航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任
について
著者
浅野 裕司
著者別名
Y. Asano
雑誌名
東洋法学
巻
33
号
1
ページ
33-85
発行年
1989-12
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003545/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の
賠償責任について
浅 野裕 司
はじめに 一九八八年一二月、スコットランド上空においてパンアメリカン航空一〇三便が爆破され、二七〇人が死亡した。 平和なる世界を指向する風潮に逆行するかのようなテロリズムが横行し、その対策に多くの国が苦慮している。テロ リズムと一口に言っても内容的には複雑にして細分化された各種の犯罪行為があり、その政治的、思想的背景も様々 である。空法に関連する﹁航空テロリズム﹂は、その多くが国際テロリズムであり、形態内容は、ハイジャック、サ ボタージュを含み、国際社会に脅威を与えることは勿論のこと、航空機の乗客・乗員に直接被害を及ぼすことはいう までもない。国際航空旅客運送において、特別の安全を確保する責任を負わされている航空会社及び空港当局は、航 空テロリズムが旅客に被害を及ぼした場合、その損害を如何に賠償すぺきかという問題がある。ハイジャック、サボ東洋法学
三三航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 三四 タージュ、テロリズムに伴う事件︵国<Φ簿︶が事故に充当するかという問題もあるが、空港内で起きた事故もしくは 事件について、﹁国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約︵一九二九年ワルソ⋮条約︶﹂第一七条が適用 されるのか、それとも国内法が適用されるのかという問題がある。この第一七条の解釈をめぐる学説、判例は必ずし も一致せず、また条約起草当時と現在では、空港のシステムや航空運送の実態も大きく変革しており、ワルソー条約 以後のハーグ議定書、グァテマラ議定書といったワルソー条約を改正する条約でさえ、明確に対処し得ないものとな っている。そこで、航空テロリズムに関連する条約や法律と併せて航空会社の責任について若干の論究を試み、大方 の御叱正、御批判を仰ぐことにしたい。 テロりズムに関する宣言と国際協力体制の法的枠組 一九八九年アルシュサミット︵主要先進国首脳会議守08巨08ほ禽霞8焦器く窪陣&蕊群一餌ξ匙奏蓉&号欝8篤・ 。奮︶は、テロリズムに関する宣言のなかで﹁我々は、すべての旅行者の安全について深く懸念し、国際民間航空に 対する凶悪な攻撃及び航空輸送の安全に対するテロリストグループからの度重なる脅威に憤慨して、民闇航空に対す るすべての形態のテロリズムと闘うとのコミットメントを再確認する。我々は、航空機のハイジャック及び破壊工作 からの保護のため国際的に合意された措置を強化することに貢献するとの決意を改めて表明する。我々は、スコット ランド上空において二七〇人の死者を出した先般の航空機に対する攻撃を特に非難する。我々は、保安措置を一層強 化することにより、このような攻撃を防止することに優先的に取り組むことにつき意見の一致をみた。我々は、この
目的に向けて国際民間航空機関︵回簿①旨蝕o欝一Ω<一一︾︿翼脚80茜墜藍ぎ糞ICAO︶理事会が最近採択した作業 計画を実施に移すことが重要と考える。我々は、また爆発物探知方法の改善の必要性についても意見の必要性につい ても意見の一致をみた。我々は、現在ICAOが優先事項として取り組んでいるプラスチック爆発物及び薄板状爆発 物に探知用の識別策を施すための適当な国際的体制作りの努力を支持する﹂としている。国際テロリズムの防止策 は、このように第四回︵ボン︶サミットの声明以来、国連及び国連専門機関をはじめ、地域的組織など様々のフォー ラムにおいて、重要な検討課題の一つとされてきた。航空機をめぐる犯罪の条約による規制については、ハイジャッ ︵1︶ ク防止関連三条約があり、一九六三年﹁航空機内で行われた犯罪その他のある種の行為に関する条約︵○臼く①導一8 き○雷蓉8零伽9誉ぎ○静魯︾緕Oo欝欝葬&窪ω8巳︾嘗3ヰ︶︵一般に東京条約と称される︶﹂、一九七〇年 ﹁航空機の不法奪取の防止に関する条約︵08く①糞一8︷9島。ω考鷲。。 。旨昌亀¢巳餌鼠巳ω。一蟄冨9︾ぎ鎧ε︵一般 にハーグ条約と称される︶﹂、一九七一年﹁民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約︵○臼く①簿一臼︷R 島の9も嘆の毘魯無¢巳鋤烹ε︾。δ。 りお蝕誘紳昏のω織の蔓9Ω琶︾蕊蝕8︶︵一般にモントリオール条約と称される︶﹂ の三条約は、国際協力体制の法的枠組を示すものとして有名である。殊に、ハーグ、モントリオ⋮ル両条約が容疑者 の引渡乃至訴追︵鋤縁留留器雲齢冒鎌8器︶を締約国に義務付けている点及び刑事裁判管轄権の設定に関し犯入の逃 ︵2︶ げ込み場を作らないという観点から一種の世界主義的な考え方を導入している点が注目される。国際テロリズムの防 ︵3︶ 止及び処罰に関する国際協力体制を整備するため、これまで国際連合において作成された﹁国家代表等保護条約﹂及 ︵虞︶ び﹁人質行為防止条約﹂の二つの条約の早期締結が国際的な要請とされてる。両条約の締結に伴う必要な国内法の整
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三五航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 三六 備が行われ、この種のテロ行為の防止及び処罰に関する国際協力に遺憾なきを期さなければならない。各国の司法実 務は、国の伝統的な主権の制約、特殊な法体系、国内情勢などに拘束されるとはいえ、立法、訴訟手続、刑事罰の各 分野における実務的発展と共に、国際的観点からの必然的な調和を実現するという方向に動いているが、このような 状況の下において、各国の政治体制や司法組織を尊重する一方、国際化を指向する世界的基準に如何に調和させ、調 整させるかなどの具体的方策を論究していくことの重要性が指摘される。伝統的な国際協力は、犯罪人引渡、捜査共 助の分野において一応の成果を得ているが、国際テ皿防止策については、その背景にある対立する国際的イデオロギ ー、宗教問題、民族間の紛争などによる政情不安、経済的危機といった諸要因が国家主権と国益問題とも交錯して、 有効策の策定を困難ならしめており、国際テロと戦うには国際的協力が本質的に要求され、すべての対決と暴力をや めるよう呼びかける行動を開始すべきだとする意見、さらには、テpリズムと戦うために、国際統一法典の制定と国 際刑事裁判所の設立を提唱するものも一九八六年秋の第一一回国際社会防衛会議に表明がなされている。航空テロリ ズムについては、従来のハイジャックの態様が変化し、単に目的地に逃亡するためとか、政治亡命するために乗取り を図るといったものが、最近は乗客・乗員を死亡または負傷させ、国から多額の金銭を脅し取り、さらに乗客が脱出 しおらないうちに航空機を爆破するといったように凶暴化しつつある。勿論、国際テロリズムの定義と解釈について は、政治的乃至イデオロギー的な主張が議論の根底に生ずることは不可避であり、世界各国がこの点の合意を得るこ とは非常に困難である。こうしたことから、ある程度共通の価値観を共有する諸国が地域的レベルで条約を作成する ︵5︶ ことがある。コ九七一年の米州機構加盟国により合意されたテロリズムの防止及び処罰に関する条約﹂及び﹁一九
︵6︶ 七七年の欧州対テロリズム規約﹂などはその例といえよう。 こうした国際テロリズム規制の諸条約の特色は、国際テロリズムに典型的な犯罪類型に関し、動機・目的み如何を 問わず、その重大性を考慮した適当な刑罰を科す義務を各締約国に負わせており、具体的法定刑や未遂・加担行為の 対象範囲などについては締約国がその国内法制に照らして判断できる。また、裁判権設定については、一般的な世界 主義とせず、犯罪と直接関係する国の第一次的裁判管轄権と、犯人所在国の世界主義的裁判管轄権を組み合わせるこ とにより、何れかの国で犯人訴追のための手続が必ずとられることを確保する。さらに、対象犯罪を引渡犯罪とし、 条約前置主義の国については、その条約自体が引渡条約の機能を持つほか、引渡の円滑化を確保する措置を定めてい ︵7︶ ることなどである。
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︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ 浅野・野ロ一、改訂空法﹂二一頁以下。 山本条太﹁国際テロリズム規制のための法的枠組﹂ジュリスト漁八七一、五〇頁。 切o毒①雰”総ωは鉱号畷$昏8犀9冒8旨餌瓜8巴い帥毒おo o鱒。マ一ω魯 ︵︶8︿o馨博opO欝簿o汐o<聲菖8き傷勺β巳。 。﹃奪①旨○︷9一導窃g 。αq傷冒馨冒富旨簿一〇鋸一才汐o富9&︾①吋ωo霧︾ Uゼ一〇鋸簿睡oおo導幹一〇 〇固■鍔お冠”マ餐6 夢審彗緯坤o猛一8”︿窪鋤霧譜鉱霧け浮①紳接嘗αqo︷ぎω鍵αq①ω●一〇 〇HU蜜一零O噸℃●に器. 一〇同い窯お置︶層きo濫・ 閃黛○娼$⇒↓器9なωR一窃︸298。 犯罪防止の分野における国際連合の活動等については、長島敦﹁犯罪防止と犯罪者の処遇﹂が詳しい。東洋法学 三七
ぎo一&汐αq航空テ冒リズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 三八 二 欧州諸国におけるテロ対策立法 一九七七年一月二二日に﹁テロリズムの防止に関するヨーロッ。ハ規約﹂が締結されているが、こうした規約や欧州 各国の立法の背景は、一九七二年五月のテルアビブ・ロッド国際空港事件及び一九七三年八月のアテネ・ヘレニコン 空港事件に端を発しているといってもよいであろう。論タリアは、 一九七八年、三月二一日、﹁重大な犯罪の防止及 び処罰に関する刑法及び刑事訴訟法﹂︵ZR奪o需壼澄冥08ω艶Φご聴糟ご費の墓欝δ器①ポお冥霧6器蝕αq疑くζ$甑︶ を緊急政令︵留R卑o山紹鴨︶第五九号として制定した。この法律は、﹁重大な犯罪﹂︵α q轟≦器蝕︶の防止及び処罰を実 現するために刑法と刑事訴訟法に必要な一部改正を行ったものであり、その内容は、まさにテロ行為防止法ともいう ︵1︶ ぺきものである。この一九七八年の重大犯罪防止法というべき法律は、テロ対策を強化するため、実体法と手続法の 両面にわたり、重要な修正と追加をなしている。その中で、刑事訴訟法については、第二三八条︵被疑者の検束︷醇導○︶ を改正して司法警察官及び公安職員の権限を強化したこと、司法警察官による電信・電話の阻止、中断または傍受に ︵2︶ つき、その要件及び手続を緩和すると共に、電信・電話の予防的傍受の制度を採用したことが注目されている。一九 七九年一二月一五日の緊急政令﹁民主的秩序維持のための緊急措置﹂が発せられ、これが修正され、法律に転換され て、一九八○年二月六日法律一五号の﹁民主的秩序維持法﹂となった。同法は、テロ行為または民主的秩序の破壊の 目的による犯罪を断固として制圧するため、実体法と手続法に重要な修正と追加を施している。また悔悟者︵評馨笹︶ に対する刑の軽減や不処罰の規定を設けた。刑事訴訟法の領域では、テロリズム目的で犯した罪などについては、起
︵3︶ 訴前の拘留期間が三分の一延長されることになった。西ドイツにおいても、一九七六年八月一八日に成立し、同年九 月二〇日から施行されたテロリスト団体結成の罪などの新設、刑事訴訟法の所要の整備などを内容とする﹁刑法、刑 事訴訟法、裁判所構成法、連邦弁護士規則及び行刑法を改正する法律︵○①ωΦ震N舞︾&禽旨お留。 。ω富蒔窃器げ8汀。 ・︶ 山霞ω財織蜜08。 。8a霊お儀ROo噌一〇窪ω<Φほ器。 喰目αQのαQΦω①酔αq①。 。ム醇ω琶伽霧触8窪。 。§巽鋤一誘o雛壼お鑑鼠儀Φのω群織く&讐αqωαQΦωΦ− 幕。 喩<o目蜀︾轟蕊け一零ρωOωH﹂ψ曽o 。一とH俗称﹁テロ防止法︵︾馨一よ醇8茜①器欝︶﹂があり、象た一九七八年 四月一四日には、刑事訴訟法改正法︵○Φのo欝慧稀>泣Φ峯彪α醇留βな8誘ωR9一8αQ<o旨累・︾︾三お蕊・ω○ゆ猶 ︵4︶ 窃●おごが成立している。 西ドイツでは、一九七七年九月のシュライヤー事件、それに引き続いて起きたルフト・ハンザ機ハイジャック事 件、それの失敗の後に、シュタムハイム刑務所で起きたバ⋮ダー・マインホフ一味の自殺を契機として、テロリスト のシンパの弁護士にょる拘置所や刑務所内にピストル、爆薬などの不法物件が大量に持ち込まれていた事件が発覚 し、これらの特殊な事件の被疑者、受刑者、弁護士について、手続法上、特別な対抗措置がとれることとなった。一 九七六年八月の﹁刑法・刑訴法等改正法﹂に続き、一九七八年四月の﹁刑訴法一部改正法﹂により、テ買リスト集団 を構成する者と疑われた者に対して、捜索、逮捕、弁護人の排除、弁護人との交通接権を厳しく制限乃至不許可とす る規定が設けられた。一九八七年一月の﹁刑事手続法改正法﹂は、刑事裁判所の負担軽減を図り、併せて、弁護権に も修正を加え、略式命令手続にも手を入れている。西ドイツは、テロリストに対して国際的に連帯して対抗すべきで あるとする国際条約に応じて成立した一九八六年一二月の﹁テロジズム防止法﹂がある。これらの法律的対抗措置に
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三九航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 四〇 よって、テロリズムの前段階である﹁テロ団体の編成∵﹁その支援∵﹁煽動﹂・﹁違法行為についての情報の不告知﹂ ︵5︶ などが処罰されることになった。 ︵1︶拙稿﹁空港夕⋮ミナル内のテロ行為とワルソー条約﹂東洋法学第二二巻二号六七、六八頁。 ︵2︶森下忠﹁イタリア刑事法の変遷と展望﹂ジュリスト臨九一九号、三八、三九頁。 ︵3︶森下、前掲 三九頁。 ︵4︶ 拙稿、前掲 六八頁。 ︵5︶≦毘Rgo竈︸ω弩留器要ぴ穿U。暮の琶き斜貯︾●評①マ切。譲爆竃同︵犀ωαQyω慧富9馨瓢牙一。鉱蓉αQ置国霞o短弘。。 。伊 ω.贈舞 O農諒?竃鼠一〇〒90貫ω簿無<o目讐αq。 。αQ①ω09.戯.効焦rおGo9Ωきω菊o抵望ω窪無く禽貯ぼo霧潟。算卿8.き︷r竈o 。8ω辱おo o ︷い なお、条約上の義務を履行するための国外犯処罰規定には、包括的な国外犯処罰規定を設け、条約締結の都度、国外犯処罰 規定を改正するといったことを避けようとするものがある。西ドイツ刑法﹁第六条︵国際的に保護された法益に関する国外 での行為︶ドイツ刑法は、さらに、行為地法には関係なく、国外で犯された次の各号の一つに当たる行為に適用される。⑨ ドイツ連邦共和国に対して拘束力のある国家間の条約に基づき、それが国外において犯された場合にも訴追せられるべき行 為﹂。オ⋮ストリア刑法﹁第六四条︵行為地の法規を掛酌せずに処罰される外国における可罰的行為︶1外国においてなさ れた左の行為は、行為地の刑罰法規に関係なくオ!ストリアの刑罰法規によって処罰する⑥外国でなされた場合でも、その 行為地の刑罰法規に関係なくオーストリアがその訴追を義務付けられているその他の可罰的行為﹂。イタリア刑法﹁第七条外 国において次に掲げる罪を犯したイタリァの国民または外国人は、イタリァの法律に従って罰する。⑤その他、法律の特別 の規定または国際条約により、イタリア刑法を適用すべき旨を定めたすべての罪﹂。宮沢浩一﹁西ドイツ刑事法の変遷と展 望﹂ジュリスト漁九一九号二七頁塚下。河村博﹁諸外国における国家代表等保護条約等関連立法の動向獄ジュリスト栴八七
一号五九頁以下ひ 三 わが国内法による対処とハイジャック防止関連三条約 一九六三年の東京条約は、全七章二六力条からなり、主に飛行中の航空機内犯罪または航空機の安全を害する行為 に対する航空機の登録国の裁判管轄権、さらに機長に犯罪や安全を害する行為に対する取締権限を認め、この権限に 対する着陸国の義務を定めるほか、特にハイジャックに対処するための規定が含まれている。東京条約制定当時のハ イジャック発生件数は僅少であり、同条約もハイジャックを主たる規制対象とはしていなかったが、一九六九年一二 月の同条約発効時期にはハイジャックの発生件数が危機的に増加し、東京条約の規定では対処し得なくなったため、 一九七〇年ハーグ条約の主要な内容は、ハイジャック犯人に締約国が重い刑罰を科すことを義務付け、犯人引渡に関 する規定などからなり、締約国の何れかにおいて犯人を処罰する体制を確立してハイジャックを抑止しようとした。 さらにハイジャック以外の民間航空に対する不法な行為を広く規制するために、一九七一年モントリオール条約は、 飛行中のみならず業務中の航空機や航空施設に対する破壊その他安全を損なう行為についても締約国に重い刑罰を科 す体制を採ることを義務付け、裁判権の広範囲な設定、犯人の引渡などを主要な内容とする。また国際条約以外に二 国間協定でハイジャックを防止する体制も採られている。国交を断絶しているアメリカ合衆国とキューバ間で一九七 三年二月に締結された航空機または船舶の不法奪取及びその他の犯罪に関する協定は、犯人引渡及び処罰などの規定 からなり、不法奪取行為を抑止する実効性を現実に発揮した二国間協定として高い評価を受けている。わが国は、昭 東洋法学 四一
航空テ蟹リズム規制の諸条約と航空会社の賠償貴任について 四二 和四五年三月三一日に発生した日航機よど号事件を契機に東京条約の批准を行い︵昭和四五年六月一日条約第五号を もって公布︶、同時に国内法の整備に着手し、昭和四五年六月一八日法律第二二号をもって﹁航空機内で行われた 犯罪その他ある種の行為に関する条約ご二条の規定の実施に関する法律﹂、同年五月一八日法律第六八号をもって ﹁航空機の強取などの処罰に関する法律﹂︵ハイジャック処罰法、または航空機強取法と略称される︶、同年五月二三 日法律第九五号をもって﹁航空法の一部を改正する法律﹂を公布し、それぞれ施行した。航空機強取法の内容は、航 行中の航空機の強取または運航支配については、未遂も含めて、無期または七年以上の懲役に処し︵強取法一条︶、 航空機強取などの罪を犯し人を死亡させた場合は死刑または無期懲役︵強取法二条︶、偽計または威力を用いた航空 機の針路変更その他の正常な運航阻害の場合は一年以上一〇年以下の懲役に処す旨を定め︵強取法四条︶、刑法第二 条の例に従って国外犯の犯罰もなし得る︵強取法五条︶というものである。航空機の強取は刑法上の強盗罪︵二三六 条︶に類似するが、犯罪の性質が個人の生命、身体、自由、財産など個人的利益のみならず、航空機の安全運航に対 する危害という社会的法益をも侵害するため、強盗罪より重い罰則を置く新しい犯罪として規定された。また航空法 ︵昭和二七年法律第二三一号︶の一部改正法によって、航空機内の安全阻害行為に対して機長が抑制措置を執り得る 規定︵航空法七三条の三︶が新設された。その後昭和四八年七月二日に発生したベンガジ空港日航機爆破事件を契 機に、飛行場設備、航空保安施設を損壊する航空危険罪に対して二年以上の有期懲役を定めた﹁航空の危険を感じさ ︵1︶ せる行為等の処罰に関する法律﹂︵航空危険法と略称される︶が成立した。なおわが国はハイジャック防止関連三条 約にはすべて加盟している︵ハーグ条約は昭和四六年一〇月二日条約第一九号、モントリオール条約は同四九年六
月一九日条約第五号をもってそれぞれ公布︶。しかし、昭和五二年九月二八日に発生したダッカ空港日航機ハイジャ ック事件では、犯人が逃亡の過程でハーグ条約の未加盟国に着陸を繰り返すなど法制の不備が痛感された。そこで緊 急の国内的ハイジャック防止対策として、この種事犯の未然防止と犯人に対する実効ある科刑実現を目的とした﹁航 空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律﹂が同年コ月二九日法律第八二号をもって公 布され、同年一二月一九日より施行された。同法は既存の航空機強取法、航空危険法、旅券法のそれぞれ一部を改正 するものであった。改正の具体的内容は、航空機を強取した者がその機内で人質をもって、第三者に対し不法な要求 をしたときは、無期または一〇年以上の懲役に処する旨の規定を新設し︵強取法一条二項︶、航空危険罪の法定刑を ︵2︶ 引上げて三年以上の有期懲役に改め︵危険法一条︶、また新たに業務中の航空機内に爆発物などを持込む罪を設け ︵危険法四条︶、爆発物については三年以上の有期懲役、銃砲刀剣類または火災びんその他航空の危険を生じさせる 恐れのある物件の持込みについては二年以上の有期懲役を定めた。さらに現在刑事訴追を受けている者に対する旅券 発給制限の対象となる罪の範囲の下限を改正前の長期五年以上の刑に当たる罪から、長期二年以上の刑に当たる罪に 引下げ︵旅券法一三条二号︶、旅券の返納命令の通知内容を公告して通知に代える制度を新設し︵旅券法一九条の 二︶、その他旅券法違反の罰則の強化︵旅券法二三条︶からなる。なお、これら以外のハイジャック再発防止対策とし ては、﹁人質による強要行為等の処罰に関する法律﹂︵昭和五三年法律第四八号︶が制定されている。同法は、航空機 強取法上の罪を犯した者がその航空機内にある者を人質にした強要行為、及び航空機の場合以外の人質強要行為を処 罰する。次に、ハイジャック防止関連三条約の内容を個別的に概観してみることにする。
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四三航空テ覆リズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 四四 東京条約の適用範囲は、@刑法上の犯罪、及び、㈲航空機または機内の人・財産の安全を害し、機内の秩序・規律 を乱す行為であり、この場合の安全を害する行為とは、航空機または機内の人・財産の安全を現実に害する行為のほ か、害する恐れのある行為も含まれ、それが犯罪であるか否かを問わない︵一条一項︶。そしてこれらの犯罪または 安全を害する行為が締約国において登録された航空機内の者によって、その航空機の飛行中︵ぼ断凝窪︶か、その航 空機が公海の水面上に浮遊している間、またはどの国の領域にも属さない地域の地上にある間になされた場合にこの 条約が適用される︵一条二項︶。この条約における航空機の飛行中とは、動力が離陸のために作動した時から着陸の 滑走が終了する時迄と看倣される︵一条三項︶。なおこの条約は、軍隊︵巳洋Φ蔓︶、税関︵象警o霧ω︶または警察 ︵唇ぎの︶の役務に使用される航空機には適用されない︵一条四項︶。裁判権についてこの条約は、航空機の登録国が 機内犯罪及び行為について裁判管轄権を有すると定め︵三条一項︶、登録国にいわゆる旗国法︵国お鴨奪のo讐︶に従っ た裁判権を認めた。第三条一項にいう行為とは、犯罪にあらざる民事罰の対象となる行為を意味する。機内犯罪につ いては登録国に裁判権を設定するために必要な措置を採ることを義務付ける︵三条二項︶。登録国によって裁判権が 設定される場合であっても、登録国以外の締約国が国内法に従って行使する刑事裁判権は排除されない︵三条三項︶。 ただし、登録国以外の国は、飛行中の航空機に対し、その機内で行われた犯罪がその国に対して何らかの影響を及ぽ す一定の場合を除き、自国の刑事裁判権を行使するために干渉することは許されない︵四条︶。登録国以外の国に影 響を及ぼす一定の場合とは、その犯罪が、@その国の領域に影響を及ぼす場合、㈲その国の国民またはその国に恒久 的居所を有する者によって行われた場合及びこれらの者に対して行われた場合、@その国の安全を害する場合、㈲そ
の国に施行されている航空機の航行または操縦に関する規則に違反する場合、さらに⑥その刑事裁判権の行使が多数 国間協定に基づくその国の義務の遵守に必要な場合である。犯人引渡に関して東京条約は、機内犯罪を登録国の領域 内の犯罪と看徹す︵一六条一項︶反面、締約国はこの条約によって犯罪人引渡の義務を負わないとして︵一六条二 項︶、既存の犯罪人引渡条約及び締約国の国内法に委ねる態度を採る。東京条約第三章は、機長の公法上の権限に関 する規定を置く。機長権限に関する第三章の規定の適用範囲は、機内犯罪が行われたか、行われようとした場合が、 ω登録国以外の国の領空、公海あるいは無主地の表面である場合はすべて、⑭登録国の領空、公海あるいは無主地の 上空である場合は、航空機の最後の離陸地点または次の着陸予定地点が登録国外にあるか、または犯罪や行為が行わ れた後、航空機が登録国以外の国の領空を飛ぶ場合にのみ限定される︵五条一項︶。航空機の飛行中の期間を定めた 第一条三項は、機長の権限に関する限り拡張され、すべての乗降口が乗降の後に閉ざされた時からそれらの乗降口の うちいずれか一つが降機のために開かれる時迄とされる︵五条二項︶。機長は機内の犯罪及び安全危害行為に対し て、拘束を含む必要な抑制措置を執ることができる︵六条一項︶。この場合の抑制措置とは、@その航空機またはそ の機内の人・財産の安全の保障、㈲その航空機内の秩序及び規律の維持、@犯罪などの被疑者を権限ある当局に引 渡、または降機させることを可能にすることの目的に必要でかつ妥当な措置である。機長は自己が拘束する権限を 有する者を拘束するため、他の乗組員に援助を命じまたは承認することができる。機長は旅客に対する援助の要請ま たは承認はなし得るが、援助の命令は認められず、緊急の場合は、乗組員または乗客に機長の承認を得ないで安全に 必要な妥当防止措置を執ることが認められる︵六条二項︶。被疑者に対する機長の権限としては、被疑者の行為の内
東洋法学 四五
航空テロジズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 四六 容如何によって降機と引渡が認められる。機長は、航空機または機内の人・財産の安全を保障しまたは機内秩序維持 に必要なときは、機内で安全危害行為を行ったと信ずるに足る相当な理由がある者をこれを行おうとしている者も含 めて、その航空機が着陸する国で降機させることができ︵八条一項︶、この場合機長は被疑者を降機させた国の当局 に対し、降機させた事実と理由を報告しなければならない︵八条二項︶。また登録国の刑法上重大な犯罪と認める行 為を機内で行ったと信ずるに足る相当な理由ある者に対して、機長はその者を締約国である着陸国の権限ある当局に 引渡ことができ︵九条一項︶、その場合機長はできる限り速やかに、可能なときは着陸前に、被疑者を引渡す意図が あること及びその理由をその着陸国の当局に通知し︵九条二項︶、その着陸国の当局に対して、登録国の法令上適法 に所持する証拠を資料として提供することを義務付けられる︵九条三項︶。機長その他の乗組員、旅客、航空機の所 有者、運航者、運航の受益者は、この条約に基づいて採られた措置につき、機長の権限行使の対象となった者が受け た取扱いについて免責される︵一〇条︶。東京条約は米国の主張に基づき、特にハイジャック︵航空機の不法奪取︶に 関する規定︵二条︶を設けた。締約国は、ハイジャックが既に行われた場合または行われようとしている場合に も、その航空機の管理を機長に回復させまたは保守させるために、あらゆる適当な措置を講じなければならない︵一 一条一項︶。この条約にはハイジャックなる文言は用いられておらず、具体的に飛行中の航空機内の者が暴力または 暴力による脅迫により、その航空機に対して不法に干渉し、奪取その他の不当な管理を行いまたは行おうとすること と詳細に規定している。ハイジャックの場合航空機の着陸する締約国は、その航空機の乗客や乗組員の旅行の継続が できるようにし、航空機とその貨物を占有権を有する者に返還することが義務付けられる︵二条二項︶。 ハイジャ
ックに関してこの条約に果たした先駆的役割は無視し得ないが、条約本来の目的は被疑者の起訴、処罰にはなく、財 産の返還と飛行再開の確保に向けられていたのである。この条約には、着陸国が機長の権限に従って有し、または負 担する権利義務が定められている。締約国は、他の締約国で登録された航空機の機長に対して、機長による安全危害 行為の被疑者の降機を容認しなければならず︵一二条︶、第九条一項に基づき機長が引渡す重罪被疑者を受取る義務 を負う︵二二条一項︶。締約国は状況によって正当と認める場合は、 ハイジャックの被疑者及び機長から引渡された 者の所在を確実ならしめるため、締約国の法令に従って抑留その他の措置を執り得る︵一三条二項︶。着陸国は、機 長によって降機させられた者、引渡された者またはハイジャックを行った者が着陸国の国民あるいは着陸国に恒久的 居所を有する場合を除き、これらの者の本国、恒久的居所を有する国またはこれらの者が航空機による旅行を開始し た国へこれらの者を送還し得る︵一四条一項︶。また上述の者が着陸国の法令によって刑事訴訟手続に付され、ま たは犯罪人引渡手続に付されるため滞在を要する場合を除き、これらの者が旅行の継続を希望する場合は、その選 択する目的地に赴くことが認められる︵一五条一項︶。この条約は、純然たるハイジャック防止条約でなかったた め、ハイジャックを含む機内犯罪を引渡犯罪とは規定せず、条約上締約国に被疑者処罰の義務を課さなかったのであ る。 ハーグ条約は、ハイジャックの防止を主たる目的として、東京条約では不徹底であった諸点を強化したものであ る。まず飛行中の航空機内において暴力、暴力にょる脅迫その他の威嚇手段を用いたその航空機の不法な奪取または 管理行為を未遂及び加担行為を含めて、明確に犯罪︵o幣b8︶と定めた︵一条︶。そしてハイジャックという犯罪行 東洋法学 四七
航空テ質リズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 四八 為につき各締約国には重い刑罰︵のΦ<①3需欝冴雷︶を科し得るよう国内法を整備する義務が課せられる︵二条︶。裁判 権︵一弩魁一&呂︶の設定範囲が拡大され、何れの締約国も犯罪行為及びその容疑者︵毘紹&o欝鼠R︶のすべての暴 力行為が、@その締約国の航空機内で行われ、㈲その容疑者を乗せたままその締約国に着陸し、@その締約国の賃借 人などの航空機内で行われた各場合であっても、自国の裁判権を設定するため必要な措置を執ることが義務付けられ る︵四条一項︶。犯罪行為の犯人またはその容疑者が領域内に所在する締約国は、状況により正当と認める場合は、 抑留︵o霧8身︶その他の措置を執り︵六条一項︶、事実につき予備調査︵讐象琶き蔓のおε蔓︶をなし︵六条二項︶、そ の結果を登録国、運航国、容疑者の国籍国に報告し、かつ自国が裁判権行使の意図を有するか否かを明示する︵六条 四項︶。犯罪行為の容疑者がその領域内で発見された締約国がその容疑者を引渡さない場合は、その犯罪行為が自国 の領域内で行われたか否かを問わず、如何なる例外もなく、訴追︵鴇o鴇&8︶のため自国の権限ある当局に事件を付託 ︵鶏び目δしなければならない︵七条︶。犯罪行為は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪︵の図鐙巳富獣の 9︷窪8︶と看徹す。締約国は、相互間で将来締結されるすべての犯罪人引渡条約に犯罪行為を引渡犯罪として含める ことを約束する︵八条一項︶。しかしこの条約は、犯罪者引渡の実施に関しては犯罪人引渡条約または国内法に委ね る態度を採る。飛行中の機内でハイジャックが行われまたは行われようとしている場合、締約国は、その航空機の管 理を機長に回復させまたは保持させるためあらゆる適当な措置︵艶巷冥o疇馨Φ蓉8ω弩。の︶を執り︵九条一項︶、その 航空機またはその旅客、乗組員が所在する締約国は、その旅客及び乗組員ができる限り速やかに旅行の継続がなしう るような便宜を与え︵泣&誉富︶また占有権者に対し遅滞なくその航空機および貨物を返還する︵九条二項︶。
モントリオール条約は、民間航空の安全に対するハイジャック以外の不法な行為に対しても、ハイジャック同様に 重い刑罰を科し、広範囲に裁判権を設定することを認めるものである。この条約は飛行申の航空機の安全を損ないま たはその恐れのある行為を具体的に掲げ、それらが不法かつ故意に行われる場合を犯罪と規定する︵一条一項︶。そ れらは、㈲飛行中の航空機内の人に対する暴力行為、㈲業務中の航空機を破壊しまたは飛行を不能にする損害を与え る行為、@手段の如何を問わず、業務中の航空機を破壊、飛行不能にするような装置、物質を置く行為、㈹航空施設 を破壊、損傷しまたはその運用を妨害する行為、㈲虚偽情報を通報して飛行中の航空機の安全を損なう行為である。 各締約国は、第一条に定める民間航空の安全を不法に妨害する犯罪行為に対して重い刑罰を科すことができるように することを約束する︵三条︶。この条約の適用上、飛行中とは、航空機のすべての乗降口の何れか一つが降機のため 開かれる時迄、また不時着の場合は、権限のある当局がその航空機、機内の人、財産に関する責任を引継ぐ時迄と看 倣され、業務中と看倣されるのは、ある特定の飛行のため地上業務員または乗組員によりその航空機の飛行前の準備 が開始された時から、着陸の後二四時間を経過する時迄である︵二条︶。@犯罪行為がその締約国の領域内でなされ た場合、㈲犯罪行為がその締約国において登録された航空機に対し、またはその機内でなされた場合、@機内で犯罪 行為のなされた航空機が容疑者を乗せたままその締約国の領域内に着陸する場合、⑥犯罪行為が、その締約国の賃借 人などの航空機に対しまたはその機内でなされた場合は、それぞれの犯罪行為につき、自国の裁判権設定のため必要 な措置を執らなければならない︵五条一項︶。ただしこの条約は、国内法に従って行使される刑事裁判権を排除しな い︵五条三項︶、犯人または容疑者の所在する締約国は、状況によって正当と認める場合は、その者の所在を確実に
東洋法学 四九
航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 五〇 するため抑留その他の措置を執る︵六条一項︶。容疑者が領域内で発見された締約国は、その者を引渡さない場合 は、その犯罪行為が自国の領域内でなされたか否かを問わず、如何なる例外もなしに、訴追のため自国の権限ある当 局へ事件を付託する義務を負う︵七条︶。この条約に定める犯罪行為は、締約国間の現行犯罪人引渡条約における引 渡犯罪と看徹し︵八条一項︶、条約の存在を犯罪人引渡の条件としない締約国においても、犯罪人引渡の請求を受け た国の法令に定める条件に従って、相互間で犯罪行為を引渡犯罪と認める︵八条三項︶。締約国は、国際法及び国内 法に従って、第一条に定める犯罪行為防止のためあらゆる実行可能な措置を執るよう努力する︵一〇条一項︶。第一 条に定める犯罪行為の一つがなされたため、飛行が遅延または中断した場合には、その航空機、旅客、乗組員が領域 内に所在する締約国は、その旅客、乗組員ができる限り速やかに旅行の継続ができるよう便宜を与えるものとし、ま たは占有権者に対し遅滞なくその航空機、貨物を返還する︵一〇条二項︶。なお、わが国は、昭和五三年、逃亡犯罪 人引渡法の改正を行った。これは、海外に逃亡している犯罪者について、関係国に対し犯人が現われたら直ちに身柄 を拘束するよう求められることを骨子としたもので、これまで米国との間でしか使えなかった﹁仮拘禁﹂制度を全面 的に取り入れたものである。この法改正は、先の日米犯罪人引渡条約の全面改正に伴い国内法を整備するものである が、事実上、過激派、ハイジャック対策といえる仮拘禁条項の改正が加えられた。仮拘禁制度とは、政府間で正規に 犯人引渡の折衝、合意が成って身柄を拘束逮捕し︵本拘禁︶返還する迄の繋的な措置で、本拘禁には犯人の所在がは っきりしていることや翻訳を含めた証拠資料などが必要で、そうした手続をとっている間に犯人が逃げるのを防ぐ狙 いである。この改正では、条約に基づかない場合でも、外国から仮拘禁ができるとした。つまり外交ル⋮トで相互保
証の約束を交すことで、日本へ逃げ込んだ犯人を捕えられるようにした。国際捜査は相互主義が原則であるから、日 本がこうした措置を国内法で確立することにより、外国へ逃げている犯人について関係者と相互保証を取り交せば仮 拘禁を請求できることになった。以上のように、わが国は航空犯罪に厳格な態度を採っており、その後も多発する航 ︵3︶ 空犯罪に対する防止措置の国際的統一に終始積極的である。 ︵工︶ ︵2︶ ︵3︶ 本法は、モントリオール条約の実施法という性格をもっており、全文一六力条からなる同条約のなかから本法第一条の趣 旨をくみとることができる。 航空危険法第一条の保護法益は、航空機の航行安全を確保することにより、人の生命や身体の安全を保護しようとするも のである。さらに航空機や航空関係の設備・施設などの財産の安全や航空業務の正常な運営を確保しようとするものである。 本条には、誰によって航空の危険を生じさせる行為が行われた場合かについて、何ら限定されていない。したがって、操縦 士など航空関係業務に従事している者だけでなく、乗客など航空機内にいる者やその他のすべての者が行為主体となり得 る。本条は、後段において﹁その他の方法﹂で航空の危険を生じさせた場合について規定している。前段では、具体的に ﹁飛行場の設備﹂とか﹁航空保安施設﹂など例示してそれらのものを損壊し、航空の危険を生じさせた場合を規定している が、後段では犯罪の客体が紬象的で不明確である。本条における違法行為とは、﹁航空の危険を生じさせる﹂行為をいい、 危険犯の一類型である。また具体的危険犯として解釈すべきである。本条は従来、航空法第一三八条に規定されていたもの で、航行の安全が侵害されれぱ乗客の生命、身体、財産に対する大きな危険を与えることになり、単なる行政犯的な性格か ら﹁公共に対する罪﹂として刑法犯として生まれかわったものである。 浅野・野口前掲書一二頁以下。ハイジャック犯罪に触れたものとして次の著書論文が詳しい。池田文雄﹁国際航空法概 論﹂、同﹁空法概論﹂、栗林忠男﹁航空犯罪と国際法﹂、坂本昭雄﹁現代航空法﹂、経塚作太郎﹁ハイジャック防止と国際法﹂ 警察学論集第三一巻四号、≦接Rω9薫窪ぎ↓竃ωo瓢βUa践象一8g霞ご路首αq︸︾︾ωいぎド黒・竃鶏葺⇒8募og 東洋法 学 五一
航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 五二 ≧7︸Ro器露ぎ一萄譲。山本草二﹁航空機不法奪取と刑事管轄権の帰属﹂空法第一五号。なお﹁ハイジャック防止協定﹂で 注目されたものに﹁アメリカ合衆国・キューバ共和国間で締結された航空機・船舶のハイジャック及びその他の犯罪に関す る協定︵韻蕾。鎌罐92HR鉱貯き山く①。 。絶のき傷○爵霞♀富霧。ε︾αQおo導・馨竃葺8b夢。α乱紳&留鶏Φωa︾簿鼠8 き餌O鐸紅とがある。この協定は、スイスとチェッコスロバキア両国が介在し、米国とキューバ共和国は、ハイジャック犯 を処罰することを一九七三年二月十五日、正式に合意した。この協定は、両国の要求に適い、一つの﹁外交上の奇跡﹂とい われている。キューバは自国からの脱出者が米国によって処罰されることを望んでいたし、また、米国もハイジャック犯の すぺてがキューバ共和国によって処罰されることを望んでいた。そこで最終的な折衝において、両国は、他国へ逃亡する航 空機もしくは船舶の没収を考慮し、かつ、犯人を自由に送還し、もしくは犯人を裁判に附するを合意している。このハイジ ャック防止協定は、平等ならびに厳正な相互互恵の原則に基づいて、米国国務省とチェッコスロバキア大使館︵キューバ共 和国利益代表︶間及びキュ⋮バ外務省とスイス大使館︵米国利益代表︶闇の通牒交換により有効となり、一九七三年二月一 五日、ワシントンとハバナにおいて調印され、同日発効した。同協定は五条からなり、犯罪の成立要件を航空機または船舶 を遍常のル⋮トから強奪、移動、専有もしくは離脱させ、かつ、他方当事国の領土に持ち来たる場合と規定している。犯人 の措置につき、航空機または船舶を不法奪取した犯人を自国に送還させ犯人自身の国の裁判に附させることができると規定 し、また、犯人の到着した領土を有する当事国が、重罰を目的として犯人を裁判に附することもできる、としている。さ ら、犯人の到着した国がその犯人を処罰する現行法規をもたない場合には軽微犯罪を除いて犯人を犯人自身の国の裁判に附 するために到着国は送還する義務を負う、としている。一般旅客の運送措置については、不法奪取された航空機、船舶なら びに犯人と無関係な旅客、乗員および所持晶のすべての運送は、継続されるか、または、遅滞なく返送されるか、または到 着国によって保全乃至保護措置が執られることになる。帯助行為については、各当事国を往来する航空機、船舶に対して、 犯罪の実行行為を企てる過激組織に領土内から、または領土外からといえども加担する者は、厳格な刑罰を目的として裁判 に附される、としている。このニカ国間協定は、世界の航空運送業務に与えた影響は大きかったといえよう。︾3ぽご類 ooO山Oざ︸鉱鴇Go●お8︵o oO幹舞曽ご一弾ωb﹂罷y こうした問題に関連して、比嘉盛久﹁アメジ爵合衆飼・キューバ
共和国間のハイジャック防止協定に関して﹂空法研究第一号六七頁以下に特殊研究がある。 ックが続発したが、この協定により、再発防止へ両国対話もなされるようになった。 一九八三年に入り望郷ハイジャ 四 犯罪と犯人中心主義から乗客の安全第幽主義への必要性 一九七一年モントリオール条約は、ハイジャックだけに限らず、機体の爆破まで条約に含めたことは大きな前進で ︵玉︶ あったζ言える。しかし、こうしたハイジャック防止条約が果してどれだけ予防効果を持っているかは、多くの疑問 が残っている。もし、全部の航空国が条約の締約国になったら、ハイジャックをはじめ航空テ讐リズムが根絶できる という保証もない。寧ろ、どこの国でも処罰されるということになれば、乗客諸共の自滅行為に走るような危険性も ある。また、これらの条約を実行しない国に対し、制裁を盛込む条約を新しく作成する困難もある。航空テロリズム 自体が価値観の違う国の間に起りやすい問題である。勿論、過激派の暴走が国際世論の怒りに火を着ける度に、世界 の空と地上で罪の無い人達を脅かすテヨリズムは次第に同情を失い、追い込まれていくことは間違いない。航空機 は、飛行中にあっては特殊な環境に置かれるため、テロリストは比較的容易にその目的を達することが可能であり、 多数の乗客・乗員が不法な監禁状態のまま遠隔の地に連れ去られる場合も多く、この間の恐怖や不安その他の精神的 苦痛は想像を絶するものがある。犯人の凶暴化は乗客の人命を著しく脅かし、操縦者に対する脅迫状態で飛行を続行 ︵2︶ することは、不慮の大事故を生じさせることにもなりかねない。現行のハイジャック防止に関する法律や条約は、犯 罪、犯入中心主義であるが、これを乗客、人道主義に基づいた法や条約に改正していく必要があろう。また、航空テ
東洋法学
五三航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 五四 ロリズムを未然に防止するための適切かつ有効な措置を講じなくてはならない。航空機の特殊性を巧みに利用し、多 数の人々を犠牲にして、自己の不法な欲望を遂げようとするテロリストに対しては、事前の厳しいチェックにょる防 止対策が必要であることは言うまでもない。ハイジャックという卑劣な手段に対抗するために、航空機の乗客は不愉 快さを我慢して、全世界の空港での安全チェックを受けている。わが国の内閣安全保障室は、昭和六一年八月、ハイ ジャック、テロ事件などの緊急事態に即応する危機管理体制作りを目指し、ハイジャック発生時の対処方法を定めた ﹁危機管理マニュアル﹂なる対ハイジャック手引書を作成した。しかし、これはテロリズム発生後の問題であり、未 然防止策には繋がらない。一九八五年ハイジャックの相次ぐ中東地域で、最悪の事態が起きている。ゲリラ・グルー プに乗取られ地中海のマルタで立往生していたエジプト航空機の乗客・乗員の半数が、エジプト軍特殊部隊の救出作 戦強行の際に死亡した。結果的には、それまでハイジャック事件への対応として欧米、中東で定着していた﹁テロリ ストとは妥協しない﹂という原則に、深刻な疑問を生じさせることになった。同事件の犯人グル⋮プは、エジプト航 空機に、アテネ空港から搭乗した。同空港は一九八五年六月に起きたTWA機ハイジャック事件のとき、安全対策の ルーズさを厳しく批判されたばかりであった。再度、武器の手荷物持ち込みを見逃したアテネ空港当局の責任は極 めて重い。ギリシャ政府は、国の体面などを考えずに、アテネ空港の安全対策を総点検すべきであったし、ICAO ︵3︶ も改めて基礎的なテロ防止策の徹底を図る必要がある。過去、軍の特殊部隊が突入して犯人を処置し、乗客を救出し た例は西独、イスラエルなどにある。当時は、入質と法の尊厳の両方を守り抜いたとして評価された。一方、わが国 政府は、一九七五、七七年の二度にわたり、犯人の要求に応じて乗客の安全と引代えに犯罪人を釈放した。何れが正
しいか、議論は様々に分かれている。しかし、要はどの手段を採ったかではなく、最終決断までにどの程度、忍耐強 くテ冒リストと交渉を重ね、どれほど慎重に状況を分析したかにあろう。論理の正しさだけが、行動を正当化するこ とにはならないと考える。何の関係もない第三者の生命を質にとるテロリスト達の行動が絶対に許せないものである ことは、どの様なハイジャック事件でも同様であるが、この種の事件は非人間的な残虐さを有する半面、政治的要求 ︵4︶ が満たされぬ者の絶望をも感じさせる。ただし、近年のテロリズムが次第に凶暴さを加えてきているのを見逃すこと はできない。この意味においても、乗客・乗員に対する安全第一主義をとり、未然の防止を主眼に対策を講じなけれ ばならない。一九八八年一二月、米国連邦航空局︵FAA︶は、パンナム機爆破事件のようなテロリズム防止対策と して、米国の航空会社による中東、欧州の空港での航空機荷物検査の強化策を発表した。強化策は、機内預け荷物す べてを直接あるいはエックス線検査法によって調べる、機内持ち込み荷物の抜き取り検査を各航空会社に課す、こと などを柱としており、乗客以外の荷物が紛れ込むのを防ぐため、乗客と荷物の照合も義務付ける。また、FAA自身 も安全検査専門官を増員するとしている。一九八五年のインド航空機、一九八六年のTWA機両爆破事件でプラスチ ック爆弾が使われ、FAAは検査システムの開発を急ぎ、従来のエックス線探知器ではプラスチック爆弾を探知でき ないため、中性子検知器︵TNA︶を開発した。今後は世界の主要空港は安全対策上、こうした設備を設置すること を条約で義務付け、もし検査設備と厳重を検査を怠った場合、その空港への乗入れを認めないなどの処置を採るべき であろう。空港設置者︵ほとんどの場合、国であるが︶の責任についても新しい立場から法的考察をしなければなら ない。近年のハイジャック事件で目立つのは、乗員の犠牲である。これは前に触れたように犯人の凶暴化にょるもの
東洋法学 五五
航空テ担リズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 五六 であるが、乗員に対する安全配慮義務の問題もある。わが国においては、安全配慮義務をめぐる問題の論点は多岐に 亘り、しかも各論点が相互に密接な関連性を有し、複雑に錯綜しているうえに、種々様々な見解が入り乱れており、 安全配慮義務の法的性格、妥当領域や具体的内容・程度といった基本的事項についても、確固たる共通理解が確立し ハ5︶ ているとは言えず理論的にはなお不透明である。現今では、安全配慮義務については一方でこれと保護義務との関係 如何が問題となり、他方においては、安全配慮義務と不法行為上の一般的注意義務との関係つまりは債務不履行構成 の利点・意義が問直されている。航空会社は乗員に対して安全配慮義務を負うことは勿論であるが、空港設置者も同 様と考えられる。 ︵1︶
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︵4︶ 条約は航空機の安全を危うくする性質の一連の行動を対象としている。すなわち、機内の人に対する暴力、﹁業務中の﹂ 航空機の破壊、﹁業務中の航空機を破壊する恐れのある物﹂の持ち込み、航空施設の破壊、飛行中の航空機の安全を損なう 性質の虚偽の情報の故意の流布である。条約は締約国に対し、これらの犯罪に対し重刑を適用するよう促している︵第三 条︶。ぎ鉱ω○鐘oF冨階魯叡瀞p竈o 。ごH。題菊﹃9&鼠厨−く角8ぎ8︾p回濤3含&88≧擁9ヨ這c 。o。”掌 嵩Qo, 的自。竃。≦露欝Φざ.鱗ご8置お9≧器鎧ゆ、︵ぢ譲︶9︾導轟冨留一、︸霧蜂講留U容営H導①讐餌銘8巴認O占①o 。。 図。鍔ζ。≦霞蓉oざ鏡&餌一℃富墜き畠H馨Φ旨鯨坤霧巴富瑛o鎌βおo 。8ωごO竃お”、ぎ什震欝凱○鑓一一紹巴ぎ斡讐導①馨。。8 乙。無紹饗a一導R鋸瓜s鉱鉱場け壁霧宕誉”弓竃Oo奪①馨凶o霧o︷↓oξρ↓竃譲謎器”竃8鉾$一鶏血鋤琴類坤霧齢讐密①馨 8p8導一諮き一帥≦欝一≦o一窪。o蹄一馨の旨&S鉱a巷o器、︸嘗︾︿鑓江8ωo。葭一な㈹出o項8ω黒轟轟a坤髪①簿帥鉱○壼圃鉱門 霞鴬霧℃o属ぎも℃。器ム9 一九八九年三月一七日、ソ連邦のロシア共和国最高裁判所は、一九八八年一二月に南部の都市オルジョニキーゼで児童の遠足バスを乗っ取り、さらに当局に用意させた旅客機でイスラエル豪で飛んだ一味の主犯に禁固一五年の判決を下した。求 刑通りの判決で、有期刑では最も重いものとなっている。同事件ではソ連国内で超きた乗取り犯に航空機を提供して国外逃 亡を認めたことは、これまで常に強硬手段を採ってきたソ連政府のハイジャック対策の変更を意味する。国家指導部が人質 救出を最優先させたからだと説明されているが、この背景には、入質の犠牲をもたらした従来の方針に批判があったことが あげられる。 ︵5︶ 国井和郎需安全配慮義務について︵上×下︶﹂判例タイムズ三五七号一四頁、三六〇号一〇頁、三六四号五八頁、国井和 郎﹁安全配慮義務違反の成立要件﹂現代民事裁判例の課題7一五七頁、下森定編・安全配慮義務法理の形成と展開、北川善 太郎・注民1 0三一六頁以下、新美育文﹁安全配慮義務﹂の存在意義﹂ジュリスト八二三号一〇四頁。なお、乗客に対する航 空会社および空港設置者の安全配慮義務と責任については、拙稿﹁航空旅客運送における安全配慮義務と責任﹂東洋法学第 二八巻第一号一九頁以下。 五 航空テ矯リズムと旅客に対する航空会社の責任 年々ハイジャック事件が凶暴化し、また、爆弾テロ事件も多発しているなかで、国際航空旅客運送において特別の 安全を確保する貴任を負わされている航空会社及び空港当局は、航空テロリズムが旅客に被害を及ぼした場合、その 損害を如何に賠償すべきかという問題がある。飛行中でなく空港内で起きた事故もしくは事件について、ワルソ⋮条 約︵﹁国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約﹂一九二九年一〇月二一日ワルソーで署名︶第一七条が 適用されるのか、それとも国内法が適用されるのかという問題がある。特に米国の裁判所は、ここ一〇数年間に幾つ かの注目すべき判断をこの第一七条をめぐって示している。第一七条は﹁運送人は、旅客の死亡又は負傷その他の身 東洋法学 五七
航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 五八 体の障害の場合における損害については、その損害の原因となった事故が航空機上で生じ、又は乗降のための作業中 に生じたものであるときは、責任を負う。﹂と規定している。旅客の損害に対する航空運送人の賠償責任の発生要件 を定めたこの第一七条は、損害の原因となった事故が乗降のための作業中に生じた場合も運送人は責任を負う旨を規 定しているが、﹁乗降のための作業申﹂という表現は非常に漢然としており、その解釈をめぐる学説、判例は必ずし も一致せず、困難を提起している。空港夕ーミナル内のテロリズムにょる旅客の損害について、第一七条に謂う乗降 のための作業中ということに解釈できるかという問題がある。一九七二年のテルアビブ︵↓Φ一︾話<︶のロッド国際空 港︵ピ&騨冠器ぎま一︾ぼ速博︶及びアテネ︵︾曲の霧︶のヘレニコン空港︵頃&魯涛窪︾鍔箸旨︶両事件を中心にテ ロリズムとの関係を次に見ていくことにしたい。 近年における米国の裁判所は、一般に、ワルソー条約︵≦貰鶏毒09誘導δ添︶第一七条をハイジャック︵菖亀瓜茜︶ 及び航空機のサボタージュ︵ω魯o$鴨︶の結果発生した損害につき、航空会社の責任を肯定する判決を下すよう解釈 ︵1︶ する傾向を示している。勿論、国際航空の旅客が政治的暴力行為によって犠牲になった場合、旅客の安全を確保する ︵2︶ ︵3︶ 責任がある航空会社および航空当局は、その損害賠償責任を負うべきであるというのが一般論である。アテネ空港や ︵4︶ テルアビブ空港でのテロリストの行動は、米国の裁判所を運送人の責任範囲につき新たな問題に直面せしめた。すな ︵5︶ わち、ワルソー条約第一七条の航空会社の責任は、空港ターミナル内でテロリストの襲撃から生じた損害にまで及ぶ のかという問題である。特に、夕ーミナル内におけるテロ行為によって惹起された損害に対する責任を運送人に負担 ︵6︶ せしめようとしないワルソー条約第一七条の限定的解釈をめぐる問題である。
︵ユ︶ ︵2︶ ︵3︶ ((
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航空テ冒リズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について 六〇 ︵2︶ 客は、ターミナルを離れ、旅客を航空機に運ぶバスに乗車する準備をして、通路で税関検査を待っていた。負傷した ︵3︶ 旅客及び死亡した旅客の遺族は、アテネの損害に対するTWAの責任を主張し、二つの連邦地裁に提訴した。原告側 の請求の容認は、ワルソー条約第一七条の文言の問題に対する裁判所の解釈次第で決定した。ワルソー条約第一七条 は次のごとく規定している。﹁運送人は、旅客の死亡または負傷その他の身体の障害の場合における損害については、 その損害の原因となった事故が航空機上で生じ、または乗降のための作業中に生じたものであるときは責任を負う﹂ ︵↓落O巽甑R⑦冨嵩ぴΦ密び一①︷9留導鋤αQ霧。 陰岳痙貯&欝昏Φo<Φ旨o︷昏oα8魯o目≦oq欝伽汐αqo翫鶴短のω窪α9鶏o憎 墜鴇o爵巽甕一ぐゆ且跨畷。 ・鼠︷醇&ぴ鴇鋤窟。 ・器轟Φび賦魯の9 。8箆㊦簿≦窯魯8房a魯o鼠筥お①。 。o。 。霧雷汐&80一︽ ︵4︶ 覧8の8び8識昏①鉱8疑坤o種き妹蒔8ミ器o\Q醤受o\妹ミ愚禽&ご差も\鳴ミぎ幕賊鳩薦ミ熱題ミξ幕き鱗︶ ︵5︶ 原告側は、テロリスト達が襲撃をなした時﹁搭乗の作業﹂が進行中であったと主張した。地方裁判所は、U亀対 ︵6︶ ︵7︶ 一、 β霧≦R鼠︾莚貯醗事件において、その理論を認め、TWAの責任を肯定する判決を下した。しかし、悔毒凝①一ぼ8 対TWA獣縄において、地方裁判所は、第一七条の文言は空港ターミナル内で蒙った損害をカバーしないとの結論を ︵9︶ ︵扮︶ 下した。U亀事件において、第二審巡回上訴裁判所は、下級審の広義の解釈を確認したが、その見解は、地方裁判所 ︵n︶ が国奉お。ぎ3事件において採用した第一七条に対する狭義の解釈をその後、第三審巡回上訴裁判所が破棄すること ︵12︶ を﹁著しく容易ならしめた﹂ものである。 ︵1︶ 国くきαqo躍8。 。︿●臼譲︸脇O男母嶺鱒”嶺ooー鰹︵o o傷Ω磐這ミ︶︵oφぴきo︶いU曙く畢↓譲︸90 0男.謡o oどo o鱒︵鑓Ωび
︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵m︶ ︵U︶ HO刈笛Y“鳴、外織恥蕊紺駄、魁笛O 翻く③p磯①一一poψ︿●↓譲︾︸ O誉’一〇↓αy偽偽、︾匙恥蕊紺織、 国く餌pαq①躍⇔oのく.8≦︾” ↓≦︾c oOo o男.ω蛋℃マ鱒一↓ 図く鋤pαq①︸一5000︿’↓れ<>‘ 譲拶穫ω餌名Oo欝くoP鉱o”︸ 一〇刈窃︶︾、亀、斜㎝㎝O閃●鱒飢 男. ︿彫 淫c o一︵髭 国ぐ妙⇒αq①犀⇒oの ↓≦箇o 。Oo 。 もQ Oも o 鋭, ωO① 凝。