国防会議の設置と文民統制
著者
西川 吉光
著者別名
NISHIKAWA Yoshimitsu
雑誌名
国際地域学研究
号
4
ページ
177-197
発行年
2001-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003877/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja国 防 会議 の設 置 と文 民 統 制
西 川 吉 光* 1 は じ め に1952 年4 月、 対 日講和 条 約 の発効 に よっ て日 本 は独立 と主 権 を回 復し た。 し かし 占 領軍 とい う絶 対 権力 に よる後 楯 を失 うに お よん で、 さし もの 吉田 のワ ンマ ン政 権 に も陰 りが 生じ て きた。 吉田 政 権動 揺 の 背景 に は、 その強 引 な政 治手 法 も さる こ となが ら、 片面 講 和 と日米 安 保条 約 とい う彼 の外 交・ 安 全保 障政 策 に対 する 批判 や国 民 世 論 の混迷 があ っ た。 占 領 軍撤 退後 、 日本 の独立 と主権 を維持 する た めの 安 全保 障措 置 とし て、 日米 安 保 条約 によ り引 き続 き米 軍 が駐 留し 日本 の防 衛 を担 当 す る こ とにな り、国 内 にお い て は強力 な治安 維持 機関 とい う 名目 で 保安 庁が 創設 さ れた が、 独立 回 復後 、対 外 防衛 を すべ て外 国軍 隊 に 依存 する こ との是 非 が問 わ れはじ め、再 軍備 問題 が活 発 に論 議 さ れる よ うに なっ た。 そ れは、 駐留 米 軍漸 減 へ の対 処 方 策 と い う よ り も、 あ まりに対 米追 随で は ない か とい う吉田 路線 へ の感 情的 反 発 に拠 る ところ が大 き かっ た。 一 方、国 民 の多 く は新憲 法 の平 和主 義 に 肯定 的で あ り、 自由 党 の現 実 主義 政策 に も理 解を示 し た が、 他面 で は吉田長 期 政権 に対 する “飽 ぎ や、 なし崩 し の再 軍備 方 針 に対 する 漠 たる不 安感 も 生 まれ てい た。 こ うし た時 代 背景 の下 、防 衛論 議 白 熱 の きっ かけ をつ くっ た の は、 講和 条約調 印 直後 か らの 追放 解除 (51年6 月以 降 ) に よる戦 前派 政 治家 達 の政 界復 帰 であ っ た。彼 ら の多 くは吉 田 の姿勢 を対 米 追 随 と糾 弾し 、 改憲 と併 せ て、 独立 国 家 にふ さ わしい 国防 軍 の再 建 と本 格的 国 防機 構 の創設 を 訴 え た ので あ る。 そし て両 派の対 立 と妥 協 の 結果 、 防衛庁 の設 置 と時 を同 じ くし て、内 閣 に国防 会 議が 新設 さ れ るこ とに なっ た。以 降、 政 府 は、 内 局 制度 の存 在 と とも に、 行 政 府 によ る文民 統制 の 重要 な柱 の一 つ とし て、 こ の国 防会 議 の存 在 を強 調 す るこ とに なる が、 そ の良 否 は ともか く、 内局 に よ る文 官 統制 シ ステ ムが 強力 な権 限 を発 揮し た 事 実が存 す るの とは対 照的 に、 国 防会 議 は当 初か ら 機 能不 全 が問 題視 さ れた。 し かし 、 そ の活性 化 の た めの抜本 的改 革 もな さ れぬ ま ま、 結局 、 中曽 根 内 閣 にお い て廃 止さ れ るこ とに なる。 本 稿 で は、 国防 会議 が設 置さ れる に至 っ た経緯 を振 り返 り、文 民 統制 の 主体 であ る内局 との関 連 か ら、同 会 議 が内 抱し てい た諸 問題 点 に つい て分 析し てみ たい。 ゛東 洋 大 学 国 際 地 域 学 部 ;FacultyofRegionalDevelopmentStudies,ToyoUniversity-178 国 際 地域 学研 究 第4 号2001 年3 月 2 改 進 党 の 自 衛 軍 創 設 ・ 国 防 会 議 設 置 要 求1951 年6 月18 日 、公 職 追 放 令 の 改 正 と公 職 資 格 審 査 会 設 置 令 が 公 布 さ れ 、6月20 日 に は 第 一 次 と し て 石 橋 湛 山 、 三 木 武 吉 ら 政 財 界 人 約3,000 人 が 追 放 を 解 除 さ れ、8 月6 日 に は 鳩 山 一 郎 、 河 野 一 郎 ら 個 人 審 査 分 の 追 放 解 除 が 発 表 さ れ た 。 復 帰 し た 者 の 中 で 、 大 麻 唯 男 、 松 村 謙 三 ら 旧 民 政 党 幹 部 は51 年9 月 に新 政 ク ラ ブ を 結 成 し た が 、 小 政 党 に 転 落 し て い た 国 民 民 主 党 に 新 党 樹 立 を 呼 び か け 、52 年2 月8 日 に は 国 民 民 主 党 、 新 政 ク ラ ブ が 合 同 し て 改 進 党 が 結 成 さ れ た 。 改 進 党 は そ の 政 策 大 綱 に 独 立 国 家 の 完 成 や 自 主 外 交 の 確 立 、 安 保 条 約 の 改 正 促 進 と並 ん で 「 自 衛 軍 の 創 設 」を 掲 げ る 等 もっ と も強 く再 軍 備 を 主 張 す る 政 党 で あ っ た1)。 そ し て53 年2 月 の 第4 回 党 大 会 で 同 党 は 「 国 家 自 衛 に 関 す る 態 度 」 を 決 定 (2 月9 日 )、 そ の 中 で 、 統 帥 権 を 内 閣 に置 き 、 管 理 運 用 は 国 会 が 監 督 す る と い う 文 民 統 制 原 則 の 確 立 の 下 に 、 海 外 派 兵 を 行 わ な い 少 数 精 鋭 の 民 主 的 自 衛 軍 設 置 の 構 想 を 定 め る と と も に、 党 内 に 自 衛 機 構 の 調 査 研 究 に 関 す る特 別 委 員 会 を 設 置 す る こ と を 決 定 し た。 こ れ に 基 づ き 芦 田 均 を 委 員 長 と す る 防 衛 特 別 委 員 会 が 発 足 、 同 年7 月24 日 そ の 第 一 回 会 合 が 開 か れ2)、 さ ら に8 月13 日 の 同 委 員 会 で は 、 防 衛 問 題 を 検 討 す る た め「 防 衛 と憲 法 解 釈 の 問 題 」。 ( 座 長 : 清 瀬 一 郎 )、「 防 衛 実 施 に 必 要 な 諸 法 律 問 題 」( 床 次 徳 二 )、 そ れ に 「 防 衛 計 画 と防 衛 生 産 の 問 題 」( 堀 木 鎌 三 ) の 三 つ の 小 委 員 会 が 設 け ら れた3)。 こ の う ち、 清 瀬 の 小 委 員 会 は9 月2 日 の 会 議 で 、憲 法 第9 条 に つ い て 、「 自 衛 軍 の 創 設 は 違 憲 で な い 」 と の 見 解 ( い わ ゆ る「 清 瀬 理 論 」) を 発 表4)。 一 方 、「 防 衛 実 施 に 必 要 な 諸 法 律 問 題 」 を 検 討 す る 小 委 員 会 は9 月4 日 の 会 議 で 、 ① 現 行 憲 法 に は軍 備 に 関 す る 規 定 が な い た め 、 教 育 基 本 法 の 構 想 を 倣 ね、 創 設 さ れ る 自 衛 軍 の 精 神 、 任 務 、 制 限 等 を 定 め る た め、 国 家 防 衛 に 関 す る 「 国 防 基 本 法 」 を 制 定 す る。 ② こ の 「 国 防 基 本 法 」 に は 、 国 防 軍 は 文 民 優 位 と し 、 志 願 兵 制 を採 用 し 、 海 外 派 兵 を 行 わ な い こ と 等 建 軍 精 神 を 明 ら か に す る。 ③現 行 の 保 安 庁 法 は そ の 名 称 に も拘 ら ず 、 そ の ほ と ん ど が 部 隊 に 関 す る 実 体 規 定 で あ る こ と か ら 、 こ れ を 全 廃 し 、 防 衛 に 関 す る 独 立 官 庁 の 設 置 法(「 国 防 省 設 置 法 」) と、 自 衛 軍 に 関 す る 組 織 法(「 国 防 軍 組 織 法 」)の 二 法 と し て 改 正 す る 、 と の 方 針 を 決 定 し た5)。 さ ら に 同 小 委 員 会 は 、 国 防 に 関 す る 基 本 法 とし て 「 自 衛 軍 基 本 法 (案 ) 要 綱 」 を10 月9 日 に 決 定 し た6)。「 自 衛 軍 基 本 法 (案 )要 綱 」の 第6 項 「 自 衛 軍 の 統 率 」 に は、「 自 衛 隊 は国 防 会 議 の 補 佐 に よ り 内 閣 総 理 大 臣 こ れ を 統 率 す る。国 防 会 議 の 構 成 員 は そ の 三 分 の 二 以 上 は 文 民 で な け れ ば な ら な い 」 と の 規 定 が あ り 、7)こ こ に国 防 会 議 設 置 の 構 想 が初 め て 政 治 の 舞 台 に 登 場 す る こ と に な っ た。民 主 的 軍 隊 に お け る 最 高 の 指 揮 監 督 権 の あ り 方 は、 旧 憲 法 に お け る軍 の 統 帥 権 に 該 当 す る とし て 、 改 進 党 は こ の 問 題 を 重 要 視 し 、「 自 衛 軍 の 統 率 権 は 内 閣 総 理 大 臣 が 有 す べ き も の 」と の 立 場 を 明 確 に さ せ た が 、 一 方 に お い て 同 党 は 、 そ れ まで の 吉 田 の 専 断 的 と も 言 え る 政 治 手 法 に 反 発 し 、 総 理 大 臣 の 安 全 保 障 問 題 に 対 す る 独 断 専 行 を 抑 制 す る必 要 性 につ い て も こ れ を 深 刻 に受 け と め 、 そ の た め の 機 関 と し て 国 防 会 議 の 設 置 を 想 起 し た の で あ っ た 。 自 由 、 改 進 、 日 本 自 由 党 の 三 党 に よ る 防 衛 折 衝 の 際 、 改 進 党 代 表 議 員 を 補 佐 し た 宮 本 吉 夫 は 、
「 国 防会議 は、 戦 前の い わ ゆる統 帥権 に当 た る自衛 隊 の統率 につい て そ の抑制 力 とし て着 想し 、 特 にい わ ゆる防衛 出動 の 可否 を諮 問 す る機 関 とし ての 意義 を重 視 し、 そ の ため、 国防 会議 の 構成 員 は、 そ の3 分 の2 以 上 は文 民で な け れ ばな ら ない」8) と述 べて い るが、 この時 期、 改 進 党 が国 防会 議 の設 置 を構想 し た理 由 は、 そ の後、 政府 や 防衛 関 係 者 が国 防会 議設 置 の目的 に 挙げ る「 文民 統制 の確 保 」や国 防 政策 の 「総 合 調整」 で は な く、 吉 田総 理 の ワン マ ンさ を牽 制 す る と と もに 、戦 前 の 枢 密 院的 な 機 構 を 設 け た い との 考 え に基 づ く も ので あっ た9)。一般 に、国防 会 議 はア メ リカ の国 家安 全保 障 会議 や 英国 の国 防 委員 会 をモ デ ルに創 設 さ れ た とさ れ、事 実、 保安 庁 の法 案作 成 に際 し て も こうし た諸 外国 の機関 の 構成 や任 務 が参考 にさ れた が、 少 なく と も最 初に 国防 会議 設 置 を提 言 し た改 進党 に は、 西 側諸 国 と類 似 の機 関 を日本 に導入 し よう とい う直 接的 な意 図 はな かっ た ので あ る。 3 三 党 防 衛 折 衝 こ の間、9 月27 日 には吉 田・重光 会 談 が行 わ れ た。 当時 、吉 田 内閣 はMSA 協 定 にか か る日米 交渉 を 進 めてい た が、 日米 の話 合い と並行 し て、 対米 折 衝 を有利 ならし め るた め国 内保 守政 権 の安 定化 が 必要 であ っ た。 し かし 、 自由 、 改進 両 党間 の感 情 的対 立 は依然 とし て険 し く、 ダレ ス離 日直 後、 重 光改 進党 総裁 は「 吉田 外 交 は破綻 し た 」 と痛切 な 攻撃 を加 える程 で あっ た。 池田 訪米 を控 えて、 こ の険 悪な 関係 を調 整 す る動 きが財 界 及 び両 党閥 の 保守提 携 派 を中 心 に進 め られ た結果 、 実現 し た の が、 鎌倉 の重 光邸 に おけ る この 自由 党 党首 吉田 と改進 党総 裁重 光 葵 の党 首会 談で あっ た10)。 こ の会談 にお いて 、 自衛隊 創 設 と長 期 防衛 計 画 の策定 で両 者 は合 意 し、 「現 在 の国 際情勢 及 び国 内に 起 こ りつ つ あ る民族 の独立 精 神 に か んが み、 この 際自衛 力 を増 強 す る 方針 を明 確 にし、 駐留 軍 の漸 減 に即 応 し、 か つ国 力 に応じ た長 期 の 防衛 計 画を 樹立 す る。 こ れと ともに、 さ し あた り保 安庁 法 を改 正し 、 保安 隊 を自 衛隊 に改 め、直 接 侵 略に対 する防 衛 をそ の任務 に 付加 す る もの とす る」 との合 意 文書 が 確認 さ れ、 爾後 、 この 具体 化 の た めに両 党 が幹事 長 を中 心 に し て協議 す るこ ととなっ た。 合 意後 の11月24日、 改 進党 は先 に 防衛 特 別委 員会 の小委員 会 が 決定 し た「 自衛 軍基 本 法 (案) 要 綱 」 を党 とし て承 認、 自 衛 のた めの 軍備 保 持 は合 憲 であ るこ と を確認 す る と ともに、(1 ) 保安 庁 法 の改正 に当た っ て は、 自衛 隊 は外 国 の直 接 及 び間 接侵 略 に対 す る防衛 を主任 務 とす る軍隊 た る こと を基調 とし て 、 国防 全般 の 構想 を明 ら か にし、 必 要 な法規 の制 定 を図 る こ と (2) 保安 庁 及 び保安 庁 法 の名称 は適切 な もの に変更 し、 保安 庁 は その 重大 性 に鑑 み、 新 たに設 置 法 を設 け独立 し た機関 とす る こ と (3) 自衛隊 に関 する 組織 法に は自 衛軍 基 本 法 要綱 の趣 旨 を入 れ るこ と の3 項 目 を、 防 衛折 衝 に臨 む同 党 の基 本 方針 とし た11)。 そし て12月3 日 から 自由、改進、さ らに 日 本自 由党 も加 わっ て保守 三 党 の防衛 折 衝 が開始 さ れた。 折 衝 は延 べ19 回に わた って 続け ら れた が、 この 過程 で改 進党 は 先 の「 自衛 軍 基本 法 要綱」に基 づ き、
180 国際 地 域学 研 究 第4 号2001 年3 月 「 内閣 総 理大 臣 は、 内閣 を代 表 して、 国 防 会議 の補 佐に よ り自衛 隊 を統 率 す る」との案 を持 ち出 し 、 国 防会 議 の設 置 を正 式 に要求 し た。 これ に対し 自由党 は、国 防会 議 を設 け る こ とそ れ自体 につ い て は殊更 反 対 す る姿勢 を示 さ な かっ た め、同 会議 の設 置 につ いて は第 一回 の三 党 折衝 で 早々 と合 意 が 成 立 し た。 し かし、 その構 成員 に関し て は、 改進党 の基 本 法要 綱 にあ る「3 分 の2 以 上 は文民 」と す べし との提 案 に対し て 自由 党 は、 そ れで は逆 に3 分の1 の メ ンバ ー は旧軍 人 を含 め て も構 わ ない こ と に な るとい う点 を問 題視 し た。 結論 だけ を先取 り すれ ば、 結局、 国 防会 議 構成 員 に如 何 な る メ ン バ ー を含 め るか とい う問題 に つ いて は、 自 由・改 進両 党 の間 で最 後 まで 意見 の一 致 が 得 ら れず、 い わ ば見 切 り発 車 のか たち で、 国 防会 議 の設 置規定 だ けが (国 防 会議 と は別組 織 であ る防 衛庁 を規 定 し た) 防衛 庁設置 法 の中 に押 し 込 ま れ、 会 議構成 員 の扱 い につ いて は後 日、 別途 の規 定 に よ る もの とさ れ た。 そ のた め、 国 防会 議 に関 する定 めは異例 、変 則的 な もの とな り、 し か も会 議 の設 置 、 開 催 時期 も防 衛庁 ・自 衛隊 の発 足 に比 べ大幅 に ずれ込 んで し まう こ とに な るので あ る。 4 保 安 庁 の 認 識 さ て、12 月16日 の防衛 折 衝で 、 国防 会議 の構 成員 を どう す るか等 一部 の 問題 を 除 き、 新た に自 衛 軍 を創設 する とい う基 本的 な方 針 につ い て は三党 閥 の合 意 が成 立。 こ れを受 け自 由党 は、三 党 了 解 事 項 を もとに保安 庁 法改 正 に関 す る「 改正 要点20項 目」 を 作成し た。 この 「改正 要点20 項目 」 で は 国 防 会議 設 置に つい て 次の よう な考 え方 が示さ れ てい た。 要綱 第6 自 衛 軍 は、 国 防会 議 の 補佐 に より内閣 を代 表 す る内 閣総 理大 臣が 指揮 監 督 す る こ と 要綱 第11 内 閣総 理大 臣 は、 国防 に 関 する基本 政 策、 防衛 出動 の可否 そ の他 防衛上 の重 要 事項 に つい て、 国 防会 議 の補 佐 を受 け るもの と する こ と 要綱 第12 国防 会 議 は、内閣 総理 大 臣 を はじ め、国 防関 係閣 僚、衆・参両 院 議長 等 そ の地 位 に従 っ て当 然就 任 す る もの と専任 者 若干名 を以 て 組織 す るこ と こ れは、 国 防会 議 を総理 大 臣専 断 の抑 制 機関 と する とい う 改進 党 の主張 に、 防 衛政 策 審 議 の た め の機 関 とし て同 会 議 の設置 を 考 えよ う と する自由 党 の見 解を 交 えた もの であ っ た。 翌17 日、 自由 党 は こ の「改 正 要点20項 目」 を 保安 庁 に提 示し 、 それ に基づ く保安 庁改 正 要綱 の作 成 を要 請し た。 一 方 、三 党 折 衝 の進捗 状 況 を睨 みつ つ、 既 に保安 庁 で も法改 正 の ため の自主 的検 討 作業 が 庁内 で 進 め ら れてい た が、 そ れ まで の第 一 、 第二 幕 僚監部 に加 えて、 新 たに第 三 幕 僚監部 を 設置 し た場 合 の 三 幕 統 合機 構 の在 り方(い わ ゆる 統幕 設置 問 題)、 制服 組 の内 局幹 部 へ の任 用制 限緩 和 と並 んで 、保 安 庁 が三 党 折 衝 の行方 に つい て最 も強い 関心 を抱 い てい た案 件が 、 こ の国 防会 議 設置 問題 で あ っ た。 そ のた め、 自由党 の 指示 を受 けて の法 案作 成作業 にあ たっ て も、国 防会 議 を めぐ る規定 の仕 方が 重 大 な論 点 となっ た。 そ もそ も保 安庁 は、 国 防会 議 設置 に 消極 的 な認 識 を示 し、 さ らに 同会 議 に民間 人 を 含 める との 構 想 に は強 く反対 し た。保 安 庁 が国 防会 議 設置 に反対 し た理 由 の第一 は、内 閣 と は別 に民 間人 も加 わ っ た国 防 会 議が、 防 衛出 動 の可 否 等重 要 な国防 政策 につ い て総 理 に助 言す るこ と とな れ ば、 そ れ は内
閣 責任 制 に抵 触 する こ とにな る ので は ない か とい う疑 念。 第 二 は、 改 進党 の主 張 す る案で は文 官以 外 の者 、つ まり旧軍 人 を加 え た会 議 とな る 可能性 が高い が、 これ はかっ て の軍 事 参議官 制 度 の復活 に も等 し く、旧 軍人 の 進出 に よっ て現 在 の保 安 庁文官 によ る文官 統 制 の原則 がそ の根底 か ら脅 か さ れ、文民 統制 が全 うさ れ なくな る危 険 性 が 高い こ と。 さ ら に、 そ もそ も諸 外国 の 例 を見て も、民 間 人 を この よう な重 要な国 防審 議 機構 のメ ンバ ーに加 えて い る ところ は ない とい う点 であ っ た。 もっ とも、保 守 三党 の間 で国 防会 議 を設置 す る こ とが既 に決 定的 で あ るな ら ば、 保 安庁 とし て も設 置 そ の もの に頑 強 に抵抗 す る こ とは控 え るが 、 ただ設 け るに あ たっ て は、 文官優 位 の 原則や 内 閣責 任制 を堅 持 す べし との判 断 から、 同 会議 は統 帥権 に 関与 す る補佐 機関 とは せ ず、 総 理 に対 す る単 なる諮 問 機 関 に留 め るべ きだ とし、 その 際、 会 議 の構成 員 も米国 の 国家 安 全保 障会 議 や英 国 の国 防委 員会 と同 様、 あ く まで閣 僚 を主 体 とし た もの と すべ き との立場 を打 ち出し た12)。 こ うした 考 えを も とに53年12月25日 、 保安 庁 は「 保安 庁法 改正 要綱 案 」 を作 成し 、同 日保 守 三党 に こ れを提 出し た13)。同 要 綱 案で は まず「改 正 要点20項 目」に示 さ れて い た「自 衛隊 は国 防 会議 の補 佐 に より内 閣 を代表 する内 閣総 理 大臣 が 指揮 監督 す る」 とのI 項 は除 外さ れ、 か わっ て「 国防 に関 す る総 合的 施策 を審 議 す るた め、国 防 会 議 を置 く」 こと とさ れた。 さ ら に、 国 防会 議 の審 議事項 と し て、 ①国 防 の基本 方 針② 防衛 計 画 の大 綱 ③前 号 の計画 に関 連 す る産業 等 の調 整計 画 の大 綱④ その 他内 閣総 理 大臣 が必要 と認 める重 要事 項 、 が挙 げ ら れ、 そ の構成 員 に つ いて は、 内閣総 理 大臣 、保 安 庁長 官、 外務 大臣 、 大蔵 大臣 、 経 済審 議庁 長 官お よび内閣 官 房長 官 とし 、民 間人 を構 成 員 から 除 外 す る方針 を示し た14)。 さら に、「 国 防会 議 の設 置 は、時期 尚早 で は ない か と考 えら れ る。 また国 防 会 議 の設 置 を保 安 庁法 で 規定 す るか、 単 独 法 とす る か検 討 す る こと」 との参考 意 見 が添 え られ、 諸 外 国 の例 とし て、 英国 の 防衛委 員 会(defensecommittee)お よび米 国 の国 家安 全保 障 会議(nationalsecuritycouncil )の 概要 が添 付 さ れた。 5 民 間 人 ( 学 識 経 験 者 ) 参 加 問 題 国 防 会議 構成 員 から民 間人 が 除外 さ れ てい た こ と、防衛 出 動 の可 否が 諮問 事項 とし て明 記さ れて い なか った こ と等 から、保 安 庁作 成 の 改正 要綱 案 に 改進党 は強 く反発 し た15)。その た め、26日の 三党 折 衝 で は「保 安 庁 の改 正要綱 案 は三 党 折衝 の主 旨に 反し、 折 衝 にお け る審議 の対 象 となら ない 」 と の結 論 となり、 同 月27日、保 守 三党 の 折衝 委 員 は衆 議院 法制 局 に対 して 新 た な要綱 の作 成 を委 嘱 す る こ とに なっ た16)。 こ れを受 け53年12月30 日、 衆議 院 法制局 は「 保 安庁 法 改正 案 要綱」と「 自衛 隊組 織法 案 要綱 」 を作 成し、 三 党 に提 出し た。 こ の「 保安 庁 法改 正案 要綱 」にお け る国 防 会 議に 関 する規 定 ぶり を見 る と、「 国 防会議 は、国 防 に 関 す る重 要事 項 につ き、 必要 に応 じ、 内 閣 総理 大臣 に対 し 意見 を述 べ る こ とがで き る」 とい う文 言 が新 た に つけ 加 えら れた ほ かは、 会議 の基 本的 性格 お よび任 務 は先 に保 安 庁 が作 成し た「 保安 庁 法 改正 要 綱 案」 が ほぼ踏 襲 さ れてお り、 爾 後 、同 案 の規 定が 最終 的 に防 衛 庁設 置法 第62条 とし て確 定 す る こ とに なる。 し かし、 会 議 の構 成員 に 関し て は、保 安 庁 が作 成し た 「保 安庁 法改 正 要綱 案」 が
182 国 際地 域学 研究 第4 号2001 年3 月 閣 僚 の みに 限っ てい た の とは大 き く異 な り、 改進党 の意 見 を反映 さ せ て、 内閣総 理 大臣 、 保 安庁 長 官 、外 務 大臣 、大 蔵大臣 、経済 審議 庁 長官 の閣 僚 に加 え、「 内閣 が両 議 院 の同 意 を得 て任 命 す る文民 た る学識 経 験者 ○人 」 を もっ て 組織 する こ ととさ れた。 改 進党 は衆議 院法 制局 の作 成 し た この「 保安 庁法 改正 案 要綱 」及 び 「自衛 隊 組織 法 案 要綱 」 に対 す る修正 意 見 を指摘 し たう えで 、同 法 制 局 に改め て委嘱 し て「 防衛 省 設置 法案 要綱 」 及 び「 自衛 隊 法 案 要綱 」 を作 成 させ、 同 案 を保安 庁 に 提示 した。 この「 防衛 省設 置 法案 要綱 」 で の国 防会 議 の 規 定 ぶり は、 先 の「保 安庁 法 改正 案 要綱 」 にお ける国 防会 議 構成 員 に関 す る「内 閣 が両 議 院 の同 意 を 得 て 任命 する文民 たる 学識 経験 者○ 人 」 とい う表現 が「 内 閣 が両議 院 の同 意 を得 て任 命 す る学識 経 験 者 ○人 。 但し 、 その三 分 の二 以上 は文民 で なけ れ ぱなら ない こ と」 に改 め ら れ、 民 間人 を会議 構 成 員 に加 えた ば かりで な く、 資 格 要件 とし て の文民 条件 も緩和 さ れ、旧 軍人 の国 防会 議 参加 に大 き く途 を 開 こう とす る もので あっ た。 その 反面、 それ まで会 議 に常 時陪 席 す る もの とさ れてい た統 合 幕僚 会議議 長 及 び各 幕 僚長 に つい て は、「 内 閣総 理大 臣 は、必要 が あ る と認 める とき は随時 関係 大 臣、統 幕議 長お よび各 幕 僚長 また は 関 係 者 を出 席 させ、意見 を 述べ させ るこ とが でき る」と修正 さ れ17)、さ らに 国防 会議 の事 務 は防衛 省 で 処 理 す るが、 事務 を処 理 す る事務 局 を置 くとい う修正 意 見 も加 えら れて いた。 以 後、 改 進党 は この案 をベ ー スに三 党折 衝 に当 たる こ とにな るが、 改進党 が 国 防会議 構 成 員 に学 識 経 験者 を 加 える こと を強 く主 張し た 理由 は、主 とし て次 の よう な もので あっ た。 (1) 自 衛隊 の最 高 指揮 権 を持 つ 内閣 総理 大臣 に過 度 の権力 の集中 す るの を防 ぎ、 特 に 防衛 出 動 が 総 理大 臣 の専 断に よっ て 行 われ る危 険 を防 止 す る( こ れは会 議設 置 の目的 と も共 通 す る) (2) 防衛 計 画 は長期 にわた り 、 かつ一 貫 した 永続性 を必 要 とす るか ら、 内閣 の更 迭 に よっ て 異動 し ない 構成 員 を加 え る必 要 があ る こ と(3 )MSA 受 諾 に伴 う防衛 計 画 の策 定、防衛 生産 の実 施 につ き民 間人 を加 え、かつ 各省 を超 越し た 国防 会 議の 機構 が必 要 で あ るこ と(4 ) 専門 知 識に 乏し い閣 僚 の 他に軍 事 専門 家 を加 えて、 国 防 とい う重 要事 項 を決 定 す る総理 を補 佐さ せ る必 要 があ るこ と か よう な改 進党 の考 え は、 そ の後 の国 会で の防 衛二 法案 審 議にお け るや り 取 りか ら も読 み取 るこ とが で き る。 例 え ば、 改進 党 の三 党防 衛 折衝 のメ ンバ ーで あっ た 須磨 議員 は、54 年4 月28 日 の衆 議 院内 閣委 員 会で の質 疑 で、 次 の よう に述 べ てい る。 「 こ の国 防会 議 が設 けら れ まし た趣 旨 は、 今 までの ど この国 の 法制 に もな い一 つ の特 別 な機 構 と し て設 け ら れたわ けで ござ い ま す。 総 理 大臣 が自衛 隊 を統 御、 統制 い た すた めの 補佐 機 関 とし て こ の 国防会 議 が設 け ら れたわ け であ り ます が、 その狙 い とい たし まし て は、米 国 に あ り ま す国 家 安 全 保障 会 議、 ナショ ナル セ キュ リテ ィカ ウ ン シル とい う よう な もの であ り ます とか、 あ る い は英国 の ミ リタ リ ーコ ミュニ テ ィ、軍 事 審議 会 ( 注: デフェ ン スコ ミ ュニ ティ の誤 り と思 わ れる) と申し ま す か、さ よう な もの と違 っ て、軍 人 ば か りで なく(注 : ナシ ョ ナル セ キュリ テ ィカ ウン シ ル もデ フェ ン スコ ミュ ニ ティ も、軍人 は助 言者 とし て陪席 す るので 、正 確 でな い) そ の機 構 の中 に は国 防 の み
なら ず学識 経験 あ る者若 干名 を加 え まし てヽ こ の国家 の最 も重 要 な る国 防 の一貫 し た永 続性 と申 し ますかヽ そ うい う ものを保 つ こ とが 必 要で あ る という 見解 に立 っ てお るので あ り ます。 また国 防 とい うこ と は一 貫性 の みな ら ずヽ 高度 の機 密保 持が 必 要 であ り ます。し た が って国 防 ・ 軍事 に対 し まし て 練達 堪能 な人 士 が 若干 名 入っ て、 内閣 の運 命 に関 係な く、恒 久性 を 持 った資 格 を 持 ち まし て、 た とえ ば往 年 わが 日 本 にあ り まし た ような 制度 か ら考 え ます と、 枢 密顧問 官 で ござ い ます とかヽ さ よう な一 つの恒 久 性 を持 っ た資 格 を有し て 加 わっ た もの があ り まし て、恒 久性 、 永 続 性 を持 っ た国防 の ご とき重 要な る も のに 参 画さ せ るこ とが必 要で あ る とい う考 えから 出た わけ であ り ます。 …… …私 ど もが 考 え まし た当 初 にお きまして は内閣 総理 大 臣、 国 防大臣 と申し ますか 今 の 保安 長官 、 防衛長 官 、外 務大 臣、 大 蔵 大臣 、 経 済審議長 官 とい う5 名 の閣 僚 は もち ろ んこ れに加 え な けれ ばい かぬ ので あり ますが、か よう な もの で は、米 英 等 の現 在 の制度 そ の ま まで あ り ますか ら、 そ れに恒 久性 のあ る学識 経験 のあ る 者 を6 名 ぐら い加 え る とい う よ う な制度 に いたし て おっ た ので あ り ます。 …… …」 こ れに対し て政 府 側の 答弁 は、 国 防政 策 の一 貫 性や総 理 権限 の抑 制 という 須磨 議員 が 主張 す る設 置目 的 に は同 調せ ず、 あ く まで国 防 政策 の慎重 審 議の た め とい う 線 を維持 し 、 また民 間人 参加 問 題 の是 非 につい て は正面 か ら論じ るこ と を避 け る姿 勢を示 し た。 そし て三党 間 の折 衝 におい て も、 ① 学識 経験 者 を国防 会議 に加 える こ との可 否 、② 国 防会議 に 事務 局 を置 くか否 か、 ③置 く とす れ ば、 こ れを防 衛庁 に置 くべき か内 閣 に置 く べ きか、 のい ず れ につい て も意 見 は一 致 せず、 特 に自由 党 や 政府 (保 安庁 )側 が学 識 経験 者 の参 加 に は強い 難 色を示 し たた めに、 折 衝 は完全 に行 き詰 まる こ と となっ た。 政 府・ 自 由党 が 、学 識 経験 者 を国 防 会議 に加 えるこ と に消極 的 であ っ た理 由 とし て、 宮本吉 夫 は 以 下 の4 点 を挙げ てい る。 (1) 国 防 の基本 方 針等 を決 め る国 家 の重 要 機関 に政府 部 外 の者 を加 える こ とによっ て、 責任 の所 在 が明 確で な くなっ てし まう こ と (2) 民 間人 の 参加 は内 閣責 任制 度 を 崩 す危険 性 があ る こ と (3) 議 長 となる総 理 の権 限が か えっ て強 大 な もの とな りす ぎ ない か (4) 防 衛 の秘 密が 外部 に 漏洩 す る危 険性 が あ るこ と18) 確 か に、 民間人 を含 むこ とで 総理 の 専権 が 防 止で きる とか 、防 衛 政策 に 継続性 を 付与 で きる とい う改 進党 の論理 に は説得 力 を見 出し 難 い。 し か し、 本来、 閣 僚 の みで構 成 さ れるか ら国 防政 策 の一 環性 や責 任 の所 在 が確保 さ れ る、 そ うで な け れば確保 で き ない とい う筋 の もので もない はずだ。 仮 に一 環 性 のない 、責 任所 在 も不 明 な政 策 が執 ら れ たと すれ ば、 そ れ は民 間人 や 旧軍人 の参 画 に起因 す るの で はな く、 内閣制 度 あ るい は日 本 の政 治 シ ステム そ れ自身 の 問題 とい うべ きで あ ろう。 国 防 会 議 の設 置自体 に反 対し 、 また民 間人 を含 め るこ とに も自由 党以 上 に強い 抵抗 姿 勢を示 し た保 安庁 に とっ て より切 迫し た 問題 は、 総理 権 限 の抑 制 や 内閣責 任性 の問 題 で は なく 、旧 軍人 が加 わ る国 防 会議 の存 在が文 官 統制 に対 す る大 き な制 約 となる こ とへの 懸念 であ っ た のだ。 他 方、 改 進党 が学識 経 験者 を 加 える べし と主張 し た第 四 の理 由 は、 当時 、保 安庁 、 防衛 庁 の中 枢 に軍 事専 門家 が 入っ て
184 国 際地 域学研 究 第4 号2001 年3 月 い な かっ た こ とへの 危惧 であ り 、国 防 会議 の審 議が軍 事知 識 に 乏し く片 寄っ た も のに なる こ とへ の 懸 念 か ら生 ま れた もので あ った 。 つ まり、 政 治家た る閣 僚 も、 そし て彼 ら を補 佐 する官 僚 群、 特 に 内局 官官 僚の すべ てが 、職 業軍 人 の 経歴 を持 たない 文官 官 僚で 占 めら れ てい るこ と への不 安 と反 発 であ る。 そ う だと すれ ば、 敢 え て外 部 から 軍事 専門 家た る旧 軍人 を迎 えず と も、例 え ば幕 僚長 ら を常 時 会 議 に陪 席 させ 、軍 事専 門家 が 閣 僚 を十 分に 補佐で きるシ ステ ム を築 くこ とで、 改 進党 の懸 念 も相 当 程 度払 拭 で きた はず であ っ た。し か るに、 内局 の上 位 に位 する 機関 へ の軍人 ら の参 画 を警 戒 す る保 安庁 内局 は、 そ うし た措 置 を打 ち 出 すこ とな く、 むし ろ後述 す る よう に、 逆 に制服 組幹 部 す ら も会 議 か ら排斥 す る方向 に動 い た ので あ る。 い ずれにせ よ、 改進 党 も自由党 も、 と もに文民 統 制 確保 と い う明 確な 意図 か ら国防 会 議設 置 を考 えてい たわ けで はな かっ た こ とは興 味深 い。54 年2 月6 日、保 安庁 は「 自衛 庁 設置 法案 」及 び「 自衛 隊法 案 」 の第一 次案 を 自 由党 に提 出 し た が 、「国 防 会議 の設 置 は不 要」と の基 本的 立場 を変 え ず、仮 に設 置 す る場 合 も、 民 間人 を構成 員 に 加 える こ とは認 め難 く、特 に文 官統 制 へ の影響 を恐 れ、 三分 の一 は文民以 外の旧 軍 人 を加 えよ う と す る改 進 党案 には強 く反対 し 、 国 防会 議 は閣 僚 のみに よる常 任委 員 及 び臨 時委員 で 構 成 す べき との立 場 を貫 い た19)。 そ の後、 保安 庁 は 「自 衛庁 設置 法案 」 の第二 次 案 (54・2・12)、 第三 次 案 (54・2・18 ) を相 次い で作 成 する が、 そ の際 、 従来 の案で は、 新 設さ れ る統 合幕 僚会 議議 長 及 び各 幕 僚長 は 総理 が 必 要 と認 めた時 に の み国防 会 議 へ の出席 と発 言権 が認 め らる とし てい た もの を、 制 服 組 の 要 望 を一 部容 れた 格好 で 、 統合 幕 僚会 議議 長 だ けは常時 会 議に 出席 し、 意 見 を述 べる こ とが で き る 旨 修正 し て い る。 だが、 国 防会 議 へ の民 間人(特 に旧 軍人 )排除 の 方針 は、 引 き続 き これ を堅 持 し た。54 年3 月8 日、 自衛 軍 創設 に かか る三 党 の折衝 は最 終 合意 に至 っ たが、 唯一 国 防会 議 構 成員 の在 り方 だ け は改 進党 と政 府(保 安 庁 )・自 由党閥 で最 後 まで 妥協点 を見 出 すこ と はで きな かっ た。 そ の た め、 防衛 二 法案 の作 成 にあ たっ て は、 とりあ えず国 防会 議 の設 置 及び 任務 の みを 防衛 庁 設 置法 案 中 に規 定 する こ と とし 、 そ の組織 に つい て は各党 で 意見 の合 意 を みたの ち に、 別 の 法律 に よ り定 め る こ と とさ れた。翌9 日、 国 防 会議 の 設置お よび 任務 の みを明 記 し、 組 織事項 につい て は 「国 防 会 議 の構 成 その 他国 防会 議 に関し 必要 な事項 は別 に法律 で定 める」 と規定 さ れた「 防 衛庁 設置 法案 」 が閣 議 決定 さ れ、 自衛 隊 法案 とと もに3 月日 日 に第19国 会に提 出 さ れた。 6 国 会 審 議 と 総 理 経 験 者 の 参 画 衆議 院 での 防衛 二法 案審 議 にお い て は、先 の須磨 議 員 の質問 を除 き、国 防会 議 の問題 はほ とん ど 論 議 の対 象 とは なら なかっ た。 し か る に審議 が参議 院 に移 るや 、 国防 会議 の構 成 を別 の法 律 に委 任 する とし なが ら、その 内容 を規 定し た 法案 が 未だ提示 され てい な い ことが 野党 に よっ て問題 とさ れ、 そ の冒 頭 から両 法 案の審 議 が難 航 す る事 態 となった 。即 ち、5月19 日 から 参議院 内閣 委 員会 で 二 法案 の審 議 が 開始 さ れたが、社会 党 の山 下義 信議 員が 、「 国 防会 議 の構成 員 に関 す る法 案が で きな け れ ば 審議 で きない」 旨発 言 し たこ とが 契機 となっ て国防 会 議の 構成 が 未決 であ るこ とが問題 視さ れ、 野
党側 は国防 会議 の構 成 に関し て あ る程 度権 威 あ る ものが政 府 か ら提示 さ れぬ限 り、 二法 案 の審 議日 程 を協 議 する こ とはで きな い とし たの で あ る。 この事 態 を受 けヽ5月20日、政 府 は未 だ保 安 庁で 検討段 階 に あ る国防 会 議構 成員 に 関 する同 庁 試案 を内 閣委 員会 に提 出し たが、未定 稿 で は審 議対 象 と はなら ない として 野党 はこ れに納 得し な かっ た。 し か も、 同試 案 にお い て も構成 員 に は民 間 人 が含 まれず、 関 係閣 僚5 人 だけ とさ れてい た こ とに改 進党 サイド も反発 し、 これ は「民 間 学識 経 験者 を国 防 会議 の メン バ ーに加 える」 とし た三 党 折衝 で の合 意 を反故 に する もの だ との党 声明 を発 表し た(21日 )20)。 譲 歩 を迫 ら れた政 府 は22日、 正式 の保 安庁 法案 を内 閣委 員会 に提 示し たが、 先 の 試案 との違い は、 副 総理 た る国 務大 臣 を加 え て構成 員 を6 人 とし た だけ で、「そ の他 の関 係者 を会議 に出席 」さ せる こ とがで きる との規 定 の運 用 に よって対 処 可能 との立場 から、 民間人 有 識 者 を構 成員 とし て明文 化 す るこ とに は難 色 を示 した た め、 改進 党 の同 意を得 るこ とはで き なかっ た。 こ の間 も、 国防 会議 構成 員 のあ り 方に つ いて の三 党間 折衝 は随時 重 ね ら れてい たが、 国 会審 議紛 糾 の事 態 を受 けて三 党 が急 ぎ折 衝 を重 ねた 結果、5 月28 日に なっ て 改 進党 の主 張 に自 由 党 が歩 み寄 り、閣 僚以 外 の者 を国 防会 議 の構 成員 に加 え るこ と になっ た(「国 防会 議 の 構成 等に 関 す る件 」閣議 決 定)。吉田 訪米 の 手土産 とす るた め、防 衛二 法 案 を どうして も成 立 さ せ たい とい う思 惑 が絡 んで の 自由 党側 の譲 歩で あっ た。 同 日、 緒 方副 総 理 は参議 院内 閣委 員 会 に合 意内 容 を報 告し た が、国 防 会 議 の構成 員 は、副 総理 た る国務 大 臣、 防 衛 庁長 官、 外務 大臣 、 大蔵 大 臣、 経 済審 議庁 長官 に加 え、 「内 閣 が両議 院 の同 意 を得て任 命 す る識 見 の 高い練 達 の者若 干 名」が付 け 加 えら れた。 そ の代 わ り、 三 党 間 の了 解 事項 とし て、 さし あた り「識 見 の高 い練 達 の もの」とは、「総 理大 臣 の経 験 のあ る者 に 限 る」こ とが確 認 さ れた(当時 、 こ れに該 当 し た の は、 片 山哲 と芦 田均 の2 人 )。 旧軍 人 を含 む純 然 た る民 間人 を加 え るとい う改 進党 の 主張 を丸呑 みす るこ とに は抵 抗し 、 総理 経験 者 とい う限 定 を付 す るこ とで純 然 た る民 間人 を構成 員 か ら排 除 し よう との自 由党 苦 心 の妥 協策 で あっ た21)。 し か も、緒 方副総 理 は この修 正措 置 に つい て、「 閣 僚以 外 の 者 を含 め るこ とにし た の は総理 の権 限 が強 大 にな り過 ぎ る恐 れが あ るか ら これ を牽 制 する 意味で し た ので はな い」 として 改進 党 の主 張 を 引 用 す る こと を避 け、識 見 が高 い練 達 な人 材 の知 識 と経験 に よっ て 「判 断 の正鵠 を一 層 期 す るこ と を狙 い とし た も ので あ る」 旨 の説 明 に 終 始し た22)。 こう し た 答 弁 方 針 は吉 田 政 権 にお い て維 持 さ れ23)、“慎 重審 議 の必 要性”に加 え、 次 第 に“ 文民 統制 上 の要請 ”が 国防 会 議創設 の理 由 として 前面 に押 し 出さ れる ことに な る。 審 議再 開 後 の54年5 月31日 、緒 方 は参 議院 内 閣委 員会 にお い て、 次 の よう に述 べて い る。 「 … … この 国防 会議 の 最 もはっ きりし た ウェ イト とい う もの は、 これ はい わ ゆる政 治が 軍事 に優 位 す る、 統合 幕 僚会議 にお きまし て武 力 行 使 の方 針が専 門的 に決 めら れ まし て も、 それ を政 治的 に 判 断 す るた めに この会 議 が必 要 な んで、 ここ にお いて この政 治 が軍 事 を 或い は産 業 の面 から、 或 い は外 交 の面 から そ れぞ れの意 見 を加 え まし て こ こに判 断 を下 す。而 も、そ れは もう一 度閣 議 を経 て、 国民 に向 かっ て の責任 は内閣 が と るの で まり ますけ れど も、 その 内閣 の 国 防或 い は防衛 に関 す る考 え方 は、 大 体 こ の国 防 会議 に お い て形 作 る とい う 意味 に お い て 非 常 な ウェ イ ト が こ こ に あ る ので
186 国 際地 域学 研究 第4 号2001 年3 月 す」。55 年6 月27日 に は鳩 山総 理 も、「国 防 会議 の設置 の 目的 は、 昔 の よう な軍閥 が で き ない よ う に す るた め、 政治力 が支配 的 に な るよう な こ とを目的 とし た もの と考 え てお り ます」 と述 べ、 文民 統 制 確 保 を国 防会 議設 置 の目的 に掲 げ る方針 は、 次期 政権 に も継承 さ れていっ た。 三 党 妥協 の 成立 に よ り、54年6 月9 日 に 防衛 二法 案 は成 立、 国 防会議 に関 し て は取 り合 え ずそ の設 置及 び任 務 だ け が 「防 衛 庁設 置 法」 の中 で先行 的 に定 めら れ たので あっ た。 ところで 、 防衛 庁設 置 法案 提 出 後、 保 安 庁 も国 防会 議 の構成 に関 する検 討 を継 続 して おり、54 年5 月、 保安 庁 官房 法規 課 は「 国 防 会議 構 成 に 関 す る法 律 案」 を取 り ま とめ たが、 ここで も国 防会 議 の構成 員 は閣 僚 に限 る もの とさ れて い た。 ま た この 法規課 案 で は、先 の 「 自衛庁 設 置法 案」 同様、 統 合 幕僚会 議 議長 は常時 会議 に 出 席し て意 見 を述 べ る こ とが 出来 る旨、 さ らに、 必 要 があ る時 は各幕 僚長 その 他の関 係 者 を出席 さ せ 、 意見 を 述 べさ せ る こ とがで き ると規 定し て いた 。 し かる に、そ の後 の庁 内審 議 にお い て、構 成員 を閣 僚に 限 る ことに つい て は変更 を見 な かっ た が。 「 統合 幕 僚会 議議長 の常時 出 席」 は「必 要 があ る と認 める時 は統 合幕 僚会 議 議長 そ の他 の 関 係者 を 出席 さ せ意 見 を述 べ させ る こ とがで き る」旨に修正 された ほ か、「 陸 上、海 上、 航 空各 幕 僚長 を会 議 に 出席 さ せ るこ とがで きる」 との規定 は削 除さ れ、さ ら に「 構成 員 に副総 理 であ る国 務 大 臣 を加 え る」 旨を追 加 し たう えで、 同 案 を保安 庁 の正 式案 とし て保 守三 党 に提 出し て い る。 構成 員 を閣 僚 に 限定 し て い る以 上、 この保 安 庁 案 も当然 、 改進党 の受 け容 れる とこ ろ とは なら な かっ た24)。 7 「 国 防 会 議 の 構 成 等 に 関 す る 法 律 案 」 の 制 定 防 衛二 法 案 の審 議が 進 めら れ たこ の時 期 は、保 全経 済会 事 件や造 船 疑獄 の摘 発 、指 揮 権 発 動等 で 吉田 政 権 は大 き く傾 き、 もは や自 由党 一 党で の政権 維 持 は不可 能 と の危機 感 が政 界 を覆 い、 保 守 合 同 へ 向 けて の動 きが本 格的し た時 期で もあっ た。54年3 月28 日、緒 方 副総 理 は自 由・ 改 進両 党 の解 党 に よる保 守 合同 を提唱 、4 月13日 に は「保 守 合同 は爛頭 の急務 」と の声明 を発 し、 同 日 佐 藤幹 事 長 が 松 村謙 三 改 進党 幹 事長 に「 自改 両党 の解党 、新党 結 成、 総裁 公 選」を申し 入 れた。 改 進 党 内で は、 芦 田均 らの 自・改連 携 派 と三 木 武夫 ら革新 派の反吉 田路 線 が対 立し て い たが、5 月29日 に は 自由・改 進・日 本自 由三 党 に よる新党 結成 三党 交 渉委 員会 が発足 、6 月12日 に は「自 主的 防 衛体 制 の整 備 」。 「 憲 法改正 を含 む占 領政 策 に基 づ く諸 制度 の再 検討」 等5 項 目 の政 策大 綱 の基本 構 想 で も合 意 を 見 た。そ の後 、吉 田の引 退 を合 同 の 前提 とする改 進党 と、そ れに同 調 す る日 自党 の態 度 が固 く、6 月23 日 に話 合 い は決裂 す るが、 岸 信 介ら が 新党 結成 の推 進力 と なり、II 月23日 に改 進・ 日 自両党 は解 党 し 、翌24 日、 鳩 山派37名 の自 由党 脱 党 者を加 えて日本 民 主党 が 結成 さ れた。54年12 月10日 吉田 内 閣 は総辞 職 し、 鳩山 一郎 の 日本 民 主党 内 閣が成 立 する。 こ うし た政 局の 変動 や総 選 挙 によ っ て、 先 の閣 議決 定 に基 づ く国防 会議 の 構成 に関 する法 案 の国 会 提 出 も遅 れがち となっ た。 だが 、 防衛6 ヶ 年計 画策 定 等の 必要 から 、第 二 次鳩 山内 閣 は自 由 党 と の了 解が完 全 に はつ かない ま ま、55年5 月30日、「 国防 会 議 の構成 等 に関 す る法律 案 」を 第22国 会 に 提 出し た。 同 法案 は、 第19回 国会 中 の三 党合 意を基 礎 に作 成さ れ、 国 防会 議 の構成 は、議 長 で あ る
総 理大 臣 の他ヽ 副総 理 た る国務 大臣ヽ 外務 大 臣ヽ 大蔵 大臣 、 防衛 庁 長官 、 経 済企画 庁長 官 の5 閣僚 とヽ 任期3 年の 識見 の高 い練 達 の者5 名以 内 の議 員で 組 織す る こ と、 内 閣総 理 大臣官 房 に国 防会 議 事務 局 を置 く こと とさ れた。 民間人 の 秘 密保持 義 務 が規定 さ れた ほ か、 国防 会議 に関 する必 要 な事 項 は政令 で定 め る という委 任 規定 に 基 づ き、幹事 及 び幹 事 会 を設 け る構 想 も練 ら れてい た25)。また 内 局 の意向 を踏 まえてヽ 結局 、統 合幕 僚 会議 議 長 の常時 陪席 は見送 ら れ る こ ととな り、「 議 長 は、必 要 があ る と認 める時 は、 関係 の国 務 大 臣、 統合 幕 僚会 議議 長 そ の他 の関 係者 を 会議 に出 席さ せ、 意 見 を述 べさ せ るこ と もで き る」(「 国防 会 議 の構 成 等 に関 す る法 律」案 第8 条) との規定 に とど まった。 「 国防 会議 の構 成 等に 関 す る法律 案 」の審 議 は6 月16日 から 衆議 院 内閣 委 員会 で始 まっ た が、 かっ て与 党 とし て国 防会 議 への民 間人 参 加 に 反対 し た自由 党 は、 今度 は野 党 の 立場 か ら、内 閣責 任 制 を 根 拠に再 び民 間人 の参加 に難 色 を示 し た。 そし て7 月26 日、 自由 党 の江 崎 真澄委 員 か ら、民 間人 の 参画 で国 防政 策 の一 貫性 を持 た せ よう とす るこ とに は無理 が あ る こと、 か つ秘 密漏 洩や 内閣 責任 制 の観点 から、 さ ら には米 国 の国家 安 全 保障 会 議 等諸外 国 を見 て も民 間人 参加 の例 が ない こ と等 を理 由 とし て、同 法案 第6 条中 の「 識 見の 高 い練 達 の者 の中 か ら内閣 が 両 院の 同 意 を得 て 任命 す る者5 人 以 内 」の 規定 を削 除 する 旨の修 正 案 が提 案 さ れた26)。 この 修正 案 に対し 鳩 山 は、「民 間人 が入 っ た方 が よい と自分 は 思う が、 国防 会議 を早 く成 立 させ る必 要 があ るの で、 この 修正 に応じ 」27)るこ と と し 、 翌27日 にこ の修正 案 が内 閣委 員 会で 可 決 さ れたう えで、 同 日 、同 法 案 は衆議 院 を通 過し た。 し かし 、 この 修正 案 も参議 院審 議 最終 日 の30日、 米 軍 に よる オネ スト ジ ョン 導入 問題 を めぐ る社 会党 の反 対 に よる混乱 の た め、 結局 、審 議 未了 廃 案 とな り、責 任 を とっ て杉 原荒 太 防衛庁 長 官 は辞 任 する(7 月31日)。 政府 は国 防会 議 構 成法 案 が流 産し た事 態 に対し 、 便宜 的 措置 として、55 年8 月2 日、 国防 上 の諸問 題 を検討 す るた め「 防衛 閣 僚懇 談会 」を設置 す るこ とを閣 議 決定 した。 構 成 は外 相、 蔵 相、 防衛 、経 企、 農林 、通 算 、 運輸 の7 閣 僚 とし、 必 要に 応じ 、 事務 処理 は官 房 長官 と防衛 事務 次官 が 当た る こ ととさ れた。 その 後、1955年11月 の保守 合同 ・ 自 由民 主 党 の発足 を 経て、56 年1 月、 鳩山 政府 は第24国 会 に前 年 の修 正案 とほ ぼ同 内容 の「国 防 会議 の 構成 等 に関 する法律 案 」(第 二 次 案) を再 提 出し た。 相違 し た の は、 先 の修 正案 で は内閣 官 房 に置 く事 とさ れて いた国 防 会議 事務 局 を 総理 府 の付 属機関 とす る よう改 め た点 だけ であ り、民 間人 を含 めな い 方針 は修正 案 を踏 襲し た。[事 務局 強化 せ よ との意 見強 かっ た こ と を踏 まえて の修 正で あ る こ とを詳 し く] 同法 案 は4 月6 日 か ら衆議 院 内閣委 員会 で審 議 が行 われ、5 月2 日 の衆議 院 本会 議 で原 案 どお り可決、 同 月18日 か ら 参議 院 内閣 委 員 会 の審 議 とな り、6 月3 日 、参議 院本会 議 で も原案 通 り可決 さ れ、56年7 月2 日公 布、同 日施行 さ れ た。2 日 に は 「 国防 会 議事務 局 組織 規程 」(総 理府 令 第57号) も制 定さ れ、 国 防会 議 は内閣 に、同 事務 局 は総 理府 にそ れぞ れ設 置さ れる ことに なっ た。 防衛 庁設 置 法制定 後 約2 年 を経 て、 ようや く その構 成員 も特 定 し、 国 防会 議 は その発足 を迎 えた 。 結 局、 国 防会議 設 置問題 は、 改進 党 が主 張し た旧 軍人 や 民間 人 ら が構成 員 に加 え ら れる こ とはな く、 他面 、軍 事専 門家 で あ る制 服組 幹部 の常時 陪 席 も見 送 ら れ るな ど内 局 の意向 が通 っ た形 で落 着 し た。し かし、国防 会議 の性 格 は曖 昧 な ま まであ り、また その 法的 位 置付 け も極 めて歪 な もので あっ
188 国際 地域 学研 究 第4 号2001 年3 月 た 。 そ もそ も国 防会 議 の設 置を 提案 し た改 進党 は、54年 に自 衛軍 創 設 を決定 し た際 、現 行 憲 法 に は 軍 備 に 関 する 規定 がな いた め、 防 衛官 庁 の設 置法 と自衛 軍 に関 す る組 織法 の上 位 に当 た る法 律 とし て、 国 家防 衛 に関 する 基本 法 の制 定 を提唱 し てい た。 そし て 「防 衛」 の上 位概 念 であ る「 国 防」 事 項 を審 議 す る機関 となる国 防会 議 の規定 は、 か かる基 本 法の 冒頭 に 位置 す べき もの と考 て い た。 だ が、 現 実 に はこ のよ う な基本 法 が制 定 さ れる こと はな く、 し か も国 防会 議 に関 す る定 め は防 衛庁 設 置 法 と構 成員 法 に分 断規 定 さ れてし まっ たた めであ る。 国 家 行政 組織 法 の観点 から す れば、 内 閣に 設置 する国 防 会議 は防衛 庁設 置法以 外 の別個 の法 律 で 規定 す べ き もので あ り、 国防会 議 の構 成 等 に関す る法 律 と併 せ て一 本 の 法律 となす べ きで あ った。 に も拘 ら ず、 こ うし た変則 的 な規 定 に帰 着し た様 は、 国防 会議 の必 要性 や その性 格 を めぐ る論 争 と 政治 的 妥協 の過 程を示 す と と もに、 発足 後 の国防 会議 が 陥っ た っ機 能不 全 の状況 を 暗示 す る か の よ うで もあ っ た。 8 事 務 局 発 足 に 際 し て の 混 乱 国 防 会議 を めぐ る論議 は、 その発 足 後 も事務 局 のあ り方 を めぐ っ て紛 糾 し た。事 務 局 を強 化 す べ し との論 議 との 関連 にお い て、旧 軍人 の参事 官 への起 用問 題 が持 ち上 がっ た か らで あ る28)。国 防 会 議 に関 す る政 府 の構 想 を受 け て策 定 さ れた 「国 防会議 事務 局 組織 規 程」 で は、国 防会 議 事務 局 は専 任 職 員21人 、兼任 職員12人 から な り、専 任職 員 とし て は事 務局 長 の ほ か、「 防衛計 画 」「 防衛 生産 」「 調 査 」 を そ れぞ れ担 当 する参 事官3 名 が主 な構 成員 であ り、 兼任 の 参事 官 に は総 理府 、 法務 、 外 務 、 大 蔵 、 農林 等関 係 各省 の課 長級 をあ て る もの とさ れた。 そし て7 月3 日、 国 防会 議事 務 局長 に弘 岡 謙 二氏 が任 命 さ れた が、 政 府 ・与 党 の一 部 から強 い推 薦 を受 けた 服部 卓四 郎 元陸軍 大 佐 を 防衛 計 画 担 当 の 参事 官 に任命 し、 国 防計 画 の 企画 と調 整 に当 た らせ るとの 案 がに わ かに浮上 し た。 この 問題 は、 国 防会 議構 成員 の みな らず、 その事 務 局 に も旧 軍人 が入 り込 む こ とに警戒 心 を抱 い た防 衛庁 内 局 が強 硬 に服 部 元 大佐 の 起 用に反 対し たた め、 最終 的 に は政府 筋 も同氏 の起 用 を断 念 し て 終幕 す るの だが 、事務 局 長以 外 の 関係 者 の人選 や発令 をす べて 見合 わせ た 煽 りで、 専 任・ 兼 任 参 事官 を含 む事 務 局員 の任 命 が すべ て7 月 下句 にず れ込 んで し まっ た。 服部 卓 四郎 元 陸軍 大佐 起 用 の 動 きは、国防 会議 メンバ ーに学 識 経験 者 とし て旧軍人 を参 画さ せ る途 を封 じ られ た こ とに対 応 す る、 い わ ぱ 次善 策 とし て画 策さ れた もの と推 測で き るが、事 件 の本 質 は、 新国 防 機構 の あり 方 を めぐ っ て の、 文官 官 僚の 支配 を徹 底 させ よ う とす る警察予 備 隊以 来 の旧 内務 省 を中心 とす る内局 官 僚 サ イ ド の思 惑 と、 それ に反 発し て軍 事 専門 家 の参 入 をめざ そう とす る旧軍人 勢力 の対立 にほ かな ら ず、 文 官官 僚 として は、 防衛 庁 の上 級 機関 に旧 軍 人が入 り 込 む事 態 は是 が非で も阻 止し なけ れば な らな かっ た ので あ る。 そし て この事 件 の落 着 を もって、 文官 支 配体 制 に対 す る旧軍人 勢 力 の表 立っ ての 挑戦 は終焉 し、 こ こに 文官 官 僚支 配 の体 制 は確立 す るこ と となる。 なお 、国 防会 議 の事務 運 営 につ い て は、会 議の庶 務 と会 議 の議題 関 係事 務 の処理 を担当 す る事 務 局 に加 え、 諮問 案 を審議 し 、議 長、 議 員 を補 佐す る幹事 (内閣 官 房副長 官 及 び各省 庁 事務 次 官 ) を
会 議 に置 く構想 で あっ たが、 服 部大 佐 起 用問 題 の影響 もあっ て、 幹事 を設置 する「国 防 会議 の 構成 等 に関 す る法律施 行 令」が制 定 さ れた の は、 法律施 行日 より6 ヶ月 も遅 れた57年1 月14 日で あっ た。 こうし て よう や く発足 に漕 ぎ 着け た ものの、 国 防会 議 が本来 の 活動 を推進 し得 る体 制 を整 え る ま で に はさ らに半 年が費 や さ れ、 また 旧軍 人 参 入 への警戒 心 は国 防 会議 事務 局 強化 の動 きを萎 縮さ せ る結 果 と もなっ た。し か も参議 院 選挙 や 日 ソ交 渉 等 も重 なっ て国 防 会議 の初 会 合 は伸 び伸 び とな り、 第 一 回の 国防 会議 開 催が 実現 し たの は56年12月8 日の こ とであっ た。初 会 議 で は国防 会議 の運 営 に つい て自 由 な意見 交換 がな さ れ、「 議 事 運営 規則 」が定 めら れ、 次い で57年1 月19日の 第2 回目 の会 合 で は「 昭和32年 度防衛 力 整備 方 針 」 が審議 さ れ た。 そし て同 年5 月 の第 三 回会 議に お いて「 国 防 の基本 方 針」 が決 定 を見た が、 そ の策 定 は防衛 庁主 導で 進 めら れ た。 原案 の作 成 やそ の実 質審 議 を 行 う だけ の機能 も能力 も国 防会 議事 務 局 に は備 わっ て はお らず、 以 後、 構 想 だけ は幾 度 か浮上 し た もの の、 国防会 議 が廃止 さ れ る まで 事 務 局 の強 化 がなさ れ るこ と は一度 もな かっ た。 9 国 防 会 議 の 運 営 実 態 : 発 足 後 の 活 動 状 況 最後 に、 発足 後 の国 防会 議 の活 動 ぶ りを概 観 して みた い。 先述 の とお り第一 回 の国 防会 議 は1956 年12月 に 開催 さ れ、こ れ とは別 に国 防会 議 議員 懇談 会 が57年5 月以 降 開 か れてい る。議 員懇 談 会 は、 国 防会 議 に諮問 さ れた事 項 又 は将来 諮 問 さ れ るべ き事項 そ の他国 防 に 関 する重 要事 項 につ い て、 国 防 会議 の 構成員 が 自由 な討 議 を行 う場 とし て開 催 さ れて きた もので 、国 防 会 議が 法律 上 の機関 で あ るの に対 して、 懇 談会 は国 防会 議 とは別 個 の事 実上 の会 合 とし て の性 格 を有 す る もの で ある。 その運 営実 態 を見 る と、 議 案の審 議段 階 にお い ては議 員懇 談会 と称 し、 会 議で の決 定事項 があ る 時 は国 防 会議 とする か、懇 談会 を国 防会 議 に切 り替 え る という 慣例 が とら れてい た (但し 、76年 の 「 防衛 計 画大 綱」 の審 議 に際 し て は意 見が 出 さ れ、議案 審 議 の段 階で も懇 談 会 と はせ ず国 防会 議 と 称 す る こ ととさ れた)。 国 防会 議お よび同 議員懇 談 会 の設 置以 後∼ デ タント末 期 に至 る20年 間 (1956∼76 年) の開 催状 況 であ る が、 国防 会議 は37回 開か れて お り、 そ の議 題別 内訳 は次の よ うに な る。 防 衛力 整備 (整備 計 画)16 回 年度 予算 にお け る重 要事項9 回 戦 闘 機・対 潜 哨戒 機7 回 国防 の基 本 方針2 回 そ の他3 回 また、 国防 会議 議員 懇談 会 は61回 開 か れてお り 、そ の内訳 は次 の よう にな って い る。 防 衛力 整備 (整 備計 画 )23 回 国 際 情勢 (軍事 情 勢)17 回 戦 闘 機・対 潜 哨戒 機8 回 年 度予 算 にお け る重要 事項5 回
190 防 衛力 の現 況 その 他 国際 地域 学研 究 第4 号2001 年3 月 4 回4 回 こ の 他、同 期 間中 に国 防 会議 幹事 会 が77回 開か れてい る。 国 防 会議 も議 員 懇談 会 も、 議 題 提案 の関 係 から、 年度 に よっ て 開催 回数 に は著し い 不均 等 が見 ら れ る。国 防会 議 の年平 均 開催 数 は約2 回で あ るが、全 く開催 さ れなかっ た 年 も7 年 、1回 開 催さ れた だ け の年 も同 様 に7 年あ る。議 員 懇 談会 の 年平均 開催 数 は約3 回 で あ るが、 こち ら も全 く開催 さ れ な かっ た 年 が5 年、I 回だ け が4 年。 さ らに 国防会 議お よび議 員 懇 談会 の双 方 と も1 回 も 開 か れ な かっ た 年が3 年、1[回だけ の 開催 が3 年 とい う状 況であ る。 国 防会 議 開催状 況 の乏 し さ もさ る こ となが ら、 そこで 取 り扱 わ れて き た議題 に も片寄 りが あ っ た こ とが窺 える。 まず「 防衛力 の整 備 方針(整 備 計画)」は諮 ら れる べ き当 然 の テー マで あ り、 その 前 提 とな る国 際 (軍事 )情 勢 につ い て も審議 す るこ とに問 題 はな い。 し か るに、 そ こで は一 般 的 全般 的 なな 情勢 が審 議 さ れる に留 まり 、個 々 具体 的な問 題 や特 定国 との関 係 等 は敢 え て諮 るこ と を避 け て きた。 例 えば、「 朝鮮 お よび 南ベ ト ナムの軍 事情 勢 の報告 」(61年)、「米 ソ の核 実験 と軍 縮問 題 」 (62年 )等 に関 する審議 が例外 的 に見 出 せ るに過 ぎな い。 逆 に、 日米 安保 条約 の 改訂 や そ の運 用 問 題 につ い て は一 度 も審 議さ れる こ とは なく、 日中国 交 回復 と台 湾 問題 、 オイ ル ショ ッ ク、 南ベ ト ナ ム の崩 壊、 朝 鮮半島 の 緊 張や中 ソ関 係、200 海里問題 等本来 は「 国防 に 関す る重 要事 項 」とし て、 当 然、 国 防会 議 の場 で審 議 さ れて然 る べ き ものであ ろう が、 い ず れ も諮 ら れ はし なかっ た。 歴 代 政 権 の 防衛 問 題 に対 す る取 り組 み姿 勢 を如 実 に示 すもの で あ るが、 重 要な 案件 であ れ ばあ るほ ど、 会 議 に 諮 か り、慎 重 に審 議 さ れる べき ところ、 そう す る とか えっ て 世論 や 国会 での 審 議 を誘 発 す る と い う 判 断 か ら、 開 催 が見送 ら れ がち に なり、 それが国 防会 議 をさ ら に不 活性 な もの とさ せ る とい う 悪循 環 が存 在 した ので あ る29)。 し か も、 これ は防衛 庁 内局 が 歓迎 す る状 況で もあ っ たの だ。 10 総 括 国 防 会議 の設 置 を提唱 し た改 進党 の考 え とは異 なり、 自 由党 、 日本 民 主党、 そ れ に自 由民 主 党 の 各 政 府 は、 防衛 二 法案及 び国 防会 議 の構成 等 に関 する 法案 審議 の 際 の答弁 にお い て、 同会 議 設 置 の 目 的 を 内閣 総理 大臣 の権 限抑 制 や 国防 政策 の一貫 ・ 継 続性 確保 に は求 め ず、政 治 の軍 事 に対 す る優 先 ( 文民 統 制) と国 防政 策 の総 合 調整 に 見出し た。 だ が、 政府 与党 は もと もと会 議 の設置 に積 極的 で はな かっ たし 、文 民 統制 確保 の 見地 か ら国 防会議 を眺 める意 識 も希 薄で あっ た。 そし て何 より も 保 安 庁 及 び防衛庁 が 国防 会議 の存 在 に冷淡 で あった こ とが、 こ うし た政 府 の消 極的 な 姿勢 を助 長 し た最 大 の要 因 とい えよ う。保 安 庁 は、 政 治的 妥協 の産物 とし て 同会 議 を設 置 する とし て も、 内閣 責 任 制 の 原則 を表 面上 の根 拠 に、 総理 への補 佐 ・助 言 等強 力 な権 限 を会議 に認 める こ とに は反 発し 、 文 官 統制 を全う す べく、 当 た り障 り のない 諮問 機関 とし て の み容認 す る との方 針 を初期 の段階 か ら 打 ち 出し 、 防衛 問題 の争 点化 を 恐 れた 政府 も基本 的 に これ に倣 っ たので あ る。 とこ ろで、 本来 、「 国 防」 の概 念 は、「外 部 からの脅 威 や侵 略 に対し 、 軍事 、非 軍 事 の手 段 に よる
防衛 に よ りこ れ を抑 止 ま たは排 除 しヽ もっ て国 の平 和 と独立 を守 り、 国 の生 存 ( また は安 全) を保 つ こ と」 と理 解 さ れヽ「 軍事力 に よる 防衛 」 の概 念 より もそ の範 囲 は広 く、 かつ 次元 が 高 く、「 国家 安全 保 障」の概念 と同 義 に用 い られ る こ と もある30)。 し か るに、 国防 会 議 の審 議事項 を見 る と、 防 衛 庁 設置 法第62 条2 項 の「防 衛 計画 の 大綱 」 や「 防衛 出動 の 可否 」 に加 え、 第5 号 の「 国防 に関 す る重 要事項 」 が、 自衛 官 定数 の変 更 や 自衛 隊 の編成 装備 に 関 す る ものの み に限定 さ れ る(1972年10 月9 日: 国防 会議 ・閣 議 決定) 等防 衛庁 の 主務 事項 に偏 し た規 定 ぶ りに なっ てい る。 そ の結 果、 あ たか も国 防 を軍事(= 防衛 庁 の所掌 事項 )と同 概 念 とし て捉 え るか の よう な運 用実 態 となっ てし まっ た の であ る。 こ れ は、 政 府・ 与党 にお いて 「 国防 」 を 「防 衛」 より もよ り上位 ・ 広範 な概 念 とし て受 け止 め、 防 衛庁 が担 当 す る防 衛 政策 を含 みっ つ も、省 庁 間 の調整、 連 携 と政 治的 指 導力 の 発揮 に よっ て、防 衛 政策 の上 に 位置 す る、 より包 括的 、 総 合的 な 「国 防 (ない し安 全保 障)」 政策 の審議・樹 立 に国防 会 議 を活用 す る とい う 意識 が終 始希 薄 な た めで あっ た31)。そし て、国 防会 議 の諮 問 機関性 に つい て の 認識 や事 務 局 の扱い に も、 こ の意識 は影 響 を及 ぼし た。 すな わ ち、一 般 の 諮問 機関 に あっ て は、当 該諮 問事 項 に 関連し て の み意見 を述 べる こ と となっ てい るの に対 し、 国 防会 議 の場 合 は「 国防 に関 す る重 要事項 を審議 す る機 関」とさ れ(防衛 庁 設 置法62条 第1 項)、諮 問 事項 に 関連 な く「国 防 に関 す る重 要事 項 につ き、 必要 に応 じ、 内 閣 総理 大臣 に 対し 意見 を述 べ る こ とがで き る」 もの とさ れ た (防衛 庁設 置 法62条 第3 項)。こ の点 、国 防会 議 は一 般の政 府 の諮 問 機 関 より も広い 権 限を持 つ 機関 だ とい う こ とがで き る。 ところ が、 この 第3 項 の表 現の 弱さ に加 え、「 国防 に関 する事項 」が防 衛庁 の 所掌事 項 より も広い 各省庁 横 断的 な 事 項で あ る との認識 の 薄 さや、 さ らに は国防 あ るい は安 全保 障 に関 す る問題 を政 府 全体 とし て検 討 す る とい うニ ーズ が政 治指 導 者 の側 か ら提示 さ れな かっ た こ と もあ って 、国 防会 議 は単 な る諮問 機 関 と同 一 視さ れ、 設置 法62条 第2 項 に定 めた諮問 事 項 に対 す る 答申 ・審 議 の場 とし て運 営さ れた に留 まっ た ので あ る(諮 問 機関性 へ の限定 )。 ま た、国防 会 議事務 局 と他の行 政 機 関 との 関係 につ い ては、「 議長 は、必 要 があ る と認 め る とき は、 関 係行 政 機関 の長 に対 し、資料 又 は情 報 の提 供お よび説明 その 他必 要 な協力 を求 め るこ とがで き る」 (構成 法施 行 令第2 条 ) と規定 さ れてい る だ けで あっ た。 し かし、 国 防会 議 の持 つ総理 への 補佐 ・ 助 言 機能 とい う もの を重 視す る なら ば、 主 務行 政機 関 がな く、 関係 行 政 機関 も多 く なろ う「国 防(な い し )安 全保 障」 に関 する案件 審 議 につ い て、 国 防会議 (事 務 局 ) に何 らか の調 整権 限 を付与 す る 必 要 が当 然 に生じ て く るわけ で、例 え ば 内閣 官 房の 権限規 定 に倣 っ て、「 諮問 さ れた国 防 に関 す る重 要 事項 に係 る必 要な総 合 調整 に 関 す る事 務 」 あ るい は「国 防 に関 す る重 要施 策 に関 す るそ の統一 保 持 上 必 要な総 合 調整 に関 す る事務 」を掌 らせ 、「 内 閣の事 務 を助 け る」こ との是非 も真 剣 に検 討 さ れ てし か るべ きで あっ た ろう32)。 この点 につ いて、 国 防会議 事務 局 長 で あっ た久 保 卓也氏 も、次 の よ うに発 言 し てい る。 「 広 い意 味で の国 防 を国 防会 議 が総 理 に意 見 をい う とし た 場合 に、 個 々 の大臣 は食糧 とか は何 と か は解 る とし て も、 個々 の大 臣 の所 管 行 政 はしっ て ます け れ ど、 国 防 とい う見 地 でい うた め の補佐 機能 が な い んです ね。 国 防会議 に対 す る補 佐機 能 が、… …事 務 局 とい う の は意見 を持っ て はい け な
192 国際 地 域学研究 第4 号2001 年3 月 い、 単 な る資 料 を集 める だけ 、資 料 とい う の は静 態的 な資 料 だ けで、 纏 めた 動態 的 な も のにし て は い け ない か もわ から ない。 そう す る とやっ ぱ り国防 会議 そ の ものを 補佐 す るあ るい は イ グゼ キ ュ ー テ ィプ 組 織 とい う ものが ない よう に感 ず るので す ね」33)。 し かし 、 通常 の諮 問 機関 の範 躊 を出 る こ となく、 総理 大臣 に対 する 補佐、 助 言機 関 とし て の運 用 が なさ れ なかっ た た め、 国 防会 議 及 び同事 務局 に 独自 の情 報収 集活 動 や政策 提 言 をな し 得 る能力 を 付与 さ せ よう とい う機 能強 化 の構 想 も日 の目 を見 るこ とな く終 わっ た。「国 防 」の「基本 方 針 」に 関 す る案 を作 成 す る部 局 が政 府 の何 処 に も存在し な い という 奇妙 な状 況 は、 同会 議 が廃 止 さ れ る まで 続い たの であ る34)。 と ころ で、 内局 文官 は、 国 防会 議 の構 成 員 に学 識 経験者 を 加 える と の構想 を阻 止し 、 さ ら に事 務 局 へ の旧 軍人 の 参加 を も排 除 し た。 前述 し た よう に、 総 理大 臣 の独 裁化 防止 、国 防政 策 の一貫 性 確 保 、 そ れに 軍事専 門家 によ る補 佐 機能 強化 とい う目的 のた めに 国防 会議 の議 員 に閣 僚 の ほか民 間人 を加 え るべ き との論 議 には説 得力 を見 出し 難い。 総 理大臣 の独裁 化 を抑 制 する の は国会 で あ り、 国 務 大臣 の資 格 を有し ない 一民 間人 が抑 制 する こと など不 可能 で あ り、一 貫し た 国防 政策 の樹 立 は国 家 の当然 の責 務 であ っ て民間 人 の有 無 とは別 次元 の問題 とい うべ きであ る。 また、 国 防政 策 に 占 め る軍 事問 題 の ウエ ート の高い こ とから 、軍 事専門 家 を常 時 会議 に 参加 させ、 そ の 意見 を聴 取 すべ き 必 要 性 はこ れ を首 肯 し 得る が、 軍事 専 門家 を敢 え て民間 人 に求 め ねば なら ない 必 然性 は な く、 自 衛 隊 制幹 部 を 会議 陪席 させ 、必 要 に応 じ て発 言 を許 せ ばよい 問題 であ る。 事 実、 国 防会議 が そ のモ デ ル とし た欧米 の会議 体 で は、 軍 の 参謀 総長 や 統合 参謀本 部 議長 ら制 服 のト ップ が会 議 に列 席 す る習 慣 となっ て お り、国 防会 議 にお い て も、 表決権 を有 し ない 統合 幕 僚会 議議長 を 加 え、 そ の意 見 を 開 陳 さ せ るべ き こ とによっ て 処理 すれ ば済 む問題 であ っ た。 そ うで あ る に も拘 ら ず、「国 防会 議 の構 成 等に関 す る法律 」は「 議長 は必 要が あ る と認 める 時 は統 合 幕 僚会 議 議長 を会 議 に出 席さ せ 意見 を述 べ させ るこ とが で きる」(第6 条 )と規定 さ れる に と ど ま り、 統合 幕 僚会 議議長 の国 防会 議 へ の常時 陪 席は否 定 さ れた。 また、 防衛庁 は専任 ・ 兼 任 参事 官 に 加 え、 国 防 会議事 務 局 に も行 政 職 の文 官 を出向 さ せたが 、 事務 局 への 自衛官 の 出向 は こ れを 最 後 ま で 認 め よう と はし な かっ た。 こ うし て、 旧軍 人 、現 職 の制 服組 の双 方を防衛 及 び国 防 機構 の中 枢 から排 除し た内局 文 官 は、 さ ら に国 防 会議 を 防衛庁 の専権 事 項 を再 度審 議 する、 い わば 「屋上 に屋 を架 す」 だ けの機 関 とな す と と もに、与 野党 対 立 を常 に引 き 起 こす 防衛 政策 の オー ソラ イ ズ化 に国防 会議 を利 用し てい く ので あ る(政 策決 定正 当化 機 関 とし て の国 防会 議)。 か か る目 的 と の関連 か ら、 そ の活性 化 に よっ て国 防 会 議 が 独自 の立 場 を打 ち出 す こ とに防 衛庁 は終 始消 極的 であ っ た。 本来 、 体系 的 な国防 ・安 全 保 障 政 策 の構 築 に最 も意 を払 う べ き立 場 の防衛 庁 が、国 防 会議 強化反 対 の先 陣 に位 置し 続 けた ので あ る。 後 発官 庁 とし て の防衛 庁 に とっ て、 国 防会議 事務 局 は官 邸 に近接 し た唯一 の 出先 ポスト であ りな が ら 、安 全保 障 政策 樹立 のた めの 機関 へ の脱皮 を めざ すこ と はお ろか、 政 治指 導者 に国 防 の重 要性 を 啓蒙 ・ 説 得 する場 とし て、 国 防会 議 を活 用 する構 想 をす ら防衛 庁 は持 つ こ とがな かっ た。 防 衛庁 に とっ て国 防会議 及 び その事 務 局 は、 せい ぜい 、数年 お き に必 要 とな る防衛力 整 備計 画 の策 定 に対 す