Title
Placental growth by the estrogen-dependent angiogenic factors,
vascular endothelial growth factor and basic fibroblast growth
factor, throughout gestation( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
中川, 由美子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第572号
Issue Date
2004-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14556
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氏 名(本籍)
学位の琴頬
学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 中 川 由美子(京都府) 博 士(医学) 甲第■ 572 号 平成16 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当Placentalgrowth by the estrogen-dependent ang10genic factors, VaSCular endothelialgrowth factor and basic fibroblast growth factor, throughout gestation (主査)教授 玉 舎 輝 彦 (副査)教授 中 島 茂 教授 小 澤 修 論文内容の要旨 緒言 妊娠中母体は性ステロイドホルモンであるエストロゲンが豊富な環境にあるため,エストロゲンが胎盤の発育 や生長に働いていると考えられてはいたが,その分子メカニズムは不明であった。また胎盤は最も血管の豊富な 臓器でもあるため,その生長には血管新生が関わっていると考えられる。そこでヒト胎盤の生長に関連すると考 えられるエストロゲン依存性血管新生因子の発現様式を妊娠進行と共に検討し,そのメカニズムを解明すること を目的とした。 対象と方法 絨毛および胎盤組織の採取,患者の個人情報の守秘および研究内容に対して岐阜大学医学部医学研究倫理委員 会から承諾を得た後,すべての患者からはインフォームド・コンセントを得た。対象は妊娠6退から41週の正 常妊娠より採取したヒト絨毛,胎盤(初期25例,中期12例,後期21例,合計58例)である。 各組織をホモジナイズし得られた抽出液中における種々の血管新生因子(VEGF,basicFGF,IL-1β,TGF
-β,TNF-a,IL-6,IL-8,PDGF,HGF)の発現量は,酵素抗体法(Quantikine kit,R&D systems,
Minneapolis,MN,USA)を用いて測定した。VEGFに関してはアイソフォPムの検討を行うため,各組織よ りRNAを抽出し,RT-PCR法にて各妊娠時期におけるVEGFのmRNA発現を解析した。また各組織をホモジナ イズし得られた抽出液におけるVEGFアイソフォームの発現を,ウエスタンブロッティング法にて解析した。 結果 血管新生因子の中で,胎盤におけるVEGFおよびbasic FGFの発現レベルは妊娠週数がすすむにつれ増加した が,IL-1β,TGF-β,TNF-aおよびIL-8は低いレベルのままで,PDGFとHGFは特徴的な変化は見られなかっ た。
胎盤ではRT-PCR法においてVEGFのアイソフォーム(wild typeのVEGF206と,VEGFのsplicing variants
であるVEGF.89,VEGF165,VEGF145およびVEGF121の5種類)のうち,VEGF189,VEGF165 およびVEGF121の
mRNAは描出できたが,VEGF206とVEGFl.5は描出されなかった。三種頬のアイソフォームのmRNA発現量は妊 娠週数がすすむにつれ増加したが,それらの合計におけるVEGF165の割合は約45%を占めたが,VEGF165の
VEGF12.とVEGF.8。に対する発現の比率は,妊娠期間を通じて変化は認めなかった。 胎盤ではウエスタンプロッティング法においてVEGF165とVEGF121は明瞭に描出されたが,VEGF189は薄く描 出されるのみで,VEGF2C6とVEGF145においては描出されなかった。三種類のアイソフォームのタンパク発現量 は妊娠週数がすすむにつれ増加したが,それらの合計におけるVEGF165の割合は約75%を占めたが,VEGF165の VEGF121とVEGF189に対する発現の比率は,妊娠期間を通じて変化は認めなかった。 またVEGFとbasic FGFの発現は胎盤重量に相関した。 考察 ヒツジ顆粒膜細胞において,エストロゲンによってVEGFの発現が誘導されることから,VEGFの遺伝子上流 にestrogenresponsiveelementが存在することが証明されている0 また卵巣摘出した動物にエストロゲンを投与すると,子宮におけるVEGFおよびbasic FGFのmRNAの発現 が誘導され,さらに卵巣摘除した動物ではbasicFGFによる血管新生作用が減弱しているが,エストロゲンを補 充するとbasicFGFによる作用が回復する。このようにエストロゲンは一種の血管新生促進因子として認諭され ていたが,胎盤においてはエストロゲンは妊娠と共に合成が増加するが,本研究でもVEGFおよびbasic FGFは 妊娠と共に増加し,エストロゲンとリンクし血管新生を促し,胎盤の生長および発育に重要な働きを担っている と考えられた。 結語 エストロゲンはestrogenresponsiveelementを有する血管新生因子VEGF,特にVEGF165や基礎血管新生に 働くbasicFGFの発現誘導を介し,妊娠全期間を通じ胎盤の生長を促していることが推察された。 論文審査の結果の要旨 申請者 中川由美子は,胎盤におけるエストロゲン依存性に働くVEGFおよびbasicFGFの発現を検討し,そ れらが胎盤の生長に関与していることを示した。本研究の成果は胎盤生理を理解する上で少なからず寄与するも のと考えられる。 [主論文公表誌] Placentalgrowthbytheestrogrn-dependentanglOgenicfactors,VaSCularendothelialgrowthfactorand basic fibroblast growth factor,throughout gestation
GynecologicalEndocrinology(in press)