376 50:(2)376∼380,2001.
JuvenileTillaux骨
折 の2例
熊本整形外科病院
菊
田
朋
朱 ・生
田
拓
也
川
蔦
眞
之 ・友
田
邦
彦
束
野
通
志
Two Cases
of Tillaux
Fracture
Tomomi
Kikuta,
Takuya
Ikuta,
Masayuki
Kawashima,
Kunihiko
Tomoda,
and Michishi
Tsukano
Kumamoto
Orthopaedic Hospital
The juvenile Tillaux fracture is a Salter-Harris
Type i intraarticular
fracture of the
ankle in adolescent children whose distal tibial epiphysis is partially closed.
This
frac-ture is caused by the avulsion of the lateral
portion
of tibial
epiphysis by inferior
tibiofibular
ligaments during the lateral rotation of the foot at the ankle.
We treated two cases.
Both cases were examined with CT scan, underwent open
re-duction and internal fixation with bioabsorbable
osteosynthetic
implants.
The range of
motion and functional results were excellent.
When displacement is more than 2 mm,
open reduction and internal fixation should be performed to reduce the articular surface.
Key words: juvenile Tillaux fracture (juvenile Tillaux骨 折), distaltibialepiphysis(脛
骨 遠 位 骨 端 線),Bioabsorbable osteosynthetic implants(生 体 内 吸 収 性 骨 接 合 材)
は じ め に Juvenile Tillaux骨 折 は脛 骨 遠 位 骨 端 前 外 側 部 の Salter-Harris皿 型 損 傷 で あ り,そ の 発 症 年 齢 が 限定 され るた め に比 較 的 稀 とさ れ て い る.今 回 わ れ わ れ は Juvenile Tillaux骨 折 を2例 経 験 した の で 若 干 の 文 献 的 考 察 を加 えて 報 告 す る. 症 例 症 例1:16才,男 性. 〈主 訴 〉 右 足 関 節 痛 〈現 病 歴 〉 ラ グ ビ ー 中 に右 足 関 節 を底 屈 位 に捻 っ て受 傷 した.受 傷 当 日,当 院初 診 とな っ た. 〈既 往 歴 〉 特 記 事 項 な し. 〈初 診 時 所 見 〉 右 足 関節 前 外 側 部 に腫 脹 お よび 圧 痛 を 認 め た. 〈画像 所 見 〉 単 純X線 像 で は,脛 骨 遠 位 骨 端 前 外 側 部 に 小 骨 片 を 認 め,骨 片 は 約5mm転 位 し て い た (図1).CTで も同 部 位 に小 骨 片 を認 め,骨 片 は 前 外 側 に転 位 して い た(図2). 〈経 過〉 受 傷9日 目,観 血 的 骨 接 合 術 を施 行 した.足 関節 の 前外 側 よ り進 入 し骨 折 部 に達 した.骨 片 に は 前 脛 腓 靱 帯 が付 着 して お り,前 外 側 方 に転 位 して い た. 骨 片 を整 復 し径4.5mm,長 さ40mmの ポ リ-L-乳 酸 製 ス ク リュ ー(以 下PLLA screw)1本 に て 固 定 し た. 術 後3週 よ り部 分 荷 重 を開 始 し,5週 で 全 荷重 と し, 4カ 月 で ス ポ ー ッ を開 始 した.術 後5カ 月 の 現 在,X 線 像 上 骨 癒 合 は 良好 で(図1)関 節 可 動 域 に 制 限 を認 めず ス ポ ー ツ復 帰 して い る.
-92-受傷時 術 後5カ 月 正面像 側面像 正面像 側面像 図1症 例1(単 純X線 像) 図2症 例1(CT像 〉 受 傷 時 術 後3カ 月 正 面 像 側 面 像 正 面 像 側 面像 図3症 例2(単 純X線 像)
図4症 例2(CT像) 症 例2:14才,男 性. 〈主 訴 〉 右 足 関節 痛 〈現 病 歴 〉 サ ッカ ー 中 に右 足 関節 を捻 っ て受 傷 した. 受 傷 肢 位 の詳 細 は不 明,受 傷 当 日,当 院初 診 となった, 〈既 往 歴 〉 特 記 事 項 な し. 〈初 診 時所 見 〉 右 足 関節 前 外側 部 に腫 脹 お よび 圧痛 を 認 め た. 〈画 像 所 見 〉 受傷 当 日の 単 純X線 像 で は,脛 骨 遠 位 骨 端 前 外 側 部 に骨 折 線 を 認 め る もの の転 位 は ほ とん ど な い よ う に判 断 した が,受 傷 後4日 目の 単 純X線 像 で約3mmの 骨 片 の転 位 を 認 め た(図3).CTで も 同部 位 に小 骨 片 を 認 め,骨 片 は前 外 側 に転 位 して い た (図4). 〈経 過 〉 受 傷9日 目,観 血 的骨 接 合 術 を施行 した.足 関節 の前 外 側 よ り進 入 し骨 折 部 に 達 した.骨 片 に は 前 脛 腓 靱 帯 が 付 着 して お り,前 外 側 方 に 転 位 して い た. 骨 片 を 整 復 し径4.0mm,長 さ36mm及 び,径4.5 mm,長 さ35mmのPLLA screw2本 に て 固 定 し た.術 後3週 よ り部 分荷 重 開 始,5週 で 全荷 重 と した. 術 後3カ 月 の 現 在 で はX線 像 上,骨 癒 合 は 良 好 で (図3)関 節 可動 域 に 制 限 は な くス ポ ー ツ 復 帰 し て い る. 考 察 脛 骨 遠 位 骨 端 線 前 外 側 部 のSalter-Harris皿 型 骨 端線 離 開 は,1823年Cooperが 初 め て 記 載 し た と さ れ て い る5191.しか し,1872年Tillauxが 前 脛 靱 帯 が 関与 した 同部 の裂 離 骨 折 に つ い て記 述 し,以 後 こ の骨 折 はTillaux骨 折 と呼 ば れ,骨 端 線 末 閉 鎖 の 時 期 に 生 じた もの はjuvenile Tillaux骨 折 と呼 ばれ てい る1). juvenile Tillaux骨 折 は発 症 年 齢 が 限 定 さ れ る た め 比較 的稀 と され て い るが,本 邦 で の報 告 例 は我 々が 渉 猟 し得 た範 囲 で は約50例 あ り,ま た 小 児 足 関 節 骨 端 線損 傷 に お け る 本骨 折 の 発生 頻 度 はLandinら は5.6 %,今 里 ら3:は8.8%と して お り,最 近 こ の 骨 折 の 認 識 と と もに そ の報 告 例 は増 え て きて い る. 本骨 折 の 発 生 は 脛 骨遠 位 骨 端 線 の 閉鎖 時期 お よ び そ の 閉鎖 過 程 と関連 性 が あ る.Kleigreら5),MacNealy らGlに よる と脛 骨 遠 位 骨 端 線 の 閉 鎖 は12.5才 ご ろ ま ず 中 央 よ り始 ま り,次 い で 内側,最 後 に外 側 が 閉鎖 し 完全 閉 鎖 まで に 要 す る期 間 は約18カ 月 と され て い る (図5).東 ら2)も同 様 の 報告 を して お り,骨 端 線 閉 鎖 開 始 か ら完 了 まで の 年齢 は,男 性 で11才9カ 月 ∼14 才8カ 月,女 性 で10才8カ 月 ∼13才9カ 月 で あ る と
-94-して い る。 受傷 機 転 は,一 般 に足 関 節 に外 旋 ス トレス が 加 わ る と前 脛 腓 靱 帯 が 緊 張 し骨 端 線 損 傷 が 発 生 す る と され て お り5〕,足関 節 の 底 屈 や 内 反 に よ り生 じた 例 も報 告 さ れ て い る が,前 脛 腓 靱 帯 に牽 引 力 が 加 わ って 生 じる と い う こ とで は 一 致 して い る,ま たKleigreら5)も 手 術 所 見 で確 認 して い る が,我 々の2症 例の 術 中所見 で も, 骨 折 した 骨 片 に 前 脛 腓 靱 帯 が 付 着 して お り,そ れ が 前 外 側 方 に 転位 して い た こ と を確 認 で きた(図6). 本骨 折 は 関 節 内 骨 折 で あ るた め 関 節 面 の 正確 な 整 復 は:重要 で あ る と考 え られ る.Spiegel8)が2mm以 上 の転 位 を 呈 し保 存 的 に 加 療 した 症 例 の16%の 関 節 面 の 不整 を 認 め た と し,以 後 治 療 方 針 と して は 転 位 が2 mm以 上 で あ る場 合,観 血 的 治 療 が 必 要 と さ れ て い る10).そ の た め に,診 断 に は 単 純X線 正 面,側 面 像 図5脛 骨 遠 位 骨 端 線 の 閉 鎖 過 程6「 に 斜 位 像 を 加 え た り,断 層 撮 影 を 行 う こ と が 有 効 で あ る が,さ ら にCTは 正 確 な 診 断 に 有 効 で 重 要 で あ る と 思 わ れ た. ま た,手 術 の 内 固 定 材 料 と し て 従 来 の 報 告 で は キ ル シ ュ ナ ー 鋼 線 や ス ク リ ュ ー が 用 い ら れ て い る も の が 多 い が,最 近 で はPLLA screwを 用 い た 報 告 も 散 見 さ れ る4)7).生 体 内 で は 徐 々 に 強 度 を 失 う た め そ の 適 応 は 3カ 月 以 内 に確 実 に 骨 癒 合 が 得 ら れ る 部 位 と さ れ て い る が,本 骨 折 の 受 傷 年 齢 を 考 慮 す る と3カ 月 以 内 の 骨 癒 合 が 期 待 で き る た め 適 応 に 問 題 は な く,ま た 抜 釘 を 要 し な い こ と な ど か ら も 本 骨 折 の 内 固 定 材 料 と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ た. ま と め ① 比 較 的 稀 なjuvenile Tillaux骨 折2例 を 経 験 し た. ② 診 断 に はCTが 有 用 で あ っ た, ③ 観 血 的 整 復 に よ り 良 好 な 結 果 を 得 る こ と が で きた. 参 考 文 献 1)長 谷 川和 宏 ら:Tillaux骨 折 の4例.新 潟 整 外 研 会誌, 6:19-22,1990. 2)東 永 廉 ら:脛 骨 遠 位骨 端 離 開 の5例.整 形 外科,41: 1699-1703,1990. 3)今 里 博 司 ら:Dias分 類 に お け る 小 児 足 関 節other physeal injuriesに つ い て.骨 折,11135-37,1991. 4)金 明博,大 坂 芳 明,小 山 茂和:PLLAス ク リ ュ ー に よるjuvenile Tillaix骨 折 の1治 療 例.整 形 外 科,48: 図6術 中所 見 骨折 した骨 片 に前 脛 腓 靱 帯 が付 着 して お り骨 片 は前 外 側方 に転 位 して い た
Juvenile Tillaux骨 折 の2例
1643-1645, 1997.
5) Kleiger, B. et al.: Fracture of the distal tibial epiphysis. J Bone Joint Surg, 46-A : 25-32, 1964. 6) Mac Nealy, G. A. et al.: Injuries of the distal tibial
epiphysis. AJR, 138 : 683-689, 1982.
7)大 石 久 史 ら:Tillaux骨 折 の3例.愛 媛 大 学,16:429-433,1997.
distal ends of the tibia and fibula. J Bone Joint Surg, 60-A : 1046-1050, 1978.
9) Stefanich, R. J. et al.: The juvenile fracture of Tillaux. Clin Orthop, 210 : 219-227, 1986.
10) Von Laer, L.: Classification, diagnosis, and treat-ment of transitional fractures of the distal part of the tibia. J Bone Joint Surg, 67-A : 687-698, 1985. 8) Spiegel, P. G. et al.: Epiphyseal fracture of the
