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中学校における「集合と関数」の指導についての基本的な考え方とその指導の実践

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(1)

中学校 における「集合 と関数」の指導 につ

いての基本 的な考 え方 とその指導の実践

*) 数学科教育教室

)

I

研 究 の 目的 今回の学習指導要領 の改訂(昭和52年)で

,中

学校 における関数指導の系統が大 き く変更 された。 昭和44年度版の指導系統が一般か ら特殊 へ とい う形 を とっているのに対 して

,新

学習指導要領 で

,生

徒 と事象 との出合 いを大切 にしなが ら関数指導 をす るという考 え方に基づ き

,そ

の指導系統 は特殊 か ら一般への形 を とっている。関数が実際の現象 と深い関係 をもっていることと人間が獲得 して きた関数概念の発展史か らみて

,こ

の新 しい指導系統 は妥当な もの といえよう。 この ような指 導系統の変更 は当然 その扱 い方の変更 を要請す る。 この新 しい指導系統の流れか らすれ ば

,今

後の 中学校 における関数指導では,

(1)ど

の ような事象 を取 り上 げ

,そ

れ をどのように考察・ 処理 させ ることによって

,変

化や対応 の見方・ 考 え方 を身 につけさせ るか.

(2)具

体 的な事象 との関連で学 んで きた関数関係 を

,い

かに して

2集

合の要素間の一意対応 に拡 げ

,高

めるか。 が

,そ

の取 り扱 いを研究すべ き重要な点であると考 える。 そこで

,本

研究で は,(2)に焦点 を当てて実践研究 を試みた。すなわ ち,鬱)の指導に関 しての基本 的な考 え方の確立 と

,指

導の実践 によるその妥当性の検討が

,本

研究の目的である。.

H

中学校 の関数指導 につ いての考 え方

1.関

数概念の二つの解釈 と中学校の関数指導 関数概念の解釈 に二つの基本的な方向がある。第 1の 方向は

,古

典的 と呼ばれ るもので

,主

とし て数学の物理学や工学への伝統的な応用 をめざした ものであ り,「変量 (変数)」 概念 に基づいてい

*)

この研究の概要 は,日本数学教育学会第60回総会 (会場宮崎大学)において,「2数量間の対応 を2集合 の要素間の一意対応 に高 める指導 についてJと して発表。

**)鳥

取大学附属 中学校 昭   早 田   田 笹   黒

(2)

238

笹 田昭三・ 黒日早苗 :中 学校 にお ける「集合 と関数」の指導 について る。すなわち,「ある変量の値が他の変量の値 に依存 して変化す るとき

,は

じめの変量 をあ との変量 の関数 という」。第2の現代的 と呼 ばれ る方向は

,あ

い まいな変量 とい う概念 を放棄 し

,関

数 を「量」 の立場だけか ら考 えないで,「

2集

合の要素間の一意対応」として関数概念 を著 しく拡張 した もので ある。 この現代的な解釈 による関数概念 は

,古

典的解釈 よ り広い範囲の対象 を問題 にしてお り

,そ

れゆえ

,数

学の伝統的応用だ けでな く

,最

近生 じている多 くの新 しい応用 にも役立ち得 るものであ る。 新学習指導要領 においては

,中

学校第1学年か ら第

3学

年 まで学習する「関数関係」は第1の解 釈 による関数概念であ り

,第

3学

年の指導内容「集合 と関数」 における関数概念 は第2の解釈 によ るものである。 したが って

,中

学校第

3学

年の単元「集合 と関数」の指導の主なね らいは

,中

学校 第

1学

年以来

,第

1の解釈で学習 してきた関数概念 を

,第

2の解釈での関数概念 に拡張す ることで ある。その際に

,関

数概念 を拡張す ることの必要性や合理性 を

,い

かにして生徒 に理解 させ るかが この単元の指導で最 も重要な点であ り

,こ

れが また本研究の課題 である。

2.事

象 と中学校 の関数指導 自然現象

,社

会現象やわれわれの 日常事象は

,大

別すれば

,決

定的な事象 と非決定的な事象 に分 けられ る。 そして

,そ

れぞれの事象 を人間が把握

,記

述するために

,関

数の考 えや確率・統計 の考 えが生 まれてきたのである。

<<=r非

関数の考 え

(環

この ように

,関

数の考 えも

,確

率・統計の考 え も

,自

然現象や社会現象 を記述するために人間が 獲得 したアイデア (知恵

)で

ある。それだけにその応用範囲 も趣 めて広い。殊 に

,決

定的な事象 は 生徒の経験す る事象 に極 めて多 く

,そ

の考察 を通 して生徒 に関数の考 え方 を指導す ることは可能で ある。 この ような事象の考察 を通 しての関数指導 とい う行 き方 は

,上

述の関数の考 えの発生の観点 か らも

,ま

た数学教育 における有用性の重視 とい う観点か らも

,極

めて自然な行 き方であると考 え る。それゆえ

,中

学校の関数指導では

,生

徒 と事象 との出合 いを とくに重視 し

,そ

の考察 に際 して, 変化 と対応の見方・考 え方 を身 につけさせ

,問

題 の解決 に役立たせ る能力 を養 うことが肝要である。 また

,こ

の「事象 との出合 いを重視する」 とい う関数指導の行 き方 は

,実

用的視点か らだけでな く

,現

行学習指導要領 に掲 げられている「数学教育 の目標」の達成 をめざす という観点か らも

,極

めて意義深い もの といわなければな らない。われわれ は

,決

定事象 を分析的に考察することによっ て

,そ

の中に「相伴 って変わ る

2量

の関係」 を共通 に見い出 し

,そ

の抽象 として「関数関係」の概 念に到達す る。 さらに

,決

定事象 を

2量

の依存関係 として考察す ることによって

,変

化 と対応の見 方・考 え方が生 まれ

,そ

の考察・ 処理の し方 を帰納 し

,定

式化す ることによって

,変

化や対応の見 方・ 考 え方に関す る一般的な方法「関数の考 え方」が確立す る。次 に

,こ

の活用 として

,い

ろいろ な事象の中に

2量

の関係 を見い出 し

,そ

れを関数関係の具体 的なモデル として扱 い

,定

式化 された 「関数の考 え方」 を用いて

,論

理的に処理す る。 その結果 の解釈 については

,事

象の性格やその考 察の目的に応 じて

,そ

れにふ さわ しい具体的な意味づ けがなされる。 このような「事象 との出合い」 を重視 した関数指導 における一連 の活動 は

,現

行学習指導要領 の 中学校数学科の総括 目標 に掲 げる 「事象 を数理 的に とらえ

,論

理的に考 え

,統

合的

,発

展的に考察 し

,処

理す る」 ことの具体的実現 に他 な らない。上述の要点 を図解すれ ば

,次

のような図式 (図

1)が

得 られ る。

(3)

鳥取大 学教育 学部 教育科学 第20巻 第2号 数 理 的 に と ら え る 筋道 を立 てて考 える 統 合 的・ 発 展 的 に 考 察 し

,処

理 す る 図

1

事 象 と関数 の考 え 3。 中学校の関数指導 について考 え方

1,2の

考 え方に基づ き

,中

学校 の関数指導 においては

,次

2点

が とくに重要であると考 える。

(1)事

象 との出合 いの重視 関数 は決定事象 を把握・ 考察するために人間が獲得 したアイデアである。 したが って

,そ

の応用 は極 めて広 く

,生

徒が経験 する身近 な事象のなかに も関数関係の事例が極 めて多い。 そ こで

,中

学 校 の関数指導では

,生

徒 と事象 との出合 いを大切 にし,そ の事象 を生徒 に考察 させ ることを通 じて, 対応 と変化の見方・ 考 え方 を身 につけさせ

,問

題解決 に役立 ち得 る能力 と態度 を養 うことを

,ま

ず 第一の重点 としなけれ ばな らない。なお,この事象 との出合 いを重視す る指導では

,上

記の図式(図

1)に

おける (抽象

),(定

式化

),(問

題の解決

)の

それぞれの矢線部の段階の学習指導が極 めて重 要であると考 える。 レ

)関

数概念の拡張 と関数 による事象の統合的把握 第

3学

年では

,中

学校 における関数指導の まとめ として

,こ

れ まで事象 との関わ り合 いで学習 し て きた

,第

1の解釈での「関数関係」 を集合の立場で見 なお し

,第

2の解釈で関数の意味 を明確 に する。すなわち

,既

習の具体的な関数関係のい くつかの事例 を考察 し

,そ

のなか に共通性 (伴なっ て変わ る

2量

間の対応)を見 い出 し

,さ

らに これを純化

,一

般化することによって,「

2集

合の要素 間の一意対応

Jを

関数関係の本質的特性 として抽出する。そ して

,こ

の関数関係 の本質的特性 に基 づ き

,集

合の立場で関数の意味 を明確 にする。 このように量 を捨象 し

,集

合の立場で関数の意味 を 見直す ことは

,そ

れ まで関数関係の対象 として扱われなかった

,多

くの事象 を関数の対象 として包 括でき

,い

わば関数の視界 を大 き く拡 げることに連がるのである。 このようなことが らに関す る一連の学習 は

,概

念の明確化

,概

念の拡張

,数

学的考 え方(抽象化・ 一般化の考 え

,統

合の考 えな ど

)の

育成

,広

汎な事象への関数の考 えの適用な どの諸点で

,数

学教 育上極 めて大切 なことである。 この ような観点か ら

,第

3学

年の「集合 と関数」の指導 は

,中

学校 の数学教育 において も

,極

めて重要な位置 を占めるもの といわなけれ ばな らない。 I 関 数 関 係 (関 数) 関 数 の 考 え 方 (対応・ 変化の見方)

(4)

240

笹田昭三・ 黒 田早苗 :中 学校 にお ける「集合 と関数」の指導 について

「集合 と関数」 の指導 についての基本的 な考 え方 と研 究 の焦点

本章では

,第

H章

で述べた考 え方 に基づいて

,単

元「集合 と関数」の指導のね らい を設定 し

,さ

らにその指導過程のパ ター ンを図式化することによって

,指

導の重点 を明確 にす る。 また

,最

後の 節では

,本

研究の課題 と研究のね らいを焦点化する。

1.指

導のね らい 本単元 は

,中

学校 の関数指導の まとめの段階であつて

,次

の ことを主なね らい とする。

(1)こ

れ まで事象 との関わ りで考 えて きた関数関係 を集合の立場で見 なお し

,関

数の意味 を拡張 す る。 鬱

)こ

の ように関数の意味 を拡張 す ることによって

,伴

なって変わる数量関係だけでな く

,多

く の事象を 関数の対象 として把 えることがで きるようにす る。

2.指

導過程のパター ン 中学校 では

,小

学校 の関数指導の基礎 の上 に

,伴

なって変わ る二つの数量 の関係 を「関数関係」 として とらえる。そして

,第

1学年で は比例・ 反比例 など身近 にある具体 的な関数 を

,第

2学

年で は1次関数

,第

3学

年で は

1次

式で表わ されない身近 な関数 を

,そ

れぞれ取 り扱 い

,具

体的な事象 についてかな り豊かな体験 を与 えている。そこで

,本

単元では

,第 1学

年以来学習 して きた「伴 なっ て変わ る二つの量」のい くつかの事例 を取 り上 げ

,こ

れに次の図式 (図

2)で

示 され るような考察 や検討 を加 えることによって

,集

合の立場 に立 った関数概念 (第2の解釈

)を

形成す る。 また

,こ

のように量 を捨象することによって得 られた

,新

しい意味の「関数」が

,数

量関係 だけでな く多 く の事象 を関数の対象 として包括で きることも生徒 に認識 させ る。すなわち

,本

単元の指導過程 の主 要部 は

,次

の図式 (図

2)で

示 され る通 りであ り

,そ

の指導に際 しては

,図

式 における矢線 の段階 をとくに重視する。 図

2

指導過程のパターン 伴 って変 わ る事 象 (二つの集合

X,Y)

(一 意 対 応) (魯ば曇星と:暫) (二つ の量) (gま1蓼 tゴ ) (変 わ る) 事象 の統合 的把握 (萱

)

(5)

鳥取大学 教育 学部 教育 科学 第20巻 第2号 241

3.指

導過程 の重 点 と指導 上 の留意 点 ①の段階の指導

1学

年以来学習 してきた「伴なって変わる二つの量」のい くつかの具体的 な関係 を取 り上げ

,そ

のなかにある共通性 を探索 し

,こ

れを抽出する。 この場合

,片

よらない,Vゝ ろいろの

2量

の関係を取 り上げることが

,抽

象を容易にする上で大切なことである。 ②の段階の指導

①の段階で抽出 した共通性を「

2集

合の要素間の一意対応」に高めるために, 数量間の対応でない事例を提示 し,これによってこの共通性 を集合の立場で見なおす契機 をつ くる。 さらに

,新

しく添加 した事例 にも適合する共通性 を求める必要性 を生徒に感 じさせるとともに

,①

の段階で提示 した事例の変域に注 目させるなどをして,次のように生徒の思考の自然な移行 を図る。 (二つの量

)

(二

つ の数量 の集合

)

(二

つ の集 合) [変域 へ の注意

] [新

しい事例] また

,こ

の よ うな基礎 の もとに

,(Xが

い ろい ろの値 を とる)一一 →

(Xが

あ る範 囲の数値 を とる) 一 一 →

(Xは

集合

Xの

任意 の要素 を とる

)と

緩 やか な移行 を図 って

,集

合 の こ とば に よ る変 数概 念 を確 立す る。 ③ の段階の指導

②の段階で量 を捨象 して一般化 した共通性 に基づ き

,関

数 を集合 の立場で定 義す る。 その際

,こ

の定義 は

,第

1学年以来学習 して きた,「関数関係」に共通 にある性質 に基づい て

,関

数の意味 を明確 に した ものであることを意識 させ る。 ④ の段階の指導

「抽象 一→ 一般化 ――・ 定義」 の過程 をふ り返 ることによって

,新

しい関 数の定義 は

,第

1学年以来学習 してきた「関数関係」 を

,数

量 という制限 を捨てて集合の ことばで 自然 に見 なお した ものであることを知 らせ る。 また

,こ

の集合 による見なお しによって

,従

来の関 数関係の枠 に入 らない

,多

くの決定事象が関数 として把 えられることを知 らせ る。すなわ ち,「関数 の 目

Jが

大 きく開かれた ことを生徒 に認識 させ る。

⑤の段階の指導

④段階の認識に基づき

,あ

るいは④段階の理解を促がす意味で

,い

ろいろの

決定事象を取 り扱い,こ れらがすべて関数として統一的に把握できることを知らせる。さらに④

,

⑤ 段階の学習を通して

,関

数を集合の立場で見なおすことの意義や良さを生徒に理解させる。

4.研

究 の問題 点 と研 究 の焦 点

(1)研 究の問題点

指導過程のパターンの図式

(図

2)に

おける②段階の指導と④

,⑤

の段階

の指導をいかにするかが

,本

単元の指導で最も重要なところであり

,本

研究の課題である。すなわ

,

「伴なって変わる二つの量の関係」をいかにして「2集 合の要素間の一意対応」に抽象し

, 局 め るか。

関数概念の拡張について,そ の必要性やその良さや意義をいかにして生徒に理解させるか。

)研

究の焦点

研究の問題点の①

,②

に示される課題を解決するために

,今

回の実践では

,

次のことに焦点を当てて研究を進めた。

指導過程のパターンの確立 と指導の重点について

よりよい題材・事例の選択について

関数を実体化するための図式

(ブ

ラック・ボックス

)ゃ

関数記号の取 り扱いについて

指導法の工夫 。改善とぶさわしい教具の工夫 。開発について

(6)

242

笹 田昭三・ 黒 田早苗 :中 学校 における「集合 と関数Jの指導 について Ⅳ 実 践 指 導 の 計 画

1.単

元「集合 と関数」の指導計画

(1)単

元の指導 目標

これまで学んだいろいろな関数関係を

,二

つの集合の要素間の一意対応として見なおすこ

とにより

,関

数の定義を明確にし

,関

数の意味の理解を一層深める。

関数を記号 y=f(x)を 用いて表すことのよさを理解する。

関数を「何から何への対応」として意識することにより

,定

義域 と値域の意味を理解する。

さらに関数は

,対

応のちがいだけでなく

,定

義域

,値

域のちがいによっても区別されること

を知 る。 ④ いろいろな日常事象や数学的事象の対応関係 を調べ ることによ り

,関

数 と関係 を区別 し, 関数 を広い意味で理解する。 また

,こ

のような考察 を通 して

,決

定事象の対応関係 を関数 と して統一的に把握で きるようにす る。 は

)単

元の指導計画

(総

時数

4時

間) ヒ 日 導 目 標 内 容 の 概 要 配 当時間

1.

二 つの集合の要素間の一意対応 と関数の定義

(1)具

体的な関数関係 を対応図に表 し

,そ

のなかに共通性 を見 つける。

(2)数

量間の対応関係 を

2集

合間の対応関係 に拡 げ,高めて関数 を定義す る。

(3)新

しい関数の定義 に基づ き

,関

数であるもの と関数でない ものを弁別する。

2.

いろいろな関数

(1)関

数 を表わす記号 ① いろいろな関数関係 か ら対応 の規則 を発見 し

,そ

れ を記号

y=f(x)で

表 わせ ば便利 な ことを理解す る。

グループで協力して関数づくりをする。また

,他

のグループの作つた関数

の対応の規則 を発見する。

(2)定

義域 と値域 ① 関数では

,対

応の方向性が重要なことを知 り

,定

義域

,値

域の区別 を理解 す る。 ② 定義域

,値

域のちがいによっては

,関

数が異 なることを知 る。 (働 いろいろな対応

事象のなかにはいろいろな対応があることを知 り

,関

数と関係を区別する。

決定事象の対応関係はすべて関数としてとらえられることを知る。

1

(7)

鳥取大学教育 学部 教育 科学 第20巻 第2号

2.レ

ディネス としての集合指導の計画 本単元の学習では

,レ

デ ィネス として

,生

徒が集合 についての基本的な知識 。概念 を身につけて お くことが必要である。 ところが

,新

学習指導要領では

,内

容 として「集合」 ということばは,

O

1学年の

C「

図形」の(動・ イに,「図形 を条件 を満たす点の集合 とみることJ

O

3学

年の

B「

関数」の(2)に,「二つの集合 について……」とあ り

,そ

のア として「集合 と関 数」がある。 の二か所 しかない。 これ は

,こ

れ らの内容 に関 してのみ集合 を指導す る という意味ではない と考 え るが

,

しかし実際の指導で は

,現

行学習指導要領下 における集合指導 よ り

,内

容的に も指導時間数 の上か らもかな り軽減 され るもの と思われる。 したがって

,本

単元の指導 に先立ち

,集

合 に関す る 基本的な概念・知識 を整理

,復

習するため

, 1時

間程度の指導 を計画す ることが必要であると考 え る。 今回の実践では

,対

象生徒が現行学習指導要領の下で学習 しているので

,そ

の必要 を認 めず特別 の時間をさいての集合指導 をしていない。ただ

,前

単元 として設定 した「いろいろな事象 と関数」 の指導のなかで

,

とくに変域 を重視 して

,そ

れぞれの対応 における変域 としての「数量の集合」 を 生徒が明確に表現で きるように指導 した。

3.事

前調査 。事後調査の計画 とそのね らい

(1)事

前調査 指導計画の各時の細案 を立案するにあたって

,事

前調査の実施 を計画 した。 その実施の意図の 一つは

,生

徒が これ までの関数教材の学習で

,ど

こでつ まづ き

,

どんな点に弱点 をもっているか を調べ

,そ

の結果 によっては

,指

導計画の一部 を修正 した り

,そ

の弱点 を補強す るための指導 を 加 えた りす るための ものである。 もう一つの意図は

,事

後調査の結果 と対比 して

,実

践指導の結 果の考察 に資す るためである。

内容面に関する調査

各調査問題 ごとにその出題 の意図を列挙すれば

,次

の通 りである。 調査

1

文字が異なって も

,変

域 と対応の しかたが同 じであれば

,同

下の関数関係 と生徒が見 な す ことがで きるか どうかを調べ る。 調査

2

関数関係の式表示が明確 にで きるか

,関

数で重要な変域のお さえが十分で きるか

,ま

た 関数関係 において変化す る数量 を指摘で きるか

,な

どを調べ る。 調査

3

対応図 を見 て

,関

数関係 と一般の関係の弁別がはっき りで きるか どうかを調べ る。 調査

4

変域 を指摘 し

,そ

れ を明確 に表現 で きるかを調べ る。 ② 情意面 に関す る調査 事前調査では

,内

容面 に関す る調査 とともに

,情

意面 に関す る調査 をしてお くことが極 めて重 要である。情意面 に関す る調査では

,こ

れ まで学習 した関数教材 について

,生

徒が興味 をもって いるか どうか

,ま

た関数教材の学習で

,生

徒が どんな点 に困難 を感 じているか

,な

どを中心に調 査する。 磁

)事

後調査 事後調査 は

,本

単元の指導事項の要点が生徒に理解 されたか どうか

,ま

たわれわれの指導過程 案や指導の重点のお き方が果 して妥当であったか否か

,な

どを調べ るために実施す る。 また

,事

前調査の結果 と対比 しなが ら

,生

徒が当初 もっていた関数 に関す る弱点が補強 されたか否か

,関

数に対する生徒の抵抗感が薄 らいだ り

,新

しい興味が生 まれたか否か

,な

どを調べ るために

,内

(8)

244

笹田昭三・黒日早苗:中学校における「集合 と関数」の指導について 容的な面 と情意的な面の

2面

についての事後調査 を計画 した。 ① 内容面 に関す る調査 調査

1

関数 と一般の関係の弁別がで きるか どうか

,ま

た非量の

2集

合間の一意対応 を関数 とし て とらえることがで きるか否か

,を

調べ る。 これは

,事

前調査の調査 3と 関連 する。 調査

2

事前調査の調査1と同質の ものである。

調査

3

指導過程の①

,②

の段階の指導の要点が理解されているかどうかを調べる。すなわち

,

伴なって変わる2量 の対応関係から

,何

を共通性として抽出し

,そ

れをどのように一般化して

新 しい関数の意味 としたか を問 うた ものである。 調査

4

関数の定義 と

,集

合の立場で関数 を定義 した ことの良 さや意義 を生徒が どれほ ど理解 し

ているかを調べる。すなわち

,指

導過程の③

,①,⑤

の段階の指導の要点が理解されているか

どうか を調べ る。 調査

5

関数 の式表示

[y=虫

x)]が

で きるか否か

,ま

た ブ ラ ック・ ボ ックスゃ対応 図か らX, yの対応 の規則 を見 つ けて式表示 で きるか否 か

,を

調 べ るた めの問題 で あ る。

情意面に関する調査

単元「集合と関数」を学習した後

,そ

の学習の感想を生徒に書かせ

,関

数に対する見方・考え

方が

,学

習 を通 して変 わ ったか どうか を調べ るための調査 で あ る。

V

指 導 計 画 の 細 案 とそ の 指 導 実 践

1.指

導の時期 と対象 とした生徒 昭和52年度

11月

上旬 よ り

4時

間 本学部附属中学校第

3学

年 (172名) 昭和53年度

7月

上旬 よ り

5時

間 本学部附属中学校第

2学

年 (176名) (注

)本

年度 は

,指

導計画 に示 した第

2時

の指導 (関数 を表す記号

)に

2時

間要 したため

, 5

時間扱 いになった。

2.事

前調査問題 とその調査結果 昭和52年度 は

,上

記の ように第

3学

年 を対象 に

,ま

た昭和

53年

度 は

,第

2学

年 を対象に事前調 査 を実施 した。 ここには

,昭

和53年度 に実施 した事前調査問題 とその結果 のみ記載する。

(1)内

容面 に関 す る調査 調査

1

つ ぎのなかか ら

,y=5X-6と

同 じ関数 関係 を表 す もの を選 べ。 実数 を表 す もの とす る。

(1)S=5t-6 (2)y=7X+4 (3)m=5n-6

(4)y=10t+1

ただ し

,文

字 はすべて 調査

2 200チ

入 りのタンクに,あ らか じめ水が50′ はいっている。この水 そ うに

,毎

分20ど の 割合で水 を入れるとき

,つ

ぎの問いに答 えよ。

(1)入

れはじめてか ら

X分

後 にy′ はぃっていた として

, yを Xの

式で表せ。 修

)yの

変域 を書 け。

(3)入

れ は じめてか ら

,何

分後 に

,水

はい っぱい にな るか。 に

)次

第 に変 わ って い く数量 をすべて書 け。 調査

3

つ ぎに対応 図 を見 て

,関

数 で あ る もの に は○印 を

,関

数 で ない もの に は ×印 を

,( )内

に言己入 せ よ。

(9)

鳥取大学教育 学部 教育 科学 第20巻 第2号 調 査

4 1冊

60円の ノー ト

X冊

の値段 を

y円

とす る。ノー ト て

, yの

変域 を求 め よ。

12)情

意面 に関 す る調査 調査

1

関数 の学 習 は

,他

の分野 の学 習 に比較 して どうか。 記入 せ よ。 を

5冊

以上

,10冊

以 下 買 う もの とし 10 ︲5 Y 鬱) 82 は) 72 資 υ 低)

Tコ

つ ぎの表 の適 す る ところに

,○

印 を

とて もあ る やや ある ぶ つ う あ ま りない ほ とん どない 興 味 46 4 難度 34 2 調査

2

関数の学習に困難点があれば

,具

体的に書 け。(回答のお もなもの)

(1)対

応表が与 えられた とき

,関

数の式の求め方が よ くわか らない。 (動 関数 と関数でない ものの

,見

分 け方が よ くわか らない。

(3)Xや

yの変域の書 き方が よ くわか らない。

(4)y=k,X=hが

,な

んで関数 なのか疑間 をもっている。 3。 指導計画の立案 と指導実践で配慮 した点 調査 1の 結果 は

,正

答率

58%と

予想外 に低 く

,関

数が対応づけの働 きであることについての生徒 の理解 は極 めて低い。したがって,この点 についての意図的な指導が必要であるも調査3の結果(正 答率

65%∼ 89%)を

見 ると

,関

数 とは

, 1対

1,多

対1の対応関係 にあるものだ とい うことを生徒 は漠然 とは知 っているようだが

, 2集

合間の一意対応 として明確 に把握 している とは言 い難 い。 し たがって

,こ

の点の指導は

,本

単元の指導の重点事項 にあげなければならない。 また

,情

意面の調 査では

,Xや

yの変域の書 き方が よ くわか らない といっている生徒がいた。 この点か らも

,関

数指 導では

,変

域の表示 に注意 させ る指導が重要である。以上 のような事前調査の結果 をもとにして, 指導計画の立案 に際 しては

,

とくに

,次

の点 を重視 して指導計画の細案 を作成 した。すなわち

,既

(10)

246

笹田昭三・ 黒日早苗 :中 学校 にお ける「集合 と関数」の指導 について 習のい くつかの関数関係 を考察 させ

,生

徒活動 を通 して

,そ

のなかにある本質的な共通性 を抽 出 さ せ

,そ

れ をもとに して

,関

数の定義 を明確 にす る。「一意対応」とい う関数の働 きを

,ブ

ラ ック・ボッ タスの働 きという具体 的なイメージ と結 びつけて指導す ることによって

,関

数 は対応づ けの働 きで あることを印象づ ける。また

,変

域 を明確 にする とともに

,定

義域

,値

域 を区別す ることによって, 関数の対応の方向性や

,関

数が

2集

合間の一意対応であることを明確 にする。

4.

指導計画の細案 〔1〕 第1時の指導計画

(1)題

材名

2つ

の集合の一意対応 と関数の定義

12)本

時の主 な指導 目標

あいともなって変わる

2つ

の量を考察することにより

,そ

れらの関係における共通性とし

,つ

ぎの こ とが らを抽 出す る。 切

2つ

の数量 の集合が あ る こと

m 2つ

の数量 の集合 の間 に

,一

意対応 が あ る こと

①の共通性を

,「

2集 合の要素間の一意対応」に一般化することによって

,関

数を定義 し

,

関数についての理解を拡げ深める。

(3)授

業展 開 のパ ター ン 5つの事例 (数量 の対応関係) 共通性の抽 出 7月の暦 の 日 と曜 日の対応

2集

合間の一意対応 として、共通性 を拡 げ、高める 関数の定義 概念の弁別 (新しい事例)

(4)展

開計画 1。 本時 は,関数の定義 について学習す ることを告 げ,関数関係 には,どんな 表 し方があったか を考 える。 2. つ ぎの問題 を提示す る。 ○本時学習事項 を把握 さ、せ,関数の表 し 方に,式 ,グラフ

,対

応表,対応図が あった ことを想起 させ る。 O問題 はプ リン トして与 える。 〔問題

1)

つぎの(a)∼(e)の関係を表 した式 とグラフや,対応表を見て,下の 問いに答えよ。 指 導 の 段 階 と ね ら い 指導上 の留意点 と評価 の観点

(11)

鳥取大 学教育 学部 教育 科学 第20巻 第2号 い

)毎

時60 kmの速 さで, X時間 にy km進んだ。

(b)1枚

50円の切手 をX枚買 つて,500円札 をだ した らy円の おつ りがで た。 倖

)縦

の長 さがX cm,横の長 さがy cmである長方形の面積 は6∬である。 ω

)書

籍小包の重 さX liBの送料 は, y円である。 (e)ある場所 の時刻X時の気温 は, y度である。 〔式

,グ

ラフ,対応表〕 (b) 可 I I I 関1(a)∼(C)のグラフに誤 りが あれ ば正せ。 問

2

各 グラフや,対応表 を見 て,つぎの対応図の( )のなかには適 当な 量 と,その単位 を,また, 対応図 を完成せ よ。 のなかには,適当な数値 を記入 して,

( )

コ 22 (1)問1を解決す る。 ○グラフの誤 りに目をむけさせ る ことに

(12)

248

笹 田昭三・ 黒 田早苗 :中 学校 における「集合 と関数」の指導 について (2)問2を解決す る。 よ り,関数関係 では

,変

域 を考 える必 要性のあることを意識 させ る。 O本時 は,具体 的数量 の対応関係 をもと に,それを集合の対応関係 まで高め る ことが 目標の1つであるので

,上

記の 5つの事例 を提示 した。 15/50

3.

〔問題1〕 で書 いたX, yの関係 を 表す式,グラフ

,対

応図を見て,つぎ のことを考える。 (D(a)∼(C)に,つぎのような共通性が あることに気づ く。 ①

2つ

の数量の集合がある。 ② 一方の数量が きまれば,他方の 数量 もきまる。 ③ 一方の数量が変われば

,他

方の 数量 も変わる。 修

)共

通性が,(a)∼(e)のどれにもあて はまる点を確認する。 ○共通性の抽 出は,できるだ け生徒 か ら でて くるように配慮 す る。表現が不備 な場合 には,生徒 との問答 を通 して, それ を純化する。 O①の「2つの数量の集合」の抽 出が困 難 な場合 は, 2つの数量 は,それぞれ 範囲の限 られた数量であ る ことを意識 させ ることによって

,①

の抽 出がで き るように留意す る。 O①

,②,③

は,いろいろな関数関係 に 共通 な性質であ ることを認識 させ る。 30/50 4。 これ らの共通性 を, 2集合 間の一意 対応 に高める。 (1)今年7月の暦 の 日 と曜 日の対 応 が, 3(1)の共通性 を満足 す るか どう かを考 える。

9)共

通性 を,次の ように高 める。 ① は,「2つの集合

X,Yが

ある。」 ② は,「集合Xの各要素 に対 して,集 合Yの要素がただ1つにきまる。」 ③ は,「Xは集合Xの任意 の要素 を と る。」 ○曜 日が数量でないこと,また,その点 でのみ共通性 を満た さない ことに気づ かせ る。 ○(1)の今年7月の暦 の 日 と曜 日の対 応 も,関数関係 として とらえさせたい。 そのためには, 3(1)の共通性 を どの よ うに改良すればよいか を考 えさせ る。 Oこ こが,本時学習の重点 であ るので, 充分時間 をかけて指導す る。 40/50 関数を定義 し,その意味を理解する。 (D 42)の共通性に基づ き,つぎのよ うに関数を定義する。 ○関数 を定義す る際 には,関数関係 にあ るものの共通性 に基づ き

,関

数の意味 を明確 にす るのだ とい う点 を意識 させ る。 O関数 を定義するには, 2つの集合 の対 応の しかた,対応 の方向性 に着眼す る ことが大切 である。対応 の方向性 は, 次時 に指導す るので,ここで は,簡単 にぶれ る程度 にす る。 │

(13)

鳥取大 学教育 学部 教育 科学 第20巻 第2号 ② つぎの問題 を提示す る 49/`0 〔問題3〕 つぎのような対応は関数 といってよいか。 また,おのおの場合の 集合は,な にかを答えよ。(ただ し,対応の しかたは,前者から後者へ とす る。) (1)円の半径の長 さと,その半径 を もつ円の面積 との対応 鬱

)今

年 7月 の暦 の,曜日と日との対応 13)この クラスの各生徒 と,各生徒 の身体検査 のデー ター (身長,体重, 胸 囲)との対応 (4)この クラスの各生徒 と,今学期の中間 テス トの成績 との対応 ① 上記の問題 を解決する。 ② 数量関係の対応でな くて も,「一 意対応」は,関数であることを知 る。 0これ まで,関数関係 と見 なかった事象 までが,新しい意味での関数で あるこ とを知 り,関数の意味の拡張の良 さに 気づかせ る。

6.本

時学習事項の まとめ と,次時予告 をす る。 ○本時学習事項 の要点 をまとめ,次時 は 関数 を表す記号 について学習す ること を告 げる。

5%0

〔2〕 第

2時

の指導計画

(1)題

材名 関数を表す記号

12)本

時の主な指導目標 ① ブラック・ ボックスの活用によって

,関

数の機能 (一意対応

)の

具体的イメージを得ると ともに

,関

数記号

y=f(x)の

意味を理解する。

` ② ブラック・ ボックスに

,フ

ラッシュカー ドを入れた り

,出

した りするとき

,そ

2集

合の 要素間の対応のきまりを発見する。

③ 変数 Xと 変数 yの 対応のきまりを

,y=f(⊃

,さ らに具体化 して

,y=2X+4,y=10_

X等

の式で表す。

グループで協力して

,関

数の間作したり

,他

のグループめ作った問題を解いたりする。

(3)授

業展 開 のパ ター ン 、関数の定義の復習 ブ ラ ック・ ボ ックスの働 き ブラック・ ボックスのふた を開いた状態 ボ ックスのふた を した状 態

(14)

笹田昭三・ 黒田早苗 :中 学校 における「集合 と関数Jの指導 について 僻

)展

開 計 画 ノ

=2χ

+4,ノ

=10-χ

等 の表 し

=/(χ)の

表し方

/(χ

)=2χ

+4,ア

)=10-χ 等の表し方

グル ー プ ご との問作 と、 その解決 指 導 の 段 階 と ね ら い 指導上の留意点 と評価の観点 時間配分

1.前

時の復習 と,本時学習事項 の把握 (1)関数の定義 と,関数 を集合の立場 で見 なお した意義 について,生徒 の 理解 を確 かめる。 ② 本時 は,関数 を表す記号 について 学習す ることを告 げる。 ○問答法 によ り,前時学習事項の理解 の 程度 を確かめ る。理解不十分 な場合 に は,少し時間 をさいて,これ を補 う。 O本時学習事項 を把握 させ る。 5///50 ブラック 。ボ ックスの働 きは,関数 の一意対応 であることに気づ く。また, その働 きを,「f」で表す ことを理解 す る。 ブラック・ ボックスに,つぎに示 す ような きま りで,対応す るフラ ッシュ カー ドを入れた り出 した りす る とき, 入力の集合

X,出

力の集合Yの対応の きまりを発見する。 問

l f:入

力 を3倍す る。 問

2 f:10よ

り入力 をひ く。 問

3 f:入

力 を5倍して1を加 える 間

4 fi入

力の小数第1位を四捨五 入 す る。 問

5 f:入

力 を2倍して4を加 える ○ブラック・ ボ ックスの働 きを,自動販 売機 の働 きと関連 させなが ら理解 させ る。入れ る もの を入力,出す もの を出 力,その働 きを,「fJで表す ことを約 束す る。 O左記の問1∼問5の問題 について,あ る数 を入れた ら,それ に対応 して, ど んな数がでたか を考 えさせ,対応の き まり,「fJを 発見させる。 また

,□

に あて はまる数 も発見 させ る。 入れ る数 を書 ぃたヵ― ドは,下記の 問題例 に示す よ ぅに, 4∼ 5種類 とす る。 ○(例)問1 ー 3 6 2 ー 15 □

1雅

0

(15)

鳥取大 学教育学部 教育科 学 第20巻 第2号

4.3で

発見 した対応 の きまりを式表示 す るために

,次

の ような表 し方 をすれ ばよし】ことを知 る。

f( )=2× ( )+4

f( )=10-( )

な ど 5. 関数 を表 す記号 として, y=f(x)お よび

, f(X)=2X+4,y=x_10等

の表 し方のあ ることを

,ブ

ラック・ ボ ックスの入力 の代表元 を

X,出

力 の代 表元 をyとして

,X, yの

対応関係 を も とに して理解 す る。 O問5の対応 の きま りの式表示 を考 えさ せ,( )をつかつて

,f()=2× ()+4

とすればよい ことに気づかせ る。他 の 問題 は,これにな らって,生徒 に式表 示 させ,問4は式表示 で きない ことに 気づかせ る。 O式表 示

f()=2× ()+4に

お い て, ()の中に,いろいろな数値 が入 り得 る ことか ら,これ に変数Xを入れて表せ ばよい ことに気 づかせ る。 Oブラ ック・ ボ ックスのふたを した状態 はy=f(x),ぶた を開 い た 状 態 は,

y=2x+4と

表せ ることを示 し

,他

の問題 の式表示 は生徒 に考 えさせ る。 28発0 6. グループで,教師の提示 した条件 に あ う問題 を, 1グループ1題ずつ協力 して作成 して提示 する。問題作成,提 示の順序 は,つぎの通 りにす る。 (1)グループで協力 して問作す る。 修

)作

成 した問題 の妥 当性 を,グルー プで検討す る。 ① 代表者が,問題 を黒板 に提示す る。 7. 他のグルー プの作 った問題 を

,各

グ ループが協力 して解決す る。 O作成 す る問題 が,むつか しくな らない ようにす るために,あらか じめグルー プ長 を呼び,問題 はグループ内で よ く 検討 し,やさしい問題 を作成す るよう に注意 してお く。 ○時間節約のため,模造紙 を各 グループ に与 え,それ に作成 した問題 は記入 し て提示 させ るように配慮す る。 O他のグループの作成 した問題 を解決す るにあた つては,グループ内で,十分 話 しあつて解決 す るように指示 す る。 48/50 8. 本時学習事項 の重点の まとめ と,次 時予告 をす る。 ○本時 は,関数 を表 す記号

y=fω

と関 数の働 きの発見 の しかたについて学習 した。次時 は

,定

義域 と値域 について 学習す るこ とを告 げる。 59/50 〔3〕 第

3時

の指導計画 (省略) 〔4〕 第

4時

の指導計画

(1)題

材名 いろいろな対応

12)本

時の主 な指導 目標 ① いろいろな日常事象や

,数

学的事象の対応関係 を調べ ることによ り

,い

ろいろな対応関係 のあることを知 り

,関

数 と関係 を区別する。 ② 関数 を集合の立場で定義す ることの必要性

,ま

,そ

の よさを

,第

1時

の授業 を想起 しな が ら再確認 し

, 1年

以来学習 して きた関数関係 と

,関

数の包摂関係 を理解す る。

(16)

笹田昭三・黒日早苗:中学校 における「集合 と関数」の指導について

決定事象の対応関係は

,す

べて関数として, とらえられることを理解する。

グループで協力して

,諸

事象のなかから関数をさがすことにより

,関

数の理解を一層深め

る。

(3)授

業展 開 のパ ター ン 仰

)展

開計画 1. 前時の復習 と本時学習事項の把握 (1)定義域 と値域 について生徒の理解 程度 を確 かめる。 似

)本

時 は,いろいろな対応 について 学習す ることを告 げる。 2. つ ぎの問題 を提示す る。 O問答法 によ り,前時学習 した事項の理 解程度 を確かめる。理解不十分 な点 は 補 う。 O本時学習事項 を把握 させ る。 ○問題 は,模造紙 に書 いて提示 する。 関数 と関係 の弁別 関数の定義の再確認 なぜ集合の ことばで、関数 を見 なお したか その必要性 は ? その良 さは ? 非量間の対応 も関数 として とらえるため 第

1時

の授業 を想起す る 非量 間 のす べ ての一意対応 を 関数 として見 る こ とがで きる

1年

以来学習 してきた関数関係 と、関数の包摂関係 は? 数学の発展性、拡張 性 にふれ る 関数 は、関数関係 の意 味 を拡 げた もので あ る 身のまわ りのなかか ら、関数 とよべ る もの を で きるだ ')多 くさがす 指導の段階 と指導のね らい 指導上 の留意点 と評価 の観点

(17)

〔問題〕 つぎのなかから,関数 を選べ。ただ し

,対

応の方向は,前者か ら後 者へとする。 (1)多角形の辺の数 と,内角の和の対応 修

)三

角形の底辺の長 さと,その面積 との対応 偲

)定

形外の郵便物の送料 と,その重量 との対応 は

)タ

クシーの相乗 りで

,乗

る人数 と, 1人あた りの料金 との対応 脩

)自

然数の集合で,各自然数 と,その約数 との対応 鳥取大 学教育 学部 教育科 学 第20巻 第2号 上記 の問題 を,その対応関係 を調べ て解決す る。

3.第

1時の関数の定義 を再確認 し,つ ぎの ことを考 える。

(1)1年

で定 義 した関 数 関 係 の意 味 を,なぜ集合 の立場 で見 なお したか を,つぎの2つの観点か ら考 える。 ① その必要性 について考 える。 非量 の2集合間の一意対応 も,関数 として とらえるために,集合 の立場 で見 なお した。 ② その長 さについて考 える。 集合 の 立場 で見 なおす ことによって, 非量 間のすべての一意対応 をも,関 数 と してみ ることがで きる。

4. 1年

以来学習 して きた関数関係 と, 集合の立場 で定義 した関数の包摂関係 について考 える。 (1)関数 とこれ まで学習 して きた関数 関係 を

,下

記の よ うなベ ン図 に表記 す る。 (21 これ まで学習 した数式教材 や,図 形教材等のなかか ら,意味の拡張 さ O上記の問題の対応関係 を調べ ることに よ り,(1),傲)が関数であ ることを理解 させ る。 ○生徒 に関数の定義 を発表 させ,それ を もとに して,関数の要点 をつ ぎの よう に板書 する。 (1)二つの集合

X,Y

(2) Xがきま胸開ゞ, yがきまる 131 Xは集合Xの任意 の要素 を とり得 る ○本時 は,集合 と関数の まとめの時間で あるので,関数 を集合の言葉 で定義 す ることの必要性や,その良 さを

,第

1 時 に学習 した「暦 の 日と曜 日の対応」 や,本時提示 した問題 を もとに して, 再考 させ る。 ○この ような考察 により,関数 を集合の 立場 で定義す ることは,「2量間の対応 以外 の対応 も,関数 と見 られ るように 関数 の視界 を大 きく拡 げる」 ことにつ なが る,とい うことを理解 させ る。

03年

の「集合 と関数」で定義 した関数 は, 1年以来学習 した関数 関係を否定 した もので はな く,これ をなかに含 めて, 関数の意味 を拡張 した もので あるこ と を,生徒 に気づかせ る。 この点 を, と くに強調する。左 のベ ン図において, ×印 に相 当す る事例 を生 徒 に発 表 さ せ,関数の意味の拡張 についての理解 を深 め させ る。 ○これまで学習した数学の内容のなかか ら,上記のような拡張の事例 をさが さ 10為 0

(18)

254

笹田昭三・ 黒 田早苗 :中 学校 にお ける「集合 と関数」の指導 について れた事例 をさがす。 さらに

,数

学 の 発展性

,拡

張性 について簡単 にふれ る。 せ ることによ り,数学 は固定的な もの でな く,必要 に応 じて拡張 され,発展 す る ものであることを知 らせ る。 30 +、 0 5。 各 グループで,身の まわ りのなかか ら,関数 とよべ るものを,下記の よう な順序で さが し,それが妥 当か どうか を,クラス全員で検討す る。 (1)各グループで,関数 をで きるだけ 多 くさがす。 修

)さ

が した ものが,関数であ るか ど うか を,グループ内で検討す る。 俗

)代

表者が,関数の例 を黒板 に提示 す る。 141 他 のグループの さが した関数が妥 当か どうか を,ク ラス全員で検 討す る。 ○関数の定義 を確実 に理解 させ,関数 の 考 えをいろいろな事象に適用で きるよ うにす るために,生徒 に,身の まわ り の事象のなかか ら,関数の事例 をさが す学習活動 をさせ る。 ○関数 をさがす場合の配慮事項 は,机間 巡視 しなが ら指導す る。 O時間節約 のために,各グループに模造 紙 を与 え,それ に,各グルー プで さが した関数 を書 きこませ,黒板 にはって 提示 させ るように配慮す る。 47ノ/50 6。 本時学習事項 の まとめ と,本単元学 習事項 の まとめ 本時 は,「いろいろな対応Jについて 学習 した事柄 の要点 をまとめる ととも に,集合の立場 で,関数 を定義 したよ さを皆 で確認 する。 ○本時が,本単元学習の最終時間 にな る ので, ここで は,本時学習事項 の要点 の まとめ とともに,本単元で学 習 した 要点 をまとめ,「集合 と関数Jの理解 を 深 める。 50 ′ 、0

5.事

後調 査 問題 とその調 査結 果 事 後調査 は

,昭

和52年度

,昭

和53年度 の両年度 とも実施 したが,こ こには昭和

53年

度 に実施 し た事後調査 問題 とその結果 のみ を記載 す る。

(1)内

容面 につ いての調 査 調 査

1

つ ぎの対応 のなかか ら

,関

数 で あ る もの を選 び

,関

数 で あ る もの に は

,( )内

に○印 を, また

,関

数 で ない もの に は

,( )内

に ×印 を記入 せ よ。

(1)あ

る中学校 の担任 の先生 と

,担

任 の生徒 との対応 関係 で,

先生から

,担

任の生徒への対応

( )

生徒から

,担

任の先生への対応

( )

12)1辺

の長さが

X clnの

ひし形の面積を

ycド

とするとき, Xか らyへ の対応

( )

ある人が,50円 切手 1枚 と

,20円

切手をX枚 買ったとき,支 払った金をy円 とする。この

とき

, Xか

yへ

の対応

( )

)X=(2, 3, 4, 5}と

,Y三 (8,15)で

, yは Xの

倍数である とい う関係がある と き

, Xか

yへ

の対応

( )

(19)

鳥取大学教育学部 教育科学 第 20巻 第 2号

(5)A町

の あ る 日の時 刻

X時

の気 温 を

y度

とす る と き

, Xか

yへ

の対 応

( )

調査

2

つ ぎの式で表 され る関数 のなかか ら

, y=3X+4で

表 され る関数 と同 じ もの を選 べ。 た だ し

,式

中の文字 は

,す

べ ての実数 とす る。

(1)y=2X-3 (2)五

=3m+4 (3)S=3t+4

(4)y=5X-4

調査

3

つ ぎの図式 は

,関

数の定義 をした ときの授業の要点 を示 した ものである。関数の定義 を した ときの ことを想起 して

,( )の

なかを適 当にうめよ。 ともな って変 わる事 象の対応関係 ︵共 通 性 質

(

)

(き まれば きまる)

(Xは

変 わる

)

( 2つ

の集合

)

(

)

(

)

調査4

(1)関

数 の定義 を書 け (2)(1)の よ うに関数 を定義 す ることは

,ど

の よ うな意味 を もつか。 つ ぎの項 目か ら

,最

もよい と思 うもの を選 んで答 えよ。 ① 集合は数学の基礎だか ら

,集

合を用いて関数 を定義 した。 ② 数量の間の対応関係だけでな く

,多

くの対応関係 を関数 としてみることができる。 ③ 集合を考えると

,変

域 (定義域

,値

)が

明確になる。 ④ 集合を用いて

,関

数の意味を明確にしただけである。 ⑥ わからない。 ① ② 88 ① ② ③ ① ② ③ ④ ⑤ 74 (86) 3

(20)

256 笹田昭三・黒田早苗:中学校 における「集合 と関数」の指導について 調査

5

つぎの(1)∼① の対応の きま りを見つけて

, I Iに

適す る数 を入 れよ。 また

,入

力の代 表元 を

X,出

力の代表元 を

yで

表す とき

,X, yの

関係 を

,つ

ぎの場合 について式 に表せ。

l L

Y 5 8 17 ―

Oぶ

た を した 状 態

y=

○ぶたを開いた状態

y=

○ぶたをした状態

y=

○ふ た を 開 い た状 態

y=

Oふ

た をした状態

y=

○ふ た を 開 い た状 態

y=

調査

6

関数

y=2X+7に

おいて

,定

義域

Aを

,A=(-3,-2,-1, 0,

値域

Bを

求 めよ。

12)情

意面 についての調査 調査 集合 と関数 を学習 して

,感

じた点 を自由に書 け。(生徒の書 いたお もな感想 は

,つ

ぎの通 りである。ただ し

,重

複分 も含 む。)

(1)こ

のたびの授業で

, 1年

で学んだ ときよ りも

,関

数 の定義が よ くわかった。

(2)身

の まわ りのいろいろな事柄 のなかに

,関

数関係 にあるものが沢山あることがわかった。

(D

集合で関数 を定義す ることの意味が

,よ

くわか った ような気がす る。

(4)関

数であるか

,関

数でないかを調べ るには

,対

応図 を書 いて見分 ければよいことに気づい た点 はよかった。

(5)ブ

ラック・ ボ ックスを利用 して出題 された

X, yの

対応の きまりを見つける問題 は

,直

観 でわか る問題 はよいが

,直

観でわか らない問題 は

,ど

の ようにして解決 した らよいかわか ら ない。しか し

,y=f(x)の

表現方法の意味 は

,ブ

ラック・ボ ックスを使 って授業 を進 め られた ので よ くわか った。 俯

)グ

ループで話 しあって問作 したので

,楽

しく授業 を受 けることがで きた。

17)グ

ループで問作 した り

,他

のグループの作 った問題 を解いた りす ることは

,他

のグループ に負 けまい とい う気持が出て

,や

る気がお こる。 偲

)1年

の ときは

,関

数 はあま り得意でなかったが

,こ

のたびの授業で関数が好 きになった。

0)2量

の対応 としての関数関係 と

, 2集

合間の対応 としての関数の関係が

,ベ

ン図で表す こ とによってはっき りした。 またそれによって

,関

数の意味が拡張 されたのだ

,と

い うことも よ くわかった。

(21)

鳥取大学教育 学部 教 育科学 第20巻 第2号 257 Ⅵ 指 導 結 果 の考 察

1.第

1時の指導 について

(1)問

題1で

,グ

ラフの誤 りを指摘 させた。 この意図は

,二

つの数量の関係 を二つの集合の関係 に拡 げて考 えさせ るためには

,生

徒 に変域 を意識 させ ることが必要だ と考 えたか らである。生徒 は(b),(C)のグラフの誤 りを容易 に指摘 した。 また

,こ

のような扱いが

,我

々の意図通 り

,指

導過 程の②の段階の指導 に有効 に働 いた ように思われ る。

(2)指

導過程の①の段階の指導

,す

なわち本時展開計画の段階

2(五

つの関数関係の事例 か ら共 通性 を抽出する

)の

指導で は

,昨

年度の場合

,時

間に比 して教材が多す ぎたため

,や

や授業が上 すべ りに流れた感があ り

,共

通性の抽出にかな りの抵抗があった。そ こで本年度 は

,問

題1を家 庭学習 にまわ し

,共

通性 の抽 出のための時間 を十分 とった。 そのためか

,学

習活動 は活発 に展開 され

,下

記 に示す ようないろいろな共通性質が抽 出された。

OXの

値が一つきまると

, yの

値 も一つ きまる。 ①

X,yの

対応の しかたが

1対

1か多対

1で

ある。

Oど

の関係 も対応図に表せ る。

OX, yは

ともに数量 を表す数値 である。

OX, yは

それぞれ二つの集合の要素である。

OXが

変われば yも 変わ る。 この ように

,生

徒 によって関数関係の多様 な共通性質が抽出 されたが

,授

業者 は

,生

徒 との問 答 を通 して

,こ

れ らを整理・ 統合 し

,本

質的な共通性 として

,次

の三つの事柄 を抽出 した。 ① 二つの数量の集合がある。 ②

Xの

値が きまれば

, yの

値が きまる (一方が きまれば他方が きまる)。 ③

Xは

変わ る

(Xは

ある範囲の数量の数値 を自由にとる)。 本時の授業では

,上

記の ように生徒か ら多様 な共通性が出され ることが

,後

の指導展開に とっ て極 めて重要である。 したが って

,問

題1の扱 いについては

,本

年度の実践 の ような配慮が必要 である。

(3)共

通性の抽出の段階で

,両

年度 とも「二つの数量」がなかなか出ず

,先

に「二つの集合」が 抽出 された。 これは

,実

践対象の生徒が現行学習指導要領 の下で第

1学

年 に関数の定義 を学習 していることと

,も

う一つは

,生

徒 に とっては二量の存在 は当然であって

,そ

れ を改 めて共通 性 として意識す るに至 らないため と思われる。前者 は新学習指導要領下の指導では解消 され る 問題であるが

,後

者 については

,第

1学

年 における「関数関係」の意味の指導の際 に留意すべ き点である,と考 える。 に

)二

つの数量 を二つの集合 に高 める指導の段階 (指導過程の②の段階

)で,今

年 7月 の暦 にお ける日と曜 日の対応の事例 を提示 し

,こ

れ を最初の五つの事例 と比較 させ

,そ

の違 いを生徒 に 気づかせた。 この ことは

,数

量の集合 を一般の集合 まで拡 げて考 えることの必要性 を

,生

徒 に 感 じさせ る上で極 めて効果的であった と考 える。

2.第

2時

の指導 について

(1)抽

象的な関数の働 きのイメージを実体化 (視覚化

)し

た り

,関

数記号 の導入や

,関

数の規則 の発見 を促すために

,ブ

ラック・ ボックスを利用 した。 このブラック・ ボックスの利用 には,

(22)

258

笹 田昭三・ 黒田早苗 :中 学校 における「集合 と関数Jの指導 について 生徒 は非常 に興味 を示 して積極的に学習 し

,授

業者の意図通 りに

,授

業が展開 した。 また

,関

数作 りとその規則の発見の指導 は

,生

徒 を

8グ

ループに分 け,各グループごとに関数作 りをし, その関数の規則の発見 を他グループが行 うとい う形式で展開 した。この形式 による授業展開は, グループごとの競争心 を刺激 して活気 ある学習活動 を生み

,関

数の意味の理解 を深めた り

,関

数の規則の発見や生徒の柔軟 な思考 を促す上で

,極

めて効果的であった。

(2)上

記の関数作 りの学習活動で

,あ

るグループか ら定値関数が提出 された。 その関数の規則 を 式表示する場合 に

,そ

れを

y=0。

x-59と

書 くべ きか

,そ

れ とも

y=_59と

書 くべ きかす が熱心 に討議 された。授業 者は,この場面 を利用 して

,関

数記号

y=f(x)の

有用性 にぶれた。す なわち

,ブ

ラック・ボ ックスのふた をした状態が [y=f(X′]であ り

,ぶ

た を開いた状態が

[y=

0。

X-59ま

たは

y=_59]で

ある。この両者 よ り

,[y=f(x)=0。

X-59ま

たは

y=f(x)=―

59]と表 されるか ら

, y=_59の

表現のなかに も実 は

Xが

隠されているのだ

,

とい うことを指 摘 した。 このような指導 によって

,生

徒 は

,関

数の表現 として

y=-59(X∈

X)は

正 しい表 示であ り,関 数記号 を用いれば,その関数が もっ とも鮮明に

y=f(⇒

=-59と

表現で きること を納得 した。 この意味で

,こ

のような議論が された ことは極 めて有意義 であった し

,ま

,そ

の誘発の囚 となった

,ブ

ラック 。ボックスの利用

,グ

ループごとの関数作 り

,関

数記号の導入 な どは

,本

時の授業 において有効 であ り

,か

つ適切であった と考 える。

3.第

4時

の指導 について

(1)本

時が

,単

元の まとめの段階で もあるという点か ら

,第

1時に学習 した

,集

合の立場 による 関数の定義 (第2の解釈

)を

想起 させ

,関

数 を集合 によって定義す ることの必要性 (契機

)と

合理性 (良さ

)を

再確認 させた。 この扱 いによって

,生

徒の「集合の立場 で関数 を見なお し, 関数の意味 を拡張す る」 ことに対する理解が

,一

層深 まったように思われ る。 この ことは

,事

後調査 における生徒の感想のなかに多 く見 うけられた。

(2)第 1学

年から第

3学

年の前単元 まで学習 して きた関数関係 と

,こ

の単元 で学 んだ関数 との包 摂関係 を生徒 に考 えさせ

,こ

れをベ ン図式で表 した。 また

,こ

のベ ン図式 において

,大

円に合 まれて小円に含 まれない ×印に相 当す る関数の事例 を生徒 に挙 げさせた。これ らの学習活動 は, 生徒 に とって何 ら抵抗 な く

,授

業者の意図通 りに進 め られた。 この ように

,両

者の関係 をベ ン 図式で視覚的に表現 した ことは

,新

しく定義 した関数が「関数関係」 を否定 した ものでな く, これ をなかに含めて関数の意味 を著 しく拡張 した ものであることを生徒 に鮮明 に印象づ けた。 本時 における

,包

摂関係のベ ン図式表現 は極 めて有効・ 適切であった と考 える。 は

)関

数の意味の拡張に関連 して

,数

学的概念や数学の理論の拡張について簡単 にふれた。十分 な解説ではなかったが

,数

学 は固定的な ものでな く

,で

きるだけ多 くの事柄 を考察の対象にで きるように

,常

に拡張 され

,発

展する

,

とい う印象 を与 える上で少 しは効果があった もの と思 われ る。 は

)最

後 に

,第

2時

の関数作 りとその規則の発見の場合 と同様 に

,生

徒 を

8グ

ループに分 け

,各

グループごとに新 しい意味の関数の事例 をいろいろの事象のなかか ら探 させ

,そ

の当否 を他の グループに検討 させた。 この意図は

,学

習活動 を活気あるものにす るとともに

,関

数の弁別 を 意識的に行 い

,さ

らに新 しい関数の対象が実 に広汎な事象におよぶ ことを自覚 させ るためであ る。 この学習活動 は第

2時

の関数作 りの場合 と同様 に活気 を呈 し

,ま

た各 グループが提示 した 関数の事例の豊かさも授業者の予想 を上 まるものであった。 したが って

,第

4時

の この場面で の扱 い として

,上

記の ような形式 による学習活動 は有効であると考 える。

(23)

鳥取大学教育 学部 教 育 科 学 第20巻 第2号

4.事

後調査の結果 について

(1)調

1で

,関

数の弁別 をさせた。調査の結果 は

,各

問い ともかな りの正答率 を示 した。 これ は

,第

1時

,第

4時

の指導の効果 によるもの と考 える。 り

)調

査2は

,関

係式の文字が異なって も

,変

域 と対応の しかたが同 じであれば同一の関数 と見 なす ことがで きるか否か

,を

聞 うた ものである。正答率 は

96%で

,極

めて高か つた。事前調査 の調査

1で

同様 の調査 をしたが

,そ

の正答率 は

58%で

あった。この ように正答率が上昇 したの は

,第

2時

でブラ ック・ ボックスを活用 し

,関

数の本質 は対応 とその きまりにあるとい うこと を強調 した結果 と考 える。 は

)調

3で

,問

①が高い正答率を示 した(92%)。 これは

,第

1時

,五

つの具体的な関数関 係か ら共通性を抽出し

,さ

らに量を捨象 してこの共通性を一般化する段階の指導にかな りの時 間をかけ丁寧に指導 したためと考える。しか し,問②,③の正答率は予想 より低かった(②

86%,

③78%)。 これは

,生

徒にとって表現のむずか しさもあり

,誤

答の主要因はその記述の不完全 さ によるものが多かった。 は

)調

査 4の 間① は

,関

数の定義 を問うもので

,そ

の正答率は

74%で

あった。しか し

,表

現が不 完全でも関数の意味をとらえていると思われるものを含めると86%と な り

,一

応指導の効果が あったもの と考 えられる。 また

,問

②は

,集

合の立場で関数 を定義 したことの良さや意義 に関 して間うたものである。その回答の結果は正答

,誤

答 と分類 して整理すべきものでないが

,指

導者が最 も期待 した項 目竹)を選んだ者が最 も多 く

57%で

あつたことは

,授

業者の意図が生徒に かな り反映 して受けとめられたもの と思われる。 低

)調

5で

,ブ

ラック・ ボックスを図式化 し

,対

応の規則 を見つけさせる問題 を与 えた。正 答率は

78%∼ 85%で

,大

体予想通 りであった。

(6)調

査 6は

,定

義域

,値

域の意味に関する設間である。正答率は

82%で

,通

常のテス トの評価 と士ヒベその定着度はよいと考える。

今 回の学習指導要領の改訂で

,中

学校 における関数指導の系統が大 き く変更 された。指導系統 の 変更 は当然 その扱 い方の変更 を要請する。 この新 しい指導系統の流れか らすれば

,今

後の中学校 の 関数指導では,(1)事象 との出合いを重視 した関数指導(第

1, 2学

年),121具体的な事象 との関連 で 学んで きた関数関係 を集合の立場 に立 って見 なお し

,関

数の意味 を拡張す る指導(第

3学

),が

そ の取 り扱 いを研究すべ き最 も重要な点である と考 える。 そこで

,本

研究では

,上

記の(りに焦点 を当て

,第

H,H章

で展開 した基本的な考 え方 に基づ き, その実践研究 を試みた。

1.単

元「集合 と関数」の指導過程や指導の重点 に対 す るわれわれの考 え方 は第III章の図式(図 2) に示 されているが

,そ

の図式のなかで②の段階の指導 と④

,⑤

の段階の指導をいかにするかが, 本単元の指導で最 も重要な点であ り

,本

研究の課題である。 この課題 を解決するために

,今

回の 実践では

,次

のことに焦点を当てて研究を進めた。

(a)指

導過程のパターンの確立 と指導の重点について い

)よ

りよい題材・事例の選択について

(C)関

数を実体化するための図式 (ブラック・ ボックス

)や

関数言己号の取 り扱いについて

参照

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