大脳 劣位
半
球損傷 者
の
行動
チ
ェ ック リ
ス
ト
の
開
発
:右
利 き
左片
マヒ
者
の行
動
の構
造
佐
々木
和 義
’
,久保義 郎
2串 ,中井敏 子
21,坂 本久恵
2寧,佐野 玲子
2 辱,下
田正 代
2’零
神戸市看護 大学,
2」
神奈 川 リハ
ビ リ テー
シ ョ ン病 院 心 理 科Development
ofthe
Checklist
ofthe
Behavior
ofRight
Hemisphere
Damaged
−patient
:Structures
ofBehavior
ofRigh
レhanded
Patient
Kazuyoshi
SAsAKI
’
,
Yoshio
KuBo2
喀
,
Toshiko
NAKAI2
’
,
Hisae
SAKAMoTo2
拿
,Reiko
SANo2 噸
,
Masayo
SHIMODAz
’
゜
Kobe
City
College
ofNursing,
!’
Kanagawa
RehabMtation
Hospita1
Abstraet
The purpose of this study was to develop and validatc a checklist
for
righthemisphere
damaged
patients,
then to know structures of their behaviQrs
.
First
,
lots()f episodesin
theirdaily
life were collectedfrorn
rehabilitation staffs (Nurse,
PT,
OT,
ST,
SW,
Clinical Psy
.
et al.
)by indiv工duahnterviews.
The episodes were translated to 147 items,
then discussed to modify their expresslons and tQ de上ete items which were spesific to particular patients or situations.
Thus 78items were obtained
.
Theseiterns
were rated according to validity with four points scales (Inadequate(1)−
Adequate (4))by rehabilitation staffs individually;32 items were selected
.
FinaUy
、
the 32 items remaining Qn the checkllst werc checked for right hemishere damaged patienしs with sixpQints scales (Inadequate(1)
− Adequate
(6
))by
rehabilitation staffsindividually
.
As
a result,
rQurfactors
were obtained :rough and ready manner,
generosity,
taking things easy,
difficulty of self−
reflection.
Key words : right hemisphere damage (大 脳 右 半 球 損傷)
,
left hemiplegia (左片マ ヒ)、
behavior checklist (行 動チェ
ッ ク リス ト),
situationaljudgement
(状 況 判 断 ) は じ め に 右手利きの大 脳 劣 位半球 損 傷者 (右 利 き左片マ ヒ者) は,
言 語機能には問題が な く, 知 的能力が健常 範囲に あっ て も,
図形の認知障害の外に,
様々な高次機能 障 害が指 摘 されて いる。 例え ば,
注 意 障 害 1−
S 〕,
速いが 粗 雑な行 動 特 徴,
系 統 性の欠 如と臨機 応 変の困ee1
),
疾 病 観 念の悪さ2),
社会 的状況判断の不良さ5・
8・
9 )な ど で あ る。 この ため, 大脳劣位半球 損傷 者 (右利き 左 片マ ヒ者 )は,
利き手に支 障が な く,
言 語 障 害がない にもか かわ らず,
社会復帰に支 障が多く,
在宅無 為な 生活を余儀なく されて いる場合が 多い。 しか し,
大 脳 劣 位 半 球 損 傷 者 (右 利き左 片マ ヒ者 ) の行動 特 徴,
病 態 認識の不良さ, 社 会的状況判断の不 良にっ い て は,
逸話 的 報 告のみで,
定 量 的に把 握され て いない。 した がっ て,
問 題 点を定 量 的に把 握で きな いば か りで な く, 何 ら かの改善プ ロ グラム を実施して も,
そ の効果を客観的に検討すること がで きない。 佐々 木9 >は,WAIS
のVIQ
が84
〜112
と健 常だが,
絵 画 配 列 の評価点が 1〜 6
で, 状 況判断の不良な4 名の大脳劣 位半球 損傷者 (右利き左マ ヒ者)に対して,
状況判断 の改 善を目的と して,
認知行 動療法に よ る4
コ マ漫 画 の配列 訓 練を行っ た。
彼ら の状 況 判 断の不良さは,
例 えば,
屋 内歩行を開始し たばかりで未だ不安 定な時期 には,
理 由 を 説 明 さ れて病 棟 内 歩 行は制 限 されていて も,
実 際場面で は守ること がで き な かっ た り, 些 細な76 神 戸市 看護大学紀 要 Vol
.
3
,1999
理 由で面 接 時 間に大 幅に遅れ る な どであ る。 こ の時, 話し合っ て も,
枝 葉 末 節 的な理 由 を あげて納得し ない。
配列 訓練の結果, 配列課 題におい ては,
各コ マ を多 角 的に判 断で き るようになり,
未 訓練の課 題にも般化し た。 し か し,WAIS
の因 子 分 析の結 果,
配 列 課題と状 況 判断との関連性は指摘されているがS},
日常 生 活 内 で の状 況 判 断に関して は,
改 善が み ら れ た か否かを 客 観 的に測 定 する尺 度は存 在し な か っ た。 さらに,
注意 障害,
速い が粗雑な行動特 微, 系統 性 の欠 如,
臨 機 応 変の困 難,
疾 病 観 念の悪 さ,
社会 的状 況判断の不 良 さ な どの行 動 特 徴 との関連 も不 明である。 本 研究の 目的は,
左 片マ ヒ者の行動の構 造を明らか に し,
かっ そ れを 定 量 的に記 述で きる妥 当 性のあ る行 動チェ ッ ク リス トを開発す るのが 目的である。
調 査1
[目的] 大脳劣 位半球 損傷 者 (右利き左マ ヒ者 )の行 動 特徴を表わす項 目を収集すること を 目 的 と した。
[方 法ユ 調 査 対 象者 :神 奈川リハ ビリテー
シ ョ ンセ ン ター
の看護婦, 理学 療法士, 作 業 療 法 士,
ケー
ス ワー
カー,
職 業 指 導 員,
体育 科指導 員,
心理士 (共 著者を 除く), および 肢 体 不 自 由者 更 生 施 設の指 導 員 (以 降,
リハ 関 連職 種)各々5
名で,
業 務 を通 して大 脳 劣 位 半 球 損 傷 者 (右 利 き左マ ヒ者 )を熟 知して い る者を調 査 対 象とし た。 手 続 き :平 成9
年10
月か ら平 成10
年1
月に か け て,
共著者が 手 分 け して,
個 別 面 接 を して,
大脳劣位半 球 損 傷者 (右利き左マ ヒ者)の行 動特 微を表わ し ている と思 わ れるエ ピソー
ドを多数 収集し た。 教 示は,
「自 分の知っ て い る左マ ヒの患者さ ん達 を 思い浮 かべ て く だ さい。 その人たちに,
ちぐはぐだ な と か, 場面にふ さ わ し く ないな と か,
何か変だ な と か,
違 和感を感じ るエ ピソー
ドを教えて くだ さ い。 ど んなエ ピ ソー
ドで もい い し, い くっ でもい い ですか ら,
思い浮か ん だ通 りに教えて ください」で あっ た。
得 られ た すべ ての エ ピソー
ドか ら著 者 が 可 能な限 り行 動 特 徴を表わす行 動 や特性の項 目を作 成し た。 次に,
平成10
年3
月に共著 者で検 討を加え,
〔1
)重複 し た項 目 を 整 理 し,
(2
灘 しい表 現 を 修 正 し,
〔3
}多 義 的 な項 目を修
正・削
除し, (4
陽 面を想 定できない項 目を 削 除し, 〔5
特定の患者群や特 定の場 面に特 異 的な項 目 を削除した。 [結果 ]収集 したエ ピ ソー
ドか ら147項 目を作 成した。 検討によっ て78
項 目が 得られた (Table l)。 削 除さ れ た項 目の例は, 「決め た量が終わ ると未だ 時 間が残っ てい る の に帰っ て しま う」,
「質 問と は関 係 なく,
自分の話を する」,
「指示の ある前に やっ て しま う」,
「客 観 的には無理で も,
今す ぐ働け る とい う」,
「危 険 をか えりみ ない」,
「同じ説明を何度もする が な かなか納 得しない」,
「車の運 転にっ いて強い固 執があ る」,
「介 護 やケアー
を頑なに拒 否 す る」な どであっ
た。 [考 察 ] 様々 の職 種か ら個 別に収 集 した の で,
得 られ たエ ピ ソー
ドは大脳劣 位半球損 傷 者 (右利き左マ ヒ者) の リハ ビ リテー
シ ョ ン病 院 お よ び肢 体 不 自由者更 生 施 設での 種々の 訓練と生 活 全般での 行 動 を 代 表 してい る と考えられ る。 その エ ピソー
ドか ら収 集 者と は独 立 して項 目化し たの で, 作成された147項 目も やは り行 動を代 表してい る と考え ら れ る。 修 正 削 除さ れ て残っ た78
項 目は,
共 著 者の間で は,
男女,
年齢,
在宅 ・収 容を問わ ず に適 用できると考え ら れ た が,
その妥 当性を さ らに多 くの リハ 関連職 種で 確 認 する必 要 が あると判 断 さ れる。 調 査2
[目的]調査1
で得ら れ た78
項 目の妥 当性を検討する こ と を目的と し た。 [方 法 ] 調査対象 者:神奈 川 リハ ビ リ テー
シ ョ ンセ ン ター
の リハ 関 連 職 種32名 (男 性13名,
女 性19名 )を調 査 対 象者と し た。 調査対 象 者の 平 均 年 齢は37.
8
歳 (SD=
8.
83)であり,
大 脳 劣 位 半 球 損 傷者 (右利き 左 マ ヒ者)に対する平 均 経 験 年 数はIL5
年 (SD
− 7.
13
) であっ た。 手続き :平成 10年5
月から6
月にかけて,78
項 目を ランダムに配列した調査用紙を調査 対 象 者に手 渡 し,
各 項 目が 大脳劣 位 半 球 損 傷 者 (右 利 き左マ ヒ者 )一
般 の特徴を どの程度よ く表し ている かを,
「よ く表 して いない(1
),
あ ま りよく表して いない{2
),
か な りよ く表 して いる(3
), よ く表し てい る(4
)」の4
段階で独 立に評 定を求め た。 調 査 用 紙は共 著 者が個 別に回収し た が,
フ ェ イス シー
ト には,
職 種と年 齢 と男 女のみの記 入を 求め た。デ
ー
タ処理 :各項目毎
に平均
評定 値とSD
を求め た。
そ の結 果はTable1
に示 し た。
そ して,
平 均 評 定 値が 小数点以下第2
位で 四捨五 入 して,3
,
0
未満の項 目を 外大 脳 劣 位半 球 損 傷 者の行 動チ
ェ
ッ ク リス ト の開 発 77 Table 1 調査2
(78項 目) に お け る平均 値 とSD Na 項 目 平 均 値 SD 12345678910n121314151617181920212223242526272829303132333435363738394041424344454647484950515253 鼠 555657585960616263646566676869707172737475767778 示され た 手 順 と は 違っ
た手 順で行 う。
周 囲の人に気 を使わ な い。 断 らずに部 屋 な どに入っ
た り,
黙っ
て席を立っ
たりする。
些細なことで怒る。 身体の ことをいろいろ言 うわりに無 頓着で あ る。
深刻 味がな い。
不 注意で あ る。
金 銭 面で計 画 性 がない。
手順の修正 を求め ら れ て も応じない。
周囲の人の反 応が気にな らない。 説 明を聞い て 「分かっ
た」 と言っ
ても,
何 度 も同 じこと を尋 ね る。
細 部に過度に こだわ る。
自分の身 体 状 況で は無 理なこと でも,
で き る と思っ
て い る。
でき ない と道具や人の せいにする。
早 く終 わ らせることに気がいく。
他の人に対して,
「迷 惑 を か けて」 と か,
「あ りがと う」 とい う言 葉が ない。
勧められ た解 決 策を聞 き入れ な い。 自分のペー
スで やっ
てしま う。
聞きもしない こと まで喋る。 動 作を行う と きに目的だけに 目が いき,
手順 を意識できな い。
介助して も らっ
たの に自分で できたと思っ
てい る。
問題解決の方 向に気持ち が向かない。
せっ
か ちである。
結 果 を考 え ずに行動し て い る よ う に み え る。
相 手の意 見 が 聞 け ない。
どこまで やるかを決めたら時間が来ても止 め ない。 頼 ま れ たことが 終 わっ
て も終わっ
た と言わな い。
一
っ の ことに こだわ る。
無 理 なことでも,
で き ると思っ
てやっ
て しまう。
具体 的な目標設定が で きない。
話 を 十 分に聞か な い う ち に やって し ま う。
危 ないと 言 わ れても,
だい じょうぶと思っ
て,
やっ
て しま う。
思い込み が激し い。 決 め た量 が終わ る と未だ時間 が残っ
ているの に止め てしまう。
や る ことがお お ま かで雑である。
気 になる と 何度もやりた が る。
あ た かもちゃん と やれているかの ような ふ り をする。
現 実 的な方 法を検討できな い。
必要な場 合でもメモを と ら ない。
身なりに気を使わな い。
頑 固であ るe す ぐに人 を呼んで解 決 して も らお う と す る。
物 事の処理が大雑把である。
機能回復へ の期待が過 剰に強い。
薬等の自己管理 は できて い る と答え るが,
実 際は できていない。
所 定の時 間 よ り もか なり早 く来たり,
か なり遅 く来る。
的をし ぼった メ モ が と れない。
身 だ しな み が だ ら しない。
不 適 切な こと を指 摘 すると気 がつ くが,
何 度 も繰り返 す。
解決でき ない時に問題点が絞れ ない。
物の操作が 雑であ る。
「身体さ え冶れ ば」と い う よ うな発 言 が ある。
自分のマ イナス面の評 価は取 り入れ な い。
定め ら れ た時間に遅れ る。
気に なること がある と,
すべ きこ と が お ろ そ か に な る。
周 囲の こと は よ くみて批判す るが,
自分のことは省みない。 注意されて も同じよ うにやってし ま う。
場 に そ ぐわな い話 を す る。
自分よ り も下 だ と思 う 人 を 見 下 すような発 言をする。
訓練を や ればや る ほ ど回復すると思い込ん でいる。
気 分の ムラ が大 きい。
他の人が時 間に遅れるとう る さい。
人の話 を 自 分 勝 手 に 解 釈 す る。
結 果完了の み に目が い き,
手順を 意識でき ない。
一
度こうと思っ
た ら修 正できない。
自分が話したい こと を・
一
方 的に話 しか け る。
思っ
た通 りに事がす すまないと,
すぐ に不 機 嫌になる。
訓 練 に過 剰に意 欲的で あ る。
何か につ け て楽観的である。
す ぐ他のもの に注意が いく。
人の話を ちゃんと聞い て いない。
準 備 や片付け を自分でや りた が らない。 同じこと を しょっちゅう尋 ね る。
思っ
た通りに事が進 まないと,
す ぐにやる気を なくしてしま う。 身 体 機 能 面の改 善に固 執 する。
妙に陽気である。
注 意の集 中が持 続 しな い。
お金 を考えずに欲 しい もの を次々 と買っ
てし ま う。
鑑
擺
弸
嬲
鑑
號
鶸
嬲
號
嬲
鵬謝
驪
瑠
嬲
驪
粥
端
鰯驪
識
鵬嬲
諧
鰯嬲
謝
嬲
號
携
嬲
躙瑞
躙嬲
嬲
甥
躍瓣
鋤
嬲
鬻
朧
讎
頴
腰
嬲
攜
喞朧
旛
躔
躍
鵠
躑
膿
驪
嬲
… …講
溜
聯 …擺
騰
驪
鵬
鴇
嬲
嬲
職
脇
… …朧
…嬲
嬲
…驪
幡朧
78
神戸市 看護 大学紀 要 Vol,3
,1999
し た。 基 準と し て3.
0
を採用 し たの は, 評 定 尺 度の 「か なりよく表して い る」の評定値が3.
0
で あ る か ら で あっ た。 さ らにSD
は1.
0
を越す項目が削 除の目安とし た。1.
0
を目安と したの は,
3
.
0
か ら1.
0
を 引 くと,
「あ ま りよく表わ して い な い」の2.
0
に な る からである。 [結果] 平均評定 値は1.
94
か ら3.
53
で あっ た。SD
はO.
56
か ら1.
05
であっ た。 平均評 定値が2.
5
以 下の項 目は15
項 目で あっ た。 平均評定 値による基準に より,46
項 目が削除 され,35
項目が残っ た。 この う ち,SD
が1,
0
以 上 だっ たのは,
項 目41
「頑 固で ある」,
項目48
「身 だ し な み が だ ら しない」,
項 目52 「『身 体さ え治れ ば』 とい う よ うな発言が ある」の3
項 目であ り,
これ を 削 除 して32
項 目が 残っ た。 [考察]32
項 目は削 除 基 準に より妥当性が あ る と判断 さ れ る。 削 除さ れ た項目を み る と,
項 目17,22,
42は 問題解決を自ら しよ う と しな かっ た り,
す ぐに他人 を 頼っ た り, ア ドバ イスを聞か なかっ た り とい う問題解 決 場 面で の対処の問題であ る。 ま た, 項 目15,2a
27
,34
,54
,72,
74は,
作 業と か仕 事な どの具 体 的な課題 場 面での不適 切 な行 動である。
これ らの行 動 は,
場 面 が限定さ れ る項 目で あり, そのた め に評定値が低 くなっ た と考え られる。 調 査3
[目的]調 査2
で妥 当と判 断 され た32
項 目か らな る チェ ッ ク リス トを個々 の大脳 劣位半球 損傷者 (右 利 き左マ ヒ 者)につ い て行い,
彼らの行動 特徴の構 造を検討する ことを 目的 と した。 [方 法]調査 対象者 :神 奈 川 リハ ビ リテー
ショ ン セ ン ター
の リハ 関連 職種36
名 (男 性22
名 , 女 性14
名 ) を調 査 対 象 者 と した。 調査対 象者の 平 均 年 齢は34.
0
歳 (SD =626
)で あっ たD 手続 き:平成10
年9
月か ら10
月にか けて,
項 目 をラ ン ダムに配 列し た調査用紙を調 査対象 者に手 渡し,
受 け持ちの個々の大 脳 劣位半 球 損傷者 (右利き左マ ヒ者) にっ いて各項 目 が どの程 度 あてはまる か を, 「あて は ま らない(D
〜 あて はまる(6
)」の6
段階で独立に評定を 求め た。 教示は, 「この行 動チェ ッ ク リス トには,
様々 な行 動や特 性を記 述し た文 章が た く さ ん書い てあ り ま す。1
つ1
つ の文 章につ いて,
ある特 定の左 片 麻 痺 (右手 利きの劣位 半球損傷) 患者さ ん にどの 程度あて はまるか を判 断して ください。
他の人と相 談せず,
あ な た ひ とりで記 入して くだ さい。」で あっ た。 フ ェ イ ス シー
トに は,
調 査 対 象 者の職 種と,
年齢と, 男女別 のみの記 入 を求め,
大脳劣位半 球損傷 者 (男性27
名,
女 性19
名)につ い て は生年 月日と男女別のみの記 入 を 求 め た。
調 査 用 紙 は共 著 者 が 個 別に回収したデ
ー
タ処理 :主 成 分分析 を 経て,
主 因 子法バ リマ ッ クス回転によ る因子分析を行っ た。 [結 果]固有値,
累積寄 与率落差, 累積寄与 率か ら4
因 子解が最 適 解 と判 断 され た。 その結 果30
項 目が残っ た。 因子 分析の結果はTable2
に示 した。 項 目番 号 は 調査2
と同一
であ る。 こ の段階で落ち た項 目は,
項 目19
「聞 き も しな い こ とまで喋る」と項 目46
「所 定の時 間よ りもかな り早 く来た り,
か な り遅 く くる」の2
項 目であっ た。 複数の因 子に対して0
.
400
以 上の因 子負 荷 量がある項 目は,
項 目64
, 項目31
, 項目57
, 項 目24
, 項 目32
の5
項 目であっ た。 [考 察]第1
因 子に負 荷量の高い項 目は, 上位か ら 「71.
人の話 を 聞いていない」,
「63.
人の話を自分勝 手に解 釈す る 」,
「70.
す ぐ他の もの に注 意がい く」,
「33.
思い込み が激し い」, 「66.
自分が話し たい こ と を一
方 的に話し か け る」,
「65.一
度こ う と思っ た ら修 正で き ない」であっ た。
他の項 目 も考慮する と,
自分 自身の思 考プロ セスへ のモ ニ タ リングや注 意の問題 思 考の柔 軟 性の問 題 状況へ の客 観的判 断の問 題 と考 え られ る。
した がっ て,
「思い込み因子」と名づけた。 第2
因子に負荷量の高い項 目は,
上 位か ら 「35.
や ること が お お ま かで雑であ る」, 「51.
物の操 作が雑で あ る」,
「43
.
物 事の処理が大雑把である」, 「49.
不適 切なこと を指 摘すると気がつ くが,
何 度 も繰 り返す」,
「5Z
注意されて も同じ ようにやっ て し ま う」であっ た。 他の項 目 も考慮す ると,
事物や手 順へ の注 意の不 十 分さの問題, 細部へ の配 慮の不 十 分さの問題と考え られる。 したがっ て,
「お お まか さ因 子 」 と名づけた。 第3
因 子に負荷量の高い項 目は, 上位か ら 「29,
無 理 なことで も,
で きると 思っ てやっ て し ま う 」 「31.
話を十分に聞か ない う ちにやっ てし ま う」「13.
自分 の 身体状況で は無理なことで も,
で きる と思っ てやっ て しま う」,
「結果を考えずに行動している よ うにみ え る」,
「23,
せ っ か ちで あ る」であっ た。 これ らの項 目 に共 通 するの は状況をよ く考えない面と,
それに加 え て行動してしま う傾向と を併 せ 持っ問題 と考えられ る。 した がっ て,
「安 易な行動化因子」と名づ けた。 第4
因 子に負 荷 量の高い項目は上位か ら 「6 .
深刻大脳 劣位半 球損傷 者の行動チェ ッ ク リス ト の開 発 79 Tab且e 2 劣位半 球損傷 者の行動チェ ッ ク リス トの因 子分析結果 (有 効サ ンプル 数
=
36) 質 問 項 目 1 抽 出 因 子 H 皿 共 通 性 第1因 子 :思い こみ (1
ア項 目) 71 人の話を ちゃん と聞い て い な い。 63 人の話 を自分 勝 手に解 釈 する。
7G す ぐ他の もの に注 意が いく。
33 思 い 込 み が激しい。
66 自分 が 話 したい ことを一
方 的に話 しか け る。
65 度こ う と思っ た ら修正 できな い。 55 気になることが あると,
すべ きことが おろ そ かにな る。 64 結 果 完 了のみに 目がいき,
手 順を意 識で きない。
2G 動 作を行う と き に目 的だ け に目が い き,
手1順を意識で き な い。 77 注意の集中が持続し な い。
38
現実的 な方法 を 検 討でき ない。31
話 を十 分に聞か ないう ちにやっ て しま う。
28一
つ の こ と に こだ わ る。 57 注 意 されて も同 じよ うにやって し ま う。
7 不 注 意である。
58 場にそ ぐわ ない話をする。
24 結果を考え ずに行動 してい るよ うにみ え る。
.
195.
100.
179.
196.
212.
137.
326.
238− .
256.
178.
235.
148.
147− .
028
.
206.
068.
251,
375,
273.
150− .
065
、
459.
079.
082.
355.
374.
226.
360.
371.
064,
285.
300
.
390
.
461.
165− .
248,
060
.
358
,
235
.
602,
133、
198.
381.
338.
301.
302
.
223
.
318
− .
003
.
473
.
445 43429886166160932 40993288694036628 87755645656646545 第2因 子 :大ま か さ (10項 目) 35 や る ことが お お まかで雑である。
51 物の操 作が雑であ る。
43 物事の処理 が大雑把であ る。 49 不 適 切 なことを 指 摘 すると気 がつ くが,
何 度 も繰 り返 す。
50 解 決できない時に問 題 点が絞れ ない。
57 注 意さ れ て も同じ よ う に やって し ま う。 31 話を十 分に聞かないうちに やっ てしま う。64
結 果 完 了のみに目がいき,
手 順を意 識できない。 18 自分のペー
ス で やっ て しま う。
32
危ないと言わ れても, だい じょ うぶと思って,
やっ て しまう。.
278
.
131,
170.
221
.
219,
492.
547
.
602.
223.
151.
126.
197.
191.
178.
296.
090
.
152− .
017
.
196.
242.
133.
198.
165− .
248.
079.
082.
378
.
215
.
761,
017.
898.
827.
597.
543.
547.
660
.
601.
586.
407
.
763 第3
因 子 :安 易 な 行 動 化 (5項 目) 29 無 理なことで も,
でき ると思っ てや って し ま う。 32 危ないと言わ れても,
だい じょ うぶ と思って,
やっ て しま う。
13
自分の身体 状況では無 理 なことでも, でき る と思っ てい る。
24 結 果 を考 え ずに行 動 しているように み え る。 23 せっ か ち で あ る。.
092、
332.
151
.
402.
070
.
265
.
401− .
003.
354.
071
.
859,
761
.
554
.
473.
434
一,
204
.
017.
203.
445.
048
.
898
,
763.
424.
582.
321
第4因 子 ;内 省 力の低 さ (4項 目) 6 深刻味が ない。 5 身 体の ことをいろいろ言 う わ りに無 頓 着であ る。
56 周 囲の こと は よくみて批 判 する が,
自分の こと は省み な い。 24 結果を考えずに行動し て い る よ う に み え る。
一 〇35
.
232
.
319.
401.
210
.
093
,
222− .
003
一.
085
.
125.
267.
473
,
872
.
758.
544.
445
,
813.
653.
519.
582
因子 負荷量2
乗 和 寄与率 (%) 累積寄 与率 (%)82340
.
640.
6
6,
097.
548.
1 4,
526.
554
.
63.
494
.
859
.
414.
52
80
神 戸 市 看 護 大 学 紀 要Vol.3,1999
味がない」, 「5 .
身体の ことをい ろいろ言うわりに無 頓 着である」,
「56.
周囲の ことは よくみて批判する が,
自分の ことは省みない」であ り, 自分 自身の こと を深 刻に受け止めて いない とい う問題点と考え ら れ る。 し た がっ て,
「内 省 力の低 さ因 子 」 と名 付 け た。
得ら れ た4
因子はいずれも種々 の注 意障害1−
6)に関 連 して いたり,
広 く考え る と状 況 判 断の問 題と捕ら え るこ と も可能で あろ う。 しか し,
「思い込み 」,
「お お まかさ 」,
「安 易な行 動化」,
「内省 力の低さ」の4
因子 は,
速いが粗 雑な行動特徴と か,
系統 性の欠如と臨機 応 変の困eeT
) と か,
疾 病観念の悪さ2 )と か , 社 会的 状 況 判 断の不 良さ5・
s・
9 )な ど と,
渾 然と逸 話 的に記 述 さ れ てきた り,
あるいは恣 意 的に カテゴ リー
化さ れ て きた問題を, より構 造的に把握 する材 料を提 供して い る。 これに よっ て,
問題 点の把握がよ り客 観 的になり,
リハ ビリテー
シ ョ ン訓練 を計画 する上でも観点が よ り 明 確と な り,
効 果の判 定 も可 能にな る と考え ら れ る。 たとえば,
第1
因 子の 「思い込み 」因 子に関して は, 自分の思考プロ セ スをモ ニ タリングする訓 練 や,
状 況 を複 数の角 度か ら判 断 する訓 練などが考えられよう。
4
コマ 漫画の配列訓 練9〕は そ の一
例と思わ れ る。 第2
因 子の 「お お ま か さ」 因 子に関 して は,
事 物 や 細 部 や 手順へ の注 意の訓 練が考え ら れ よ う。 半側空 間 無視患 者に対する自 己教示 訓 練3・
4 )は その一
例と思 わ れる。 第3
因子の 「安易な行動 化」因子に関して は, 行動の 直前に止まっ て考え る訓練が考え ら れ よ う。 総 合 考 察 調 査1
で は,
リハ ビ リテー
シ ョ ン専 門 病 院にお ける 種々 の職種か ら大脳 劣位半 球損傷 者 (右利き左マ ヒ者) の エ ピソー
ドを集め ること がで きた。
すなわち,
身 体 的リハ ビリ テー
シ ョ ンの訓 練担 当者, 職業 的リハ ビリ テー
シ ョ ンの訓練担 当,
心 理的側面を把握する職種,
社 会 的 側 面 を 把 握 す る職 種,
生 活 場 面での行 動 を観 察 できる職種か ら広く収集で き たので, 対象者の行動を 様々な角度か ら把握し,
かつ 網羅で きたもの と思わ れ る。 その範 囲の エ ピソー
ドか ら作 られ た147
項 目 も対 象者の行動 特徴を網 羅してい ると考え ら れ る。 多義 的な項 目や,
場面を想定で き ない項 目,
特異 的 な項 目,
難 しい表 現などの基 準に従っ て,
共 著 者の討 議によっ て選ば れ た78
項目は妥 当性の あ る項目と考え る ことが できる。 しか し, 行動チェ ッ ク リス トは,
最 終的に は様々 な職種や家族もっ ける こと を想 定 して い るので, 様々 な職種か ら妥当と見なされる項 目を採用 す る必要が あっ た。 調 査2
で は,78
項 目各々 にっ い て,
特 定の 大 脳 劣 位 半球損 傷者 (右利き左マ ヒ者)で は な く,一
般像を想 定 して もらい,
妥 当性の評 定を求め た。 そ の結 果 様々 の 角度か ら検討し た評定 値が得ら れ た。 今回採用 し た 選定基 準で あ る評定値3
,
0
(「か な りよく表してい る 」) とSD =
1.
0
と は妥 当な基 準 と考 え られる。
こ の 2っ の 基準を満た し た32
項 目が評定用の妥 当性の あ る項目と 考え られ る。 調 査3
で は,32
項 目を個別 の大脳劣 位 半 球損 傷 者 (右利き左マ ヒ者)に対して評定し,
因 子分 析を 行 っ た。 そ の結 果4因子構造が え られた が,5
項 目は複数 の因子に因子負荷量が高く,
この5
項 目は削除して再 度因 子分 析を行うのが望 ま しい。 しか し,
今 回の調 査 で は対 象と し た大 脳劣位 半球損 傷者 (右利き左マ ヒ者) の 数が少な か っ たの で,
因子分 析の結果は参考と すべ きで あ る。 今 後 対 象 者 数 を 増 や して,
再度 因子分 析を 行っ て,
最 終 的 な項 目を決定 し て, チェ ッ ク リス トを 完成 する方針であ る。 最 終 的 な 因子 分析の結果は対象 者数の増 加を待たな け れ ば な ら ないが,
今 回の結 果か ら,
大 脳 劣 位 半 球 損 傷 者 (右 利 き左マ ヒ者 )の行 動は1
因子 構 造で はな く,
複数の因子構造を持っ ことが示 唆される。 ま た, 今回 得ら れ た因 子は か なり意味の あるもの であり,
従 来 ま で逸 話 的な特 徴 報 告に対して構 造 を 提 示 しており,
そ れ ぞ れの因子に対応した訓練を考え ることが可能であ る。 その意味で も,
対 象者数を増や し た因 子分析的検 討が望ま れ, 各 因子得点と種々 の変数の関連を検 討す る意味が あ る と考え ら れ る。 文 献 1) 福井 圀彦:失 行・
失認,
総合リハ,
10:163−
171(1982).
2) 宮 森 孝 司,
福 井圀彦, 河 内十 郎 :左 半側空間失認一
その 行動特 徴とリハ ビリ テー
シ ョ ンの可能性につ いて一,
聴 覚言語障害,
7:7−
17(1978).
3) 佐々木 和 義 ;半 側 空 間 無 視 患 者に対 す る 自 己教 示 訓 練の 試み,
日本 行 動 療 法 学 会 第15回 大 会 発 表 論 文 集,
54−
55 (1989).
4) 佐々木 和 義 :半 側 空 間 無 視 患 者に対 する自 己教 示 訓 練の有 効 性