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浮遊卵巣癌細胞の転移能獲得に対するラミニン分子の役割―新たな分子治療開発に向けて 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

浮遊卵巣癌細胞の転移能獲得に対するラミニン分子

の役割―新たな分子治療開発に向けて

著者

吉田 好雄

発行年

2009

(2)

様式 C-19

科学研究費補助金研究成果報告書

平成21年5月29日現在

研究成果の概要: AG73T laminin peptide はシスプラチンの作用を増強し、卵巣がんの新た な治療法になる可能性がある 交付額 (金額単位:円) 直接経費 間接経費 合 計 2007年度 2,200,000 660,000 2,860,000 2008年度 1,300,000 390,000 1,690,000 年度 年度 年度 総 計 3,500,000 1,050,000 4,550,000 研究分野:医歯薬学 科研費の分科・細目:外科系臨床医学・産婦人科学

キーワード:卵巣がん、 laminin peptide syndecan-1 cisplatin

1.研究開始当初の背景

(1) 卵巣癌の予後は,最近の種々の研 究にもかかわらず、不良である。その最大の 理由は、卵巣の解剖学的特徴にある。卵巣 は、隣接した臓器が存在しない代わりに、骨 盤腔というスペースの中で、腹水に浸された 状態で存在する。このため、腫瘍の被膜破綻 と共に、癌細胞が容易に腹水中に流出し、早 期に腹膜播種を許すためである。従って、腹 水中に流出した卵巣癌細胞が、如何に生存 し、転移能を獲得するのかを解明することは 卵巣がん転移機序、さらにはその治療法開 発に有用である。 我々は、腫瘍の被膜破綻時に、腹水中 に流出する細胞外マトリックス成分の重要な 構成成分の一つであるラミニン、あるいはラミ ニン中に存在する active peptide が、腹水中 の卵巣癌細胞の転移能獲得に重要な役割を 果たしているという仮説をたてた。 事実、福井大学病院産婦人科において informed consent を得た良性・悪性卵巣腫瘍 を有する患者より、血清・腹水を採取し、血 清・腹水中のラミニン濃度を EIA kits (Takara Shuzo Co)で測定したところ、血清中のラミニ ン濃度は良性(995ng/ml)・悪性卵巣腫瘍 (992ng/ml)(P>0.05)と有為差は認められなか ったが、腹水中の濃度は、良性(960ng/ml)・ 悪性卵巣腫瘍(3300ng/ml)(P<0.0001)と、明ら かな有為差を認めた。また腹水中の濃度は、 臨床進行期と相関し、さらに、同じ臨床進行 期でも、腹水中のラミニン濃度が高い症例に 再発率が高かった。 しかし、ラミニン分子は、分子量 90 万の巨大分子であり、実験的扱いが困難な 研究種目:基盤研究(C) 研究期間:2007~2008 課題番号:19591928 研究課題名(和文) 浮遊卵巣癌細胞の転移能獲得に対するラミニン分子の役割―新たな分子 治療開発に向けて

研究課題名(英文) The role of laminin peptides for acquirement of metastasis of the free floating of ovarian cancer spheroids

研究代表者

吉田 好雄(YOSHIDA YOSHIO) 福井大学・医学部・准教授 研究者番号:60220688

(3)

ことから、ラミニンが、腹水中の卵巣癌細 胞の転移能獲得に果たす役割の分子機構 はなお不明である。この点の解消の目的で、 共同研究者である HK、Kleinmann らは、 ラミニン-1 のアミノ酸配合をいくつかの 構成ペプチド(機能単位)に分け、それぞ れのペプチドを生合成した。当該研究者ら は、これらの合成ペプチドの中から、卵巣 がんの細胞接着・増殖に関し重要な分子 (以下ラミニンペプチド)を同定すること に成功し 2005, 2006 年度のアメリカ癌学会 で発表した。 一方、腹水中に存在する転移能を獲得 した卵巣癌細胞に対する治療法の開発に は、ヒトの臨床像を再現する実験モデルの 存在が必要不可欠である。当該研究者らは、 このような実験系の樹立、即ち、「ヒト臨 床卵巣がん再現した卵巣癌転移動物モデ ル」の作成と、「卵巣癌腹膜播種 in vitro モデル」の作成に世界に先駆けて成功して いる。

2.研究の目的

この研究の目的は,当該研究者らが開発した「ヒ ト卵巣癌マウスモデル」と「卵巣癌腹膜播種 In vitro モデル」を用いて、共同研究者である HK、 Kleinmann らが生成したラミニンペプチドのなか で、これまで、同定した卵巣癌の細胞増殖に関し 重要なラミニン-1 より生成された構成ペプチド(機 能単位)について、 1) ラミニン・ペプチドが卵巣癌細胞の、腹水 中での生存・増殖・転移能獲得にどのように 関与するかを in vitro, in vivo 実験系を用い てその signal transduction 系を中心に検討す ること。 2) また、各々のペプチドや、その antagonist type peptide が卵巣癌の腹膜播種や転移の抑制に有用か 否かも検討する。

3.研究の方法

1) 浮遊増殖性卵巣癌細胞(TAC3)に対するラ ミニン-1・ペプチドの接着能・増殖能の検討 卵巣がんの細胞増殖に関し重要な分子と 判明した AG73 (RKRLQVQLSIRT) ラミニ ン-1ペプチドが、浮遊増殖性卵巣癌細胞 (TAC3)と、どの程度接着するか否かを検討 する。また、その接着能は用量依存性か、時 間依存性かを確認した。接着実験は Cell Counts あるいは Flow cytometer をもちいた。 同様なことを、溶解した laminin-1 存在下で、 laminin-1 peptide を添加し、増殖能・接着能に 変化があるか否かを検討した。

2) laminin peptide の antagonist type peptide を用いた接着抑制実験 接着に重要と思われた AG73 の antagonist type が AG73 と TAC3 との接 着をどの程度阻止するかどうかを検討し た。同様なことを、溶解した laminin-1 存 在下で、laminin-1 peptide を添加し、増 殖能・接着能に変化があるか否かを検討 する。また阻止した場合それは用量依存 性か、時間依存性かを確認した。 3) laminin peptide、あるいは antagonist type peptide の接着あるいは接着抑制 の機序解明

laminin peptide、あるいは antagonist type peptide の TAC3 細胞における接着 あるいは接着抑制の機序解明のために、 まず、どの接着分子が重要かを、flow cytometry を用いて検討。次に細胞内情 報伝達経路を検討するために、癌およ びアポトーシス関連物質(Bcl-2, Bcl-xlong, Bcl-xshort,Bax,p53, Mdm2,)、接着分子と細胞骨格分子の 発現(intergrin,syndecan)を蛋白レベル (Western blot)で検討した。 4) 各種抗癌剤がラミニンペプチドの作用に及ぼ す影響の検討 上記の実験の条件に抗癌剤(cisplatin)を 投与し,この時の薬物効果を apoptosis の程 度で検討した。この結果から,laminin peptide や、その antagonist type peptide と抗癌剤の組 み合わせによる治療法の確立を模索した。

4.研究成果

(1)

(4)

浮遊増殖細胞に Laminin-1 AG73 を添加すると細胞 は増殖するが AG73scramble type は増殖能に変化 しない Laminin-1 に AG73T を添付すると細胞の増 殖能はあまり変化させなかったがやや増殖 能を抑制した AG73T を添加させると有意に apoptosis を 誘発した G73T は syndecan-1 を介して浮遊増殖細胞 を増加させた

ERK 抑制する U0126 は P-ERK を阻害して 細胞の増殖を抑制した 同様にPI3K の活性を抑制した AG73T と cisplatin を投与すると相加的に細 胞をapoptosis を誘引した

結論

従って AG73T は syndecan-1 による細胞間 接着を阻害して 細胞内の PI3-AKT 活性を 阻害して卵巣がん細胞のapoptosis を誘発す る。さらに cisplatin と相加的に働いて卵巣 がん細胞を効果的にcell death に作用させる 可能性があることが判明した。 FIG.4‐A 2 3 1 0 50 100 150 200 FIG.4‐B Nu mb e r  of  sp he r o id s/  we ll AG73T         1μg    Non    3μg  Non       5μg  N + l bl l i i 1(0 5 ) 250 μm * * FIG .5 PI3‐K No  Addition Laminin‐1 Laminin‐1 + AG73T p‐ERK 0 2 4 0 2 4 In te g ri n (0 1) (A rb it ra ry u n it s) S y n d ec an ‐1 (A rb it ra ry u n it s) Integrin(0 1) P< 0.01 P<0 .01 Syndecan‐1 a b c d e f No  Addition Laminin‐1 Laminin‐1 + AG73T No  Addition Laminin‐1 Laminin‐1 + AG73T P<0 .0 1 P< 0 .0 1 Su b ‐G1  (%  of  ce ll  po p u la ti on ) 0 5 10 15 20 + cisplatin * * FIG.4‐C FIG.4‐D 1 3 2 4 AG73T         1μg   Non   3μg  Non   5μg Non + soluble laminin‐1(0.5mg) Su b ‐G1  (%  of  ce ll  po p u la ti on ) 0 5 10 15 20 + cisplatin * * FIG.4‐C FIG.4‐D 1 3 2 4 Su b ‐G1  (%  of  ce ll  po p u la ti on ) 0 5 10 15 20 + cisplatin * * FIG.4‐C FIG.4‐D 1 3 2 4 AG73T         1μg   Non   3μg  Non   5μg Non + soluble laminin‐1(0.5mg)

(5)

5.主な発表論文等

(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線)

〔雑誌論文〕(計1件)

Yoshida Y, Kurokawa T, Nishikawa Y, Orisa M, Kleinman HK, Kotsuji F. Laminin-1-derived scrambled peptide AG73T disaggregates laminin-1-induced ovarian cancer cell spheroids and improves the efficacy of cisplatin. Int J Oncol. 2008 Mar;32(3):673-81. 査読の有無:有 〔学会発表〕(計2件) ①Yoshida Y, Kurokawa T, Kotsuji F,  Hynda K Kleinmann  A potent peptide  antagonist to an active laminin‐1 sequence  and cisplatin synergize in down regulation  of Bcl‐2/Bax ratios induction of apoptosis  in human ovarian cancer cells. 

13  World  Congress  on  Advances  in  Oncology Greece 2008 ②Yoshida Y, Yagihara A, Kurokawa T,  Kotsuji F, Hynda K Kleinmann  Laminin‐1 derived AG73 peptides  inhibited formation of multicellular  spheroids of free‐floating ovarian cancer  cells. Proceedings of American Association  for Cancer Research Los Angels USA 2007 6.研究組織 (1)研究代表者 吉田 好雄(YOSHIDA YOSHIO) 福井大学・医学部 産婦人科・准教授 研究者番号:602206688 (2)研究分担者 澤村 陽子(SAWAMURA YOKO) 福井大学・医学部 産婦人科・助教 研究者番号:40436845 品川 明子(SHINAGAWA AKIKO) 福井大学・医学部 産婦人科・助教 研究者番号:90444223 (3)研究協力者 Hynda H Kleinmann NIH・教授

参照

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