Title
Synergistic effects of acyclic retinoid and gemcitabine on growth
inhibition in pancreatic cancer cells( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
中川, 貴之
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第784号
Issue Date
2009-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/25295
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 中川 貴之(滋賀県) 博 士(医学) 甲第 784 号 平成 21年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Synergistic effects of acyclic retinoid and gemcitabine on growth
inhibitionin pancreatic cancer ce[ls
審査委員 (主査)教授 中 島 茂 (副査)教授 原 明 教授 石 塚 達 夫 論文内容の要旨 【背景・目的】 膵臓癌の予後は極めて不良であるが,その原因の一つとして,切除不能例や切除後再発症例に対 する有効な化学療法が確立されていないことがあげられる。すなわち,これらの症例に対しては, Gemcitabine(GEM)を用いた化学療法が標準的治療として行われているが,現状ではその効果は必 ずしも十分とはいえない。したがって,膵臓癌に対する有効な化学療法の開発は緊急の課題である。 GEM単剤では効果が不十分であることより,近年,これに作用機序の異なる薬剤と併用することで, より有効(相乗的)な膵癌細胞の増殖抑制,膵癌組織の縮小効果をめざす「併用化学療法」の研究 が注目されている。 レチノイドは,様々な標的遺伝子の発現を調節することで,細胞の分化,増殖,アポトーシスを 制御し,膵臓癌を含めた様々な癌腫に対して抗腫瘍効果や発癌予防効果を発揮することが知られて いる。申請者らの研究室ではこれまでに,新規合成レチノイドである非環式レチノイド(Acyclic retin。id;ACR)が,ヒト肝癌細胞にアポトーシスを誘導しその増殖を抑制すること,また臨床試験 において,初回治療後の肝癌再発を有意に抑制することを報告してきた。また,ACRが,インター フェロンやビタミンK2等,作用機序の異なる薬剤との併用によって,相乗的に肝癌細胞の増殖を抑 制することを明らかにしてきた。本研究では,膵癌に対するより有効な化学療法の開発を目的とし て,GEMとACRの併用による膵癌細胞に対する相乗的な増殖抑制効果と,その詳細なメカニズムに ついて検討した。 【方法】 ヒト膵癌細胞(PancTl,KP-2),およびヒト正常膵上皮細胞(PE)を,GEM,ACR,9-CIsレチノイ ン酸(9cRA)でそれぞれ単独処理し,細胞増殖抑制効果を比較検討した。次に,Panc-1細胞をGEM とACRで併用処理し,細胞増殖が相乗的に抑制されるかどうかをCombinationindex-isobologram 法を用いて検討した。また,これらの薬剤の併用処理によるPanc-1細胞におけるアポトーシスの誘
導効果をTUNEL染色法にて,Ras活性の抑制効果をWesternBlot法(Ras Activation assay kit)
にて,それぞれ比較検討した。次に,1D VIvo8=おけるGEMとACRの併用効果を検討するため,ヌ ードマウスにPanc-1細胞を皮下注射して膵癌移植モデルを作成し,それらのマウスをcontrol群, GEM単独投与群(100mg/kg,週2回腹腔内投与),ACR単独投与群(0.03%,混餌投与),GEMとACR の併用投与群の4群に分け6週間飼育・観察し,膵癌移植片の増殖抑制について検討した。また, マウスの屠殺後,膵癌移植片を摘出し,細胞増殖抑制効果についてはPCNA染色を,アポトーシスの
ー35-誘導効果についてはTUNEL染色を行い,それぞれ比較検討した。 【結果】 GEM単独処理によるヒト膵癌細胞株Panc-1およびKP-2に対するIC5。は,それぞれ10,1.6pg/ml であり,ヒト正常膵上皮細胞株PEに対するそれ(48.6いg/ml)と比較し,より低濃度で増殖を抑 制した。ACR単独と9cRA単独処理による,Panc-1およびKP-2細胞におけるIC5。は,それぞれ約30, および約50ドMであり,これらのレチノイドは,ほぼ同程度に膵癌細胞の増殖を抑制した。それに 対し,PEに対するACRおよび9cRAのIC5。は,それぞれ94.8pM,180pMと高濃度であった。次に, GEMとACRでPanc-1細胞を併用処理したところ,GEMl.Opg/ml(約IC,。値)およびACRlOpM(約 ICl。値)の組み合わせによって,相乗的な腫瘍細胞の増殖抑制と,アポトーシスの誘導効果が認め られた。また,ACRlO pMの単独処理にて認められたRas活性の抑制効果が,GEMl.O pg/mlを併 用することでより増強されることも確認された。 次に,ヌードマウス膵癌移植モデルを用いて,In vIvoにおけるGEMおよびACRの効果を検討し たところ,膵癌腫瘍片の増殖は,これら2剤の併用によって6週間にわたり,COntrOl群と比較し 有意に抑制された。また,腫瘍移植片細胞におけるPCNAの陽性率は,GEM,ACR単独群ではcontrol 群と比較して,軽度の低下であったのに対し,これらの薬剤の併用群では著明な低下を示した。ま た,腫瘍移植片におけるアポトーシスの誘導も,GEMとACRの併用によって有意に増強された。 【考察・結論】 GEM,ACRおよび9cRAは,ヒト正常膵上皮細胞に比べ,より低い濃度でヒト膵癌細胞の増殖を抑 制したことより,膵癌細胞は,GEMやレチノイドに対し高い感受性を持つものと考えられた。また,
GEMとACRの併用により,月草癌細胞の増殖は1D Vltroおよび1D VIvoともに有意に抑制されたが,
そのメカニズムの一つとして,アポトーシスの誘導が関与しているものと考えられた。一方,膵癌 の発生・進展において,Rasの異常活性化が大きな役割を果たしていること,Rasの活性を阻害する ことで,膵癌細胞のGEMに対する感受性が増強することが報告されているが,今回の実験において, GEMとACRの併用によって著明なRas活性の抑制効果が認められたことは,今後の膵癌の化学療法 を考えて行く上で,大変興味深い結果と考えられた。 ACRは,特に重篤な副作用を呈することなく,ヒト肝細胞癌の再発を抑制する興味深い薬剤であ る。本研究の結果,すなわちGEMとACRの併用使用が相乗的に膵癌細胞の増殖を抑制したことは, 今後,これらの薬剤の併用が膵癌の化学療法において,安全かつ有効な治療法の一つになる可能性 を示唆するものと考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 中川 貴之は,膵癌に対して非環式レチノイド(ACR)が膵臓癌の標準化学療法剤 Gemcitabine(GEM)との併用により,それぞれの薬剤単独よりも効率的にアポトーシスを誘導し, 相乗的な増殖抑制作用を示すことを,ヒト膵癌細胞培養系とヌードマウス膵癌移植モデルを用いて 明らかにした。本研究の成果は臨床腫瘍学および膵臓病学の発展に少なからず寄与するものと認め られる。 [主論文公表誌]
TakayukiNakagawa,Masahito Shimizu,YoheiShirakami,Hideharu Tatebe,Ichiro Yasuda, HisashiTsurumiand Hisataka Moriwaki:Synergistic effects of acyclic retinoid and gemcitabine on growthinhibitionin pancreatic cancer cells
Cancer Letters 273,250-256(2009).