E23
港湾物流事業継続計画策定のための方法論に関する研究
Study on the methodology for preparing port logistics business continuity plan
〇小野憲司・赤倉康寛
〇Kenji ONO,Yasuhiro AKAKURA
Resiliency of port operation is one of key elements and essential for the modern port logistics business, and local and global economy. Developing business continuity plans (BCPs) for major port operation is, in this context, ongoing in ports in Japan in particular after the Great East Japan Earthquake. This study discusses and proposes a procedure and techniques, by focusing on the port logistics, for systematically preparing BCPs. Case studies undertaken by authors in Japanese and Chilean ports are also reported for demonstrating effectiveness and efficiency of the proposed BCP preparation system.
1.はじめに 東日本大震災の発生を契機として、港湾物流の 分野でも港湾機能の継続のための計画(港湾 BCP) 策定の動きが急速に広まっている。しかしながら、 これらの港湾 BCP は、災害時の緊急対応計画と被 災した港湾施設の復旧計画を主な内容としている。 地域の生産活動や消費を支える一方で厳しい港 間競争にさらされる港湾においては、単に、一刻 も早い施設の復旧と輸送機能の回復を達成すれば 良いわけではなく、港湾利用者のニーズに的確に 応えうる効率的で効果的な物流機能継続マネジメ ントの視点が重要なものとなる。また、港湾の運 営には、基本的な港湾施設である航路・泊地や岸 壁、荷役機械に加えて、情報通信システムや労働 力、建物・オフィス、外部からの電力、燃料供給 と言った様々な資源が必要であり、これらの資源 確保の可不可を知ることが必要となる。 上記を勘案すると、港湾における BCP の策定に おいて、資源の被災リスクの評価や復旧時間の見 積もり(リスク・アセスメント:RA)と顧客の視 点に立ったビジネス・インパクト分析(BIA)の手 法をバランスよく実施することが肝要である。 このようなことから本発表では、港湾物流 BCP 策定のための手順と手法について論じるとともに、 大阪港及びチリ国イキケ港におけるこれらの手法 の適用について述べる。 2.BCP 作成のための分析・検討 BCP の策定を含む事業継続マネジメントの国際 規格は、「ISO22301:社会セキュリティ-事業継続 マネジメントシステム-要求事項」で定められてお り、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の運 用にあたって BIA 及び RA の実施を求められる。 BIA は、財、サービス等を提供する事業活動と それらが依存する資源に注目して、万一、それら の資源が被災して事業活動が中断した場合の影響 を、リスクの大小にとらわれず評価し文書化する ことが特徴である。(中島ら,2013) BIA は、事業中断に対する顧客受忍の限度を「最 大機能停止時間(MTPD)」として評価し、その期間 内に機能を回復するために必要な資源の復旧水準 (RLO)及び時間(RTO)を求めることを最大の使 命とする。RLO 及び RTO は顧客の意向に沿った資 源の復旧目標であると言える。 また BIA では、事業に必要な資源の抽出、分類、 依存関係等を整理する。これらの情報は、RA にお いて資源の脆弱性評価を行い、機能回復の隘路を 発見するうえでの基礎的なデータとなる。 一方 RA は、事業の中断を引き起こすインシデン トの発生の確からしさと資源に及ぶ被害の程度を 評価するもので、その内容は、①リスクの特定、 ②リスクの体系的な分析、③対応を必要とするリ スクの評価、から成るプロセスとしてとらえるこ とができる。(中島ら,2013) 港湾物流において RA の対象となるのは、港湾運 営に必要な資源と港湾における貨物取扱需要の発 生源である荷主の経済活動である。特に前者につ いて昆(2009)は、被害の想定と復旧に要する期 間、復旧可能な水準を予想復旧時間(PRT)及び予 想復旧水準(PRL)として算出することを提案して
いる。PRT プション( {χ∈A:PRL( を満たすような 続戦略を作成し なお、ここで( ション全体の集合である。 上記を含む港湾物流 討の手順を Fig.1 Proposed BCP 3.ケーススタディによる具体の 上記の分析・検討を実施するための具体の手法 を明らかに ナル(DICT スタディを実施した。夢洲コンテナターミナルは 年間約 100 テナターミナル 古車等を扱う地域の 筆者らは、これらの港湾における事業プロセス を把握するため、小松ら( して、港湾の業務活動用に単純化した仕事カード と IDEF0 手法を用いた業務フローの作成を た。(Fig. て抽出した運営資源の分類、依存関係 あたっては、 シートを作成した。( これらのツールを活用することによって、①現 場職員から事業の遂行に係る詳細なデータ する、②分析・検討過程における ら現場担当者までの広範な参加を得る、③ 検討の過程と結果の文書化について、 く、第 3 者に対しても十分な る、ことが可能である PRT 及び PRL は プション(χ)の関数 PRL(χ)=RLO を満たすようなχを求め 続戦略を作成して BCP なお、ここで(A)は運営資源復旧のためのオプ ション全体の集合である。 上記を含む港湾物流 討の手順を Fig. 1 に示す .1 Proposed BCP ケーススタディによる具体の 上記の分析・検討を実施するための具体の手法 明らかにするため、大阪港夢洲コンテナターミ DICT)及びチリ国イキケ港においてケース スタディを実施した。夢洲コンテナターミナルは 100 万 TEU のコンテナ テナターミナル、また 古車等を扱う地域の拠点 筆者らは、これらの港湾における事業プロセス を把握するため、小松ら( 港湾の業務活動用に単純化した仕事カード 手法を用いた業務フローの作成を Fig. 2 参照)また、業務フロー 抽出した運営資源の分類、依存関係 あたっては、昆(2009 シートを作成した。(Fig. これらのツールを活用することによって、①現 場職員から事業の遂行に係る詳細なデータ 分析・検討過程における ら現場担当者までの広範な参加を得る、③ 検討の過程と結果の文書化について、 者に対しても十分な る、ことが可能である は事前に講じるリスク対応オ )の関数であることから RLO}⋂{χ∈A:PRT( 求め、その実施 BCP に記述することとした。 )は運営資源復旧のためのオプ ション全体の集合である。 上記を含む港湾物流 BCP 策定のための分析・検 に示す。(小野ら
.1 Proposed BCP development procedure ケーススタディによる具体の分析手法 上記の分析・検討を実施するための具体の手法 するため、大阪港夢洲コンテナターミ 及びチリ国イキケ港においてケース スタディを実施した。夢洲コンテナターミナルは のコンテナを取り扱 、また、イキケ港はコンテナや中 拠点港湾である。 筆者らは、これらの港湾における事業プロセス を把握するため、小松ら(2013)の事例 港湾の業務活動用に単純化した仕事カード 手法を用いた業務フローの作成を 参照)また、業務フロー 抽出した運営資源の分類、依存関係 2009)の提案を踏まえて、作業 Fig. 3) これらのツールを活用することによって、①現 場職員から事業の遂行に係る詳細なデータ 分析・検討過程におけるマネジメントか ら現場担当者までの広範な参加を得る、③ 検討の過程と結果の文書化について、 者に対しても十分な追跡可能性 る、ことが可能である旨が確認された。 るリスク対応オ であることから、本稿で PRT(χ)≦RTO 、その実施による事業継 に記述することとした。 )は運営資源復旧のためのオプ のための分析・検 (小野ら,2014) velopment procedure 分析手法の検討 上記の分析・検討を実施するための具体の手法 するため、大阪港夢洲コンテナターミ 及びチリ国イキケ港においてケース スタディを実施した。夢洲コンテナターミナルは 取り扱う近代コン 、イキケ港はコンテナや中 港湾である。 筆者らは、これらの港湾における事業プロセス )の事例を参考に 港湾の業務活動用に単純化した仕事カード 手法を用いた業務フローの作成を実施し 参照)また、業務フロー分析によ 抽出した運営資源の分類、依存関係の整理等に )の提案を踏まえて、作業 これらのツールを活用することによって、①現 場職員から事業の遂行に係る詳細なデータを収集 マネジメントか ら現場担当者までの広範な参加を得る、③分析・ 検討の過程と結果の文書化について、透明性が高 追跡可能性を確保す が確認された。 るリスク対応オ では RTO} 事業継 に記述することとした。 )は運営資源復旧のためのオプ のための分析・検 velopment procedure の検討 上記の分析・検討を実施するための具体の手法 するため、大阪港夢洲コンテナターミ 及びチリ国イキケ港においてケース スタディを実施した。夢洲コンテナターミナルは 近代コン 、イキケ港はコンテナや中 筆者らは、これらの港湾における事業プロセス を参考に 港湾の業務活動用に単純化した仕事カード 実施し よっ 等に )の提案を踏まえて、作業 これらのツールを活用することによって、①現 収集 マネジメントか 分析・ 透明性が高 を確保す
Fig.2 Business flow analysis for port
Fig.3 Worksheet for resource identification 4.まとめ 本研究においては、 準を踏まえ、大阪港及びチリ国イキケ港を 検討の場として港湾物流 検討システム 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 追跡可能性の高いシステム作りを目指した。 本研究の詳細については、本研究発表講演会で の議論を踏まえて取り纏め、平成 告する事と 参考文献リスト (1) (2) (3) (4) コンテナ船運 航スケジュー ル 船舶到着 A1 コンテナ船 の入港 A2 錨泊 A3 コンテナ船 回頭・接岸 事業活動
Fig.2 Business flow analysis for port
Fig.3 Worksheet for resource identification 4.まとめ 本研究においては、 を踏まえ、大阪港及びチリ国イキケ港を 検討の場として港湾物流 検討システムを 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 追跡可能性の高いシステム作りを目指した。 本研究の詳細については、本研究発表講演会で の議論を踏まえて取り纏め、平成 する事としたい 参考文献リスト (1) 小野憲司 ジネス・インパクト分析を用いた港湾物流 機能継続計画策定手法の開発 研究講演集 (2) 小松 他 による津波を見据えた く浄水施設の事業継続戦略構築 科学、 (3) 昆正和 (株)オーム社 (4) 中島一郎・岡部紳一・渡辺研司・櫻井三穂 子(2013 本規格協会、 入港 [1時間] A1 コンテナ船運 航スケジュー 航路 水先案内, タグボート、 サービスボート 電光表示板 検疫済証等交付、船舶保安情報通報 出入国報告書提出、入港届、 運航調整(大阪港入出港マニュアル) 航路航行 船舶到着 錨泊指示 コンテナ船 の入港 検疫済証等交付 出入国報告書提出 入港届、船舶保安 情報の通報 入港時運航調整 錨泊 錨地指定 コンテナ船 回頭・接岸 岸壁使用許可 事業活動 制御
Fig.2 Business flow analysis for port
Fig.3 Worksheet for resource identification
本研究においては、事業継続計画に係る を踏まえ、大阪港及びチリ国イキケ港を 検討の場として港湾物流 BCP を構築した。その際、業務フロー分 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 追跡可能性の高いシステム作りを目指した。 本研究の詳細については、本研究発表講演会で の議論を踏まえて取り纏め、平成 たい。 参考文献リスト 小野憲司・滝野義和 ジネス・インパクト分析を用いた港湾物流 機能継続計画策定手法の開発 講演集 Vol.49 他(2013):最大級の南海トラフ地震 による津波を見据えた く浄水施設の事業継続戦略構築 、Vol32 No.2 昆正和(2009):実践 オーム社、 270 中島一郎・岡部紳一・渡辺研司・櫻井三穂 2013):ISO22301 本規格協会、183 頁 回頭・接 岸[1時間] A3 検疫済証等交付、船舶保安情報通報 報告書提出、入港届、 (大阪港入出港マニュアル) 航路航行 回頭泊地 岸壁 タグボート 綱取り 接岸許可 錨泊指示 検疫錨地への移動 回頭泊 地進入 接岸終了 荷役準 備終了 検疫済証等交付 出入国報告書提出 入港届、船舶保安 入港時運航調整 大阪検疫所 大阪入国管理局 大阪海上保安監部、 大阪税関、 大阪市港湾局(海務)、 大阪港航行安全情報 センター 大阪海上保安監部 大阪港埠頭(OPC: C10,C11)及び夢洲埠 頭株式会社(DICT: C12) 制御関係機関
Fig.2 Business flow analysis for port
Fig.3 Worksheet for resource identification
事業継続計画に係る を踏まえ、大阪港及びチリ国イキケ港を BCP 作成のための分析・ た。その際、業務フロー分 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 追跡可能性の高いシステム作りを目指した。 本研究の詳細については、本研究発表講演会で の議論を踏まえて取り纏め、平成 27 年度年報に 滝野義和・赤倉康寛 ジネス・インパクト分析を用いた港湾物流 機能継続計画策定手法の開発、 Vol.49 最大級の南海トラフ地震 による津波を見据えた BIA 及び く浄水施設の事業継続戦略構築 Vol32 No.2 、183 頁~ 実践 BCP 策定マニュアル 270 頁 中島一郎・岡部紳一・渡辺研司・櫻井三穂 ISO22301 要求事項の解説、日 頁 錨泊 検疫済証等交付、船舶保安情報通報 船内荷 役[8時間] A4 岸壁・エプロン ガントリー・ク レーン 船内荷役 ギャング 積付・降し 計画 錨地指定 荷役完了 * * * (荷 積 み ) 検疫 サービスボート 再入港 検疫錨地への移動 接岸終了 荷役準 備終了 制御に必要な資源 大阪検疫所職員、 大阪入国管理局職員、 大阪海上保安監部職員、 港湾EDIシステム、SeaNACCSシステ ム、 大阪税関職員、 大阪市港湾局海務担当職員、 大阪入国管理局庁舎、 大阪港湾合同庁舎、 船舶代理店、電力、通信 大阪海上保安監部職員職員、 通信 OPC及びDICT管理担当職員 OOCオフィス庁舎、 DOCTターミナルオペレーションセンター 電気、通信 業務資源
Fig.2 Business flow analysis for port operation
Fig.3 Worksheet for resource identification
事業継続計画に係る国際標 を踏まえ、大阪港及びチリ国イキケ港を具体の 作成のための分析・ た。その際、業務フロー分 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 追跡可能性の高いシステム作りを目指した。 本研究の詳細については、本研究発表講演会で 年度年報に報 赤倉康寛(2014):ビ ジネス・インパクト分析を用いた港湾物流 、土木計画学 最大級の南海トラフ地震 及び RA に基づ く浄水施設の事業継続戦略構築、自然災害 頁~205 頁 策定マニュアル、 中島一郎・岡部紳一・渡辺研司・櫻井三穂 要求事項の解説、日 A2 離岸・出 港[1時間] A5 航路、回頭泊地 岸壁、 タグボート 綱取り、 運航調整 出港許可、 出入国報告書 出港届の提出 出港 錨地指定 (荷 卸 し ) 荷役完了 * 検疫錨地 サービスボート 離岸 準備 制御に必要な資源 事業活動に必要な資源 港湾EDIシステム、SeaNACCSシステ 大阪市港湾局海務担当職員、 主航路(-15~16m)、 タグボート、 水先案内人、 サービスボート、 電力、通信、燃料油 大阪海上保安監部職員職員、 錨地、サービスボート、 電力、通信、燃料油 OPC及びDICT管理担当職員、 DOCTターミナルオペレーションセンター、 泊地(-15~16m)、 岸壁(-15~16m)、 タグボート、 綱取作業員, マリンハウス、 電力、通信、燃料油 業務資源 operation
Fig.3 Worksheet for resource identification
国際標 具体の 作成のための分析・ た。その際、業務フロー分 析の手法や作業シートの活用等を通じた透明性、 本研究の詳細については、本研究発表講演会で 報 ビ ジネス・インパクト分析を用いた港湾物流 土木計画学 最大級の南海トラフ地震 に基づ 自然災害 、 中島一郎・岡部紳一・渡辺研司・櫻井三穂 要求事項の解説、日 航路、回頭泊地 報告書, 出港届の提出 出港