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真珠づくりへの挑戦 ~ビーカー内で真珠は出来るのか~(PDF:472KB)

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Academic year: 2021

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県科学作品展 千葉県教育長賞

真珠づくりへの挑戦 ~ビーカー内で真珠は出来るのか~

千葉市立稲毛高等学校附属中学校 3年 世古 瑞紀 1 研究の動機 私は、美しい伊勢志摩の海ではなく、自分の家で真珠を作ってみようと思った。アコヤ貝が1年半 をかけて作る真珠も、真珠の出来るしくみを考えて、工夫すれば真珠を家で作れると思った。真珠を 作るには、何か思いがけない秘密があり、失敗をしても、真珠のできる仕組みを忠実に実現していけ ば、いつか或る日美しい真珠の輝きを手にすることができると思い、研究を始めた。試行錯誤の連続 であったが、あきらめずに挑戦した。 2 研究方法と内容と結果 次の 9 点について調べた。①文献から、真珠層の構造と真珠のでき方を調べた。また、本真珠の生 成確認方法を考えた。②最初に、石灰水だけで、炭酸カルシウムの結晶がどのように出来るかを探っ た。③石灰水とかつおだしで真珠づくりに挑戦した。④再度真珠層ができる仕組みを考え直してみた。 グルコサミンを少量加えて、実験③と同様に実験した。⑤水酸化カルシウムの溶解度を調べるために、 液温とpHを測定した。また、24 時間継続して、石灰水のpHを計測した。⑥ホットプレートで溶液 を保温して、約 40℃程度に温度を上げて、炭酸カルシウムの結晶のでき方を調べる実験をした。⑦「M g-オオカナダモ電池」を用いて、炭酸カルシウムの結晶のでき方を調べた。⑧木工用接着剤(酢酸ビ ニル:CH2=CHOCOCH3)を接着剤にすることを考えた。⑨真珠パウダーを手に入れ、真珠を試作した。 3 研究の成果とまとめ 特に重要な結果は次の2点である。①真珠をつくるには、CaCO3(炭酸カルシウム)をつくる Ca(OH)2:(石灰水)と空気中の CO2、タンパク質としてのコンキオリンの3つの原料が必要である。また、 真珠層をつくるのには、たんぱく質のコンキオリンのシートの上に、六角板状の炭酸カルシウム(アラ ゴナイト)がうすく平面上に並び、その層が積み重なって、真珠光沢を生み出す。また、本当に真珠層 ができたかどうかを確認するには、真珠の表面にブラックライトの紫外線を当て、明るい水色の蛍光 を示すかどうかを調べればよい。②今回の実験のテーマである「ビーカー内で真珠は出来るのか」の 最終的な結果は、現段階では「出来ない」である。ただ、真珠層を作る最初の段階であるアラゴナイ ト結晶を薄く作ることは可能である。次の図は、真珠層の構造を示したものである。 (図 1)簡単な真珠層の断面の構造 真 珠 層 貝 殻 層 炭酸カルシウム (アラゴナイト結晶) 隙間を コンキオリン (タンパク質)が 埋める (カルサイト結晶)

(2)

(図 2)コンキオリンのシート上に並ぶ炭酸カルシウム(アラゴナイト)の六角板状構造 また、次のグラフは、実験 5 で 24 時間石灰水に空気を送りpHを測定したデータである。 急激なpH変化が、中和滴定曲線のグラフと同様になっている。 4 今後の課題 今回の実験のテーマである「ビーカー内で真珠は出来るのか」の結論は、今の段階では「出来な い」である。ただ、真珠層を作る最初の段階であるアラゴナイト結晶を極薄く作ることは可能であ る。そこから先のアコヤ貝が行う何千層に及ぶ真珠層づくりは、現在のところ出来ていない。本研 究の今後の課題は以下の3点が考えられる。 コンキオリンのシート

Ca

2+

CO

(3)

32-① 飽和石灰水に二酸化炭素を通して、炭酸カルシウムを作り出すが、過剰に二酸化炭素を通すと 透明な炭酸水素カルシウム水溶液になる。常に一定のカルシウムイオンと炭酸イオンが存在する ようにすることが、非常に難しい。このことで研究では迷いを生じた。様々な実験から真珠層を 形成させるには、いかに六角板状のアラゴナイト結晶を平面的にきれいに並べるかだとわかった。 このことを実現できない限り、真珠光沢を生み出せない。今後、アラゴナイト結晶膜をどうした ら積層させられるかを探っていきたい。また、炭酸カルシウムができる温度やpHの条件につい ても、さらに詳しく調べる必要がある。 ② 透明なガラス球に、特殊な溶液を塗って乾かして、見た目本真珠と変わらないピンク色の真珠 光沢を作り出す技術は、すでに開発され、製品化されている。実験⑧や実験⑨で行ったように、 真珠成分に近い溶液と接着成分(酢酸ビニル)を塗って、乾かすというのを繰り返すという方法を 考えて実験した。かなり本真珠に近いものを作り出せた。誰でも簡単に、均一に出来るので、こ の方法は良いと思う。さらに、改良を加えて本真珠に近い光沢が出るようにしたい。 ③ 今回、真珠づくりには失敗したが、絶対に出来ない、不可能だとは断言はできない。アラゴナ イト結晶を作るには、pH=9.0 程度に維持することが重要である。引き続き研究を進めて、誰 でも簡単に真珠が作れるという方法を見つけたい。そのためには、真珠層を作るアラゴナイト結 晶がどのような条件で固形化するのかを明らかにしない限り実現しない。現在、私が考えている ことは、真珠は、貝の中の微生物の働きで、出来るのではないかということである。そのことを 今後追究していき、誰でも美しい真珠を作れるようにしたい。そして、人々を幸せにしたい。お そらく、植物色素が紫外線に対して蛍光を示すものが多いのは、植物が紫外線に対する防御をす るため、長い時間をかけて作り上げてきたのであろうと考える。本研究は、アントシアニンを主 題にしたので、その他の植物色素の蛍光を調べ、なぜ植物色素には蛍光の性質があるのか。また、 蛍光色の違いはどこから来るのか本質的な事を明らかにすることである。また、その蛍光の仕組 みを何かに利用できないか、様々なアイデアを考えて挑戦したい。 5 指導と助言

今回の研究で、最も重要な結論は次の 1 点である。①真珠層を形成させるためには、炭酸カル シウムを結晶化させることとコンキオリン層を固形化させることを交互に行うことが重要であ る。アコヤ貝が1年半で真珠層を 1000 層以上作ることを考えると、1日に2回程度(潮の干満と 同じのリズム)で作っていることになる。つまり、炭酸カルシウムが結晶化して固化してから、 次に進まないと真珠層は厚くならない。また、炭酸カルシウムとコンキオリンがどのように結び つくかを解明すれば、真珠は作れる。今後の研究の大きな課題である。夢物語かもしれないが、 中学生として出来る限りの挑戦をした。真珠は出来ないという結果ではあったが、どのようにし たら真珠ができるのか、そのメカニズムの最初の一歩は明らかにしたと思う。生きている貝類の 外套膜が行っている貝殻層や真珠層を作るメカニズムを細胞レベルで明らかにすれば、いつの日 か実現できるだろうと思われる。「真珠を作る」というテーマは、自由研究の中でも夢のあるテ ーマであり、他の小学生や中学生でも取り組めるものである。 (指導教諭 田辺 久生)

参照

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