巻頭言 Foreword 3 2021.5 スタンフォード大学の優れた点はリーダーシップ、科学を信じ創出する力。今、必要な科学技術をしなや かに確実に社会実証できるスピード力だ。2020 年、世界中が COVID-19 禍に翻弄された。2021 年 1 月 30 日、世界の感染者は 1 億 300 万人、死者は 223 万人を超えた。米国は COVID 感染者 2,610 万人、死 者44万人の世界最悪COVID-19受難国だ。中でもカリフォルニア(CA)州は感染者、死者、50州中最多だ。 だが、スタンフォード大学は最悪の CA 州の中央に位置しながら医療崩壊も社会混乱も起きていない。
2020 年 3 月 16 日、スタンフォードのリーダー達は大学封鎖した。オンラインで Shelter in Place (SIP) を一斉通達した。それは CA 州知事の通達の3日前であり、ニューヨーク州知事の6日前だ。それ以降ス タンフォードは今日まで SIP 継続中だ。教育はオンライン。研究もオンライン主体のハイブリッド。臨床 も 90%がリモートだ。1月末での COVID-19 の入院患者は延べ 1,446 人、死者 76 人だが入院の中央値 は4日、平均値は6日と非常に短い。 スタンフォードは昨年6月の段階で SIP が本年9月まで継続すると予測し大学運営計画を再編し我々に共 有した。各学部で教育プログラムが再編され、研究は COVID-19 関連が通常研究に追加された。臨床研究 も外部から産官学共同研究が追加された。Facebook、Google、Apple の支援やインフラを活用しフィー ルド調査、製薬企業とワクチン臨床試験、NIH、FDA、CDC と連携を強化した。UCSF、Johns Hopkins、 Harvard などと毎週の Webinar が日常となった。特筆すべきは情報更新の頻度と透明性だ。大学、学部、 病院のリーダーから毎日定時に更新される。速さだけに重きを置かず精度も非常に高い。科学のみに拘泥せ ず世論も傾聴する。そのバランス感覚と透明性、信頼感がスタンフォードの真髄と再認識した。 CES 2021 もオンライン開催だった。ラスベガスで毎年開催される世界最大の情報震源地だ。SIP 関連以 外ではデジタルヘルス、デジタル機器、オンライン不動産事業など Electronic Commerce(EC)関連が 話題だった。中心は欧米企業と中国企業だ。EC の実績は米中が牽引して来たが、2020 年は特に中国が驚 異的に飛躍した。スタートアップも企業もパンデミックに柔軟にデジタルトランスホーム(DX)し、人も 考え方もトランスフォーム(HX)した。Zoom、Slack はもとより Spotify に刮目した。しかし、日本の プレゼンスは例年以上に希薄化し EC も伸びていなかった。 米中に比し日本が今停滞する原因は少子高齢化が根底にある。DX の主体である GenZ やミレニアル世 代の少なさと DX 無縁の高齢者世代の多さだ。米中は DX に迅速に対応したが、わが母国はリーダーシッ プ、教育、研究、臨床、社会実証に至るまで精度に重きを置き過ぎる余りスピード力を軽視している。コロ ナ・パンデミックは終息に向かい漸減するが影響は 2022 年以降も継続する。まだまだウィズコロナだ。コ ロナで多くが変化・変革した世界で日本の V 字復活の鍵は日本の科学・技術を再編成し少子高齢化研究と アマルガムを作り出すリーダーシップとスピード力だ。