第
2
章 多変数関数
2.1
多変数関数と偏微分
限界生産力
¶ ³ 例題 2.1 生産量 Y が,資本 K と労働力 L の関数として, Y = K13L23 と表されるとする.資本の限界生産力および,労働の限界生産力を求めよ. µ ´ 労働 L を固定して,資本を K から ∆K 増加させたときの生産の変化量は, (K + ∆)13L 2 3 − K 1 3L 2 3 である.資本の変化量に対する生産の変化量の比をとり,∆K→ 0 としたときの極限が,資本の限 界生産力と呼ばれる. lim ∆K→0 (K + ∆K)13L 2 3− K 1 3L 2 3 ∆K = L 2 3 lim ∆K→0 (K + ∆K)13− K 1 3 ∆K = 1 3K −2 3L 2 3 労働の限界生産力も同様にして求めることができる. ¥2
変数の関数と等高線
z= f(x, y)という関数について考える.この関数は,二つの変数 x と y によって z の値が定まる という意味で,x-y-z 空間上で曲線を描く.図表 2.1 は,z = e−x2+xy−y2を図示したものである. 一般的に3 次元の図を描くのは困難なので,2 次元の x-y 平面に等高線を用いてグラフの形状を 表現することが多い.等高線とは,高さ(=関数の値) z0を与えたときに,f(x, y) = z0を満たす (x, y)の取りうる軌跡(集合) である.直感的には,等高線は,y = f(x, y) がつくる曲面を x-y 平 面に平行な面で切ったときの切口とみなしてよい. 高さが変わると,等高線も変化する.高さが異なる等高線が交わることはない.1 図表2.2 は, z= e−x2+xy−y2のグラフを等高線を用いて表現したものである. 練習問題 2.1 z= x2+ y2という関数を考える.z = 1 および z = 2 の等高線を書け.また,f(x, y)≤ 4 を満たす領域を図示せよ. 1接することはある.図表 2.1 z = e−x2+xy−y2のグラフ −2 −1 0 1 2 −2 −1 0 1 2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 x y z
平面の方程式
2 変数の関数の特殊な場合として,z が x と y の一次式で表されるものを考えよう.α,β,γ は定 数である. z= αx + βy + γ (2.1) もう少し一般化して, ax+ by + cz = d (2.1')と表すことができる(a, b, c, d は定数).これは,x-y-z の空間における平面を表す.(a, b, c) は平 面の法線ベクトルと呼ばれる. 練習問題 2.2 x-y-z 空間で,次の 3 点を通る平面の方程式を求めよ. (0, 0, 0) (1, 0, 2) (0, 1, 1) また,その等高線を図示せよ.
n
変数の関数
f(x1, x2, . . . , xn)のように,n 組の変数 x1, x2, . . . , xnによって値が定まる関数を n 変数の関数と いう.n が3 以上の場合,関数の形状を図示するのは困難 (不可能) である. 3 次元空間の平面を,n 次元の空間に一般化したものを超平面 (hyperplane) と呼び,以下の関数で 表す. a1x1+ a2x2+· · · + anxn = b (2.2) ここで,a1, a2, . . . , an, bは定数である.図表 2.2 z = e−x2+xy−y2の等高線 −2 −1.5 −1 −0.5 0 0.5 1 1.5 2 −2 −1.5 −1 −0.5 0 0.5 1 1.5 2 x y
方向微分と偏微分
1 章では,1 変数関数 f(x) の微分を以下のように定義した. df(x) dx =hlim→0 f(x + h) − f(x) h この概念を用いて,多変数関数の方向微分を定義する.簡単化のため,2 変数関数 f(x, y) を用いて 説明する.点 (x0, y0),ベクトル (λ, µ) と変数 t を使って,f(x, y) から新しい関数 g(t) を以下のよ うに構成する. g(t)≡ f(x0+ λt, y0+ µt) g(t)が t = 0 で微分可能とは,微分の定義によれば, lim h→0 g(0 + h) − g(0) h =hlim→0 f(x0+ λh, y0+ µh) − f(x0, y0) h が存在することである.もし上の極限が存在するならば,関数 f(x, y) は点 (x0, y0)で (λ, µ) 方向 に微分可能であるという.またその極限値を,点 (x0, y0)における (λ, µ) 方向の(方向) 微分係数 という. 例 2.1 f(x, y) = x2+ y2を考えよう.点 (2, 2) における (1, 1) 方向の方向微分係数は, lim h→0 (2 + h)2+ (2 + h)2− (22+ 22) h =hlim→0 2h2+ 8h h = lim h→02h+ 8 = 8 例 2.2 例2.1 で,(1, 1) ではなく,(1, −1) 方向の方向微分係数を求めよ.方向微分の際,(1, 0) を方向として取ると,点 (x0, y0)における方向微分係数は lim h→0 f(x0+ h, y0) − f(x0, y0) h となる.この極限が存在するとき,関数 f(x, y) は点 (x0, y0)において x で偏微分可能であるという. その極限値を x についての偏微分係数という.f(x, y) の定義域上のすべての x で偏微分係数が存在 するならば,その対応関係を関数と見なして,f(x, y) の x についての偏導関数と呼ぶ.z = f(x, y) のとき,x についての偏導関数を以下のように表記をする. ∂f(x, y) ∂x ∂ ∂xf(x, y) ∂z ∂x fx(x, y) なお,上記の議論において,方向微分の方向を (0, 1) をとすると,それは y による偏微分と読替え ることができる. 例題2.1 で限界生産力をとりあげた.資本の限界生産力とは,F の K についての偏微分にほかなら ない.また,労働の限界生産力は F の L についての偏微分である. 資本の限界生産力 ∂Y ∂K あるいは FK(K, L) 労働の限界生産力 ∂Y ∂L あるいは FL(K, L)
偏微分の計算
偏微分の計算にあたっては,偏微分する変数のみに着目し,それ以外の変数を便宜的に定数である かのように扱ってよい. 例 2.3 f(x, y) = 2x2yの偏導関数を求めてみよう.f(x, y) を x で偏微分すると, ∂f ∂x = 4xy となる.y で偏微分すると, ∂f ∂y = 2x 2 となる. 練習問題 2.3 次の関数の偏導関数を求めよ.i) 2x + 3y + 4 ii) (x + y)3 iii) ex2+2xy+y2 iv) x
微分可能と接平面
1 変数の関数が微分可能であることと,接線の存在は密接に関連していた.n 変数の場合でも同様 のことがいえる.ここでは,2 変数関数について微分可能であることと接平面について説明する. 1 変数の関数 f(x) が,x = x0で微分可能であるとは, lim h→0 f(x0+ h) − f(x0) h = c となる定数 c が存在することであり,f0(x0) = cと表記した(9 ページ参照).このことを少し形 をかえて表すと次のようになる.すなわち,微分可能とは o(h)≡ f(x0+ h) − f(x0) − ch (2.3) とおいたときに,h→ 0 のときに,o(h)h → 0 となるような c が存在することである. 【参考】 f(x)を x = x0のまわりでテイラー展開すると, f(x) = f(x0) + f0(x0)(x − x0) + 1 2f 00(x 0)(x0− x)2+· · · であった.x = x0+ hとして書き直すと, f(x0+ h) = f(x0) + f0(x0)h + 1 2f 00(x 0)h2+· · · となる.(2.3) と見比べると,o(h) は h に関する 2 次以上の項を集めた ものといえるので,h→ 0 のときo(h)h → 0 となることがここからも確 かめられる. 2 変数の関数についても,同様に考えることができる.f(x, y) が点 (x0, y0)で微分可能であるとは, あるベクトル (u, v) が存在して,任意のベクトル a = (h, k) に対して, o(h, k)≡ f(x0+ h, y0+ k) − f(x0, y0) − (uh + vk) (2.4) であたえられる関数 o(h, k) が,||a|| → 0 のとき o(h, k)||a|| → 0
を満たすことをいう.ただし,||a|| =√h2+ k2である.極限の記号を使えば, lim ||a||→0 f(x0+ h, y0+ k) − f(x0, y0) − (uh + vk) ||a|| = 0 (2.5) と書ける. 22 ページの方向微分の考え方と比較すると,a = (h, k) で k = 0 とした場合に u= fx(x0, y0) ( あるいは ∂f ∂x(x0, y0) ) が対応している.同様に, v= fy(x0, y0) ( あるいは ∂f ∂y(x0, y0) ) が対応する.
以上のことを直感的に説明すると,f(x, y) が (x0, y0)で微分可能とは,(x0, y0)の周辺では,f(x, y) が平面とみなしてよいということである.すなわち,z = f(x, y) という曲面は,(x0, y0)を含む十 分狭い領域では, z= ux + vy + α = fx(x0, y0)x + fy(x0, y0)y + α α= f(x0, y0) − fx(x0, y0)x0− fy(x0, y0)y0 (2.6) とほぼ一致している.さらに,このことは,(2.6) であたえられる平面が,曲面 z = f(x, y) の (x0, y0) における接平面になっていることを意味する. 例 2.4 f(x, y) = 0.5x + y − 1の場合を考えよう.点 (2, 1) における偏微分係数は fx(2, 1) = 0.5 fy(1, 1) = 1 である.(2.6) より,接平面の方程式を書くと,α = 1 − 0.5 ∗ 2 − 1 ∗ 1 = −1 なので, z= 0.5x + y − 1 となる.当り前のことであるが,平面の接平面は自分自身である. 例 2.5 f(x, y) = 18x2+ 12y2とおく.曲面 z = f(x, y) の点 (2, 1) における接平面は, fx(2, 1) = 1 8 ∗ 2 ∗ 2 = 0.5 fy(2, 1) = 1 2 ∗ 2 ∗ 1 = 1 α= 1 8 ∗ 2 2+1 2 ∗ 1 2− 0.5∗ 2 − 1 ∗ 1 = −1 より, z= 0.5x + y − 1 で与えられる. 練習問題 2.4 例2.5 の曲線の,点 (1, 1) における接平面を求めよ. 微分可能であることと,偏微分の関係は次の定理で与えられる. ¶ ³ 定理 2.1 f(x, y)が微分可能であるとき,以下が成り立つ. i) 任意の (λ, µ) に対して,f(x, y) は (λ, µ) 方向に方向微分可能で, lim h→0 f(x0+ λh, y0+ µh) − f(x0, y0) h = λu + µv である. ii) f(x, y) は,x と y について偏微分可能で, u= ∂ ∂xf(x0, y0) v= ∂ ∂yf(x0, y0) である. µ ´
図表 2.3 曲面と接平面 x y z 2 1 x y z 2 1
【参考】 定理2.1 の逆は成り立たないことに注意しよう.つまり,f(x, y) が xと y で偏微分可能であっても,微分可能でない場合,つまり接平面が 存在しない場合がある. 例 2.6 偏微分できても微分可能出ない例として,次の関数を考えよう. f(x, y) = { 2xy x2+y2, (x, y)6= (0, 0) 0, (x, y) = (0, 0) f(x, 0) = 0なので,f(x, y) は x 軸上ではずっと 0 をとる定数関数であ る.したがって,偏微分の定義より,fx(x, 0) = 0である.同様の理由に より,fy(0, y) = 0となる.したがって,fx(0, 0) = fy(0, 0) = 0である. 点 (0, 0) における (λ, µ) 方向の方向微分を求めるために,以下の計 算をする. f(0 + λh, 0 + µh) − f(0, 0) h = 1 h ( 2λµh2 (λ2+ µ2)h2− f(0, 0) ) = 1 h 2λµ (λ2+ µ2) λと µ のいずれも 0 でないならば,h→ 0 のとき,上式は発散する.よっ て,一般の方向に対しては方向微分は存在しない.
全微分
h= ∆x,k = ∆y,∆f = f(x0+ h, y0+ k) − f(x0, y0)として,式(2.4) を書き直す.∆f= u∆x + v∆y + o(h, k)
= fx(x0, y0)∆x + fy(x0, y0)∆y + o(h, k)
(2.7) (2.7) は,x が ∆x,y が ∆y だけ微小変動したとき,f の変化量 ∆f は,∆x と ∆y の 1 次式で近似 的に表現できることを意味している.これは,上記の接平面の考えとまったく同じである.両辺の 極限を取り a = (h, k) として||a|| → 0 のときo(h,k)||a|| → 0 となることを,以下のようにシンボリッ クに表す場合がある. df= fx(x0, y0)dx + fy(x0, y0)dy 特に (x0, y0)と決めずに,定義域内の任意の点で考えると, df= fx(x, y)dx + fy(x, y)dy (2.8) これを f の全微分と呼ぶ. 例 2.7 例題2.1 における生産関数の全微分を求めてみよう. ∂Y ∂K = 1 3K −2 3L 2 3 ∂Y ∂L = 2 3K 1 3L− 1 3 なので, dY= 1 3K −2 3L23dK+2 3K 1 3L−13dL である.
練習問題 2.5 例題1.4 において,2 期間の消費 c1,c2によってえられる効用を U(c1, c2) = 1 γc γ 1+ α 1 γc γ 2 とおいた.効用の全微分を求めよ.
高階の偏導関数
f(x, y)が x で偏微分可能ならば,∂f(x,y)∂x が存在する.これが,さらに x および y で偏微分可能な らば,2 階の偏導関数を定義することができる.f(x, y) を x で偏微分し,もう一度 x で偏微分した ものを ∂2f(x,y)∂x2 または fxxと表す.すなわち, ∂2f(x, y) ∂x2 ≡ ∂ ∂x ( ∂f(x, y) ∂x ) である.f(x, y) を x で偏微分し,つぎに y で偏微分したものを ∂2∂x∂yf(x,y) または fxyと表す. ∂2f(x, y) ∂x∂y ≡ ∂ ∂y ( ∂f(x, y) ∂x ) 同様に,∂2∂y∂xf(x,y),fyx, ∂2f(x,y) ∂y2 ,fyyを定義することができる. 例 2.8 f(x, y) = x2e−yの2 階の偏導関数をすべて求めてみよう. まず,1 階の偏導関数を求める. ∂f(x, y) ∂x = 2xe −y ∂f(x, y) ∂y = −x 2e−y 2 階の偏導関数は以下の通りである. ∂2f(x, y) ∂x2 = 2e −y ∂2f(x, y) ∂x∂y = −2xe −y ∂2f(x, y) ∂y2 = x 2e−y ∂2f(x, y) ∂y∂x = −2xe −y 偏微分の順序に関して,次の定理が成り立つ. ¶ ³ 定理 2.2関数 f(x, y) に対して,∂f(x,y)∂y と ∂2∂x∂yf(x,y) が存在して,∂2∂x∂yf(x,y)が連続ならば,∂2∂y∂xf(x,y) も存 在して, ∂2f(x, y) ∂y∂x = ∂2f(x, y) ∂x∂y が成り立つ. µ ´ 定理2.2 より,偏導関数が連続であれば偏微分する際に変数の順序は影響しないことがいえる. 練習問題 2.6 f(x, y) = x4y3+ 2xy2とする.f xy= fyxを確かめよ. 練習問題 2.7 f(x, y) = x2ex−yとおく.2 階の偏導関数をすべて求めよ.
一般の場合の偏微分
偏微分を2 変数の場合で説明してきた.これは,以下のように n 変数の場合についても同様に考 えることができる. 偏微分 関数 f(x1, x2, . . . , xn)について,(2.9) の極限が存在するならば,それを (a1, a2, . . . , an)における, 変数 xiについての偏微分係数という. lim h→0 f(a1, a2, . . . , ai+ h, . . . , an) − f(a1, a2, . . . , ai, . . . , an) h , i= 1, . . . , n (2.9) 定義以上のすべての点で偏微分係数が存在するならば,それを関数とみなし,偏導関数という.偏 導関数を求めることを偏微分するという.偏微分においてはどの変数に着目しているかを明確にし ないといけない.y = f(x1, . . . , xn)としたとき,変数 xiについての偏微分を ∂f(x1, . . . , xn) ∂xi , ∂ ∂xi f(x1, . . . , xn), ∂y ∂xi , fxi(x1, . . . , xn), fi(x1, . . . , xn), (2.10) などと表記する. 接平面 曲面 y = f(x1, x2, . . . , xn)の (a1, a2, . . . , an)における接平面の方程式は, y= f1(a1, . . . , an)x1+ f2(a1, . . . , an)x2+· · · + fn(a1, . . . , an)xn+ c c= f(a1, . . . , an) − f1(a1, . . . , an)a1− f2(a1, . . . , an)a2−· · · − fn(a1, . . . , an)an (2.11) である.ただし,fj(a1, . . . , an) = ∂x∂fj(a1, . . . , an)である. 全微分 全微分は以下の通りである. df= f1(x1, . . . , xn)dx1+ f2(x1, . . . , xn)dx2+· · · + fn(x1, . . . , xn)dxn (2.12) 高階の偏微分 f(x1, . . . , xn)を最初 xiで偏微分し,次に xjで偏微分したものが,2 階の偏導関数である.i 6= j の ときは, ∂2f(x 1, . . . , xn) ∂xi∂xj ≡ ∂ ∂xj ( ∂f(x1, . . . , xn) ∂xi ) となり,i = j のときは, ∂2f(x 1, . . . , xn) ∂x2 i ≡ ∂ ∂xi ( ∂f(x1, . . . , xn) ∂xi ) である.これらを,fxixj と書くこともある. k階の偏導関数 ∂kf(x1,...,xn) ∂xk11 ∂xk22 ···∂xknn が存在し,連続であるとする(ただし,k1+ k2+· · · + kn= k). このとき,変数の偏微分する順序は無関係である. 練習問題 2.8 f(x, y, z) = x + xy + xz + 2yz2とする.2 階の偏導関数をすべて求めよ.2.2
偏微分の応用
多変数関数の合成関数
zと x,y の関係が z = f(x, y) で与えられており,さらに x と y が t の関数として x = g(t) および y= h(t)として与えられているとき,z は t の関数とみなすことができる.このとき,f(x, y) が微 分可能で,g(t) と h(t) が t に関して微分可能であるとき,合成関数 f(g(t), h(t)) は t で微分可能 であり, dz dt = ∂f ∂x dg dt + ∂f ∂y dh dt (2.13) となる. 例 2.9 z= x2+ xyとする.y = e−xのとき,dz dxを求めよう. まず,最初に代入して,z を x だけの関数と表して微分しよう.y = e−xを代入すると, z= x2+ xe−x なので, dz dx = 2x + e −x+ (−1)xe−x= 2x + (−x + 1)e−x となる. 次に,合成関数の微分を用いる. f(x, y) = x2+ xy, h(x) = e−x とおくと, dz dx = ∂f ∂x + ∂f ∂y dh dx = 2x + y + x(−e −x) = 2x + (−x + 1)e−x となる. 例 2.10 ふたつの財 G1と G2の価格をそれぞれ p1,p2とする.消費者の財 G1への需要が, 価格 p1,p2と所得 I の関数として,c(p1, p2, I)と書けるものとする.所得 I を関数 M(p1, p2, u)でおきかえて, h(p1, p2, u) = c ( p1, p2, M(p1, p2, u) ) としたとき,両辺を p1で偏微分しよう. 左辺は,h(p1, p2, u)を p1で偏微分するので,∂p∂h 1 である.右辺は合成関数となって いるので,上記の方法を適用すると, ∂h ∂p1 = ∂c ∂p1 +∂c ∂I · ∂M ∂p1 となる. 練習問題 2.9 f(x, y) = (x4+ x2y+ xy)3,x = t2+ 1,y = t + 4 とする.df dtを計算せよ.技術的限界代替率
¶ ³ 例題 2.2 資本投入量を K,労働投入量を L として,生産関数 F(K, L) が, F(K, L) = 5K0.4L0.6 (2.14) で与えられているとする.労働の資本に対する技術的限界代替率を求めよ. µ ´ 労働の資本に対する技術的限界代替率とは,労働を L から L + ∆L に変化させたとき,生産量が変 化しないためには,F(K + ∆K, L + ∆L) = F(K, L) を満たすように,∆K を調整する際の比率 ∆K∆L の 極限, ∆K ∆L → dK dL で定義される. Y = F(K, L)の全微分をとると, dY= FKdK+ FLdL である.ここで,生産量が変化しないとは,dY = 0 を意味する.そうすると,直感的に, dK dL = − FL FK という関係式が導かれる. FK(K, L) = 2K−0.6L0.6, FL(K, L) = 3K0.4L−0.4 より, dK dL = − FL(K, L) FK(K, L) = −1.5K L となる.L を微少量(² とする)減少させると,生産量を保つためには,K が 1.5K L²だけ増加しな くてはならない. ¥陰関数定理
xと y の間に成り立つ関係が,関数 f によって,y = f(x) と明示的に(陽に) 表される場合,dydx を 求めるのは比較的簡単である.一方,x と y の満たす関係が,F(x, y) = 0 として与えられていてい る場合がある.これを陰関数という.例えば, x2+ y2− 1 = 0 (2.15) x+ y − exy= 0 (2.15') などである.陰関数は,y = f(x) の形に変形できるもの((2.15))もあるが,そうでないもの((2.15')) もある.後者の場合であっても,適当な条件さえ満たせば,F(x, y) を利用して,dydxを導くことが できる.図表 2.4 生産量が0.5,1,2 の場合の等生産量曲線 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0 1 2 3 4 5 6 7 8 L K F(K,L)=10 F(K,L)=5 F(K,L)=2.5 ¶ ³ 定理 2.3 (陰関数定理) 関数 F(x, y) が,点 (x0, y0)を含むある領域で微分可能であり,F(x0, y0) = 0であるとする. このとき,Fy(x0, y0)6= 0 ならば,x = x0の近傍で, i) F(x, f(x)) = 0 ii) y0= f(x0) を満たす,連続関数 f(x) がただ一つだけ存在する.さらに,関数 y = f(x) は微分可能で, dy dx = − Fx(x, y) Fy(x, y) となる. µ ´ 例 2.11 F(x, y) = x + y − exyにおいて,dy dxを求めてみよう.点 (1, 0) で F(1, 0) = 0 を満たす. Fx(x, y) = 1 − yexy Fy(x, y) = 1 − xexy なので, dy dx = − 1− yexy 1− xexy である.
練習問題 2.10 F(x, y) = 3x2+ 4xy + 2y2− 9とする.F(x, y) = 0 によって定まる陰関数 y = f(x) に ついて,dydx を求めよ.
短期と長期の費用曲線
¶ ³ 例題 2.3 短期の費用曲線が, y= ex−t+ t − 1 と与えられているとする.ここで,x は生産量,t は規模を表すパラメータである.長期費用 曲線を求めよ. µ ´包絡線
媒介変数 t を含む関数 f(x, y, t) を考える.t を固定したとき,f(x, y, t) = 0 を満たす (x, y) は,x{y 平面上で曲線を作る.t を変化させると,それに応じて曲線の形や位置が変わる. 例 2.12 f(x, y, t) = x2−2(t−1)x−y+t2とする.t を 0, 1, 2, 3, 4 と変化させたとき,f(x, y, t) = 0 によって得られる曲線は図2.5 のようになる. 図表 2.5 x2− 2(t − 1)x − y + t2= 0 −2 −1 0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 12 14 16 t=0 t=1 t=2 t=3 t=4 x y 媒介変数 t がある区間のすべての値を取るとき,曲線は連続的に変化する.これらの曲線をまとめ て曲線族と呼ぶ.ここで次のような曲線 C を考えよう. C は曲線族のすべての曲線に接するC 上のどの点でも,曲線族に接している もし上記の条件を満たす曲線 C が存在するならば,それを曲線族の包絡線という.図2.6 の直線が 包絡線である. 図表 2.6 曲線族 x2− 2(t − 1)x − y + t2= 0の包絡線 C −2 −1 0 1 2 3 4 5 6 −2 0 2 4 6 8 10 12 14 x y C 包絡線の関数を求めてみよう.t を固定すると曲線族に含まれるひとつの曲線が定まる.曲線はか ならず包絡線と接する点を持っているので,t を固定することは,接点を一つ定めていることにな る.接点の集まりが包絡線と考えてよいので,包絡線の関数は,t を媒介変数として (x(t), y(t)) と 表現することができる.接点は曲線上の点なので, f(x(t), y(t), t) = 0 (2.16) を満たす.(2.16) の両辺を t で微分すると, d dtf(x(t), y(t), t) = fx(x(t), y(t), t) dx(t) dt + fy(x(t), y(t), t) dy(t) dt + ft(x(t), y(t), t) (2.17) を得る.一方,(x(t), y(t)) における包絡線 C の接線の傾きは dy(t)dt /dx(t)dt である.これは,次の ように示すことができる. dy dx =∆xlim→0 ∆y ∆x =∆tlim→0 y(t + ∆t) − y(t) x(t + ∆t) − x(t) = lim ∆t→0 y(t + ∆t) − y(t) ∆t ∆t x(t + ∆t) − x(t) = dy(t) dt / dx(t) dt (2.18) また,f(x, y, t) = 0 を x と y の陰関数と見て,点 (x(t), y(t)) における傾きを計算すると,陰関数 定理より dy dx = − fx(x(t), y(t), t) fy(x(t), y(t), t) (2.19)
となる.包絡線 C と曲線が接する点では,包絡線 C の接線と曲線の接線は一致していなくてはな らないので,その点での傾きも等しい.よって,(2.18) と (2.19) より, fx(x(t), y(t), t) dx(t) dt + fy(x(t), y(t), t) dy(t) dt = 0 (2.20) とならなくてはならない.結局,(2.17) と (2.20) より, ft(x(t), y(t), t) = 0 (2.21) となった.包絡線の関数は(2.16) と (2.21) より求められる.