Fig. 1 Imminence of Tokyo Metropolitan Earthquakes (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes,

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地学雑誌

Journal of Geography 116 (3/4) 490-503 2007

首都 直下地震 の被害想定 と対策

池 内 幸 司* 伊 藤 夏 生*

Damage Estimation of the Next Tokyo Metropolitan Earthquake and Mitigation Measures

Koji IKEUCHI* and Natsuo ITO*

Abstract

The Central Disaster Management Council conducted damage estimation research on the next Tokyo Metropolitan Earthquake. The estimation clarified that the earthquake would bring not only a huge amount of physical damage, but also serious influence on the metropolitan func-tions such as politics, administration, and economy. The "Policy Framework for Tokyo Metropoli-tan Earthquakes" was set to secure the continuity of metropolitan functions as well to reduce damage. The "Tokyo Metropolitan Earthquake Disaster Reduction Strategy" was also shown by setting quantitative disaster reduction objectives with definite deadlines and concrete plans to execute disaster reduction measures effectively and properly. Furthermore, the "Guidelines for Tokyo Metropolitan Earthquakes Emergency Response Plan" , which provides the contents of emergency activities in a large area, and procedures and roles of government in the event of a di-saster, was regulated. Measures for evacuees and people stranded without bearable means of returning to their homes, and contingency plans for central governments are under discussion.

Key words Tokyo Metropolitan Earthquakes, earthquake disaster, damage estimation, miti-gation measures for earthquakes, disaster preparedness, disaster response opera-tions, continuity of operations

キ ー ワ ー ド:首 都 直 下 地 震,地 震 災 害,被 害 想 定,震 災対 策 災害 予 防,災 害 応 急 対 策 業 務 継 続 I. は じ め に 首 都 圏 で は,大 正12年(1923年)に 関 東 地 震(関 東 大 震 災)が 発 生 し,未 曾 有 の 大 災 害 を引 き起 こ したが,そ れ 以 降,大 きな 被 害 を及 ぼ す よ う な大 地 震 は発 生 して い な い。 この 関東 地 震 は, 相 模 湾 を震 源 とす る,い わ ゆ る 「海溝 型 」 の 地震 で あ り,地 震 の 規模 は マ グニ チ ュ ー ド (以 下 「M」 と い う。)8ク ラ ス の 巨 大 地 震 で,東 京 及 び 神 奈 川 を 中 心 に 南 関 東 地 方 に 大 き な 被 害 を もた ら し た 。 首 都 地 域 で は,こ の よ う なM8ク ラ ス の 海 溝 型 の 巨 大 地 震 は200∼300年 間 隔 で 発 生 す る と考 え られ て い る。 現 在 は,大 正12年 の 関 東 地 震 か ら80年 余 りが 経 過 した と こ ろ で,次 のM8 ク ラ ス の 地 震 が 発 生 す る の は,今 後100年 か ら 200年 程 度 先 と考 え られ て い るが,そ の 間 に首 都 圏 の 直 下 で, M7ク ラ ス の 地震 が 数 回 発 生 す る こ とが 予 想 さ れ て い る(図1)。 以 下 で い う 「首 都 直 下 地 震 」 は,こ の. M7ク ラ ス の 地 震 を対 象 と す る総 称 で あ る。 首都 地 域 の 地震 対 策 につ い て は,昭 和63年 に 関 東 地 震 と 同 様 の M8ク ラ ス の 地 震 に つ い て 被 * 内 閣 府 * Cabinet Office , Japan

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害 想 定 が実 施 され,そ の成 果 を踏 ま えた 「南 関 東 地 域 震 災 応 急 対 策 活 動 要 領 」 が 策 定 され た 。 直 下 型 地 震 の切 迫 性 に 関す る議 論 を受 けて,平 成4年 に は,南 関 東 地 域 直 下 で 発 生 す るM7ク ラ ス の 地震 を対 象 と した 「南 関東 地 域 直 下 の 地 震 対 策 に 関 す る大 糸剛 が 策 定 さ れ た が,平 成7年1月17 日に発 生 した 阪神 ・淡 路 大 震 災 の経 験 に よ り,大 規 模 地震 に対 す る大 都 市 の脆 弱 性 が 明 らか に な っ た た め,平 成10年 に 「南 関東 地 域 震 災 応 急 対 策 活 動 要領 」 及 び 「南 関東 地 域 直 下 の地 震 対 策 に 関 す る 大 綱」 が そ れ ぞ れ改 訂 さ れ,南 関東 直 下 の地 震 発 生 に備 え た 政府 の 防災 体 制 につ い て充 実 が 図 られ た 。 しか しな が ら,近 年,イ ン ター ネ ッ トに よ る情 報 通信 技 術 や物 流,金 融 等 の 高度 化 ・国際 化 が 進 展 し,経 済 ・社 会情 勢 が著 し く変 化 しつ つ あ る こ とか ら,首 都 直 下 地震 対 策 に つ い て も 「首 都 中枢 機 能 維 持 」 や 「企 業 防災 」 とい っ た新 た な観 点 か らの 対 策 強化 が 必 要 で あ る との認 識 が 広 ま りつ つ あ る。 一 方,近 年,関 東 地域 の地 殻 変 動 に 関す る定 点 観 測 網 が 充 実 し詳細 な デ ー タが 蓄積 さ れ て きた こ と,そ れ ら に伴 う知見 が増 大 して きた こ と等 に よ り,首 都 圏 直 下 の 地震 像 を 明確 に す る こ とが 可 能 な状 況 とな って きた 。 これ に伴 い,こ れ ま で実 施 され て い なか った 詳細 な被 害想 定 を行 い,こ れ に 基 づ く防 災 対 策 を具体 化 す る こ とが あ る程 度 可 能 な状 況 に な って きた 。 この よ う な状 況 を踏 ま え,平 成15年5月 の 中 央 防 災 会 議 にお い て 「首 都 直下 地 震 対 策 専 門調 査 会 」(以 下 「専 門調 査 会 」 とい う。)の 設 置 が決 定 され(第1回 専 門調 査 会 は 同年9月 開催),我 が 国 の 経 済 ・社 会 ・行 政 等 の諸 中枢 機 能 が集 積 す る エ リ ア と して の 首都 の 特性 を踏 まえ た新 た な視 点 か ら,首 都 直 下地 震 対 策 が検 討 され る こ とと なっ た。 専 門調 査 会 で は,首 都 地域 にお け る地震 防 災 の 課 題 につ い て 検 討 を行 う と と も に,首 都 直 下 の 地 震 像 を 明 らか にす る こ と を 目的 と した 「地震 ワー キ ング ・グ ルー プ」 を設 置 し,首 都 直 下 で発 生 が 予 想 さ れ る地 震 像 の 検 討 が 行 わ れ た 。 また,首 都 図 1 首 都 直 下 地 震 の 切 迫 性 (中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会, 2005bを 一 部 改 変).

Fig. 1 Imminence of Tokyo Metropolitan Earthquakes (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b (contents partially amended)) .

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直 下 地 震 の 際 に想 定 さ れ る直 接 的被 害,間 接 的 被 害 の予 測 が行 わ れ,首 都 地 域 が 抱 え る地 震 防 災 上 の課 題 を 明確 化 した上 で,地 震 災 害 に強 い首 都 地 域 形 成 に 向 け た 国家 的戦 略 の あ り方 等 に 関す る検 討 が 行 わ れ た。 約2年 間,20回 に わ た る会 合 で の検 討 を経 て,平 成17年7月 に,専 門調 査 会 報 告 が と りま とめ られ た。 本 稿 に お い て は,首 都 直 下 地 震 の被 害 想 定(中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会, 2004a, 2004b, 2005a),「 首都 直下 地 震 対 策 大 綱 」 (中 央 防 災 会 議, 2005),「 首 都 直 下 地 震 の 地 震 防 災 戦 略 」(中 央 防 災 会 議 2006a),「 首 都 直 下 地 震 応 急 対 策 活 動 要 領 」(中 央 防災 会 議, 2006b)等, 首 都 直 下 地 震 に 関す る こ れ まで の 政 府 の 取 り組 み 等 につ い て紹 介 す る。 II. 首 都 直 下 地 震 の 被 害 想 定 1) 対 象 地 震 首 都 地 域 で は,海 側 の フ ィ リ ピ ン海 プ レー トと 太 平 洋 プ レー トが 陸側 の北 米 プ レー トの 下 に沈 み 込 ん で い る た め,地 震 発 生 の 様 相 は極 め て 多 様 で あ る(図2)。 検 討 に あ た っ て,地 震 の発 生 様 式 を以 下 の よ う に分 類 した。 (1) 地 殻 内 の 浅 い 地震 (2) フ ィ リ ピ ン海 プ レー ト と北 米 プ レー トと の境 界 の 地震 (3) フ ィ リ ピ ン海 プ レー ト内 の地 震 (4) フ ィ リ ピ ン海 プ レー ト と太 平 洋 プ レ ー ト との境 界 の 地震 (5) 太 平 洋 プ レー ト内 の地 震 こ の う ち,(4)及 び(5)の タ イ プ の 地 震 に つ い て は,地 震 規 模 (M)を 同 一 と 捉 え た 場 合, 防 災 上 の 観 点 か らは(2)の タ イ プ の 地 震 に包 含 して 取 り扱 う こ とが で きる こ とか ら,(1),(2) 及 び(3)の タイ プ の地 震 を対 象 に取 り扱 う こ と と した 。 地 殻 内 の 浅 い 地 震 につ い て, M7.0以 上 の地 震 は,そ の 規 模 に相 当 す る長 さの 活 断 層等 が認 め ら れ る場 所 で 発 生 す る可 能性 が あ る と して取 り扱 う こ と と し,検 討 対 象 と して5つ の 活 断 層 を 選 定 し た(図3)。 地 震 に対 応 す る 活 断 層 が 地 表 で 認 め られ な い 地震 の 規模 の 上 限 につ い て は, M6台 の最 大 で あ る.M6.9の 地 震 を 「全 て の 地 域 で 何 時 地 震 が 発 生 す るか わか らない 」 と し,都 心 部 や そ の周 辺 の 中 核 都 市 等 の 直 下 で発 生 す る10の 地 震 図 2 首 都 直 下 で 発 生 す る 地 震 の タ イ プ(中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会, 2004aに 加 筆). (1) 地 殻 内 の 浅 い 地 震. (2) フ ィ リ ピ ン 海 プ レ ー ト と 北 米 プ レ ー ト と の 境 界 の 地 震. (3) フ ィ リ ピ ン 海 プ レ ー ト 内 の 地 震. (4) フ ィ リ ピ ン 海 プ レ ー ト と 太 平 洋 プ レ ー ト と の 境 界 の 地 震. (5) 太 平 洋 プ レ ー ト 内 の 地 震.

Fig. 2 Types of earthquake around the Tokyo

Met-ropolitan Area (The committees for techni-cal investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Cen-tral Disaster Management Council, 2004a (contents added)) .

(1) Earthquake occurring in a shallow area inside the crust.

(2) Earthquake occurring in the boundary area be-tween Philippine Sea Plate and North American Plate.

(3) Earthquake occurring inside Philippine Sea Plate.

(4) Earthquake occurring in the boundary area be-tween Philippine Sea Plate and Pacific Plate. (5) Earthquake occurring inside Pacific Plate.

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を設 定 した(図4)。 フ ィ リ ピ ン海 プ レー トと北 米 プ レー トとの境 界 の 地 震 に つ い て は,プ レー ト境 界 の 領 域 の う ち, 近 年 の 調査 研 究 の 知 見 を踏 ま え,「 近 い 将 来 発 生 の 可 能 性 が 低 い と考 え られ る領 域 」 以 外 の,3つ の地 震 を設 定 した(口 絵1-図1)。 地 震 の規 模 は, こ れ ま で のM7ク ラス の 地 震 の 中 で 最 大 で あ っ たM7.3と した 。 また,フ ィ リ ピ ン海 プ レー ト内 の地 震 につ い て は,検 討 の 結 果,フ ィ リ ピ ン海 プ レー トと北 米 プ レー トとの 境 界 の 地 震 の 地震 動推 計 結 果 に包 含 され る こ とが 確 認 され た 。 専 門 調 査 会 で は,以 上 の 合 計18の タ イ プ(箇 所)の 地 震 につ い て,震 度 分 布 を推 計 し,人 的 ・ 物 的被 害 等 につ い て想 定 を行 った 。 この う ち,東 京 湾 北 部 地 震 は,① あ る程 度 の 切 迫 性 が 高 い と考 え られ る地 震 で あ る こ と,② 都 心 部 の 揺 れ が 強 い こ と,③ 強 い揺 れ の分 布 が 広 域 的 に広 が って い る こ とか ら,こ の地 震 を首 都 直 下 地 震 対 策 を検 討 し て い く上 で の 中心 とな る地 震 と考 え る こ とと した (口絵1一 図2)。 以 下 で は,こ の東 京 湾 北 部 地 震 の被 害 想 定 につ い て紹 介 す る。 2) 被 害 想 定 の 条 件 地 震 が 発 生 す る季 節 や 時 刻,気 象 条 件(風 速) 等 に よ っ て,被 害 の 様 相 が大 き く異 な っ て くる。 人 々 が どこ に い るか は時 間帯 に よ って 大 き く異 な る た め,そ れ に よ っ て,地 震 に よ る死 傷 者 の 発 生 の状 況 が大 き く変 わ る こ とに な る。 また,時 間帯 や 季 節 に よ っ て 火 気 器 具 等 の 使 い 方 が 異 な る の で,火 災 の 出火 の状 況 も異 な り,こ れ に よ って も 被 害 の様 相 が異 な っ て くる こ とに な る。 風 速 につ い て も,火 災 の延 焼 の状 況 に大 き く影 響 す る。 こ の こ とか ら,専 門調 査 会 で は,想 定 さ れ る被 害 の 様 相 が 異 な る4種 類 の特 徴 的 な シ ー ン(冬 朝5時, 秋 朝8時,秋 昼12時,冬 夕 方18時)を 設 定 した 。 なお,風 速 に つ い て は,専 門調 査 会 で は,比 較 的風 が 弱 か っ た と され る 阪神 ・淡 路 大 震 災 時 の風 速3m/sと,非 常 に風 が 強 か っ た 関東 大 震 災 時 の 風 速15m/sの2種 類 の ケ ー ス を設 定 して い る。 3) 被 害 想 定 の 結 果 3-1) 建 物 被 害 と死 傷 者 建 物 全壊 棟 数 につ い て は,阪 神 ・淡路 大 震 災 な 図3検 討 対 象 とす る 活 断 層(中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会,2005bに 加 筆).

Fig. 3 Targeted active faults (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b (contents added)) .

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どの過 去 の 地震 災 害 に お け る震 度 と全 壊 率 の 関係 な どか ら推 計 して い る。 建 物 焼 失棟 数 につ い て は,阪 神 ・淡 路 大 震 災 時 の揺 れ に よる建 物 の全 壊 率 と出火 率 の 関係 を使 っ て,出 火 要 因別 に 出火 率 を求 め,初 期 消 火,消 防 力 の 運 用,不 燃 領 域 率1)等 を 考 慮 し て 推 計 して い る。 死 者 数 につ い て は,阪 神 ・淡 路 大 震 災 な どの 過 去 の地 震 災 害 の 被 害 事 例 か ら求 め た 建 物 全壊 棟 数 と死 者 数 の 関係 な どを使 って 推 計 して い る。 被 害 が 最 大 と な る 夕 方18時 ・風 速 15m/sの 想 定 結 果 を概 観 す る(表1,表2)。 建 物 の 全 壊 ・ 焼 失 棟 数 は,約85万 棟 と想 定 され て い る。 そ の う ち,3/4以 上 に あ た る 約65万 棟 は 火 災 に よ る 焼 失 で あ る。 地域 別 にみ る と,都 心 東 側 の 荒 川沿 い の 震 度 の 大 きい 地域 で 揺 れ に よる全 壊 が多 く発 生 し,都 心 西 側 の 環 状6号 線 か ら環 状7号 線 の 問 を中 心 に,老 朽 住 宅 も多 く残 存 して い る木 造 住 宅 密 集 市 街 地 が広 域 に 連担 して い る地 域 で火 災 に よる焼 失 が多 く発 生 して い る(口 絵1-図6)。 死 者 数 は約11,000人 で,そ の うち,火 災 に よ る死 者 数 は半 数 以 上 にあ た る約6,200人 とな っ て い る。 家 屋 の 全 壊 ・焼 失 等 に よ り,首 都 地 域 全 体 で, 約9,600万 ト ン(約1億 立 方 メ ー トル)の 震 災 廃 棄 物 が 発 生 す る。 これ は 阪神 ・淡路 大 震 災 時 に 発 生 し た震 災 廃 棄 物 量 の約5倍 に相 当 す る 量 で あ る。 次 に,時 間 帯 別 の 被 害 の 変 化 に つ い て 概 観 す る 。 朝5時 の ケ ー ス で は,火 気 器 具 等 の 使 用 が 少 な い た め,出 火 の可 能性 が低 く,建 物 被 害 合 計 が 最 も少 な くな る。 しか し,多 くの人 が 自宅 内 にい る た め,揺 れ(建 物 倒 壊)に よ る死 者 数 が 最 も多 くな る。 鉄 道 の 脱 線 事 故 や 道 路 で の 事 故 に よ る死 者 は, 通 勤 ・通 学 ラ ッ シ ュ 時 で あ る 朝8時 の ケ ー ス で 300人 程 度 とな っ て い る。 都 心 の 多 くの 人 が オ フ ィス 内 に い る昼12時 の ケ ー ス は,建 物 倒 壊 及 び火 災 の 被 害 に よ る影響 を 図 4 検 討 対 象 と す る1匠6.9の 直 下 の 地 震(中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会, 2004aを 一 部 改 変).

Fig. 4 Targeted inland earthquakes with a magnitude of 6.9 (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2004a (contents partially amended)) .

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比 較 的 受 け に く く,死 者 数 合 計 が 最 も少 な くな る。 夕 方18時 の ケ ース で は,出 火 の 可 能性 が 高 く, 他 の 時 間 帯 と比 較 して建 物 被 害合 計 及 び死 者 数 合 計 が 最 も多 くな る 。 風 速 に よ る被 害 の 違 い は 大 き く,例 え ば 夕 方 18時 のケ ー ス で は,風 速15m/sの 場 合 は,風 速 3m/sの 場 合 と比 較 して,建 物 被 害 が1.8倍,死 者 数 が1.5倍 とな っ て い る。 3-2) 経 済 被 害 経 済 被 害 に つ い て は,建 物 ・構 造 物 の物 理 的 な 損 失(直 接 被 害)と,建 物 被 害 及 び労 働 力 の喪 失 等 に よっ て 生 じる経 済活 動 の低 下(間 接 被 害)の 2つ の 側 面 か ら検 討 した(図5)。 直接 被 害 は,資 産 の物 理 的 な損 失 を金 額 で表 し た もの で あ り,住 宅,家 財,非 住 宅 建 物(オ フ ィ ス ビ ル等),建 物 以 外 の償 却 資 産,在 庫 資 産,ラ イ フ ライ ン,交 通 施 設,そ の他 公 共 土 木 施 設 が 受 け た被 害 を復 旧 す るた め に必 要 な 金 額(再 調 達価 額)を 直 接 被 害 額 と して い る。 東 京 湾 北 部 地 震 の 夕 方18時 ・風 速15m/sの 場 合 で, 66.6兆 円 と 想 定 してい る。 間接 被 害 につ い て は,生 産 設 備 や 労働 力 の 喪 失 に伴 う売 上 高(生 産 額)・GDP(粗 付 加 価 値 額) の 減 少,交 通 機 能 の 支 障 に よっ て 発 生 す る 経 済 活 動 ロス(時 間 コス ト ・事 業 の機 会 損 失等)の2つ を推 計 して い る。 生 産 額 ・ GDPの 減 少 につ い て は,首 都 特 有 の 中枢 機 能 を組 み 込 ん だ 生 産 関 数 モ デ ル を構 築 し, 被 災 地 域 内 外 に 与 え る 間接 的経 済 被 害 を推 計 し た 。 さ らに,海 外 へ の 波 及 被 害 は 生 産 関 数 分析 で は な く,産 業 連 関 分 析 に よっ て 推 計 を行 っ た 。 間 接 被 害 額(国 内 ・海 外 合 計)は,東 京 湾北 部 地震 (夕 方18時 ・風 速 15m/s)の 場 合,約39兆 円 と 想 定 して い る。 ま た,交 通 機 能 の 支 障 に よっ て 発 生 す る 経 済 活 表1東 京 湾北 部 地震(M7.3)の 物 的被 害(中 央 防災会 議i首都 直 下地 震対 策 専 門調査 会, 2004bを 一部 改変).

Table 1 Material damage caused by the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2004b (contents partially amended)) .

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動 ロ ス につ い て は,人 流 寸 断 は,主 と して道 路 ・ 鉄 道 網 の 寸 断 を対 象 と し,迂 回 に よ る損 失 額 と旅 行 取 りや め に よる機 会 損 失 額 を推 計 し,物 流 寸 断 は,港 湾 の被 災 に伴 う迂 回 に よ る損 失 額 と輸 出入 の 困 難 に よる 機 会 損 失 額 を推 計 した 。 この 結 果, 東 京 湾 北 部 地 震(夕 方18時 ・風 速15m/s)の 場 合,約6.2兆 円 と 推 計 し て い る 。 こ れ ら を 合 わ せ て,経 済 被 害 は,直 接 被 害 約 67兆 円 と 間 接 被 害 約45兆 円 の 合 計 で,約112 兆 円 と な り,日 本 のGDPの 約2割,一 般 会 計 予 算 の 約1.3倍 と い う 甚 大 な 被 害 と な っ て い る 。 な お,経 済 被 害 に つ い て は,株 価,地 価,物 価 表 2 東 京 湾 北 部 地 震 (M7.3)の 人 的被 害(中 央 防災 会 議 首 都 直 下 地 震対 策専 門調 査 会, 2005bを 一 部改 変).

Table 2 Human casualties caused by the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central

Disaster Management Council, 2005b (contents partially amended)) .

(注)数 値 は 四捨 五 入 に よ り表 示 して い るた め,各 数値 の合 計 値 は,合 計 の欄 の値 と一 致 しな い場 合 が あ る. (注)「-」 は 値 が ゼ ロ また は わ ず か で あ る こ と を示 す.

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の 変 動 や 金利 の 変動,企 業 の倒 産,経 済 構 造 の変 化 等 の 影響 が あ る が,こ れ らにつ い て は,検 討 の 対象 とは して い な い 。 ま た,間 接 被 害 の想 定 期 間 につ い て は1年 間 と し,そ の 間 は 復 興 需 要 は 発 生 して い な い と仮 定 して い る。 3-3) ラ イ フ ラ イ ン被 害,避 難 者,帰 宅 困 難 者 の 発 生 水 道,電 気,ガ ス 等 の ラ イ フ ラ イ ンが 途 絶 し, そ の 後 の 生 活 に 大 きな支 障 が生 じる こ とが 想 定 さ れ る。 東 京 湾 北 部 地 震 で夕 方18時 ・風 速15m/s とい う被 害 最 大 の ケ ー ス で は,発 災 後1日 目で, 断 水 人 口1,100万 人,停 電160万 軒,ガ ス 供 給 停 止120万 軒 な ど と想 定 して い る。 特 に,水 が 供 給 され な い と飲 料 に 困 る だ け で な く,ト イ レが使 え な くな る 。 この こ とか ら,避 難 者 につ い て は,自 宅 が被 害 を受 け 避 難 す る 人 と, 自宅 の 建 物 自体 に は被 害 が な い が 断水 に よ り避 難 す る 人 の2種 類 を想 定 して い る 。 東 京 湾 北 部 地 震 で は,1日 後 の 避 難 者 数 を最 大 で 約700万 人 と 想 定 して い る。 避 難 者 の 中 に は,親 戚 ・知 人等 を 頼 っ て疎 開 す る 人 もい る と考 え られ る こ とか ら, この う ち,実 際 に避 難 所 で 生 活 す る人 は,約460 万 人 と想 定 して い る。 避 難所 生活 者 数 は,ピ ー ク 時 に お い て,阪 神 ・淡 路 大 震 災 で約32万 人,新 潟 県 中越 地 震 で 約10万 人 だ っ た こ と と比 較 す る と,桁 違 い に多 い 避 難 者 が 発 生 す る と想 定 さ れ る。 昼 間 に発 災 した 場 合,交 通機 関 が ス トップ す る こ と に よ り,多 くの 人 が 自宅 に 帰 れ な くな り,帰 宅 困 難 者2)と な る 。特 に 首都 地 域 で は,遠 方 か ら 通 勤 ・通 学 や 買 い 物 な どで 来 て い る 昼 間滞 留 者 の 数 が 膨 大 で あ り,昼12時 に地 震 発 生 の 場 合,都 内 で 約390万 人,1都3県 計 で 約650万 人 の 帰 宅 困 難 者 の 発 生 を想 定 して い る 。 III. 首 都 直 下 地 震 対 策 大 綱 上 記 の 被 害 想 定 結 果 を踏 ま え,予 防段 階 か ら発 災 後 の全 て の 段 階 にお い て 各 主体 が 行 うべ き対 策 のマ ス ター プ ラ ンで あ る「首 都 直 下 地 震 対 策 大 綱 」 を,平 成17年9月 の 中央 防 災 会 議 で 決 定 した 。 図 5 東 京 湾 北 部 地 震 (M7.3)に よ る 経 済 被 害(中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会,2005b).

Fig. 5 Economic loss due to the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b) .

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首 都 地 域 は,政 治 中枢,行 政 中枢,経 済 中枢 と い っ た首 都 中枢 機 能 が 極 め て高 度 に集 積 し,か つ 人 口 や建 築 物 が 密 集 して い る。 こ の よ う な首 都 地 域 に お い て,大 きな地 震 が 発 生 した場 合,災 害 発 生 後,都 県 境 を超 え た広 域 的 な災 害 応 急 対 策 に不 可 欠 な政 治 ・行 政 機 能 や,我 が 国 の経 済 中枢 機 能 な ど の 首 都 中 枢 機 能 の 継 続 性 の 確 保 が 課 題 と な る。 さ らに,他 の地 域 と比 べ 格 段 に高 い集 積 性 か ら人 的 ・物 的被 害 及 び経 済 被 害 は甚 大 な もの と な る と想 定 され,そ の軽 減 策 の推 進 は我 が 国 の 存 亡 に 関 わ る 喫 緊 の根 幹 的課 題 で あ る。 首 都 直 下 地 震 対 策 大 綱 で は,こ の よ うな 「首 都 中枢 機 能 の 継 続 性 確 保 」 と 「膨 大 な被 害 へ の対 応 」 を対 策 の 柱 と して い る。(図6)。 1) 首都 中枢 機 能 の継 続 性 確 保 首 都 中枢 機 能 は,政 治,行 政,経 済 の 枢 要 部 分 を担 う 「首 都 中枢 機 関」,首 都 中枢 機 関 の機 能 を 支 え る基 礎 的 な条 件 で あ る 「ラ イ フ ラ イ ン ・イ ン フ ラ」,ラ イ フ ラ イ ン ・イ ン フ ラ を経 由 して 供 給 さ れ る 「ヒ ト,モ ノ,金,情 報 」か ら構 成 され る。 首 都 中 枢 機 能 は,特 に発 災 後3日 間 程 度 の 応 急 対 策 活 動 期 にお い て も,途 絶 す る こ とな く,継 続 性 が確 保 さ れ る こ とが 求 め られ る。 そ の た め, 発 災 後3日 間程 度 を 念 頭 にお い て,果 た す べ き 機 能 目標 を明確 化 し,そ れ を周 知 徹 底 す る と と も に,達 成 す るた め の事 前 の 予 防対 策 と事 後 の応 急 対 策 を重 点 的 に実 施 す る。 この た め,首 都 中枢 機 能 を担 う機 関(以 下 「首 都 中枢 機 関 」 とい う。)は,当 該 機 関 の 存 す る建 築 物 の 耐 震 化 を図 るほ か,災 害 時 に寸 断 しな い通 信 連 絡 基 盤 を確 保 す る 。 万 が 一,個 別施 設 が被 災 した 場 合 に も他 施 設 や ネ ッ トワー ク等 に よ り機 能 バ ッ ク ア ッ プが 可 能 とな る よ う,ラ イ フ ライ ン系 統 の 多 重 化,電 算 セ ン ター 及 び オ フ ィス のバ ック ア ッ プ機 能 の 充 実 を図 る 。 また,緊 急 参 集要 員 の 徒 歩 圏 内 居 住 や 住居 の 耐 震化 等 に よ り,緊 急 参 集 要 員 を確 保 す る 。 さ ら に,首 都 中枢 機 関 は,発 災 時 の機 能継 続 性 を確 保 す るた め の 計 画 と して事 業 継 続 計 画 (Busi-nessContinuityPlan以 下,「BCP」 と い う。) 「 図 6 首 都 直 下 地 震 対 策 の 柱(内 閣 府, 2006を 一 部 改 変).

Fig. 6 Principle of countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes (Cabinet Office, 2006 (contents partially amended)) .

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を策 定 す る と と も に, BCPに 基 づ き定 め られ た 活 動 が災 害 時 に 的確 に実 行 で きる よう,定 期 的 な 訓練 を行 う。 また,万 が 一,電 気 や 上 水 道 の供 給 が停 止 さ れ た場 合 に も必 要 な機 能 が 継 続 で きる よ う,最 低3日 間 の 非 常 用 電 源 及 び 機 器 冷 却 水 を 確 保 す る ほ か,緊 急 災 害 対 策 活 動 の た め に必 要 な 備蓄(食 料,飲 料 水,生 活 必 需 品,医 薬 品,資 機 材)を 行 い,災 害 対 策 要 員 の 活 動 環境 を整備 す る。 2) 膨 大 な被 害 へ の対 応 2-1) 建 築 物 の 耐 震化 建 築物 の揺 れ に よる被 害 は,死 者 発 生 の主 要 因 で あ り,さ ら に 出火,火 災 延 焼,避 難 者 の発 生, 救 助 活動 の妨 げ,が れ きの発 生 等 の被 害 拡 大 の要 因 で もあ る 。膨 大 な被 害 量 を で きる 限 り減 少 させ るた め に は,「 建 築 物 の 耐 震 化 」 に重 点 的 に取 り 組 む こ とが 肝 要 で あ る 。 国,地 方 公 共 団体 は,住 宅 や そ の他 建 築 物 の耐 震 化 を進 め る た め に,個 々 の居 住 地 が認 識 可 能 と な る 程 度 に 詳 細 な地 震 防 災 マ ッ プ を作 成 ・公 表 し,耐 震 化 の 必 要性 につ い て広 く周 知 を 図 る。 ま た,補 助 制 度 の 活用 促 進 に よ り,住 宅,そ の他 建 築 物 の 耐 震 診 断,耐 震 補 強,建 て 替 え を促 進 す る。 加 えて,耐 震 改 修促 進 に 向 け た税 制 度 の整 備 につ い て検 討 を進 め る。 耐 震 化 を促 進 す る た め の 環 境 整備 と して,国, 地 方 公 共 団 体 は,住 み な が ら耐 震 改 修 で きる手 法 や ロー コス トの 耐 震 改 修 手 法 な どの 開発,建 築 物 の 取 引 時 にお け る耐 震 診 断 の有 無 等 に 関 す る情 報 提 供 等 に取 り組 む。 また,国 は,耐 震 化 に 向 け た 定 量 的 な 目標 の 設 定,木 造 住 宅密 集市 街 地 等 の住 宅 に対 す る耐 震 診 断 や 耐 震 改 修 の 指 示,多 数 の者 が 利 用 す る建 築 物 へ の 耐震 改 修 の 指示 や 指示 に従 わ な い場 合 の 公 表 及 び不 特 定 か つ 多 数 の者 が利 用 す る建 築 物 の 所 有 者 に対 す る耐 震 改修 計 画 の提 出 義 務 付 け な ど,耐 震 化促 進 の た め の 制 度 を整備 す る。 2-2) 火 災対 策 建 築 物 が 密 集 す る首都 地 域 にお い て は,火 災 に よる被 害 は全 体 の 被 害 の 中 で も非 常 に大 きな 割合 を 占 め る もの とな る。 特 に環 状6号 線 か ら7号 線 の 問 を 中心 に老 朽 化 した 木 造 住 宅 の 密 集 市 街 地 が 広 域 に連 担 して お り,同 時 に火 災 が多 発 した場 合,消 防 機 関 に よ る消 火 が極 め て 困 難 とな り,市 街 地 の 延 焼 火 災 が 拡 大 す る危 険性 が 高 い状 況 とな る。 この ため,建 築 物 の 不 燃 化,火 気 器 具 の安 全 対 策 等 に よ る 出火 防 止 対 策 や,市 街 地 の面 的 整 備, 道 路 ・公 園 等 の オー プ ンス ペ ー ス の確 保 等 に よる 延 焼 被 害 軽 減 対 策 等 を促 進 す る。 2-3) 居 住 空 間 内外 の 安 全 確 保 対 策 屋 内 に設 置 され た 家 具,冷 蔵庫 及 び テ レ ビ等 の 固定 を促 進 す る な ど,居 住 空 間 内 の 安全 確 保 を図 る。 ま た,交 通 施 設 や 土 砂 災 害 危 険 箇所 にお け る被 災 防止,ブ ロ ック塀 の倒 壊 や 自動 販 売 機 等 の路 上 設 置 物 の 転 倒 に 伴 う被 災 防 止,ビ ル の 窓 ガ ラ ス, 看 板 及 び 壁 面 タ イ ル 等 の 落 下 に伴 う被 災 防 止 な ど,外 部 空 間 にお け る安 全 を確 保 す る。 2-4) 避 難 者 対 策 避 難 所 に依 拠 す る避 難 者 の 数 は,過 去 に発 生 し た 阪神 ・淡 路 大 震 災 や 新 潟 県 中越 地 震 に比 べ て膨 大 とな る と予 測 さ れ るた め,地 方 公 共 団体 にお い て 指 定 避 難 所 を 確 保 す る ほ か,多 様 な 対 策 メ ニ ュ ー が必 要 とな る。 避 難 所 に収 容 す る人 数 を大 幅 に減 少 させ るた め に,国,地 方 公 共 団体 は,一 時 的 に被 災 地 外 に居 住 す る こ とに よ り避 難 所 に依 拠 す る者 そ の もの を 減 らす 疎 開 ・帰 省 の奨 励 ・斡 旋 や,避 難 所 全 体 と して の 収 容 力 を増 強 す る た め の ホ テ ル,空 き家 等,既 存 ス トック の活 用 な ど多 様 な対 策 メニ ュー を あ らか じめ用 意 してお く。 2-5) 帰 宅 困 難者 対 策 膨 大 な 数 の 帰 宅 困 難 者 の 発 生 が 予 測 され る た め,都 心 部 か ら居 住 地 に 向 け て一 斉 に帰 宅 行 動 を とっ た場 合,鉄 道 駅 周 辺 や 路 上 に膨 大 な滞 留 者 が 発 生 し,応 急 対 策 活 動 の妨 げ とな る な どの 混 乱 が 生 じる と予 想 さ れ る。 国,地 方 公 共 団 体 は,「 む や み に移 動 を 開 始 し な い 」 こ とを 帰 宅 困 難者 に対 す る基 本 原 則 と し, そ の 周 知 ・徹 底 を 図 る。 企 業 ・学 校 等 は,自 ら, 自社 従 業員 や教 職 員 ・児 童 生 徒 等 の一 定 期 間 の収 容,そ の た め の食 糧 ・飲 料 水 及 び生 活 必 需 品 の備

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蓄,家 族 を含 め た安 否 確 認 等 の体 制 整 備 を図 る。 国,地 方 公 共 団体,関 係 事 業 者 は,災 害 時 の 安 否 確 認 の た め の シ ス テ ム(災 害 用 伝 言 ダ イ ヤ ル (171)や 携 帯 電 話 災 害 用 伝 言 板 サ ー ビス 等)が 十 分 に 活 用 され る よ う,そ の 認 知 度 の 向 上 を 図 る。 地 方 公 共 団体 は,地 域 住 民 の避 難 所 と して 指 定 さ れ て い な い公 共 施 設 等 を帰 宅 途 上 の人 た ちへ の 一 時休 憩 施 設 と して提 供 で き る よ う協 定 の締 結 に 努 め る。 ま た,国,地 方 公 共 団 体,関 係 事 業 者 は,船 の利 用,折 り返 し駅 整 備 や 早 期 運 転 再 開 に よ る鉄 道 の運 行 の確 保 及 び 臨時 バ ス の 早 期 運 行 な ど,多 様 な交 通 手 段 を確 保 し,帰 宅 支 援 を行 う。 IV. 首都 直下 地 震 の地 震 防 災戦 略 首都 直 下 地 震 対 策 大 綱 で は,「 国 は,期 限 を定 め て定 量 的 な減 災 目標 を設 定 し,減 災 目標 を達 成 す る た め に必 要 な数 値 目標 及 び具 体 的 な実 現 方 策 等 を定 め た 『首 都 直 下 地 震 の地 震 防 災 戦 略』 を策 定 す る も の とす る。」 と さ れ た。 こ れ を踏 ま え, 平 成18年4月 の 中 央 防災 会 議 にお い て,首 都 直 下 地 震 の地 震 防災 戦 略 が 決 定 され た 。 1) 人 的被 害 軽 減 戦 略 夕 方18時 ・風 速3m/sの ケ ー ス で 約7,300人 と想 定 さ れ て い る死 者 数 を約4,300人 に4割 減, 夕 方18時 ・風 速15m/sの ケ ー ス で 約11,000人 と想 定 さ れ て い る死 者 数 を約5,600人 に半 減 させ る こ と と して い る。 1-1) 住 宅 ・建 築 物 の耐 震 化 建 築 物 の 耐 震 性 の 基 準 は,昭 和56年 に大 き く 改 正 さ れ てお り,そ れ 以 前 に建 築 され た もの には 十 分 な耐 震 性 を有 し て い な い も の が あ る こ とか ら,特 に生 命 ・財 産 に係 る被 害 の 軽 減 に大 き く関 係 す る 住 宅 ・建 築 物 の 耐 震 化 を 図 る。 平 成15年 に75%(全 国)と 推 計 さ れ て い る住 宅 の 耐 震 化 率 を90%(全 国)に,同 様 に75%(全 国)と 推 計 され てい る特 定 建 築 物(一 定 の 規模 以 上 の多 数 の 者 が 利 用 す る建 築 物 等)の 耐 震 化 率 につ い て も 90%(全 国)に す る こ と を 目指 して い る。 こ れ に よ り約1,300人 の 死 者 数 の軽 減 を図 る。 地 震 発 生 時 にお け る児 童 生徒 等 の 安全 を確 保 す る と と も に,地 域 住 民 の 安全 な避 難所 の役 割 を担 う学 校 施 設 の 耐 震化 を図 る 。 速 や か に 耐震 診 断 を 実 施 し,耐 震 性 を有 し な い 建 物 の う ち,特 に倒 壊 ・大 破 の危 険性 が 極 め て 高 い と考 え られ る1/3 程 度 の 建 物 に つ い て,平 成22年 度 まで に耐 震 補 強 等 を図 る こ と を 目指 す 。 地 震 発 生 時 に お け る入 院患 者 の安 全 確 保 及 び 医 療 の確 保 等,地 域 住 民 の 安全 な 防災 拠 点 と して の 役 割 を担 う医療 施 設 に つ い て,耐 震 補 強等 を実 施 す る。 速 や か に 耐震 診 断 を 実施 し,耐 震 性 を有 す る こ とが確 認 され て い な い建 物 の耐 震 化 を推 進 す る 。特 に 災 害 時 の 医療 の拠 点 とな る災 害拠 点 病 院 及 び救 命救 急 セ ン ター に つ い て特 に耐 震 性 が 不 十 分 な建 物 の う ち 約5割 程 度 の 建 物 に つ い て,平 成22年 度 まで に,耐 震 補 強 等 を 図 る こ と を 目指 す 。 1-2) 火 災 対策 住 宅 ・建 築 物 の耐 震 化,密 集 市 街 地 の整 備 を推 進 す る こ とに よ り,建 物 の揺 れ に よ る被 害 に伴 う 出 火 の 防 止,延 焼 被 害 の拡 大 防止 を 図 る。 そ の た め,住 宅 及 び特 定 建 築 物 の耐 震 化 率90%(全 国) を 目指 す 。 また,避 難地 ・避 難 路 の整 備,建 築 物 の不 燃 化 ・共 同化 を進 め る こ とに よ り,密 集 市 街 地 に お い て 最低 限 の安 全 性 を確 保 す る。 最 低 限 の 安 全 性 と し て,密 集 市 街 地 に つ い て 不 燃 領 域 率 40%以 上 の 確 保 を 目指 す 。 こ れ らに よ り,風 速 3m/sの ケ ー ス で 死 者 数 約1,200人 減,風 速 15m/sの ケ ー ス で 死 者 数 約3,300人 減 を見 込 ん で い る 。 自主 防災 組 織 の育 成 ・充 実,防 災 教 育 の推 進, 耐震 性 貯 水 槽 の整 備 促 進 等 の対 策 を総 合 的 に推 進 す る こ とに よ り,初 期 消 火 率 の 向上 を 図 り,死 者 数 を軽 減 す る 。東 京 湾 北 部 地 震 にお い て震 度6弱 以上 の 地震 動 が予 測 さ れ る市 区 町村 にお け る 自主 防 災組 織 の 組 織 率96%を 目指 す 。 こ れ らに よ り, 風 速3m/sの ケ ー ス で は 死 者 数 約400人 減,風 速15m/sの ケ ー ス で は死 者 数 約700人 減 を見 込 ん で い る。 そ の他,火 災 対 策 の た め の数 値 目標 と して,消 防 団 や 緊急 消 防援 助 隊 の充 実 等 の 目標 を掲 げ て い る。

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1-3) 居住 空 間 内外 に お け る 安 全確 保 住 宅 内 の 安 全 確 保 の た め,「 住 宅 にお け る 地 震 被 害 軽 減 の 指 針 」 の 普 及 を 図 る と と も に,HP, パ ン フ レ ッ トな どに よ り家 具 の 固定 につ い て周 知 を 図 り,家 具 の 固 定 率60%(埼 玉 県,千 葉 県, 東 京 都,神 奈 川 県)を 目指 す(平 成16年 度 東 京 都27.8%)。 こ れ に よ り,死 者 数 約100人 減 を見 込 ん で い る 。 急 傾 斜 地 崩 壊 対 策 事 業 を実 施 す る こ とに よ り, 急 傾 斜 地 の 崩壊 に よ る災 害 か ら保 全 さ れ る戸 数 に つ い て,平 成26年 度 末 で 約54万 戸(全 国)を 目指 す(平 成16年 度 末 約42万 戸(全 国))。 こ れ に よ り死 者 数 約100人 減 を見 込 んで い る。 そ の他,新 幹 線 高 架橋 柱 や 道路 橋 の耐 震 補 強, ゼ ロ メー トル 地 帯 を守 る海 岸堤 防 ・河 川堤 防 の耐 震 化 や,防 災 行 政 無 線 等 の 整備 につ い て,数 値 目 標 を掲 げて 推 進 す る こ と と して い る。 2)経 済 被 害 軽 減 戦 略 夕 方18時 ・風 速3m/sの ケ ー ス で 約94兆 円 と想 定 され て い る 経 済 被 害 額 を約60兆 円 に,夕 方18時 ・風 速15m/sの ケ ー ス で 約112兆 円 と 想 定 され て い る経 済 被 害 額 を約70兆 円 に,そ れ ぞ れ約4割 軽 減 す る こ と と して い る。 2-1) 直接 的被 害 額 の軽 減 住 宅 ・建 築 物 の 耐 震 化 対 策,初 期 消 火 率 の 向 上,密 集 市 街 地 の整 備 等 の 火 災 対 策,急 傾斜 地 崩 壊 危 険箇 所 の対 策 に よ り建 物 被 害 を軽 減 す る。 こ れ ら に よ り,建 物 被 害 の 被 害 軽 減 額 は,風 速 3m/sの ケ ー ス で約19兆 円,風 速15m/sの ケ ー ス で約26兆 円 を見 込 ん で い る 。 新 幹 線 の高 架 橋 柱 の耐 震 補 強,緊 急 輸 送 道 路 の 橋 梁 及 び新 幹 線 や 高速 道 路 を ま た ぐ橋 梁 の 重 点 的 な 耐震 補 強,港 湾 に お け る耐 震 強 化 岸 壁 の 整 備 を 推 進 す る。 これ らに よ り,交 通 施 設 被 害 の被 害 軽 減 額 は,約0.1兆 円 を見 込 ん で い る。 2-2) 間 接 的 被 害 額 の 軽減 建 築 物 の 耐震 化 等 に よる 「民 間 資本 ス トック」, 死 者 数 の軽 減 に よる 「労 働 力 人 口」 の減 少 が 軽 減 され る こ と に加 え,企 業 の事 業 継 続 の取 り組 み の 進 展 に よ り,生 産 活 動 の低 下 を軽 減 させ る。 事 業 継 続 ガ イ ドライ ン に よ り,企 業 の事 業 継 続 へ の取 り組 み を推 進 す る。 事 業継 続 計 画 を策定 して い る 企 業 の 割 合 を大 企 業 で ほ ぼ全 て,中 堅企 業 に お い て 過 半 を 目指 す3)。 こ れ ら に よ り,被 害 軽 減 額 は,風 速3m/s,15m/sの ケ ース とも に,約4兆 円 を見 込 ん で い る。 交 通 施 設 の 耐 震 補 強 に よ り交 通 寸 断箇 所 を減少 させ る ほか,緊 急 輸 送 道 路 沿 い の 住 宅 ・建 築物 の 耐 震 化 等 に よ り,が れ きの 発 生 量 が 減 少 し,そ れ に併 せ てが れ きの 除 去 作 業 が 軽 減 され,交 通 規 制 解 消 ま で の期 間 の短 縮 が 見 込 まれ る。 これ ら に よ り,被 害 軽 減 額 は,風 速3m/s, 15m/sの ケ ー ス と もに,約0.7兆 円 を見 込 んで い る。 2-3) 全 国 ・海 外 へ の経 済 波 及 額 の軽 減 企 業 の事 業 継 続 の取 り組 み の 進 展 や 被 災 地 な ど の被 害 額 の軽 減 に よ り,全 国 ・海 外 へ の 経 済 波 及 額 を軽 減 させ る。 こ れ らに よ り,被 害 軽 減 額 は, 風 速3m/sの ケ ー ス で約10兆 円,風 速15m/sの ケ ー ス で約11兆 円 を見 込 ん で い る 。 V. 応 急 対 策 活 動 要 領 首 都 直 下 地 震 対 策 大 綱 で は,「 国 は,災 害 発 生 時 の広 域 対 策 を迅 速 かつ 的確 に講 じる た め,災 害 発 生 時 に お け る 主 と して政 府 の広 域 的活 動 の手 続 き,内 容 等 を具 体 化 した 『首 都 直 下 地 震 応 急 対 策 活 動 要 領』 を地 方公 共 団体 の協 力 を得 つ つ 策 定 す る。」 と さ れ た。 こ れ を 踏 ま え,平 成18年4月 に首都 直 下 地震 応 急 対 策活 動 要 領 を 中央 防災 会 議 で 決 定 した 。 本 要 領 は,東 京 湾北 部 地震 を念 頭 に お い て,国 民 の 生 命,身 体 及 び財 産 を守 る た め,防 災 関係 機 関 が 連 携 して 迅 速 か つ 的確 な応 急 活 動 を とる こ と を 目的 とす る。 この た め,政 府 の活 動 体 制,首 都 中 枢 機 能 継 続 性 確 保 の た め の 活 動,救 助 ・救 急 ・ 医 療 活 動,消 火 活 動,緊 急 輸 送 の た め の交 通 の確 保 ・緊 急 輸 送 活 動,食 料 ・飲 料 水 ・生活 必 需 品等 の 調 達 ・供 給 等 につ い て,活 動 内容 や手 続 き,各 省 庁 等 の役 割 分 担 等 を定 め て い る。 政 府 の活 動 体 制 と して は,東 京 湾 北 部 地震 をは じめ東 京23区 で震 度6強 が 観 測 され る地 震 が発 生 して,著 し く異 常 か つ 激 甚 な被 害 が発 生 して い る と認 め られ た場 合 は,速 や か に 閣議 を 開 催 し,

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緊 急 災 害 対 策 本 部 の 設 置 を行 う。 設 置場 所 の優 先 順 位 は,(1)官 邸,(2)中 央 合 同 庁 舎5号 館,(3)防 衛 省,(4)立 用 広 域 防 災 基 地 とす る。 また,緊 急 災 害 現 地 対 策 本 部 につ い て は,原 則 と して,現 在 整 備 中の 東 京 湾 臨 海 部 基 幹 的 広 域 防 災 拠 点 施 設(有 明 の丘 地 区)の 供 用 後 は 当該 施 設 に設 置 す る こ と が 明 記 さ れ てい る。 なお,現 在,東 京 湾 北 部 地 震 の 被 害 想 定 に基 づ い て,あ らか じめ地 域 ご との 部 隊 派 遣 内 容 や 物 資 等 の必 要 量 等 を定 め る具 体 的 な活 動 内 容 に係 る計 画 につ い て策 定 作 業 を行 っ てい る とこ ろで あ る。 VI. 避 難 者 ・帰 宅 困 難 者 対 策 の 検 討 首 都 直 下 地 震 で は,膨 大 な数 の避 難 者 及 び帰 宅 困難 者 が発 生 す る こ とが想 定 さ れ て い る。 首 都 直 下 地 震 対 策大 綱 で は,避 難 者 対 策 と して,避 難 所 へ の 避 難 者 を減 らす 対 策,避 難 収 容 体 制 の整 備, 食 料 ・飲 料 水 及 び生 活 必 需 品 の確 保,多 様 な応 急 住 宅提 供 メ ニ ュ ー の提 示,被 災 者 支 援 策 等 の情 報 提 供 が掲 げ られ て い る 。 また,帰 宅 困難 者 対 策 に つ い て は,一 斉 帰 宅 行 動 者 を減 らす 対 策,特 に 「む や み に移 動 を開 始 しな い 」 と い う帰 宅 困 難 者 に対 す る 基 本 原則 の周 知 ・徹 底,安 否 確 認 シ ス テ ム の 活 用,徒 歩 帰 宅 支援 及 び搬 送等 が提 示 され て い る。 これ ら に対 す る具 体 的 な対 策 につ い て は,地 震 防 災 戦 略 で は今 後 の 課 題 と され た 。 中央 防災 会 議 に 「首都 直 下 地 震 避 難 対 策 等専 門 調査 会」 が 設置 され,現 在 鋭 意 検 討 が 進 め られ て い る と ころ で あ る。 VII. 中央 省 庁 業 務 継 続 計 画 の 策 定 首 都 直 下 地 震 発 生 時 に,中 央 省 庁 は,自 ら も被 災 す る可 能 性 が あ る な ど厳 しい 条 件 の 下 で,直 ち に災 害 応 急 対 策 業 務 等 を開 始 す る と と も に,一 定 範 囲 の 通 常業 務 を継 続 す る こ とが 強 く求 め られ る。 中 央 省 庁 の 業 務 継 続 計 画 の 策 定 を支 援 す る た め,内 閣 府 で は,「 中央 省 庁 業 務 継 続 ガ イ ドラ イ ン」 を 平 成19年6月 に 策定 した 。 本 ガ イ ドラ イ ン で は,中 央 省 庁 が,地 震 発 生 時 に生 じ る事 態 を 的 確 に 想 定 し,優 先 して 実 施 す べ き業 務 を抽 出 し,人 員等 の確 保 や手 続 きの簡 素 化,指 揮 命 令 系 統 の 明確 化 等 の措 置 を講 じる た め の方 法 等 を と り ま とめ て い る。 この ガ イ ドラ イ ンを踏 まえ て,各 省 庁 は,今 後 1年 程 度 を 目途 に,業 務 継 続 計 画 の 策 定 に取 り組 ん で い くこ と と して い る 。 VIII. お わ り に これ まで,首 都 直 下 地震 に 関 して は,被 害 想 定 が な さ れ,「 首 都 直 下 地 震 対 策 大 綱 」,「首都 直 下 地 震 の 地 震 防 災 戦 略 」,「首都 直下 地 震 応 急 対 策 活 動 要 領 」 等 が 策 定 さ れ る と と も に,現 在,避 難 者 ・帰 宅 困 難 者 対 策 の検 討,応 急 対 策活 動 要 領 に 基 づ く具 体 的 な活 動 内 容 に係 る 計 画 の 策 定,中 央 省 庁 の 業 務 継 続 計 画 の 策 定 等 が 進 め られ て い る。 これ らの 業 務 を通 して 痛 感 す るの は,大 都 市 部 に お い て大 規 模 な災 害 が 発 生 した場 合 の 被 害状 況 の 想 定 や そ れ に対 す る対 応 策 等 を検 討 す る際 に,理 学,工 学,社 会 科 学 等 の 領 域 を超 えた 学 際 的 な 知 見 が ます ます 重 要 に な って きて い る とい う こ とで あ る。 防災 行 政 を担 当す る立 場 か ら,今 後 の 災 害 に 関す る研 究 分 野 に対 して,期 待 す る こ と を3点 ほ ど挙 げ る。 1点 目は,社 会 経 済 活 動 の高 度 化 ・複 雑化 に伴 う災 害 様 相 の変 化 とそれ に対 す る対 応 策 に関 す る 研 究 分 野 の発 展 で あ る。 現 在 行 っ てい る被 害 想 定 は 主 と して,阪 神 ・淡 路 大 震 災 や 関東 大 震 災 等 の 過 去 の災 害 で の経 験 を基 に実 施 して い る。 過 去 の 災 害 を教 訓 に して様 々 な 防災 対 策 が 各 分 野 で 実 施 され る 一方,社 会 経 済 活 動 が 高 度 化 ・複 雑 化 す る と と もに,高 度 情 報 化 や効 率 化 が 進 む 中 で,災 害 に対 す る社 会 の脆 弱 性 が増 して い る の で は な いか と懸念 して い る。 例 え ば,社 会 の重 要 イ ン フ ラ で あ る ラ イ フ ライ ン は相 互 に複 雑 に 関 連 して お り, あ る ライ フ ライ ンの一 部 の被 害 が,他 の ラ イ フ ラ イ ンへ と波 及 し,複 雑 な災 害 様相 を呈 して,国 民 生 活 や社 会 経 済活 動 に大 きな影 響 を与 え る可 能 性 が あ る 。 また,情 報 通信 の途 絶 は,非 常 に幅 広 い 分 野,地 域 に 影響 が波 及 し,思 わ ぬ とこ ろ で,予 想 もで きな い よ う な被 害 が 発 生 す る 恐 れ が あ る。

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過 去 の災 害 経 験 を踏 ま えつ つ,現 在 の 高 度化 ・複 雑 化 した社 会 で 大 規 模 地 震 や 大 規模 水 害 等 の 巨大 災 害 が 発 生 した場 合 に どの よ う な こ とが 生 じ るの か とい う予 測 とそ れ に対 す る対 応 策 に関 す る研 究 が ます ます 重 要 に な って きて い る と考 え る。 2点 目は,災 害 時 にお け る人 間 の心 理 面 や行 動 面 に 関す る研 究 分 野,災 害 情 報 に関 す る研 究 分 野 の発 展 で あ る。 災 害 に よ る被 災 者 を少 な くす るた め に は,事 前 の適 切 な情 報 提 供 と 日頃 か らの 災 害 に対 す る正 しい認 識 の共 有 と予 防 の取 り組 み,災 害 時 に お け る適 切 な情 報 提 供 と迅 速 か つ 的 確 な避 難誘 導,そ して,そ れ に基 づ く適 切 な避 難 行 動 等 が不 可 欠 で あ る 。 これ らを実 現 す る た め に は,災 害 に関 す る 人 間 の心 理 面,行 動 面 に 関す る研 究 と 災 害 情 報 に 関 す る研 究 の成 果 が不 可 欠 で あ る。 例 えば,ど の よ うな情 報 を どの よ うな段 階 で どの よ う な手 法 で 提 供 し,ど の よ う に 認 知 し て も らい, どの よ う に誘 導 す る と適切 な避 難行 動 が行 わ れ る の か,と い った こ と に関 す る 知見 が,ま す ます重 要 に な って きて い る と考 え る。 3点 目は,災 害 に 関 連 す る研 究 成 果 の 総 合 化 ・ 体 系 化 で あ る。 災 害 関 係 の研 究 成 果 は 近 年非 常 に 増 加 してお り,実 務 者 に と って研 究 成 果 の全 体 像 を把 握 す る こ と は困 難 な状 況 と な って い る。膨 大 かつ 多 岐 に わ た る研 究 成 果 の レ ビ ュー を行 う と と もに,総 合 化 ・体 系 化 す る こ と につ い て も研 究 分 野 で の取 り組 み を望 ん で い る。 ま た,そ の 一 方 で,被 害 想 定 や そ の対 応 策 を検 討 し よ う とす る と 最 近 の研 究 成 果 が ほ とん ど ない 部 分 もあ る。 今 ま で の研 究成 果 を術瞰 して,分 野 別 にみ て どの 分 野 で どの よ うな成 果 が上 が っ てお り,ど の 分 野 の 研 究 が 手 薄 に な っ て い る のか とい う よ う な検 証 を行 い,防 災対 策 の観 点 か ら必 要 性 が 高 い の に もか か わ らず 手 薄 に な っ て い る研 究 分 野 に も研 究 資 源 を 投 入 して い く よ うな シ ス テ ム の構築 も重 要 で あ る と考 える 。 謝 辞 本 稿 の 作 成 に あ た っ て は,首 都 大 学 東 京 の 中 林 一 樹 教 授 か ら貴 重 な御 意 見 を頂 き ま した 。 こ こ に 記 し て感 謝 申 し上 げ ます 。 注 1) 本 稿 に お い て,不 燃 領 域 率 と は,空 地(道 路,公 園 等)及 び 中 高 層 非 木 造 建 築 物 の 敷 地 の 面 積 の 割 合 を い う。 2) 本 稿 に お い て,帰 宅 困難 者 と は,地 震 に よ り鉄 道 等 の 交 通 機 関 が 停 止 し,外 出 先 に取 り残 され た 滞 留 者 の う ち,自 宅 ま で の 距 離 が 遠 く,徒 歩 に よ る 帰 宅 が 困 難 な 人 とす る。 帰 宅 困難 者 数 の算 定 に あ た っ て は,自 宅 ま で の帰 宅 距 離 が10km以 内 の 人 は全 員 が 帰 宅 可 能,10km∼20kmで は1km長 く な る ご と に 帰 宅 可 能 な 人 が10%減 少,20km以 上 の 人 は全 員 が 帰 宅 困 難 と して い る 。 3) 日本 の 大 企 業 で 策 定 済 み22%,策 定 中23%(平 成 16年),ア メ リ カの 主 要 企 業 で 策 定 済 み56%,策 定 中28%(平 成15年)で あ る。 文 献 中 央 防 災 会 議(2005):首 都 直 下 地震 対 策大 綱.32p. http://www.bousai.go.jp/oshirase/h17/jishin_taikou. pdf [Cited 2007/07/01] . 中央 防 災会 議(2006a):首 都 直 下 地 震 の 地 震 防 災 戦 略 41p. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_syuto/ pdf/senryaku/sen.pdf [Cited 2007/07/01] . 中 央 防 災 会 議(2006b):首 都 直 下 地 震 応 急 対 策 活 動 要 領.48p. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_syuto/ pdf/yoryo/yoryo.pdf [Cited 2007/07/01] . 中央 防災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門調 査 会(2004a):第 12回 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会 資 料 2-3「地 震 ワー キ ング グ ル ー プ報 告 」. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochok-ka/12/shiryo2-3.pdf [Cited 2007/07/01] . 中央 防 災会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門調 査 会(2004b):第 13回 首 都 直 下 地 震 対 策 専 門調 査 会 資 料2-1「 直 接 的 被 害想 定結 果 に つ い て」 及 び 資料2-2「 直 接 的 被 害 想 定 結 果 に つ い て(参 考 資 料 編)」. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochok-ka/13/shiryo2-1.pdf [Cited 2007/07/01] . http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochok-ka/13/shiryo2-2.pdf [Cited 2007/07/011. 中 央 防 災 会 議 首都 直 下 地震 対 策 専 門調 査 会(2005a):第 15回 首 都 直 下 地 震 対 策専 門 調 査 会 資 料2「 被 害 想 定 結 果 に つ い て 」 及 び 資 料3「 首 都 直 下 地 震 に係 る被 害 想 定 手 法 に つ い て 」. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochok-ka/15/shiryou2.pdf [Cited 2007/07/01] . http://www bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochok-ka/15/shiryou3.pdf [Cited 2007/07/01] . 中央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策専 門 調査 会(2005b):首 都 直 下 地 震 対 策 専 門 調 査 会 報 告.92p. http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutochokka/ houkoku.pdf [Cited 2007/07/01] . 内 閣 府(2006):平 成18年 版 防 災 白 書.315p. (2007年2月7日 受 付, 2007年7月6日 受 理)

Fig.  1  Imminence  of Tokyo  Metropolitan  Earthquakes  (The  committees  for technical  investigations on  countermeasures  for Tokyo Metropolitan  Earthquakes,  the  Central  Disaster  Management  Council, 2005b  (contents  partially   amended))   .
Fig. 1 Imminence of Tokyo Metropolitan Earthquakes (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b (contents partially amended)) . p.2
Fig.  2  Types  of  earthquake  around  the  Tokyo  Met-
Fig. 2 Types of earthquake around the Tokyo Met- p.3
Fig.  3  Targeted  active  faults  (The  committees  for technical  investigations  on  countermeasures for Tokyo Metropolitan  Earthquakes,  the  Central  Disaster  Management  Council, 2005b  (contents  added))  .
Fig. 3 Targeted active faults (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b (contents added)) . p.4
Fig.  4  Targeted  inland  earthquakes  with  a  magnitude  of  6.9  (The  committees  for  technical investigations  on  countermeasures  for  Tokyo  Metropolitan  Earthquakes,  the  Central  Disaster  Management  Council,  2004a  (contents  partially   a
Fig. 4 Targeted inland earthquakes with a magnitude of 6.9 (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2004a (contents partially a p.5
Table  1  Material  damage  caused  by the  Northern  Tokyo-bay Earthquake  (M7.3)  (The  committees  for technical  investigations  on  countermeasures  for Tokyo Metropolitan  Earthquakes,  the  Central  Disaster  Management  Council, 2004b  (contents  p

Table 1

Material damage caused by the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2004b (contents p p.6
Table  2  Human  casualties  caused  by  the  Northern  Tokyo-bay  Earthquake  (M7.3)  (The  committees  for technical  investigations  on  countermeasures  for  Tokyo  Metropolitan  Earthquakes,  the  Central

Table 2

Human casualties caused by the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central p.7
Fig. 5  Economic  loss  due  to  the  Northern  Tokyo-bay  Earthquake  (M7.3)  (The  committees for  technical  investigations  on  countermeasures  for  Tokyo  Metropolitan  Earthquakes,  the  Central  Disaster  Management  Council,  2005b)  .
Fig. 5 Economic loss due to the Northern Tokyo-bay Earthquake (M7.3) (The committees for technical investigations on countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes, the Central Disaster Management Council, 2005b) . p.8
Fig. 6  Principle  of  countermeasures  for  Tokyo  Metropolitan  Earthquakes  (Cabinet  Office, 2006  (contents  partially   amended))   .
Fig. 6 Principle of countermeasures for Tokyo Metropolitan Earthquakes (Cabinet Office, 2006 (contents partially amended)) . p.9

参照

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