(昭和42年11月 造 船 会 秋 季 講 演 会 に お い て 講演)
波浪 中 の船体 運 動 に関 す る水 深 の影響
正 員 高
木
又
男*
正 員 雁
野
昌
明*
A Calculation of Finite Depth Effect on Ship Motions in Waves
by 1VIatao Takagi, Member Masaaki Ganno, Member
Summary
Many problems should be studied, when we compare measured ship motions with computed ones,
such as three dimensional
effect, advance speed effect, nonlinear effect and restricted water effect.
Finite depth effect is investigated
in this paper on the basis of Thin Ship Theory.
There is little effect on hydrodynamic
forces and on ship motions when w
ater depth-ship length
ratio h/L is greater than 1. but when h/L is less than 0. 5, they are affected by the finite depth,
and computed ship motions show a little decrease compared with those of infinite depth.
1. 緒 言
波 浪 中 の船 体 運 動 の 計 算 に は,ス トリップ 法1)を 用 い るの が 普通 で あ るが,計 算 値 と模 型 実 験値 とを比 較 す る 場 合,三 次 元 ・船 速 影 響,非 線 形 影 響,制 限 水 路 影 響 な どが 問題 とな る。三 次 元 ・船 速 影 響 に つ い て は,前 の論 文2で 検 討 して い るの で,今 回 は,水 深 の影 響 に つ い て数 値 計 算 を行 な うこ とに した。
計 算 に は,花 岡博 士 のThin Ship Theory3)を 用 い,前 の 論 文2)と 同 じ4種 類 の数 学 船 形 に つ い て,水 深 ・ 鉛 長 比h/Lが0.5,1.0,1.5の 場 合 の流 体 圧 力 を計 算 し,水 深 無 限 大 の場 合 の流 体 圧 力 との比 を求 め た。 この よ うに して 得 た流 体 圧 力 の比 を用 い て,TSS法(Thin Shipの 仮 定 の も とに ス トリップ 法 に対 応す る 運 動 方 程 式 を 導 き,各 係数 の計 算 に は,田 才 教 授 の方 法4)を 用 い る も のを,簡 単 のた め,こ の よ うに 呼 ぶ こ とに す る)の 運 動 方 程 式 の 各 係 数 を 修 正 し,水 深 有 限 の場 合 の運 動 を求 め てみ た。 な お,円 柱 の上 下 揺 れ の場 合 の よ うな,二 次 元 問題 で の水 深 影 響 に つ い ては,YuとUrsell 5)の 研 究 な どが あ る。 2. 速 度 ポ テ ン シ ァ ル か く乱 源 が 調 和 振 動 しな が ら,一 定 速 度 で 進 む 場 合 の 速 度 ポテ ン シ ァ ルを 求 め,そ れ を ミッチ ェル型 に 変換 す るに は,花 岡 博 士3)の 計 算 順 序 を た どれ ば よい わ け で あ る が,水 深 が 有 限 の た め,多 少 異 な つ て い る点 も あ る の で,以 下 簡 単 に 記す こ とにす る0 2・1 水 深 有 限 の場 合 の 速 度 ポ テ ン シ ァル 図1に 示 す 座 標 系 に お い て,強 さ"の 吹 出 しの か く乱 源 が振 動 率 υ で調 和 振 動 しなが ろ,水 深hの 水 面 下2'の と こ ろを,x軸 の 負 の 方 向 に 一 定 速 度Vで 進 む とす る。 速 度 ポ テ ン シ ァル の主 要 部 を 原 稿受 付 昭 和42年7月1日 * 日立造 船 株 式 会 社 技 術 研 究 所 図 1
(1)
と 仮 定 し,自 由 表 面 条 件 よ りA(k,θ),B(k,θ)を 決 定 す る と,(1)式 は(2)
と な る。(3)
こ の2組 の 根 を 用 い れ ば α1',σ',61',ba'酎 の 付 近 で は(4)
α1'-2'は-π/2≦ θ≦π/2なる任 意 の θに対 して 擁 す る が,b1',b2'は あ る│θ│以 下 で 時 在 しな い の で,そ の 下 限 を θ1と す る。 これ ら を用 い て,無 限 遠 方 に お け る Ψ を求 め,(2)式 か ら船 の無 限 前 方 に おけ る漸 近 関 数 を差 引 き,無 限 遠 方 の流 れ の条 件 を満 足す る速 度 ポ テ ン シ ァル を 求 め る と,次 の よ うに な る。(5)
た だ し,2・2 ミ ッ チ ェ ル 型 へ の 変 換 φ1の1/R1な ど に
(6)
な ど を 適 用 し,kcos α=m,m tan α=n と お い て ゐ,α の 積 分 をm,%の 積 分 に 変 え る と(7)
φ2でkcosθ=m, msecθ=m'と お き,「 に 関 す る 積 分 の 下 限mを,0<r<mで 被 積 分 関 数 が 純 虚 数 で あ る こ と を 考 慮 し て0と お く と(8)
図2の 積 分 路 に 沿 つ て 積 分 を 行 な う。(9)
右 辺 第 順 醐 す る も のをφ 1/2Residue燗 す る も のを φ22と す る と(10)
φ22はcos(n)=0を 満 足 す るnを η,と す る と,(11)
σ=の 近 傍 で はcos(nh)=一h sin(mrh)・(m-N)で あ る か ら(12)
φ3を 変 形 し て,kcosθ にm,msecθ=rと お く と(13)
図 2図3の 積 分路 に沿 う積 分 を 行 な う
(14)
は0. 1Residue(1)に 関 す る φ3、 は 2(15)
(16)
を用 い る と(17)
1Residue(2)に 関 す る φ3、 は ,図4の ご と く2(18)
(19)
1Residue(3)に 関 す る φ33=一 φ22. 2 さ ら に(20)
図 3 図 4 np,nq(21)
以上 を寄せ集 める と
(22) と な る 。3. 流
体
圧
力
花 岡博 士2に よれ ば,速 度 ポ テ ンシ ァル の複 素 特 異 点分 布 は(23)
で あ る。こ こ に ・ 波*長 λ一2π7γ'・ 出 合 い の 矧 率 υ√g/L{√2π/λ/Ltanh(2π・h/L/λ/L)+Fa 2π/λ/L+F,ま た ぬ,θ,勧 は,そ れ ぞ れ,上 下 揺 れ,縦 揺 れ お よび波 浪 の振 幅 で あ り,fは 船 の 半 幅 で あ る。 結 局,速 度 ポ テ ン シ ァル φ は,上 下 揺 れ に 基 づ くも の φδ,縦 揺 れ に 基 づ くもの φθ,波 浪 に 基 づ くもの φω の 和 とな つ て い る.φ とF∂φ/∂t+V∂φ/∂xの関 係 に あ る加 速 度 ポ テ ンシ ァルを 用 い る と,上 下 髪蕉,こ 基 つ く流 体 力F,縦 揺 れ に基 づ く ものF,上 下 揺れ と縦 揺 れ との相 互 作 用Fδ,Fθ,波 浪 に 基 づ く力1r〔$,モ ー メ ン ト Eθ は,花 岡博 士2に よつ て与 え られ て い る よ うに(:24)
で あ る。(24)式 に ψδ,ψθ,ψω を入 れ て 計 算 した 結果 を 以 下 に示 す。 3・1船 体 運 動 に 基 づ く流 体 圧 力(25)
た だ し, Fは,Fの 乃 を θ に し,cδ △ 等 の脚 符 δ を θ に 書 き変 え れ ば よい 。(26)
Fθ は,Fδ のhを θ と し,c腿 等 の 脚 符 θ と δ,δ と θ を 交 換 す れ ば よ い 。3・2波 浪 の運 動 に基 づ く流 体圧 力
(27)
た だ し, Eθ は,Eδ の 符 号 を変 え,Cδ4等 の脚 符 δ を θ とす れ ば よい 。 4. 水 深 影 響 水深 無限 大 の場 合 の流 体 圧 力 の 計算 式 は,花 岡 博 士3)に よつ て 与 え られ て い るか ら,水 深 有 限 の 場 合 の 流 体 圧 力 を(25),(27)式 で 計 算 して,水 深 無 限 大 の場 合 との 比 を 求 め た。 計算 は,次 の4種 類 の 数 学 船 形 に つ い て,フ ル ー ド数1㌦=0と0.2に 対 して 行 なつ た。(28)
水 深 有 限 の 場 合 と水 深 無 限 大 の場 合 との 流 体圧 力 の比 は,こ の4種 類 の船 形 に つ い て は ほ とん ど差 が な か つ た の で,図 面 は(28)式 の第1番 目の 船 形 に つ い て 示す こ とにす る。 4・1 運 動 方 程 式 の 係数 に対 す る水 深 影 響 船 の運 動 方 程 式 を 次 の よ うに 書 く。(21)
ここに,脚 符2は 船 形 が 前 後 非 対 称 で あ る た め に生 ず る もの を 除 い た 流 体 圧 力 の 項 を 示 し,脚 符1は そ れ 以 外 の実 慣 性 九 静圧 九 非 対 称 に よつ て生 ず る流 体 圧 力 な ど の項 で あ る。 WTS法(渡 辺 名 誉 教 授 の式1>の 各 係 数 を 田 才 教 授 の 方 法4)で 求 め るス ト リッ プ 法 を ,簡 単 のため この よ う に呼 ぶ こ とにす る)の 場 合 の(21)式 の各 係 数 を無 次 元 化 した も のは 前 の論 文2)の とお りで あ るが,TSS法 の 場 合 はWTS法 の 係数 の1部 が 次 の よ うに 変 わ る**。 記 号 は前 の論 文2と 同 じで あ る。 **前 の 論 文2で は ,書 き違 え の た め,波 浪 に 基 づ く流 体 圧 力 の 項 にFπ に 関 係 の あ る 項 が 入 つ て い た,た だ し 計 算 は 今 回 の(30)式 と 同 じ も の で 行 な つ て い る 。(30)
TSS法 の 係 数 に 対 して 計 算 し た 水 深 影 響 を 図5∼ 図12に 示 す,図 の縦 軸 に は,水 深 有 限 の 場合 の値 を 水 深 無 限 大 の 場 合 の 値 で 割 つ た 比 を と り,横 軸 に は,水 深hを 船 長Lで 割 つ た もの を とつ て い る。 計 算 は,λ1L をo.5か ら3.oま で12と お りに 変 え て行 なつ た が,図 に は,λ/L=o。5,11,2.0の 場 合 だけ を 示 す 。
これ らの 図 か ら,水 深 ・船 長 比h/Lが1以 上 あ れ ば 水 深影 響 は ほ とん どな い と言 え る。h/Lが1以 下に な る と急 に影 響 が 出 て くる よ うで あ る。
h/Lが0.5付 近 の場 合,各 係 数 の 水 深 影 響 を み る と,μ,A2,Fc2はEn=oの 場 合,λ/Lが1近 くで1よ
図5 α2,水 深 の 影 響 図6 A2,水 深 の 影 響 図7 t,水 深 の 影 響
り大 き くな る が,λ/Lが1.5の 近 く で 再 び1 と な り,λ/Lが さ らに 大 き く な る と1よ り小 さ くな つ て い る 。 En=0.2の σ が,λ1L=20で も1よ り大 き く て,Fn=0,λ/L=1.1の 場 合 に 似 て い る が,こ れ はFn=0.2,λ/L=2.0の と き の 出 合 振 動 数 が,Fn%=0,λ7L=1.1の と き と ほ ぼ 等 し い た め で あ る。 波 浪 の 運 動 に 基 づ く 流 体 圧 力 の 項 は,Fn=0 で も.Fn=0.2で も,λ/Lが 同 じ で あ れ ば 同 じ よ うな 傾 向 を 示 し て い る が,F=0.2の 場 合 の ほ うが,影 響 は や や 少 な くな つ て い る 。 図12な ど で λ/L=11に 対 応 す る 線 が な い の は,λ/L=0.5の 線 と一致 して い るた め で あ る0 4・2 船 体 運 動 に 対 す る 水 深 影 響 Series60,CB=0.7船 形 に つ い て,TSS法 の係 数 を44で 求 め た 係 数 を使 つ て 修 正 し,船 体 運 動 を計 算 した もの を 図13に 示 す 。 h/Lが ∞,15,1.0の 場 合 は,ほ とん ど差 が なか つ た の で1本 の線 で 示 してい る。hLが0.5に な る と波 長 の 長 い と こ ろ でや や 影 響 が あ らわ れ,計 算 値 が 少 し低 くな つ て い る。 5. 結 言 波 浪 中 の船 体 運 動 を ス トリップ 法 を用 い て計 算 し,模 型 実 験 値 と比 較 す る場 合 の 種 々の問 題 点 の うち,水 深 の影 響 に つ い て数 値 計 算 を行 な つ て検 討 した 結果,水 深 と船 長 の 比 が1以 上 で あれ ば,ほ とん ど影 響 の ない こ と が わ か つ た。
参
考
文
献
1) 渡 辺 恵 弘:"船 の 上 下 動 お よ び 縦 揺 れ の 理 論 に 就 て",九 大 工 学 集 報,第31巻 第1号(1958)p.26 福 田 淳 一:"規 則 波 中 の 船 の 縦 曲 げ モ ー メ ン ト(続)",造 船 協 会 論 文 集,第111号(662)p.204 2) 高 木 又 男,雁 野 昌 明:"波 浪 中 の 船 体 運 動 の 計 算 に 用 い られ る ス ト リ ッ プ 法 の 精 度 に つ い て"造 船 協 会 論 文 集,第121号(1967)p.48 3) 花 岡 達 郎:非 定 常 造 波 抵 抗 理 論 に 関 す る 一 連 の 論 文,造 船 協 会 論 文 集,第89号 ∼ 第100号 4) 田 才 福 造:"船 の 上 下 動 揺 並 び に 縦 動 揺 に お け る 減 衰 力 お よ び 附 加 質 量 に つ い て",造 船 協 会 論 文 集,第 105号(1959)P.475)
Yu. Y. S, Uresell.
F : "Surface waves generated by an oscillating
circular cylinder
on water of
finite depth : theory and experiment",
Journal of Fluid Mechanics,
11 (1961) p. 529
図11 Mc2,水 深 の 影 響 図12 Mc2,水 深 の 影 響