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The relationship between the continuous movement of the dancer and the respiratory phase: focusing on the differences due to the experience of the female college student dancer

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Academic year: 2021

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(1)139. 研究資料. ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について −女子大学生ダンサーの経験歴による違いに着目して− 屋代 澪 1) 寺山由美 2) 大山卞圭悟 2) The relationship between the continuous movement of the dancer and the respiratory phase: focusing on the differences due to the experience of the female college student dancer Rei Yashiro 1),Yumi Terayama 2) and Keigo Ohyama-Byun 2). Abstract In this research, we focused on continuous rapid movement and clarified the actual condition of dancers breathing. In addition, we examined differences in breathing due to differences in experience years, targeting female college student dancers with various dance experience history. As a result, the respiration of a dancer with a history of more than 15 years of experience was 80% the same breath, the difference in respiration became different as the years of experience decreased. In addition, the possibility that the dance genre experienced in the past and the experience of other sports was influenced was considered as the characteristic of respiration. Key words: Dance,Breath,Continuous movement,Expiration,Inspiration ダンス,呼吸,連続した動き,呼気,吸気. Ϩ.緒 言. は,呼吸と動作の関連を明らかにすることで,筋力発 揮の効果,トレーニングの有効性,熟練者の技術解明. 呼吸は,内臓の動きを伴う身体運動の中で唯一,無. などあらゆる効果について検討している.筋力発揮に. 意識的にも意識的にもコントロール可能であるという. ついては,走・跳・投・射・泳・表現などの運動を対. 特徴から,近年,スポーツ・トレーニング分野にて注. 象とした報告がなされ,正確さやスピードを要求する. 目を集めている.安静時呼吸は,横隔膜と外肋間筋を. 運動では呼気相と,強さを必要とする運動では吸気相. 用いて概ね行われるが,努力呼吸時には,前斜角筋,. と対応が重要であると指摘された(浅見・黒川,1976,. 中斜角筋,後斜角筋,腹直筋,内腹斜筋,腹横筋な. p.159-167) .. ど,体幹を支える筋肉を多く動員するため,呼吸ト. また,トレーニングとしての有効性を明らかにする. レーニングを行うことで筋力向上や動作改善を期待で. 論文では,呼吸トレーニングを行うことの有効性の基. きることも注目の要因と考えられる.実践現場におけ. 礎的知見として,Harms ら(1997)は,持久性運動に. る呼吸トレーニングについて,日本のトップアスリー. おいて呼吸筋を鍛えることが,活動筋の疲労を遅延さ. トやメジャーリーガーのトレーナー経験のある森本. せる手立てであることを明らかにした.. (2016)は「スーパーアスリートと呼ばれる人たちは. その他,熟練者と未熟練者の技術の違いを呼吸の実. 全員,呼吸が上手,つまり横隔膜を機能的に使えてい. 態把握を通して明らかにすることを試みた研究では,. るのです」 (森本,2016,p.55)と述べ,呼吸エクササ. フェンシングにおける突き動作(冨田ら,1992) ,柔道. イズやトレーニングを行ってきたアスリートの身体の. の 技 掛 け ( 出 口 ら,2001) ,テニスにおけるスト. 状態や使い方を例に呼吸の重要性を示している.. ロークの一部(宮崎ら,1987)など,熟練者は「吸息」. 書籍のみならず,スポーツ分野における呼吸の研究 1)筑波大学大学院 3 年制博士課程コーチング学専攻   Doctoral Program in Coaching Science, University of Tsukuba 2)筑波大学体育系   Faculty of Health and Sports Sciences,University of Tsukuba. または「吸息後」から運動開始というパターンが多い.

(2) 140. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. と報告されている.渋谷(2012)が, 「日常的な動作で. であったダンサーの呼吸の実態を明らかにし,今後の. は,呼吸筋は自律神経の支配下にあり無意識的に働く. ダンスにおける呼吸の研究や指導において,基礎的知. 為,呼吸はあまり意識されていない.一方,非日常的. 見となることを目指す.. な身体動作を洗練させてきたスポーツやダンスにおい ては,呼吸は,『呼吸法』などのかたちであえて意識. ϩ.研究方法. 的に訓練させることがある」 (渋谷,2012)と述べるよ うにダンスにおける呼吸もスポーツと同様に,重要な. 1.実験機器. トレーニングのなりうることを示唆しているが,ダン. 本研究では,動きの制限を受けずに連続した動きを. スにおける呼吸の実態はスポーツとは異なる.ダンス. 行っている最中の呼吸を計測するためサーミスタ呼吸. 解剖学の著者である ucqui(2010)が “Breathing is part. ピックアップ TR-511(日本光電社製)及びマルチテレ. of dance and movement.”(Jacqui, 2010)と述べている. メータシステム WEB5000(日本光電社製)を使用し. ように,身体を媒体とし,多様な動きを紡ぎながら持. た.被験者の鼻孔に装着し,呼吸曲線を検出するサー. 久性,瞬発性の両者に対応する能力が求められるダン. ミスタ方式の呼吸ピックアップである.また送信機は. スにおいても,呼吸は重要な部分であるとされてきた.. 対象者の腰にベルトを用い固定した.機器の装着に際. しかしながら,ダンスにおいて共通する呼吸法の確. しては,縦 1 cm・横 3 cm 程度のテーピングを用い,. 立には至っておらず,呼吸指導が行われていたとして. 鼻孔近く,頬,首,鎖骨のあたりに動いても取れない. も,民間で開設されている稽古場内の指導という閉鎖. よう固定した.固定のためにテーピングを使用するこ. 的な環境であり,指導の根拠はあくまでも指導者の個. とに関しては,対象者それぞれに説明,許可をとり,. 人的な経験値に基づいたものに留まっている.このよ. 肌の状態によって,なるべく負担のかからないよう,. うな状況を踏まえ,ダンスにおける呼吸と動きの関係. 粘着力の異なる 2 種類のテーピングを用意した.. を明らかにする研究が行われてきたが,数少なく,計 測機器の限界からシンプルな短い試技が設定されてき. 2.実験試技. た.石黒ら(1968)による「動きと呼吸の関係性を明. 1)呼吸の基本試技. らかにするための呼吸」ではモダンダンスを対象とし て簡単なステップを試技として設定し,伊藤ら(1999). 呼吸曲線判定の際に参考にするため,呼吸の基本試 技として以下の 4 種類を設定した.. は,伸張と脱力,前後・左右波動,オフバランスター ン,ジャンプ系 3 種というシンプルな動きで構成され た短いフレーズを設定している.あらゆる動きの連続 性によって成り立っているというダンスの特性を考え ると,シンプルな短い試技を行っている際の呼吸では なく,多様な連続した動きを行っている際の呼吸計測 を明らかにすることが課題であるといえる. そこで本研究は,ダンサーが連続した動きを行う際 の呼吸の実態を明らかにすることを目的とし,呼吸の. 図1 サーミスタ呼吸ピックアップ TR-511G. 実態把握を試みる.なお,呼吸相の判定は先行研究 (渋谷ら,2012)の方法を参考に抽出した.渋谷らも指 摘しているが,スポーツなどにおける身体運動時の呼 吸を計測した研究では,抽出した呼吸曲線の呼吸相 ピークの定義が明確に与えられていないため,本研究 における呼吸の実態とは,呼気と吸気のタイミングを 指す.つまり,連続した動きを行っている際のダン サーがどのタイミングで息を吸い,息を吐いているか を明らかにする.以上をまとめると本研究では,ダン サーが「連続した動き」を行っている間の呼気・吸気 のタイミングを明らかにすることで,これまで暗黙知. 図2 抗計サーミスタの様子.

(3) ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について. 表1 試技名・動きの要素. ␒ྕヨᢏྡ. ືࡁࡢせ⣲. ձ. ୧⬮ࢆᗋ࡟᥋ࡋࡓࡲࡲ. ࢩ࢙ࢿ. ᅇ㌿ࡋ࡞ࡀࡽ⛣ືࡍࡿ. ղ. ྑ⬮ࢆ㍈࡟ᕥ⬮ࢆయࡢഃ᪉࠿ࡽ. ࣟࣥࢹࢪࣕࣥࣉ. ๓᪉࡬ᘼࢆᥥࡃࡼ࠺࡟ᣲࡆ㝆ࢁࡍ. ճ. ᕥ⬮㍈࡛㌟యࢆ┿ࡗࡍࡄ࡟ಖࡗࡓ. ࣆ࢚ࣝࢵࢺ. ࡲࡲᅇ㌿ࢆࡍࡿ㸦 ᅇ㌿㸧. մ. ᅇ㌿ᚋࠊ⭸ࢆ᭤ࡆ. ࢪࣕࣥࣉ. յ. ᆶ┤ࢪࣕࣥࣉ. ࢪࣕࣥࣉ᭱㧗Ⅼ. ն. ࢪࣕࣥࣉ╔ᆅ࣭㋃ษ. ࢪࣕࣥࣉ ╔ᆅ࣭㋃ษ. շ. ༙ᅇ㌿ࢪࣕࣥࣉ. ༙ᅇ㌿ࢪࣕࣥࣉ. ո. ᗋ࡟⭜ࢆୗࢁࡋ࡞ࡀࡽ. ࢩࢵࢺ࣮ࣟࣝ. ᅇࡗ࡚⛣ືࡍࡿ. չ. ❧ࡕୖࡀࡾ. ❧ࡕୖࡀࡾ. պ. ᕥ⬮ࢆ㍈࡟ࡋ࡚. ࣟࣥࢹࢪࣕࣥࣉ. ྑ⬮ࢆ๓᪉࡛యࡢᕥഃ࠿ࡽ. ࢔࣮ࣥࣞࣝ. ᘼࢆᥥࡃࡼ࠺࡟ᣲࡆࠊᅇࡍ. 141.

(4) 142. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. ①安静時呼吸から息を吸って止める. 3.実験対象者 本実験対象者は A 大学舞踊研究室,ダンス部に所属. ②安静時呼吸から息を吐いて止める ③速い呼吸から息を吸って止める. する女子学生 10 名とした.本研究では対象ダンス部. ④速い呼吸から息を吐いて止める. からランダムに 10 名の対象者を選出したため,ダン. 2)ダンスの試技内容. ス経験歴にばらつきがある.そのため分析を行う際. 本研究における試技は,連続した動きであることを. は,ダンス経験歴の長さを基準に,15 年以上をⅠ群,. 独自性としたため,ダンスにおけるテクニック(シェ. 5 年以上 15 年未満をⅡ群,5 年未満をⅢ群として 3 つ. ネ,ロンデジャンプ,ピルエット,ジャンプ等)を含. の群に分類した.対象者個人のダンス,スポーツ経験. んだ 10 種の動きの連続を上下左右の移動が行われる. 歴については,表 2 に示す.. よう,筆者が創作した.また,使用したサーミスタ は,継続可能測定時間が 10 秒と限られているため,. 4.実験手順. BPM179 の速度の速い音楽を使用し,音楽に合わせて. 実験 1 週間前にダンスの試技の振り移しを行い,そ. 踊ることで,10 種の動きが 10 秒間で行えるように設. の後の 1 週間は対象者それぞれに練習を行った.当日. 定した.また,試技全体の長さは 25 秒間とし,対象. は 15 分のウォーミングアップを行った後,サーミス. 者自身がどのタイミングで呼吸が計測されているかが. タ呼吸ピックアップを鼻孔に取り付けて測定に移っ. わからないよう実施した.. た.まず,立位で呼吸の基本試技を計測し,ダンスの. 表2 対象者のダンス歴および他競技歴. ᑐ ㇟⪅ ࡢࢲ ࣥࢫṔ ࠾ࡼ ࡧ௚ ➇ᢏṔ ⩌. ᑐ㇟⪅ $. Ϩ⩌㸸ᖺ௨ୖ. % &. '. ࢲࣥࢫṔ. ௚➇ᢏṔ. ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ࢸࢽࢫࠉᖺ. ࢳ࢔ࢲࣥࢫࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ࢪࣕࢬࢲࣥࢫࠉᖺ. 㝣ୖࠉᖺ. ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ ( ϩ⩌㸸ᖺ௨ୖᖺᮍ‶ ). ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ య᧯ࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ࣄࢵࣉ࣍ࢵࣉࠉᖺ. ๢㐨ࠉᖺ. ࢪࣕࢬࢲࣥࢫࠉᖺ. ᪂య᧯ࠉᖺ. ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ * +. Ϫ⩌㸸ᖺᮍ‶. ,. ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. 㣕ࡧ㎸ࡳ➇ᢏࠉᖺ. ࢡࣛࢩࢵࢡࣂ࢚ࣞࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ᪂య᧯ࠉᖺ. ჾᲔయ᧯ࠉᖺ 㝣ୖࠉᖺ. -. ࣔࢲࣥࢲࣥࢫࠉᖺ. ỈὋࠉᖺ. ࢫࢺ࣮ࣜࢺࢲࣥࢫࠉᖺ. ᘪ㐨ࠉᖺ.

(5) 143. ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について. 試技は音楽を用いて 2 回練習し,2 回の測定を行った.. 分の選定は,舞踊専門家(K 大学准教授)と筆者(舞 踊歴 19 年)の 2 名により対象者ごとに映像を見比べ, より優れた実施である方を選択し,判定者双方の意見. 5.分析方法 (1)呼吸相の判定. が一致したものとした.. 呼吸相の判定は,先行研究(渋谷ら,2012)の方法 6.呼吸曲線と動きの同期. を参考に抽出した.呼吸曲線は上昇している部分を吸 気相,下降している部分を呼気相とし,各呼吸相の切. 本研究は,ビデオ撮影時,呼吸曲線との同期ランプ. り替えは,各呼吸相のピークとした.各呼吸相のピー. を画角内に写し込むと同時にランプの点灯に対応した. クは 1 呼吸周期内で呼吸曲線の上昇が最大値を取る点. 電気信号を呼吸曲線と同時に記録器(スコープコーダ. を,「呼気ピーク」 ,下降が最小値を取る点を「呼気. 750DL,横河電機株式会社製)に収録することによ. ピーク」とした.なお,渋谷らも指摘したように,ス. り,動きと呼吸の同期を実現した.同期ランプを基準. ポーツなどにおける身体運動時の呼吸を計測した研究. に 10 秒間のダンスの試技呼吸曲線内容について対象. では,呼吸相ピークの定義が明確に与えられていない. 者ごとの映像との対応関係を検討した.. ため,試技中の呼吸相判定のための判断材料として各 ピークを使用し,動きとのタイミングを見る際のみ,. 7.呼吸曲線と呼吸表. 各ピークの切り替わりにも着目した.呼吸曲線による. 抽出された呼吸曲線と動きの同期にあたり,ビデオ. 呼吸相の判定は,息をこらえている,止めているなど. 映像をもとに対象者ごとに 1 試技にかかった秒数を計. の細かな読み取りも含め,専門家と共に判定を行った.. り,呼吸曲線に線を記入している.試技中に音に遅れ. (2)分析対象動画の選定. る,音を速くとるなどの違いがある場合でも試技ごと. 本実験では実験手順に示した通り,同じ試技を 2 回. の呼吸を正確に捉えるためにこの方法をとった.さら. 計測した.2 回分のデータのうち分析対象となる 1 回. に,呼吸曲線とは別に,どの試技の時にどちらの呼吸. 50. ࿧. ྾. ࿧. ࿧྾ ྾Ẽࣆ࣮ࢡ. 0. ࿧྾. -50. ࿧Ẽࣆ࣮ࢡ 図3 呼吸相の判定. 図4 呼吸表記入例.

(6) 144. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. 相であったかを示した表を作成した.表では 10 試技. 呼吸相を変化させている.個人的な特徴としては,身. をさらに 20 項目に細かく分けて示している.10 試技. 体を引き上げて行うジャンプや軸足の踵が上がった状. は,回転や脚挙げ,ジャンプなど動きの名称として区. 態で行う脚挙げの動きを行う際に呼吸曲線のふり幅が. 切ることができる規模であるが,その 1 試技の中でも. 大きくなるという特徴があった.. 回転であれば,踏込,1 回点目,2 回点目というよう. 対象者 B は,呼吸位相のタイミングと動きの移行の. に,脚挙げであれば,踏込,脚挙げ,などさらに動き. タイミングが一致していた.他の対象者に比べると上. を細分化することができるため,20 項目となった.細. 下に描かれる呼吸曲線のうねりが細かいため,浅い呼. 分化することで試技内の呼吸をより明確に捉えること. 吸を繰り返していることが特徴であった.. を試みた.この表は,息を吸っていれば吸気に‫ݲ‬マー. 対象者 C は,A・B と同様に呼吸位相のタイミング. クを記載し,息を吐いていれば呼気に‫ݲ‬マークを記. と動きの移行のタイミングが一致していた.後半に呼. 載,息を止めている,こらえている様子であれば止息. 吸曲線の上下の数が増え,線自体のぶれも多く見られ. に‫ݲ‬マークを記載している.また 2 つ以上の試技に継. たことから,後半呼吸が乱れた可能性が考えられた.. 続している場合は,矢印で示した.以下この表を「呼. 対象者 D は,呼吸曲線の上下幅が全体を通して狭い ことが特徴で,鼻呼吸の温度差を捉えている本実験に. 吸表」と置く.. おいては感知が弱く,口呼吸の割合が他の対象者より も大きい,または呼吸自体が浅いことが予想された.. 8.分析観点 観点 1:対象者それぞれのダンスの試技における呼. 対象者 E は,D と同様に呼吸曲線の上下幅が狭いこ とから口呼吸,または呼吸が浅い可能性がある.呼吸. 吸位相を呼吸曲線から明らかにする. 観点 2:経験年数による呼吸位相の特徴と傾向を明. の特徴は呼吸相の移行のタイミングが動きのタイミン グに合っていない場合が多いことであった.. らかにする.. 対象者 F は,1 つの動きの中での呼吸数が多く,息 を止めているとみられる回数も対象者内で一番多い.. Ϫ.結 果. 身体を引き上げる動きの際に息を吸う対象者が多い中. 本研究の結果の抽出は,サーミスタによる呼吸曲線 と,呼吸曲線をもとに筆者が作成した呼吸表の 2 点を. で息を吐くことが多いという特徴があった. 対象者 G は,呼吸曲線の上下幅が大きく,呼吸が深 いことが予想できる.呼吸を細かくコントロールする. 用いて行った.. ところは安定しているが,呼吸相の移行と動きのタイ ミングは合っていなかった.. 1.観点1の結果 対象者 A は,呼吸位相のタイミングと動きの移行の. 対象者 H は,終盤で呼吸曲線が乱れるまでの間,. タイミングが一致していた.つまり,動きの移行時に. 呼吸相の移行と動きのタイミングが合ったまま安定し. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図5 対象者 A 呼吸曲線.

(7) 145. ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図6 対象者 B 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図7 対象者 C 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図8 対象者 D 呼吸曲線.

(8) 146. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図9 対象者 E 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図 10 対象者 F 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図 11 対象者 G 呼吸曲線.

(9) 147. ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図 12 対象者 H 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図 13 対象者 I 呼吸曲線. ‫؝‬؅ ‫״‬ಓ. 図 14 対象者 J 呼吸曲線.

(10) 148. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. ているが,不自然なほど呼吸曲線の上下幅の変化が見. エ経験により指導されてきたことが実際に呼吸にも影. られなかった.. 響を与えていたことが考えられる.. 対象者 I は,呼吸曲線の上下幅が大きく安定してい. また,対象者 D は,呼吸相の移行のタイミングが動. るが,呼気のあと止めるような様子や,動きと動きの. きのタイミングとずれており,不自然に安定している. 間に素早く息を吸って吐くような細かな呼吸のコント. という特徴が見られたがダンス経験年数と同じくらい. ロールも見受けられた.. 長い競泳経験があり,動きに合わせた呼吸というより. 対象者 J は,全体を通して呼吸相の移行と動きのタ イミングが合っているが,呼気を示す呼吸曲線の幅が 大きいことが特徴として挙げられ,後半につれ呼吸曲 線が乱れる様子が伺えた.. も呼吸の安定性に意識が向いている,または,口呼吸 の割合が多い可能性などが考えられた. 観点 2 の結果で得られた対象者 A・B・C(ダンス経 験歴 15 年以上)の呼吸は,呼吸相の移行が動きの移行 のタイミングと一致し,さらに試技全体を通しての呼 吸の一致率も 80%であった.具体的には,ダンスの. 2.観点2の結果 本研究の実験対象者のダンス経験歴はさまざまであ. 試技の①シェネ③ピルエットの回転系の動きでは,必. るが,ダンス経験歴の長さが呼吸の仕方に及ぼす影響. ず踏込時に息を吐き,回転中は息を吸い続ける点や,. を検討するため,表 2 に示したように対象者を分類. ②脚挙げ⑩ロンデジャンプアンレールの脚を挙げる動. し,分析を行った.. きにおいても,踏込時に息を吐き,脚を挙げると同時. 呼吸曲線をもとに作成した呼吸表(表 3 参照)を対. に息を吸うといった共通点が見られた.この結果か. 象者間で比較してみると,ダンス経験歴の長さと動き. ら,ある一定以上のダンス経験歴を有するダンサーに. に対する呼気,吸気の選択の一致率が比例しているこ. は動きに対して選択する呼吸相に共通点がある可能性. とが明らかとなった.結果として,Ⅰ群のみの呼吸表. が考えられた.. を比較すると,試技全体の 80%を占める 16 試技で呼 気または吸気の選択が一致していた.さらにⅡ群の 4. Ϭ.結 論. 名は,試技全体の 20%にあたる 4 試技が一致,Ⅲ群 の 3 名は,試技全体の 5 %にあたる 1 試技で一致して いた.. 1 .経験してきたダンスのジャンルに関わらず,一定 以 上 の ダ ン ス 経 験 歴(15 年 以 上 ) を 有 す る ダ ン. また,特徴としてⅠ群の対象者の呼吸は呼吸相の移 行のタイミングが動きの切り替えのタイミングと一致. サーほど,動きに対する呼気・吸気・息止の選択が 一致する可能性が高い.. していることも挙げられる.以上のことから,観点 2. 2 .呼吸の深さや,鼻呼吸,口呼吸などの癖について. における結果は,ダンス経験歴が長いほど動きに対す. はダンス経験歴だけでなく,他競技経験が影響を及. る呼気・吸気の選択が一致する確率が高く,経験年数. ぼしている可能性が考えられる.. が短くなるにつれ,呼気・吸気の選択にばらつきが生 まれることが明らかとなった.. ϫ.考 察. ϭ.コーチング実践への示唆 本研究を通して,これまで存在しなかったダンサー の連続した動きを行っている際の呼吸位相の様子を呼. 観点 1 においては,連続した動きに現れるダンサー. 吸曲線として得ることができた.さらに,経験してき. の呼吸を明らかにし,対象者それぞれの呼吸の結果か. たダンスジャンルに関わらず,経験歴の長いダンサー. ら経験してきたダンスジャンルによる呼吸への影響. の呼吸と動きのタイミングが合っていること,呼吸相. と,他競技経験による呼吸への影響の 2 点が考えられ. が 80%一致した結果は,今後のダンスにおける呼吸指. た.対象者 B の呼吸曲線は,上下幅が狭く,対象者の. 導の基礎的知見になり得ると考えられる.これまで暗. 中でもっとも読み取るのが困難であった.そこで対象. 黙知のままにされてきたダンサーの呼吸の実態を明ら. 者 B の経歴を見てみると,大学入学までクラシックバ. かにしていくことは,呼吸指導を行う際の科学的根拠. レエを行っており,疲れた様子,呼吸が見えないよう. となり,ダンス指導方法において呼吸のコントロール. な踊りをするよう指導されていたことが後のインタ. からアプローチするという新たな切り口を提案できる. ビューにより明らかとなった.長年のクラシックバレ. 可能性がある..

(11) 表3 全対象者呼吸表. ダンサーの連続した動きと呼吸位相の関連性について. 149.

(12) 150. コーチング学研究 第 34 巻第 2 号,139∼150.令和 3 年 3 月. 引用・参考文献 浅見高明・黒川隆志(1976)動作と呼吸の関連について.身体 運動の科学, 159−167. 出口達也・黒川隆士(2001)柔道の「掛かり練習」における熟 練者と未熟練者の関係について:動作と呼吸に着目して. 広島大学院教育学研究科紀要第二部,文化教育開発関連領 域,50:313−318. Dempsey JA (2012) New Respectives concerning feedback influences on cardiorespiratory control during rhythmic exercise and on exercise performance. J Physiol 590 : 4129−4144. Dempsey JA, Sheel AW, St Croix CM, Morgan BJ (2002) Respiratory influences on sympathetic vasomotor outflow in humans. Respir Physiol Neurobiol 130 : 3−20. Harms CA, Babcock MA, Steven R, McClaran SR, Pegelow DF, Nickele GA, Nelson WB, Dempsey JA (1997) Respiratory muscle work compromises leg blood flow during maximul exercise. J Appl Physiol 82 : 1573−1583. 石黒節子・松本千代栄・石黒国雄(1968)動きのリズムに関す る研究(4):運動のリズムと呼吸のリズム.体育学研究, 12(5):16. 伊藤恵子・佐藤みどり・成澤三雄(1999)舞踊における呼吸の 仕方に関する研究.日本体育学会大会号,(50) :562. Jacqui Haas (2010) Dance Anatomy.Human Kinetics Publishers, 33.. 小林ゆい・森下はるみ(2000)狂言における基本的動作と呼吸 パターンの関係:大蔵流山本家を事例として.体育學研 究,45(1) :77−88. 肥田満裕・御手洗玄洋(1991)アーチェリー実射中の呼吸活 動.日本体育学会大会号,(42) :369. 宮崎義憲・宇佐美かおる・井上直子(1987)硬式テニスの各種 ストロークと呼吸相について.東京学芸大学紀要,第 5 部 門,芸術・体育,39,231−238. 水野忠文・猪飼道夫・丹羽 昇・浅見高明(1965)呼吸・筋電 図からみた弓道技術の研究.体育学研究,10(1),204. 森本貴義(2016)勝者の呼吸法―横隔膜の使い方をスーパー・ アスリートと赤ちゃんに学ぼう!.ワニブックス:東京. 渋 谷 友 紀・ 森 田 ゆ い・ 福 田 玄 明・ 植 田 一 博・ 佐 々 木 正 人 (2012)文楽人形遣いにおける呼吸と動作の非同期的関 係:日本の古典芸能における「息づかい」の特殊性.日本 認知科学会,19(3) :337−364. 志沢邦夫・荒川清美(1973)剣道の諸動作と呼吸の位相の関 連.日本体育大学紀要,3:77. 冨田智子・木村直人・伊藤 孝・大西徳明(1992)女子フェン シング選手の競技力と体力について.一般社団法人 日本体 育学会:661. 脇田裕久・南 亘・細野信幸(2002)全身反応動作に及ぼす呼 吸相の影響.三重大学教育学部研究紀要,53:105−114. 令和 2 年 7 月 16 日受付 令和 2 年 12 月 16 日受理.

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参照

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