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2 章国際的な安全保障環境の一層の安定化への取組222 平成 25 年版防衛白書第第 Ⅲ 部 わが国の防衛に関する施策 第 1 節 アジア太平洋地域をはじめとする多国間安全保障協力 対話の推進 1 安全保障協力 対話 防衛協力 交流の意義と変遷 わが国では 従来から安全保障環境の改善に積極的に 取り

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今日の国際社会における安全保障課題は、一国のみで対応することがきわめて困難であり、わが国としても、地域あ るいはグローバルな安全保障課題に対し、同盟国、友好国、その他の関係各国と協力して取り組むことが重要である。 こうした状況を踏まえ、「平成25年度の防衛予算の編成の準拠となる方針」において、わが国は、①アジア太平洋地 域をはじめとする国際的な安全保障環境の一層の安定化を図るため、人道支援・災害救援その他の分野における各種協力、 二国間および多国間の対話等をさらに推進するとともに、②大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散防止、テロ・海賊への 対処、国連平和維持活動などの活動に主体的かつ積極的に対応するため、自衛隊による国際活動基盤の強化などに取り 組むこととしている。 本章では、第1節および第2節で主に①の「アジア太平洋地域をはじめとする多国間安全保障協力・対話の推進」に 関連する施策を説明し、第3節、第4節および第5節で主に②の「国際社会が協力して行う各種の活動への取組」に関 連する施策を説明する。 (図表 Ⅲ-2-0-1参照) 図表Ⅲ-2-0-1 国際社会における防衛省・自衛隊の活動実績 :ペルシャ湾掃海艇派遣 :国連平和維持活動 :国際緊急援助活動 :旧テロ特措法(補給支援法)に基づく活動 :旧イラク人道復興支援特措法に基づく活動 :ソマリア沖・アデン湾海賊対処 7 5 13 14 16 15 1 10 20 29 9 22 17 2 18 26 21 30 12 8 23 11 25 32 24 4 3 31 6 27 28 19 1 ペルシャ湾掃海艇 派遣 1991.4 ~ 10 自衛隊の国際協力の原点 5 国連兵力引き離し 監視隊 1996.2 ~ 2013.1 中東の安定化に寄与 17年間にわたり部隊派遣 6 ホンジュラス 国緊活動 1998.11 ~ 12 自衛隊の初の国緊活動 長距離の空輸を達成 9 インド国緊活動 2001.2 外務省や非政府組織(NGO)などとの連携を 教訓 19 ロシア・カムチャッカ 半島沖国緊活動 7 トルコ国緊活動に必要な物資輸送 1999.9 ~ 11 海自初の約23日の連続航海により任務を達成 2 国連カンボジア 暫定機構 1992.9 ~ 93.9 自衛隊の初のPKO 陸・海・空自衛隊から参加 21 インドネシア国緊隊 2006.6 医療支援、防疫活動を実施 22 国連ネパール政治 ミッション 2007.3 ~ 11.1 初の武器および兵士の監視業務を 遂行 23 旧補給支援法に基づく 補給活動 2008.1 ~ 10.1 中断していた業務を再開 諸外国対テロ活動への支援 24 国連スーダンミッション 2008.10 ~ 11.9 司令部要員を派遣 スーダン安定化に寄与 25 ソマリア沖・アデン湾 海賊対処 2009.3 ~現在 わが国船舶だけでなく諸外国の 船舶も護衛 20 パキスタン国緊活動 2005.10 ~ 12 空自輸送機で陸自ヘリコプター を展開 現地でJICAと連携 2005.8 海自潜水艦救難艦が迅速に対応 18 インドネシア国緊活動 2005.1 ~ 3 約1,000名の大規模な救援 初の陸自ヘリコプターの展開 初の統合連絡調整所を開設 3 国連モザンビーク 活動 1993.5 ~ 95.1 初の国連司令部への派遣 初の陸・海・空自衛官からなる 部隊を編成 4 ルワンダ難民救援 1994.9 ~ 12 初の人道的な国際救援活動 アフリカなどからの高い評価 8 東ティモール難民救援 1999.11 ~ 00.2 空自の輸送隊により援助物資輸送 10 アフガニスタン難民 救援 2001.10 UNHCRの要請に基づき、救援物資 を輸送 11 旧テロ特措法に基づく 協力支援活動 2001.11 ~ 07.11 テロを根絶するための努力 諸外国軍隊との連携強化 12 国連東ティモール 暫定行政機構 2002.2 ~ 04.6 最大規模のPKO参加 初の女性自衛官参加 13 イラク難民救援 2003.3 ~ 4 人道的支援のため、政府専用機 で物資を輸送 14 イラク被災民救援 2003.7 ~ 8 世界食糧計画(WFP)の要請に 基づく活動に協力 15 イラン国緊活動に必要な 物資輸送 2003.12 ~ 04.1 JICAと連携し、援助物資を空輸 16 旧イラク人道復興支援 特措法に基づく活動 2003.12 ~ 09.2 イラク復興で見せた自衛隊の活動に 対し世界中から評価 日米同盟の強化に貢献 17 タイ国緊活動 2004.12 ~ 05.1 帰国中の海自護衛艦を迅速に投入し、 捜索救援を行う 27 ハイチ国緊活動 2010.1 ~ 2 ハイチでの大地震に際し、迅速な 輸送、医療活動を実施 26 インドネシア国緊活動 2009.10 医療援助を迅速に実施 28 国連ハイチ安定化 ミッション 2010.2 ~ 2013.2 ハイチ国緊活動に連接した派遣 大地震後の復旧・復興支援 29 パキスタン国緊活動 2010.8 ~ 10 現地における初の統合運用調整所 を開設 諸外国との連携により任務を達成 32 国連南スーダン共和国 ミッション 2011.11 ~現在 南スーダンの国造りに貢献 アフリカ内陸部への長大な後方補 給線を維持 31 ニュージーランド 国緊活動 2011.2 ~ 3 警察、消防、海保などのチームを輸送 30 国連東ティモール 統合ミッション 2010.9 ~ 2012.9 東ティモールの治安維持と回復に寄与

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 国際的な安全保障環境の一層の安定化への取組

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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アジア太平洋地域をはじめとする多国間安全保障協力・対話の推進

安全保障協力・対話、防衛協力・交流の意義と変遷

わが国では、従来から安全保障環境の改善に積極的に 取り組んでいるが、近年、対話や交流は質的に深化し、量 的に拡大している。具体的には、①相互理解の促進や信頼 醸成に加え、協力関係の構築・強化の動きが加速し、②対 話や交流の相手国が近隣諸国を越えてグローバルな広がり をみせている。また、③相手国によっては、単なる交流か ら具体的・実践的な協力を行う段階へと発展・深化してき ている。さらに、④アジア太平洋地域における安全保障面 での取組は、信頼醸成を主眼とした対話の段階から、域内 秩序の形成や共通規範の構築といった具体的な協力の段階 に移行しつつある。 このような情勢を踏まえ、防衛省としても、限られた 資源を効果的・効率的に活用しつつ、国際社会における多 層的な安全保障協力の進展に積極的に取り組んでいる。そ の際、各国・地域の特性を踏まえ、安全保障協力・対話、 防衛協力・交流を戦略的に行っていくことが必要である。 特に、災害救援やテロ対策などの非伝統的安全保障分 野において、全体的な協力感・協調感を醸成し、域内秩序 の形成や共通規範の構築に向けた実際的・具体的な協力を 進めることや、わが国周辺の国や地域において、わが国に 対する対立感や警戒感をなくし、未来志向の視点で協調 的・協力的な雰囲気を醸成して、二国間・多国間の場で積 極的な協力を進めることが必要であり、防衛省・自衛隊と しても、安全保障協力・対話、防衛協力・交流、共同訓練・ 演習を多層的に推進している。 (図表 Ⅲ-2-1-1・2・3参照) 参照▶ 資料53・54・58

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図表Ⅲ-2-1-1 安全保障対話・防衛交流 区分 類 型 意 義 概 要 二国間 防衛首脳など ハイレベルの交流 双方の重要な関心事項である地域情勢や国防政策 などについての率直な意見交換を通じて、相互の信 頼・協力関係の充実・強化の増進を図るとともに、じ 後の交流にはずみをつける。 ・防衛大臣と各国国防大臣の対話・ 相互訪問 ・ 防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛事務次官、統幕 長、陸・海・空幕長クラスの対話・相互訪問 防衛当局者間の 定期協議など 国防政策の企画立案者同士が継続的に直接意見を 交換することで、ハイレベルの対話・交流の基礎と するとともに、当該国との相互の信頼・協力関係の 充実・強化の増進に寄与する。 ・局長、審議官クラスの実務者同士による協議 ・ 統幕、陸・海・空自衛隊と関係諸国の統合参謀本 部、陸・海・空軍との間の対話 部隊間の交流 共同訓練や交流行事などを通じて相互の信頼・協力関係の充実・強化の増進を図る。 ・ 人的交流・ 練習艦隊などの艦艇、航空機の相互訪問、捜索・救 難などに関する共同訓練の実施 留学生の交換 本来的な教育上の目的のほかに、比較的長期の滞在 による人的交流を通じて、相手国の防衛政策や部隊 の実態などに対する理解や信頼関係の増進に寄与 するとともに、人的ネットワークの構築を図る。 ・留学生の受入れ ・海外の軍関係機関への留学生の派遣 研究交流 研究者の立場からの自由な意見交換を行い、相互理解を深めるとともに、防衛交流の維持・深化に寄与 する。 防衛研究所と諸外国の軍関係の研究機関などとの 研究交流 多国間 安全保障対話 関係諸国の間で情勢認識・安全保障政策について相 互理解を深め、また、多国間にまたがる課題につい て幅広く意見交換や協議を行う。 ・ADMMプラス・ARFにおける対話 ・防衛省主催の多国間対話 ・政府主催の多国間対話 ・民間主催の多国間対話 共同訓練 セミナーなど 共同訓練、セミナーなどを通じて技量の向上と相互 の信頼・協力関係の充実・強化の増進を図る。 ・人的交流・ 災害救援、掃海、潜水艦救難などに関する共同訓 練、セミナーなどの実施

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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図表Ⅲ-2-1-2 対話、交流から協力へ 冷戦期 二国間 三国間 多国間 局所的・ 限定的な 「交流」 中国・韓国・ 西欧など 草創期 (90年代~ 2000年初頭) (2000年初頭~)発展・深化期 政策的「交流」の開始 域内多国間「対話」の開始 「交流」から「協力」へ 「対話」から 「協力(域内秩序の構築)」へ →各国の国防政策にかかる 説明・相互理解の促進に 主眼 紛争解決を最終目標とするも 当面は信頼醸成に主眼 具体的・実践的な協力を通じ安保・防衛協力を強化 相互理解・信頼関係の増進 ARFなどの発展 相互理解・信頼関係の増進 + + 域内における具体的な安保・防衛協力の推進 非伝統的安全保障(災害救援、海上安全保障、テロ 対策など)、後方分野が中心 二国間・多国間協力を補完する枠組 (日米豪、日米韓) ARF創設 94年 災害救援 ISM 97年 EAS 創設 05年 テロ・越境 犯罪ISM 03年 ADMM 創設 災害救援実動演習DiREx実施 ①人道支援・災害救援 ②海上安全保障 ③カウンターテロリズム ④防衛医学 ⑤平和維持活動 5分野のEWGの創設 海上安全保障 ISM 不拡散および 軍縮ISM 災害救援実動演習 実施 11年 06年 ADMM プラス 創設 10年 09年 引き続き 図表Ⅲ-2-1-3 防衛協力・交流イメージ ○留学生の交換、教育研究交流 ○防衛当局、各軍種間でのハイレベル・実務者交流 ○各軍種間での部隊間交流、艦艇・航空機の相互訪問 ○親善訓練 ○防衛協力・交流の覚書 ○情報保護協定 ○物品・役務相互提供協定 ○共同対処計画などの策定 ○共同対処を前提とした共同訓練 (例:「日米共同統合演習」、「日米共同方面隊指揮所演習」、「対潜特別訓練」、「日米共同戦闘機戦闘訓練」など) ○わが国有事の際の共同対処 防衛交流 防衛協力 具体的な取組例 段階 関 係 の 深 さ ○非伝統的安全保障分野における各種協力(共同訓練含む) (例:「コブラ・ゴールド」、ARF災害救援実動演習、捜索救難共同訓練、カンボジア・東ティモールPKO、イラク人道復興 支援活動における豪軍との協力、パシフィック・パートナーシップ、海賊対処における各国・各機関との協力など)

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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多国間安全保障枠組・対話における取組

1 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)のもとでの取組

ASEAN諸国においては、地域における安全保障協力 枠 組 で あ るASEAN地 域 フ ォ ー ラ ム(

ASEAN Regional ForumARF) や、

ASEAN域内における防衛当局間の閣僚会合である ASEAN国防相会議(

ASEAN Defence Ministers' MeetingADMM)がそれぞれ開催されてい

る。これに加え、10(平成22)年5月の第4回ADMM において、わが国を含めたASEAN域外国8か国1を新た なメンバー(プラス国)とする拡大ASEAN国防相会議 (ADMMプラス)の創設が決定され、同年10月、第1回 会議が、ハノイで開催された。 これまで、ASEAN域外国も含めた形でのアジア太平 洋地域の国防相が出席する政府主催の会議はなかったこと から、ADMMプラスの創設は、地域の安全保障・防衛協 力の発展・深化の促進という観点から、きわめて大きな意 義がある。また、ADMMプラスは、地域における様々な 安全保障上の共通の課題を幅広く取り上げる枠組であり、 防衛省・自衛隊としても、ADMMプラスを地域における 安全保障協力の大きな柱として発展させるべく、ADMM プラスにおける取組を積極的に支援している。 第1回ADMMプラスにおいては、①人道支援・災害 救援、②海上安全保障、③テロリズムへの対応、④防衛医 学、⑤平和維持活動の5分野をはじめとする相互に有益で 実行可能な協力の分野について議論を行うとともに、地域 の安定に影響を与える南シナ海についても議論を行い、「南 シナ海に関する行動宣言」(D

the Declaration on the Conduct of Parties in the South China SeaOC) 2の完全な実施、国連

海洋法条約などの国際法や平和的手段による紛争の解決を 強調した。

同会議では、ADMMプラスでの決定を実行に移すため、 ①A

ASEAN Defence Senior Officials' MeetingDSOMプラス、②ADSOMプラスWG、③専門家

会合(E

Experts’ Working GroupWG)の創設が決定された。

EWGは、前述の5分野について議論することを目的と しており、わが国は、シンガポールとともに防衛医学 EWGの共同議長を務めている。12(同24)年7月には 東京において第2回会合を開催し、大規模災害発生時の防 衛医学分野における各国の協力のあり方や課題について検 証するため、机上演習(

Table Top ExerciseTTX)を行い、実践的な意見を

交換した。また、他のEWGも順次会合を開催しており、 わが国も積極的に各国との意見交換や提言を行うことで、 地域における安全保障協力の一層の強化に取り組んでいる。 特に、海上安全保障EWGにおいては、わが国として海 上安全保障分野における各国の信頼醸成を積極的に図るた め、海上において、軍艦を含む政府船舶が接近、遭遇した 際に、意図しない衝突や事態のエスカレーションを回避す るための慣習的な「マナー」を各国で共有することの重要 性を提起している。 13(同25)年6月には、人道支援・災害救援EWGお よび防衛医学EWGの共催として、ブルネイにおいて ADMMプラスとして初となる実動演習に参加することと している。 さらに、同年8月に、第2回ADMMプラスが行われる 予定である。わが国は、今後とも、ADMMプラスの枠組 において積極的な役割を果たすことで、域内の防衛当局間 の実質的な協力・連携の強化に取り組み、域内の安定に貢 献する必要があると考えている。 (図表Ⅲ-2-1-4参照)

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1 わが国のほか、米国、オーストラリア、韓国、インド、ニュージーランド、中国およびロシア 2 02(平成14)年にASEANと中国間で調印され、南シナ海における紛争などを平和的に解決するための根源的な原則について明記した宣言 ADMMプラス防衛医学EWG机上演習の様子

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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2 ASEAN地域フォーラム(ARF) ARFは、政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、 アジア太平洋地域の安全保障環境を向上させることを目的 としたフォーラムで、94(同06)年から開催されている。 現在26か国と1機関がメンバー国となり3、外務当局と防衛 当局の双方の代表が出席する各種政府間会合を開催し、地 域情勢や特に注力すべき安全保障分野についての意見交換 を行っている。加えて、近年では、各種会合における意見 交換にとどまらず、災害救援活動、海上安全保障、平和維 持・平和構築といった非伝統的安全保障分野において、各 国の連携の下、具体的な取組4が積極的に進められている。 たとえば、海上安全保障分野においては、09(同21)年 以来、海上安全保障に関する会期間会合(

Inter-Sessional Meeting on Maritime SecurityISM-MS)が

開催されている5。ISM-MSでは、わが国のとりまとめに より、海上安全保障分野の能力構築支援に関する「ベスト プラクティス集」が作成されている。また、今後、わが国 とマレーシアがリード国を務めるISM-MSの優先分野の 1つである「国際的、地域的な枠組・取極・協力による信 頼醸成」に関して、ARF公式行事としてワークショップ を行う予定である。 また、災害救援分野においては、同年以来、ARF災害 救援実動演習に、防衛省・自衛隊から隊員および航空機な どを派遣し、演習に参加している。13(同25)年5月には、 タイ・韓国の共催として、タイにおいて3回目となる ARF災害救援実動演習(ARF-DiREx2013)が行われ、 人員約50名、航空機1機を派遣した。 3 防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話 (1)東京ディフェンス・フォーラム アジア太平洋地域の安全保障を考える上でのわが国独自 の取組として、防衛省は、96(同8)年から地域諸国の防 衛政策担当幹部(国防省局長、将官クラス)を対象とする「ア ジア太平洋地域防衛当局者フォーラム(東京ディフェンス・ フォーラム)」を毎年開催し、各国の防衛政策や防衛分野で の信頼醸成措置への取組について意見交換を行っている。 12(同24)年10月の第17回フォーラムには、アジア 太平洋地域の21か国、欧州連合(EU)および赤十字国際 委員会(

International Committee of the Red CrossICRC)の参加を得て意見交換を行った。本フォー

ラムでは、①「アジア太平洋地域の安全保障-深まる地域 の重要性と進化する安全保障枠組」および②「PKO活動 -今後の課題と協力のあり方」を議題として議論を行った。 3 ASEAN10か国(ブルネイ、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、カンボジア(95(平成7)年から)、ミャ ンマー(96(同8)年から)、日本、オーストラリア、カナダ、中国、インド(96(同8)年から)、ニュージーランド、パプアニューギニア、韓国、 ロシア、米国、モンゴル(98(同10)年から)、北朝鮮(00(同12)年から)、パキスタン(04(同16)年から)、東ティモール(05(同17)年から)、 バングラデシュ(06(同18)年から)、スリランカ(07(同19)年から)の26か国および欧州連合(EU:European Union)

4 毎年、外相級の閣僚会合のほかに、高級事務レベル会合(SOM:Senior Officials Meeting)が開かれるほか、信頼醸成措置および予防外交に関する 会期間支援グループ(ISG on CBM/PD:Inter-Sessional Support Group on Confidence Building Measures and Preventive Diplomacy)、ARF 安全保障政策会議(ASPC:ARF Security Policy Conference)などが開催されている。また、02(平成14)年の閣僚会合以降、全体会合に先立って、 ARF防衛当局者会合(DOD:Defense Officials’ Dialogue)、会期間会合(ISM:Inter-Sessional Meeting)が開催されている。

5 わが国は11(平成23)年、インドネシア、ニュージーランドとともに第3回会期間会合を東京で共催した。 図表Ⅲ-2-1-4 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の組織図および概要 拡大ASEAN国防相会議 (ADMMプラス) 高級事務レベル会合 (ADSOMプラス) ADSOMプラスWG 専門家会合 (EWG) ・3年毎に開催 ・閣僚級 <参加国> ASEAN+豪州、中国、 インド、日本、韓国、NZ、 ロシア、米国 ・年次開催 ・局長級 ・年次開催 ・課長級  専門家会合(EWG)の概要 ★ 5つの特定分野毎に設置 ★ ASEAN域外国との共催 ★ 情報共有、ワークショップ、セミナーの開催、共同訓練の促進 ★ 勧告・報告書の提出  専門家会合(EWG)と議長国 ① 人道支援・災害救援(中国・ベトナム) ② 海上安全保障(豪州・マレーシア) ③ 防衛医学(日本・シンガポール) ④ テロリズムへの対応(米国・インドネシア) ⑤ 平和維持活動(ニュージーランド・フィリピン)

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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(2)日ASEAN諸国防衛当局次官級会合 安全保障分野における日ASEAN間の次官級の人脈の構 築を通じて二国間・多国間の関係強化を図るため、09(同 21)年より毎年、防衛省主催で日ASEAN諸国防衛当局次 官級会合を開催するとともに、あわせて二国間の次官級会 談も行っている。13(同25)年3月に第4回会合が開催さ れ、ASEAN諸国およびASEAN事務局の次官クラスの参 加を得て、①「アジア太平洋地域の安全保障課題と今後の 日・ASEAN協力」および②「13(同25)年のADMM プラス、ARF」について意見交換を行った。また、防衛事 務次官がブルネイ、インドネシア、ラオスおよびマレーシ アの参加者との二国間の次官級会談をそれぞれ行った。 なお、13(同25)年は、日本とASEANの交流開始 から40周年にあたることから、防衛省・自衛隊としても、 防衛分野においてASEAN諸国と様々なレベル・分野に おける協力・交流事業を行い、さらなる関係強化を図るこ ととしている。 さらに、本会合にあわせて、国内外から有識者・防衛 当局者を招き、地域が抱える安全保障上の課題やこうした 課題に対する防衛当局の役割について議論を行う、一般公 開の「共通安全保障課題に関する東京セミナー」も毎年開 催しており、 同年は、本会合翌日に「アジア太平洋地域 の安全保障-日本とASEANの今後の役割」をテーマとし て議論を行った。 参照▶資料55 4 その他 (1)民間機関主催の国際会議 安全保障分野においては、政府間の国際会議だけでは なく、政府関係者・学者・ジャーナリストなどが参加する 民間機関主催の国際会議も開催され、中長期的な安全保障 上の課題の共有や意見交換などが行われている。 主な国際会議としては、I

The International Institute for Strategic StudiesISS(英国国際戦略研究所)が

主催する、IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)6 およびIISS地域安全保障サミット(マナーマ対話)がある。 IISSアジア安全保障会議は、地域安全保障枠組の設立 を目的として設置され、毎年シンガポールにおいて、アジ ア太平洋地域の国防大臣などが多数参加する国際会議であ り、地域の課題や防衛協力などが話し合われている。 本年5月31日~6月2日に開催された第12回会議には、 小野寺防衛大臣が参加し、「国益の防衛、紛争の予防」をテー マにスピーチを行ったほか、参加国との二国間、三国間防 衛相会談において、地域情勢や防衛協力について意見交換 を行った。 IISS地域安全保障サミットは、中東諸国の外務・防衛 当局など関係者を中心に、安全保障に関して意見交換を行 う国際会議であり、バーレーンのマナーマで開催されてい る。わが国にとって中東地域の安定はエネルギー安全保障、 シーレーンの安全と安全確保の観点からきわめて重要であ り、防衛省としては、05(同17)年の第2回会議以降、 毎回、参加している。 6 アジア太平洋地域の国防大臣クラスを集めて防衛問題や地域の防衛協力についての議論を行うことを目的として開催される多国間会議であり、民間研 究機関である英国の国際戦略研究所の主催により始まった。02(平成14)年の第1回から毎年シンガポールで開催され、会場のホテル名からシャング リラ会合(Shangri-La Dialogue)と通称される。 日ASEAN次官級会合 第4回日ASEAN諸国防衛当局次官級会合参加者による安倍内閣総理大臣表敬 の様子

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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(2)アジア太平洋諸国参謀総長等(

Chief of DefenseCHOD)会議 CHODは、主にアジア太平洋諸国の参謀総長などが一 堂に会し、地域の安全保障に関するテーマについて自由に 意見交換を行うとともに、あわせて行われる二国間会談な どを通じて、域内各国の相互信頼醸成および安全保障上の 関係強化を図ることを目的として開催されている。わが国 は98(同10)年の第1回会議以来、継続的に参加している。 04(同16)年には、わが国は米太平洋軍と第7回会議を 共催した。また、12(同24)年11月には、第15回会議 が豪国防軍および米太平洋軍の共催によりオーストラリア のシドニーで開催され、統幕長が参加した。 参照▶資料56 (3)オピニオンリーダーの招へい 01(同13)年より、わが国の安保・防衛政策、自衛隊 の現状などに関する理解を促進することを目的として、ア ジア太平洋地域のうち特にわが国として信頼関係を深める ことが有益と思われる国から、主に安全保障政策の関係者 をわが国に招へいしている。平成24年度はパプアニュー ギニアから国防省関係者を招へいした。

能力構築支援をはじめとする実践的な多国間安全保障協力の推進

1 能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組 (1)能力構築支援実施の背景 近年、人道支援・災害救援、地雷・不発弾処理、防衛医 学などの非伝統的安全保障分野における防衛当局の役割や 協力が拡大・深化しており、特に、国際社会が協力し、こう した分野における関係国の能力を向上させる能力構築支援 (キャパシティ・ビルディング)の重要性が認識されている。 防衛省・自衛隊は、これまで、国際協力の一環として、 ①国連平和維持活動、②国際緊急援助活動、③ソマリア沖・ アデン湾における海賊対処活動などを行っているが、こう した活動は、紛争や大規模災害など実際に生起した安全保 障上の問題への「事後的」な対応と位置づけられる。これ らの活動に対し、能力構築支援は、「平素」から継続的に非 伝統的安全保障分野における人材育成や技術支援などを通 じて途上国自身の対処能力を向上させることにより、地域 内における安定を積極的・能動的に創出し、国際的な安全 保障環境を改善するという新たな発想に基づく取組である。 (図表Ⅲ-2-1-5参照) さらに、能力構築支援に取り組むことは、①各国の支 援要請に応える形で能力構築支援を行うことにより、二国 間関係の強化が図られる、②開発途上国の安全保障分野に おける能力を向上させることにより、国際的な安全保障環 境の改善につながる、③地域の平和と安定に積極的・主体 的に取り組むわが国の姿勢が、国民や支援対象国に正確に 認識されることにより、防衛省・自衛隊および日本全体へ の信頼が向上し、ひいては国際社会におけるわが国の発言 力の向上につながる、④「事後的」な対応に比べ、事態の 生起を未然に防ぐことができ、あるいは実際に事態が発生 した場合の被害を減少させる可能性があり、対処に要する コストが大幅に軽減される、といった利点がある。

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図表Ⅲ-2-1-5 能力構築支援事業のイメージ 防衛省・自衛隊 (NGOなど)民間団体 事業の実施 (人材育成など) 東南アジア諸国など(軍または軍関係機関) シャングリラ会合でスピーチを行う小野寺防衛大臣(13(平成25)年6月)

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国際的 な 安全保障環境 の一 層 の 安定化 へ の 取組

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特に、東南アジア諸国からは、非伝統的安全保障分野 における自国の対処能力向上への支援要請が寄せられてお り、防衛省・自衛隊としても、自らの有する知見・経験な どを用いることで、関係国の軍および軍関係機関の能力向 上や人材育成に積極的かつ戦略的に取り組む必要があると 考えており、また、こうした取組は自衛隊自体の能力向上 にも資するものである。 能力構築支援の開始に先立ち、平成23年度に主に東南 アジア諸国において、現地調査や具体的なニーズの把握や 分析を行い、今後行うべき能力構築支援分野や態様に関す る調査研究を行った。平成24年度には、調査研究の結果 などを踏まえ、①自衛官や民間団体の要員を、一定期間支 援対象国に派遣する事業(長期派遣事業)、②自衛官などを、 短期間支援対象国に派遣する事業(短期派遣事業)、③支 援対象国の研修員を、わが国に受け入れる事業(招へい) の3つの事業をそれぞれ行うこととした。 (2)具体的な活動 ア 長期派遣事業 (ア)事業の概要 長期派遣事業は、講義や実習など、規模が大きく体系 的な人材育成などを行うため、比較的長期にわたり、内局 要員・自衛官・N Non–Governmental OrganizationGOなどの知見のある民間団体の要員か ら成るチームを派遣するものである。本事業は、平成23 年度に行った調査研究の結果を踏まえ、平成24年度から 開始し、これまでに東ティモールおよびカンボジアにおけ る活動を行った。 (イ)東ティモールにおける活動 12(同24)年12月から13(同25)年3月までの間、 陸上自衛官2人、事務官1人、民間団体の要員4人を、東ティ モール軍メテナロ基地などに派遣し、人道支援・災害救援 分野の能力向上に寄与する装備品の維持・整備技術に関す る人材育成事業を行った1。具体的には、自衛隊のこれま での災害救援活動に関する経験や教訓を共有するとともに、 東ティモール軍の整備職種の要員に対して、車両整備の概 要や具体的な整備技術に関する教育を行った。 (ウ)カンボジアにおける活動 13(同25)年1月から3月までの間、陸上自衛官4人、 事務官1人、民間団体の要員6人を、カンボジア国家平和 維持・地雷処理爆発性残存物除去センター(

National Centre for Peacekeeping Forces, Mines and ERW ClearanceNPMEC)

の訓練センターに派遣し、PKO分野の能力向上に寄与す る道路構築などの施設分野に関する人材育成事業を行った。 具体的には、自衛隊のPKO活動などの講義を行うとともに、 カンボジア軍の施設職種の要員に対して、道路構築などに 必要な基礎的事項に関する教育を行った。 イ 短期派遣事業 (ア)事業の概要 短期派遣事業は、セミナーにおける講義などを行うため、 知見を有する自衛官などを短期間派遣するものである。講 師派遣については、これまでも、アフリカPKOセンター に対して陸上自衛官を派遣してきた実績があり、このノウ ハウをもとに、相手国側のニーズを踏まえた講義や意見交 換を行うことができると考えている。(第4節参照) (イ)活動状況 これまでに、防衛省・自衛隊は、モンゴルに陸上自衛 官など、ベトナムおよびインドネシアに海上自衛官などを 派遣し、短期間のセミナーを行った。 (図表Ⅲ-2-1-6参照) 1 陸上自衛官については、一部期間の派遣。 インドネシアにおいて講義を行う海自隊員 東ティモール・メテナロ基地において講義を行う陸自隊員

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図表Ⅲ-2-1-6 短期派遣事業の活動状況 対象国 実施期間 内  容 支援対象 派遣要員 モンゴル 平成24年10月17日 衛生分野の支援として、陸上自衛隊の衛生についての取組に関するセミナー(講義) を実施。 モンゴル軍中央病院 勤務の医官など 陸上自衛官 2名内局事務官 1名 ベトナム 平成24年10月22~23日 潜水医学の概要に関するセミナー(講義) を実施。 ベトナム海軍医官など 海上自衛官 3名 内局事務官 1名 平成25年5月22~24日 海上自衛官 2名内局事務官 2名 インドネシア 平成25年2月4~6日 海上安全保障分野の支援として、気象海洋業務に関するセミナー(講義)を実施。 インドネシア海軍海洋業務センター 海上自衛官 3名内局事務官 1名

能力構築支援に参加した隊員の声

防衛省・自衛隊が平成24年度から取り組み始めた能力構築支援においては、自衛官が各国に派遣され、相手 国の要員の教育に熱心に取り組むとともに、信頼関係の構築に努めました。ここでは、実際に派遣された一部の 隊員の声を紹介します。

カンボジアの将来を担う子どもたちのために

カンボジア能力構築支援現地チーム長(当時) 2等陸佐 永なが井い 克かつ征ゆき 私が第1次カンボジア派遣施設大隊の要員として活動した20年 前、内戦や虐ぎゃく殺さつのために多くの大人達が亡くなり、また地雷のた めに片足を失った多くの大人達の姿を見かけました。そのため、 「この国の将来を担う子供たちのために頑張ろう」を合言葉に各種 活動に励みました。その時の子供たちと同世代の学生が今回の教 育に参加してくれています。この学生たちが私達と同じ気持ちを 持って、近い将来、他国のPKOに参加し活躍してくれることを心 から祈っています。 カンボジア王国軍研修生との集合写真(筆者:前列の左から5番目)

ベトナム海軍医官との熱い講義

潜水医学実験隊 実験第1部長 1等海佐 只ただ野の 豊ゆたか 12(平成24)年10月に行われたベトナム海軍に対する能力構築支 援に参加し、医官を対象とした潜水医学に関するセミナーを行いました。 ベトナム海軍からは30人以上の医官を含む40人近い参加があり、い ずれの講義も受講姿勢は極めて真剣で、熱心な質問は休憩時間にも食 い込みました。先方のこの分野に対する関心の程度および海上自衛隊 への期待は、予想以上に高いものでした。 セミナーの間に質問を受ける筆者(左端)

コラム

VOICE

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ウ 招へいなど 要員の招へいは、相手国側の実務者などを招待し、わが 国において行う教育訓練などを視察・研修させるものである。 13(同25)年3月には、ベトナム国防省からPKO派遣準 備などに携わる将官を含む実務者を招へいし、20年の実績 に基づく自衛隊のPKOへの取り組みやノウハウを紹介する とともに、陸自の国際活動関連部隊の研修を行った。 2 パシフィック・パートナーシップ 07(平成19)年より行われているパシフィック・パー トナーシップ( Pacific PartnershipPP)は、米海軍を主体とする艦艇が地域内 の各国を訪問して、医療活動、文化交流などを行い、各国 政府、軍、国際機関、NGOとの協力を通じ、参加国の連 携強化や国際災害救援活動の円滑化などを図る活動である。 わが国は、07(同19)年から、海自の医官などを派遣し て調査研究を行ってきた。 PPへの参加は、国際的な安全保障環境の改善に寄与し、 日米安保体制の強化などにもつながることから、わが国の 平和と安全を確保する観点から重要である。また、国際平 和協力活動での医療や輸送に関する自衛隊の練度・技量の 向上を図るとともに、民間団体との調整・連携のノウハウ を得る上でも有意義な機会であり、10(同22)年以降、 自衛隊の部隊などを派遣している。 13(同25)年は、トンガにおいては自衛隊医官を派遣し、 パプアニューギニアにおいては、自衛隊医官、海自艦艇お よび空自輸送機を派遣するとともに、NGOとも協力して、 医療活動や文化交流などを行うこととしている。

炎天下での医療活動 

-パシフィックパートナーシップ2012参加隊員の声-

第1輸送隊司令(当時) 1等海佐 山やま田だ 勝かつ規のり パシフィックパートナーシップは、アジア太平洋地域の 各国を病院船などが訪問する多国間の取組であり、スマト ラ沖地震の07(平成19)年から、米国が主体となり、災 害救助活動や医療活動などの能力向上を目的として行わ れています。昨年は、インドネシア、フィリピン、ベトナ ム、カンボジアで活動が行われ、米軍から第7駆逐隊司 令部および病院船「マーシー」が参加しました。海上自衛 隊の第1輸送隊司令部、輸送艦「おおすみ」は、陸海空 自から派遣された医療チーム、NGOおよび米軍とともに フィリピン、ベトナムにおいて活動しました。各国約2週 間と短い活動でしたが、炎天下の過酷な環境下でのNGO の人たちの献身的な活動や医療の力が印象的でした。主な活動である医療活動に加え、「おおすみ」乗員は寄港 先の子供たちとの交流も行いました。子供達とのふれ合いは医療チームの疲れを癒いやし、心休まる時間となったよう です。本訓練は、東日本大震災を通じて重要性が再認識された米軍やNGOなどとの連携や、国際緊急援助活動 などのための有効な訓練です。また、このような取組を継続することは、アジア地域との友好親善という面でも有 意義だと考えます。

コラム

VOICE

フィリピンにおいて記念品を授与する筆者(左)

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3 多国間共同訓練

(1)アジア太平洋地域での多国間共同訓練の意義 アジア太平洋地域では、00(同12)年より、従来から 行っていた戦闘を想定した訓練に加え、人道支援・災害救 援(

Humanitarian Assistance/Disaster ReliefHA/DR)、非戦闘員退避活動(Non-combatant Evacuation OperationNEO)などの非伝

統的安全保障分野を取り入れた多国間での訓練への取組を 始めるようになった。 このような多国間の共同訓練に参加し、また主催する ことは、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の 各種調整や意見交換を通じ、協力の基盤を作る上で重要で あり、防衛省・自衛隊としても、引き続き、これらの訓練 に積極的に取り組んでいる。 参照▶ 資料57 (2)多国間共同訓練への取組 ア 多国間共同訓練の参加・主催 02(同14)年4月、第2回西太平洋潜水艦救難訓練を わが国として初めて海自が主催し、同年10月にも、海自 が多国間捜索・救難訓練を主催した。11(同23)年3月 には、ARFの枠組で2回目となる災害救援実動演習 (ARF-DiREx2011)をわが国とインドネシアが共同で 開催し、防衛省・自衛隊からも要員が参加した。 また、自衛隊は、05(同17)年以降、毎年行われてい る、米・タイ共催の多国間共同訓練である「コブラ・ゴー ルド」演習に参加している。13(同25)年2月に行われ た「コブラ・ゴールド13」では、指揮所演習、人道・民 生支援活動の医療部門、在外邦人等輸送訓練に参加した。 さらに、自衛隊は、10(同22)年以降、米国の提唱す る国連平和維持活動に係る多国間共同訓練G

Global Peace Operations InitiativePOIキャッ

プストーン演習に参加している。13(同25)年3月ネパー ルで行われた「シャンティ・プラヤ-2」では幕僚訓練お よび実動訓練に参加した。 また、陸自は前年に引き続き、12(同24)年8月、米 国およびモンゴル共催の多国間共同訓練「カーン・クエス ト12」に参加した。海自は、同年9月および13(同25) 年5月の2回、アラビア半島周辺海域で行われた米主催国 際掃海訓練に参加した。また、同年3月には、パキスタン 海軍主催多国間海上共同訓練「アマン13」に参加している。 空自は前年に引き続き、同年2月、日米豪共同訓練「コー プノース・グアム」を行った。 イ 多国間共同訓練へのオブザーバーの招へいなど 01(同13)年9月、わが国で行った第4回日露捜索・ 救難共同訓練に、アジア太平洋地域の8か国からオブザー バーの参加を得て以来、諸外国からのオブザーバーの招へ いにも取り組んでいる。 また、陸自は、02(同14)年以降、多国間協力の一環 として、毎年アジア太平洋地域多国間協力プログラム (

Multinational Cooperation program in the Asia Pacific

MCAP)を主催し、関係各国の実務者を招へいしている。 12(同24)年9月には、アジア太平洋地域の22か国お よび行政機関などの組織から参加を得て、「大規模災害対 処のための陸軍種としての平素の取組」について、シナリ オに基づく机上演習などを行った。 「コブラ・ゴールド」において避難民の誘導を行う陸自隊員 米主催国際掃海訓練において各国隊員と掃海準備を行う海自隊員

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世界の機雷戦部隊が集結 

-米主催国際掃海訓練参加隊員の声-

第51掃海隊司令(当時)1等海佐 河かわ上かみ 康やす博ひろ 12(平成24)年9月、ペルシャ湾およびバーレーン において、米主催国際掃海訓練および国際掃海シンポ ジウムが開催され、6大陸、30か国以上の海軍機雷戦 部隊が参加する、これまでで初となる世界最大規模の国 際的な掃海訓練に日本からも掃海母艦「うらが」、掃海艦 「はちじょう」および水中処分員などが参加しました。こ の訓練で私は派遣部隊指揮官として日本部隊の指揮をと る栄誉に預かりました。 本訓練は、掃海および潜水に関する戦術技量の向上 と参加各国との信頼関係の強化を目的としたものです。 また、日米の共通戦略目標でもある海上交通の安全お よび海洋安全保障の維持にも寄与するものであり、日米同盟の深化やグローバルな安全保障環境の改善に資する 側面もあったものと考えます。 これは、現地主催者の米海軍第5艦隊司令官から「本訓練の共通目標は、海洋の安全保障と安定である」との 発言からもうかがえました。また、「本訓練を通じ、改めて海自機雷戦部隊の練度の高さ、プロフェッショナルとし ての仕事ぶりに感銘を受けた」との言葉をいただきました。 今後も海自部隊の国際掃海訓練への参加は、海自のみならず日米同盟にとって有意義であると考えます。

コラム

VOICE

派遣部隊指揮官として指揮をとる筆者

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Table Top Exercise TTX)を行い、実践的な意見を

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