体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系
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(2) 147. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系. 示し,複数選択した技の価値点の合計を計算できる.これは,採点の部分的な自動化を行っ たものである.演技構成をどのように採点するかは,採点規則を熟知した利用者が決定しな ければならず,この決定は熟練した審判員でなければ素早く行うことはできない.本稿で述 べるシステムは,選手が行った演技構成の全体に相当する入力を受け取り,演技構成内の着 目すべき部分を判断しながら必要とされるすべての採点を行うことができる.つまり,シス テムの利用者は採点規則を熟知していなくてもよい. 本研究では「ゆか」の演技構成を対象として A スコアの算出を自動化するシステムを構 築する.構築するシステムは利用者からの演技構成に相当する入力を受け取り,演技構成の 採点を全自動で行う.システムの出力は入力された演技構成の採点結果である.システムの 利用者は,選手により実施された技が何であったかを特定し,記録できる能力があれば A スコアの採点を行うことができる. 採点規則は主に,自然言語の文章や表を用いて記述されているが,本研究ではその規則を. 図1. 形式的表現に置き換え,コンピュータプログラムに解釈させる.また,頻繁なルール変更に. 難度表の一部(男子体操競技採点規則 2006 年度版1) より抜粋) Fig. 1 A part of the Diffficulty Tables.. 対応できるように採点規則を外部ファイルで表現し,容易に変更できるようにシステムを設 この番号は, 「ゆか」種目におけるすべての技に対する通し番号ではない.図 1 の表を縦に. 計する.. 2 章では男子体操競技採点規則について説明する.3 章ではシステムの実装に用いたモデ ルと形式的に表現した規則について,4 章ではシステムの実装について述べる.. 3 つに分割したとき,分割されたそれぞれの列に含まれる技の難度が最上枠に示される.図 中には A,B,C の難度しか登場していないが,実際は,難度が D,E,F の技について記 述された部分が図 1 右側に続く.図 1 の最上部,表の外側に示されるのは,6 つの技すべ. 2. 採 点 規 則. てが所属するグループ名とグループ番号である.. 男子体操競技採点規則 2006 年度版(以下ルールブック)1) は,第一部:競技参加者規則. 本研究では「ゆか」を対象とした採点システムの構築を目的とするので,以下に第二部か. と第二部:採点規則の二部構成であり,そのうち A スコアの採点に関係するのは第二部で. ら「ゆか」の A スコアの採点に関わる規則の要約を示す.. ある.第二部の大部分は「難度表」と呼ばれる表で占められる.難度表とは,選手が実施す. (1). 採点対象を決める規則. るべき技をまとめたものであり,各技の「名前」と「グループ番号」, 「難度」などが記載さ. • 難度表にない技は原則認められない.. れた表である.技はいくつかのグループに分けられ,後述するように採点は技のグループ番. • 同じ技の 2 つめ以降の登場は採点対象にならない.. 号により制約を受ける.ゆえに技がどのグループに属するかは採点上重要である.選手は特. • 同じグループの技は 4 つまで認められる.5 つ目以降は組合せ価値点の算出のみ に関わる.. 別な場合を除き難度表に記載された技のみで演技を構成しなければならない.難度表は各種. (2). 目それぞれに存在する. 「ゆか」 「ゆか」の技は,全部で 132 種存在し,それらが記載された難度表は 20 頁に及ぶ. の難度表のある頁の一部を図 1 に示す.図 1 内には 6 つの絵が描かれている.それが技の. 採点対象に点数(A スコア)を与える規則. • A スコアは難度価値点と組合せ価値点,要求グループ価値点の合計である. • 難度表に記されているすべての技は,その難しさの尺度である「難度」が定めら. 内容を示す.それぞれの絵のすぐ上には技の名前が示されている.技の名前に振られてい. れている.難度には A,B,C,D,E,F(SE) の 6 つがあり,それぞれ表 1 で. る番号は,その技が所属するグループ内での,技に与えられた固有の番号である.つまり,. 示す価値点が与えられる.これにより難度価値点が決定される.. 情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). c 2009 Information Processing Society of Japan .
(3) 148. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系 表 1 難度とその価値点 Table 1 Difficulties and values. 難度 価値点. A 0.10. B 0.20. C 0.30. D 0.40. E 0.50. に用いられる関数で,採点対象に対する点数を計算するために用いられる.CR,AR はそ F(SE) 0.60. れぞれの関数のための採点規則である.これらは,ルールブックから取り出した採点に関わ る規則を形式的に表現したものである.CR は採点対象を決めるための規則で,技列内にお いてどのような要素が採点対象となるのかを明示できる.どのような要素を削除するべき. • 跳躍技は,独立した価値を持ったまま,高難度の技を連続して実施することによ り加点が発生する.これが組合せ価値点である.. • 難度表で明示されるすべてのグループの技を演技に組み込むことで加点が発生す. かを明示できるともいえる.AR は採点対象に点数を付ける規則である.これらの詳細は. 3.2 節で述べる. 3.2 採点規則の形式的表現 2 章で説明した演技構成価値点の決定に関わる採点規則をコンピュータプログラムが解釈. る.これが要求グループ価値点である.. 可能な表現に置き換える.演技構成の価値点に関わる採点規則は,次の 2 種類に大別される.. これらのことから,構築するシステムでは. • 実際に行われた演技構成から採点対象となる技のみを抽出した採点用の演技構成への. • CR:演技構成を採点に関係のない技を削除したものに変換する規則の集合 • AR:演技構成から加点を定める規則の集合. 変換. • 難度価値点,組合せ価値点,要求グループの価値点の計算と加点 を行わなければならない.次章で,採点規則を実行するモデルを定義する.. これらを,演技構成は技列(技の列)であるととらえることにより,次のように表現で きる.. • CR:技列からその部分列への関数を決める規則の集合. 3. モ デ ル. • AR:技列から点数への関数を決める規則の集合. 3.1 基本モデル. CR,AR をそれぞれ,技列に対する「変換規則」,「加点規則」と呼ぶ.. 実装するシステムでは体操競技における採点プロセス を次の 7 つ組で定義する.. 変換規則 cr ∈ CR は,次の 3 つ組で表現される.. = (A, E, ElementSequences, CR, AR, CRF, ARF ). cr = (a, n, c). (i). A は属性の集合.. ここで属性 a は集合 A の要素,すなわち,a ∈ A である.この属性は,技列の変換に関. (ii). E = {e = (a1 , . . . , an )|ai ∈ A, 0 < i ≤ n}.. わる技を指定するための属性である.つまり,属性 a を持つ技が変換に関わる技である.n. (iii). ElementSequences = {es = (e1 , . . . , em )|ei ∈ E, 0 < i ≤ m}.. は,技列内に a を持つ技が複数あったとき,いくつまで列内に残すかを示す.c は属性 a. (iv). CR は採点対象を決める規則.. を持つ技を n 個選び出すときの優先度の決め方を明示する条件である.. (v). AR は採点対象に点数を与える規則.. (vi). CRF : ElementSequences × CR → ElementSequences.. 加点規則 ar ∈ AR は,次の 3 つ組で表現される.. ar = (s, n, v) s は属性列である.s の要素は集合 A の要素である.s は加点の対象となる技列内の技の. (vii) ARF : ElementSequences × AR → R. このモデルは体操競技の演技構成を技の列(以降は技列と呼ぶ)としてとらえている.A は技の属性の集合で,具体的な属性としては技の ID,難度,グループ番号などがある.E は技の集合であり,1 つの技は属性の集合として表現される.選手が実施可能な技のすべて がこの集合に含まれる.ElementSequences は技列の集合であり,1 つの要素は集合 E の. 並びを指定する.s の長さが 1 のときもある.n は,この規則が,技列全体に対して加点を 何回適用できるかを示す.v はこの規則によって加えられる点数を示す. これらの規則が,実際のシステムの中でどのように解釈されて実行されるかについては. 4.2 節で述べる.. 要素が並んだ列である.CRF は技列の変換を行う関数で,選手により実施された演技構成 を採点対象のみの構成に変換するために用いられる.ARF は技列の価値点を計算するため. 情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). c 2009 Information Processing Society of Japan .
(4) 149. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系 <rule <rule <rule <rule. name="select4" name="select4" name="select4" name="select4". type="selection" type="selection" type="selection" type="selection". keyname="group" keyname="group" keyname="group" keyname="group". keyvalue="1" keyvalue="2" keyvalue="3" keyvalue="4". key="difficulty" key="difficulty" key="difficulty" key="difficulty". condition="fromBigger" condition="fromBigger" condition="fromBigger" condition="fromBigger". targetnum="4"></rule> targetnum="4"></rule> targetnum="4"></rule> targetnum="4"></rule>. <rule name="at most 9" type="selection" key="difficulty" condition="fromBigger" targetnum="9"></rule> <rule <rule <rule <rule <rule <rule <rule <rule <rule <rule. name="difficulty value A" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="A" value="0.1"></rule> name="difficulty value B" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="B" value="0.2"></rule> name="difficulty value C" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="C" value="0.3"></rule> name="difficulty value D" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="D" value="0.4"></rule> name="difficulty value E" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="E" value="0.5"></rule> name="difficulty value F" type="addition1" apn="anot" keyname="difficulty" keyvalue="F" value="0.6"></rule> name="element group requirement value 1" type="addition1" apn="1" keyname="group" keyvalue="1" value="0.5"></rule> name="element group requirement value 2" type="addition1" apn="1" keyname="group" keyvalue="2" value="0.5"></rule> name="element group requirement value 3" type="addition1" apn="1" keyname="group" keyvalue="3" value="0.5"></rule> name="element group requirement value 4" type="addition1" apn="1" keyname="group" keyvalue="4" value="0.5"></rule> 図3. システムが用いる XML ファイルの一部 Fig. 3 A part of the XML file.. 採点規則は 3.2 節で述べた形式的表現で書かれる.実際にシステムが用いる XML ファイ ルの内容を図 3 に示す.難度表は CSV ファイルによってデータベース化し,ルールブック の難度表にはない ID を表に追加してある.これはシステムが入力から難度表の技を一意に 特定するために必要である.形式的に表現された採点規則の解釈系は 3.1 節で示したモデ ルの関数 CRF と ARF を実現している. システムの入力は,技の ID の列である.採点規則の解釈系が,この ID 列を難度表デー. 図 2 システム全体図 Fig. 2 System overview.. タベースと照合することで 3.1 節で示した技列 es を内部に獲得する.. 4.2 規則の解釈. 4. 実. 装. 4.1 概. 要. 3.2 節で述べたように,採点規則を 2 種類に分類し,形式的に表現した.本節では,それ ぞれの規則をもとに,採点規則の解釈系が行う処理について説明する. 採点規則の解釈系が,ある変換規則 CR を解釈し技列 es にそれを適用する処理 CRF (es,. 実装するシステムの全体図を図 2 に示す.プログラムは Java でおおよそ 2000 行で実現 され,システムはそのプログラムを含む次の 3 つの部分からなる.. • 難度表データベース. A, N, C) は,図 4 のように記述できる.A は属性,N は個数,C は優先基準であり,採点 規則が書かれた XML ファイルから得られる. 採点規則の解釈系が,ある加点規則 AR を解釈し技列 es にそれを適用する処理 ARF (es,. • 採点規則 XML ファイル. S, N, V) は図 5 のように記述できる.S は属性列,N は回数,V は価値点であり,採点規. • 採点規則の解釈系. 則が書かれた XML ファイルから得られる.. 情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). c 2009 Information Processing Society of Japan .
(5) 150. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系 var n : integer; var tempseq:sequence; n := 0;. var n : integer; var l : integer; var r : boolean; var t : integer; var score : real; n := 0; l := S の長さ; r := true; t := 0; score := 0.0;. begin { 属性 A を持つ要素の列 tempseq を作成 } while n < es の長さ do begin if es の n 番目の要素が属性 A を持つ then begin tempseq に es の n 番要素のコピーを追加; end n := n + 1; end; { tempseq のソートと es の変換 } if N < tempseq の長さ then begin tempseq を条件 C でソート; es から tempseq 内の N + 1 番目以降の 要素と同じものを削除; end end. 図 4 変換規則解釈の処理 Fig. 4 The process of conversions.. 4.3 評. begin while N > 0 and n + l < es の長さ do begin t := 0; while t < l and r = true do begin if es の n + t 番目の要素が S の t 番目の属性を持たない then begin r := false; end t := t + 1; end; if r = true then begin score := score + V; N := N - 1; end n := n + 1; end; end. 図 5 加点規則解釈の処理 Fig. 5 The process of additions.. 価. 本節では,入力と出力の関係のみに着目するテスト手法であるブラックボックステストに より実装したシステムの評価を行う.システムの入力は演技構成を表す技の ID の列,出力 はその A スコアである.よって,この 2 つを組にして 1 つのテストデータとする.それぞ れの演技構成に対する A スコアは,実際の大会で審判が算出した結果を用いる.大会での. A スコアの記録が存在しない演技構成に対しては,審判免許保持者に採点を依頼し,その結 果得られた A スコアをその演技構成の A スコアとする. システムの入力となる技 ID の列は,たとえば次のような形式である.. 89, 94. 99, 72, 70. 30. 39. 10. 125. 89, 95.. たものが 1 つのテストデータである. 実際に用いたテストデータの総数は 48 個である.テストデータのもととなる演技構成は. 各 ID の間は「コンマ」もしくは「ピリオド」を挟まなければならない.コンマはその両隣. 次の 3 対象:. の技が接続(連続)されていることを意味する.ピリオドはその両隣の技が接続されていな. (1). 国際大会レベル選手,. いことを意味する.これらは組合せ価値点の算出に必要な情報で,正しい採点を行うために. (2). 大学生国内上位レベル選手,. は必ず必要となる情報である.このような ID 列とその採点結果である A スコアを組にし. (3). 大学生国内下位レベル選手,. 情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). c 2009 Information Processing Society of Japan .
(6) 151. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系 表 2 実装したシステムの正解率 Table 2 The result of the black box testing. テストデータ. データ数. 正解率. 国際大会レベル選手の演技構成 大学生国内上位レベル選手の演技構成 大学生国内下位レベル選手の演技構成. 12 8 28. 100% 100% 100%. 規則と用いた手法は異なるが,義務論理を用いた研究がいくつかなされている2)–7) .その中 で,義務論理を用いた規則のモデル化と解析7) や取引の過程と取引協定の遵守を確認する 手続きに関するもの4) が行われている. また,本研究はスポーツで選手の評価に用いる採点を自動化した.これは,審判の採点活 動をコンピュータにより自動化し,誤審を防ぐことを 1 つの目標としている.対象とする 競技は違うが,誤審への問題意識は様々な競技に存在し,そのコンピュータによる解決が模. から得た.国際大会レベル選手の演技は 2008 年北京五輪の「種目別ゆか」と,第 13 回ワー. 索されている.たとえば,射撃競技における採点を画像処理を用いて自動化したものがあ. ルドカップ決勝に出場した選手の演技構成である.大学生国内上位レベル選手の演技は西日. る8) .また,センサを用いた,ボクシングの自動採点システムについても模索されている9) .. 本学生体操競技選手権大会の上位選手,大学生国内下位レベル選手の演技は西日本学生体操. さらに,フィギュアスケートの採点現場では採点の一部を自動的に行うシステムがすでに用. 競技選手権大会の下位選手の演技構成と,中国四国学生体操競技体操競技大会参加者の演技. いられている.. をそれぞれ用いる.国際大会レベル選手の演技と西日本学生体操競技選手権大会の上位選手. 体操競技の採点を完全に自動化するためには,画像処理を用いた技の特定,実施減点の決. の演技構成により,組合せ加点が多く発生する演技構成に対する検証を行う.それ以外の選. 定が必要であると考えられる.その実現へ向けた試みはなされている10) .しかし,実用に. 手の演技構成により,組合せ加点がほとんど発生しない,技列が短い演技構成に対する検証. は至っていない.本研究では採点規則を形式的に表現し,それを技列へ適用することで A スコアの算出を自動化している.技列は技の ID 列から一意に導くことができる.画像処理. を行う. テスト結果を表 2 に示す.入力される演技構成に対してシステムが行う採点結果が,実 際の審判による A スコアと完全一致したら正解とした.システムは,用意したすべてのテ ストデータに対して正しい採点を行うことができた.また,すべてのテストデータに対し て,システムは入力から,1 秒足らずで採点結果を出力できた.採点の現場では,審判は,. による技の特定が可能になれば,特定された技を本稿で述べた技の ID と対応させることで. A スコアの算出を完全に自動化することができる.. 6. お わ り に. 選手の演技終了から約 1 分程度で A スコアを導き出さなければならない.よってこの結果. 2006 年度版男子体操競技採点規則を形式的に表現し,その解釈系を実装した.また,実. は,システムが,選手の演技終了後から審判が A スコアを導き出すまでにかかる時間を大. 装したシステムのテストを行い,正しい結果が十分な速さで導き出されることを確認した.. 幅に短縮できる可能性を示している.. 本稿では一貫して「ゆか」について述べてきたが,他の種目の規則も本稿で述べた方法で形. システムの計算量に関する考察を行う.システムは変換規則を実行する際にバブルソー トを行う.システムの入力列の長さを n とすると,技列の全体がソートの対象となる場合, 2. 実装したシステムの計算量は O(n ) となる.この計算量は n の値が極端に大きくなると現. 式的に表現可能であり,今回実装した解釈系により採点を自動化することができる. 実際の競技会では,審判員は国際版採点規則11) の難度表に記される記号系を用いて演技構 成を紙に記述している.よって,その記号系を本稿で述べたシステムのユーザインタフェー. 実的な時間で計算することが不可能になることを示しているが,システムが対象とする体操. スに採用すると,実際の競技会での利用が現実的になる.本稿で述べたシステムは,ID の. 競技では,長い演技構成でも n が 20 程度であるため,どのような演技構成に対しても現実. 列を入力することで演技構成をシステムに入力している.よって,タッチペンと文字認識デ. 的な計算時間で計算を終了することができるシステムであると考えられる.. バイスにより記号系のパターン認識が可能であれば,その認識結果を ID に対応させること. 5. 関 連 研 究. でその記号系を本システムと利用者とのインタフェースにできる.. 本研究では,規則を形式的に表現することで,コンピュータで実行可能な表現に置き換え. 採点規則を熟知していない競技者に対して演技構成作成の支援に用いることも可能である. た.自然言語で表現された規則を形式的な表現に置き換えたという意味では,対象とする. と考えられる.つまり,本システムが行っていることは体操競技者に対する教育支援システ. 情報処理学会論文誌. 実装したシステムが可能とする「演技構成の入力によりその採点を行う」という処理は,. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). c 2009 Information Processing Society of Japan .
(7) 152. 体操競技採点規則の形式的表現とその解釈系. ムが持つべき部分処理ともとらえることができる.その観点に立てば,目標とする点数を入 力として,その点数を達成可能な演技構成を導くシステムも本稿で述べたシステムの応用と して考えられる. 最後に,本稿で述べたシステムは採点規則と難度表を外部ファイル化している.実際の競 技会では,参加する選手のレベルに合わせた規則,国内大会だけで適用する規則が存在する 場合がある.また,選手が新たな技を発表する大会では難度表にその技を加えなければなら ない.このような場合に,本稿で述べたシステム構成であれば,外部ファイルの差し替え,. bedded processor design contest — outstanding designs 2006, pp.123–171 (2006). 9) Gin, G., Hahn, A., Hayes, J.P., Hill, C.M., James, D.A. and Partridge, K.T.: A wireless-sensor scoring and training system for combative sports, Proc. SPIE, Vol.5649, pp.402–408 (2005). 10) 辛 貞殷,小沢慎治:動画像処理によるスポーツ運動解析の研究—鉄棒競技の自動採 点システムに向けて,電子情報通信学会技術研究報告 PRMU,パターン認識・メディ ア理解,Vol.108. 11) International Gymnastics Federation: Code of Points (2006).. もしくは部分的変更を行うことでそれぞれの競技会への対応が可能となる.このようなシス. (平成 20 年 11 月 19 日受付). テムが実用化されれば,どの競技会でも,審判員は技の特定,記録を正確に行えるだけで選. (平成 21 年 1 月 14 日再受付). 手の演技構成の得点を正確に算出することが可能となる.また,採点規則の妥当さの検証シ. (平成 21 年 2 月 17 日再受付 (2)). ステムとして,採点規則の検討組織が用いることも可能であると考えられる.. (平成 21 年 2 月 26 日採録). 参. 考. 文. 献. 坂庭 紳悟. 1) 財団法人日本体操協会:男子体操競技採点規則 2006 年版 (2006). 文献 11) の翻訳版. 2) Jones, A.J.I. and Sergot, M.: Deontic logic in the representation of law: Towards a methodology, Artificial Intelligence and Law, Vol.1, No.1, pp.45–64 (1992). 3) Daskalopulu, A. and Sergot, M.: The representation of legal contracts, AI and Society, Vol.11, pp.6–17 (1997). 4) Governatori, G., Milosevic, Z. and Sadiq, S.: Compliance cheking between business processes and business contracts, Proc. 10th IEEE international enterprise distributed object computing conference, pp.221–232 (2006). 5) Governatori, G. and Milosevic, Z.: Dealing with contract violation: formalism and domain specific language, EDOC Enterprise Computing Conference, 2005 9th IEEE International, pp.46–57 (2005). 6) Governatori, G.: Representing business contracts in RuleML, International journal of cooperative information systems, pp.181–216 (2005). 7) Antoniou, G., Billington, D., Governatori, G. and Maher, M.J.: On the modeling and analysis of regulations, Proc. 10th Australian conference on informations systems, pp.20–29 (1999). 8) Yang, Y., Li, Z., Zhao, Y. and Kan, X.: Automatic scoring system, Nios II Em-. 情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用. Vol. 2. No. 3. 146–152 (Dec. 2009). 2007 年岡山大学工学部情報工学科卒業.2009 年岡山大学大学院自然科 学研究科博士前期課程修了.現在,(株)ゼンリン勤務.. 笹倉万里子(正会員) 京都大学工学部情報工学科卒業,1995 年奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科博士前期課程修了.1996 年同大学院大学情報科学研究科 博士後期課程中退.同年岡山大学工学部情報工学科助手.2003 年同大学 大学院自然科学研究科助手.2007 年同助教,現在に至る.博士(工学). 情報視覚化に関する研究に従事.日本ソフトウェア科学会,人工知能学会,. IEEE-CS 各会員.. c 2009 Information Processing Society of Japan .
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