1. 背景と研究目的 1.1 SNSの動向
最近、SNS(Social Networking Service)1 の利用者 が急増している。mixi、モバゲータウン(以下、モバ ゲー)、グリーは会員数が2000万人を超えた2 。Face-bookの利用者数も2011年9月に500万人を超えた。マ イクロブログの代表であるTwitterは、1800∼3000万 人が国内で利用していると言われ浸透度ではmixiを しのぐとされる3 。 これらのサービスは、機能的には類似性が高まりつ つある。たとえば、多くのSNSでゲームや日記の機能 が取り入れられている。Twitterの「つぶやき」機能 は、mixi、モバゲー、グリーにも導入された。類似し た機能を提供するサービスには、ネットワーク外部性 (利用者が多いことが利用者の効用を高める効果)が 働くと考えられ、今後も多くのサービスが併存してい くとは考えにくい。
論
「強いつながり」と「弱いつながり」のSNS
―個人情報の開示と対人関係の比較―
The “Strong-tied” SNS and “Weak-tied” SNS:
A Comparison Regarding the Disclosure of Personal Information and Personal Relationships
石井 健一
*文
* Kenichi ISHII 要 旨 5つのSNSサービス(Facebook、mixi、モバゲータウン、グリー、Twitter)について、個人情報の開 示が利用にどのような影響を与えているのかという視点から分析をおこなった。その結果、既知の友 だちが多く個人情報の開示度が高い「強いつながりのSNS」(Facebook、mixi)と、既知の友だちが少 なく個人情報の開示度が低い「弱いつながりのSNS」(モバゲー、グリー、Twitter)に分かれることが 確認された。「強いつながりのSNS」は既知の対人関係、「弱いつながりのSNS」はネット上の対人関 係と結びついていた。個人情報のうち属性情報の開示はSNSの利用頻度や友だちの数と有意な相関が あったが、識別情報の開示は、既知の友だちの数のみに有意な相関があった。コミュニケーション不 安やプライバシー意識とSNS利用の間には有意な関連はみられなかった。 ABSTRACTThis study compares five Social Networking Services (Facebook, mixi, mobage, Gree, and Twitter) in light of the influences of disclosure of personal information on use patterns. Results indicate that SNSs can be classified into two different types, “strong-tied” SNS and “weak-tied” SNS. Users who disclose more personal identification information are more likely to connect with real world friends, but are less likely to use SNS and make SNS-based relationships. A weak-tied SNS promotes communications only via SNS, while a strong-tied SNS promotes communications with those who are connected in the real world. Disclosure of personal characteristic information is significantly correlated with SNS use and the number of friends, while its counterpart of personal identification information is significantly corre-lated only with the number of off-line friends. No significant correlation was found between psycho-logical factors and the choice of SNS.
しかし、これらのサービスには相違点もある。その 一つが個人情報の開示に対する規定である(表1)。モ バゲーとグリーでは、メールアドレスや電話番号の交 換は規約で禁止されていて、違反すると退会させられ る可能性がある。実名の公開も不可である。mixiで は規約で禁止されてはいないが、メールアドレス、住 所や電話番号を書き込まないことが推奨されている4 。 なお、Twitterは、利用者本人の個人情報の公開につ いての規定はなく、利用者の裁量にまかされている。 一方、Facebookは、今後も実名制を基本に展開して いくとしており5 、他のSNSと対照的である。 このように個人情報の開示をどのように設定するか は、SNSの運用にとっても最も基本的な要素の一つと いえる。本論文では個人情報の開示度の違いがSNS の利用パターンに与えている影響を把握しつつ、主要 なSNSの比較をおこなうことを目的とする。 1.2 関連する先行研究 ここではSNS利用に関連した社会心理学的な研究 を概観する。小寺(2009)は、mixiには「既存の関係の 強化」「知識・情報獲得」「新たな出会い」という機能的 側面があり、このうち既存の関係の強化がmixi利用 の基盤となっていると指摘した。川浦ほか(2005)は、 mixiの利用者に対するアンケート調査の結果から、利 用目的には(a)「人脈形成」因子、(b)「対人関係維持」 因子、(c)「道具」因子の3 因子があるとした。海外の 研究ではCheung, Chiu, & Lee(2011)は、Facebook の利用者を調査して、社会的存在感、娯楽価値、社 会的促進、および集団規範がFacebookの利用意図に 影響を与えているとしている。また、Facebook利用 は大学生にとって社会関係資本の維持と形成に貢献 しているという(Ellison, Steinfield & Lampe, 2007)。 SNSの前身ともいえる「オンラインコミュニティ」の 利用動機には、自己開示、つきあい、情報獲得、娯 楽の四つの因子が見出されており(Ishii, 2008)、ネッ ト上の自己開示は現実の対人関係とは結びつかない バーチャルな関係として機能していた。日韓のオンラ インコミュニティ利用行動を比較した研究結果による と、韓国に比べて日本ではオンラインコミュニティ上 での関係と現実の人間関係との関連が弱く、ネット 上のバーチャルな関係を志向する傾向がみられた (Ishii & Ogasahara, 2007)。
ネット上でバーチャルな関係を志向する日本人のネ ット利用行動の特徴は、過去のいくつかの研究でも報 告されている。富田(2009)は、情報機器を通してバ ーチャルで匿名的な対人関係を楽しむことを「インテ ィメイト・ストレンジャー」とよんでいる。一般に、 日本人はネット上の個人情報の開示に対して消極的 といえる。日本のSNS利用者のうち実名登録している のは、約三割だけという7 。日本人のホームページに は客観的な自己情報の開示(氏名、住所など)が他の 国と比べて少ない一方、日記やエッセイなどの主観的 な自己開示が多い(Ishii, 2004; 石井ほか, 2000)。日本 人はネットへの信頼度が主要国の中で最も低い国の 一つであり、ネットを通じて人と出会う頻度も低い (Ishii & Wu, 2006)。日本の利用者においては、米国 の利用者とは異なり、ネット上の個人情報の開示が 相手への信頼やオフラインやオンラインでのネットワ ークの拡大と関係していない(Yum & Hara 2006)。 このように日本人にインターネット上で匿名的な行動 をとる傾向があるとすると、実名制のFacebookとは異 なるタイプのSNSが受容されやすいとも予想される8 。 ネット上の自己情報の開示とネットの利用行動の 関係については海外では多くの研究がある。Qian & Scott(2007)によると、ブログ利用者について、読み 手の中にオフラインの知り合いがいないブログ利用者 は、知り合いがいるブログ利用者に比べて自己情報の 開示が少ない。一方、Tufekci(2008)によると、プ ライバシーへの不安とSNS上での情報開示の間に統計 的に有意な関係は見られない。また、多くの研究がネ 表1 SNSにおける利用者の個人情報(本人)に関する規定 実名・匿名制 電話番号 メールアドレス Mixi 実名を書かないことを推奨6 全体への公開は不可 全体への公開は不可 Facebook 実名 可能 可能 モバゲータウン 実名は禁止 禁止 禁止 グリー 選択できる 禁止 禁止 Twitter 規定はない 規定はない 可能
ット上の自己開示度の効果を支持している。たとえ ば、ネット上の自己開示度とネットの利用頻度には正 の相関関係があり(Wang, Jackson, & Zhang 2011)、 自己開示度はネット上での積極的な人間関係と相関 がある(Attrill & Jalil, 2011; Park, Jin & Jin, 2011)。 ただし、国内ではSNSでの自己情報の開示に関する研 究はまだほとんどないようである。 1.3 本研究の研究目的と仮説 そこで、本研究では日本国内の主要SNSにおいて 個人情報の開示度が利用者の効用やネット上の対人 関係とどのように関連しているのかをみることを第一 の研究目的とする。 研究目的 1:SNSでは、個人情報の開示度によって、 利用者が得ている効用や対人関係に差異があるの ではないか。 この研究目的のため、本研究ではサービスレベルで の比較と個人レベルでの比較を行う。二つの比較結 果は一致するとは限らない。たとえば、個人情報を開 示する人が多いサービスでは、利用者本人は個人情 報を開示しなくても、他の参加者の個人情報が開示 されているため、SNSを通して対人関係をつくること が容易であるかもしれない。そこで、以下では二つの 比較を別々の仮説として設定する。まず、仮説1-1か ら1-2は個人レベルの比較に関するものである。対面 接触の状況において自己開示は対人関係を発展させ るための基本的な条件の一つとされており(西田 1994)、インターネット上でも自己開示は対人関係を 発展させ(Qian & Scott,2007)、関係の親密さを促進 する(Park, Jin & Jin, 2011)。したがって、個人情報 を積極的に開示している利用者は、SNSでも友だちが 多く利用も活発であると予想する。 [個人の利用行動に関する仮説] 仮説 1-1:SNSでの個人情報の開示度が高い利用者 ほど、SNSの利用頻度が多いであろう。 仮説 1-2:SNSでの個人情報の開示度が高い利用者 ほど、SNSでの友だちが多いであろう。 本論文は個人レベルでみた情報の開示度をみるだ けでなく、5つのSNSのサービスレベルでの情報開示 度の差も検討することも目的とする。そこで、上記の 仮説1-1と1-2に対応して、サービス間の比較に関する 次の仮説を設定する。 [サービス間の比較に関する仮説] 仮説 2-1:個人情報の開示度が高いSNSでは、SNS の利用頻度が多いであろう。 仮説 2-2:個人情報の開示度が高いSNSでは、友だ ちの数が多いであろう。 実名制のFacebookが日本で人気が低い理由とし て、プライバシー意識の高さが利用を阻害している可 能性がある。また、人とのコミュニケーションに対し て不安を感じる人たちは、個人情報を開示するタイプ のSNSを避ける傾向があるのかもしれない。こうした 傾向は、携帯電話利用に関する研究では支持されて いる。たとえば、コミュニケーション不安の高い人は 携帯電話で通話よりテキスト・メッセージを使う傾向 がある(Pierce, 2009)。社会的スキルが低い人は携帯 電話で通話を避けてメールを使う傾向がある(Ishii, 2006)。これらはSNSに関するものではないが、SNS においてもコミュニケーション不安やプライバシー意 識がSNSの利用を抑制している可能性がある。本論文 では、この点を第二の研究目的として検証する。 研究目的 2:コミュニケーション不安やプライバシ ー意識によって利用するSNSのタイプが異なるので はないか。 具体的には、以下の仮説を設定する。 [個人の利用行動に関する仮説] 仮説 3-1:コミュニケーション不安やプライバシー 意識が高い人は、SNSにおける自己開示度が低い であろう。 仮説 3-2:コミュニケーション不安やプライバシー 意識が高い人は、SNSの利用頻度が少ないであろ う。 [サービス間の比較に関する仮説] 仮説 4:個人情報の開示度が低いSNSの利用者は、 開示度が高いSNSの利用者に比べて、コミュニケー ション不安やプライバシー意識が相対的に高いであ ろう。
2. 方法 調査会社に依頼して15-69歳のインターネットモニ ターを対象にスクリーニング調査を行い、SNSをふだ ん使っていて、(1)mixi、(2)モバゲータウン、(3)グ リー、(4)Twitter、(5)Facebookのいずれかを最も 多く使っていると答えた回答者各150人(合計750人) を選んだ。この750人を対象として2011年2月24-25日 に本調査を行った。回答者は男性が57.5%、平均年齢 は38.9歳(標準偏差9.7)であった(年齢や性別の割り 当ては行わなかった)。学歴は大学卒以上(大学院含 む)が53.5%、職業はフルタイム62.4%, 専業主婦(夫) 11.6%、学生11.1%であった9 。各サービスの利用者の 特徴は、表2のとおりである。 質問項目は、最も多く使っているSNSの利用頻度 (閲覧および書き込み)、メール等のメディア利用、 SNSでの友人の数(合計およびその中でのもともとの 知り合いの数)、SNSで開示している個人情報の内容、 SNSの利用と満足、利用者の心理特性の項目である。 SNSの利用から得ている効用については26問を五段階 で評定してもらった。なお、この項目の作成にあたっ ては、小寺(2009)および独立行政法人・通信総合研 究所(2003)の質問票を参考にした。さらに「コミュニ ケーション不安」に関する質問を西田(1994)を参考に して3問10 で尺度を構成し(α=0.853)、プライバシー 意識は4問11 で加算尺度をつくった(α=0.636)。 3. 結果 3.1 各サービスの利用者の特徴 五つのサービスの利用者各150人について、利用頻 度と利用者の属性を比較した(表2)。利用頻度をみる と、Twitterが書き込みと閲覧のどちらについても圧 倒的に多い。これに対してFacebookは、書き込み・ 閲覧とも最も少ない。利用者の属性についてみると、 性別では差はないが、グリー、Facebook、Twitterの 利用者の年齢が高く、モバゲーとmixiが低い12 。また、 Facebook利用者の学歴と年収が高い。Facebookは高 学歴・高収入で海外の情報に関心の高い層を中心に 使われていると考えられる。 次に5つのサービスの重複利用状況についてみる。 利用者が普段使っているSNSについて重複利用をクロ ス表で検討したところ、χ2 検定で重複が統計的に有意 に多くみられた組み合わせは、「TwitterとFacebook」 (χ2 =16.9, df=1, p<.001)、「Twitterとmixi」(χ2 =13.9, df=1, p<.001)、「モバゲーとグリー」(χ2 =44.3, df=1, p<.001)の三つであった。最初の二つは、Twitterが mixiおよびFacebookと連携機能を持っているためと 考えられる。ゲーム利用が多いモバゲーとグリーは、 提供しているゲームが異なるためゲーム愛好者にとっ て補完関係があるのであろう。ただし、機能的に似て いると考えられるFacebookとmixiの重複利用率は統 計的に有意に少なく(χ2 =6.2, df=1, p<.05)、この二つ は互いに代替関係にあると考えられる。Facebookの 利用者が日本で伸び悩んでいる一つの原因は、mixi の利用者がFacebookに移行しない(あるいは、できな い)ためとも考えられる。 3.2 利用者が得ている効用 SNSから利用者がどのような効用を得ているのかを みるため、SNSの利用と満足に関する26項目を主因子 法で因子分析した。得られた三因子をバリマックス回 転したところ、次のような解が得られた。第一因子 は、「違う自分になれる」「ネット上の友だちをたくさ 表2 SNS利用頻度と利用者のプロフィール(各N=150) 注 *1月当たり回数 * p<.05, ** p<.01, *** p<.001 モバゲー グリー Twitter 検定結果 13.24 13.00 16.08 F=11.3*** 3.15 2.83 9.13 F=19.9*** 61.3% 60.0% 58.7% χ2=8.1 ns 14.1 14.1 14.6 F=8.0*** 578 563 570 χ2 =2.9* mixi Facebook 閲覧の頻度 *1 11.75 6.6 書き込み頻度 *1 2.00 1.89 男性比率 47.3% 60.0% 年齢平均 37.2 40.2 36.9 40.2 39.9 F=4.5** 学歴(教育年数) 14.8 15.2 世帯年収(万円) 558 656
んつくるのが楽しい」「他の人に悩みや苦労を聞いても らえる」「他の人の精神的な助けになれる」「素直で隠 さない自分を出せる」「まわりにはいない自分の好みに 合う人と知り合える」「情報発信者を親しい友達や相 談相手のように感じる」の7項目が0.65以上の因子負荷 量であり、ネットでの交流に関する因子と解釈され た。第二因子は、「いま世の中で起こっている出来事 がわかる」「仕事や勉強に役立つ情報が手に入る」「趣 味やレジャーに役立つ情報が手に入る」「新しい知識 を得ることができる」「最近、世の中で何が流行して いるか知ることができる」「自分の力だけでは集めるこ とのできない情報を得ることができる」の5項目が0.7 以上の因子負荷量であり、情報・知識の獲得にかか わる因子と解釈された。第三因子は、「楽しいと感じ る」「退屈なときの暇つぶしになる」「つい習慣でアク セスしてしまう」の3項目が0.7以上の因子負荷量であ り、娯楽・息抜きの因子と解釈された。 上記の3因子について因子負荷量の高い項目で加算 尺度を構成し、クロンバックのα係数を求めたとこ ろ、ネットでの交流の因子については7項目で0.919、 情報・知識の獲得にかかわる因子については5項目で 0.929、娯楽・息抜きの因子については3項目で0.807 とそれぞれ十分に高い値が得られた。この尺度の値を サービスごとに比較した結果が表3である。第一因子 (ネットでの交流)では、Twitterの評価が最も高く、 Facebook、mixiの評価がこれに次いでいた。情報・ 知識獲得の因子でも、Twitterの評価が最も高く、 mixi、Facebookがこれに次いでいた。情報・知識の 獲得だけでなく、ネットでの交流においてTwitter利 用者が得ている効用が高いのは、日本ではこれらの SNSの中でTwitterが最も多い利用者に使われている 状況を反映しているといえるであろう。一方、娯楽・ 息抜きの因子では、モバゲーの評価が最も高く、最も 低いFacebookとの間にのみ有意な差がみられた。 3.3 SNSにおける個人情報の開示度 表4は、各種の個人情報について回答者がSNS上で 利用者一般に公開している比率を示したものである13 。 等質性分析(対応分析)を用いて各項目の回答を数量 化した結果、個人情報は大きく二つのタイプに分かれ ることがわかった。図1は、分析結果で得られた解を プロットしたものである(○が開示、×が非開示)。第 一次元は開示(○)と非開示(×)を分ける軸と解釈で きる。第二次元をみると氏名、顔写真、所属会社の 開示(○)が一つのまとまりをなし、その他の個人情 報の項目(年齢、都道府県)の開示から分かれてグル ープを形成している。氏名、顔写真、所属会社は利 用者個人を特定化する情報であり、後者は利用者が どのような人なのかを示す情報であるという違いがあ る。この結果は、佐藤(2011)が因子分析で見出した 識別情報と属性情報に、ほぼ完全に対応するもので ある。 そこで氏名、所属会社・学校、顔写真の3項目の開 示個数を「識別情報の開示得点」、他の6項目の開示個 数を「属性情報の開示得点」と定義して以下の分析で 使うことにする。これらの得点を個人ごとに算出する と、識別情報の開示得点はFacebookが最も高いが、 属性情報の開示得点はmixiが最も高く、SNSによっ てやや違いがある(表4)。なお、二つの得点間の相関 係数はr=0.369(p<.001)と正の有意な相関関係がみら れた。 3.4 SNSにおける対人関係 次に、SNSでの「友だち」(Twitterの場合は相互に 表3 SNS別にみた各因子の加算得点の平均 a,b,cはScheffeの多重範囲検定の結果を示し、同じ文字がついたサービス間では5%水準で有意差がない。*** p<.001、* p<.05. 因子3(娯楽・息抜き) 11.0 ab 10.2 a 11.3 b 11.1 ab 3.1* 因子1(ネットでの交流) 因子2(情報・知識の獲得) mixi 17.6 bc 16.0 bc Facebook 17.8 bc 14.8 b モバゲー 15.2 a 11.7 a グリー 15.7 ab 11.9 a 11.1 ab Twitter 18.9 c 17.4 c F値 9.0*** 41.0***
フォローしている人)の人数、およびその中での「も ともとの知り合い」(以下、既知の友だち)の人数、 「このサービスで知り合い、オフラインでも会ったこ とのある人」(以下、出会い)の人数、およびSNSのみ での友だち14 の数を比較した(表5)。 SNSでの友だちの総数はTwitterが突出して多く、 次いでFacebook, mixiの順で、グリーとモバゲーが最 も少なかった。Twitterは、利用頻度も最も多く、現 在のSNSの中では最も活発に使われているサービスと いえる。 ただし、友だちの種類に分けてみると、SNSによっ て相違がある。既知の友だちが多いのは、Facebook とmixiであり、続いてTwitter、モバゲー、グリーと なっている。これに対して、SNSのみでの友だちは Twitterが圧倒的に多く、グリーがこれに次いでいる。 また、興味深いことに、SNSで知り合ってからオフラ インで会った「出会い」の数の順位は、「既知の友だち の数」の順位と全く同じである。「出会い」が「既知の 友だち」を媒介にしていることを示唆するものといえ る。 「既知の友だち」が多いサービスは、表4において個 人情報の開示得点(識別情報および属性情報)が高い という関係がある(スピアマンの順位相関係数で各々、 0.79と0.90)。これらの結果から、SNSは個人情報の開 示度が高く、既知の友だちが多いタイプ(mixi, Face-book)と、個人情報の開示度が低く既知の友だちが少 ないタイプ(モバゲー、グリー、Twitter)に大きく分 けられると考えられる。本論文では、対人関係をつな ぐメディアが多いほど「強い」つながりになることを 検証したHaythornthwaite(2005)の media multi-plexity理論を援用して、前者を「強いつながりの SNS」、後者を「弱いつながりのSNS」とよぶ。 なお、友だちの数15 とネットでの交流の効用の評価 に関しては、低いが有意な相関が得られた。ネットで の交流の効用との偏相関係数を計算したところ、既 知の友だちの数とはr=0.263、SNS上のみの友だちの 数とは、r=0.206、「出会い」の数とはr=0.355であった (すべて、p<.001。これらは、性別、年齢、学歴、収 入を統制している)。さらに、これらの三つの変数と 性別、年齢、学歴、収入を独立変数とし、ネットで 表4 各種の個人情報の開示度(%) *** p<.001 モバゲー グリー Twitter χ2 検定 2.7 2.0 11.3 354.8*** 1.3 0 4.0 89.4*** 8.7 20.0 16.7 37.8*** 0.05 0.05 0.23 F=154.1*** 2.21 2.37 2.13 F=17.4*** mixi Facebook 氏名 12.0 76.0 所属会社・学校 10.0 26.0 結婚(未婚・既婚) 26.7 36.0 趣味・関心 67.3 42.7 29.3 25.3 48.7 68.6*** 識別情報の開示得点 0.28 1.49 属性情報の開示得点 3.39 3.29 性別 80.7 76.0 68.0 66.0 55.3 26.9*** 年齢 45.3 55.3 39.3 44.0 24.7 30.8*** 顔写真 6.0 46.7 1.3 2.7 7.3 195.8*** 住所(都道府県) 78.7 63.3 55.3 55.3 53.3 27.82*** 誕生日 40.7 56.0 20.0 26.7 14.7 78.0*** 図1 個人情報開示の等質性分析
の交流の効用を従属変数とする回帰分析を行ったと ころ、推定された標準化回帰係数は、既知の友だち の数が0.204(t=5.48***)、SNS上のみでの友だちの数 が0.186(t=5.44***)、「出会い」の数が0.261(t=7.24***) とすべて0.1%水準で有意であった。この結果は、ネッ トでの交流の効用には、「強いつながり」と「弱いつな がり」の両方(ネット上の出会いも含めて)が寄与して いることを示すものである。 3.5 個人情報の開示は、SNSの利用に対してどのよう な影響があるのか 利用者の個人情報の開示とSNSの利用および友だ ちの数の関係を総合的に分析するため、デモグラフィ ック変数(性別、年齢、学歴、収入)を統制して回帰 分析を行った。この結果が表6にまとめられている。 さらに、「出会い」(SNS上で知り合ってからオフライ ンで会った友だち)の数についても同様の回帰分析を 行った結果が表7に示されている。出会いについては、 SNS上の友だちと既知の友だちの両方からの影響を想 定することができるので、これらの変数も独立変数に 加えた。 表6をみると、SNSの利用頻度に対して属性情報の 開示は正で有意な係数となっているが、識別情報の 開示は有意でない。したがって、仮説1-1は属性情報 については支持されるが、識別情報については支持さ れない。つまり、属性情報の開示はSNSの利用を促進 する効果がみられるが、識別情報についてはそのよう な効果はみられない。同じ個人情報でも識別情報と 属性情報を区別する必要があり、両者の影響は異な るといえる。 さらに、回帰分析の結果は、開示される個人情報 の種類によって、促進される対人関係のタイプにも違 いがあることを示している。表6をみると、識別情報 は「SNSのみでの友だちの数」に対しては有意でない のに対して、「既知の友だち」に対しては正で有意と なっている。これに対して、属性情報の係数は、どち らに対しても係数が正で有意となっている。つまり、 仮説1-2はほぼ支持されるが、識別情報の開示と「SNS のみの友だち」の関係については支持されない。これ は、ネット上でのみ交流する場合は、個人を特定化す る識別情報の開示は、かえってマイナスになることを 示している。 また、表6は利用者の社会経済的な変数の影響を統 制しても、サービスによってSNSの利用頻度や友だち の数に差があることを示している。サービスによる差 をまとめると、「強いつながり」のmixiとFacebookは、 (1)利用頻度が少なく、(2)SNSのみでの友だちの数 は少ないが、(3)既知の友だちの数は多い、という特 徴がある。一方、「弱いつながり」のモバゲーとグリー は、(1)利用頻度は多く、(2)既知の友だちの数は少 ない。Twitterは、(1)SNSの頻度が非常に多く、(2) SNSのみでの友だちの数が多い、という特徴がある。 これらの結果から、仮説2-1は支持されないことがわ かる。個人情報の開示度が高いmixiやFacebookは、 他のSNSに比べて利用頻度はむしろ少ないのである。 一方、仮説2-2は、既知の友だちについてのみ支持さ れる。個人情報の開示度が高いmixiやFacebookは、 他のSNSに比べて既知の友だちは多いが、SNS上の友 だちは少ない。 「出会い」の数を従属変数とする回帰分析結果(表7) をみると、属性情報のみが有意であり、識別情報は有 意でない。つまり、識別情報の開示は、SNSの機能の 一つとされる「新たな出会い」(小寺2009)に対しては 有効ではないことがわかる。また「SNSのみでの友だ ち」の数と「既知の友だち」の数の係数を比較すると、 「既知の友だち」の係数の方がかなり大きい。このこと 表5 SNSでの「友だち」の人数 *** p<.001, ns p>.05 モバゲー グリー Twitter F検定 8.8 11.9 50.8 11.9*** 24.0 23.7 109.1 1.7 1.5 6.5 15.8*** 1.5 1.3 2.4 1.9 ns 18.9% 12.8% 12.7% mixi Facebook 友だちの数(平均) 21.3 24.4 同 (標準偏差) 38.1 54.1 既知の友だちの数(平均) 14.4 17.2 SNSのみでの友だちの数(平均) 6.9 7.2 7.1 10.4 44.3 13.7*** 出会いの数(平均) 3.6 5.9 既知の友だち人数の比率 67.4% 70.5%
は、「出会い」の多くは純粋のSNS上の交流から生ま れるのではなく、既知の友だちを媒介にしていること を示すものといえる。 3.6 SNS利用の心理的要因 SNS利用と心理的要因の関係をみるため、プライ バシー意識・コミュニケーション不安とSNSの利用頻 度および個人情報の開示度との間でデモグラフィック 要因(年齢、性別、学歴、収入)を統制した偏相関係 数を求めた(表8)。プライバシー意識と二種類の個人 情報の開示度の間に有意な負の相関が得られたが、 コミュニケーション不安やSNSの利用頻度とは有意な 相関は見られなかった。この結果は、仮説3-1は部分 的に支持されるが、仮説3-2は支持されないことを示 している。つまり、プライバシー意識が高い人はSNS において個人情報を開示しない傾向があるが、プライ バシー意識が高いことがSNSの利用頻度を減らすとは 言えない。 「弱いつながり」のSNSを利用と利用者の心理的要 因が関係しているかどうかを調べるため、コミュニケ ーション不安とプライバシー意識について、性別、年 齢、学歴、年収の効果を統制した各サービス利用者 の推定周辺平均値16 を求めた(表9)。なお、コミュニ ケ ー シ ョ ン 不 安 と プ ラ イ バ シ ー 意 識 の 間 に は 、 表6 回帰分析の推定結果(標準化回帰係数) 表7 「出会い」の数を従属変数とする回帰分析の推定結果 *a SNSダミーの5つの変数間には線形従属関係があるの で、5つの係数の和=0の制約条件を入れて係数を推定して いる。 * p<.05, ** p<.01, *** p<.001 既知の友だち の数 (正規化得点) 従属変数 独立変数 SNS利用頻度 SNSのみでの 友だちの数 (正規化得点) SNSダミー(モバゲー=1) 0.08 -0.05 -0.30 *** SNSダミー(グリー=1) 0.09 * 0.02 -0.28 *** SNSダミー(Twitter=1) 0.25 *** 0.29 *** -0.02 R 0.402 0.418 0.637 性別(男=1女=2) 0.03 0.02 0.07 * 年齢 -0.19 *** 0.05 -0.14 *** 学歴 -0.01 0.00 0.08 * 収入 0.01 -0.01 0.01 SNS利用頻度 ― 0.25 *** 0.19 *** 識別情報の開示得点 0.03 -0.01 0.16 *** 属性情報の開示得点 0.24 *** 0.17 *** 0.13 *** SNSダミー(mixi=1)*a -0.10 * -0.10 * 0.30 *** SNSダミー(Facebook=1) -0.33 *** -0.16 ** 0.29 *** *a 表7と同じ。* p<.05, ** p<.01, *** p<.001 独立変数 標準化回帰係数 性別 0.00 SNSダミー(Facebook=1) -0.06 SNSダミー(グリー=1) 0.02 SNSダミー(Twitter=1) -0.07 R 0.426 年齢 0.04 学歴 -0.02 収入 0.01 SNS利用頻度 0.03 識別情報の開示得点 -0.03 属性情報の開示得点 0.12 *** SNSのみでの友だちの数 0.17 *** 既知の友だちの数 0.33 *** SNSダミー(mixi=1)*a 0.10 * SNSダミー(モバゲー=1) 0.02 表8 コミュニケーション不安・プライバシー意識との偏相関係数 ** p<.01, *** p<.001 プライバシー意識 -0.13 *** -0.10 ** -0.07 コミュニケーション不安 識別情報の開示 -0.05 属性情報の開示 -0.07 SNS利用頻度 -0.02
r=0.464(p<.001)という相関関係があった。多重範囲 検定の結果は、Twitterの利用者がモバゲーの利用者 よりもコミュニケーション不安の程度が高かった。た だし、この結果は仮説4の予想とは異なり説明は困難 である(モバゲーは、表4が示すように識別情報・属 性情報ともに開示度が最低のグループにある)。一方、 プライバシー意識については、5つのサービス間で有 意な差はみられない。いずれにしても、仮説4は支持 されないと言える。 これらの結果をまとめると、コミュニケーション不 安やプライバシー意識といった心理要因では、SNSの 選択や利用頻度を説明できないことを示している。 4.結論 SNSは、既知の友人が多く個人情報の開示度が高 い「強いつながりのSNS」(Facebook、mixi)と、既知 の友人が少なく個人情報の開示度が低い「弱いつなが りのSNS」(モバゲー、グリー、Twitter)に大きく分 けられる。「弱いつながりのSNS」は、「強いつながり のSNS」に比べて、利用者一人あたりの利用頻度は多 いが、既知の対人関係との結びつきが弱いという特徴 がある。 SNSで開示される個人情報は識別情報と属性情報 という二種類のタイプに分けることができ、影響のパ ターンも異なっていた。識別情報の開示はSNSの利用 に対して有意な効果をもたないのに対して、属性情報 の開示はSNS利用に対して正の有意な効果がみられ た。また、識別情報の開示はSNSでの友だちの数を増 やす効果は認められず、既知の友人を増やす効果のみ が認められた。これに対して、属性情報の開示は、 SNSの友だちと既知の友だちのどちらに対しても促進 する効果が認められた。つまり、サービス提供者の側 で氏名など個人の識別情報の開示度を高く設定する ことは、サービスの利用を活発にさせるとは言えない が、性別や年齢など属性情報の開示はSNSの利用を 活発にさせると考えられる。 「強いつながりのSNS」に比べて、「弱いつながりの SNS」は利用頻度が多い傾向がみられたが、「弱いつ ながりのSNS」の中でもTwitterの利用頻度は他の SNSと比べて突出して多かった。また、SNS上での交 流の効用に関してもTwitterが最も高く評価されてい た。TwitterはSNSのみでの友だちの数が非常に多い が、既知の友だちの数も6.5人でありグリーやモバゲ ーのように極端に少ないわけではない。つまり、 Twitterは「弱いつながり」でありながら、Facebook やmixiとの連携機能などを通して既存の人間関係を 維持するという機能もある程度もっていると考えられ る。この結果は米国のTwitter利用者が長期間利用者 ほど友人関係の効用に満足しているとした研究結果 (Chen, 2011)と類似している。また、Twitter上の発 言データを分析した石井(2011)によると、英語利用 者と比べて日本語利用者は、フォローの相互性が高 く、お気に入り(like)の利用率が高いなど、日本人は 相互的な対人関係をより意識した使い方をしている。 Twitterが5つのSNSの中で最も活発に利用されてい るのは、単なる情報・知識の獲得にとどまらず「弱い つながり」と「強いつながり」の両方の機能を通してネ ットでの交流の効用を高めているからと考えられる。 Twitterは、他のSNSと比べると利用者の個人情報 の開示は低いにもかかわらず、利用頻度は最も多く、 ネットの交流から得ている効用への評価も最も高かっ 表9 コミュニケーション不安とプライバシー意識(推定周辺平均値) a,bはBonferroniの多重比較検定の結果で、同じ文字をもつ群間で 有意差がない。** p<.01 プライバシー意識 11.53 a 11.87 a 0.81 ns コミュニケーション不安 Mixi 7.38 ab Twitter 8.04 a F値 3.67** Facebook 7.38 ab 11.47 a モバゲー 6.89 b 11.78 a グリー 7.42 ab 11.83 a
た。これは、匿名的な「弱いつながり」を通した交流 を日本人が支持していることを示している。「弱いつ ながりのSNS」が日本で多くの利用者を獲得している 事実は、SNSが社会関係資本の形成や維持にとどま らない機能をもつことを示すものといえる。それは、 ネットワーク上の現実の対人関係と結びつかない匿名 の交流それ自体を楽しむという機能である。川浦ほか (2005)は、SNSの機能を因子分析結果から「人脈形 成」、「対人関係維持」、「道具」の三つにまとめている が、これに「楽しみとしての交流」をSNSの第四の機 能として加えるべきかもしれない。 「楽しみとしての交流」は、富田(2009)が「インテ ィメイト・ストレンジャー」とよんだコミュニケーシ ョン様式と共通点がある。90年代の「ベル友」や「メル 友」は、個人の識別情報を相手に開示しないまま、文 字だけでメッセージのやりとりを楽しんでいた。「イ ンティメート・ストレンジャー」と「弱いつながり」は 現実の人間関係とは別にネット上の相手との交流を 楽しむという点で共通点があるといえる。 ただし、こうした「弱いつながり」で交流を楽しむ 理由を、利用者が現実のコミュニケーションを避ける 心理的傾向(コミュニケーション不安やプライバシー 意識)によって説明することはできない。つまり、プ ライバシー意識やコミュニケーション不安の高さが 「弱いつながり」のSNSの利用につながっているわけで はないのである。浅野(2006)によると、最近の若者 は状況や関係に応じて友人関係を切り替える傾向が あるという。SNSについても利用者は一つのサービス を固定的に利用するのではなく、状況に応じて異なる タイプを使い分けしているのであろう。実際、学生の 就職活動では実名登録のFacebookが有効に使われて いる17 。つまり、「弱いつながりのSNS」は、日本人の コミュニケーションの特異な一形態であるとしても、 これがあらゆる状況で普遍化しつつあるわけではな い。むしろ、純粋にネット上での交流を楽しむ「弱い つながりのSNS」と既存の人間関係と結びついている 「強いつながりのSNS」は、利用者の状況によって使 い分けられていると見るべきであろう。 最後に今後の課題をあげておく。本研究はSNS利 用者を対象とするためインターネット調査を用いた が、回答者がPCネット利用者に偏っており(注9参照)、 モバゲーやグリーのように携帯ネットが中心のサービ スについては利用者の実態を反映していない(つまり、 利用頻度の低い利用者が多い)可能性がある。インタ ーネット調査会社のモニターを用いたため、回答者の 年齢層が30−40代に偏った点にも問題があった。ま た、全てのサービスについて同一の調査票を用いたた め、サービスごとの個別の要因は十分に考慮できなか った。これらの点の改善は将来の課題として残されて いる。 参考文献 浅野智彦(編2006)検証・若者の変貌―失われた10年の 後に、勁草書房.
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Communi-cation, 11, 133-152. 注 1 本論文では、SNSを「不特定多数の人が参加し、参加 者の間で友だち関係の設定とメッセージのやり取りが 可能なサービス」と定義する。 2 モバゲーやグリーは、ゲームだけでなく、各人のプロ フィールや日記を書く機能もありSNSの一つと考えら れる。Nielsen Netwiew2011年3月度の調査結果によ ると、PCインターネット利用者へのリーチでは、 mixi21.4%、Twitter28.4%、Facebook12.4%であった (「mixi, Twitter, Facebook 2011年3月最新ニールセン 調査」http://blogs.itmedia.co.jp/saito/2011/04/mixi-twitter-fa-0f8b.html)。 3 日本経済新聞、2011年10月3日、朝刊9頁 4 http://mixi.jp/guide.pl?id=manner&page=3 5 CNET Japanの2010年9月28日の記事によると、Face-book日本責任者はインタビューで次のように答えて いる。「あくまでFacebookは実名をベースにここまで 成長してきました。そのなかで情報を共有することに よって得られる喜び、感動、驚きこそが、最も皆さん に感じていただきたいことです。それはずっと変わり ません。ですので、日本市場において、たとえば匿名 性に変えるとか、実名でなくても登録していいように Facebookを変えていくといった予定はありません。」 6 mixiのヘルプ画面では、「個人情報は書き込まない、 聞かれても絶対教えないようにしましょう」とあり、 「名前」「住所」「メールアドレス」「電話番号」などを 個人情報の例として列挙している。 7 日本経済新聞、2011年3月6日、朝刊17頁。
8 Social Bakers のFacebook登録者の統計によると、 2011年5月時点の日本での登録者は331万人であり、 国 別 の 順 位 で は 3 8 位 に と ど ま っ て い る 。 h t t p : / / w w w . s o c i a l b a k e r s . c o m / f a c e b o o k -statistics/japan
9 今回の調査結果では、携帯メールを「ほぼ毎日(また はそれ以上)使っている」は54.5%、PCメールを「ほ ぼ毎日(またはそれ以上)使っている」は39.7%であ った。WIP全国調査では、mixi、モバゲー、グリー、 Twitterのいずれかを使っている人のうち、携帯メー ルを「ほぼ毎日使っている」は85.9%, PCメールは 18.5%であった(ワールドインターネットプロジェク ト・日本チーム(2010)のデータを再分析)。このこ とから、今回の調査対象者は、一般調査でのSNS利用 者に比べてPCインターネットの利用頻度がやや多く、 携帯電話のネット利用がやや少ないと推定される。 10 「私は会話を始めるのが怖いことがある」「私は恥ず かしがりやなので、あまりたくさんは話さない」「集 団の中で本当の自分自身を出すのは怖い」の三問。 11 「住所や電話番号は、親しい友達の間でもなるべく伝 えない方がよい」「新聞やテレビでは、一般人の名前 は本人の許可がなければ掲載すべきではない」「自分 の感情は、なるべく人に知られたくない」「ネットの 知り合いには、自分の個人情報(氏名、住所など)は、 絶対に教えない」の4問。 12 ただし、インターネットのモニター調査なので年齢に 偏りがある可能性がある。 13 米国でのFacebook利用者の開示度は,氏名98.4%、卒 業 した高 校 9 4 . 2 % 、誕 生 日 9 5 . 1 % 、顔 写 真 9 8 . 4 % (Stutzman, Capra & Thompson, 2011)と、今回の Facebook利用者の開示度よりも高い。また、利用者 はサービス提供者の規約通りに必ずしも行動していな い。たとえば、Facebookでは規定では実名を用いる ことになっているが、実名を使っていないとした回答 が24%ある。 14 友だちの総数から既知の友だち(オフラインでの知り 合い)の数を減算した変数。 15 友だちの数(「出会いの数」を含む)の分布は、いずれ も極端に多い少数の人がおり、右に歪んでいたので、 以下の分析では正規化変換した後の値を分析に用い ている。 16 性別(男=1、女=2)、年齢、学歴、年収の効果を統制 した(各効果の平均値を代入)推定周辺平均値。 17 大阪読売新聞、2011年1月29日、夕刊10頁。 現在、筑波大学大学院システム情報工 学研究科准教授(社会システム・マネジ メント専攻)。博士(社会工学)。主要著 書に『東アジアの日本大衆文化』(蒼蒼 社)、『情報化の普及過程』(学文社)、『グ ローバル化における中国のメディアと 産業』(明石書店)、『広告の文化論』(日 本 経 済 新 聞 社 ) 、 W e b c a s t i n g Worldwide Business Models of an Emerging Global Medium (Lawrence Erlbaum Associates)、Handbook of Research in Global Diffusion of Broadband Data Transmission (IGI Global)、Corporate Reputation and the News Media (Routledge)。情報通信学会正会員。