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Surface Chemisty (Fundamentals). III. Masayuki NAKAGAKI Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University (Sakyo-ku, Kyoto)

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Academic year: 2021

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学(基

篇).III.

京都大学薬学部(京 都市左京区吉田近衛町)

Surface Chemisty (Fundamentals).

III.

Masayuki NAKAGAKI

Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University (Sakyo-ku, Kyoto)

8 不 溶 性 単 分 子 膜 Trurnit1)に よれ ば 不 溶 性 単 分 了 膜 の 応 用 に関 す る最 初 の 記 録 は,約4000年 前 に 古代 バ ビ ロ ンの 楔 形 文 字 で 記 され た もの で,そ れ に よれ ば僧 侶 が,水 を は っ た 浅 い 木 椀 に ゴマ 油 を 滴 下 し,こ れ を朝 日に 向 か っ て見 た と き の 油 膜 の 色 と動 きに よ り未 来 を う らな った と い う。 ま た 植 物 油 が 波 を 静 め る の に 有 効 な こ と は エ ジプ ト時 代 か ら 知 られ て い たが,Benjamin Franklinは ロ ン ドンの 近 く のClaphamの 池 で こ の実 験 を 行 な い,茶 さ じ一杯 の油 が 約 半 エ ー カ ー の 水 面 を静 め る作 用 の あ る こ とを 認 め た が,こ れ は油 膜 の 厚 さ に換 算 す れ ば約20Aで あ り,単 分 子 膜 の オ ー ダ ー で あ る 。実 験 室 的 な研 究 は,Agnes Pockels2)に よ り行 な わ れ,Rayleigh3),4)は これ を発 展 させ て 分 子 の大 き さ を求 め た 。Langmuir5)は 表 面 テ ン ビ ン ま た は膜 テ ン ビ ン(film balance)と 呼 ば れ る 装 置 を 考 案 し,こ れ はAdam6), Harkins7), Dervichian8)ら

に よ り改 良 され 広 く用 い られ て い る。 8・1 実 験 方 法 水 面 上 の単 分 子 膜 が さ ら に拡 が ろ う と して 呈 す る圧 力 を 表 面 圧 ま た は 膜 圧(film pressure) π と呼 ぶ 。 これ は 純 水 の 表 面 張 力 γwと 単 分 了 膜 に覆 わ れ た 表 面 の表 面 張 力 γfと の差 で あ る。 π=γw-γf……(1) 表 面 圧 を測 定 す る装 置 を膜 テ ン ビ ンと 呼 ぶ 。 垂 直型 の 膜 テ ン ビ ンはWilhelmy9)に よ って 考 案 され た もの で,適 当 な薄 阪(た と え ば 白金 板)の 下 端 を水 面 に垂 直 に 浸 し, これ を テ ン ビン の片 腕 に か け,表 面張 力 に よ っ て 薄 板 が 下 方 に 引 か れ る力 を測 定 す る。 ま た水 平 型 の膜 テ ン ビ ン は 水 面 上 にfloat(た と え ば パ ラ フ ィ ンを 塗 っ た金 属,雲 母,ガ ラ ス な どの 薄 板)を 浮 か べ て 二 つ の部 分 に 仕 切 り, 一方 の側 に単 分子 膜 を つ く り,膜 がfloatを 押 す力 を測 定 す る もの で あ る。 単 分 子 膜 の 実 験 に は 細 長 い 長 方 形 の 水 ソ ウ(trough)が 用 い られ,Harkinsは 深 さ6mmの 水 ソ ウ に パ ラ フ ィ ンを 塗 り,水 面 が そ の上 に さ らに6 mm盛 り上 る ま で水 を 入 れ て 用 い た 。 パ ラ フ ィ ンを 塗 っ た ガ ラ ス また は ス テ ン レス の 仕 切 板 を用 い て水 面 を掃 い て 清 浄 に し,膜 形 成 物 質 の既 知 量 の 溶 液 を そ の上 に 落 と し,溶 媒 を 蒸 発 させ て 単 分 子 膜 と し,仕 切 板 を動 か して 膜 の 面 積 を 種 々に 変 えて 表 面 圧 を 測 定 す る。 この よ うに して,膜 形 成 物 質1分 子 の 占 め る面 積 σ(A2/molecule) と 表 面 圧 π(dyne/cm2)の 関 係 が 求 め られ る 。 単 分 子 膜 で 覆 わ れ た水 面 の 表 面 電 位,す な わ ち膜 電 位 (film potential)の 測 定 に よ り膜 中 の 分 子 の配 向 な どを 知 る こ と が で き る。 水 面 の す ぐ上 に α放 射 体(た と え ば ポ ロ ニ ウム)で 覆 わ れ た金 属 板 を 保 持 して一 方 の電 極 と し,こ れ と水 中 に挿 入 した電 極 と の 間 の電 位差 を 測定 す る6)。 ま た は 振 動 電 極 を 用 い る方 法 もあ る10)。膜 電 位 は 清 浄 な水 面 と単 分 子 膜 で 覆 わ れ た水 面 と の表 面電 位 の差 で あ っ て,ス テ ア リン酸 の 液 体 凝 縮 膜 で は 約400mVで あ る。 平 行 平 板 コ ンデ ンサ ーの 電 位 差 ΔVは,表 面 電 荷 密 度 を σ,極 板 間 の距 離 をd,媒 質 の 誘電 率 をDと して, ΔV=4π σd/D……(2) で あ る 。空 気 で はD=1で あ る か ら,単 分 了 膜 の1cm2 当 た りの 分 子 数 を Γ,分 子 の 双 極 子 能 率 を μ,双 極 子 と 水 面 の 法 線 の な す 角 を θ と す れ ば, ΔV=4π Γ μcosθ……(3) と な る 。 した が って 膜 電 位 ΔVを 測 定 して 分 子 の 傾 き の角 度 θ を 得 る こ と が で き る。 表 面 膜 の 粘 度,す な わ ち表 面 粘 度(surface viscosity) の 測定 に は,水 面 上 に 設 け た平 行 板 間 の 溝 を 通 って 単 分 子 膜 が 流 出 す る速 度 を 測 る方 法11),水 面 上 に 浮 か べ た捩 り振 子 の 減 衰 振 動 に よ る方 法12),一 定 速 度 で 流 れ る液 面 上 の 円 板 に働 く力 を 測 定 す る方 法13)な どが 用 い られ る 。 単 分 子 膜 の粘 度 は 膜 内 分 子 の充 テ ン度 に依 存 す る もので あ って,気 体膜 の 粘 度 は小 さす ぎて 測 定 で きず,膨 張 膜 の粘 度 は 中 程 度 で あ り,凝 縮 膜 の 粘 度 は高 い。 ま た液 体 膜 の粘 度 は 炭 化 水 素 鎖 が長 くな る につ れ て 急 激 に大 と な り,か つ長 鎖 アル コ ー ル は対 応 す る酸 に比 べ て 表 面粘 度 が17∼33倍 大 きい14)。 水 面 上 の単 分 子 膜 は ガ ラ ス な どの 表 面 へ 移 す こ と が で

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きる 。1920年 にLangmuir15)は,オ レイ ン酸 の 単 分 子 膜 で覆 わ れ た 水 中 に清 浄 な ガ ラス 板 を浸 して 引 き上 げ る と きに ガ ラス 表 面 は単 分 子 膜 で 覆 わ れ る こ と を 見 出 し, 1934年 にMiss Blodgett16),17)は,ガ ラ ス板 を 上 下 す る こ と に よ り任 意 の 数 の単 分子 層 を 累 積 し うる こ とを 見 出 した。 そ の 際 に は,ピ ス トン油(単 分 子 膜 と ピス トン油 の 間 は動 き う る糸 で 仕 切 る)を 用 い て 膜 圧 を 一 定 に 保 つ こ とが 望 ま しい 。 単 分 子 膜 は板 を水 中 に挿 入 す る と きの み(X膜),ま た は挿 入 す る と き と引 き出 す と き(Y膜) ま た は 引 き出 す と きの み(Z膜)に 板 へ 移 る 。X膜 を 生 ず る場 合 に は膜 圧 を 高 め れ ばY膜 が 得 られ る 。この 方 法 で 数千 分子 層 の 累 積膜 が 得 られ る 。GermerとStorks18) は ク ロム板(水 に 濡 れ る)で は引 き上 げ る と きに第 一 層 が,ま たResoglaz foil(水 に ぬ れ な い)で は 挿 入 す る と きに第 一 層 が 付 き,ま た電 子 線 回 折 の 結 果 ス テ ア リン 酸 バ リウ ム で は 分 子 は 板 面 に垂 直 で あ るが,ス テ ア リン 酸 で は少 し傾 い て い る こ とを 見 出 した 。 8・2 表 面 相 清 浄 な 水 面 上 に ほ とん ど不 溶 性 の界 面 活 性 物 質 の結 晶 ま た は液 滴 を お くと き,こ れ が 水 面 上 に 拡 張 して 生 じた 単 分 子 膜 の 平 衡 表 面 圧(平 衡 拡 張 圧)を πeと す れ ば, Clageyronの 式 に よ って モ ル拡 張 熱(molar latent heat of spreading) Qsを 求 め る こ と が で き る。

Qs=T(∂ πe/∂T)Af(Ae-As)………(4)

た だ しAeは 単 分 子 膜 の モ ル 面 積,Asはbulk phase の モル 面 積 で,AsはAeに 比 べ て 無 視 で き る19)。 拡 張 の 際 の モ ル 自 由 エ ネル ギ ー変 化 ΔFsお よび モ ル エ ン タル ピ ー変 化 ΔHsは,膜 の モル 面 積 をAfと して, (5) (6) で与 え られ る。 た だ し,系 の全 表 面 積 を Σ と して, で あ る。 ま た,潜 熱Qsは, Qs=ΔHs-ΔFs………(8) で与 え られ る 。 BoydとSchubert20)は πeとAeの 温 度 変 化 を研 究 し,吸 着 現 象 は一 般 に 発 熱 過 程 で あ る に もか か わ らず, (1)結 晶性 脂 肪酸 の 拡 張 に よ る単 分 子 膜 の 形 成 は潜 熱 の 吸収 を伴 い,エ ン トロ ピ ー お よ び エ ン タル ピ ー が 増 大 し,(2)溶 融 物質 の 拡 張 は発 熱 過 程 で あ って エ ン トロ ピ ー お よ び エ ン タル ピー が 減 少 し,(3)拡 張 の 潜 熱 は融 解 熱 と 同様 に炭 素 数 が 奇 数 の 脂 肪 酸 の方 が偶 数 の もの よ り も小 さ く,こ れ は炭 素 数 奇 数 の酸 の方 が結 晶 内 にお け る 炭 素1原 子 当 た りの 凝 集 エ ネ ル ギ ーが 小 さい こ と に よ る,(4)こ れ らの結 果 に よれ ば,単 分 子 膜 に お け る分 子 配 列 の秩 序(し た が っ て エ ン トロ ピ ー)は 結 晶 と溶 融 体 の 中 間 で あ る こ とが 示 され た 。 Langmuirは 気-水 界 面 に 吸着 され た長 鎖 脂 肪 酸 は 極 性 基 を 水 の方 に,炭 化 水 素 鎖 を空 気 の 方 に 向 け て お り, 単 分 子 膜 を十 分 に圧 縮 した と きに1分 子 の 占 め る 面 積 は 炭 化 水 素 鎖 の長 さに 無 関 係 で あ り,分 子 は水 面 に垂 直 に 配 向 して い る こ とを 示 した21)。LyonsとRideal22)は 分 子 が 水 面 に対 して 傾 いて い る こ とを 示 した。 脂 肪酸 の 表 面 濃 度 が 小 さ い と き に は分 子 は水 面 に横 た わ っ て い る と考 え られ るが,極 限 面 積 は十 分 大 き くは な く,分 子 会 合 が 起 こ って い る と 考 え られ る23),24)。ま たn-hexatri-acontanoic acidの 単 分 子 膜 を水 面 か ら コ ロ ジオ ン膜 上 に移 して 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 した 結 果 や25,14Cで 標 識 し た ス テ ア リン酸 カ ル シ ウ ムの 単 分 子 膜 の ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー に よれ ば26),単 分 子膜 は必 ず し も一 様 で は な く,二 相 共 存 す る こ と もあ る こ とが 示 され た 。 表 面圧-面 積 曲 線 に よれ ば,単 分 子 膜 に は 種 々 の 状 態 の あ る こ とが わ か る が,HarkinsとBoyd27)は 六 つ の 表 面 相(surface phase)が 存 在 す る こ とを 指 摘 した(既 述3・7参 照一 本 誌1月 号)。 (1) 気 体 膜G 1分 子 当 た りの面 積 σが大 き く表 面 圧 πが 低 い 場 合 に は,単 分 子 膜 は理 想 気 体 の 法 則, πσ=kT……(9) に従 う。 面 積 が 小 さ い と き に は,状 態 式 にvan der Waals型 の 補 正 項 を導 入 す る必 要 が あ る 。さ らに 面 積 を 減 少 させ る と,膜 は不 均 一 に な り,気 体 膜 の 中 に 液 体 膨 張 膜 の “島 ” を生 ず る。 (2) 液 体 膨 張 膜Le こ の 状 態 で は膜 の圧 縮 率 はか な り大 き く,表 面 圧-面 積 曲 線 は ほ ぼ 双 曲 線 で あ る。 気 体 膜 と の 間 の転 移 は 第 一 次 で あ る 。 (3) 液 体 中 間 膜Li 一 定 圧 力 で 面 積 を減 少 させ る か,一 定 面 積 で 温 度 を 低 下 させ る と,液 体 膨 張 膜 は第 二 次 相 変 化 を 行 な っ て 液 体 中 間 膜 に な る。 こ の膜 は非 常 に 圧 縮 率 が 大 きい。 (4) 液 体 凝 縮 膜Lc 面 積 を さ らに 減 少 させ る と圧 縮 率 が低 下 して 圧 力 上 昇 が 急 激 に な る 。 表 面 圧-面 積 曲 線 は直 線 的 で あ る。 中 間膜 か ら凝 縮 膜 へ の 変 化 は第 三 次 相 変 化 で あ る と考 え られ る 。 (5) 固 体膜S 液 体 凝 縮 膜 を 圧 縮 す る と固 体 膜 に な る。 表 面圧-面 積 曲 線 は直 線 的 で あ る。 (6) 超 液 体 膜LS こ れ は 固 体 膜 に似 て い る が,よ り大 きな面 積 を 占 め る。 不 溶 性 単 分 子 膜 を 等 温 圧 縮 した 場 合 の 表 面 圧-面 積 曲 線 が これ らすべ て の 相 を 示 す と は 限 らな い 。 特 に超 液 体 膜 と固 体 膜 と の 間 の 転 移 は,ま れ に み ら れ る の みで あ る28)。直 鎖 の ア ル コー ル や 脂 肪 酸 は鎖 長 や 温 度 を 適 当 に 選 ぶ こ と に よ り 種 々の 表 面 相 を成 す 。CH2基 一 つ は ほ ぼ 温 度5℃ の変 化 に 相 当 す る。 末 端 基 が 大 きい 場 合 は 固 体膜 は 生 じ に く く圧 縮 す る と液 体 凝 縮 膜 に な る。 末 端 41

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基 が 二 つ 以 上 あ る物 質 や,炭 化 水 素 鎖 を 二 つ 以 上 有 す る 物 質 は液 体 膨 張 膜 にな りや す い 。 8・3 単 分 子膜 を 通 っ て の 水 の 蒸 発 降 雨量 の不 足 な 地 方 で は貯 水 池 の表 面 を単 分 子膜 で お お っ て水 の蒸 発 を 防 ぐ こ とが経 済 的 に も成 立 つ 。単 分 子 膜 の透 過 性 は生 物 学 お よ び 物 理 学 で も重 要 な 問題 で あ る。 ま た化 粧 品 工 業 は薄 膜 に よ って 皮 膚 の乾 燥 を 防 ぐ こ と に関 す る もので あ る。 LangmuirとSchaefer29)は 水 槽 の 水 面 のす ぐ上 に固 体 乾 燥剤 を 置 い て 水 の 蒸 発 速 度 を 測 定 し,ベ ンゼ ン溶 液 か ら拡 げ た 脂 肪酸 単 分 子膜 の蒸 発 抵 抗 は 膜 圧 が 大 な るほ ど大 とな る こ とを 見 出 し,SebbaとBrisco30)も 同 様 の 結 論 に達 した。 これ に反 してArcherとLa Mer31)は 溶 媒 と して石 油 エ ー テ ル を 用 い,初 圧 を10dyne/cm以 上 と し,水 面 が十 分 に 清浄 で あれ ば,脂 肪 酸 の単 分 子膜 の蒸 発 抵 抗 は膜 圧 に無 関係 に一 定 で あ り,比 蒸 発 抵 抗 r(sec/cm)の 対 数 は炭 素 数 の増 加 と と もに 直 線 的 に増 加 す る こ とを 見 出 した。 た だ しこの 場 合 の膜 は液 体 凝 縮 膜 で あ っ たが,固 体 膜 で は蒸 発 抵 抗 は膜 圧 と と もに増 大 した 。 また 温 度 に対 して は, r=const・eE/RT………(10) が成 立 つ 。 さ らにRosanoとLa Mer32)は 表 面 粘 度 と 蒸 発 抵抗 の 間 に は 必 ず し も直 接 的 な 関 係 は な い が,表 面 粘 度-表 面圧 曲線 の屈 折 点 で は表 面 相 の転 移 が 起 こ り33), 蒸 発 抵 抗 に も変 化 が起 こる こ と,フ ッ素 化 ア ル コー ル は 表 面 粘 度 が高 く蒸 発 抗 抵 も大 きい こと な どを 見 出 した 。 8 ・4 混 合 単 分 子 膜 混 合 膜 は生 物 系 に お い て重 要 と考 え られ る の で 多 くの 研 究 が あ る。 そ して あ る混合 比 の と こ ろで 錯 化 合 物 あ る い は分 子 会合 体 を生 ず る と い うこ とが しば しば い われ て い る。 一 般 に一 定 膜 圧 の 混合 膜 につ い て,一 分 子 当 た り の 面 積 は両 成 分 の値 の平 均 値 に等 し くな い。 こ の偏 差 に つ い てDervichian34)は 二 つ の場 合 を指 摘 した 。 第 一 の 場 合 は単 分 子 膜 の 相 変 化 に よ る もの で あ る。 例 え ば ミ リス チ ン酸 とtrimyristinの 混合 膜 で は35),32℃ 以 上 で は 両 者 は と もに 液 体膜 で あ り,分 子 面 積 に は 加成 性 が成 立 つ が,20℃ 以下 で は ミ リス チ ン酸 が 液 体膜 で あ る の に対 してtrimyristinは 固 体 膜 で あ る た め に 加成

trimyristin myristic acid 図-1 trimyristin-ミ リ ス チ ン 酸 混 合 膜(15℃) 性 は成 立 たな い。 図-1に 示 す よ うに34)ミ リス チ ン酸 の 割合 が0.5以 下 の と き に は混合 膜 は固 体 膜 で あ って,炭 化水 素 鎖1個 当 た りの 面 積 は21A2で あ るが,ミ リス チ ン酸 の 割合 が 多 くな る と面 積 は33A2ま で 増 加 して の ち 不 連 続 的 に38A2に 膨 張 す る。 この 点 で 固 体 膜 か ら液 体 凝 縮 膜 へ の変 化 が起 こる と考 え られ る。 また 一 定 圧 力 一 定 組 成 の混 合 膜 につ いて 温度 と 面積 の 関 係 を み る と固 体 膜 か ら液 体 膜 へ の転 移 点 で 面積 は急 激 に増 大 し,こ の転 移 温 度 と組 成 の関 係 は上 記 の結 果 と よ く一 致 す る。 Dervichianの 指 摘 す る 第 二 の場 合 は,Adamと Jessop36)に よ って 研 究 され た コ レス テ リ ンと レ シチ ン の 混合 膜 にお け る “凝 縮 効 果 ” で あ る。 図-2に は膜 圧 5dyne/cmに お け る組 成 と平 均 面 積 の 関 係 を 示 す34)。加 成 性(直 線CL)か らの偏 差 は主 と して レシチ ン単 分子 膜 が コ レス テ リンの 添加 に よ って 凝 縮 す る こ と に よ る も の で あ り,モ ル 比 が1:3 (A点)お よ び3:1 (B点)な る “complex” を生 ず る よ うに み え る。Dervichianは し か しA点,B点 は両 成 分 の化 学結 合 に よ る もの で は な く,分 子 配 列 の変 化 に よ る もの で あ ろ うと考 え て い る。 コ レステ リン レシモ ン 図-2 コ レ ステ リン-レ シ チ ン混 合 膜 上 に 述 べ た の は 両 成 分 が と も に 不 溶 性 物 質 の 混 合 膜 で あ る が,一 方 が 可 溶 性 の 場 合 に は,不 溶 性 物 質 の 単 分 子 膜 へ の 可 溶 性 物 質 の 侵 入(penetration)に よ っ て 混 合 膜 を 生 ず る 。 こ の 現 象 はSchulmanとHughes37)に よ っ て 発 見 さ れ た 。Matalon38)お よ びGoddardとSchul-man39)は セ チ ル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の コ レ ス テ リ ン 単 分 子 膜 へ の 侵 入 を 研 究 し た 。 一 定 圧 力 に お け る コ レ ス テ リ ン 一 分 子 当 た り の 面 積 は 最 初 急 激 に 増 大 して の ち さ ら に徐 々 に 直 線 的 に 増 大 す る 。 こ の 直 線 部 分 を 時 間 ゼ ロ に 外 挿 す れ ば60∼66A2が 得 られ,こ れ は コ レ ス テ リ ン と セ チ ル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の1:1 complexの 面 積 に 相 当 す る 。 ま た こ の 膜 を 圧 縮 す れ ば60A2の 極 限 面 積 が 得 られ る 。 こ れ ら の 結 果 か らSchulmanら は1:1 complexの 生 成 を 結 論 して い る が,Dervichian34)は こ の 考 え に 反 対

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して い る。SchulmanとRideal40)に よれ ば,単 分 子 膜 へ の 侵 入 が 起 こる た め に は侵 入 分 子 が 長 い炭 化 水 素 鎖 を有 し,し たが って 不 溶 性 分 子 と の 間 に強 いvan der Waals 相 互 作 用 を有 す る こ と,お よ び両 分 子 の極 性 基 間 に強 い 相 互 作 用 の あ る こ とが 必 要 で あ る と い って い る。 これ ら の 条 件 は セ チ ル ア ル コ ー ル ま た は2-eicosanolと セ チ ル 硫酸 ナ トリウ ム の間 で も満 足 され,実 際 に侵 入 が 観 察 さ れ るが,complexの 形 成 は認 め られ な か っ た41)。 8・5 単 分 子 層 に お け る反 応 生 物 系 で は化 学 反 応 が 大 きな速 度 で かつ 特 異 的 に起 こ る こ とが 知 られ て い る。 生 物 系 内で は分 子 の配 向 が 顕著 で あ り,か つ 生 体 は微 多 相 性 の た め に界 面 の面 積 が大 き い か ら,生 体 反 応 と界 面 反 応 と は密 接 に 関連 して お り, そ の反 応 速 度 は主 と して立 体 化 学 的配 置 と電 気 的 ポ テ ン シ ャル 勾 配 に支 配 され る と考 え られ る42)。 単 分 子 層 の反 応 速 度 に対 す る立 体 的要 因 の重 要 性 は, パ ル ミチ ン酸 エ チ ル単 分 子 膜 の加 水 分 解 速 度 が,液 体 膨 張 膜(エ チ ル基 も水 面 に 出て お り,カ ル ボ ニ ル基 が最 下 部 に あ る)で は液 体 凝 縮 膜(エ チル 基 が 水 中 に入 り こん で エ ス テ ル基 部 分 を保 護 して い る)の8倍 も大 きい こと か ら もわ か る21)。電 気 ポ テ ン シ ャル の影 響 はmonocetyl succinate単 分 子 膜 の ア ル カ リ性 ケ ン化 反 応 の 例 か ら理 解 され る 。 こ の反 応 の速 度 定 数 を水 酸 化 ナ ト リ ウ ム の bulk濃 度 に基 づ い て 計 算 す る と,ア ル カ リが0.4Nか ら 2Nに 増 す につ れて 反 応 速 度 は約300%増 大 す る こと に な るが,Donnan膜 平 衡 の理 論 に よ って 水 酸 イ オ ンの表 面 濃 度 を 算 出 し,こ れ に基 づ いて 速 度 定 数 を求 め れ ば そ の値 は あ ま り変 化 しな い こ と に な る。 こ の よ うに,表 面 電 荷 の た め に反 応 基 の近 傍 の ア ル カ リ濃 度 が変 化 す る こ とが わ か る43)。 8・6 有 機 液 体 上 の 不 溶 性 単 分 子 膜 有 機 液 体 上 の不 溶 性 単 分 子 膜 を 研 究 す る た め に テ フ ロ ン製 の膜 テ ン ビ ンが 用 い られ る44)。エ トキ シを未 端 基 と す るpolymethylsiloxane(分 子 量8250)の 有 機 液 体 上 の 単 分 子 膜 の状 態 図 は,膜 圧 が 著 し く低 い こ と を 除 け ば 水 面 上 の単 分 子 膜 に よ く似 て い る。 セ タ ン上 で は,膜 圧 0.32dyne/cm以 下 で は気 体 膜 で あ り,分 子 は液 面 上 に 伸 びて お り,CH3基 が セ タ ン の方 を む い て い る 。これ を 圧 縮 す る と モ ノ マ ー当 た り20A2に て 最 密 充 テ ン と な る。 これ を さ らに圧 縮 す る と分 子 は ラ セ ン状 に な り,膜 圧0.57dyne/cm以 上 で は1巻6モ ノ マ ー単 位 の ラ セ ン が 密 に配 列 した 状 態 とな り,そ の 極 限 面 積(膜 圧 ゼ ロへ の外 挿 値)は モ ノ マ ー当 た り17A2で あ っ た。 ま た,リ ン酸 トリク レジル 上 で は気 体 膜 で あ り,SiOが 液 の方 へ む いて い る と考 え られ た44)。 9 可 溶 性 単 分 子 膜 界 面 活 性 物 質 の水 溶 液 は液 面 に吸 着 単 分 子 層 を 生 ず る た め に表 面 張 力 が 著 し く低 下 す る ので あ って,こ の単 分 子 膜 は不 溶 性 単 分 子 膜 と よ く似 て お り,そ の表 面 圧 は純 溶 媒 と溶 液 の表 面 張 力 の差 で 表 わ され る。 9・1 非 イ オ ン性 化 合 物 の吸 着 膜 Gibbsの 吸着 等 温 式 に よれ ば,濃 度cと 表 面 圧 πと の 関係 か ら,表 面 濃 度 Γ は, (11) に よ り求 め られ,1分 子 当 た りの面 積 は σ=1/Γ で あ る か ら,膜 圧-面 積 曲 線 が 画 か れ る。 図-3に は種 々 のn-ア ル コー ル水 溶 液 に つ い て π と-logcの 関係 が示 して あ る。膜 圧10dyne/cm以 上 で は 曲 線 は ほ ば等 間 隔 の平 行 直 線 に な る こと,温 度 が上 昇 す る と膜 圧 は や や低 下 す る こ と,10dyne/cm以 下 で は 直 線 に な らぬ こと な どが わ か る45)。10dyne/cm以 下 で は気 体 膜 で あ り,15dyne/cm 図-3 n-ア ル コ ー ル水 溶 液(25℃) 以 上 で は, π(σ-σ0)=xkT (12) が 成 立 つ 。 σ0は 極 性 基 の 断 面 積 で あ り,xは 単 分 子 膜 内 の 横 の 凝 集 力 に 関 す る 因 子 で,凝 集 力 が な け れ ばx=1 で あ る が,凝 集 力 が 増 せ ばxは 減 少 す る 。n-ア ル コ ー ル で は25℃ で σ0=16A2, x=0.88で あ っ た45)。 可 溶 性 単 分 子 膜 の 表 面 電 位 に つ い て も式(3)が 用 い ら れ る が,気 体 膜 で は, Γ=π/kT=(a/kT)c……(13) た だ しaはTraube定 数(n-ア ル コ ー ル で は0.2×103 dyne/cm/mol/deg)で あ る か ら, (14) と な り,ΔVは 濃 度 に 比 例 す る 。 炭 素 数4∼8のn-ア ル コ ー ル で は μcosθ=0.22 Debyeと な っ た 。 溶 液 か ら の 吸 着 の 標 準 自 由 エ ネ ル ギ ー は, ΔF°=-RTln(Γ/cδ)=-RTln(a/kTδ)… …(15) と な る 。 た だ し δ は 表 面 層 の 厚 さ で あ っ て 分 子 の 長 さ に 等 し く,ま た 標 準 状 態 はbulk相 で も 表 面 相 で も1分 子/ccと す る 。 ΔH° は 平 衡 定 数K=a/kTδ の 温 度 変 化 か ら, 43

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(16) に よ り,ま た,ΔS° は, ΔF°=ΔH°-TΔS°………(17) か ら求 ま る 。n-ア ル コ ー ル に つ い て の 値 を 表-1に 示 す45)。 表-1 ア ル コー ル の水 面 へ の 吸着45) 非 イ オ ン界 面 活 性 剤 の 水 溶 液 の 表 面 張 力(し た が っ て 膜 圧)と 濃 度 の 対 数 の 関 係 は 臨 界 ミ セ ル 濃 度(CMC)で 折 れ 曲 り,CMC以 上 で は 表 面 張 力 は 一 定 で あ る が, CMCの す ぐ下 で は 直 線 関 係 と な り,吸 着 層 は 飽 和 し て お り,分 子 は 最 密 充 テ ン の 状 態 に あ る 。 こ の 状 態 で は, Igepanol CO-710 (octylphenolにethylene oxide 10.5 モ ル 付 加)の 面 積 は63A2で あ る こ と がGibbs式 か ら 計 算 さ れ る46)。 9.2 イ オ ン 性 化 合 物 の 吸 着 膜 た と え ば ドデ シル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム(NaDS)の 水 溶 液 を 考 え た と き に,Gibbsの 吸 着 式 は,一 定 の 温 度,圧 力 に て 溶 媒 の 吸 着 量 を ゼ ロ と して(既 述1・8参 照-1月 号), dγ=-RTΓNa+dlnaNa+-RTΓDS-dlnaDS-… … …(18) ど な る 。 共 存 電 解 質 の な い 場 合 に は,電 気 的 中 性 の 条 件 に よ り, ΓNa+=ΓDS-………(19) で あ り,ま た, dlnaNa+=dlnaDS- ………(20) で あ る か ら,式(18)は, dγ=-2RTΓDS-dlnaDS-………(21) と な る 。 共 通 イ オ ン を 有 す る 電 解 質,た と え ば 食 塩 が 共 存 す る 場 合 に は,式(20)は 成 立 し な い が,活 性 剤 濃 度 を 変 え て も対 イ オ ン濃 度 は 変 化 しな い か ら,dlnaNa+= 0で あ り,し た が っ て, dγ=-RTΓDS-dlnaDS-………(22) と な る 。 こ の よ う に 右 辺 の 係 数 は 式(21)で はx=2,式 (22)で はx=1と な る 。 さ ら に 一 般 に,次 式 が 得 ら れ る47)。 (23) Gibbsの 吸着 式 は熱 力 学 的 に正 しい の で あ るが,こ れ を 実 際 の実 験 値 に適 用 す る際 に は,十 分 の 注 意 が 必要 で あ る。 た と え ばCMC以 下 で は ミセ ル は存 在 しな い と一 般 に信 ぜ られ て い るが,実 際 に はCMC以 下 で も イ オ ン対 ま た は ミセル が 存 在 す る と考 え られ る根 拠 が あ り, その 際 に は式(18)に イ オ ン対 に 関 す る項 を加 え ね ば な らな い。 ドデ シル 硫酸 ナ トリウ ム の吸 着 等 温線 は,表 面 張 力 と 濃 度 の 関 係 か らGibbs吸 着 式 に よ り求 め られ る。 そ の 際 に活 動 度 の代 わ りに濃 度 が しば しば用 い られ る。 表 面 張 力 と濃 度 の 関 係 は,一 定 温 度 で は,食 塩 の添 加 量 が 多 い ほ ど表 面 張 力 の低 下 が 著 し く,ま た活 性 剤 濃 度 が CMCを 越 す と表 面 張 力 は 一定 にな る。 ま た表 面 圧(す な わ ち表 面張 力 の低 下 量)は 温 度 が 上 昇 す る と減 少 す る が,こ れ を表 面圧-面 積 曲 線 に換 算 す れ ば,温 度 が 上昇 す る と表 面 圧 は や や増 大 す る こ と にな る47)。 非 イ オ ン界 面 活 性剤 と同様 に陰 イ オ ン 界 面 活 性剤 で も,吸 着量 はCMCの す ぐ下 の 濃 度 付近 で は飽 和 に達 して い る 。 水 空 気 界 面 お よび水n-ヘ プ タ ン界 面 にお け る飽 和 吸 着量 は 表-2に 示 す 通 りで あ って ほ とん ど等 し 表-2 飽和吸着量 に対す る電解 質の影 響48) く,ま た 対 イ オ ン濃 度 に よ っ て もほ と ん ど 変 化 しな い48)。しか しさ らに極 性 な有 機 液体 と水 との界 面 で の飽 和 吸着 量 は水-空 気 界 面 の値 よ りや や小 さ く,ウ ンデ シル 硫 酸 ナ トリウ ム で, Γ0=Kγ01/2………(24) と な る。 た だ し Γ0は 飽和 吸 着量,Kは 定 数,γ0は 純 水 と純 有 機 液 体 と の界 面 張 力 で あ る 。 ま た飽 和 吸 着 量 は 炭 化 水 素 鎖 の長 さや 枝 分 かれ に は ほ とん ど無 関 係 で,極 性 基 の 断面 積 に よ っ て定 ま る と い う48)。 9 ・3 荷 電 した単 分 子 膜

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荷 電 した単 分子 膜 の表 面 の ポ テ ン シ ャル Ψ0は,Gouy の式(既 述6・1の 式(5)参 照-本 誌3月 号)に よれ ば, (25) とな る。 右 辺 の カ ッコ 内 の134は20℃ の値 で あ り, 50℃ で は139と な る。 ま た ポ テ ン シ ャル をmVで 表 わ す な らば,kT/eは20℃ で は25.2mVに 相 当す る 。 Aは 単 分 子 層 中 の電 離 基1個 当 た りの面 積 で あ り,cは 溶 液 中 の電 解 質(1-1価 電 解 質 とす る)の 濃 度 で あ る49)。 荷 電 した 単 分 子 膜 の 表 面 電 位 ΔV(清 浄 な水 面 と単 分 子膜 で お お わ れ た 水 面 の 値 の 差)は,次 式 で 与 え られ る50) ΔV=4π Γμcosθ+Ψ0………(26) た とえ ばC16H33N(CH3)3+の 単 分 子 膜 で は,μcosθ= 400m Debyeで あ った51)。式(25), (26)に よれ ば,Ψ0 お よ び ΔVは 電解 質 濃 度 に よ って 変化 す るが,(ΔV-Ψ0)は 単 分 子 膜 の面 積 が一 定 で あれ ばcに は 無 関 係 にな る。 この よ うに,μcosθ が イ オ ン 強 度 に無 関 係 に一定 な ことが 実 験 的 に確 か め られ て い る の で49),表 面 電 位 の 測 定 に よ っ て Ψ0を 求 め る ことが で きる。 イ オ ン強 度 の 小 な る と き式(25)に よれ ば, (27) と な る が,実 際 にCrisp52)は α-ブ ロ ム パ ル ミチ ン酸 に つ い て+59mV, Davis53)は 正 に 荷 電 し た 単 分 子 膜 に つ い て-59mVを 得 て い る 。 荷 電 を 持 た な い 単 分 子 膜 は 空 気-水 界 面 で も油-水 で も 次 式 に 従 う。 (π°+B)(A-A0)=kT………(28) た だ し π° は 表 面 圧,Bは 表 面 の 凝 集 力 を 表 わ す 量 で, そ の 値 は 油-水 界 面 で は 非 常 に 小 さ い 。Aは1分 子 当 た り の 面 積 で あ り,A0は 分 子 が 実 際 に 占 め て い る 極 限 面 積 で あ る 。 荷 電 を 有 す る 単 分 子 膜 に つ い てDavies53)は 次 式 を 見 出 し た 。 π+(A-A0)=3kT+6.10(A-A0)√c-2kTA0/A…(29) た だ し π+は 荷 電 を 有 す る 単 分 子 膜 の 表 面 圧 で あ り,c は 溶 液 中 の1-1価 電 解 質 の 濃 度 で あ る 。 こ れ に よ れ ば c→0, A≫A0の と き に は π+(A-A0)→3kT, A=A0 の と き に は π+(A-A0)→kTと な る 。 式(29)は ま た, (30) と な る 。PhillipsとRideal54)の 式 は こ れ と は2だ け 異 な り (31) で あ る。Haydon55)に よれ ば,共 存 電 解 質 が 存 在 す る場 合(式(22)が 成 立 つ 場合)に は式(30)が,ま た共 存 電 解 質 の存 在 しな い 場 合(式(21)の 成 立 つ 場 合)に は 式(31)が 成 立 つ とい う。 9・4 放 射 性 トレー サ ー に よ る 吸着 の 研 究 Gibbsの 式 に よ って 吸 着量 を 求 め る 方 法 は間 接 的 で あ る ので,直 接 的 に 吸着 量 を 測定 す る方 法 と して,気 ホ ウ 法56),57)や ミ ク ロ トー ム 法58),59)な ど が 試 み ら れ た が,放 射 性 ト レ ー サ ー 法60),61)に よ っ て 初 め て 十 分 な 研 究 が 行 な わ れ る よ う に な っ た 。 た と え ばDixonら60),62)は 標 識 さ れ た 界 面 活 性 剤 の 溶 液 か ら の 放 射 能 を 直 接 測 定 し,溶 液 内 部 か ら の 放 射 能 を 差 引 い て 吸 着 量 を 求 め た 。 こ の 補 正 項(溶 液 内 部 か ら の 放 射 能 の 項)を な る べ く小 さ くす る た め に は 軟 ベ ー タ 線 放 射 体 を 用 い ね ば な らず, 表-3に よ れ ば62),63),35S, 14C, 45Ca, 3Hな どが 用 い 得 る が,3Hが 特 に 適 当 で あ る 。 ま たHutchinson61)は 白 表-3 放 射 性元 素 の カ ウ ン ト比(Isurface/Ibulk) (単 分 子 膜 は2×10-10mol/cm2と す る) 金 線 の環 に 液体 膜 を つ け て 測定 した 。

Aerosol OTN,す な わ ちdi-n-octyl sodium sulfosuc-cinateの 吸 着等 温 線 を トレー サ ー 法 で 測定 した結 果 は図 -4に 示 す 通 りで あ る64)。CMC (65×10-5mol/l)以 下 で は,Gibbs吸 着 式(22)を 用 いて 計 算 した 結 果(2.4 ×10-10mol/cm2)と ほ ぼ 一致 す る。 この場 合 に は電 解 質 は共 存 しな い ので あ るか ら正 し くは式(21)を 用 いね ば な らぬ ので あ るが,実 験 値 は む しろ式(22)に 合 う。 こ の こ と はNa+の 代 わ りにH+が 吸 着 され る と考 えれ ば 説 明 され る。 す な わ ち,表 面 加 水 分解(sulface hydro-lysis)が 起 こ る と考 え られ る。 こ の こ と は,S35で 標 識 した 陰 イ オ ンと32Naイ オ ン か ら成 るAerosol OTN溶 液 に つ いて 両 者 の吸 着量 を 測 定 す る と き,低 濃 度 で はNaイ オ ン の吸 着量 が 活 性剤 陰 イ オ ン に比 べ て 小 さ い こ と か ら も 証 明 され る64)。 CMC付 近 で は両 イ オ ンの 吸 着量 はほ ぼ等 しくな る。 図 -4に よれ ば ,吸 着量 はCMCで 一 度 減少 して の ち,再 び 増大 す る 。 この 領域 で の 吸着 量 はGibbsの 式 に よ る 図-4 Aerosol OTNの 吸 着 量 45

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計 算 値 よ り は るか に大 きい 。 同様 の結 果 は 陽 イ オ ン 界 面 活 性 剤Aerosol SE (stearamidopropyldimethyl-2-hydroxyethyl ammonium sulfate)に つ い て も得 られ て い る。35Sを 用 い る場 合 に は水 面 下10,000∼20,000Aか らの放 射 線 も水 面 上 に出 て くるか ら,単 分 子 吸 着 膜 の 下 に ミセ ル が 蓄 積 す れ ば ト レー サ ー 法 で得 られ る見 掛 けの 吸 着量 は 異 常 に 大 き くな る。 この よ うな 誤 差 は3Hを 用 い れ ば 避 け られ る。3Hで 標 識 した ドデ シル 硫酸 ナ トリ ウ ム水 溶 液 の吸 着 量 を 測 定 す る と,5×10-10mol/cmな る飽 和 吸 着量 が 得 られ る65)。これ は1分 子 当 た り33A2 の 単 分 子 膜 に相 当 す る。 これ はDaviesの 状 態 式66)の 極 限 面 積33A2に 一 致 し,ま たPethicaの 式67)の 極 限 面 積31A2と もよ く合 う。 しか し,表 面 張 力 と 濃 度 の 関 係68)に よれ ばCMC (1.46×10-3mol/l)以 下 の か な り 広 い 濃 度 範 囲 で 吸 着 量 は 一定 に な るは ず で あ るが,3H 標 識 に よ る直 接 測 定 で は これ は 一定 に な らな い 。 これ らの結 果 に よれ ば,(1) CMC以 下 の 濃 度 にお い て もイ オ ン対 や 小 さな ミセ ル の 形成 が 考 え られ る ので, Gibbsの 吸 着 式 に基 づ く取 扱 い は近 似 的 な もの にす ぎな い 。(2) Gibbsの 吸 着 式 か ら の結 論 と は異 な り,実 際 に はCMC以 下 の 濃 度 で は,過 剰 の 電 解 質 が 存 在 す る場 合 に も,単 分 子 吸 着 層 は完 成 され な い 。(3)中 性 溶 液 中 で 加 水 分 解 を起 こ さな い よ うな 強 電 解 質 で も,低 濃 度 で は表 面 加 水 分 解 が 起 こる。(4) CMC以 上 の濃 度 で は単 分 子 膜 のす ぐ下 に ミセ ルが 蓄 積 す る よ うな結 果 が 得 られ るが,こ れ は実 験 誤 差 で あ る可 能 性 が あ る。 ア ワ 分 離 法69)で は この よ うには な らな い 。 放 射 性 トレー サ ー法 に よ る選 択 吸 着 の 測定 に よ れ ば, Aerosol OTはAerosol OTNの 吸 着 単 分 子 層 を 追 出 す 鋤 。 ま たhexadecylsulfateはdodecylsulfateよ り も優 先 的 に 吸 着 され る63)。Sodium hexadecanoateは potassium dodecanoateに 比 べ て 約6倍 大 きな 選択 吸 着 性 を有 し,こ れ は メ チ レン基 当 た り2.75倍 の選 択 吸 着 性 に相 当 す る。 またsodium p-dodecyl-benzenesul-fonateとsodium dodecylsulfateの 混合 物 に つ い て の 実 験 に よれ ば ベ ンゼ ン環 の選 択 吸着 性 へ の 寄与 は3.5∼ 4メ チ レン基 に相 当 す る70)。 9・5 吸 着 速 度 長 鎖 極 性 化合 物 の 吸 着速 度 に つ い て は 多 くの 研 究 が な され て い る。 炭 素 数6∼8の ア ル コー ル の 水 溶 液 につ い て 動 的 表 面 張 力 をoscillating jet法 で 測定 した結 果 に よ れ ば,吸 着 は短 時 間(∼10-2sec)で 平 衡 に達 す る71)。し か し14Cで 標 識 した ス テ ア リン酸 ナ トリウ ム は吸 着 平 衡 に達 す る の に数 時 間 を 要 す る72)。吸 着 速 度 が 拡 散 だ け に ょ って 支 配 され て い るか 否 か に つ い て は まだ か な り不 確 実 で あ る72)∼75)。表 面 の老 化 速 度 が 遅 い 原 因 につ いて は, ほ ぼ完 成 した吸 着 層 へ 入 りこむ 際 の 立 体 的障 害 お よ び 同 符 号 の電 荷 を有 す る イ オ ンが 表 面 へ接 近 す る際 の電 気 的 反 発 が 考 え られ る74)。しか し今 日 で は,老 化 速 度 が 遅 い とい う結 果 は装 置 的 な 誤 りまた は重 金 属 イ オ ンや 高 級 ア ル コー ル な どの 不 純 物 の た め と考 え られ て お り49),長 鎖 化 合 物 の 吸着 速 度 は 電 荷 の 存 在 に よ っ て も影 響 され な い と され て い る。 活 性 剤 の 水 溶 液 か らの 吸 着 速 度 は次 式 で表 わ され る。 (32) た だ しnは 表 面 濃 度,B1は 定 数,cは 活性 剤 濃 度,θ は 表 面 の す で に占 め られ て い る割 合 で あ る。 吸着 の初 期 に お い て,θ お よび 脱着 速 度 が 大 き くな い と きに は,吸 着 速 度 はcに 比 例 す る。 脱 着 速 度 は次 式 で与 え られ る51)。 (33) た だ しB2はB1と 同 様 に 拡 散 に 関 す る 定 数 で あ り,W は 炭 化 水 素 鎖 の 吸 着 エ ネ ル ギ ー,Zは 活 性 剤 イ オ ン の 原 子 価,Ψ0は 表 面 電 位 で あ る 。20℃ に お い て は,B1= 2.6×1018(分 子/sec), B2=2×104(分 子/sec), WはCH2 当 た り810cal/molで あ る 。 吸 着 平 衡 に お い て は 式(32)と(33)を 等 し い と して (34) と な る 。 θ≪1, log(B1/B2)=14.1と し て, (35) と な る 。C10H21SO4-の50℃ に お け る 油-水 界 面 へ の 吸 着 量 に つ い て のKliegとLange76)の 測 定 値 と,式(25) か ら の Ψ0の 計 算 値 と の 関 係 は,図-5に 示 す よ う に, 3.2×10-2Mの 食 塩 を 添 加 した 場 合(黒 丸)も 添 加 し な い 場 合(白 丸)も 同 一 直 線 上 に の り,直 線 の 傾 斜 は 式 (35)の 値 に 一 致 す る 。 図-5 C10H21SO4-の 油-水 界 面 へ の吸 着 (昭 和39年1月6日 受 理) 文 献

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参照

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