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大学生のサプリメントの摂取状況について 教育系と栄養系の学生の比較

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに 近年,健康志向の高まりから多種多様なサプリメ ントが開発され,薬局,コンビニエンスストア,スー パーマーケットなどで直接購入する以外にもイン ターネットを通して手軽に入手が可能となっている ことから,利用者が増加している。 本来サプリメントは食事から摂取する栄養素の不 足を補うことを目的として使用されてきた。しか し,近年は乱れた食生活からくる栄養バランスの偏 りをサプリメントで補おうとする誤った利用も見受 けられる。また,幼児を対象とした研究1) において も15%もの幼児にサプリメントの利用経験があると の報告があり,低年齢化の問題も出てきている。 運動部と薬学部の大学生を対象としたサプリメン ト利用に関する研究2) では,薬学部のサプリメント 摂取群の中に「食事が全て錠剤だけだったら楽」「食 事は空腹を満たすだけのもの」と考える者がおり, 久保らの研究3) でも栄養調整食品が食事の代用にな ると考える学生が約20%,清水らの研究4) でも「食 事の栄養素の不足分はサプリメントで補える。サプ リメントは食事で栄養素を摂っていても必要であ る。」と考えるサプリメント重視群が19%もおり, 大学生の食事に対する関心の低さが懸念される。 そこで,教育系と栄養系という学部の異なる大学 生を対象に,サプリメントに対してどのような意識 を持っているのかを把握し,食生活や食に関する興 味とサプリメントの摂取についての関連性を考察す ることを目的とし,アンケート調査を行った。 Ⅱ.方法 1.アンケート調査 1)調査対象者 A県の B 大学の2回生(教育系),C 大学の2回 生(栄養系)の学生を対象とした。 2)調査時期 2012年7月∼8月 3)調査方法 無記名自己記入方式にて実施した。調査項目は (1)対象者の属性(①所属学科②性別③学年④居 住形態)(2)食生活について(①食事に対する興 味・関心について②調理の好き嫌い③朝食の欠食状 況④レトルト食品やインスタント食品の利用状況⑤ 必要エネルギー・栄養素に関する知識)(3)健康 について(①運動の頻度②自覚症状)(4)サプリ メントについて(①サプリメントの利用目的②サプ リメントに対する関心・イメージについて)であ る。サプリメントの定義は曖昧であるため,本研究 ではサプリメントを「食品の生体調節機能(3次機 能)に注目し,健康維持・病気の予防を目的として, ビタミンやミネラル(カルシウム・鉄など),機能 性成分などを添加した食品」と定義し,その旨をア ンケート用紙に記載した。また,形態で飲料・ステ ィックフード・ゼリー飲料・錠剤やカプセル状のも のと4種類に分類した。 4)分析方法 統計処理には SPSS14.0 J for Windows(エス・ ピー・エス・エス(株))を使用し,χ2 検定を行っ た。

大学生のサプリメントの摂取状況について

―― 教育系と栄養系の学生の比較 ――

開 元 多 恵

1)

・渋谷まゆみ

1)

・前 田 英 雄

2)

Study on Dietary Supplement Use of University Students : Comparative Study Between

Educational Students and Nutritional Sciences Students

Tae K

AIMOTO

, Mayumi S

HIBUYA

and Hideo M

AEDA Bull. Shikoku Univ. !35:23−27,2012

研究ノート

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5)倫理的配慮 学生に対して,本調査の目的および内容,プライ バシー保護の遵守について十分に説明を行った。ま た,調査協力は自由意志である旨を説明し,研究へ の同意を得た。 調査内容や個人情報の取り扱いについて四国大学 倫理委員会の承認を得た後,アンケート調査を実施 した。 Ⅲ.結果および考察 1.属性について 協力の得られた140名中(教育系:69名・栄養系: 71名)のうち回答に不備のない135名(教育系:67 名・栄養系:68名)(有効回答率96.4%)を調査対 象者とし,アンケート調査を行った。対象者の属性 については表1に示した。 2.食生活について 大学生が食事に対してどのような意識を持ってい るのか,食生活に関する質問に対する回答結果を表 2に示した。 『食事に対する興味・関心について』は,教育系 と栄養系の学生との間に有意差(p<0.01)が認め られたが,『調理の好き嫌いについて』は,教育系 と栄養系で差はみられなかった。 大学生の食に関する実態・意識調査報告書5) によ ると朝食を「ほとんど毎日食べる」者が約60%,「ほ とんど食べない」者が10%程度存在するとのことで あった。栄養系の学生は自宅から通っている者が過 半数を超えていることも関係すると考えられるが, 朝食をほぼ毎日食べている学生が70%を超えてい た。しかし,下宿をしている者の割合が多い教育系 の学生については朝食を「ほとんど毎日食べる」と いう者が50.7%しかおらず,「週に3回程度欠食す る」と回答した者が28.4%,「週に5回程度欠食す る」と回答した者が11.9%,「食べない」と回答し た者も9.0%おり,大学生の食に関する実態・意識 調査報告書の結果より朝食を「ほとんど食べない」 者の割合が多かった。 『レトルト食品・インスタント食品の利用頻度に ついて』は,栄養系の学生の方が利用頻度は有意に 少なく(p<0.05),『必要エネルギー・栄養素につ いて』では,栄養系の学生の方に自分がどのぐらい のエネルギーや栄養素を摂取したらいいのかを理解 している者が有意に多い(p<0.01)という結果で あった。 栄養系の学生では教育系の学生より食に関する興 味・関心が強く,自分がどのぐらいのエネルギーや 栄養素を摂ったらいいのかについて把握している者 が多かったが,アンケート実施日までに学生が受け ている栄養・食品・調理系の授業が教育系では0.5 単位相当であるのに対し,栄養系の学生では20単位 を超えており,教育効果によるものも大きいと思わ れる。 3.健康について 運動習慣については,教育系の学生で「運動クラ ブに所属している」28人(41.8%),「運動クラブに は所属していないが日常的に運動をしている」7人 (10.4%),「特に運動はしていない」32人(47.8%) であった。栄養系の学生では「運動クラブに所属し 男子 n=39 女子 n=96 合計 n=135 自宅 人 (%) 下宿 人 (%) 学生寮 人 (%) 計 人 (%) 自宅 人 (%) 下宿 人 (%) 学生寮 人 (%) 計 人 (%) 合計 人 (%) 教育系 4 (6.0) 22 (32.8) 7 (10.4) 33 (49.3) 4 (6.0) 12 (17.9) 18 (26.9) 34 (50.7) 67 (100) 栄養系 3 (4.4) 3 (4.6) 0 (0.0) 6 (8.8) 32 (47.1) 18 (26.5) 12 (17.6) 62 (91.2) 68 (100) 表1 対象者の属性 ― 24 ―

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ている」23人(33.8%),「運動クラブには所属して いないが日常的に運動をしている」10人(14.7%), 「特に運動はしていない」35人(51.5%)であり, 教育系と栄養系の学生間に差はみられなかった。 『健康に関して気になる自覚症状はあるか』とい う質問に対しては教育系の学生で「はい」と答えた 者 が23人(34.3%),「い い え」と 答 え た 者 が44名 (65.7%)であったが,栄養系の学生では「はい」 と答えた者が35人(51.5%),「いいえ」と答えた者 が33名(48.5%)と何らかの体の不調を訴える学生 の割合が栄養系で多い傾向にあった。 4.サプリメントの利用者数と使用サプリメントの 種類・使用目的について サプリメントの使用状況について表3に示した。 サプリメントの使用については,教育系の学生も栄 養系の学生も約半数が現在使用しているという結果 であり,学部の違いによる差は認められなかった。 サプリメントを「現在使用している」あるいは「過 去に使用していた」と回答した学生に使用している (使用していた)サプリメントの種類を質問し,図 1に示した。亀井ら6) が行った日本代表選手を対象 とした調査ではアミノ酸系サプリメントの摂取が最 も多く,次いで総合ビタミンという結果であった が,大学生を対象とした調査ではビタミン類を多く 利用しているという報告2),7)−10) がある。今回の研究 においても同様の傾向であり,教育系は42.0%,栄 養系は35.6%であった。続いて鉄,カルシウム,プ ロテイン,アミノ酸の順となった。鉄については運 動部や女子学生が多く使用している2) ことから,女 総数 教育系 栄養系 n=135 n=67 n=68 χ2 人(%) 人(%) 人(%) 「食事に対する興味・関心について」 強い 36(26.7) 14(20.9) 22(32.4) どちらかといえば強い 53(39.3) 25(37.3) 28(41.2) 普通 38(28.1) 21(31.3) 17(25.0) ** どちらかといえば興味がない 6 (4.4) 5 (7.5) 1 (1.5) 全然興味がない 2 (1.5) 2 (3.0) 0 (0.0) 「調理の好き嫌いについて」 好き 46(34.1) 19(28.4) 27(39.7) どちらかといえば好き 36(26.7) 20(29.9) 16(23.5) ns 普通 40(29.6) 20(29.9) 20(29.4) どちらかといえば嫌い 9 (6.7) 5 (7.5) 4 (5.9) 嫌い 4 (3.0) 3 (4.5) 1 (1.5) 「朝食について」 ほぼ毎日食べる 83(61.5) 34(50.7) 49(72.1) 週に3回程度欠食 29(21.5) 19(28.4) 10(14.7) ** 週に5回程度欠食 11 (8.1) 8(11.9) 3 (4.4) 食べない 12 (8.9) 6 (9.0) 6 (8.8) 「レトルト食品・インスタント食品の利用頻度について」 ほぼ毎日 3 (4.4) 7(10.4) 3 (4.4) 週に3回程度 13(19.1) 32(47.8) 13(19.1) 週に1回程度 32(47.1) 18(26.9) 32(47.1) * 月に2回程度 15(22.1) 5 (7.5) 15(22.1) 月に1回以下 5 (7.4) 5 (7.5) 5 (7.4) 「必要エネルギー・栄養素について」 よく知っている 8 (5.9) 3 (4.5) 5 (7.4) どちらかといえば知っている 63(46.7) 25(37.3) 38(55.9) ** あまり知らない 50(37.0) 26(38.8) 24(35.3) 全然知らない 14(10.4) 13(19.4) 1 (1.5) 表2 教育系と栄養系学生の食生活 ns : not significant, *p<0.5,**p<0. ― 25 ―

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子学生の多い栄養系の学生で多く使用していること が予想された。しかし,教育系と栄養系で差は認め られなかった。 サプリメントの使用目的を図2に示した。使用目 的で多かったものは,教育系の学生で「健康の維持 増進」26.2%,「疲労回復のため」24.6%,「不足し た栄養素を補うため」21.5%という順であった。栄 養 系 の 学 生 で は「不 足 し た 栄 養 素 を 補 う た め」 25.4%,「疲労回復のため」21.0%,「美容・ダイエ ットのため」19.4%の順であった。栄養系の学生で は自分に必要なエネルギーや栄養素を把握している 者が多いため,教育系の学生の「健康の維持増進」 という回答より「不足した栄養素を補うため」と, より具体的な目的を挙げる者が多かったのではない かと考えられた。今回は教育系と栄養系という学部 間のみの比較であったため,性別等の差異について は検討できていない。しかし,栄養系の学生には女 子学生の割合が多いため使用目的の上位に「美容・ ダイエット」という項目が挙がり,教育系の学生と の間に有意差がみられたと考えられた。 サプリメントの使用状況を形状によって分類した 結果を図3に示した。錠剤やカプセル状の明らかに 食品と異なった形態のものを摂取している者が教育 系・栄養系とも最も多く,教育系で53.8%,栄養で 34.9%であった。栄養系では①錠剤やカプセル状の もの,②飲料,③スティックバー,④ゼリー飲料と いう順番であったが,上位3つについてはほぼよく 似た割合であった。教育系では錠剤やカプセル状の ものを摂取している者が突出して多かったが,理由 については不明である。 今回の調査では,体調面での気になる自覚症状と サプリメントの利用,食生活の悩みや不安の有無と サプリメントの利用について関連性は認められず, 『食事について興味・関心は強い方だ』と回答した 者がサプリメントに対する関心も強く(p<0.01), 使用も多いという結果であった(p<0.01)。一方, 教育系の学生の約10%,栄養系の学生でも3%が「食 事がきちんととれていなくてもサプリメントを摂取 総数 教育系 栄養系 n=135 n=67 n=68 χ2 人(%)人(%)人(%) 現在使用している 67 (49.6) 33 (49.3) 34 (50.0) ns 過去に使用していた 16 (11.9) 6 (9.0) 10 (14.7) ns 使用していない 52 (38.5) 28 (41.8) 24 (35.3) ns 表3 サプリメントの摂取状況 ns : not significant 図2 サプリメントの使用目的 図3 サプリメントの使用状況と形態 図1 サプリメントの種類 ― 26 ―

(5)

すれば問題ない」と考えており,そのように回答し た学生は「食事がサプリメントで済むなら調理の手 間が省けてよい」と回答した学生と一致するなど, 食事が重要だと認識していない者もいることが示唆 された。 Ⅳ.今後の課題 今回は教育系と栄養系の学生のサプリメントの使 用状況と食生活との関連を見る程度であったが,今 後は実際の食事内容と合わせて詳細に検討する必要 があるのではと考えている。 サプリメントの摂取に関しては,バランスのよい 食事が基本であり,誤った利用により健康を害する 可能性もある。将来,教育現場や市町村,医療・福 祉施設や会社等で「食」に関する指導を行うことに なる学生はサプリメントについて正しく理解する必 要があり,教育の充実が望まれる。 Ⅴ.要約 本研究では教育系と栄養系という学部の異なる大 学生を対象にサプリメントの使用について食生活あ るいは健康に関する自覚症状などと関連性について アンケート調査を行った。 1.栄養系の学生の方が食事に関する興味・関心が 強く,朝食を欠食する者も少なかった。 2.運動習慣については教育系と栄養系の学生間に 差はなかったが,体調に関する自覚症状を訴える 者の割合は栄養系で多い傾向にあった。 3.サプリメントの使用については教育系・栄養系 の間に有意差は認められなかった。また種類につ いてもほぼ同じ傾向が見られた。 4.使用目的は,教育系の学生では①健康の維持増 進,②疲労回復のため,③不足した栄養素を補う ためという順であった。栄養系の学生では①不足 した栄養素を補うため,②疲労回復のため,③美 容・ダイエットのための順であり,異なる傾向が 見られた。 Ⅵ.謝辞 本研究を行うに当たり,アンケート調査にご協力 いただきました皆様に心より感謝いたします。 Ⅶ.文献

1)Sato Y, Yamagishi A, Hashimoto Y, Virgona N, Hoshiyama Y and Umegaki K,2009.Use of Dietary Supplements among Preschool Children in Japan. Jour-nal of NutritioJour-nal Science and Vitaminology.55:317 −325. 2)嘉山有太,稲田早苗,村木悦子,江端みどり,角田 伸代,加園恵三.2006.大学生におけるサプリメン トの利用と食行動・食態度との関連 ― 運動部学生と 薬学部学生との比較 ―,栄養学雑誌 64:173−183. 3)久保加織,尾嶋美沙紀,山本健太郎,堀越昌子.2003. 栄養調整食品の利用状況とその栄養学的意味,日本 家政学会誌 54:123−131. 4)清水るみ子,坂本曜子,西澤知子,井口伸,山岡由 美子.2007.薬学部学生を対象としたサプリメント の栄養学的な役割に関する実態調査,YAKUGAKU ZASSI127:1461−1471 5)内閣府食育推進室 2009.大学生の食に関する実 態・意識調査報告書:1−6 6)亀井明子,横田由香里,土肥美智子,小清水孝子, 松島佳子,海老久美子,辰田和佳子,上村香久子, 柳沢香絵,小松裕,川原貴.2008.日本代表選手の サプリメント使用の現状 ―20歳以上の選手と20歳未 満の選手の比較 ―,第55回日本栄養・改善学会学術 総会要旨集 66:274 7)芝木美沙子,野館由紀子,笹嶋由美.2007.大学生 の健康と生活習慣およびサプリメントの利用実態に 関する調査,北海道教育大学紀要(教育科学編)57: 255−267. 8)杉山寿美,上本久美,石永正隆.2002.女子大学生 のサプリメントの利用実態と食に関する保健行動, 日本栄養・食糧学会誌 55:97−103 9)杉山寿美,岡松久美,廣田彩.2007.非体育学部系 男子学生のサプリメントの利用実態と食に関する保 健行動,県立広島大学人間文化学部紀要 2:83− 93 10)加藤恵子,三浦英雄,藤田公和.2004.女子短大生 (栄養士専攻)の栄養補助食品(サプリメント)利 用と栄養・食物摂取状況について,名古屋文理短期 大学紀要 28:31−37. 1)四国大学 生活科学部 管理栄養士養成課程 2)鳴門教育大学大学院 学校教育研究科 ― 27 ―

参照

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