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第23回ユネスコ世界遺産マラケシ会議 (研究ノート)

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「第23回 ユ ネス コ世 界 遺 産 マ ラケ シ会 議 」

The23rdSessionofthe

,UNESCOWorldHeritageCommitteein

.Marrakesh

湘南総合研究所

The 23rd Session of the UNESCO World Heritage Committee was held from

November 29th to December 4th, 1999, in Marrakesh,

Morocco.

Attending the Committee as an observer, the following is a firsthand account

of the event.

This year's. Committee was particularly

noteworthy, especially in Japan, in that

it was the first official world committee for the UNESCO's newly elected 8th Secretary

General Koichiro Matsuura, the former Japanese Ambassador to France . A great

deal of the international attention was directed to the fact that he was the first Secre

tary General to come from Asia, amid wide speculations that new lines concerning

the World Heritage would be brought forward and adopted during the week.

This report is intended to outline and review the points discussed at the

Committe, and in so doing examine the issues regarding what has become a subject

of increasing attention

in recent years--the designation and management

of World

Heritage properties.

99年 、11月29日 か ら12月4日 まで 、 第23回 ユ ネ ス コ世 界 遺 産 委 員 会 会 議 が 、モ ロ ッコのマ ラケ シ で 開 催 さ れ た 。 筆 者 は オ ブ サ ー バ ー と して 参 加 す る機 会 を 得 た の で 、本 誌 面 を借 りて 報 告 を ま とめ させ て 頂 き た い 。 今 回 の 会 議 が 日本 で特 に注 目 され た の は 、 ユ ネ ス コの 第8代 事 務 局 長 に、 前 駐 仏 大 使 の 松 浦 晃 一 郎 氏 が 選 出 され て 、初 め て の 公 式 世 界 会 譁 で あ っ た 点 で あ る 。 さ ら に また 、 こ の 会 議 が 世 界 の 耳 目 を集 め た の は 、 新 事 務 局長 が 、 ア ジ ァか らの 初 の 選 出 で あ る こ と と、 世 界 遺 産 に 関 わ る新 た な方 針 が 打 ち 出 され る と の観 測 が広 まっ た こ と に よ る 。 本 稿 は 、 マ ラ ケ シ会 議 で の 検 討 事 項 を概 説 、 点検 しな が ら、 ユ ネ ス コ の 活 動 の 中の 厂世界 遺 産」 の 指 定 及 び 管 理 に 関 す る問 題 点 を 考 察 す る も の で あ る 。 松 浦 事 務 局 長 ス ピー チ 概 要 松 浦 氏 の ス ピ ー チ は 、 会 議 の 初 巳、 出席58ケ 国(加 盟 国158)とNGO、 取 材 報 道 陣 の前 で 、仏 、 英 語 で 行 わ れ た 。

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この ス ピー チ は 、世 界 遺 産 が 今 日か か え る 問 題 点 を適 確 に 指 摘 して い る と思 わ れ る の で 以 下 に 抄 出 す る。 ① 現 在 指 定 され て い る世 界 遺 産 地 域 で あ る 「文 化 遺 産 」 「自然 遺 産 」 「複 合 遺 産 」 の 数 の バ ラ ン ス に偏 りが あ り、 地 域 的 に も偏 りが あ る の で 、 そ の 是 正 を はか る 。 ②21世 紀 に は 、文 化 、 自然 、複 合 の 各 遺 産 概 念 の 他 に 、 厂文 化 的 景 観(CulturalLandscape) の 指 定 を推 進 す る 。 ③ 今 後 指 定 す る地 域 の 選 考 に 当 っ て は 、 そ の 地 域 の 法 的 保 護 、管 理 計 画 の 整 備 の 有 無 、 確 立 な どの 点 を重 視 す る 。 ④ 世 界 遺 産 条 約 締 約 国(158ケ 国 ・2000年 現 在)に 比 例 して 、 委 員 会 国(21ケ 国)の 割 合 が 適 正 で あ る か ど うか を検 討 す る 。 ⑤ 委 員 会 及 び 条 約 の信 頼 性 を高 め る た め の方 途 を検 討 す る 。 ⑥ 一 般 の 人kの 世 界 遺 産 へ の 認 識 を高 め 、又 、 世 界 遺 産 保 護 につ い て の学 校 教 育 面 で の 周 知 、 理 解 の 推 進 をは か る 。 種 別 と地 域 バ ラ ン スの 是 正 ① の 現 在 の 指 定 地 域 の バ ラ ン ス の 是 正 と は 、 他 の 遺 産 に 比 べ て 、 「文 化 遺 産 」 の 圧 倒 的 多 さ の こ と を意 味 して い る 。 今 回 の マ ラ ケ シ会 議 で も新 た に指 定 され た48(33ケ 国)地 域 中 、35ケ 所 は 文 化 遺 産 で あ る。(日 本 の 日光 も この 範 躊 に は い る 。) 遺 産 全 体 で み る と図1の 如 く、630ケ 所(118ケ 国)の 全 地 域 の 中 、 文 化 遺 産480ケ 所 、 自 然 遺 産128ケ 所 、 複 合 遺 産22ケ 所 とな る。(第1回 の指 定 は78年 、ドイ ツ の ア ー ヘ ン 大 聖 堂 や セ ネ ガ ル の ゴ レ島 な ど12ヵ 所) 図1遺 産 種 別 数 22 文 化 遺 産(CulturalProperties)に は6つ の 制 定 基 準 が あ り 、 以 下 の 如 くで あ る 。 (1)人類 の 創 造 的 才 能 を あ ら わ す 傑 作 で あ る 。 (2)時代 を 超 え て 人 類 の 文 化 の 発 達 に 影 響 を 与 え た 建 築 、 技 術 、 記 念 碑 、 都 市 計 画 や 景 観 な ど 。

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(3)現存 す るか 、 又 は既 に消 滅 した伝 統 や 文 明 の 手 が か りを示 す もの 。 (4)歴史 の 重 要 な段 階 を示 す 見 本 と して の 、 建 物 、 建 築 様 式 、 技 術 的 調 和 物 、景 観 。 (5)存続 が 危 ぶ まれ る 文 化 を特 徴 づ け る よ う な伝 統 的 集 落 。 (6)普遍 的 な重 要 性 を持 つ 事 件 、歴 史 、 伝 統 、 思 想 、信 仰 、 芸 術 、 文 化 的 作 品 と明 白 に 関 連 す る もの 。 (1)は 、 例 え ば カ ン ボ ジ ア の ア ン コ ー ル 遺 跡 、 イ ン ドの タ ー ジ ・マ ハ ル 、 京 都 の 寺 な ど が 入 る 。 (2)は 、 日 本 の 厳 島 神 社 、 ブ ル ガ リ ア の イ バ ノ ボ 岩 窟 寺 院 な ど 。 (3)は 、 ペ ル ー の ナ ス カ 地 上 絵 や エ ル サ レ ム 旧 市 街 な ど 。 (4)は 、ド イ ツ の フ ェ ル ク リ ン ゲ ン 製 鉄 所 や ア イ ア ン ブ リ ッ ジ 渓 谷 な ど 。 (5)は 、 中 国 敦 煌 石 窟 や 、 日 本 の 白 川 郷 合 掌 造 り 家 屋 な ど 。 (6>は 、 ア メ リ カ の フ ィ ラ デ ル フ ィ ア 独 立 記 念 館 や 、 日本 の 広 島 原 爆 ド ー ム な ど 。 自然 遺 産(NaturalProperties)に は 、4つ の 制 定 基 準 が あ り、 以下 の 如 くで あ る 。 (1)生命 の 記 録 、 地 質 学 的 過 程 、 自然 地 理 学 的特 色 な ど 、地 球 史 の 各 段 階 を表 す もの 。 (2)陸上 、 淡 ・海 水 域 の 生 態 系 の 進 行 発 展 の生 態 学 、生 物 学 的 過 程 を表 す もの 。 (3)ひと きわ優 れ た 自然 美 や 、美 的要 素 を持 つ 自然 現 象 や 地 域 。 (4)科学 、 保 護 的 見 地 か ら、 絶 滅 の恐 れ の あ る種 や 多 様 な野 性 生 物 の 生 息 地 。 (1)は 、 ア メ リ カ の グ ラ ン ド ・キ ャ ニ オ ン や カ ナ ダ の イ ナ ソ ー ル 州 立 公 園 な ど 。 (2)は 、 エ ク ア ドル の ガ ラ パ ゴ ス 諸 島 や 、 日 本 の 白 神 山 地 な ど 。 (3>は 、 ブ ラ ジ ル の イ グ ア ス 国 立 公 園 や 、 ネ パ ー ル の サ ガ ル マ ー タ 国 立 公 園 な ど 。 (4)は 、 オ ー ス ト ラ リ ア の グ レ ー ト ・バ リ ア ・ リ ー フ や 、 コ ン ゴ の ベ ル ン ガ 公 園 な ど 。 複 合 遺 産(MixedProperties)は 、 自 然 と 文 化 の 両 方 の 要 件 を 満 た し て い る も の で 、 当 初 か ら 複 合 遺 産 と し て 登 録 さ れ る 場 合 と 、 は じ め は 、 自 然 、 文 化 の カ テ ゴ リ ー で 登 録 さ れ そ の 後 、 他 方 の 遺 産 と し て も評 価 さ れ て 複 合 遺 産 と な る 場 合 が あ る 。 現 在 は22ケ 所 、 代 表 的 な も の は 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドの ト ン ガ リ ロ 国 立 公 園 や 、 ペ ル ー の リ オ ・ ア ビ セ オ 国 立 公 園 と マ チ ュ ・ピ チ ュ 歴 史 保 護 区 な ど 。 文 化 的景 観 と は ② は 、松 浦 氏 が 指 摘 した 遺 産 の バ ラ ン ス是 正 の た め に 、 現 在 考 え られ て い る 方 策 で 、 「文 化 的 景 観 」 の 指 定 を積 極 的 に進 め る 方 向 で あ る。 文 化 的 景 観(CulturalLandscape)と は、1992年 に新 し く登 録基 準 に導 入 され た 概 念 で(第16 回サ ン タ フ ェ会 議)、 人 間 が 自然 を利 用 して 作 り出 し た景 観 を意 味 し、 い わ ば 人 と 自 然 の 共 同 作 品 の こ とで あ る 。 この 新 基 準 に よ って 登 録 さ れ た もの は 、 ポ ル トガ ル の シ ン トラの 景 観 、 チ ェ コ の レ ドニ ッ ェ とバ ル テ ィ ツ ェ の 景 観 、 オ ース トリ ア のハ ル シュ タ ッ トとダ ッハ シ ュ タ イ ンの 景 観 な どが あ る 。前 述 した ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドの トン ガ リロ 国立 公 園 な ど は 、 「複 合 遺 産 」 で あ る と 同 時 に 、 厂文 化 的 景 観 」 を 持 つ 、優 れ た 地域 と して の評 価 も合 わせ 持 っ て い る。 標 高3000mの ル ア ペ フ火 山 を 中心 とす る 広 大 な台 地 は 、 先 住 民 族 で あ るマ オ リ人 が 、 聖 地 と して 守 り続 け て きた も

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の で あ る 。 文 化 的 景 観 とい う新 た な概 念 の 導 入 に よ っ て 、 ふ くれ す ぎて 手 づ ま りの状 態 と な っ た文 化 遺 産 偏 重 の 方 向 に 、 別 の 道 が 開 か れ る こ と とな っ た 。 文 化 遺 産 の 手 づ ま り状 態 とは 、 例 え ば 日本 を例 に と る と 、奈 良 、 京 都 の社 寺 が 指 定 を受 け る と 他 の 地 域 の社 寺 は 、 同様 の もの と して 、 指 定 を受 け に く くな る 点 で あ る 。事 実 、 日本 が 申請 打 診 し た"彦 根 城"は 、 そ れ以 前 に 指 定 を受 け て い た 唾姫 路 城"と 同 様 の 城 郭 建 築 で あ る ど して 、 事 前 却 下 され て い る 。 こ の こ と は 、 遺 産 決 定 条 件 の 厳 密 さ を担 保 す る 上 で は有 効 的 で あ るが 、他 方 、 既 指 定 地 域 や 物 件 以 上 に 、 ユ ニ ー クで 優 れ た もの に対 す る認 識 や 再 考 に は不 都 合 と な る 。 日本 に は 、奈 良 、 京 都 以外 に も 、独 自の 文 化 歴 史 的 価 値 を持 ち、 世 界 的 に優 れ た 宗 教 的 建 築 や 地 域 は 多 い 。 に もか か わ らず 、 申請 が 遅 れ た た め や 、 同 範 疇 と見 られ た た め に 、 指 定 を受 け ら れ ず 、 そ の こ と に よ って 、二 流 の 物 件 と み な され て し ま う と い う弊 害 を生 じる こ と と な る 。 そ の点 で の救 済 策 と して 、 文 化 的 景 観 の 新 基 準 が 注 目 さ れ る所 以 で あ る 。 管 理 の 重 要 さ ③ で 指 摘 さ れ た 法 的 保 護 、 管 理 計 画 の 整 備 の 重 視 と は 、 指 定 を 受 け た 後 に 、 保 護 管 理 上 の 問 題 が 発 生 し 、 遺 産 の 状 態 が 悪 化 す る 地 域 が 見 ら れ る よ う に な っ た こ と へ の 危 惧 で あ る 。 今 回 の マ ラ ケ シ 会 議 の 席 上 で も 、 ブ ラ ジ ル と ア ル ゼ ン チ ン の イ グ ア ス の 滝 で 著 名 な イ グ ア ス 国 立 公 園 の 中 を 道 路 が 貫 通 し 、 地 域 が 分 断 さ れ た た め 危 機 リ ス トに 加 え ら れ た 。 「危 機 リ ス ト(ListoftheWorldHeritageinDanger)」 と は 、 自 然 災 害 や 、 武 力 紛 争 、 各 種 開 発 事 業 、 環 境 悪 化 な ど に よ っ て 、 滅 失 や 破 壊 な ど 深 刻 な 危 機 に さ ら さ れ 、 緊 急 の 救 済 措 置 が 必 要 と さ れ る 遺 産 物 件 の こ と で あ る 。 世 界 遺 産 条 約 の 第11条4節 に は 、 遺 産 委 員 会 は 、 次 の 条 件 が 満 た さ れ た 場 合 に 、 危 機 リ ス ト に 登 録 で き る と 、 ガ イ ドラ イ ン が 示 さ れ て い る 。 ・世 界 遺 産 で あ る こ と 。 ・重 大 か つ 特 別 な 危 機 に さ ら さ れ て い る 。 ・ そ の 保 全 に 重 大 な 作 業 計 画 が 必 要 。 ・条 約 に も とつ く援 助 が 要 請 さ れ て い る 。 危 機 リ ス ト入 り は 、 当 該 国 に と っ て は 、 不 名 誉 と 認 識 さ れ る た め 、 委 員 会 が 紛 糾 す る こ と が ま ま あ る 。 一 昨 年 の 京 都 会 議 に 於 て 、 オ ー ス ト ラ リ ア の カ カ ド ウ 国 立 公 園 内 に 、 ウ ラ ン鉱 開 発 が 進 行 し 、 委 員 会 で 検 討 課 題 と な っ た が 、 当 の オ ー ス ト ラ リ ァ 政 府 は 、 危 機 リ ス ト入 り を 回 避 す る た め 、 調 査 期 間 の 延 期 を 主 張 、 す で に 調 査 に 当 っ て い たICCROM(文 化 財 保 護 修 復 研 究 国 際 セ ン タ ー ・InternationalCenterfortheStudyofthePreservationandRestorationofCultural

Property)や 、IUCN(国 際 自 然 保 護 連 合 ・InternationalUnionforConservationofNature andNaturalResources)、ICOMOS(国 際 記 念 物 遺 跡 会 議 ・InternationalCouncilofMonuments

andSites)に よ る 合 同 調 査 団 と の 間 で 、 遺 産 の 救 済 と 保 護 を め ぐ っ て 激 論 が か わ さ れ た 経 緯 が あ っ た 。

ま た 、 「世 界 遺 産 条 約 履 行 の た め の 作 業 指 針 」 に は 、 下 記 の 二 つ の 基 準 の 少 な く と も 一 つ に 合 致 す る と認 定 し た 時 に は 、 委 員 会 は 危 機 リ ス トに 登 録 す る こ と が 出 来 る と 定 め ら れ て い る 。

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[文 化 遺 産] 顕 在 化 した危 機 (a)材質 の 重 大 な劣 化(b購 造 あ る い は 装 飾 的 特 徴 の重 大 な損 壊(c)建 築 上 また は都 市 計 画 上 の 一 貫 性 の 重 大 な損 壊(d)空 間 、環 境 の 重 大 な 損 壊(e)歴 史 的真 正 性 の 重 大 な滅 失(f)文 化 上 の 意 義 の重 大 な 滅 失 潜 在 的 危機 (a)遺産 の 保 護 の 程 度 を減 少 させ る よ う な法 的 地 位 の 変 更(b)保 全 政 策 の 欠 如(c)地 方 計 画 の 危 険 な影 響(d)都 市 計 画 の 危 険 な影 響(e)武 力 衝 突 の勃 発 ま た は そ の 恐 れ(f)地 理 学 的 、気 候 的 、 ま た は そ の 他 の 環 境 要 因 に よ る段 階 的 変 化 [自 然 遺 産] 顕 在 化 した危 機 (a)法的 に保 護 が 確 立 され たそ の 遺 産 が 所 有 す る 、 絶 滅 の恐 れ の あ る種 また はそ の 他 の優 れ て 普 遍 的 価 値 の あ る種 の生 息 数 の 、 疾 病 の よ う な 自然 的 驚 異 あ るい は密 漁 の よ う な人 為 的 要 因 に よる重 大 な減 少 (b)入植 、 ダ ム 建 設 、 産業 開 発 、 環 境 汚 染 、 伐 採 等 に よ る遺 産 の 自然 美 あ る い は学 術 的価 値 の 重 大 な損 壊(c)遺 産 の 完 全 性 をお び や か す 境 界 地 域 また は上 流 地域 にお け る 人 為 的 浸 食 潜 在 的 危 機 (a)その 地 域 の 法 的 保 護 状 態 の 改 変(b)遺 産 内 で の 、 あ る い は そ の 影 響 が遺 産 を危 険 に さ らす よ うな 範 囲 内 で の 再 定 住 計 画 や 開 発 計 画(c)武 力 衝 突 の 勃 発 また は そ の恐 れ(d)管 理 計 画 が な い 、 ま た は 不 適 当 あ る い は 実 施 力 の不 十 分 以 上 の よ う な条 約 及 び作 業 指針 の 定 義 に もか か わ らず 、 遺 産 申請 は 潜 在 と顕 在 と を問 わず 、 危 機 的 要 素 を 隠 す か 過 小 評 価 して行 わ れ る こ と が ま ま あ る 。 そ れ は 、遺 産 指 定 に よる 地 域 振 興 や 観 光 収 益 増 、 文 化 度 発 露 な ど の 当 該 国 の 利 益 誘 導 的 要 求 に よ る こ とが 多 い 。 こ の場 合 、 遺 産 指 定 後 は 、 保 護 管 理 に対 す る 措 置 は お ろ そ か に され 、 当 該 国 の 主 た る行 動 目標 は 、次 の 地 域 申請 の み に 向 か う こ と と な る 。 遺 産 の 危 機 リス ト入 りが 増 加 す る こ とは もち ろ ん 、危 機 リス トの検 討 が 増 加 す る こ と は遺 産 価 値 の 崩 壊 を もた ら し、 結 果 的 に は世 界 遺 産 全 体 の 信 頼 性 を 失 わ しめ る こ と と な る 。 マ ラ ケ シ会 議 で は 、 この 点 に危 惧 が 表 明 さ れ 、 フ ラ ンス の 申請 した 「ロ ア ー ル渓 谷 」 が 却 下 さ れ た 。 フ ラ ン ス が 文 化 的 景 観 と して 申 請 した 「ロ ア ー ル 渓 谷 」 は 渓 谷 とそ こ に点 在 す る古 城 との 絶 妙 な美 的 バ ラ ン ス で 有 名 な地 域 で 、 下 馬 評 も高 く、 申 請 の 調 査 、報 告 を担 当す るICOMOSの 事 前 審 査 も通 り、 指 定 は 当然 と思 わ れ て い た 。 と こ ろが 、 渓 谷 の周 辺 に原 発 の 開発 計 画 が あ る こ とが 判 明 し、 会 議 で は 反 対 意 見 が 続 出 す る こ と とな っ た 。 原 発 の 立 地 は渓 谷 の範 囲 の 中 で は な か っ た が 、 渓 谷 と隣 接 す る地 域 に あ っ た 。 フ ラ ンス 政 府 代 表 は、 そ の こ と を 免責 理 由 と して 力 説 し たが 、結 局、却下 とな ったので ある。 この こ とは 、 当該 国 の フ ラ ンス の み な らず 、ICOMOSに と っ て も重 大 な認 識 の 齟 齬 が指 摘 され る こ と と な り、 本 年4月 、 イ ギ リス で 文 化 的景 観 の 作 業 指 針 見 直 しを 行 な う会 議 を持 つ 事 態 とな っ た の で あ る 。

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文 化 的 景 観 の基 準 見 直 しの 論 調 は 、 マ ラ ケ シ会 議 全 体 を通 じて の 主 要 トー ン とな り、 日本 の 日 光 に 対 して も、南 西 部 の遺 産境 界 部 分 で の 開 発 へ の 、 十 分 な モ ニ タ リ ン グの 必 要 が 、表 明 された 。 文 化 的 景 観 は 、 そ の性 質 上 、 か な り広大 な地 域 が 想 定 さ れ る こ とが 多 く、又 人 間 が 自然 に対 し て は た ら きか け て 形 造 られ た もの で あ る 為 、 現 状 が 将 来 的 に 変 化 す る要 素 を含 ん で い る 。 そ の 変 化 の 要 因 の 中 に 、 何 を入 れ 、 何 を入 れ な い か 等 、未 検 討 部 分 が 多 い 。 そ の た め フ ラ ン ス の 申 請 に 危 惧 の念 を表 明 した 、伊 、豪 、 英 、 フ ィ ン ラ ン ド、 タ イ、 な どが 中 心 と な り、 フ ラ ンス を加 えて 、 分 科 会 を 開 催 し、 そ の結 果 をICOMOSに 報 告 す る こ とが 決 定 され た 。 マ ラ ケ シ会 議 で は 、新 た に48ケ 所 が 登 録 決 定 とな っ たが 、 数 が 多 す ぎる と の 批 判 が あ り 、(京 都 会 議 で は38ケ 所)、ICOMOSの 審 査 基 準 の 甘 さが 指 摘 され た の で あ る。 遺 産 申請 物 件 の 評 価 の た め に は 、調 査 の た め か な りの 費 用 と時 間 が か か り、 一 週 間程 度 の 会 議 で は 審 議 が 手 薄 で あ る との 懸 念 も表 明 され た 。 次 回 の 会 議 か ら は 、指 定基 準 が 厳 し くな る こ とが 十 分 に予 想 され る。 委 員 会 国 の 役 割 ④ に 述 べ ら れ て い る 条 約 締 約 国(StateParties)と 委 員 会 国(TheRepresentativeselected bytheGeneralAssemblyofStatePartiestotheConvention)と の 割 合 と は 、 条 約 締 約 国 数 が1975年 の 条 約 発 行 時 に は21ケ 国 で あ っ た が 、 現 在 は158ケ 国 に ま で 増 加 し て い る に も か か わ ら ず 、 業 務 推 進 の 任 に 当 る 委 員 会 国 の 数 が 、 条 約 発 行 時 の 加 盟 国 数 で あ る21ケ 国 の ま ま で 良 い の か と の 問 題 で あ る 。 ち な み に 条 約 発 行 時 の21ケ 国 と は 、 ア メ リ カ 、 エ ジ プ ト、 イ ラ ク 、 ブ ル ガ リ ア 、 ス ー ダ ン 、 ア ル ジ ェ リ ア 、 オ ー ス トラ リ ア 、 ザ イ ー ル 、 ナ イ ジ ェ リ ア 、 ニ ジ ェ ー ル 、 イ ラ ン 、 チ ュ ニ ジ ア 、 ヨ ル ダ ン 、 ユ ー ゴ ス ラ ビ ア 、 エ ク ア ドル 、 フ ラ ン ス 、 ガ ー ナ 、 シ リ ア 、 キ プ ロ ス 、 ス イ ス 、 モ ロ ッ コ の 各 国 で あ る 。 日 本 の 参 加 は1992年 ま で 遅 れ 、126番 目 の 締 約 国 と な っ た 。 こ の 日 本 の 条 約 批 准 の 遅 れ の 理 由 と そ れ が 尾 を 引 く問 題 点 に つ い て は 後 述 す る 。 さ て 、 全 締 約 国 が 参 加 す る 権 利 を 持 つ 「世 界 遺 産 会 議(TheWorldHeritageCommittee)は 、 実 質 的 に は 選 挙 で 選 出 さ れ た21の 「委 員 会 国 」 が ハ ン ド リ ン グ を 行 う の が 実 状 で あ る 。 「委 員 会 国 」 は 、 新 た な 申 請 の リ ス トを 作 成 す る 他 、 遺 産 保 護 の た め の 国 際 的 援 助 の 供 与 な ど を 決 め 、 そ の 決 定 は 「世 界 遺 産 会 議 」 で 出 席 国3分 の2以 上 の 多 数 決 を 経 て 正 式 の も の と な る 。 委 員 会 国 の 任 期 は6年 、2年 ご と に3分 の1の7ケ 国 が 交 代 す る 仕 組 み で あ る 。 こ の 委 員 会 国 の 中 で も 、 特 に 事 務 局 担 当 国(7ケ 国)の 権 限 は 強 く 、 申 請 リ ス トは 、実 質 的 に こ の7ケ 国 に よ っ て 事 前 審 査 さ れ て い る の が 現 状 で あ る 。 現 在 の 事 務 担 当 国 は 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 フ ィ ン ラ ン ド、 ギ リ シ ヤ 、 ハ ン ガ リ ー 、 モ ロ ッ コ 、 メ キ シ コ 、 ジ ン バ ブ エ 。 日本 は 昨 年 ま で は 委 員 会 国 の 、 一 員 で あ っ た が 、 今 年 の 選 挙 で 再 選 さ れ な か っ た 。 ユ ネ ス コ事 務 局 長 を 送 り 出 し た 国 で 、 し か も す で に 委 員 会 国 を 経 験 し て い る 日 本 は 、 自 発 的 に 立 候 補 を 断 念 す べ き だ と の 声 が 多 い 中 で 、 無 理 に 選 挙 に 望 ん だ 日 本 の 戦 略 の ま ず さ が 印 象 づ け ら れ た 感 が あ る 。 2001年 ま で の 任 期 の 全 委 員 会 国 名 を 挙 げ れ ば 、 以 下 の 如 くで あ る 。 中 央 ア フ リ カ 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 ベ ル ギ ー 、 ベ ニ ン 、 カ ナ ダ 、 中 国 、 コ ロ ン ビ ア 、 キ ュ ー バ 、 エ ジ プ ト、 エ ク ア ドル 、 フ ィ ン ラ ン ド、 ギ リ シ ャ 、 ハ ン ガ リ ー 、 イ タ リ ア 、 マ ル タ 、 モ ロ ッ コ 、 メ キ シ コ 、 ポ ル トガ ル 、 韓 国 、

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タ イ、 ジ ンバ ブ エ 。 や は り欧 州 の 多 さ と 、 ア フ リカ 、南 米 に比 較 して ア ジ ァ の 少 な さが 目立 って い る 。 この こ と は 、今 回 の 新 リス ト申 請 の 圧 倒 的 な 数 が く48件中28件)西 ヨー ロ ッパ に集 中 した こ と に も表 れ 、 委 員 会 国 内 で の 選 考 方 法 が 批 判 を集 め る こ と とな っ た 。 世 界 遺 産 の 指 定 物 件 の 現 状 を地 域 別 に 見 る と 図2の 如 くな る 。 図2遺 産 地 域 別 数 特 に 突 出 して い る の は 、 イ タ リ ア の31件 、 ギ リ シ ャ の16件 、 イ ギ リ ス の18件 、 ス ペ イ ン の30件 、 ド イ ツ の22件 、 フ ラ ン ス の27件 、 ロ シ ア の13件 な ど で あ る 。 遺 産 全 体 の44%を 超 え る 件 数 が ヨ ー ロ ッパ に 集 中 し て い る 状 態 は 単 に 数 だ け の 問 題 で は な く、 選 出 思 考 の 根 幹 に ヨ ー ロ ッパ 文 明 中 る、 主 義 が 色 濃 い と の 批 判 の 根 拠 を 形 成 す る 。 こ の こ と は 、 委 員 会 国 の 構 成 に 疑 問 が 呈 さ れ る こ と と な り 、 今 回 の マ ラ ケ シ 会 議 で 、 す で に 委 員 会 国 を 経 験 し た 国 は 、 再 度 立 候 補 しな い こ と が 申 し合 わ さ れ た 。 6ケ 年 と い う任 期 の 長 さ の 問 題 と と も に 、 リ ス ト の 地 域 バ ラ ンス 是 正 に つ い て、 カ ナ ダ を 議 長 国 と し て の 今 後 の 継 続 討 議 議 題 と な っ た の で あ る 。 理 解 と協 力 ⑤ は 云 う ま で も な く教 育 を 中心 とす る理 解 促 進 で あ る 。 遺 産 条 約 の 第27条 及 び 第28条 に於 て 、 教 育 事 業 計 画 に つ い て次 の よ うに 規 定 して い る。 〈第27条> 1.締 約 国 は 、 あ らゆ る手 段 を用 い て 、特 に教 育 及 び広 報 事 業 計 画 を通 じて 自 国民 が世 界 遺 産 を評 価 し、尊 重 す る こ とを強 化 す る よ う努 め る 。 2.締 約 国 は 、世 界 遺 産 を脅 かす 危 険並 び に こ の 条 約 に よっ て 実 施 され る 活 動 を広 く公 衆 に 周 知 させ る こ と を約 束 す る。 〈第28条 〉 この 条 約 に 基 づ い て 国 際 的 援 助 を受 け る締 約 国 は、援 助 の 対 象 とな っ た 物 件 の重 要 性 及 び 当 該 国 際 的援 助 の 果 た した役 割 を周 知 させ るた め 、 適 当 な措 置 を と る。

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遺 産 の 申 請 は 、 国 レベ ル で 行 わ れ る た め 指 定 に よる 一 時 の興 味 が 薄 れ る と、 そ の保 存 や 管 理 、 必 要 性 につ い て の認 識 が 、 一 般 の 国 民 レベ ル まで 浸 透 し な い傾 向 が あ る 。 さ ら に指 定 に よる 地 域 振 興 や 観 光 面 で の 効 果 の み に焦 点 が しぼ られ 、世 界 的 文 化 へ の 貢 献 な ど の 基 幹 コ ンセ プ トは 、 と もす れ ば 忘 却 さ れ が ちで あ る 。 日本 で は 、 奈 良 の 広 域 指 定 を 受 け て 、 今春 、 奈 良 大 学 が 文 学 部 の 中 に世 界 遺 産 コ ー ス を新 設 し たが 、 国 立 大 を 中心 とす る高 等 教 育 は もち ろ ん 、 初 中等 教 育 の ス テ ー ジ で も、 何 らか の 方 途 が 講 じ られ るべ き時 期 を迎 え て い る と言 え よ う。 以 上 、 松 浦 局 長 の マ ラケ シ会 議 で の ス ピー チ を軸 に 、現 在 の世 界 遺 産 の抱 え る各 種 の 課 題 を考 察 した 。 次 に 、 遺 産 申請 の 候 補 地 選 定 シ ス テ ム の現 状 と 日本 国 内 の 問 題 点 を検 討 す る 。 遺 産 申請 の 手 続 き と そ の 問 題 点 遺 産 選 定 上 の 課 題 は大 き く二 つ の段 階 に分 れ る 。 一 つ は、 申 請 国 内 部 で の 決 定 シ ス テ ム の 問題 で あ り、二 つ は 、ユ ネ ス コ世 界 遺 産 委 員 会 で の 問 題 で あ る 。 世 界 遺 産 委 員 会 で の 問題 点 は前 章 まで に概 説 した の で 、 こ こで は 、 主 と して遺 産 申 請 国 、 特 に 日本 の シス テ ム に つ い て考 え て み た い 。 日本 国 内 で の 遺 産 リス ト(暫 定 リス ト)決 定 ま で の プ ロ セ ス は 次 の よ うに な る 。 (1)各 地 域 の 申 請 に 向 け た 運 動 体 の 活 動(民 間 団 体 が 中心 と な る) (2)県 レベ ル で の 候 補 地 しぼ り込 み (3)県 は 調 査 結 果 を ま とめ 、 申請 書 の 作 業 指 針 に基 づ い て 、 国 の 窓 口 で あ る 文 化 庁 の 担 当 窓 口 (記 念 物 課)に 申請 す る (4)文 化 庁 は 、 各 県 か らの候 補 推 薦 地 の 中 か ら諮 問 委 員 会 な ど で の 検 討 を経 て 、 暫 定 プ ラ ン を 作 成 す る (5)文 化 庁 は 、暫 定 プ ラ ン を も と に 、 各 省 庁 連 絡 会(外 務 、 運 輸 、建 設 、 環 境 、林 野 、総理 府) で の 協 議 を経 て 、 暫 定 リス トを 決 定(日 本 は1992年 に暫 定 リ ス トを決 定 、 そ れ に よ れ ば 、 現 在 、 鎌 倉 、彦 根 、 沖 縄 が 決 定 さ れ て い る) .こ の プ ロ セ ス に 於 け る問 題 点 は 、各 地 域 の 運 動 母 体 同志 の 相 互 検 討 が 全 く考 慮 され ず 、情 報 開 示 に よ る一 般 市 民 の 参 加 も期 待 され て い な い 点 で あ る。 従 っ て 一 般 市 民 は 、ユ ネ ス コで の 決 定 が 公 表 され て は じめ て 、 公 式 に 遺 産 の 指 定 を知 らさ れ る こ と とな る 。地 域 の 運 動 母 体 も、 自 己 地 域 以 外 の こ と は十 分 に 情 報 を与 え られ ず 、 他 地 域 との競 争 的 緊 張 の 中 で の 、 当確 情 報 の 争 奪 戦 の 様 相 を呈 す る 。 そ こ で は 、 世 界 の 文 化 や 自然 保 全 に対 す る 自他 地 域 の 相 対 的 認 識 評 価 は 生 ず る こと な く、 また、 年 毎 に 変 化 す るユ ネ ス コ内 部 で の リ ス ト概 念 に 関 わ る新 情 報 も 、十 分 に 周 知 され る こ とが な い の で あ る 。 暫 定 リ ス トは 、 当該 国 か らユ ネ ス コ世 界 遺 産 セ ン ター に提 出 され るが 、 い つ 、 どの よ う な順 番 で 、 どの 地 域 が 提 出 され た の か は 、 原 則 的 に 公 表 さ れ な い 。 もち ろ ん 当該 地域 に は情 報 は もた ら され るが 、 そ の 範 囲 は暫 定 リ ス ト決 定 地 域 の み で あ っ て 、 こ れ か ら活 動 を開 始 しよ う と す る地 域 や 、 運 動 団体 が 未 だ な い 地 域 に は 、 何 の 積 極 的 周 知 もな い の で あ る。 純 粋 に運 動 を展 開 し て きた 地 域 住 民 は 、 県 の レベ ル に入 っ て 以 降 は 、云 わ ば ブ ラ ッ ク ボ ッ クス か らの 裁 定 を ひ た す ら 待 つ こ とが 、 表 向 きの 態 度 とな る。 もち ろ ん 、 そ ん な 安 易 な運 動 で は 、 数 多 くの他 地 域 との 競 合 に勝 ち残 れ な い と の 危 機 感 か ら、 巷 間 さ さや か れ て い る 様hの 揣 摩 憶 測 が 飛 び交 う こ と と な る。

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筆 者 の 仄 聞 した実 しや か な風 評 の 中 に は 、今 回 の 日光 の 申請 書 作 成 に は 天 下 っ た 中央 か らの 複 数 の 役 人 が 力 を発 揮 した とか 、沖 縄 の暫 定 リス ト入 りは 、 超 法 規 で 、 す で に官 邸 が 決 定 して い る と か の 類 い が あ る。 風 説 の信 憑性 云 々 よ りも、 何 ゆ え 、 この 様 な 憶 測 が さ さや か れ る の か が 問 われ るべ きで あ ろ う。 そ の 第 一 の 原 因 は 、暫 定 リ ス ト決 定 の プ ロセ ス に関 す る情 報 開示 の遅 れ で あ る と云 わ ざ る を 得 な いo 折 角 、骨 身 をけ ず っ て 、 地 域 へ の愛 情 と、 世 界 貢 献 の た め に運 動 を展 開 した 候 補 地 の 真 正 性 と信 頼 性 を そ こ な わ な い為 に も、 適 確 で 明朗 な 選 定 経 緯 が 、 国 民 全 体 に公 表 され る方 式 を模 索 す べ き で あ る 。 さ らに 、 大 多 数 の 国 民 は遺 産 はユ ネ ス コ が 選 別 し決 定 す る もの だ と認 識 して い る た め 、 日本 国 内 で の選 考 が 基 で あ る こ と を知 らな い の で あ る。 そ う思 わ せ た ま ま の 方 が 、作 業 が 楽 だ と 考 え てい る文 化 庁 の 姿 勢 は 、 怠 慢 とい わ ざる を得 な い 。 県 レベ ル で の 選 定 方 式 に も問 題 が と り ざた さ れ て い る例 が あ る。 そ れ は 、 遺 産 価 値 に対 す る真 剣 な討 議 、 調 査 を横 に置 い て 、 地 場 振 興 の具 に供 せ ん とす る 行 政 の 姿 勢 で あ る 。 例 え ば和 歌 山 県 は、 「熊 野 博 」 な る 地 域 イベ ン トを企 画 実 施 し、 そ の 態 勢 固 め と 、 知 事 選 で の 人 気 取 りの た め に 、 「熊 野 」 を遺 産 に推 薦 す る こ と を決 め た と云 わ れ て い る。 現 在 、 遅 れ て 運 動 を始 め た 厂高 野 山」 との 間 の調 整 に 苦 慮 し、2ケ 所 同 時 の 申請 を 図 っ て い る と伝 え られ てい るが 、 本 来 、 歴 史 的 に も文 化 的 に も関 連 の な い 地 域 を 、無 理 に 融 合 させ る こ と は 、世 界 遺 産 の真 正 性 を 著 し く侵 害 す る愚 策 と言 うべ きで あ る 。 ユ ネ ス コ世 界 遺 産 委 員 会 の発 表 して い る 「世 界 遺 産 条 約 、 履 行 の た め の 作 業 指 針 」 に は 、策 定 の一 般 的 原則 と して次 の 様 な表 現 が あ る 。 ・条 約 は特 に普 遍 的 価 値 を有 す る と認 め ら れ る文 化、 自然 遺 産 の保 護 を講 じる もの で あ る 。 そ れ は重 要 な価 値 が あ る もの な ら全 て 保 護 す る こ と を 目指 して い る の で は な く、 そ れ らの うち で 世 界 的視 野 か ら見 て 最 も傑 出 した もの に つ いZの 選 抜 リス トを設 け る にす ぎな い 。 ・現 在 、文化 遺産へ の推薦が余 りに も多 くその処 理が 困難 なため、委員会 は締約 国 に対 し、そ の推 薦 地 が 、 今 ま で の リ ス トです で に 代 表 され て い る種 類 の もの で は な い か とい う点 を考 慮 し、推 薦 の 提 出 を 自発 的 に制 限す る こ と を 求 め る も の で あ る。 そ うす る こ と に よ り、 リス ト は よ り普 遍 的 、 網 羅 的 な もの に な る で あ ろ う。 以 上 の よ うな作 業 指 針 の 内 容 をみ るか ぎ り、 過 去 に 日本 が 暫 定 リス トに選 出 した 「彦 根城 」が 、 却 下 され る の は 予 測 可 能 で は なか っ た ろ うか 。 国 の担 当 部 局 の 戦 術 ミス が 、地 域 の 運 動 に水 を差 した 例 で あ る 。 また 、"世 界 的 に最 も傑 出 した も の"と の 基 準 は 、厳 し く重 い 。 行 政 の 御 都 合 主 義 が 先 行 す る 和 歌 山 県 の 如 きは 、 著 し く遺 産 の 信 頼 性 を傷 つ け る もの で あ る 。 マ ラ ケ シ会 議 の 残 した も の 今 回 の 会 議 で は 多 岐 に 渡 る 問 題 点 が 話 し合 わ れ た 。就 中 、特 に 強調 され た 検 討 課 題 は 、① リス トの バ ラ ン ス の是 正 ② 決 定 プ ロセ ス の厳 密 さ ③ 委 員 会 国 な ど決定 機 構 の 体 制 の 見 直 し ④ 新 基 準 に よる 登 録 を 増 や す た め に 、 既 暫 定 リス トの 抜 本 的 見 直 し ⑤ 保 護 、管理 の充 実 、 以上 の 5点 で あ る 。 日本 は 、92年 ま で 条 約 批 准 が 遅 れ 、 先 進 国 の 中 で は か な り後 発 の参 加 国 で あ る 。批 准 が 遅 れ た

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理 由 は 、 「負 の 遺 産 」 と呼 ば れ る 、文 化 遺 産 の 第6番 目の基 準 に よ っ て 、 広 島 が 選 ば れ る 可 能 性 が 強 ま っ て い た か らに依 る 。 ア メ リ カ や 中 国 な どの 反 発 を恐 れ た 当時 の外 務 当 局 は 、 条 約 締 約 に消 極 的 で あ っ た 。 こ の よ う に そ の 出 発 時 か ら の 、政 治 的 思 惑 が 、 日本 の姿 勢 をお よ び 腰 に した の で あ る。 官 僚 中 心 の 発 想 と 行 動 パ タ ー ンは 、 今 日に至 る も継 続 して い る 。 そ れ は 、 今 まで み て きた よ う に 、暫 定 リス ト決 定 プ ロ セ ス に 於 け る、官 主導 の作業形 態が如実 に 物 語 っ て い る 。 一 方 で、 時代 は 大 き く変 化 し、 地 球 レベ ル で の 自然 や 環 境 保 全 の 必 要 性 と、 固 有 文 化 の 保 持 の 重 要 さが 、 強 く認 識 され る よ う に な っ た 。 この 世 界 的風 潮 の 中 で 、世界遺産へ の一般 国民の関心 は 急 速 な 高 ま りを み せ る。 同 時 に 遺 産 の有 り方 を め ぐ って 、様kの 問題点が指摘 され は じめ る。 この こ とは 、遺 産 に 関 わ るマ ネ ジ メ ン トが 、 従 来 型 の 官 製 機 構 で は 円 滑 に作 用 しな くな っ た こ と で もあ る 。NGOや 、民 間運 動 体 の声 を汲 み 上 げ る こ と な く、密室 で の作業 で は、 遺 産 の価 値保 全 が 困 難 と な っ た の で あ る 。 遺 産 に対 応 す る 日本 型 の シ ス テ ム が 壁 に直 面 した と言 え る。 しか しな が ら、 世 界 遺 産 に 関 わ る もの は 、ユ ネ ス コ全 体 の 仕 事 か らみ れ ば 、 ほんの一部分 にす ぎ な い 。 従 っ て 、 ユ ネ ス コ(国 連 教 育 科 学 文 化 機 関)自 身 の 抱 え る諸 問 題 は 、 世界 遺 産 の運 営 に深 く影 を落 とす 。 そ の最 大 の 問題 と は資 金 難 と組 織 疲 労 で あ る 。84年 の ア メ リ カの 脱 退(世 界 遺 産 な ど個 別 プ ロ グ ラ ム に は 参 加 して は い るが 、 ユ ネス コの 全 体 的 活 動 か ら は離 脱)に 伴 っ て 、米国拠 出金(全 体 の約3割)は 失 わ れ た ま まで あ る 。 米 国資 金 の 消 失 と加 盟 国 の分 担 金 未 払 い な どの た め 、 この10 年 間 の ユ ネ ス コ予 算 は 実 質 的 に マ イ ナ ス 成 長 で あ る 。 ユ ネ ス コの 予 算 制 度 は2年 制 で 、98年 ∼99年 の 通 常 予 算 は約5億5千 万 ドル(約6百 億 円) こ の 他 に 、各 国 が 任 意 拠 出 金 を 出 し、個別 のプ ロジェグ トに対応 してい る。米 国脱 退 に よる資金 の 目減 りは 、 日本 が 肩 代 わ り して い る の が 現 状(日 本 は最 大 の 拠 出金 国 で あ る)。 又 、 前 事務 局 長 マ ヨー ル氏 時 代 に肥 大 化 した 組 織 と規 律 の ゆ る み 、 不 明朗 な 人 事 な どに よ っ て 、指揮 系統 は混 乱 し、 内 外 か ら組 織 疲 労 が 指 摘 され て い る 。 ユ ネ ス コ職 員 は 大 学 出 身 者 が 多 く、平 均 年 齢 も49歳 と高 く、その公家集 団的閉鎖性 が実務力 を 奪 っ て い る との 批 判 も多 い 。 マ ヨ ー ル 氏 時 代 は 、 情 実 採 用 な ど に よ る 特 別 コ ンサ ル タ ン トが100人 を 越 え る 多 数 に 上 り、 そ の お 供 を連 れ て の 海 外 視 察 は 、 大 名 旅 行 ば りで 、 人 権 費 は 予 算 全 体 の6割 を 占 め た 。 専 門 性 の タ コ ツ ボ に盤 踞 す る公 家 集 団が 、188ケ 国 の 加 盟 す る 政 府 間組 織(ユ ネ ス コ)の 権 威 を纏 う と ど う な る か 、 そ の こ との 具 体 的 反 映 が 、現 在 の ユ ネ ス コ活 動 の ゆ きづ ま りの表 れ で あ る。 「ユ ネ ス コ は 何 を や っ て い るの か分 か らな い 」 と の声 が 多 い の は 、南北問題 、 民族 宗教 問題 、消 失 の 危 機 にあ る 地 域 文 化 や 無 形 文 化 の保 全 な ど 、ユ ネ ス コ設 立 時 代 と は 質 的 に異 な る状 況 に 適 確 に応 え て い ない こ とに よ る。 実 務 力 の低 下 に よ る 指揮 命 令 系 統 の 乱 れ は 、 各 加 盟 国 の 独 断 的 行 動 を惹 起 させ る こ と と な り、 個 別 の 非 効 率 な官 僚 型 シス テ ム を生 ん で い る の は 、 日本 の 世 界遺 産 選 定 プ ロ セ ス で もみ られ る 通 りで あ る 。 第2次 世 界 大 戦 後 、 「心 の 中 に 平 和 の と りで を築 く」 との 理 念 で 出発 し た ユ ネ ス コ が 国 連 活 動 の 中 で カバ ー す べ き分 野 は 、教 育 、文 化 、 科 学 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの広 き に わ た る 。

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本 稿 の テ ー マ で あ る世 界 遺 産 に限 っ て も、 冷 戦 後 の 世 界 政 治 の先 ゆ きの 不 透 明 さ、 民 族 や 宗 教 対 立 、南 北 問題 に 象 徴 さ れ る 地 域 格 差 、 多様 化 し統 一 思 潮 を持 ち得 な い 価 値 観 な ど、 遺 産 そ の も の の信 頼 性 を ゆ さぶ る新 た な 現 象 が 頻 出 して い る の で あ る 。 事 務 局 長 を引 き受 け た 人物 を支 え るべ き責 務 を荷 な う 日本 は 、 こ れ らの 諸 課 題 に積 極 的 に取 り 組 まね ば な らな い 。 国 連 は 、ユ ネ ス コの 主 唱 に よ り、 今 年2000年 を 「平 和 の 文 化 国 際 年 」 と位 置 づ け た 。 この ス ロ ー ガ ンは 、 戦 争 の世 紀 と呼 ば れ る20世 紀 へ の 強 い 反 省 の 念 か ら起 案 さ れ た 。 しか し同 時 に単 に平 和 を 、戦 争 な き状 態 で は な い と と らえ た 故 に 、"文 化"の 文 言 が 加 え られ た の で あ る 。 そ の 意 味 で 、 こ れ か らの 世 界 遺 産事 務 当 局 の 課 題 と は 、 な に よ りも、新 た な文 化観 の構 築 に向 か っ て の 提 言 性 あ る討 言義で あ る 、 エ ジ プ トの ヌ ビ ア遺 跡 群(NubianMonuments)を 開発 か ら守 る運 動 を母 体 と して 始 ま っ た 、 世 界 遺 産 の 保 存 活 動 は 、 そ の 当 初 か ら有 形 の建 造 物 を 中心 とす る西 洋 型 文 化 を思 想 的基 盤 と して 持 つ 。 しか し、文 化 は 、 有 形 の もの の み で は な い 。 日本 が 地 勢 的 に属 す る ア ジ ア の 文 化 は 、 伝 承 性 を重 視 し 、 自然 との 融 合 を理 想 とす る無 形 文 化 の 側 面 も強 い 。 もの の 真 正 性 や 歴 史 的 価 値 、 絶対 美 な ど 、 眼 にみ え る もの に 価 値 を置 く、 西 洋 型 文化 は 、 石 と 鉄 な ど耐 年 性 を持 つ 素 材 を得 意 とす る が 、 ア ジ ア型 文 化 は 、 自然 の 生 々流 転 を受 け入 れ 、 自然 即 美 と し、 そ の 素 材 に も草 木 な どの 自然 物 そ の もの を用 い る 。 そ れ は 、 物 の価 値 で は な く、物 を貫 徹 して流 れ る精 神 を重 視 す る哲 学 で あ る 。 この こ とは 、 歴 史 的 建 造 物 の保 存 を 第 一 の 活 動 目標 に掲 げ て 来 た 、 従 来 の 遺 産 委 員 会 の作 業 方 針 とは大 き く異 な る 。 これ か ら指 定 す る 遺 産 に 、 どの よ う に して 無 形 の もの を含 有 し、 そ の 実 証 性 の証 明 と保 存 管 理 は ど う あ るべ きか 。 これ らは全 く未 知 の 領 域 で あ る 。 だ が 、 こ の未 知 の 領 域 に踏 み 込 ま な い 限 り、遺 産 活 動 の 、 将 来 的 で 地 球 規 模 の 発 展 は 望 むべ く もな い の で あ る 。 そ の為 に は 、 早 急 に専 門 家 を 中心 とす る 国 際 的 知 的 ネ ッ トワ ー ク を 構 築 し、 専 門家 会 議 な ど必 要 な研 究 体 制 を立 ち上 げ る べ きで あ ろ う。 目下 、 日本 を中 心 と して 厂聖 山会 議 」 の 企 画 が 進 行 中 で あ る 。 こ の 会 議 は 、 自然 と宗 教 の 合 一 性 を歴 史的 に展 開 させ て きた ア ジ ア で は 、格 好 の テ ー マ で あ る 。 こ の 会 議 の効 果 的 実 施 に期 待 し た い 。 日本 が 提 言 す べ き も う一 つ の 課 題 は 、 ネ イ シ ョ ン ・ス テ イ トを基 盤 とす る政 府 間 組 織 で あ る ユ ネ ス コ に 、 い か に非 政 府 組 織(NGO)な どの民 間 運 動 体 を 取 り入 れ る か の 、 悩 ま しい が 、 喫 緊 性 あ るテ ーマ で あ る 。 専 門家 集 団 の 集 ま りの 中 に、 民 間 の活 力 を 取 り込 む こ と は、 討 議 の 効 率 悪 化 な どの 弊 害 も予 想 され るが 、 他 方 、 活 力 と周 知 、 広 報 性 を生 む 方 策 で あ る 。 マ ラケ シ会 議 に続 く、今 年 度 の 世 界 遺 産委 員 会 会 議 開催 地 は 、 オ ー ス トラ リア の ケ ア ンズ で あ る 。 オ セ アニ ア 地 域 は ア ジ ア の 海 洋 型 の 文 化 との 共 通 点 も多 く持 つ 地 域 で あ る。 ケ ア ンズ 会 議 が21世 紀 の 世 界 遺 産 の 将 来 像 を指 向 す る有 意 義 な も の とな る よ う、 日本 は松 浦 体 制 を支 え 、 組 織 の 活 性 化 と新 た な る運 動 指 針 を打 ち 出す べ きで あ る。

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〈 参 考 文 献 〉 ・TheWorldHeritageNewsletter(UNESCO) ・WorldHeritageReview(INCAFO) ・TheUNESCOCourier(UNESCO) ・NationalGeographic(NationalGeographicSociety) ・世 界 遺 産 デ ー タ ・ ブ ッ ク(シ ン ク タ ン ク せ と う ち) ・世 界 遺 産 条 約 資 料 集(日 本 自 然 保 護 協 会) ・世 界 遺 産 条 約 ・履 行 の た め の 作 業 指 針(世 界 遺 産 委 員 会) ・TheWorldHeritageMap(UNESCOWHCenter) ・TextoftheConventionconcerningtheProtectionoftheWorld'sCulturalandNatural Heritage(UNESCO) ・OperationalGuidelinesfortheImplementationofConvention(UNESCO) ・世 界 週 報(時 事 通 信 社) 二世 界 の 動 き(外 務 省) ・世 界 年 鑑(共 同 通 信 社) ・世 界 遺 産 年 鑑(日 本 ユ ネ ス コ 協 会 連 盟)

参照

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