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線虫に良い食べ物は人にも良い?

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Academic year: 2021

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412 生物工学 第96巻 第7号(2018) 著者紹介 地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(研究員) (PDLOVHWR\DPD#NDQDJDZDLULMS 線虫と聞いて読者の皆さんは何を想像するだろうか. 小さな生物,寄生虫,気持ち悪いなど,どちらかと言え ばマイナスのイメージが多いかもしれない.農学系分野 の方であれば,植物に寄生し,農作物の根を食い荒らす 害虫など駆除の対象と思っておられる方も多いのでは ないかと思う.本稿で紹介する線虫は,非寄生性であり 土壌中で細菌を餌として自活しているCaenorhabditis elegansである. C. elegansは体長約PPと小さいが,筋肉,消化器官, 生殖器官,神経など動物にとって必要最低限の構成器官 を持っている.受精卵の孵化から成虫となるまでは約4 日であり,ライフサイクルは非常に短い.また,大腸菌 を餌として大量に培養することが可能である.さらに,C. elegansは雌雄同体,かつ1匹の成虫が約200∼300個 の卵を産むことから,遺伝的に同一な子孫を大量に得る ことができる.加えて,受精卵から成虫まで体が透明で あるため顕微鏡下で容易に観察が可能である1).このよ うな特徴から,C. elegansは1960年代以降Brenner博士 によって,動物の発生,神経形成,遺伝学研究における モデル生物として確立されていった.さらに,多細胞生 物で初めて,ゲノム配列のほぼすべてが決定された生物 でもある.線虫およびヒト間で類似の機能を持つと考え られる遺伝子が多数存在することや,長寿命変異体を用 いた解析から老化に関する遺伝子(age-1)が発見され たことなどから,老化研究のモデル生物としても用いら れている2). 実験室においてC. elegansを寒天培地上(20°C)で 飼育すると,その寿命は平均で約20日,最大でも約30 日である.この寿命の短さから,C. elegansは他のモデ ル生物であるマウスやラットなどよりも老化研究に適し た生物種であるといえる.これまでに,,QVXOLQ,*)− 1シグナル伝達経路が老化と関連があることが明らかに されている.また,同シグナル伝達経路を介した老化の メカニズムは,C. elegansだけではなく,ショウジョウ バエ,マウスやヒトなど,種を超えて広く保存されてい ることが明らかにされつつある3). 老化と密接に関連する要因として,酸化ストレスがよ く知られている.酸化ストレスは,ミトコンドリアにお けるエネルギー代謝の副産物として生じる活性酸素が, 生体内で除去できる量を超過して過剰に生成することで 引き起こされ,結果としてタンパク質や脂質,遺伝子な どが損傷を受ける.C. elegansでは,,QVXOLQ,*)−1シ グナル伝達系の下流においてGDI)2;2転写因子が 抗酸化関連遺伝子の発現を調節し,老化を制御している. 発現が調節される標的遺伝子の一つとしてMn-SODが 知られている4).SOD(スーパーオキシドディスムター ゼ)は,細胞内に発生した活性酸素のうち,スーパーオ キシドアニオンを酸素と過酸化水素へ分解する酵素であ り,抗酸化酵素ともいわれている.C. elegansに,ある 種の抗酸化物質(野菜や果実に多く含まれるフラボノイ ド化合物であるケルセチンなど)を摂取させると,体内 のSOD活性が上昇することで酸化ストレスが低減され, 結果として寿命が延伸されることが報告されている5). このように,C. elegansを用いた研究から,老化と酸 化ストレスの関連性に関して多くの知見が得られてい る.近年,C. elegansはその寿命を指標として,食品の 機能性を評価するためのin vivo試験に用いられている. 9D\QGRUIらは,リンゴ由来ポリフェノールが有する抗 老化作用をC. elegansを用いて解析している6).その他 納豆やロイヤルゼリーなどの機能性も類似の手法で評価 が行われている.一般に食品の機能性を評価する際,初 めにin vitro試験で抗酸化活性などを評価する.有望な ものについては,マウスなどを用いたin vivo試験でさ らにその機能性が評価され,その後ヒト介入試験へと供 試される.しかしながら,動物を用いた試験では,時間 や費用の面で多試料を同時に評価することが難しい.In vitro試験から動物実験へ移行する前段階で,C. elegans を用いた試験を実施することで,より多くの試料を簡便 にスクリーニングでき,機能性評価試験の効率化が可能 となる. 超高齢社会を迎えた2000年代後半以降,健康を維持 しながら老いることや未病の改善を目的とした機能性食 品の開発が活発に行われている.C. elegansを用いた食 品機能性評価試験で得られる知見は,有用物質の選抜の みに止まらず,寿命延伸のメカニズムを解明するうえで きわめて重要であると考えられる.科学的根拠に基づい た新たな機能性食品の開発が,今後益々期待される.

  6XOVWRQ - DQG +RQGJNLQ - The nematode

Caenorhabditis elegans S &ROG 6SULQJ +DUERU

/DERUDWRU\  

2) 石井直明:東海大学先進生命科学研究所紀要,1     .HQ\RQ&Nature464  

  +RQGD<DQG+RQGD6FASEB J13     .DPSNRWWHU $ et al. Comp. Biochem. Physiol. B

Biochem. Mol. Biol149  

  9D\QGRUI( et al.J. Funct. Foods5  

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