銀 行経 営 にお け る内部 監 査 の意 義
日米 視 点 の 比 較 に着 目 しつ つ
橋
本
光
憲
は じめ に 1 2 3 4 5 6 7 8 9 「銀行経営」 の意味 す る もの 企業 の監査 の諸形態 と機能 内部 監査 に よる業務監査 の意義 銀行 に対 す る会計士監査 の概要 外 国 にお ける銀行監査 の実情 銀行 自身の内部 監査 に対す る評価 アメ リカ にお ける内部監 査 銀行 の内部検査制度 の概 要 内部監査 の経営 上の位置付 け おわ りに 主要参考文献は
じ
め
に
米 国 の 金 融 機 関 で よ く 言 わ れ る 言 葉 に,「 検 査 員 と い う の は,臨 店 し た 時 に は み ん な を 泣 き 出 さ せ,帰 っ た 時 に は お 祝 い さ れ る 連 中 だ11nternal auditorshavebeendescribedasindividualswhocausepeoplecrywhen 1} theyarriveandcelebratewhentheyleave.と あ る 。 日 本 式 に 言 え,「 嫌 な 奴 が い な く な っ て,赤 飯 を 炊 い て 喜 ば れ る 」 と い っ た 図 で あ る 。 で は 今LJの 銀 123行 の 内 部 監 査 の 仕 事 は,言 わ れ る程 実 効 を上 げ て い る だ ろ うか 。 か っ て,大 型 の 為 替 投 機i失敗 事 件 が1981年 か ら1984年 に か け て 日本 企 業 の 海 外 の 支 店 な どの 出 先 で 発 生 し た 。 日商 岩 井(香 港),第 一 勧 銀(シ ン ガ ポ ー ル 〉,三 井 物 産(ロ ン ド ン),富 士 銀 行(ニ ュ ー ヨ ー ク)等 の0連 の 事 件 で あ る。 どの ケ ー ス も 「内部 規 定 に 違 反 し て 為 替 取 引 を行 な い … … 」 と,事 件 の 原 因 が 述 べ られ る 一 方,内 規 さ え し っ か り し て い れ ばOKと い う もの で は な 2} い,チ ェ ッ ク体 制 を十 分 に機 能 させ る こ と こそ課 題 で あ る,と 当 時論 じ られ たが,今 日そ れが 果 して徹 底 され て い るで あ ろ うか 。 また,そ の後 三 菱 銀 行 の米 国 子 会 社 ・加 州 三 菱 銀行 幹 部 の ギ ャ ンブ ル の た め の資 金 使 い込 み,鉄 鋼 な どを取 り扱 う中堅 商 社 ・菱 三 商 事 の取 締 役 に よ る 流 用事 件,ア ラ ビア石 油 の関 連 会 社 ・富 士 石 油 役 員 の横 領 な ど,企 業 幹 部 に 3) よ る巨額 の不 正事 件 が 相 次 い で明 るみ に出 て,「仲 間 が悪 い こ とをす る はず が な い」 とい う仲 間 意 識 に支 え られ た わ が 国 の企 業風 土 に も目 を向 け,必 要 が あれ ば企 業 経 営 を根 本 か ら見 直 して い くべ きで あ る とい う反省 が な され た。 しか し,こ の よ うな違 法 行 為 が起 きな い よ うな相 互牽 制 や 内 部監 査 の仕組 み を作 り上 げ て ゆ く地 道 な努 力 は な され たで あ ろ うか。 昨 今 の銀 行 ・証 券 を め ぐる不祥 事 が頻 発 す る中 で,再 び チ ェ ッ ク体 制 の問 題 が クmズ ア ップ され て い る。 しか し,単 な る議 論 の繰 り返 しで は意 味 が ない 。本 稿 は,原 点 に立 ち帰 っ て企 業 と監 査 の問 題 を,特 に論 者 がか つ て在 籍 した銀 行 界 に お け る経 営 と監 査 の意 義 に 的 を絞 って 問 い直 す もの で あ る。 論 考 の手 法 と して は,比 較 的 に 目 に触 れ る こ との 少 な か った 内部 監 査,な か で も銀 行 関 係 の基 本 的 文 献 を紹 介 しつ つ 問題 点 を明 らか にす る一 方,主 にア メ リカ に於 け る事 例 を比 較 勘 考 の材 料 と して取 り入 れ,議 論 の裏 付 け と した こ とを ご承 知 願 い た い。 124国 際 経 営 論集No31992
1「
銀 行 経 営 」 の 意味 す る もの
銀 行 経 営 は,言 う まで もな く 「企 業 」経 営 の一 分 野 で あ り,「 経 営 」の一 課 題 で あ る。そ して,銀 行 経 営 と内部 監 査 の関連 性 を検 討 す る こ とは,「 経 営 管 理 」 の問題 で あ り,経 営 学 の観 点 か らは,経 営 管理 論 の一 環 として位 置付 け る こ とが 出 来 よ う。 議 論 を進 め る前提 と して,「 銀 行 」の定 義 を明 確 に して お か な けれ ば な らな い ので あ るが,銀 行 とは何 か につ い て は余 りに も当 然 の こ と と して か ,一 般 の経 済辞 典 で は殆 ど省 略 され て い る。 そ こで,わ が 国 の法 律 上 の規 定 を引 用 す る と,商 法502条 に,「 左 に掲 げ る行 為 は営 業 として之 を為 す と きは之 を商 行 為 とす」 とあ り,そ の第8項 に 「両替 其 他 の 銀 行 取 引」 が示 され て い る。 さ らに,昭 和56年6月1日 公 布 の 「銀 行 法 」(法 律 第59号 一一一 い わ ゆ る 「新 銀 行 法 」)で は,昭 和2年 の 「旧銀 行 法 」に な か った 目的規 定 で始 ま り,次 に 第2条 で ① この法律 に お い て 「銀 行 」 とは,… …大 蔵大 臣 の 免許 を受 けて銀 行 業 を 営 む者 を い う。 ② この法 律 にお い て 「銀 行 業 」 とは,次 に掲 げ る行 為 の いず れ か を行 う営 業 を い う。 一 預 金 又 は定 期 積 金 の受 入 れ と資 金 の貸 付 け又 は手 形 の割 引 と を併 せ 行 う こ と。 二 為 替 取 引 を行 う こ と。 と規 定 され て い る。具 体 的 に は後 の第10条 で 「業 務 の 範 囲 」 と して,次 の通 り定 め て い る。 ①(基 本 業 務) 一 預 金 又 は定 期 積 金 の受 入 れ 二 資 金 の貸 付 け又 は手 形 の割 引 銀行経営における内部監査の意義125三 為 替 取 引 ②(付 随業 務) 一 債 務 の保 証 又 は手 形 の引 受 け 二 有 価 証 券 の売 買,有 価 証 券 指 数 等 先 物 取 引,有 価 証 券 オ プ シ ョン取 引 又 は外 国市 場 証 券 先 物 取 引(投 資 の 目的 を もっ てす る もの又 は顧 客 の書 面 に よ る注 文 を受 け て そ の計 算 に お い て す る もの に限 る。) 三 有 価 証 券 の貸 付 け 四 国債,地 方債 若 し くは政府 保 証 債(「 国債 等 」 とい う。)の 引 受 け(売 出 しの 目的 を もって す る もの を除 く。)又は当該 引受 け に係 る国債 等 の募 集 の取 扱 い 五 金 銭 債 権(譲 渡 性 預 金 証 書 その他 の 大 蔵省 令 で 定 め る証 書 を もって 表 示 され る もの を含 む 。)の 取 得 又 は譲 渡 六 地 方債 又 は社債 そ の他 の債 券 の募 集 の受 託 七 銀 行 そ の他 金 融 業 を行 う者 の業 務 の代 理(大 蔵 省 令 で 定 め る もの に限 る。) 八 国,地 方 公共 団体,会 社 等 の金 銭 の収 納 そ の他 金 銭 に係 る事 務 の取 扱 い 九 有 価 証 券i貴 金 属 そ の他 の物 品 の保 護 預 り 十 両 替 十一 金 銭 先物 取 引 等 の受 託 等 続 く第11条 で は, 銀 行 は,前 条 の規 定 に よ り営 む 業務 の ほか,同 条 第 一 項 各 号 に掲 げ る業 務 の遂 行 を妨 げ ない 限度 にお い て(傍 線 筆 者),国 債 等 に係 る引受 け,募 集 又 は の 売 出 し の 取 扱 い,売 買 そ の 他 の 業 務 を 営 む こ と が で き る 。(一部 読 み 替 え 省 略) と され,銀 行 法 改 正 に 伴 っ て,銀 行 と証 券 の 兼 業 を 禁 じ た証 券 取 引 法 第65条 に よ る 「銀 行 と証 券 の 垣 根 」 を 弾 力 化 す る 根 拠 と な る 規 定 と な っ て い る 。 と も あ れ,こ れ まで 見 て 来 た よ う に,一 般 に 「銀 行 」と は,「 信 用 を媒 介 と 126国 際経営論集No31992
して鍼
の流驚
換 を集 団的 に行 な うことを業 とす 諾
」 と議
され る
。
ひ るが え っ て,わ が 国 の金 融 機 関 全 般 に 目 を通 して見 る と ,業 務 分 野 別 で は次 の よ うに分 類 され る。 ① 短 期 金 融 を主 業 務 とす る商 業 銀 行(都 市 銀 行 お よ び地 方 銀 行=普 通 銀 行),在 日外 国 銀 行 ② 外 国 為 替 専 門 銀 行(=東 京 銀 行) ③ 長 期 金 融機 関(長 期 信 用 銀 行,信 託 銀 行,保 険会 社) ④ 中小 企 業 金 融 機 関(信 用 金 庫,信 用 組 合 ,労 金,商 工 中 金) ⑤ 農林 漁業 金 融機 関(農 林 中央 金 庫,農 協 ,漁 協 等) ⑥ 証 券 会 社 一一 証 券 市場 を担 当 ⑦ 短 資 会 社一 一 イ ンタ ー バ ン ク市場 を担 当 ⑧ 政 府 系 金 融機 関一 一一民 間金 融 機 関 を補 完(郵 貯 ,他) 民 間 金 融 機 関 は,金 融仲 介機 能 の有 無 に よ り 「金 融 仲 介 機 関 」(① ∼ ⑤)と 「そ の他 金 融 機 関 」(⑥)に 分 け る こ とが 出来 る。 ① ∼ ⑤ は また,「 預 金 取 扱 機 関 」 で あ り,前8項 以 外 の生 命 保 険 会 社 ,損 害保 険 会 社y証 券 投 資 信 託 委 託 会 社 を 「非 預 金 取 扱 機 関 」 と して の金 融 機 関 と見 倣 し得 る。 「預 金取 扱機 関 」 の うち,要 求 払 預 金 を取 扱 い,預 金 通 貨 を創 造 し得 る金 融 機 関 が 「銀 行 」 で あ り,本 稿 で は 「銀 行 」 の経 営 を主 な議論 の対 象 とす る の で あ る。 と こ ろで,銀 行 も私 企 業 で あ る以 上 ,収 益性 の追 求 な しに は成 り立 た ない の で あ るが,銀 行 の運 用 す る資 金 が 大 部 分 を不 特 定 多 数 の預 金 者 に依 存 す る と こ ろか ら,銀 行 は法 律 上 も行 政 上 も厳 しい規 制 が課 せ られ て い る 。 昭 和56 年 改 正 の 「新 銀行 法 」 で は, 「この法 律 は,銀 行 の業務 の公 共 性 にか ん が み ,信 用 を維 持 し,預 金 者 等(=預 金 者 及 び定 期 積 金 の積 金 者)の 保 護 を確 保 す る と と もに金 融 の 円 滑 を図 る た め,銀 行 の業 務 の健 全 か つ適 切 な運 営 を期 し,も っ て国 民 経 済 の健 全 な 発 展 に資 す る こ と を 目的 とす る」(第1条 一 目 的一 第1 銀行経営における内部監査の意義127項) と,目 的 規 定 が 前 に述 べ た よ うに新 た に設 け られ た 。 も とよ り法 律 万 能 で は な く,銀 行 自身 の 自主 的 な努 力 が 重 要 な の で あ るが, 預 金者 保 護 の た め経 営 の安 全 性 が 求 め られ,運 用資 金 に絶 えず或 る程 度 の 流 動 性 を保 た な け れ ば な らな い こ とは,経 営 の難 しい課題 とな る。 この収 益 性 の追 求 と安 全 性 の確保 は,い わ ば二 律 背 反 の 関係 にあ り・ 銀 行 経 営 は常 に この両 者 の合 理 的 なバ ラ ンス を図 らな けれ ば な らない ので あ る。 さ ら に,前 述 の 目的規 定 に もあ る よ うにy銀 行 はそ の業 務 を通 じて,国 民 経 済,企 業,個 人 の生 活 に まで幅 広 い か か わ りを持 つ こ とか ら,一 般 の私 企 業 6) に比 して格 段 の公 共 性 の維 持 が求 め られ てい る。 以 上,収 益 性,安 全 性,公 共 性 の 三 つ を 「銀 行 経 営 の原 則 」 と呼 ぶ が,そ れ が た め に,業 務 監 査,特 に 内部 監 査 の機 能 が如 何 に発 揮 され るべ きか,近 時 銀 行 の社 会 的 責 任 の 自覚 に 欠 け る よ うな事 例 が 看 取 され る中 に あ っ て,問 題 を原 点 に立 ち帰 って 考 えて 見 る こ とが 必 要 とな るで あ ろ う。
2企
業 の監 査 の 諸 形態 と機 能
一 般 に 「監 査 」 と言 えば 「会 計 監 査 」 と理 解 され て い るが,以 下 に説 明 す る よ う に,「 会計 監 査 」以 外 に 「業 務 監 査 」 とい う領 域 が あ る こ とが十 分 に知 られ て い る とは言 い難 い。 したが っ て,議 論 を進 め る便 宜 上,先 に この二 種 ラ 類 の監 査 に つ い て の常 識 的定 義 を示 して お こう・ 会 計 監 査(audit) 組 織体(営 利 組 織 ・非 営 利 組 織 を含 む)の 会 計 記 録 お よび会 計 行 為 に っ い て,第 三 者 た る監 査 人 が批 判 的 に分 析 ・検 討 し,そ の正 否 に関 す る 意 見 を表 明 す る こ と。 これ に は,組 織 体 内 部 の監 査 人 が経 営 者 の た め に 行 う内部 監 査 と外 部 の監 査 人 が 利 害 関係 者 の利 益 の た め に行 う外 部 監 査 とが あ る。 128国 際経営論集No.31992業 務 監 査(operationalaudit) 企 業 な どの組 織 体 の会 計 以 外 の業 務 活 動 を対 象 と し,そ の 当否 を明 ら か にす る監 査 。 これ に は・ 内部 監 査 人 に よ り各 種 の業 務 の妥 当性 や 有効 性 を確 か め るた め に行 なわ れ る監 査 と,商 法 に従 い,と くに資 本 金 が1 億 円 を超 え る株 式 会 社 につ い て,監 査 役 に よ り取 締 役 の業 務 執 行 の適 法 性 を確 か め る た め に行 な わ れ る監 査 とが あ る。 右 の定 義 中 の 「外 部 監 査 」 と 「内 部 監 査 」 の相 違 点 お よ び定 義 内容 の適 否 に つ い て は後 に触 れ る こ と と し,議 論 を更 に進 め る こ と と した い 。 わ が 国 に於 け る企 業 の監 査 は,お お む ね次 の よ うに な っ て い る 。 (1)法 定 監 査 ① 証 券 取 引 法 に よ る公 認 会 計 士監 査 (上場 会 社 が提 出 す る書 類 へ の公 認 会 計 士 又 は監 査 法 人 に よ る監 査 証 明,第193条 の2) ② 商 法 特例 法 に よ る会 計 監 査 人 監 査 (資本 額5億 円,負 債 合 計 額200億 円以 上 の株 式会 社 の会 計 監 査 人一一 公 認 会 計 士 又 は監 査 法 人 一 一の監 査,第2条 ,第4条) ③ 商 法 に も とつ く監 査 役 監 査 (株式 会 社 の計 算 書類 と付 属 明 細 書 の監 査 役 へ の提 出 と,監 査 報 告 書 の取締 役 へ の提 出,第281条1,2,3) ② 非 法 定 監 査 内部 監 査 に よ る臆 監 査(会 計 士 な どに依 頼 す る場 合 を含8)) 公認 会 計 士 監 査,監 査 役 監 査,内 部 監 査 を総 称 して,俗 に 「三 様 監 査 」 と 言 うが,監 査 の領 域 ・内 容 と して は,会 計 監 査 と業務 監 査 に 区分 され る。 前 記 の法 定 監 査 と非 法定 監 査 を,会 計 監 査 と業 務 監 査 との 関連 で 分類 す る と, 以 下 の よ うに な る。 (1)証 券 取 引 法 に よ る公 認 会 計 監 査 一一一一 一一 一 一一 → 会 計 監 査 (2)商 法 特 例 法 に よ る会 計監 査 人 監 査 一 一 一 一→ 会 計 監 査 銀行経営における内部監査の意義129
(3)商 法 に も とつ く監 査 役 監 査 資本 金1億 円以 下 の会 社 資 本 金1億 円以 上 の会 社
会計 監査
会計監査
業務監 査
(4)内 部監査 一
一→ 会計監査
業務監 査
なお,商 法特例 法 に よ り,資 本金が1億 円以下 で,か つ負債合計額 が200億
円以下 の 「
小会社」 の場合,監 査役 は 「
会計 監査」 のみを行 い,「 業務監査 」
を行 う義務 はない(第22条)と
され てい る。
ラ 「外部 監 査 」 と 「内部 監 査 」 との 区分 は,お お む ね次 の とお りで あ る。 外 部 監 査(externalaudit) 内部 監 査 に対 す る用語 で,組 織 体 外 部 の監 査 人 に よ って行 わ れ る監 査 を い う。 公 認 会 計 士(ま た は監 査法 人)の よ うな職 業 監 査人 に よ る監 査 や監 督 官 庁 に よ る監 査 が そ の代 表例 で あ る。 これ は組 織 体 と特 別 の利 害 関係 の な い独立 の第 三 者 に よ る監 査 で あ るか ら・社 会 的信 頼 性 の 高 い も ので あ る。 内部 監 査(internalaudit) 企 業 内部 の監 査人 に よっ て経 営 管 理 目的 の た め に実施 され る監 査 の こ と。 これ は,内 部 統 制 の一 環 として,経 営 者 的 見 地 か ら・ 企 業 の資 産 管 理 ・会 計 管 理 お よび 業務 管 理 が 有効 に行 わ れ て い るか否 か を検 証 し評 定 す る た め の監 査 で あ る。 外 部 監 査 が強 制 監 査 で あ るの に対 して,内 部 監 査 は任 意 監 査 の性 格 を もつ。 以 上 に よ り,企 業 の 監 査 とそ の態 様,区 分 を見 て来 たが,本 稿 で は銀 行 の 内部 監 査 の中 で,業 務 監 査 の実 態 や問 題 点 を,大 蔵 省 検 査 や 日銀 考 査 に よ る 外部 監 査 との関 連 を含 め て検 討 し,更 に あ るべ き姿 を模 索 してみ た い と考 え る。 130国 際 経 営 論 集No.319923内
部 監 査 に よ る業務 監 査 の 意 義
先 に示 し た 「業務 監 査 」の 定 義 で は,業 務 監 査 は企 業 の 会 計 以 外 の業 務 活 動 が対 象 とな っ て い る。 会 計 は会 計 監 査 の対 象 で あ るか ら,業 務 監 査 は取締 役(経 営者)お よ び そ の配 下 に あ る従 業 員 の業 務 執 行 の適 法 性 を確 か め る た め に行 な わ れ る もの で あ る。 業務 監 査 は,前 に述 べ た よ う に,資 本 金1億 円以 上 の会 社 の商 法 に も とつ く監 査 役監 査 と,任 意 監 査 で あ る内部 監 査 に二 大別 され る。 監 査 役 監 査 につ い て は,「 法 定 監 査 」で あ る こ とか ら,論 考 も割 合 多 いが,内 部 監 査 につ い て は資 料 的 制 約 もあ っ て,比 較 的議 論 され る こ とが 少 な か った よ うで あ る 。 内 部 監 査 は,当 初 会 計 監 査 を主 として来 た が,法 定監 査 との関 係 もあ って,漸 次 業 務 監 査 に重 点 が移 行 して お り,ま た経 営 管 理 の ため の 業務 監 査 の意 義 は 益 々 高 まっ て い るの で あ る。 その 点 で,日 本 内部 監 査 協 会 作 成 の 「標 準 的 内部 監 査 制 度 の 実践 要綱 」(昭 和57年)で,「 内部 監 査 」を次 の よ うに定 義 して い るの は,大 い に首 肯 で きる と こ ろで あ る。 「内部 監 査 は,企 業 の最 高経 営 者 に課 せ られ た経 営 責 任 の遂 行 を補 佐 す るた め に,そ の ス タ ッ フ と して,経 営 にお け る諸 活 動 お よ び管 理 が ,経 営 方 針 ・計 画 ・手 続 に準 拠 して効 果 的 に運 営 され て い るか ど うか を明 ら か にす る もの で あ る。 さ らに内部 監 査 は,企 業 の 経 営 組 織 全 体 の立 場 か らみ て,諸 活 動 お よび管 理 の た め の 方針 ・計 画 ・手続 が有 効 適 切 で あ る か ど うか を,執 行 活 動 か ら独 立 した立場 で,全 般 的 ・総 合 的 視野 か ら検 討 ・評 価 す る もの で あ る。」 こ こでa後 の 議 論 の展 開 の た め に,同 実 践 要 綱 が,内 部 監 査 人 が取 得 す べ き知 識 ・技 能 と して,次 の諸 点 を挙 げ て い るの で,ご 紹 介 して お く。 一.内 部 監 査 の基 準 ・手 続 な らび に技 法 銀行経営における内部監査の意義131二.会 計 な らび に財 務 に関 す る諸 事 項 にか か わ る法 規 三.経 営 管 理 の原 則(経 営活 動 にか か わ る計 画設 定 ・組 織 化 ・命令 ・調 整 ・ 統 制 な ど) 四.計 数 的 分 析 に よ る問題 点 把 握 五.経 済 ・商 法 ・税 務 ・コ ン ピ ュー タ化 され た情 報 シ ス テ ム な どの基 礎 的 事 項 六.当 該 会 社 お よび そ の他 の経 営 組 織 体 の 実情 と特 性 さて,内 部 監 査 の 中 で の業 務 監 査 の ウエ イ トは,次 の よ うな推 移 で 高 まっ て来 た もの で あ る。 当初 の会 計 監 査 は不 正 誤 謬 の発 見 ・摘 出 を主 に行 な っ て い たが,業 務 監 査 に お い て も,諸 業 務 の処 理 の 妥 当性,能 率性 な どを個 々 に 検 討,指 摘 す る もの で あ っ た。 業 務 執 行 活 動 に対 す る手 続 ・方 法 面 か らの監 査 か ら,更 に進 めて 業務 管 理 の た め の組 織 ・制 度 の妥 当性,有 効 性 を確 か め, 改善 を提 案 す る段 階 へ と,業 務 監 査 の 内容 は発 展 す る。 そ して,そ こで は内部 監 査 にお け る会 計 監 査 を業務 監査 の中 へ と統 合 し, 1{}} 内部 監 査 とはす なわ ち業務 監 査 とい う見 解 が 成 立 す る こ とに な る。 本 稿 で は, 内部 監 査 にお け る業 務 監 査 と会 計 監 査 の関 係 を どの よ うに理 解 す べ きか とい う議 論 は しば ら く措 い て,内 部 監 査 に よ る業務 監 査 の意 義 につ いて,以 下 そ の他 の意 見 も更 に確 認 して み る こ と と した い。 「内部 監 査 」 は,究 極 的 に は,① 業 務 管 理 の合 理 化 とレベ ル ・ア ップ,② ト_タ ル ・コス ト ・ダ ウ ン,③ 経 営 改 善 の 実現 な どに よ って,④ 「企 業 の 経 11) 営 効 率 を 向 上 さ せ る 」 とい う効 果 が あ る と い う一 つ の 見 方 が あ る。 一 方 で は,内 部 監 査 利 用 上 の 留 意 点 と し て, 一.内 部 監 査 部 門 は下 部 機構 の 全 面 に わ た り,業 務 の 末 端 ま で 細 か く追 跡 す る 性 格 上,と か く監 査 事 項,監 査 対 象 部 門,監 査 意 見 い ず れ も 断 片 的 と な りが ち な こ と と, 二.わ が 国 の 実 情 と し て 監 査 知 識 ・経 験 を駆 使 す る専 門 部 局 に は お よ そ程 遠 い 素 人 の 寄 せ 集 め に す ぎ な い こ と,が 少 な くな い 。 132[玉1際 糸筆'}箸,論集No.31992
し たが っ て,監 査 役 は内部 監 査 部 門 の指 摘 事 項 や助 言 ・勧 告 をそ の ま ま う 呑 み に して,業 務 手 続 や 業務 の合 理 性 に つ い て総 合 判 断 に走 る こ と は危 険 で あ る。 内部 監 査 の利 用 に当 た って は,必 ず そ の制 約 条 件 を十 分 考慮 しな けれ 12) ばな らな い とい う,批 判 的 な見 解 もあ る。 と もあ れ,内 部 監 査部 署 に よる監 査 は,取 締 役 の経 営 活 動 結 果 の合 目的性 と効 率性=経 済 性の検 討 に あ る の に対 して,監 査 役 監 査 の 目的 は,株 主 の立 場 か ら取 締 役 の職務 執 行 を監 査 す るの が ね らいで あ り,結 果 の是 非 もさ る こ とな が ら,経 営 の過 程=手 段 の違 法 性 の検 討 に あ る と言 え る。 この よ うに,目 的 は異 な っ て も,監 査 の対 象 とな る被 監 査 部 署 は同 一 組 織 体 で あ り,過 程 と結 果 は結 びつ い て い る。 したが っ て,被 監 査 部 署 の負 担 の 軽 減,監 査 の経 済 性,効 率 性 を図 る こ と も また必 要 で あ る。 この点 で,社 団 法人 日本 監 査 役 協 会 が制 定 した 「監 査 役 監 査 基 準 」 で は , 内 部 監 査 部 門 との連 係,監 査 部 との関 係 に つ い て,次 の通 り述 べ て い るの でs 13) 参 考 まで に掲 げ て お く。 (内部 監 査 部 門 との連 係) 第24条 ① 監 査 役 は,内 部 監 査 部 門 との 緊密 な連 係 を保 ち,か つ ,内 部 監 査 機 構 の監 査 を活 用 し,自 らの 監 査 成 果 を達 成 す る よ う努 め る。 ② 監 査 役 は,内 部 監 査 の調 査 の結 果 の報 告 を受 けyま た特 定 事 項 につ いて の調 査 を依 頼 す る こ とが で き る よ う取 締 役 に求 め る。 ③ 監 査 役 は,内 部 監 査機 構 が 完 備 され て い な い場 合 に は,内 部 統 制 制 度 の 信頼 性 お よび事 務 手 続 の整 備 状 況 等 を調 査 し,必 要 に応 じて助 言 また は勧 告 す る。 (監査 部 との 関係) 第29条 ① 監 査 役 は,監 査部 と緊 密 な連 係 を保 ち,か つ 監 査 部 の監 査 を活 用 し,自 らの監 査 成 果 を達 成 す る よ う努 め る もの とす る。 ② 監 査 役 は,毎 営 業 年 度 の初 め に監 査部 か ら監 査 計 画 の概 要 につ い て説 明 を受 け る と と もに監 査 役 の監 査 計 画 を説 明 して調 整 を は か る もの とす る。 銀 行 経 営 に お け る内 部 監 査 の 意 義133
③ 監 査 役 は監 査 部 の監 査 結 果 の報 告 を受 け, 査 を取 締 役 に求 め る こ とが で きる。 また必 要 な事 項 に つ い て,調
4銀
行 に対 す る会 計 士 監 査 の 概 要
昭 和51年9月 期 か ら商 法 特 例 法 お よび証 券 取 引 法 に基 づ き,わ が 国 の銀 行 は公 認 会 計 士 に よ る監 査 を受 け る こ と とな り,日 本 公 認 会 計 十 協 会 で は 「銀 行 監 査一 般 指 針 」 を昭和50年9月2日 公 表 した。 そ の構 成 な らび に 内容 は以 14) 下 の通 りで あ る(一 部 抜 粋)。 (1)趣 旨 ① 商 法 監 査 の 目的 他 の業種 に対 す る監 査 と同 じ く,株 主,会 社 債権 者,お よ び そ の他 の利 害 関 係 者 の保 護 に資 す るた め,財 務 諸 表 に つ い て の意 見 を表 明 す る こ とにあ り,こ の 点行 政 目的等 に基 づ く大 蔵 省 検 査 や 日本 銀 行 考 査 とは異 な る。 ② 監 査 基 準 現 行 の監 査基 準 に よるが,監 査 実施 準 則 は商 工 業 を対 象 と した例 示 的 な もので あ るか ら,そ の機 械 的 適 用 を避 け,銀 行 の監 査 項 目 の実体 に即 して これ を適 用 すべ きで あ る。 ③ 銀 行 の特 殊 性 に対 す る配 慮 指 針 は,銀 行 業 の特 殊 性 を,流 動 性の 高 い資 産 の 巨額 保 有,多 店舗 経 営,膨 大 な取 引 量,電 子 計 算 機 の高 度 利 用,法 令 ・規 則 ・主 務 官 庁 の監 督 等 に よ る規 制,内 部 統 制 の充 実 等 の諸 点 に お い て把 え,監 査 に 当 た っ て は これ らの特 殊1生を考 慮 して銀 行 の実 態 に即 した合 理 的 な監 査 を実施 す べ きで あ る。 (2)内 部 統 制 の重 要性 につ い て 銀 行 の 内部 統 制 組 織 の信頼 性 は一般 商 工 業 の場 合 に比 し よ り高 度 で あ る と考 え られ るが,監 査 人 はそ の信 頼 性 の程 度 を確 か め,そ の結 果 に基 づ い て効 率 的 監 査 を実 施 す べ きで あ る。 (3)内 部 検 査 等 の活 用 につ いて 134国 際経営論集No31992監 査 人 は内部 検 査 部 門 の主 体 性,検 査 基 準 ・規 定 等 の 整 備状 況,検 査 人 の数 な らび に訓 練 状 況,検 査 計 画 の適 否 お よび その実 施 状 況 等 内 部 検 査 の 信 頼 性 を調 査 した上 で,内 部 検 査 の結 果 を活 用 した り,あ る い は そ の協 力 を得 て効 率 的 な監 査 を実 施 す べ きで あ る。 な お,こ こで は大 蔵 省 検 査 ・日銀 考 査 に関 連 す る作 成 資 料 の うち利 用 可 能 な もの の活 用 も考 慮 す べ き こ と を付 加 して い る。 (4)支 店 の監 査 につ い て ① 銀 行 監 査 に お い て は次 の理 由 に よ り支店 往 査 が必 要 で あ る。 A営 業 が 多 数 の店 舗 に よ り行 わ れ,か つ 流 動 性 の高 い項 目 を巨額 に取 扱 って い る た め内 部 統 制 組 織 の有 効 性 を常 時確 か め る必 要 が あ る こ と B事 務 集 中化 の傾 向 は著 しい が,営 業 取 引 に関 す る監 査 証 拠 の多 くは 支 店 で しか入 手 で きな い こ と ② 銀 行 業 務 の同 質 性 に鑑 み 全 支店 を監 査 す る必 要 はな く,内 部 統 制 組 織 の信頼 性,支 店 の規 模 ・営 業 内容 に よる適 当 な組 合 せ を考 慮 して往 査 す べ き支店 を選 択 すべ き こ と。(以 下 略) 銀 行 の 内部 監 査 部 門 は,殆 ど全 て 「検 査 部 」 と称 して い る の で,以 下 銀 行 の場 合 の 「内部 監 査 」 を原 則 と して 「検 査 」 と称 す る こ と とす るが ,両 者 に 特 別 の 区分 を置 い て は い ない こ とを承 知 願 い た い。 〔付 〕 内 部検 査 部 門 に よ る検 査 の 信 頼 性 銀 行 は一 般 企 業 に比 べ,後 述 す る よ う に充 実 した内部 検 査 制 度 を有 して い る。 こ れ は,銀 行 の取 引 はす べ て現 金 に直 結 した もの で あ る た め,事 務 上 の正 確 性 の確 保 が 自 らの信 用 の基 礎 で あ る こ とを銀 行 自身 が十 分 認 識 して お り,内 部 検 査 の充 実 に 積 極 的 で あ っ た こ と,大 蔵省 検 査 ・日銀 考 査 等 を通 じて,銀 行 の 内部 検 査 の 向上 が 図 られ て き た こ と,等 に よ る もの と考 え られ る。 また,銀 行 業 務 は性 質 の 同 じ取 引 を大 量 に処 理 す る こ とが特 徴 で あ り,か つ支 店 の規 模 にか か わ りな く,全 支 店 が ほぼ 同 一類 型 の業 務 を行 な って い る(外 国 為 替 業 務 等,多 少 の例 外 は あ るが)た め,全 店 共通 の標 準 的 な事 務 手 続 を作成 す る こ とが 銀行 経 営 に お け る 内部 監査 の 意義135
容 易 で,内 部 検 査 も全 店 均 質 で 実施 で きる とい う事 情 も,銀 行 の内部 検 査 制 度 の発 15) 達 を助 けた大 きな 要 因 で あ った とい え よ う。 会 計 監 査 人 か ら見 た 内 部検 査部 門 に よ る検 査 の信 頼 性 の検 討 に つ き,「 銀 行 監 査 一 般 指 針 」 は次 の よ うに述 べ て い る。 会 計 監 査 人 が 内部 検 査 を活 用 す る にあ た って は,特 に次 の点 に留 意 して その 信頼 性 を確 か め る こ とが 必 要 で あ る, (1)内 部 検 査 部 門 の主 体 性 (2)内 部 検 査 の基 準,規 定 の整 備 の状 況 (3)内 部 検 査 人 の 数及 び そ の訓練 の状 況 (4)検 査 計 画 の適 否 及 び そ の実施 の状 況 (5)調 書 の作 成 及 び そ の保 管 の状 況 ⑥ 検 査 所 見形 成 の 過 程 及 び そ の結 論 信 頼 性の検 討 につ いて の前 記6項 目 は,い ず れ も当然 の もの で あ り,特 に説 明 を 要 しない で あ ろ う。
5外
国 に お け る銀 行監 査 の 実情
わが 国 の銀 行 は,前 述 の ご と く昭 和51年9月 期 か ら商 法 特 例 法 お よび証 券 取 引法 に基 づ き,公 認 会 計 士 に よ る監 査 を受 け る こ と とな った が,欧 米 各 国 の 銀行 はす で に,こ の よ うな会 計 監 査 人 に よ る外 部 監 査 を受 けて い るの が通 例 で あ る。 こ こで は制 度 的 な面 を中心 に,ア メ リカ,イ ギ リス,旧 西 ドイ ツ, 16) フ ラ ン ス,カ ナ ダ の5か 国 に お け る銀 行 監 査 の 実 情 に つ い て概 観 す る こ と と し た い 。 (1)ア メ リ カ 後 記 の よ う に,イ ギ リ ス,旧 西 ドイ ツ,フ ラ ン ス,カ ナ ダ で は,会 社 法 ま た は 銀 行 法 に 監 査 人 に よ る監 査 を 義 務 づ け る規 定 が あ る が,ア メ リカ で は銀 行 そ の も の に 対 し監 査 人 に よ る監 査 を義 務 づ け る法 制 は な い よ う で あ る。 136国 際 経'営 論 集No.31992〔参 考 〕 「ザ ・バ ン カ ー ズ ・ハ ン ドブ ッ ク」1978年 版 で は,「 銀 行 取 締 役 が,銀 行 の 監 査 を受 け るべ き とす る法 的 責 任 に つ い て,明 確 に定 義 され て い る もの はな い」 と し て,次 の よ う に説 明 して い る。「州 レベ ル で,銀 行 の外 部 監 査 を必 要 とせ しめ る法 的規 制 は統 一 され て い な い 。一 部 の 州 で は,外 部 検 査 を制 定 して いな い。(中 略) 国 レベ ル で は,銀 行 の外 部 監 査 につ い て,よ り明 確 な規 定 が あ る。1933年 証 券 法 1964年 修 正 条項 に従 っ て制 定 され た連 邦 準 備 制 度理 事 会 ・レギ ュ レー シ ョンQお よび 同 じ法 律 に よ る連 邦 預 金保 険 公 社 な らび に連 邦 通 貨 監 査 局 の規 則 で は ,こ れ 等 当 局 の監 督 下 に あ る銀 行 で,株 主 数500人 以 上 の場 合 は,発 生 主義 会計 に よ り毎 年報 告提 出 を義 務 づ けて い る。 この報 告 は,銀 行 の会 計 責 任 者 と監 査 人,ま た は 独 立 した公 認 会計 士 の 証 明 を必 要 とす る。(以 下 略)」 と説 明 して い る。(William H.Baughn&CharlsE .Walker,TheBankers'Handbook ,Dow-Joneslrwin, Homewood,111.,1978,p.349) 同 じ く,米 国 公 認 会 計 士 協 会 銀 行 会 計 監 査 委 員 会 のAUDITSOFBANKS(銀 行 の監 査)1984年 版 で も,前 述 の認 識 に加 え て,銀 行 持 株 会 社(bankholding companies)の 一 般 化 を挙 げ て い るが,こ れ は1971年6月 ,証 券取 引 委 員 会 が 全 て の銀 行 持 株 会 社 とそ の連 結 子 会 社 が その 財 務 諸 表 に独 立 し た監 査 人 の証 明 を要 求 す る こ と とな っ た結 果 で あ る。 (AmericanlnstituteofCertifiedPublicAccountants ,AUI)ITSQFBANKS, 1984,NotestoReaders ,iii,JohnH.Savage,BankAuditsandExaminations , Bosto11,1980,p-7) ア メ リカ の 法 定 監 査 は,わ が 国 の 証 取 監 査 に 相 当 す る もの で あ る が ,そ の 根 拠 法 で あ る1933年 証 券 法 が 銀 行 の 発 行 す る証 券 に つ い て は,証 券 取 引 委 員 会 へ の 届 出 義 務 を免 除 し て い た 。 た だ し,銀 行 持 株 会 社 は ,銀 行 で は な い か ら,そ の う ち 株 主 数500人 以 上(か つ 資 産100万 ドル 以 上)の も の の 財 務 諸 表 に つ い て は,従 来 か ら監 査 証 明 が 必 要 と さ れ て い た の で あ る 。 と こ ろ がs1971年6月 の 改 正 に よ り持 株 会 社 の 連 結 子 会 社 も監 査 証 明 を 要 求 され る こ と とな っ た。 一 方,ア メ リカ の 銀 行 の 多 くは,銀 行 持 株 会 社 の 子 会 社 の 形 と な っ て い る の で,法 的 規 制 に よ る会 計 士 監 査 が 始 ま っ た わ け で , 他 の4か 国 に比 し て は歴 史 が 浅 い の で あ る 。 銀Tr経 営 に お け る内 部 監 査 の 意 義137
一 般 にア メ リカで は,会 計 士 に よ る銀 行 監 査 は長 い歴 史 と経 験 を有 す る と い わ れ るが,こ れ は主 として任 意 監 査 の形 で行 なわ れ て きた もので あ る。 中 小 銀 行 で 内部 検 査 部 門 を有 しな い と こ ろが,州 法 で 要 求 され て い る取 締 役 に よ る監 査 に代 えて,会 計 士 に監 査 を委 嘱 す る ケー ス,あ るい は内部 検 査 部 門 の検 査 の ほか に外 部 監 査 を依 頼 して 内容 の充 実 を図 る ケー スが ・ 前 記 の部 分 的 強 制 監 査 導 入 まで の会 計 士 監 査 の中 心 で あ っ たわ けで あ る。 監 査 人 の選 任 は取 締 役 会 の決 定 に よ るが,被 選任 資 格 は公 認 会 計 士 また は会 計 事 務 所 で あ る。 次 に,銀 行 に対 す る監 査 当局 の検 査 は,他 の4か 国 に比 べ てか な り複 雑 で あ る。 国 法銀 行 … …連 邦 通 貨 監 督 局 の検 査 を受 け る。 州 法 銀行 ・連 銀 加 盟 銀 行 は連 邦 準 備 銀行 お よび州 銀 行 監 督 局 の検 査 を ・連 邦 預 金 保 険 公社 加 入 銀 行 は連 邦 預 金保 険 公 社 お よび州 銀 行 監 督 局 の 検 査 を ・そ の他 の銀 行 は州 銀 行 監 督 局 の検 査 を そ れ ぞ れ受 けて い る。 連 邦 通 貨 監 督 局 に よ る国 法 銀 行 の検 査 は銀 行 法 の遵 守 状 況,支 払 能 力 の判 定,貸 出 分類 等 が 基 本 で,漸 次 国 際 業 務 関係 の ウエ イ トが 大 き くな って きて い る よ うで あ る。 (2)イ ギ リ ス 会 社 法 の規 定 に よ り,会 社 は独 立 した監 査 人 の会 計 監 査 を受 け る こ とを義 務 づ け られ て い る。 した が って銀 行 も会 社 で あ る以 上,一 般 の会 社 と同様 に 外 部 監 査 を受 け る義 務 が あ る。 監 査人 は取締 役 会 の推 薦 に よ り,株 主総 会 で 選 任 され るが,被 選 任 資 格 は会 計 士 また は会 計 事 務 所 で あ る。 な お,大 蔵 省s中 央 銀 行 と も銀 行 に対 す る検 査 権 限 は あ るが,通 常 の場 合 138国 際 経 営 論 集No.31992
検 査 を実施 す る こ とはな い よ うで あ る。 (3)旧 西 ド イ ツ 信 用 組 織 法 に よ り}銀 行 は経 済監 査 人(Wirtschaftpriifer)に よ る監 査 報 告 書 を監 督 官 庁 に提 出 す る こ とを義 務 づ け られ て い る。 監 査 人 は監 査 役会 の発 議 に よ り,株 主総 会 で選 任 され るが,被 選 任 資 格 は経 済 監 査 人 また は経 済 監 査 人 事 務 所 で あ る。 外 部 監 査 制度 は1934年 以 来 実 施 され て い る。 監 督 官 庁 に提 出 す る監 査 報 告書(長 文 式 の詳 細 な もの)は ,銀 行 監 督 局 ・ 中 央 銀行 ・税 務 当局 の み に提 出 され,こ れ以 外 に は厳 秘 と され る。 一 般 の財 務 諸 表 用 に は,監 査 人 に よ り短 文 式 の監 査 報 告 書 が 用 意 され る。 な お,銀 行 監 督 局 は銀行 に対 し検 査 を行 う権 限 は あ るが,通 常 は実施 せ ず, 中央 銀 行 も預 金 準 備 率 の遵 守 状 況 等 の立 入検 査 な ど は実 施 す るが,全 体 的 な 会計 検 査 は実施 して い な い。 (4)フ ラ ン ス 会 社 法 の規 定 に よ り会 社 は監 査 人 を最 低1名 選 び,会 計 監 査 を受 け な けれ ばな らな い。 監 査 人 は取 締 役 会 の発 議 に よ り株 主総 会 で 選 任 す るが,被 選 任 資格 は会 計 士 試験 合 格 者 また は一 定 の実 務 経 験 者 で,裁 判 所 に登 録 済 の もの, また はそ の事 務 所 で あ る。 な お,銀 行 監 督 当局,中 央 銀 行 は銀行 に対 して検 査 権 はあ るが ,全 体 的 な 検 査 は通 常 実施 せ ず,特 定 の 問題(た とえ ば,与 信 増 加 率 規 制}外 国為 替 ポ ジ シ ョン等)に つ い て の検 査 が 通 例 で あ る。 ⑤ カ ナ ダ 銀 行 法 の規 定 に よ り,銀 行 は会 計 士 の監 査 を受 け な けれ ば な らな い。監 査 人 は取 締 役 会 の 発 議 に よ り,株 主総 会 で選 任 す る。 一 般 会 社 の監 査 人 は1名 で あ るが,銀 行 の場 合 は2名 が 必 要 で あ る。 被 選 任 資格 は会 計 士 で あ る。 銀行経営における内部監俺の意義139
な お,銀 行 に対 して大 蔵 省 は広 範 な検 査 権 限 を有 す るが,検 査 は通 常 あ ま り実施 され て い な い よ うで あ る。
6銀
行 自身 の 内 部 監 査 に対 す る評価
(1)内 部監 査 の機 能 銀 行 の監 査 は,銀 行 が 一 般 企 業 に比 べ,公 共 的性 格 が 強 く,経 済社 会 へ の 影 響 が 大 きい の で,株 主 ・預 金者 ・その他 の利 害 関 係 者 の利 益 を守 る た め, さ まざ まな立 場 ・目的 で行 なわ れ る。 行 政 目的 を有 す る大 蔵 省 検 査 や 日本 銀 行 考 査 あ る い は公 認会 計 士 の商 法 監 査 の よ うに監 査 主体 が銀 行 外 の第 三 者 で あ る外部 監 査 に対 し,内 部 監 査 は銀 行 が 自 らの業 務 執 行 状 況 を調 査 す るた め に行 な う もの で あ る。 内部 監 査 は監 査 役 が行 な う もの や業 務 執 行 機 関 で あ る経 営 者 が,そ の経 営 責 任 を果 た す た め,自 らの業 態 を調 査 す る もの な どが あ る。 内部 監 査 で は, 銀 行 の経 営 政 策 の各 部 店 へ の浸 透 度,運 営 上 の 問題,そ して経 営 状 況 の是 非 な どが調 査 され,そ の対 象 範 囲 は関 係 各 部 店 の業 態 は放 漫 で は な いか,記 帳 計 算 照 合 状 況 は ど うか,不 正 行 為 や規 定違 背 はな いか,本 部 の方 針 や 通 牒 は 徹 底 遵 守 され て い るか な ど行 内全 般 にわ た り行 な われ る。 ① 事 務 監 査 と業 務 監 査 内部 監 査 に は,ま ず 内 部 統 制 の運 用 状 況 を監 査 す るた め の帳 簿 類 や記 録 の正 確性 の検 討,不 正 や 誤 謬 の検 出 をす る事 務 監 査 と,経 営 方 針 ・施 策 の 業 務 運 営 へ の反 映 度 な どの経 営管 理 的観 点 か らす る業務 監 査 が あ る。 事 務 監 査 で は現 金 や手 形 ・証 書 な どの重 要 物 件 の整 理 ・保 管 状 況,伝 票 帳 簿 類 に よ る法 令 や 事務 手 続 の遵 守 状 況 が 調 査 され る。 そ して従 来 の 内部 監 査 で は事 務 指 導 や 不 正 の摘 発 を 目的 と して事 務 監 査 に重 点 が置 か れ て い たが,銀 行 内外 の経 営 環 境 が 厳 し くな って きて い る昨今,経 営 管 理 の一 環 と して の業 務 監 査 が い っ そ う重 視 され よ う。 140国 際経営論集Na31992②EDP監 査 銀 行 の業 務 処 理 で はr質 量 とも に高 度 に電 子 計 算 機 が 利 用 され,事 務 処 理 の迅 速 化,正 確 化 が はか られ て い るの み な らず,経 営 管 理 資 料 も効 率 的 に つ くられ て い る。 これ は事 務 監 査 の対 象 が 電 子 計 算 機 処 理 シス テム(E DPS)自 体 に まで及 ぶ こ と を示 して お り,公 認 会 計 士 に よ る商 法 監 査 で も 「電 子 計 算機 を使 用 した会 計 組 織 に対 す る内部 統 制 」 につ い て言 及 され て い るが,内 部 監 査 に必 要 な監 査証 跡 の確 保 や監 査 用 ソフ トウ ェ ア の用 意 な どのEDPS監 査 体 制 の確 立 ・整 備 が 必 要 で あ る。 ② 内 部監 査 の 態 様 内部 監 査 は監 査 役 に よ る もの,経 営 者 に よ る もの な どが あ るが,そ の態 様 は次 の とお りで あ る。 ① 監 査役 に よる監 査 昭和49年 の 商 法 改 正 で は監 査 役 の権 限 が強 め られ,監 査機 能 の強 化 が は か られ た。商 法 で は監 査 役 の職 務 を「取 締 役 の職 務 の 執行 を監 査 す 」(第274 条①)と し,「 何 時 で も取 締 役 お よ び支 配 人 そ の他 の使 用 人 に対 し,営 業 の 報 告 を求 め,ま た は会 社 の業 務 お よび財 産 の状 況 を調 査 す る こ と を得 」(第 274条 ②)と 定 め,取 締 役 の業 務 執 行 を常 時 監 督 す る重 要 な機 関 で あ る こ と を明 らか に して い る。 この ほ か,取 締 役 会 へ の 出 席,取 締 役 が 株 主 総 会 に提 出 す る議 案 ・書 類 の 調 査 と報 告 義務,会 計 監 査 に加 え業 務 監 査権 の付 与 な どが あ る。 これ ら 法律 上 の権 限 強 化 に加 え,今 後 実 態 面 の権 限 強化 が あ っ て は じめ て制 度 が 生 きて こ よ う。 ② 本 部 検 査 業 務 執 行 機 関 で あ る経 営 者 が 自 ら行 な う監 査 に検 査 部 等 の専 門 の 機 関 が 経 営 者 の命 を うけ て他 の部 店 を監 査 す る本部 検 査 が あ る。 これ は通 常,検 査 の対 象 部店 に検 査役 等 の担 当者 が 実地 に出 向 き行 な う臨 店 検 査 の形 を と 銀 行 経 営 に お け る内 部 監 査 の 意 義141
る。 臨 店 検 査 は経 営 管 理,事 務 処 理 等 業 務 全 般 にわ た るが,必 要 に応 じ特 定 部 門 な い し特 定 項 目 を対 象 とす る部 門検 査 も行 なわ れ る。 また帳 簿 の検 査 の ほか 現 金 等 の手 許 在 高 検 査 が,事 務 取 扱 の実 態 把 握 ・ 不 正 着服 や 粉飾 預 金 の発 見 を 目的 と して抜 打 ち臨 店 方式 で行 な わ れ る。 ③ 支 店 検 査 支 店 検 査 は店 内検 査 また は 自店 検 査 と もい う。 通 常,営 業 店 長 の責 任 に お い て,定 例 的 に あ らか じめ決 め られ た項 目に つ い て実 施 し,そ の結 果 を 検 査 部 等 へ 報 告 す る よ う義 務 づ け られ て い る。 これ は本 部 検 査 を補 完 し, 店 内 の相 互 牽 制 に よ り,規 定 違 反 や事 務 過 誤 の発 見 とそ の是 正 を期 す る も の で あ る。 (3)内 部 監 査 と内部 統 制 組 織 内部 統 制 とは銀 行 の業 務 手 続 の 中 に 自動 的 に組 込 まれ て い る チ ェ ック ア ン ドバ ラ ン ス(牽 制 と調 整)の 機 能 を い いs内 部 監 査 の主 要 な機 能 の一 つ は内 部 統 制 が適 切 か どうか を評 価 し,こ れ に勧 告 を行 な う こ とで あ る。 内部 統 制 組 織 に は検 証 印 制 度,精 査 照 合 制 度 の よ う に職 務 の分 割 と権 限 の委 譲 あ るい は相 互 牽 制 シス テ ム として事 務 処 理 シス テ ム に組 込 まれ て い る もの の ほか, 係 替 の実 施,連 続 休 暇 の取 得 推 進 な ど経 営 管 理制 度 の中 に組 込 まれ て い る も の もあ る。 内部 統制 組 織 の形 態 や 機 能 は,事 務 処 理 シス テ ム に組 込 まれ て い るが故 に, そ の機 械 化 や合 理 化 に伴 い変 化 す る。 た とえば,オ ン ライ ン化 に よ って,記 帳 事 務 が オ ン ライ ン端 末 機 の操 作 にか わ り,こ れ の精 査 照 合 も対 象 や 方 法 の 1ア 合 理 化 ・簡 略 化 が行 なわ れ る。 (4)外 部 監 査 との ち が い 外 部 監 査 は銀 行 外 の 者 が お の お の の 目 的 を も っ て 行 な う が,一 般 的 に は公 的 立 場 に あ る監 査 を指 す 。 142国 際経営論集No.31992
① 監 督 官 庁 等 に よ る監 査 銀 行 の 監督 官 庁 の大 蔵 省 が銀 行 法 第25条(立 入 検 査)に 基 づ き行 な う も の が大 蔵省 検 査 で あ る。 金 融 機 関 検 査 の 目的 とす る と こ ろ は,金 融 機 関 経 営 の健 全 性,信 用 信与 にお け る公 的機 能 の発 揮,公 正 な業 務 運 営 の3点 に ラ つ い て の検 討 等 で あ る。 この検 査 の結 果 は単 に銀 行 の 実 態 把握 に止 ま らず , 将 来 の金 融行 政 に反 映 され る こ とに な る。 一 方 ,金 融 政 策 推 進 上 の必 要 と取 引銀 行 の健 全 経 営 指 導 を主 目的 と して , 日本 銀 行 法 に基 づ き 日本 銀行 が 考 査 を行 な う。 これ は 日本 銀 行 と取 引銀 行 との契 約 に基 づ き行 な わ れ,そ の と きの情 勢 に応 じた 考課 方 針 に従 い,債 権 保 全 対 策,資 金 運 用,経 営 姿 勢 な どが 考 査 され る。 ② 公 認 会 計 士 に よ る監 査 公 認 会 計 士 に よ る監 査 は,昭 和49年 度 の商 法 改 正 に よ り銀 行 に対 して も 適 用 され る こ とに な り,昭 和51年 度 上期 か ら実 施 され て い る。 そ の 目的 は 財 務 諸表 に対 す る意 見 を表 明 す る こ とに あ るが,大 蔵 省 検 査 や 日本 銀 行 考 査 と異 な り,行 政 目的 は な いが,株 主 ・会 社 債 権 者 ・そ の他 の利 害 関 係 者 19) の保 護 に 資 す る こ と に は か わ りな い 。
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メ リカ に お け る 内 部 監 査
現 代 内 部 監 査 の 本 質 を 明 確 に し,内 部 監 査 の 発 展 に大 い に貢 献 の あ っ た も の と して,ア メ リカ 内 部 監 査 人 協 会(TheInstituteofInternalAuditors) に よ っ て 発 表 さ れ た 「内 部 監 査 人 の 責 任 に 関 す る意 見 書 」(TheStatementof ResponsibilitiesoftheInternalAuditor)が あ る。 この 意 見 書 は い わ ば ア メ リ カ の 内 部 監 査 基 準 とで もい うべ き も の で,最 初1947年 に 発 表 さ れ,そ の 後 1957年 お よ び1971年 そ し て1976年 に 改 訂 が 行 な わ れ た 。 意 見 書 の 主 な ポ イ ン 2()) トを以 下 に述 べ て み よ う。 内 部 監 査 の本 質 銀 行 経 営 にお け る内 部監 査 の 意 義143内部 監 査 とは経 営 管 理 者 へ の奉 仕 の た め に,諸 業 務 活 動 の検 閲 をな す た め の経 営 組 織 内 の独 立 的評 定 活 動 で あ る。 それ は そ の他 の諸 管 理 の有 効 性 を測 定 し評 価 す る こ とに よ って機 能 す る一 つ の経 営 管 理 で あ る。 内部 監 査 の 目的 と範 囲 内 部 監査 の 目的 は,す べ て の経 営 管 理 者 が,自 らの責 任 を有 効 に果 た し う る よ うにす る こ とで あ って,こ の た め に経 営 管 理 者 に対 して検 閲 し た諸 活 動 に関 す る分析,評 定,勧 告,関 連 意 見 を提 供 す る もの で あ る。 内部 監査 人 は,経 営 管 理 者 に対 す る奉 仕 とい う範 囲 内 で は,事 業 活 動 の いか な る面 に も関 与 す べ きで あ る。 この よ うにい う こ との意 味 は,検 閲 下 の諸 業 務 活 動 を完 全 に理 解 す るた め に,会 計 お よ び財務 記 録 そ の もの を超 えた監 査 を行 なわ な けれ ば な らな い とい う こ とで あ る。(以 下 略) 責 任 と権 限 経 営 組 織 に お け る内部 監 査 の責 任 は,経 営 方針 に基 づ いて 明確 に位 置 付 け られ るべ きで あ る。 責 任 に結 びつ い た権 限 を与 え る こ とに よっ て, 内部 監 査 人 は検 閲 下 の 問題 に関 連 した経 営 組 織 の諸 記 録,諸 財 産 お よび 従 業 員 の す べ て に,十 分 近 付 き う る よ う にす べ きな の で あ る。 内部 監 査 人 は,諸 方 針,諸 計 画,諸 手 続 お よび諸 記 録 を検 閲 し,評 定 す る点 で 自 由 で あ るべ きで あ る。(以 下 略) 独 立 性 独 立 性 は内部 監 査 の有 効性 に とって本 質 的 な もの で あ る。 独 立 性 は経 営 組 織 上 の地 位 と客 観 性 に よ って得 られ るの で あ る。(以 下 略) 前 記 の各 項 は,日 本 にお け る内部 監 査 につ い て の考 え方 と基 本 的 に異 な る もの で はな い。 問題 は,そ れ が どれ だ け現 実 に機 能 し,実 効 を挙 げ て い るか とい う点 に あ る。 た だ,ア メ リカ の 内部 監 査 基 準 の 中 で示 され た責 任 と権 限, 独 立性 の項 目の 内容 は,5年 余 の 内部 監 査 歴 を有 す る論 者 か らみ る と,誠 に 興 味 深 い もの が あ る。 先 に,「 銀 行 経 営 の 原 則 】 とし て収 益 性,安 全 性,公 共 性 の三 つ を挙 げ た 144国 際経営論集No.31992
が,こ れ らは,銀 行 の内 部 監 査 お よび外 部監 査 に よっ て改 善 され るべ き もの で あ る。 外 部 監 査 は銀 行 の外 部 か ら各 種 の規 制 監 督 機 関 に よっ て行 な わ れ , 内部 監 査 は銀 行 内部 の監 査 部 や検 査 部,考 査 部 に よ って本 来 的 に実 施 され る もの で あ る。 以 下,ア メ リカの 商 業 銀行(短 期 資 金 の取 扱 を主 業 とす る銀 行 を指 す)の 21) 外 部 ・内部 統 制 につ い て 考 察 しよ う。 な お,「 統 制 」(control)と は,「 監 査 」 (audit)を 含 め た よ り幅 の広 い概 念 で,具 体 的 に 「内 部 統 制 」 とい っ た場 合 に は,「 企 業 内部 にお け る会 計 お よび業 務 上 の統 制 機 能 。狭 義 で は,会 計 士 に よ る外 部 監 査 との 関連 にお け る 内部 牽 制 組 織 や 内部 監 査 の仕 組 を い う。 広 義 で は,経 営 管 理 上 の業 務 統 制 全般 を い う。 また,こ の統 制 機 構 を内 部 統 制 組 織 と い う。」 と定 義 さ れ る。 q)外 部 統 制(externalcontrol) 外 部 統 制 に か か わ る規 制 監 督 機 関 は 統 制 当 局(Comptroller'sOffice) ,連 邦 準 備 銀 行(FederalReserveBank),連 邦 預 金 保 険 会 社(FederalDeposit InsuranceCorporation)お よ び 州 法 銀 行 当 局(statebankingauthorities) な どで あ る。 こ れ らの 機 関 は銀 行 の 財 政 状 態 や 営 業 活 動 を 反 映 す る定 期 的 報 告 を 要 求 し て,統 制 を実 施 して い る 。 ま た 銀 行 の 検 査 を行 な う。 これ らの 報 告 や 検 査 の 目標 とす る と こ ろ は,銀 行 の 健 全 性 や 支 払 能 力,財 政 面 の 改 善 進 歩 を確 認 す る た め で あ り,銀 行 法 との 関 係,銀 行 経 営 者 の 能 力 や 一 貫 性,不 健 全 ・不 安 定 な 銀 行 活 動 の 有 無,経 営 方 針 は 守 られ て い る か 否 か な ど を 確 認 す る こ とで あ り,そ れ ら を 正 し く位 置 付 け る こ とで あ る 。 (z>内 部 統 制(internalcontrol) 銀 行 の 内部 統 制 は銀 行 の収 益性 分 析 の一 環 と して の効 率 性 と安 全 性 を維 持 す る た め に も非 常 に重 要 で あ る。 一般 に商 業 銀 行 の監 査 部 門 の 活 動 は四 つ の カ テ ゴ リー に 区分 され る。 す な わ ち 資産 負債 の 検 証 ,収 入 支 出項 目 の検 証, 銀 行 経 営 に お け る内 部 監査 の意 義145
社 内標 準 に従 っ て 内部 業 務 が遂 行 され て い るか の確 認 そ して効 率 の改 善, 安 全 性 の 向上 を もた らす 営 業手 続 の改 善勧 告 で あ る。 銀 行 内部 検 査 はバ ラ ンス シー ト監 査(balancesheetaud{t)な る制 約 され た検 証 を遂 行 す るの で はな くて,監 査 人 は各種 の資 産 負債 の 実在 と所 有 を決 定 す る意 味 で現 実 の監 査 も遂 行 す る ので あ る。 また,各 種 の検 証 方 法 が 監 査 人 に よ って使 用 され る ので あ り,全 般 監 査,ス ポ ッ ト監 査,継 続 監 査 が これ で あ る。 業務 改 善 勧 告 も監 査 人 の非 常 に重 要 な仕 事 の部 分 で あ る。 監 査 人 が 自己 の機 能 を十 分 に遂 行 し,銀 行 経 営 の重 要 な部 門 とな る た め に は,彼 は十 分 に必 要 な資 格 を与 え られ な けれ ば な らな い。 銀 行 監 査 人 は銀 行 業 務 の知 識 や銀 行 法,銀 行 規制,人 間 関 係 の理 解 の能 力,独 立 的 態 度,客 観 的態 度 を とる こ とので き る人 で な けれ ば な らな い 。 商 業 銀 行 の経 営 者 は監 査 機 能 を改 善 す べ きで あ る。 多 くの 銀行 の破 綻 は詐 欺 や 私 費 使 い込 み に よ って本 来 的 に発 生 して お り,相 対 的 に小 規 模 銀 行 に多 く,監 査 人 を もた ない場 合 で あ る。 監 査 機 能 が 表 面 的 に しか機 能 して い な い 場 合 にみ られ る。 これ らの事 件 は商 業 銀 行 の重 役 の反 映 で あ り,こ れ らの事 件 を発 生 させ な い法 的 道 義 的 責 任 を もつ役 員 の反 映 で あ る。 また 同 時 に監 督, 規制 当局 の反 映 で あ る。 z3) 〔付 〕 バ ン ク ・オ ブ ・ア メ リ カ(BankofAmerica)の 内 部 検 査 の 実 態 (1)検 査 組 織 次 の 五 つ の 部 門 に 分 か れ て い る 。 ① 国 内 部 門(DomesticDivision)・ ・… ・加 州 の み ② 国 際 部 門(InternationalDivision) ③ 北 米 部 門(NorthAmericanDivision) ④ コ ン ピ ュ ー タ 部 門(EDPDivision) ⑤ 本 部 監 査(Headquarters) ② 検 査 部 の 陣 容 検 査 部 は 副 頭 取 に 直 属 す る 。 人 員 総 数 は320名 。 内 訳 … … 総 括 管 理 関 係40名,事 務 部 門20名,検 査 員260名,う ち 海 外 駐 在 検 査 員 146国 際 経 営 論集T(`v31992
20名 。 支 店 数 … …加 州1,074,海 外110従 業 員 数6万6 ,877名 (3)検 査 の態 様 ① す べ て 抜 打 ち検 査 で あ る。 ② 全般 検 査 と一一部検 査(特 定 科 目の み)の 併 用。 ③ 検 査 方 法 は 目的 に よ り異 な るが,原 則 として どの科 目 も抽 出検 査 。 ④ 検 査 の周 期 … …原 則 と して 年1回 問 題 の あ る店 は6か 月 ぐらい に短縮 す る。 また最 長 で も15か 月程 度 。 ⑤ 検 査 臨店 の人 員 数 … …支 店 の ス ケー ル が大 小 さ まざ まで あ るた め,1∼2 名 か ら20∼25名 ぐらい を1チ ー ム として 出動 す る。 ⑥ コ ン ピュー タ部 門 の検 査 … … コ ン ピ ュー タ部 門 の検 査 は40名 程 度,検 査 の 実 施 だ けで はな く,検 査 の た め の シ ス テ ム開 発 も行 な って い る。 ⑦ 本 部 検 査 セ クシ ョ ン ご とに検 査 す る。 機 能 的 な検 査 を行 っ て い る。 ⑧ 検 査 の評 定 (a)評 定 方 式 … … 減 点 方 式 。 検 査 項 目 ご とにm定 の 持 点 が あ り,不 備 事 項 等 を1件 ご とに減 点 す る。 (b)評 定 基準 … …五 段 階 方 式 。V--95点 以 上,IV--94∼85点,III--84∼75点 , II-74∼65点,1-64点 以 下。 (c)成 績 が と くに 悪 い と きに は取 締 役会 に報 告 す る。 ⑨ 予 備 調 査… … 検 査 チ ー ム はi臨 店 に際 しあ らか じめ過 去 の検 査 資 料 に よ り その店 の事 務 水 準 の実 情 を熟 知 す る と と もに,検 査 部保 有 の諸 資 料 に よ り検 査 対 象店 の預 金 ・貸 金 の動 向,不 良 債 権 の 実 態,予 算,時 間 外 勤 務 の状 況, 行 員 の退 職 状 況,等 の 主 要 項 目 を調 査 検 討 す る。
⑩CPAと の関 係 … …CPAは 主 と して財 務 諸 表 の チ ェ ック を行 な っ て お りy そ の他 のエ リヤ はほ とん ど検 査 部 が カバ ー して い る。 しか し,CPAの 検 査 結 果 に つ い て は,検 査 部 は直 ちに報 告 を受 け,常 に注 意 を払 って い る。
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行 の 内 部検 査 制度 の概 要
わ が 国 の銀 行 は一 般 に本 部 の なか に検 査 部(ま た は考 査 部)が あ り,こ れ
が 内部 検 査 部 門 を一 元 的 に掌 握 して い るが,こ の 内部 検 査 制 度 の概 略 につ い 24) て述 べ る と次 の とお りで あ る。 ① 目的 (1)諸 勘 定 の正 確 性 の検 討 ② 事 務 処 理 が 手 続 どお り実 施 さ れ て い るか,ど うか の検 討 (3)不 正 事故 等 の発 見(従 業 員 に対 す る心 理 的牽 制 もか ね る) 以 上 が 一般 的 な 目的 で あ るが,最 近 で は事 務 能 率 等 の 業務 面 で の 目的 も か ね て実 施 され る。 ② 担 当部 本 部 の検 査 部 また は考 査部 ③ 人 員 検 査 部 の人 員 は,全 従 業 員 の0.5∼0.8%程 度 とみ られ る。 銀 行 の従 業 員 の2分 の1程 度 は女 子 で あ るが,検 査 部 は男 子 の構 成 割 合 が きわ めて 高 い。 また一 般 的 に実 務 経 験 の長 い男 子 が 多 い のが特 徴 で あ る。 ④ 支 店 の検 査 方 式 予 告 な しの抜 打 ち 方式 ⑤ 臨 店 頻 度 全 営 業 店 を大 体1年 に1回 の割 合 で 実施 ⑥ 検 査 日数 銀 行 の規 模 等 に よ り異 な るが,大 銀 行 の支 店 の場 合 で通 常 40∼70日(延 日数)程 度 とみ られ る。 ⑦ 検 査 対 象 現物 お よび勘 定 の残 高,事 務 管 理 な い し事 務 処 理 の状 況 店 舗 内 外 の管 理 状 況,店 内検 査 の 実施 状 況 等。 なお,0般 に内部 検 査 の規 定,手 続 が 定 め られ て お り,各 店 の検 査 は これ に従 って 実施 され る。 以 上 の事 務 検 査 の ほ か,事 務 能 率 等,業 務 面 で の検 査 を行 な う場 合 もあ る。 ⑧ 検 査 結 果 の報 告 検 査 結 果 は検 査 報 告 書 の形 で,担 当役 員 お よび監 査 役 に報 告 され る。 支 店 に対 して は,検 査 最 終 日 に検 査 結 果 の講 評 が 行 な わ れ る ほか,検 査 報 告 書 も送 付 され る。 ⑨ 事 後 管 理 検 査 時 に発 見 され た不 備 事 項 等 につ き,そ の補 完状 況 を支 店 か ら報 告 させ る ほか,検 査 成 績 が 不 良 な項 目 につ いて は,検 査部 か ら指 示 して店 内検 査 を実施 させ る。 148国 際 経 営 論 集No.31992
⑩ そ の他 上 記 の定 例検 査 の ほか に,現 物 を中 心 と した抜 打 ち検 査 を実 施 す る場 合 が あ る。 以 上 は検 査 部 が 実 施 す る検 査 で あ るが,こ れ を補 完 す る 目的 で 自店 内 で実 施 す る検 査(店 内検 査)が あ り,一 定 の項 目(現 金,手 形 残 高y担 保 品残 高 の 実施 等)に つ い て担 当係 以 外 の もの で,定 期 的 に実施 され て い る。 個 別 銀 行 の例 で制 度 お よび方 法 を さ らに具 体 的 に概観 して み よ う。 都 市 銀 行 で あ る住 友 銀 行 の 「本 部 検 査 」(同 行 で は 「本店 検 査 」 と称 して い る)の 事 25) 例 で あ る。 (1)本 部 検 査 の 目的 経 営 ・営業 活 動,事 務 処 理 状 況,財 産 の保 全 状 況 が,自 行 の方 針,計 画,手 続 お よび諸 規 定 に準 拠 し,正 確 か つ能 率 よ く遂 行 され て い るか を 点 検 す る。 (2)基 本 方 針 ① 事 故 防止 あ る い は事 故 防 止 体 制 の確 立 もち ろん,検 査 で 事 故 そ の もの を早 期 に発 見 す る こ とが で きれ ば最 も よいが,そ れ以 外 に,事 故 発 生 の温 床 を作 らな い よ う に,各 種 事 務 規 律, あ る い は職 場 規 律 とい った全 般 の規 律 遵 守 の徹 底 を 図 っ て,事 故 を発 生 せ しめ な い とい う こ とが,ま ず第 一 に必 要 で あ る。 ② 本 部 の 方 針,施 策 の徹 底 支 店 経 営 は,業 務,事 務,人 事 の三 つ のバ ラ ンス が とれ て,合 理 的 か っ 健 全 で な けれ ば な らな い が,支 店 の業務 発 展 の 内容 が正 しい 姿勢 の も とに行 なわ れ て い るか,で きる だ け実 態 的 に調 査 して,本 店 の 方針 ,施 策 の徹 底 を図 る。 (3)本 部 検 査 の 方 式 前 述 の基 本 方針 に基 づ き,本 部 検 査 を専 門 化 して,掘 り下 げ た検 査, 綿 密 な検 査 を実 施 す る こ と と し,事 務 検 査 で は担 当 の分 掌 につ いて精 通 したベ テ ラ ンの検 査 役 を揃 え,業 務 検 査,外 為検 査 に つ い て も,そ れ ぞ 銀行経営における内郎監査の意義149
れ これ に適 した検 査 役 や検 査 員 を配 置 して,検 査 の専 門化 を実施 して い る。 こ こで は,部 門別 専 門検 査 の 実施 項 目 の具体 例 を紹 介 し,そ の カバ ー 範 囲 を確 認 してお くこ とにす る。 ① 事 務 検 査 … … 内国 事 務 全 般 (a)事 務 管 理状 況 支 店 長 席,係 長,副 係 長 の管 理 ・統率 ぶ り (b)内 部 監 査 店 内検 査 実施 状 況,残 高 照 合 実 施 状 況,精 査 状 況,主 計 係 の機 能 状 況 (c)事 務 運 営 状 況 定 例 事 務 の運 営 状 況,時 間外 勤 務 の 実態 と管 理 体 制 (d)事 務 規 律 ・ 早 朝 検 査 ・ 現 金規 律 内部 現 金規 律,集 金 規 律,警 備 防 犯 状 況 ・ 貸 金 規 律 貸 金 審 査,稟 議 状 況,認 可 条 件 遵 守 状 況,担 保 保 全状 況,貸 金管 理 状 況,重 要書 類 の整 備 状 況 ・ そ の他 の事 務 規 律 検 証 印状 況,現 物 取 扱保 管 状 況,重 要 文 書 管 理 状 況,各 種 帳 簿 ・・書 類 取 扱状 況,用 度 品 の管 理 状 況,事 故 届 処 理 状 況,異 例 事 項 の取 扱 状 況,事 務 用 機 械 操 作 ・取 扱 状 況,業 務 用 印 章 ・鍵 の管 理 状 況,歩 積 両 建 預 金 自粛 徹 底 状 況,建 物 ・什 器 類 の保 守 管 理 状 況,そ の他 全 般 の事 務 処 理 状 況 (e)教 育 指 導,職 場 規 律 教 育 指 導状 況,執 務 態 度,職 場 規 律 ② 人 事検 査 … …人 事 管 理 全 般 お よび店 内情 勢 15()「 玉ll際糸釜二'計㌘ロ命 集No31992
支 店 長 の人 事 管 理 方針,次 長 以 下 管 理 者 層 の管 理 ・機 能状 況,店 内意 思 疎 通状 況,店 内 士気 ・意 欲 ・融和 状 況,職 場 環 境 ・職 場 教 育,人 事 構 成 ・ 人 員配 置 の適 否,そ の他 人 事 に関 す る事 項 26)
③
外為検 査……外国為替業務 お よび事務 全般
(a)外 為業務推 進体 制
外為取 扱高 の増加 や その他外為業績 向上 の ための支店長席 の企 画統
率,外 為係 の推進状 況,外 為関係 の内部受入体制,外 為取扱高一一 外
為取扱状況 の把握,外 為与 信運営状況,外 為収益 管理状 況
(b)外 為事務
事務 管理 な らびに運 営体制
支店長 の企 画 ・統率,外 為係長 の管理機能,内 部監 査の実施状 況,
事務運 営状 況
事務規律 と処 理状況
早朝検査,現 金規律,外 為与信規律,そ の他一般事務規律,当 局委
任事務 の処理
9内
部 監 査 の 経 営 上 の位 置付 け
q)経 営 首 脳 者 の 理 解 と支 持 内 部 監 査 の 前 提 と して,ト ッ プ ・マ ネ ジ メ ン トが 内 部 監 査 を よ く理 解 し, 利 用 し推 進 して ゆ く こ と は きわ め て 重 要 な こ とで あ っ て,い か に 内 部 監 査 担 当 者 が 熱 心 で あ っ て も,ト ッ プ ・マ ネ ジ メ ン トが これ に 対 し て 十 分 の 理 解 を も た な い 場 合 に は,内 部 監 査 の 結 果 が 十 分 有 効 で あ り得 な い こ とに な る。 要 す る に 内 部 監 査 は,ト ッ プ ・マ ネ ジ メ ン トか ら監 査 の 権 限 や 機 能 を与 え られ て 活 動 す る も の で あ り,し た が っ て これ を 利 用 す る立 場 に あ る トッ プ ・マ ネ 27) ジ メ ン トが,内 部 監 査 の成 功 的運 営 に関 係 す る とこ ろが大 きい。 銀 イ]経営 に お け る 内 都 監 査 の 意 義151② 内 部 監 査 部 門 が 置 か れ た立 場 内部 監 査 の担 当係 が 経 営 組 織 上 い か な る地 位 に あ るか は,そ の結 果 に よ っ て,監 査 の 目的 な り,そ の 目的 の 実現 が う ま く行 なわ れ るか否 か に影響 す る と こ ろが す こぶ る大 きい。 この 内部 監査 部 門 の 責任 者 は, ① す べ て の諸 記 録 お よび諸 活 動 に対 して の 自由 な監 査 を行 な う こ とを保 証 す るだ けの十 分 高 い地位 の幹 部 に帰 属 せ しめ られ ね ばな らな い し, ② それ に よ って また内 部 監 査 の報 告 書 提 出先 の経 営者,管 理 者 が監 査 報 告 書 に記 載 され た事 項 に基 づ い て適 切 な る措 置 を と りう る。 この こ と は一 般 に 内部 監 査 係 が保 持 す べ き独 立 性(independence)と いわ 28} れ る も の で あ る。 (3)米 国企 業 に於 け る捉 え方 の違 い 米 国 の企 業 経 営 トップ は,絶 大 の権 力 を もち,も し経 営 執 行 が 失 敗 した ら 直 ち に責 任 を取 って 罷免 され る反 面,権 限 の行 使 は他 の 介入 を許 さな い風 潮 が あ る。 その よ うな状 況 にお い て,取 締 役 を対 等 の立 場 で監 査 す る監 査 役 な どあ り得 な い の は当然 で あ ろ う。 事 実,米 国 に は監 査 役 とい う制 度 は ない 。 米 企 業 に多 い社 外 取締 役 は実 質 的 な監 査 役 で あ る とい わ れ るが,ほ とん ど が 年1回 の取 締 役 会 に出席 す る程 度 で常 設 の 監査機 関 で はな い。 最 近,米 企 業 の経 営 委 員 会 として 急速 に台 頭 して きた監 査 委 員 会(Theauditcommit-tee)も,社 外 取締 役 を主 体 と して構 成 され た取 締 役 会 の諮 問 機 関 に す ぎな いo した が って,米 企 業 の監 査 制 度 は公 認 会 計 士監 査 と従 業 員 を監 査 す る内部 監 査(internalaudit)の 二 本 建 で あ る 。 (4)取 締 役 の 不 正 の 行 為,法 令 ・定 款 違 反 事 実 の 監 査 これ は専 ら監 査 役 に よ る 業 務 監 査 で と りあ げ られ る も の で あ る が,監 査 役 の 監 査 報 告 書 記 載 事 項 商 法 第281条 ノ3第10項 に掲 げ られ て い る 「取 締 役 152国 際経営論集No.31992
の職務 遂行 に関 し不 正 の行 為 又 は法令 若 は定 款 に違 反 す る重 大 な る事 実 あ り た る と きは其 の事 実 」 に関 す る監 査 につ い てで あ る。 前 記 の項 目 を受 け て,法 務 省 令 に よ る「大 会 社 の監 査 報 告 書 に関 す る規 則 」 (昭 和57年4月)第7条 で は, ① 「取 締 役 の競 業 取 引 につ い て の取 締 役 会 の承 認 と報 告 」(商 法第264条 第 1項) ② 「取 締 役 ・会 社 間 の取 引,利 益 相 反 取 引 につ い て の承 認 と報 告 」(商 法 第 265条 第1項) ③ 「会 社 が無 償 で した財 産 上 の利 益 の供 与(反 対 給 付 が 著 し く少 な い財 産 上 の利 益 の供 与 を含 む。)」(財産 上 の利 益 の無 償 供 与 一一 一商 法 第294条 ノ2) ④ 「会 社 が した子 会 社 又 は株 主 との通 例 的 で な い取 引 」(非 通 例 的取 引) を定 め て い る。 この うち競 業 取 引 また は利 益 相 反取 引 に つ い て は,そ の有 無 を確 か め る と と もに,そ れ の取締 役 会 の承 認 お よび取 引 結 果 の報 告 が 行 な わ れ たか ど うか を検 証 す る。 また これ らの取 引 に よ る会社 の損 害 の有 無 と,程 度 も調 査 を要 す る。 次 に財 産 上 の利 益 の無 償 供 与 お よび非 通 例 的取 引 の監 査 に関 して は,ま ず それ に 関 す る内部 統 制 組 織 お よび そ の運 用 状 況 の調 査 が な され る ほか,こ れ らの取 引 の管 理 の適 否 や行 為 結 果 が 妥 当 な もの とい え るか ど うか な どが 監 査 3p} で と りあ げ られ る こ とにな る。 日本 内部 監 査 協 会 の 「商 法 改 正 及 び新 法務 省 令 の制 定 に伴 う重 点 項 目の調 査 方 法 」 で は,「 通 例 的 で な い取 引 の一 般 的 な事 例 」 と して ω 子 会 社 との 通例 的 で な い取 引 (ロ)株 主 との通 例 的 で な い取 引 大 株 主 との通 例 的 で な い取 引 特 殊 な株 主 との取 引 を挙 げ て い るが,こ れ は大 い に参 考 とす べ きで あ ろ う。 銀行経営における内部監査の意義153