っ た 労 働 者 は 雇 用 保 険 や 医 療 保 険 に よ り 一 時 的 な 中 断 の 所得保障がなされない結果、生活保護をうけることになる。 次 の 派 遣 先 が 決 定 す る ま で の 待 機 期 間 は「失 業」 な の だ ろ う か、 そ れ と も 派 遣 元 に 賃 金 請 求 が 可 能 な の だ ろ う か。それは、短期の期間満了により労働関係が終了しているのか、それとも労働関係は存続しているのかによる。 わ が 国 で は、 期 間 満 了 に よ り 労 働 関 係 が 終 了 し、 「失 業」 で あ る、 と 運 用 さ れ て い る。 ド イ ツ で は、 そ も そ も 派 遣 を有期雇用とするには「合理的理由」が必要になり、それを欠く場合には労働関係存続を理由とする賃金請求が可 能になる。以下、順にみることにしたい。 社 会 法 典 三 編 (雇 用 保 険) は 二 四 条 で、 就 業 関 係 は 雇 用 関 係 の 成 立 を も っ て 開 始 し (二 項) 、 そ の 消 滅 を も っ て 終
了 す る と 定 め て い る (四 項) 。 就 業 関 係 の 終 了 日 は 原 則 と し て、 契 約 関 係 の 終 了 日 と さ れ て い ( 8) る。 派 遣 に 期 間 の 定 めがある場合には、期間の満了をもって労働関係及び社会保険関係も終了するので、派遣に特有の事情があるとい う 理 由 で 有 期 契 約 の 締 結 が 許 さ れ る の か が 問 題 に な る。 二 〇 〇 三 年 ま で は、 期 間 の 定 め に つ い て、 労 働 者 派 遣 法 は、 「派 遣 期 間 と 労 働 契 約 期 間 の 一 致 の 禁 止 ( Synchronisationsverbot ) 」 を 規 定 し て い た。 こ れ を ハ ル ツ 第 1 法 ( BGBl. 2002 I S.4607 ) は 廃 止 し た。 し か し、 派 遣 は 有 期 雇 用 が 原 則 に な っ た わ け で は な い。 と い う の も、 労 働 者 派 遣 法 の「派 遣 期 間 と 労 働 契 約 期 間 の 一 致 の 禁 止」 規 定 は、 パ ー ト タ イ ム 労 働・ 有 期 労 働 契 約 法 ( Teilzeit- und Be -fristunsgesetz ) の 特 別 規 定 で あ っ た の で、 二 〇 〇 四 年 一 月 一 日 以 降 は 一 般 法 に よ る 規 制 が 存 続 し て い る か ら で あ る。したがって、派遣元が有期雇用として労働者を雇用するにはパートタイム労働・有期労働契約法により期間の 定めに「合理的理由」が必要になる。派遣元事業主の側には有期雇用が許容される事情は存しないので、二〇〇三 年の改正により厳しいルールになっているという評価もあ ( 9) る。 パートタイム労働・有期労働契約法は一四条一項一文により、有期雇用には合理的な理由を必要とし、合理的な 理由を同法二文に掲げている。派遣特有の事情により労働者派遣に期間を設ける合理的理由があるのか、が問題に な る。 パ ー ト タ イ ム 労 働・ 有 期 労 働 契 約 法 一 四 条 一 項 二 文 は、 一 号 に、 「一 時 的 な 需 要」 を 理 由 と す る 有 期 雇 用 を 規定し、派遣の特有の事情に合致するかのようにみえるが、裁判例によれば、これにより合理的理由があるとは解 されていない。本規定の要件は、契約締結時に十分な確かさをもって、派遣元事業主の業務、したがって派遣労働 に 対 す る 需 要 が 将 来 的 に 消 滅 す る、 と い う 予 測 ( Prognose ) が 可 能 な 場 合 に、 充 足 さ れ る。 し た が っ て、 そ れ は、 経済活動に一般的に内在している、将来の成り行きが不確実であるという状況とは区別されなければならな ( 10) い。そ うした経済活動に内在する需要では、有期雇用を正当化することはできない。派遣元事業主が、ある派遣労働者を
派遣事業に対して一定の期間しか活用できないという判断をすることは、パートタイム労働・有期労働契約法一四 条一項二文一号により期間の定めを付すことは正当化できない。というのも、それは、そもそも派遣事業主にとっ て典型的な事業主としての「労働者を雇用する負担」でないのかが問われなければならないからである。労働者を 雇用する負担を派遣労働者に転嫁することは許されな ( 11) い。 派遣先の業務の需要が一時的であることを理由に期間を定めることは一四条一項二文一号の「合理的な理由」な のかが争われた事案がある。それによれば、派遣労働に労務提供の需要が「一時的」か否かは、使用者である派遣 元の必要性から判断されるのであり、第三者の必要ではない。使用者にとって将来の労働力の需要が明確ではない ことが認められるとしても、それは期間を定める理由にならない、という。そして、二〇〇三年まで労働者派遣法 三条一項三号ないし五号に規定されていた「派遣期間と労働契約期間の一致の禁止」が廃止されたからといって、 使用者は、派遣先の特定の業務であることを、期間を定める合理的な理由として援用することはできない。当該業 務に続いて別の派遣先での労務が可能か否かというリスクを負担するのは、派遣元が単に有期雇用の紹介者ではな い以上、使用者としての派遣元である、と。第三者の元で労務を提供している期間に生じるリスクを引き受けるか らこそ、使用者なのであ ( 12) る。 (ⅱ) ドイツ労働者派遣法は一一条四項に待機期間中にも使用者が賃金支払い義務を負うことを明文化している。 派 遣 関 係 が 期 間 の 満 了 を も っ て 終 了 し な い な ら ば、 派 遣 労 働 者 の 次 の 派 遣 先 が 決 ま っ て い な い た め 待 機 す る 期 間 も、労働関係は存続している。待機期間について賃金支払い義務が消滅するわけではない。これを、労働者派遣法 一一条は、派遣元と派遣労働者の関係について特別に規定してい ( 13) る。労働者派遣法一一条四項二文によれば、派遣 元 事 業 主 の 受 領 遅 滞 の 場 合 に 派 遣 労 働 者 の 報 酬 請 求 権 は (民 法 六 一 五 条) 契 約 に よ り 取 消 す 又 は 制 限 す る こ と は で
きない。一般的には、労働関係が継続しているのに労働者が実際には労務を提供していない局面を捉えるものであ る。派遣では、派遣と派遣の間の待機期間が、労働者派遣法一一条四項二文の「受領遅滞」に該当する。派遣元事 業主が次の派遣先を指示することができない場合、派遣労働者の賃金請求権を排除することはできない。派遣の可 能性が消滅することは派遣の典型的なリスクであり、派遣法一一条四項二文に明文化されているように、派遣され ていない期間について賃金を支払う負担を使用者が負 ( 14) う。派遣と派遣の間は、派遣元事業主が労働者を就業させる ことができていない期間にすぎず、それは失業の状態ではな ( 15) い。これは後述する。 労働者派遣法一一条四項二文には、労働者を雇用する負担を派遣労働者に転嫁することを禁じることを定めてい ( 16) る。派遣元が待機期間に賃金を継続して支払うことを契約で排除するのを阻止するわけである。 (ⅲ) 他方で、労働者派遣法は、派遣されていない期間についての賃金水準については規定していない。確かに、 派 遣 元 は 派 遣 期 間 に つ い て は 派 遣 先 従 業 員 と 平 等 な 賃 金 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い (派 遣 法 九 条 二 号) 。 し か し、 派 遣されていない期間については、賃金支払い義務は消滅しないが、派遣労働者は派遣元と合意した賃金しか請求で きな ( 17) い。現実には、ささやかな額しか払われないこともありうる。そうすると、実態としては、派遣されている期 間のみに雇用関係が限定されるのとあまり変わらない、ことにもなってしまう。二〇一一年に、連邦議会は、労働 者派遣法のなかに、派遣期間及び派遣されていない期間について最低賃金を導入することを決定し ( 18) た。動向に注目 したい。
2 事実上の失業者の失業手当受給権 ( 1 ) 労働関係存続中の「失業」手当の受給可能性 雇用関係の存続を理由とする賃金支払い義務が労働者派遣法一一条四項二文に明文化されている。とはいえ、そ れを派遣元が履行していなければ、現実的には賃金も失業手当も支払われない、ということになる。わが国では基 本 手 当 が 通 常 支 給 さ れ る が、 ド イ ツ で は 労 働 関 係 存 続 を 理 由 と し て、 「失 業」 手 当 の 支 給 要 件 を 充 足 し な い と い う ことになるのか。それは、社会法典三編での失業手当の受給要件である「失業」の判断の問題である。社会法典三 編 の 失 業 手 当 の 要 件 で あ る「失 業」 を 判 断 す る 際 に、 裁 判 所 は「給 付 法 上 の 就 業 関 係 ( leistungsrechtliches Beschäftigungsverhältnis ) 」 と い う 概 念 を 引 き 合 い に だ し、 判 決 を 蓄 積 し て き た。 「給 付 法 上 の 就 業 関 係」 が な い = 失業か否かの判断は、契約関係が終了しているのか否かとは独立したものであり、被保険者である労働者が実際に 就労していないのか否かを認定す ( 19) る。 そ し て、 失 業 手 当 は 賃 金 に 代 わ る 機 能 を 果 た す が、 優 先 す る 賃 金 が 支 払 わ れ て い な い 場 合 に、 失 業 手 当 が「失 業」者ではない労働者に支給されることで、労働者が賃金も雇用保険も支給されていない状態を回避するように、 支給に関する特別な規定が明文化されている (三編一四三条三項、傷病手当金についても五編四九条一項一号) 。 「失 業」 に い た る 過 程 に は、 労 働 者 の 一 時 的 な 職 業 中 断 を 経 て、 雇 用 関 係 が 終 了 す る こ と も 多 い。 そ う し た 一 時 的職業の中断や失業に対して労働者の生活をだれが、どのように保障するのか、は重要な論点になる。 ま ず、 社 会 法 典 三 編 に よ る 失 業 は、 次 の 三 つ の 要 件 を 充 足 し な け れ ば な ら な い。 失 業 (就 業 の 喪 失[ Beschäfti -gungslosigkeit ]) (一 号) 、 そ れ を 終 了 さ せ る た め の 求 職 の 努 力 を し て い る こ と (二 号) 、 連 邦 労 働 エ ー ジ ェ ン シ ー の 紹介をうけることができること ( Verfügbarkeit ) である (一一九条一項) 。
使用者の賃金支払い義務が優位するが、労働者に実際に賃金が支払われていない場合には労働者生活を保障する の は 失 業 手 当 に な る。 有 期 雇 用 を 原 則 と し て 認 め な い の で、 労 働 関 係 が 存 続 す る に も か か わ ら ず、 「就 業 の 喪 失」 (一 一 九 条 一 項 一 号) =「失 業」 状 態 と い え る の だ ろ う か。 こ の よ う な 労 働 関 係 存 続 中 の 不 就 労 を、 裁 判 所 は、 指 揮 命令権を使用者が放棄している、と評価できる場合には、それは事実上の「失業」である、という。そのため、雇 用保険法上での争点になるのが「事実上の就業の喪失」=失業か否かである。 事実上の就業の喪失とされるのは、派遣の待機期間だけではなく、労働関係の終了をめぐり訴訟を提起している 場合もドイツでは労働関係存続が原則であるので、労働者が実際には労務の提供をしていない状態に該当する。し たがって、雇用保険法の受給権の要件である「就業の喪失」として認定される。失業手当の受給要件である就業の 喪失=失業は、使用者が指揮命令権を有しているにもかかわらず、それを放棄している場合や、長期の私傷病の場 合に認められ ( 20) る。連邦社会裁判 ( 21) 所は、労働関係存続中でもすでに労務が終了している場合には、保険の保護を喪失 し な い よ う に 就 業 関 係 も 喪 失 し て い る と し、 「失 業」 状 態 に あ る と 認 定 し て い る。 そ れ は、 使 用 者 の 処 分 権 (指 揮 命 令 権) が 放 棄 さ れ て い る、 と 解 さ れ る こ と に よ ( 22) る。 指 揮 命 令 権 の 放 棄 は 明 示 的 又 は 黙 示 的 に な さ れ、 黙 示 的 放 棄 の例として、雇用関係が使用者の告知した解雇に基づき終了したとみなされ、そして告知以降の労務をもはや受領 しない場合があげられ ( 23) る。 連 邦 社 会 裁 判 所 二 〇 〇 四 年 六 月 三 日 判 ( 24) 決 に よ れ ば、 「給 付 法 上 の 就 業 関 係」 は、 三 編 一 一 八 条 一 項 の 就 業 の 喪 失 によるが、この規定は労働関係の存続によるのではなく、事実上の諸事情による。したがって、就業の喪失という のは被保険者が実際に就業していないことをさし、労働関係が存続しているのか否かには関係のないことである。 労働者が一時的に就業していない場合とは、従来の就業関係が実際には終了しているが、新しい就業関係はまだ開
始 し て い な い 状 態 で あ る。 し た が っ て、 本 判 決 に よ れ ば、 「給 付 法 上 の 就 業 関 係」 の 喪 失 = 失 業 は、 法 的 に は 労 働 関係が存続中でも、労働者が労務の提供を用意しているのかは別として、使用者が処分権を放棄している又は解約 により労働関係が終了しているとみなされ、そして労働者の労務の受領を拒絶し、すでに労務給付が事実上提供さ れていない場合である。 ( 2 ) 労働関係存続中の失業手当支払い義務(三編一四三条三項) 賃金請求権と競合する可能性があるのは、失業手当Ⅰと私傷病による中断時の所得を保障する傷病手当金である が、 い ず れ も 賃 金 が 優 先 す る (三 編 一 四 三 条、 五 編 四 九 条) 。 そ し て、 「就 業 し て い な い」 (一 一 九 条 一 項 一 号) 状 態 で ないが、賃金支払い義務が履行されていない場合には、 「労働関係存続中の失業手当保障 ( Gleichwohlgewährung ) 」 と し て 労 働 者 に 失 業 手 当 を 支 給 す る こ と が 明 文 化 さ れ て い る (三 編 一 四 三 条 三 項) 。 も ち ろ ん、 賃 金 が 支 払 わ れ れ ば、労働者には負担をかけずに、行政と使用者の間で、事後的に社会法典一〇編一一五条により清算され、行政が 事業主に求償することになる。 社 会 法 典 三 編 が 制 定 さ れ る 前 か ら 雇 用 促 進 法 ( AFG ) 一 一 七 条 一 項 一 a 項、 四 項 に よ り、 失 業 し て い る わ け で は な い 労 働 者 に、 失 業 手 当 を 請 求 す る 権 利 が 認 め ら れ、 「労 働 関 係 存 続 中 の 失 業 手 当 保 障」 が 定 着 し て い る。 失 業 手 当 Ⅰ の 支 給 は、 仮 の 決 定 で は な く、 確 定 さ れ る (解 雇 訴 訟 中 の 日 本 で の 失 業 手 当 支 給 と 同 じ) 。 こ の 方 法 は 一 九 九 八 年 以降、社会法典三編一四三条三 ( 25) 項に継承されている。 三編一一九条に基づいて労働関係が存続し、したがって法的には失業が生じていないにもかかわらず、失業手当 を請求することができるのは、どのような機能を失業手当が果たすことになるのだろうか。失業手当の本来保障す べ き 事 象 は「就 業 し て い な い」 = 失 業 状 態 で あ り (一 一 九 条 一 項 一 号) 、 雇 用 保 険 は 失 業 の リ ス ク が 生 じ た 場 合 に 労
働 者 に 従 前 生 活 を 保 障 す る 機 能 を も つ。 三 編 一 四 三 条 三 項 は、 失 業 に 加 え て、 賃 金 の 不 払 い ( Ausfall ) と い う 状 態 も失業に準じて保障するべき状況として捉え、その保障機能を拡大してい ( 26) る。三編一四三条三項によって、労働者 の請求権は、連邦労働エージェンシーへ移転する。 一 〇 編 一 一 五 条 に よ る 使 用 者 の 賃 金 支 払 い 義 務 の 担 保 を 確 認 し て お こ う。 社 会 法 典 三 編 (雇 用 保 険) 一 四 三 条 三 項により労働者は賃金請求権と失業手当請求権をともに行使できることと同時に、二重の取得を回避することにな る。しかしだからといって、使用者が失業手当の支給がなされることで未払賃金の支払義務から免れることは正当 化されるわけではない。したがって、一〇編一一五条に調整が明文化されてい ( 27) る。 ( 3 ) 「失業」の要保障状況―失業、傷病・障害の区別と継続性 失業という要保障事故は、医療・年金のそれと区別される。失業・病気による職業生活の中断は、年金のように 長期間に及んで就労ができない場合ではなく、ある程度の期間で就労が可能な場合であ ( 28) る。 短期の中断に対する所得保障を担う雇用保険と医療保険の傷病手当金は、雇用保険が一般労働市場での状況で就 労が可能なことを前提にする点で、区別され ( 29) る。 要保障事故の性格はこのように区別されるが、労働者にとって連続した事象である。たとえば、失業手当Ⅰ受給 者 が 病 気 に な り、 求 職 が 困 難 に な る こ と も あ る。 そ の よ う な 失 業 者 は、 被 用 者 医 療 保 険 の 被 保 険 者 と し て (五 編 五 条一項二号) 、 傷病手当金を請求する権利を有している (五編四四条二項一号) 。 わが国の雇用保険法の傷病手当 (三七 条) ではなく、医療保険の傷病手当金の受給資格を就業者と並んで失業手当Ⅰ受給者も有している。 病 気 に よ り 求 職 が 困 難 な 失 業 者 に 対 し て は、 「失 業」 者 な の か、 稼 働 能 力 が 減 少 し た「障 害」 者 な の か が 問 題 に な る。 確 か に、 雇 用 保 険 法 上 の 失 業 の 一 要 素 で あ る「職 業 紹 介 を 受 け る こ と が で き る」 (三 編 一 一 九 条 三 号) と い う
状態にない労働者は、狭義の失業者ではないが、しかしだからといって、放逐することは許されるわけではない。 労働者が病気になり求職が困難になるとか、ある程度の期間では回復しない場合に、とくに中高年労働者の失業は ドイツでは年金保険が負担してき ( 30) た。それは、長期にわたる職業生活において就業形態による不安定さだけではな く、病気等により一時的に就業を中断することによる不安定さが生じるからである。 失業と医療、そして年金の間の欠如がないように保障することが明文化されている。傷病手当金の受給後に「障 害」年金の受給資格があるとはいえない場合に、失業者が週一五時間以上の「求職」ができないとしても、失業手 当 の 請 求 を み と め る こ と が 明 文 化 さ れ て い る (三 編 一 二 五 条 一 項) 。 失 業 の 一 体 的 保 障 ( Nahtlosigregelung ) と い う ル ー ル は、 雇 用 促 進 法 (一 〇 五 a 条) に 導 入 さ れ、 社 会 法 典 三 編 一 二 五 条 に 継 承 さ れ て い る。 こ れ に よ り、 労 働 者 が一時的な仕事の中断は傷病手当金を優先して受給し、満了後に失業手当Ⅰを受給する。傷病が長期化する場合に は、年金の「障害」に移行することもあるが、フルシフトの業務には就けないが、就労が可能な限り被用者に対す る一時的な仕事の中断を医療保険と雇用保険がカバーすることが確立している。 社会法典三編一二五条は、年金保険の要保障事故である稼働能力の減少・障害というリスクの発生までに限り、 失業者に稼働能力を有する状態を擬制し、失業手当の受給権が成立す ( 31) る。年金の対象にならない限り雇用保険の受 給 権 が 成 立 す る。 換 言 す れ ば、 こ の 規 定 に よ り、 あ る 程 度 の 長 期 に わ た る 病 気 に よ り 求 職 で き な い 労 働 者 に 対 し て、雇用保険と年金保険において給付の責任を画定することになる。ある労働者が失業手当Ⅰを受給中に、就労が 不 能 に な っ た、 と す る。 そ の 場 合 に は、 傷 病 手 当 金 が 失 業 手 当 受 給 者 に 対 し て 成 立 す る の で (四 四 条 二 項 一 号) 、 傷 病手当金の受給期間満了後になお就労不能であれば、失業者は三編一二五条により失業手当Ⅰを連邦労働エージェ ンシーに請求できる。
ある労働者に対して生活保障責任を担うのが医療保険か雇用保険か、あるいは障害・稼働不能として評価するの かは、緊張関係にある。ドイツでは、長期の職業生活の中断には年金保険が、そしてそこに到るまでは医療・雇用 保険がもれなく対応することが確立している。 わ が 国 で は、 労 働 者 が、 医 療 保 険 の 傷 病 手 当 金 の 受 給 期 間 を 満 了 し て も 稼 働 能 力 が 回 復 し な い 場 合 に は、 退 職 し、失業時の雇用保険の受給に移行する。年金が失業保障に関与しないことから、雇用保険と年金・医療保険がわ が国では緊張関係にたたない。失業登録もないため失業者として把握されず、健康上の問題を原因として求職が困 難になれば失業率は低下するが、失業問題が隠れてしまう結果にな ( 32) る。ドイツ法を参考に検討が必要である。 3 社会保険関係が存続する「就業者」の範囲 ( 1 ) 「 (保険法上の) 就業関係」 (社会法典四編七条) の継続性 (ⅰ) 可 能 な 限 り 失 業 手 当 Ⅰ の 受 給 権 を 実 現 す る こ と は、 本 来 の 社 会 的 権 利 の 目 的 で あ る (社 会 法 典 総 則 二 条 二 項) 。 ド イ ツ 法 で は、 そ の 達 成 に 必 要 な 受 給 資 格 を 喪 失 し な い よ う に、 被 保 険 者 の 範 囲 は わ が 国 よ り も 広 い。 被 保 険者の地位は、現に労務を提供している労働者だけではなく、かなりの多くの市民の業務・活動をとらえて、いっ たん職業生活を開始した労働者に対して被用者保険・雇用保険の資格が職業生活を通じて継続する要請が立法で具 体 化 さ れ て い ( 33) る。 た と え ば、 雇 用 保 険 法 で は、 就 業 者 (三 編 二 五 条 一 項) 、 傷 病 手 当 金 や 障 害 年 金 受 給 者 (二 六 条 二 項一号、三号) が加入対象者である。被用者医療保険法では、就業者 (五条一項一号) 、失業手当Ⅰ受給者 (五条一項 二 号) 、 年 金 受 給 者 (五 条 一 項 一 一 号) が 加 入 し て い る。 そ し て、 被 用 者 年 金 保 険 法 で も、 就 業 者 に 加 え て、 傷 病 手 当 金・ 失 業 手 当 Ⅰ な ど の 賃 金 補 償 給 付 の 受 給 者 も 加 入 資 格 者 で あ る (六 編 三 条 一 文 三 号) 。 こ の よ う に、 現 に 労 務 を
提供している労働者だけではなく、上でみたような労働関係存続中であるが不就労であり、失業手当を受給してい る者、さらには労働関係を終了した失業手当Ⅰ受給者を被保険者として捉えている。 多くの市民が労働に依拠して生活をしている現代において、ある程度の普遍性をもつ労働を基本に社会保険の権 利へのアクセスを最大限に実現することは、社会法典総則四条一項と結びついた総則二条二項後段の解釈指針を基 に正当化されている。すなわち、社会的権利を最大限実現するには、広く労働者に就業関係を存続させ ( 34) る。長い職 業生活にとって一時的に仕事を中断することは典型的であるといえ、労働契約により労務の提供をしていない労働 者 を、 そ の つ ど「就 業 者」 (四 編 七 条 一 項) で は な い、 と 評 価 す る の は 目 的 の 実 現 に 適 切 な 方 法 で は な い。 労 務 を 提 供 し て 生 計 を 立 て る も の に と っ て、 「就 業 者」 の 地 位 存 続 は、 就 業 者 の 職 業 生 活 の 持 続 を 可 能 に し、 社 会 的 権 利 の 実現に適った考え方である。 (ⅱ) し か し、 派 遣 の 待 機 期 間 や、 解 雇 訴 訟 中 の 労 働 者 が「事 実 上 の 就 業 喪 失 状 態 ( faktische Beendigung der Be -schäftigung ) 」 と し て 判 断 さ れ る と し て も、 そ れ ら の 者 は、 実 際 に は 就 業 し て い な い の で「就 業 者」 (三 編 二 五 条 一 項) で は な な く、 ま た、 失 業 手 当 や 傷 病 手 当 金 等 の 賃 金 補 償 給 付 を 受 給 し て い て も 法 的 に は 労 働 関 係 の 終 了 が 確 定 し て い な い (三 編 二 六 条 二 項 一 号) 。 つ ま り、 雇 用 保 険 法・ 被 用 者 保 険 各 法 の 被 保 険 者 で あ る こ と は、 労 働 者 の 社 会 的権利の実現に適切な方法であるにもかかわらず、雇用関係の終了が確定していない一方で、現に労務を提供して いない労働者も、 「就業者」 (三編(雇用保険) 二五条、四編七条)といえるのかが問題になるわけである。 (ⅲ) 職 業 生 活 の 中 断 の た び に 就 業 者 と し て 被 保 険 者 の 地 位 を 失 わ ず に い ら れ る こ と は、 雇 用 保 険・ 社 会 保 険 の 保護機能を多くの労働者に果たす目的を実現するのに不可欠である。たとえば、派遣労働者が細切れ雇用を繰り返 している場合が典型であるが、解雇された時点に失業手当の受給に必要な保険加入期間を充足しないことがある。
派遣労働者の解雇無効が確定しても、多くは復職が困難であるが、それでも解雇時をもって被保険者資格が喪失す るとすれば、失業手当の受給にはいたらないことになる。このような不利益を回避するには、訴訟中の労働者も、 雇用保険・被用者保険法上も保険加入義務のある就業者として捉えられないのだろうか。このような労働者に雇用 保 険 が 生 活 保 障 機 能 を 果 た す に は、 訴 訟 中 も 当 該 労 働 者 を、 「雇 用 さ れ て い な い」 と 確 定 し て い な い、 と 解 す れ ば、被保険者の地位を喪失していないのではないか。このような問題がドイツでも生じている。たとえば、連邦社 会 裁 判 所 一 九 八 一 年 九 月 二 五 日 判 ( 35) 決 は、 使 用 者 の 受 領 遅 滞 が 就 業 関 係 の 存 続 を 排 除 す る も の で は な い こ と を、 「保 険 加 入 義 務 の 保 護 機 能」 を 論 拠 に 導 い て い る。 「保 護 機 能」 は、 労 働 者 を、 そ の 職 業 生 活 が 継 続 す る 期 間 に 対 し て 可能な限り、病気、失業、障害、高齢、死亡のリスクから保護するものである。そうした必要性は、使用者が労働 関係の存続中に労働者の労働力を求めないことにより小さくなるわけではない、という。労働者は、使用者の受領 遅滞に際しても、その後継続して就労できることを期待しながら労働関係を保持することができる。さらに、判決 は使用者の受領遅滞により労働者に社会保険法上生じる不利益に言及している。すなわち、使用者は契約に違反し て一方的な行為により保険料義務を免れることができるならば、労働者には保険法上の損害が生じるとし、とくに 年金法では損害賠償請求ではほとんど調整することができないものである、と。そうした理由から、連邦社会裁判 所 は、 就 業 関 係 は、 受 領 遅 滞 か ら、 実 際 の 就 業 の 終 了 を 経 て、 労 働 関 係 が 法 的 に 終 了 す る に 至 る 期 間 ま で 継 続 す る、という立場をとってきている。さらに、労働関係の終了により社会保険の不利益が生じること、しかもそうし た不利益が使用者の一方的な行為によってもたらされることがあり、そのような一方的な行為をそのまま社会保障 法で法認することは許容されるものではな ( 36) い。 ド イ ツ で も 雇 用 保 険 法 上 も 被 用 者 保 険 法 上 の「就 業 関 係」 (四 編 七 条) が 終 了 す れ ば、 次 の 不 利 益 が 労 働 者 に 生
じてしまう。仮に事実上の就業を喪失した時点で失業手当を受給するのに必要な雇用保険加入期間を充足していな い場合に、労働者が不当に解雇されることにより、重大な不利益が生じ ( 37) る。解雇訴訟期間を保険加入義務がある就 業 期 間 と し な い な ら ば、 受 給 資 格 期 間 ( Anwartschaftszeit ) を 充 足 す る 前 に 解 雇 さ れ た 労 働 者 は、 仮 に 勝 訴 し た 場 合でも、実際に就業を回復することはあり得ない以上は、失業手当請求権を喪失することになってしまう、という わけである。 (ⅳ) わ が 国 で は、 社 会 保 険・ 雇 用 保 険 法 で は、 適 用 基 準 を め ぐ り 批 判 的 に 検 討 さ れ て き た が、 被 保 険 者 の 地 位 の 喪 失 (認 定 及 び 時 点) も 検 討 が 必 要 で あ ろ う。 労 働 の 意 思 と 能 力 を 有 す る が、 現 に 労 務 を 提 供 し て い な い と し て も、例えば退職をめぐり訴訟を提起している労働者を、社会保険・雇用保険法上の被保険者として捉えることが考 えられないのだろうか。そうでなければ、失業手当の受給に必要な保険加入期間が充足されないまま、雇用関係が 終了する不利益も労働者に生じるだけではなく、長期保険の年金では保険加入期間の中断による「損害」の確定も 困難である。 雇用保険法も被保険者各法も被保険者の地位は雇用契約の終了により喪失すると解されている。おそらく、契約 当事者間に労働関係存続の意思がない場合には、社会保険法上の関係が終了するものと解されているが、受給権の 成立の条件になる保険加入期間・その終了を契約当事者の意思に結びつける必要はないだろう。社会保険の受給権 に必要な保険関係が、使用者の不当な期間の設定や解雇により、恣意的に短縮されてしまい、受給要件を充足しな いことを是認する結果を避けるべきではないだろうか。 ( 2 ) 医療保険・年金保険における失業者 (ⅰ) す べ て の 労 働 者、 そ し て 一 時 的 に 就 業 を 喪 失 し て い る 労 働 者、 定 年 前 に 永 続 的 に 労 働 が 不 能 に な っ た 年 金
受給の労働者を対象にひろくすべての現役労働者に被用者医療保険・年金保険加入を認めている。就業者だけでは なく、失業手当受給者にも加入資格がある。それは、失業することにより医療保険・被用者年金へのアクセスを喪 失 す る こ と 自 体 も、 失 業 に 付 随 す る 要 保 障 状 況 ( sekundäres Risiko ) で あ る と 考 え ら れ る か ら で あ る。 継 続 的 に 社 会保険に加入する保護機能は、労働関係が存続している期間だけではなく、労働に依拠して生活をしている以上、 新たな雇用を求めている失業者にも必要である。労働者にとって失業は、それにより所得を失うだけではなく、失 業することでさらに医療・年金のリスクに備えることが困難になるので、事実上被用者医療・年金保険へアクセス する機会を失うこともまた失業に付随して生じる要保障事故であると捉え ( 38) る。人的範囲と保険料負担について簡単 にみておこう。 まず、人的範囲については、従来、裁判例によれば、社会保険法上の就業関係は、そのメルクマールとして、使 用 者 が 指 揮 命 令 権 を 有 し て お り、 労 働 者 が 労 務 の 提 供 に そ な え る 人 的 従 属 性 が 必 要 で あ ( 39) る。 し か し、 「実 際 の 労 務 の提供」の必要性は明文化されていない条件であり、就業関係の成立、存続に関して四編七条一項が規定している のは「労働関係」の存在にすぎない、というのであ ( 40) る。労働関係の終了が確定していない場合には、雇用保険法上 の就業者としても認定されている。連邦社会裁判所によれば、四編七条の保険法上の就業関係の成立・存続は、契 約当事者が労働関係存続の意思を有することを条件としてい ( 41) た。しかし、使用者に雇用の継続意思がなく、解雇訴 訟を提起している労働者に、保険法上の就業関係は成立しないのかが争点になった。裁判 ( 42) 所は、保険加入義務を認 め る に あ た っ て は、 事 実 上 の 就 業 の 終 了 が 重 要 な の で は な く、 解 雇 訴 訟 の 終 結 が 基 準 に な る。 そ れ ゆ え、 労 働 者 が、失業し、失業手当を受給していた期間にも、保険加入義務が存するのである、と判示している。そして、労働 関係は存続しているが事実上の就業関係にない期間をどのように扱うのかについては、保険料法上の就業関係とい
う概念を、保険加入義務の保護機能に則して解釈し、保険加入義務のある就業関係を定める三編二五条一項一文も 適用される。それゆえ、労働者が、失業し、失業手当を受給していた期間にも、雇用保険加入義務が存するのであ る、と判示している。 雇用保険や被用者保険法上の被保険者としての地位が存続することは労働者にとって雇用保険だけではなく、医 療保険、そして将来の年金額にも不可欠である。雇用保険・社会保険では、契約当事者の労働関係の継続意思は、 使用者が自己の義務に違反して労務を受領していない場合には、労務の提供を事実上不可能にしている希望又は動 機を基準にして、被保険者の地位やそこから生じる社会保険法上の労働者保護を奪うものであってはならな ( 43) い。こ のように考えなければ、社会保障法では、使用者の違法な行為により、労働法・社会保障法の二領域において目指 されている労働者ないし就業者の保護を喪失させることになる、と。 (ⅱ) 失 業 す る こ と に よ り 被 る 不 利 益 を、 労 働 者 医 療 保 険・ 被 用 者 年 金 へ の ア ク セ ス を 喪 失 す る こ と も 含 め て と らえる、という考え方にすでに言及した。具体的に、失業労働者生活を職業生活全体にわたり保障するにしても、 保 険 料 は だ れ が 負 担 す る の だ ろ う か。 Bieback に よ れ ば、 失 業 に 付 随 し て 生 じ る 負 担 は、 社 会 保 障 法 で は、 収 入 の 喪失を保障する給付主体が社会保険の保険料についても引き受けるという考え方 (「統一的なリスク引き受けモデル」 と し て い る) に 基 づ い て 保 障 さ れ て い ( 44) る。 た と え ば、 連 邦 エ ー ジ ェ ン シ ー は、 失 業 手 当 Ⅰ の 支 給 義 務 だ け で は な く、 失 業 手 当 Ⅰ 受 給 者 の 医 療 保 険 料 (五 編 二 五 一 条 四 a 項) 、 年 金 保 険 料 (六 編 一 七 〇 条 一 項 二 b 号) を 負 担 す る 義 務 を負う。 ( 3 ) 低賃金による低年金化への対応 (ⅰ) ド イ ツ で は 厳 格 な 意 味 で の 全 て の 市 民 に 対 す る 社 会 保 険 は 存 し な い が (皆 年 金・ 皆 保 険 制 度 の 不 存 在) 、 か な
りの多数の労働者に対する普遍的な社会保険制度を機能させることが社会的権利の実現の適切な方法である、と考 えられている。その点では、皆年金・皆保険ではなく、ユニバーサルな雇 ( 45) 用による雇用保険・社会保険を機能させ ようとしている。派遣労働者も例外を除き被用者保険に加入している。 しかし、低賃金は失業手当、傷病手当金、そして年金の実体的権利に不利にはたら ( 46) く。そこで、まず、労働者派 遣 法 の 均 等 待 遇 原 則 に 基 づ き 是 正 さ れ た 賃 金 が 失 業 後 に 支 払 わ れ れ ば (Ⅲ 章 2 節 参 照) 、 傷 病 手 当 金 も 失 業 手 当 も そ の 範 囲 で 事 後 的 に 増 額 請 求 が 可 能 な の か が 問 題 に な る。 雇 用 保 険 法 の 失 業 手 当 も 医 療 保 険 の 傷 病 手 当 金 (五 編 四 四 条) も、その支給額は「取得された」賃金を基に算定される (三編一三一条、五編四七条一項一文) 。失業手当の支給 額 の 算 定 基 礎 に お か れ る 期 間 ( Bemessungszeitraum ) を 過 ぎ て、 違 法 に 支 払 わ れ て い な か っ た 賃 金 が 事 後 的 に 労 働 者 に 支 払 わ れ た 場 合 に、 そ の 賃 金 を「取 得」 し て い た と 解 釈 で き る の か が 問 題 に な っ た。 連 邦 社 会 裁 判 所 は、 当 初、 失 業 前 の 算 定 基 礎 期 間 に 支 払 わ れ て い な い 賃 金 に つ い て は、 「取 得 し た」 賃 金 と い え な い、 と し ( 47) た。 労 働 者 に 実 際 に 支 払 わ れ た 賃 金 を 基 に、 「従 前 生 活」 の 保 障 を す る の が 適 っ て い る と 判 示 し て い た。 し か し、 裁 判 所 は、 立 場を変更し、違法に支払われていなかったが、算定基礎期間後に払われた賃金も「取得」された賃金と解釈しなけ れば、それは平等原則を定めた基本法三条一項に違反する、と判示している。というのも、適切な額の賃金が適時 に支払われた労働者と、算定基礎期間に違法に低い支払しかなされなかった労働者、という二つのグループを比較 すれば、事後的に支払われた賃金も取得された賃金と解さなければ、後者の労働者を不利益に扱うことになるから であ ( 48) る。 傷 病 手 当 金 も、 社 会 法 典 五 編 (医 療) 四 七 条 一 項 一 文 は、 「取 得 し」 定 期 的 な ( regelmässig ) 賃 金 を 基 礎 に、 被 保 険者は傷病手当金を受け取ることができる、と定めている。裁判所は、一方で、違法に低い賃金しか支払われてい
ない場合に、事後的に労働者が合法的に支払われるべき賃金分を請求していないのであれば、傷病手当金の支給額 を、 「実 際 に 支 払 わ れ た 報 酬」 を 基 礎 に 算 定 す る、 と 判 示 し て い ( 49) た。 し か し、 先 の 失 業 手 当 に 関 す る 判 決 を 継 承 ( 50) し、 二 〇 〇 五 年 二 月 一 六 日 判 決 は、 本 来 支 払 わ れ る べ き 賃 金 が 実 際 に 事 後 的 に 労 働 者 に 支 払 わ れ て い る 場 合 に は、 労 働 者 は、 傷 病 手 当 金 に つ い て の 増 額 請 求 を、 被 保 険 者 と し て 保 険 者 に 請 求 す る こ と が で き る、 と 判 示 し て い ( 51) る。 事後的により高い賃金が派遣労働者に支払われた場合には、被保険者は行政に賃金補償給付の増額請求をするこ とができる。その範囲では、均等待遇原則により賃金や失業手当・傷病手当金が修正される。 (ⅱ) し か し、 そ も そ も、 不 安 定 な 雇 用 で あ れ ば、 失 業 手 当 Ⅰ の 受 給 権 が 成 立 し な い こ と も あ り、 成 立 し た と し ても低賃金ゆえに失業手当Ⅰの受給額が低いため失業手当Ⅱを受給していることもある。同様に、年金保険も低年 金でしか期待権が成立しない。派遣労働者の平均賃金は、フルタイムの直接雇用の労働者の平均賃金の半分以下で あるので、現役労働者に最低賃金を一般法として制定するべきであるという要請から、最低賃金法の制定が注目さ れていた。しかし、一般法としてではなく、労働者派遣法のなかに、派遣期間及び派遣されていない期間について 最低賃金を導入することが連邦議会で決定されてい ( 53) る。 Walterma ( 52) nn は、 年 金 の 支 給 額 が 将 来 的 に 公 的 扶 助 水 準 を 超 え る に は、 最 低 の 時 給 が 八 ・ 二 〇 ユ ー ロ で あ る こ と が必要であると指摘している。最低賃金の導入によって劣悪な状況を回避できるとしても、将来の課題として年金 受給者の貧困化が解決できるわけではないだろう。高齢期だけではなく、障害年金の低年金化も併せて年金と最低 生活保障の課題の解決に迫られている。低年金化が高齢者・障害者の貧困をもたらすことになる、という課題であ る。確かに、現在では高齢者のうち一二編による基礎保障の受給者は女性の二 ・ 六%、男性の一 ・ 八%であるが、低
賃金雇用や失業手当Ⅱの長期にわたる受給により高齢期に貧困になるリスクが高まってい ( 53) る。 現役時代の低賃金雇用や不安定なキャリアの形成は、高齢期の年金のみならず、障害年金の受給者など、低年金 への課題を突き付けてい ( 54) る。若年労働者に低所得、派遣労働者が増加していることが将来の年金制度に大きな課題 をつきつける引き金になってい ( 55) る。他方で、ドイツの低賃金雇用は若者や職業資格のない人に集中しているのでは なく、むしろ九〇年代後半からは、フルタイム労働者、職業教育を修了している者にも広まっているという調査報 告もあ ( 56) る。 低年金は政策上の課題であるだけではない。ドイツでは、被用者保険に長く加入してきた労働者が、年金の要保 障事故が生じた場合に、保険料によらない公的扶助水準しか保障されないのは、基本法三条一項の一般平等原則に 照 ら し て 評 価 さ れ、 憲 法 上 も 問 題 に な る。 Bieba ( 57) ck は、 基 本 法 三 条、 二 条 一 項 に よ り 給 付 水 準 を 多 く の 被 保 険 者 にとって公的扶助を超える支給水準を確保されることが要請されるとしている。低年金は、従来とちがって、労働 者が安定してフルタイム雇用につくことができずに、派遣・有期雇用・パートなどの就業形態が多様化しているだ けではなく、長い職業生活に病気や障害等によりキャリアの中断を経験する労働者の増加によっても生じてくる。 現役労働者に平等な雇用条件を設定し、職業生活を継続することは、二〇一二年からの六七歳への年金開始年齢 の引き上げが障害年金を受給する中高年にも大きな影響を及ぼすことも懸念されてい ( 58) る。現役労働者の平等な賃金 保障は、労働市場改革を経たドイツを見れば社会保障を機能させる条件であることが確認できる。 (ⅲ) 派 遣 労 働 者 の 低 賃 金 を 失 業 手 当 Ⅱ が 補 完 し、 そ の 後 年 金 生 活 に 入 れ ば 低 年 金 (障 害・ 老 齢) を 公 的 扶 助 (社 会法典一二編四章) が補完せざるをえなくなる。すでに公的扶助の負担について将来の試算がなされてい ( 59) る。従来、 公的扶助は自治体が引き受けてきたが、自治体財政の負担を軽減するために二〇一一年から二〇一四年にかけて段
階的に地方自治体の財政負担から全額連邦負担に変更される。質の悪い雇用の増加は財政面の改革にも影響を与え ている。 おわりに 以上に示されたように、派遣労働者に平等な賃金を確保することなく派遣労働・低賃金雇用を拡大すれば、労働 者 生 活 保 障 に 対 し 使 用 者 が 負 う べ き 負 担 が、 労 働 者 に、 そ し て 社 会 保 険、 ひ い て は 公 的 扶 助 (失 業 手 当 Ⅱ・ 高 齢 及 び重度障害者に対する公的扶助) に転嫁される結果にな ( 60) る。 失業を捉える際には、失業にいたった労働関係の終了に対して使用者が負うべき保障責任を明らかにすることが 不 可 欠 に な る。 そ う で な け れ ば、 失 業 と 短 期 雇 用 を 繰 り 返 す 不 安 定 な 職 業 生 活 か ら 抜 け 出 す こ と が で き な い こ と は、ドイツでも派遣労働者の現状からも否定されない。 社会保障法では、使用者が労働者の資格取得を恣意的に届け出ないことで雇用保険・社会保険に加入できない一 方 で、 一 方 的 な 行 為 に よ り 雇 用 関 係 が「終 了」 し、 「雇 用 さ れ て い な い」 状 態 に お か れ る 状 況 は き わ め て 大 き な 問 題である。労働者が職業生活を自由に展開し、一方的に終了しない継続可能性を社会保険法は確保することがユニ バーサルな労働を基にした社会保険法の構築に不可欠であろう。 派遣労働にみられる短期雇用や断続的雇用では、現役世代だけではなく、将来的にも低年金による公的扶助の受 給 者 の 増 加 が、 財 政 的 に も 問 題 に な っ て い る。 こ れ は 日 独 の 共 通 の 認 識 で あ る。 し か し、 そ れ に と ど ま ら ず、 本 来、安定した雇用により、生活保護を上回る賃金をどのような形態であれ平等に保障されることは、労働関係の基 本になるべきである。雇用保険・社会保険の権利は、生涯にわたる職業生活の継続に向けたものになっている。ド
イツでは、病気、障害、要介護といった状況も、失業と関連して把えられている。 なお、本稿では労働関係の終了について雇用保険法の給付制限を検討できなかった。今後の課題にしたい。 注 ( 1 ) 濱 口 桂 一 郎「労 働 者 派 遣 法 改 正 の 動 向 と 今 後 の 課 題」 『季 刊 労 働 法』 二 二 八 号(二 〇 一 〇 年) 八 七 頁 以 下 は、 派 遣 と 派 遣 の 間 の 失 業 が「派 遣 会 社 が コ ン ト ロ ー ル す る 失 業」 で あ り、 「大 き な モ ラ ル ハ ザ ー ド」 の 可 能 性 を 指 摘 し、 「登 録 型 派 遣 労 働 者 待 機 期 間 給付」を提案している。 ( 2 ) さ し あ た り 三 都 企 画 事 件、 大 阪 地 裁 平 成 一 八 年 一 月 六 日、 労 働 判 例 九 一 三 号 四 九 頁 以 下。 派 遣 労 働 者 の 就 労 停 止 の 性 格 が 争 点 に な っ た 事 件 で は、 慰 謝 料 請 求 権 の 存 否 が 被 用 者 保 険 加 入 に 関 す る 使 用 者 の 言 動 を 理 由 に 争 わ れ て い る に す ぎ な い(労 経 速 二〇二五号二一頁) 。 ( 3 ) Boecken,Wie sollte der Übergang vom Erwerbsleben in den Ruhestand rechtlich gestaltet werden? : Gutachten B für den 62. Deutschen Juristentag [ DJT
], S.B127 und S.B81ff.; Rolfs, Das Versicherungsprinzip im Sozial
versicherungsrecht, 2000, S.527ff. ( 4 ) Statistisches Bundesamt, Niedriglohneinkommen und Erwerbstätigkeit, 2009, S. 14. 非 正 規 雇 用 全 体 の 平 均 時 給 は 一 一 ・ 九 八 ユ ー ロ で あ り、 そ の な か で も 派 遣 の 平 均 時 給 は 低 い(パ ー ト タ イ ム: 一 五 ・ 〇 五 ユ ー ロ、 有 期 雇 用: 一 三 ・ 〇 八 ユ ー ロ、 ミ ニ ジ ョ ブ:八 ・ 九八ユーロ) 。 ( 5 )
Adamy, Arbeitsmarktrisiken in der Leiharbeit,Wirtschaftsdienst
2010, 598, 602.
(
6
)
Adamy, a.a. O., S.601.
( 7 ) 例えば解雇訴訟について BAG Urt. v. 18. 05. 2006 DB 2006, 1962-1963. ( 8 ) Berchtold, in:Kreikebohm/Spellbrink/Waltermann [ KSW ] ( Hrsg.
), Kommentar zum Sozialrecht, 2009,
§24, Rn. 7. ( 9 ) W an k, in :M ülle r-G lög e, Pr eis , S ch m id t ( H rs g. ) , E rfu rte r K om m en ta r z um A rb eit sr ec ht [ E rfK ], 11 . A ufl ., 2 01 1, R n.1 1 u nd R n. 6.
( 10) BT-Drucks. 14/4374, S. 19. ( 11)
Schüren, in:Schüren/Hamann, AÜG, 4. Aufl., 2010,
§3 Rn.230ff.; Pelzner, in: Thüsing, AÜG, 2. Aufl., 2008,
§3 Rn.104. ( 12) BAG Urt. v. 18.5. 2006 DB 2006, 1962-1963. ( 13) 労働者派遣法一一条「派遣関係に関するその他の諸規定」 四 項「民 法 六 六 二 条 五 項 一 号 を 派 遣 元 と 派 遣 労 働 者 と の 間 の 労 働 関 係 へ の 適 用 は 許 さ れ な い。 派 遣 元 の 受 領 遅 滞(民 法 六 一 五 条 一文)に際しての派遣労働者の報酬請求権は契約により放棄又は制限することは許されない、民法六一五条二文は適用されない」 。 ( 14) Wank, in: ErfK, AÜG §11 Rn.16; Pelzner, in: Thüsing, a.a. O.,, §3 Rn.104. LAG Rheinland-Pfalz v. 24.4. 2008 ( BAG7. 11. 2007DB 2008, 185ff. の差し戻し)によれば、労働者派遣も、使用者は雇用リスクを民法六一一条・六一五条により引き受けなければならな いのであり、したがって派遣と派遣の間の期間についても支払い義務を負う。 ( 15)
Schüren, in: Schüren/Hamann, a.a. O., Einleitung, Rn.739; Wank,
in: ErfK, AÜG, Einleitung, Rn. 37.
(
16)
Schüren, , in: Schüren/Hamann, a.a. O.,
§11 Rn. 94.
(
17)
Wank, in:ErfK, a.a. O., 11 Rn.22 und
§3 Rn.17; Mengel, in: Thüsing, a.a.O.,
§11 Rn.43; BT- Drucks.15/25, S.38. ( 18) BT-Drucks.17/5238. 連 邦 議 会 は 次 の 内 容 の 派 遣 労 働 者 の 最 低 賃 金 規 定 を 導 入 す る 法 案 を 可 決 し て い る。 労 働 者 派 遣 法 三 条 一 項 三 号 に、 協 約 か ら 逸 脱 が 可 能 で あ る と す る。 三 a 条 に「賃 金 の 下 限( Lohnuntergrenze )」 の 導 入 し、 一 〇 条 五 項 に、 派 遣 期 間 及 び 派 遣 さ れ て い な い 期 間 に つ い て、 派 遣 元 事 業 主 は 放 棄 命 令 に 規 定 さ れ た 最 低 賃 金 を 支 払 う 義 務 を 負 う 旨 が 定 め ら れ て い る。 連 邦 議 会 で は、 協 約 の 最 低 賃 金(旧 西 七、 六 〇 ユ ー ロ、 旧 東 六、 六 五 ユ ー ロ) を 絶 対 的 最 低 賃 金 と し て 設 定 す る こ と が 宣 言 さ れ て い る ( BT-Drucks. 17/4830 )。 ( 19) BSG Urt. v. 28.9.1993 E 73, 126, 129; BSG Urt. v.25.04. 2002 E 89, 243, 249. ( 20) Mutscher, in:KSW ( Hrsg. ), Kommentar, SGB Ⅲ , §119 Rn.11. ( 21) BSG 9.9. 1993 7 RAr 96/92;BSG Urt. v. 28.9.1993 E 73, 126, 129. ( 22) LSG NRW Urt. v. 23.02.2010.
( 23)
BSG Urt.v. 11.6. 1987 SozR 4100
§117 Nr. 19 und BSG urt.v. 29.9. 1987 SozR 4100
§117 Nr 20. ( 24) SozR 4-4300 §123 Nr.2. Auch BSG Urt.v. 25.04. 2002 E 89, 243. ( 25) 社会法典三編(雇用保険)一四三条 一項 失業手当請求権は、失業者が賃金を取得又は請求することができる期間、停止する。 二項 (省略) 三 項 失 業 者 は 本 条 一 項 及 び 二 項 に 掲 げ ら れ た 給 付(一 〇 編 一 一 五 条 で い う 賃 金) を 実 際 に 受 給 し て い な い 限 り に お い て、 失 業 手 当 は、 失 業 手 当 請 求 権 が 停 止 す る 期 間 に 対 し て も、 支 給 さ れ る。 使 用 者 が、 免 除 効 果 を 伴 う 権 利 の 移 転 に も か か わ ら ず、 一 項 及 び 二 項 に 掲 げ ら れ た 給 付 を、 失 業 者 又 は 第 三 者 に 支 払 っ た 場 合 に は、 失 業 手 当 の 受 給 者 は こ れ を そ の 範 囲 に お い て 償 還 し( erstat -ten )なければならない。 ( 26) V oe lzk e, in : S pe llb rin k/ E ich er , K as se ler H an db uc h de s A rb eit sfö rd er un gs re ch ts, 20 03 , § 12 R n. 62 ; D üe , in : N ies el ( H rs g. ) , SGB Ⅲ , 2010, §143 Rn.2. ( 27)
Deinert, Sozialrecht: Unbekannte Welt für Arbeitsrechtler, Arbe
itsrecht im Betrieb 2009, 227, 231. ( 28) 三 編 一 二 五 条 の 単 に 一 時 的 で な い 就 労 不 能 は、 医 学 的 診 断 に よ り 六 ヶ 月 以 上 継 続 し て 就 労 が で き な い と 予 測 さ れ る 場 合 で あ る ( Brand, SGB Ⅲ , 4. Aufl, §125 Rn.3 )。 ( 29) Wannagat, Zur Abgrenzung der Risiken der Renten- und Arbeitslosenversicherung, Festschrift für Josef Stingl zum 65. Ge -burtstag, 1984, S.457ff.; BSG Urt.v. 27.1. 1977 E 43, 128, 133. ( 30)
Ebsen, in: Eichenhofer/Rische/Schmähl, Handbuch der gesetzliche
n Rentenversicherung, 2011, Kap.29, Rn.11 und 48.
( 31) BSG Urt.v. 3.6. 2004 SozR 4-4300 §125 Nr.1. auch vgl. BSG Urt.v. 9.9. 1999 E 84, 262. ( 32) 玄田有史「二〇〇九年の失業」 『日本労働研究雑誌』五九八号(二〇一〇年)一四頁。 ( 33) 上田「被用者保険法適用対象に対する国家規制(七・完) 」福島二〇巻二号(二〇〇八年)九頁以下。 ( 34)
Segebrecht u.a., in: Schlegel/Voelzke, Juris Praxiskommentar, S
GB
Ⅳ , 2006,
( 35) BSGE 52, 152ff.. BSG Urt.v. 18.9. 1973 E 36, 161. 'Auch BSG Urt. v. 26.05.1977 SozR 2200 §29 Nr.9; BSG Urt.v. 24.9. 2008 SozR 4-2400 7 § Nr.9. ( 36) BSG Urt.v. 8.6. 1989 SozR 4100 §65 Nr.7. ( 37)
Raduege, jursiPR-SozR 40/2004 Anm.3.
( 38) 上 田「被 用 者 保 険(医 療、 年 金) の 適 用 の 拡 大」 脇 田 滋 他 編 著『若 者 の 雇 用・ 社 会 保 障』 (法 律 文 化 社、 二 〇 〇 八 年) 一 一 九 頁以下。 ( 39) BSG Urt. v.21.8. 1997 12BK 63/97. ( 40)
Segebrecht u.a., in: Schlegel/Voelzke, a.a. O., SGB
Ⅳ , §7 Rn.66. ( 41) 例えば有給での研修について BSG Urt.v. 12.11. 1975; BSG Urt.v. 31.08. 1976 SozR 2200 §1227 Nr.4. 解雇訴訟終結時まで労働関 係・就業関係の存続についてすでに BSG Urt. v. 25.9. 1981 E 52, 152; BSG 3.6. 2004 SozR 4-4300 §123 Nr.2. ( 42) B SG U rt. v. 3.6 . 2 00 4. 本 件 で は 、 解 雇 後 に 失 業 手 当 を 受 け る 加 入 資 格 期 間 ( 三 編 一 二 四 条 ) が 被 保 険 者 に 不 足 し て い た た め 、 保 険の終了時点が争点になった。 裁判所は、 事実上の就業の終了が重要なのではなく、 解雇訴訟の終結が基準になると判示している。 ( 43)
Segebrecht u.a., in: Schlegel/Voelzke, a.a. O., SGB
Ⅳ ,
§7 Rn.61.
(
44)
Bieback, Existenzsicherung und Alters- und Invalitätsvorsorge,
SGb 2009, 629, 635. ( 45) 田端博邦『幸せになる資本主義』 (朝日新聞出版、二〇一〇年)八〇頁。 ( 46) Weinkopf, Benachteilungen von Leiharbeitkräften abbauen, IAQ-Standpunkte Nr.2010-03; Bosch, Schriftliche Stellungnahme, Ausschussdrucksache 17 ( 11 ) 431, S.67. ( 47) BSG Urt. v. 23.7. 1992 NZA 1993, 621ff.. ( 48) BSG Urt. v. 28.06. 1995 E 76, 162, 164f. ( 49) BSG Urt. v. 30.05. 1978 E 46, 203. 206. ( 50) BSG Urt. v. 28. 06. 1995 E 76, 162, 164f.; BSG Urt. v. 21.03. 1 996 E 78, 109, 114.
( 51) SozR 4-2500 §47 Nr.2. ( 52)
Waltermann, Abschied vom Normalarbeitsverhältnis?, Gutachten B
für den 68.DJT, 2010, S.B82. ( 53) Bieback, a.a. O., S.637. Bosch, 17 ( 11 ) 431, S.68 で は 旧 東 ド イ ツ で は 一 九 五 二 年 ― 一 九 七 一 年 生 ま れ の 男 性 三 一 ・ 四 %、 女 性 四八 ・ 〇%が六〇〇ユーロ未満の低年金になるのではないか、と予測されている。 ( 54) Welti, Abschied vom Normalarbeitsverhältnis?: Neue Beschäftigungsformen, Diskontinuität von Lebensläufen und das Sozial- un d A rb eit sr ec ht , S G b 20 10 , S .44 4; B ie ba ck , a .a.O ., S. 63 2ff .; G old ba ch , M ög lic hk eit en u nd G re nz en d er B er ufs un fä ig ke its ab -sicherung, BerAVG 5/2009, S. 412ff.. ( 55) たとえば、 Giesecke und Wotschack, Flexibilisierung in Zeiten der Krise: Verlierer sind junge und gering qualifizierte Be
-schäftigte WZBrief Arebit, 2009.
( 56) K alin a un d W ein ko pf, K on ze ntr ier t s ich d ie ste ig en de N ied rig loh nb es ch äft ig un g in D eu tsc hla nd a uf aty pis h B es ch äft ig te ?, ZAF 4/2008, 447ff.. ( 57) B ieb ac k, a.a . O ., S .63 3. A uc h M er te n, A rm ut sfe ste A lte rs sic he ru ng u nd V er fa ss un gs re ch t, D eu tsc he R en te nv er sic he ru ng 2008, S.382, 385. ( 58) R isc he , D ie A bs ich er un g de s E rw er bs m in de ru ng sr isik os – H an dlu ng sb ed ar f u nd R efo rm op tio ne n R V ak tu ell, 1 /2 01 0, S.2 , 8 は、六七歳に年金開始年齢が引き上げられると、障害年金受給者には貧困のリスクが高まることを指摘する。 ( 59)
Bosch, a.a. O., Ausschlussdrucksache 17
( 11 ) 431, S.65ff.. ( 60)
DGB, Schriftliche Stellungnahme, Ausschlussdrucksache 17
( 11 ) 432, S.43. [付記]本稿は、平成二三年度科学研究費補助金(基盤研究C) 、課題番号 21530055 の助成を受けた研究成果の一部である。 ―うえだ まり・法学部准教授―