Title
進行食道癌に対する放射線治療の研究 シスプラチン併用例
との比較検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
柳川, 繁雄
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第978号
Issue Date
1995-03-24
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15301
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 柳 川 繁 雄(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 978.号 平成 7
年
3月
24 日学位規則第4条第2項該当
進行食道癌に対する放射線治療の研究
シスプラチン併用例との比較検討
(主査)教授 土井
偉 誉 (副査)教授 佐 治 重 豊 教授 宮 田 英 雄 論 文内
容 の 要旨
わが国における食道癌の治療は,瀬尾,中山を始めとする食道外科の研究の成果によって外科治療が第一選択 とされており,最近では遠隔成績の向上を目指して拡大リンパ節郭清や浸潤臓器の合併切除などの根治手術が積 極的に試みられている。しかしながら食道癌の症例には進行癌が多く,また高齢や合併症のため根治的手術をなし得る割合は全食道癌の中では多いとは言えない。したがって手術成績だけでは食道癌全体の治療の実態を代表
できないと思われる。 一方,切除不能の進行食道癌に対してはこれまで主として放射線単独療法が行われてきたが,その治療成績は 芳しいものではなかった。その理由としては手術適応を越えた進行例を対象にしているだけではなく,限局した 食道癌であっても放射線だけでは局所制御が困難であることがあげられる。したがって食道癌に対する放射線療 法の成績を向上させるためには,集学的治療を含めた新たな治療法を検討する必要がある。申請者は進行食道癌 に対してシスプラチン(CDDP)を主とした強力化学療法を併用した放射線療法を行い,その成績をhistorical controlでそれ以前に行われた放射線単独療法と比較し,CDDP併用放射線療法が局所制御率,遠隔成績とも に放射線単独療法よりも優れていることを明らかにした。 (対象と方法) 1)1974年から1993年の問に,局所制御を目的に50Gy以上照射された胸部食道癌新鮮症例(扁平上皮癌)は55 例であった。1974∼1985年の21例に対しては放射線単独療法が行われ,1985∼1993年までの34例に対しては放射 線+CDDP併用療法が行われた。両群の背景因子として年齢,性別,腫瘍占居部位,腫瘍長径,Ⅹ線型分類, M因子に続計的有意差を認めなかった。 2)放射線単独群に対しては平均63Gy,放射線+CDDP併用群に対しては平均59Gyの線量が照射された。C DDP併用群34例ではCDDP70mg/nfを照射開始後2週目,5週目および照射終了後に投与することを原則と し,平均2.4クール施行した。このうち22例にはCDDPに加えて5-FU持続静注(700mg/Irfx5days)を併 用した。 3)局所効果の判定は「食道癌化学療法および放射線治療の直接効果判定基準」に準拠して行ったが,CDDP 併用群においては内視鏡生検も併用し,組織学的に腫瘍の消失を確認したものをCRとした。各因子ごとの生存率はKaplan-Meier法で算出し,各群間の検定はGeneralized Wilcoxon Testで行った。
(結果と考察) 1)局所効果はCR率が放射線単独群で33%,放射線+CDDP併用群で65%であり,CDDP併用放射線療法 は放射線単独療法よりも高い局所制御率を示した(P<0.01)。特に腫瘍長径が10cmを越える症例の局所制御率 は,両群それぞれ0%および60%であった。 2)両群のMO症例において,放射線+CDDP併用群(27例)の生存率は放射線単独群(17例)を上回ってい た(P<0.01)。すなわちそれぞれの2年生存率は43.0%,11.8%であり,5年生存率は14.1%,5.9%であった。 3)両群のMO症例において,CR例と(PR+NC)例に分けた生存率を比較すると,いずれの場合もCR例 が(PR+NC)例を上回っていた(P<0.05)。しかしながら両群のCR例および(PR+NC)例どうしの 生存率は全体として有意差を認めなかった。このことから長期生存を得るためには局所制御が必須の条件である と結論された。 4)CDDP併用群におけるCR例22例のうち,経過観察中に13例(59%)において原発巣からの再発が見られ