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東アジアの地域協力と日中関係

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Academic year: 2021

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東北アジアの地域協力と日中両国の役割 呉寄南 要約 近年来、東北アジアの地域協力は大きな進展が見られてきた。国境にまたがる資金、技 術と人材の交流は益々頻繁になってきている。しかしながら、同地域においては、異なっ た社会制度、イデオロギー、拡大しつつある経済格差、また歴史的な紛糾による相互不信 は更なるの協力を妨害している。中日両国は同地域の二つ影響力を持つ大国同士であるが、 どちらでも単独に東北アジア経済を牽引することができない。「一つの山に二匹のトラの 共存することが許せない」という時代遅れの思考を捨てて、共通の努力によって、東北ア ジアの地域協力を新たな段階に推進していこう。 東北アジアの範囲は、一般的に中国の東北地区、北京・天津・唐山地区と山東半島、ロ シアの極東地区とシベリア、朝鮮、韓国、モンゴルならびに日本などを指している。東北 アジアの諸国は経済発展の段階が大きく異なっている。日本と韓国はOECD加盟した先 進国である。中国の国内総生産高(GDP)が世界第六位に舞い上がったが、一人当たり GDPから見れば未だ途上国の水準に止まっている。ロシアは中進国であるが、極東地区 とシベリアはどうちらかというと途上国類型に属している。朝鮮とモンゴルは経済発展が 比較的に立ち遅れている。 東北アジアはアジアの中で、一番経済活力を持つ地域である。日本、中国、韓国三カ国 のGDPはそれぞれアジアの一位、二位、三位を占めている。冷戦終結後、グロバール化 の波は世界各地になだれこみ、東北アジアの地域協力も勢いよく進んできている。本稿は 東北アジアの地域協力の特徴を分析する上で、中日両国の役割とこれからの協力のあり方 について述べたいと思う。 東北アジアの地域協力の特徴 近年来、東北アジアの地域協力が次の特徴が見られた。 第一、二国間協力は多国間協力より進んでおり、一部の国同士は相互依存関係が益々深 まってきており、自由貿易協定(FTA)を結ばれるため、政府間交渉が進んでいる。 1、日韓両国はOECDに加盟した先進国として、密接な経済関係を持っている。20 04年、ニ国間貿易総額は678.4億ドルに達し、多くの業種に水平分業関係が形成さ れた1。日韓間はFTA交渉を2005年内に実質的に終了させることで一致した。 2、中日間の経済関係は飛躍的に発展しつつある。2004年に、中日間の貿易総額は 1678億ドルの史上最高記録となった。香港を含む中国市場は既にアメリカを超え、日 本の最大な貿易パートナシップとなった。2004年末、日本の対中直接投資累計額は契 約ベースで688億ドルで、実行額で468億ドルに達している2。日本は香港・マカオ、 アメリカに次ぎ、中国の海外投資国・地区の中に第三位を占めている。 3、中韓間の経済貿易関係は喜ばしい進展が見られている。中韓両国は国交樹立以降、

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経済貿易関係は著しく発展してきた。2004年の二国間貿易総額は既に900.7億ド ルに達した3。中韓両国はそれぞれ相手側の第一位、第六位の貿易相手国となった。また、 韓国の対中直接投資も迅速に増長しつつおり、中国は既に韓国の最大な投資先となった。 4、中露間の経済貿易には更なる発展の潜在力を持つ。中露間の二国間貿易総額は、2 001年に初めて100億ドルの枠を超え、2004年には212.3億ドルで最高記録 を更新した4。両国間のエネルギー、海運など各分野での協力も順調に進行している。数 多くのプロジュックトは中国の東北地区とロシアの極東地区で展開している。ロシアの中 国に提供した原発はまもなく稼動する見込み。 第二、地方間の協力は国同士の協力より進んでおり、サブ経済圏構想が相次いで打ち出 され、一部は実施に向かっている途中。 欧州、北アメリカでは、地域協力は主に国同士の間で行なわれているが、東北アジア諸 国はそれほど進んでいない。しかしながら、各国の近接した地方間の協力が盛んに行なわ れており、サブ経済圏は次第に形成されつついる。サブ経済圏の主体は主に企業と地方自 治体であり、「船体が小さくて、向きを変えることが速い」という特徴を持つ。 サブ経済圏は現在、東北アジアの地域協力を促進するため、主導的な役割を果たしてい る。同地域には、大きな進展が見られるサブ経済圏が次の通りである。 1、環黄海・渤海経済圏。90年代以来、中韓間の経済交流は黄海、渤海を隔てた中国 の山東、河北、北京、天津ならびに遼寧など各省・市と韓国の西海岸を中心に迅速に発展 しつつある。一方、日本の九州地区は一向、中国や韓国と盛んに経済交流を推し進めてい る。九州の福岡、長崎、熊本、鹿児島など各県は環黄海・渤海経済圏に対し、強い関心を 持っている。中日韓三国は近年来、環黄海・渤海経済圏について、一連の検討と検証を行 い、創意性が満ちた構想は打ち出された。例えば、黄海、渤海を面している大連市、北九 州市、仁川市においてそれぞれ幅広い業種をカーバーする経済特区を設置し、商品、技術、 資金、情報ならびに人材の交流を促進する。そして、中日韓三国はハブ海港とハブ空港の 建設に力を入れて推し進めてきた。例えば、大連港、釜山港、威海空港、仁川空港はそれ ぞれ拡大工事を行なっており、環黄海・渤海経済圏の形成は大きく促進されるだろう。 2、環日本海経済圏。ロシアの極東地区、中国東北、朝鮮、韓国と日本の日本海沿海地 区から構成する。この地区の総人口は5億人、GDPは5兆ドルに達する。各国の間には 資源、工業製品、労働力、技術と資金などの補完性が強い。ここ十数年間、環日本海経済 圏に関する諸構想の中に、一番魅力があるのは図門江地区の国際開発である。90年代初 頭、国連開発計画署(UNDP)は積極的にこれを応援し、多額の資金援助を行い、前期 研究を行った。1995年に、中国、ロシア、朝鮮など三カ国は「図門江地域開発調整委 員会の設置する合意書」を締結した。さらに、韓国、モンゴルも加わり、五カ国は国連本 部で「図門江経済開発地域及び東北アジアの開発のための諮問委員会の設立する合意書」 などの協定を調印した。このきっかけで、図門江地区の開発は構想段階から実際の運営段 階に移行した。2000年4月に、中国は琿春に輸出加工区を設け、海外からの直接投資 を導入し始めた。ほぼ同じ時期にロシアはナホトッカ、ウラジオストク、ハザンなどで数 多くの自由貿易区を設置した。朝鮮も羅津、先鋒を輸出加工区の第一号として設立し、世

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界各国からの注目を浴びている。目下、中朝露三国の協力によって、図門江地区で三国間 がつながっている高速道路、港湾などのインフラ整備はスタートした。中露韓および中露 日の陸・海貨物専用の航路も相次いで開通した。 第三、ロシア、朝鮮及びモンゴルより、中日韓三国は主導的な役割を果たしており、東 北アジアの地域協力の推進役となっている。 アジアの地域協力は基本的に東南アジア諸国連合(ASEAN)によって推進されてい る。大国はを中小国によるずるずると引張られていく傾向が強い。中日韓三国が同じテー ブルに付いたのも、「ASEAN+中日韓」会議を参加するきっかけであった。1999年 に、中日韓三国首脳は「ASEAN+中日韓」会議中、初めて非正式な朝食会を開いた。 この後、三国首脳会談が軌道に乗せて、単独的な対話と交渉の枠組みとなった。 2002年10月に、「ASEAN+中日韓」の会議中、朱鎔基総理は小泉純一郎首相に、 経済貿易、情報通信、環境保護、人材育成および文化教育など五つの分野において中日韓 三カ国の協力を促進しようと提案した。2003年10月に、中日韓首脳インドネシアの バリで開催された「ASEAN+中日韓」会議の際に会談し、「中日韓三国間協力の促進に 関する共同宣言」を発表した。翌年11月、ラオスで開かれた中日韓三国首脳会談はさら に「共同戦略」を提出した。現在、三国間の各分野、各レベルの会合と協力の枠組みが相 次いで設立しつつある。その中に、中日韓三国間の環境大臣会合、ITワーキング・グル ープ会合、特許庁長官政策対話会合、国際金融に関するセミナー、港湾局長会合郵政ハイ レベル会合など名高い枠組みが取り上げられる。三国は東北アジアの地域協力の中で主導 的な役割が果たし始まった。 第四、エネルギーを巡る協力は他の分野の協力より、東北アジア諸国の視線を集めって おり、東北アジアエネルギー協力機構を創設する声が益々高まっている。 東北アジアはエネルギーの産地と同時に、最大消費地ともいえる。ロシアは世界最大の ガス輸出国で、石油製品でも世界第二位の輸出国である一方、世界第三位のエネルギー消 費国でもある。中国は世界第二位の一次エネルギー消費国であり、世界の一次エネルギー 需要の10%以上を占めている。エネルギー生産について、石炭、石油を中心に、アメリ カ、ロシアに続く第三位だ。日本と韓国は大きく輸入エネルギーに依存している。日本は 世界第四位のエネルギー消費国で、一次エネルギーの半分が石油である。韓国もエネルギ ー輸入依存率は80%に達し、世界第四位の石油輸入国、LNGと石炭については世界第 二位の輸入国である。 東北アジアのエネルギー協力は実は、日本がロシアのサハリン天然ガス開発に参入した 形で大昔からスタートした。サハリン 1 の石油パイプラインとサハリン 2 のLNGプラント や等建設工事をを日本企業が受注した。2004年 5 月に、100億ドル規模のサハリン 2 の次期投資も決まった。そのうち、45億ドルが日本企業による投資される。近年来、 ロシアは毎年、鉄道を通じ中国側に石油を輸出している。また中露間では、パイプライン を通じ、東シベリアの石油を中国大慶まで運ぶという交渉も行なわれてきた。しかし、日 本政府もロシア政府に働きかけて、この石油パイプラインのルートをこれまでの大慶まで の「中国ルート」からナホトカ付近までの「太平洋ルート」に向きを変えた5。ロシアに

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とっては、どういうルートを採用するかは自国の国益を踏まえて検討しなければならない。 何れ、中日両国をともに満足するよう新しいルートを決着する見込み。 第五、東北アジアの経済協力は政治、安全保障の協力より進んでいるが、地域協力は漸 次に経済分野から政治・安全保障分野に波及しつつある。 この地域には冷戦時代の後遺症――朝鮮半島の分裂状態はまだ続いており、南北双方は 百万以上の大軍を軍事境界線を挟んで対峙させている。時々、銃撃戦までエスカレトされ た緊張の局面は現れている。2000年6月に金大中大統領が平壌を訪問し、分断後初め ての南北首脳会談が実現し、離散家族の相互訪問、寸断された南北に走る鉄道の再開及び 開城工業団地の設置など、いくつかの合意が達成された。ここ5年間、南北関係は飛躍的 に進んできた。離散家族の再会は既に10回を数え、100万人の韓国人観光客は北の名 勝・金鋼山を訪ねた。開城工業団地に多数の韓国企業に進出し、一部が操業を始めた。京 義線・東海線の連接道路は2004年11月に完工、鉄道もほぼ出来上がった。 2002年秋以降、朝鮮の核開発問題は急浮上し、東北アジアに新たな緊張要因となっ た。朝鮮はNPT条約脱退を宣言し、態度を硬化させた。アメリカも一時、軍事的な報復 措置を辞さず、という強硬な姿勢を示した。関係諸国は、「平和的な解決」を目指すとの 方針で朝鮮側に核開発問題を断念させるため、粘り強く説得を続けてきた。2003年以 来、中国、日本、韓国、朝鮮、アメリカ、ロシアなどの六者協議は四回ほど開催された。 もし、朝鮮核問題がうまく解決されれば、この六者協議を「東北アジア国際フォラーム」 に転身できると思う。これは東北アジアの地域協力はハイレベルに格上げする大きな一歩 踏み出す。 中日両国は単独で地域協力をリードすることができない 日本は世界第二の経済大国として、資金、技術の面にしても、輸入市場にしても東北ア ジアの地域協力にとっては欠かせない存在である。 もともと、日本は地域協力について一番熱心な国であった。40年前の1965年、小 島清・一ツ橋大学教授はアメリカ、カナダ、日本、オストラリア、ニュージランドなど五 カ国によって「太平洋自由貿易区」(PAFTA)を結成しろうと提言した。その後、大 平正芳首相は途上国も入れた「環太平洋経済協力」構想が打ち出された。1989年11 月、日本、オストラリア、アメリカ、カナダの呼びかけで、キャンベラで第一回目の「ア ジア太平洋経済協力会議」(APEC)を開いた。1993年から、APECは閣僚会議 から首脳会談に格上げ、参加国も増え、同地域の一番影響力が大きい枠組みとなった。ア ジア通貨・経済危機の勃発した後、1998年10月、日本政府は、韓国、ASEANな どアジア諸国に対し、300億ドル規模の資金援助を行なうことを決め、これが「宮沢構 想」と呼ばれる。アジア諸国のニーズを応え、半年間その半額以上の援助が消化され、ア ジア諸国の通貨・経済危機から脱却するため、主導的な役割を果たしていた。 近年来、日本政府は東南アジア諸国連合と中日韓三カ国、いわゆる「ASEAN+中日 韓」という協力枠組みに積極的に取り組むようになっている。その中で、中国、韓国との 経済関係強化をも重視している。日韓FTA交渉は日本側の強い決意で2003年にスタ

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ートしたが、2005年中その協定が結ばれる見込みだ。 しかしながら、東北アジアの地域協力に対し、日本政府は決して積極的に推し進めてい くのではない。黄海・渤海を面して九州地区の各自治体、ならびに日本海を沿岸の各自治 体はサブ経済圏を形成させるため熱心に取り組みしているが、日本政府はほとんど関心を 示していない。図門江開発の例をあげると、モンゴルは図門江と大きく隔てられたが、図 門江経済開発に関する国際協定を加えた。にもかかわらず、日本は図門江地区近接しても、 図門江経済開発に関する国際協定を一切、加えていない。その原因は恐らく、日朝関係も、 米朝関係もまだ正常化されていないということであろう。 言うまでもなく、地域協力にとっては国家関係の正常化は欠かせない条件である。実は、 日本はモンゴルを除いて、東北アジア諸国との関係はいつも順風満帆にいけるものではな い。領土問題(ロシアとの間では北方四島問題あり、韓国との間では竹島問題あり、そし て中国との間では釣魚島問題あり)、歴史問題(中国、朝鮮、韓国など)は、常に関係諸 国の間に波風を引き起こされている。これは日本の東北アジアの地域協力に取り込み、そ の経済実力に応じる主導的な役割を果たすのに大きな障害となっている。一方、日本の経 済成長率と国全体の輸入規模から見れば、単独で東北アジア経済を牽引することは難しい。 中国は世界最大な途上国である。改革・開放以来、積極的に国際社会ないし地域協力に 取り組みしてきた。中国の国内総生産(GDP)は日本の三分の一に過ぎないが、対外貿 易総額は既に2004年に日本を上回れ、世界第三位となった。ここ数年、欧米諸国経済 が低迷している際、中国はずっと世界経済成長を推進する重任を負い、世界経済成長に尽 くした貢献が欧米諸国よりさらに大きい。中国は豊かな労働力資源を有し、生産コストが 低く、政治社会が安定、多くの外国投資者の優先的な選択地となった。改革・開放以来、 外国企業の対中投資はますます増え、いままでの直接投資額が計5600億ドルとなった。 中国経済の迅速な発展は自国のために繁栄と進歩をもたらすだけでなく、世界のためにも たらしたチャンスは競争の挑戦より遥かに大きい6 地域協力について、中国は、「地方(政府)が先駆けて推進し、中央(政府)は後ろ盾」 という方針で積極的に推し進めてきている。例えば、1991年に、中国政府は図門江地 区における開放政策を決定した。翌年、吉林省が編成した「図門江琿春地域開発大綱」を 許可し、「中国図門江経済開発計画」と「第10次5カ年計画」を設定した。ここ十数年 間、中国側は図門江地区における「琿春国境地帯経済合作区」など、いくつかの輸出加工 区と国境地区経済協力を設け、60億元以上の資金を投資し、道路、鉄道、空港、通信な どのインフラ整備を行なってきた。例えば、琿春からロシアのカムショーバヤ駅間の鉄道 は既に一部連結されており、年間80万トンの積み替え能力を有している。琿春口岸と圏 河口岸に検疫ビルを建てられ、延べ60万人と60万トンの貨物の検疫能力を有している。 長春から琿春までの高速道路は建設中で、一部開通された。延吉空港には拡張工事が行な われ、大型旅客機の離着陸が可能になり、年間旅客輸送能力は130万人に達している。 2003年10月に中国政府は「東北振興」という新たな構想が打ち出された7。80 年代には、中国は沿海のベルト地帯においていくつかの経済特区をつけり、珠江デルタを 中心に著しい経済成長を実現した。90年代にはいってから、上海を中心に長江デルタ地

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区は中国経済成長の牽引車となった。その後、遅れた地方の「西部大開発」、「東北振興」 という新たな戦略は相次いで打ち出され、世界の各国の注目を浴びている。勿論、東北地 区は旧工業基地として、計画経済時代の古い要素が比較的に多かったし、民営企業は国有 企業より弱くて、経済発展に多くの困難や問題点が直面している。しかし、この地域には 資源が多く、人材も豊富であり、発掘するに値する多くの潜在力を持っている。現在、遼 寧省、吉林省、黒竜江省はそれぞれ自らの振興計画を立てている。遼寧省の場合、690 余りの技術改造プロジュクトだけで6500億元の資金を投入する予定である。中央政府 は一連の特典を与える上で、資金援助をも行なっている。「東北振興」は周辺諸国の経済 連携を緊密化させ、多くのビジネスチャンスを提供するだろう。もし、日本、韓国、ロシ アなどの周辺国は資金参加、技術協力、専門家派遣などの形で、を加えれば、きっと「ウ イン・ウイン」となるはずである。今後10数年間、東北は南方の発達した地域を追い越 すに違いない。東北アジアの地域協力も大きな推進力を得られると思う。 中国は13億人の人口を有する途上国であり、依然として工業化の発展段階にある。中 国政府は今世紀の初の20年の発展目標を確定した。つまり、2020年には中国の国内 総生産高が2000年に比べ4倍増、現行の為替相場により換算すれば、4兆ドル余りに 達し、1人当たりの国内総生産高が3000ドルを上回る見込み。しかし、たとえこの目 標が円満に達成されても、総合国力、科学技術水準などの面では、日本に及ばされないと 見込み。中国は現在、ASEAN諸国との貿易総額にしろ、対ASEAN直接投資にしろ、 日本との差が非常に大きい。今後、十数年間を経ても恐らく日本を上回れることがあり得 ない。予想できる将来、中国は単独でアジア地域,或いは東北アジア地域経済を主導する 能力を持たないと思う。 中日両国の協力は東北アジアの地域協力の鍵である 東北アジアの地域協力は良い勢いで展開しつつある一方、色々な困難を直面している。 まず、東北アジアにおいて先進国もあれば、一番貧困な途上国もある。そして経済格差だ けでなく、各国の社会制度、イデオローギー、宗教信仰などもそれぞれ異なっている。特 に冷戦時代の後遺症ともいえる諸問題がいまだに解決しておらず、歴史認識的隔たりも埋 めることより、むしろ拡大しつつあるので、東北アジアの地域協力に大きなマイナス影響 を及ぼしている。実は、この地域の各国政府は東北アジアの地域協力の重要性をいくら口 頭で強調しても、行動はのろのろと遅くて、グレードデザインすら描かれない。 諸問題の中に、特に申し上げたいのは中日関係である。中国では、「成功も蕭何により、 失敗も蕭何による」という古い諺がある8。中日両国は東北アジア地域における一挙手一 投足があることに決定的な力を持つ二つ大国同士である。正直に言うと、中日間の疑心暗 鬼ないし根強い対立は東北アジアの地域協力を阻害しているが、この地域協力の新たな段 階に舞い上げられるのは中日協力しかない。 中日両国は2000年以上の長い交流の歴史を持つ。1972年の国交正常化以来、各 分野の中日交流は喜ばしい発展が見られた。両国の経済貿易交流は深まりと言っても広が りといっても歴史上のいかなる時期を超えた。にもかからず、新世紀に入ってから、中日

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両国の政治関係は急速に冷え込んできた。小泉総理の靖国神社参拝により、中日両国の首 脳同士の相互訪問は既に4年以上凍結されてきた。台湾問題、釣魚島群島(日本名尖閣列 島)、東シナ海の線引きやガス開発などを巡って、激しい攻防が続けてきた。また、今年 4月、成都、北京、上海の反日デモを勃発した。両国のナショナリズムが直接に衝突した ように、一番悪い状態になってしまった。 本稿には中日関係をそれ以上、贅言するつもりがないが、中日両国は互恵協力、共同発 展することで初めて双方の長期的かつ根本的な利益にかない、アジア各国の共通の期待に もかなう。中日両国が長期的発展と持久的繁栄を実現するには、必ずアジアに立脚し、全 世界に目を向け、双方の協力を絶えず深めると同時に、アジア地域協力に積極的に参画、 推進しなければならない。まさに、呉儀・中国国務院副総理の言ったように、「これは中 日両国が道義的に拒めない歴史的責任であり、両国政府と人民の知恵と胆力と識見を試す 重大な試練である。」9 もし、中日両国は「一つの山に二匹のトラの共存することが許せない」という「ゼロ・ サム」の思考を捨てれば、共通の努力で東北アジアの地域協力を促進していくことは何よ りだと思う。 東北アジアの地域協力のため、中日両国は一体、どうのような貢献できるか。 第一、エネルギー協力。現在、東シナ海のガス田開発及びEEZの線引きについて中日 間の対立は非常に目立っている。さらにロシアの東シベリア石油パイプラインの向きを巡 っても激しい競争が行なわれている。一見、エネルギー協力は難しいことであるが、実は、 中日両国にとってはお互いに張り合うのは得策ではない、争い事を協力の舞台へと変える べきである。中日両国はエネルギー輸入大国という共通の事情を抱えているので、東シベ リアの油田開発とパイプラインの共同建設・共同管理にするとならば、「ウイン・ウイン」 になるわけである。中日両国だけでは、互いに猜疑心と対抗心が残るゆえになかなか進な まいかもしれない。韓国に入れてもらうほうが確実に進めるだろうと思われる。さらに、 この三国を中核にし、「アジアエネルギー開発機構(AEDO)」のような機構が設置され る。今後、AEDOを通じ、ロシアだけでなく、世界各地の石油・天然ガスの共同買い入 れ、共同輸送、共同備蓄なども考えられる。また、中日韓三国は世界をリードする新エネ ルギーの共同開発、、あた省エネルギー技術の普及などを協力できる。もし、エネルギー 分野で、中日両国また韓国は手を組んで協力体制が構築できれば、東北アジア地域、さら に広く言えば東アジア域内の共同体づくりを一気に促進するきっかけになる。 第二、FTA協力。中日両国は現在、それぞれASEAN、韓国など各国・地域とFT A(EPA)協定を結び付けに力をいれている。肝心な中日韓三カ国FTAについて、学 術レベルの研究が既に始まったけれど、正式な交渉は日韓間だけ絞っている。中日FTA について、中国側としては何回も日本側に提案したが、日本側のタイムスケールに上程し ていない。中日両国の対外貿易額が東北アジアの半分以上を占めているので、東北アジア 全体のFTAネットワックの形成するかどうかには中日FTAの登場によって決められ ると思う。 第三、道路、鉄道と港湾整備の協力。東北アジア地域の経済振興のため、ハブ海港、ハ

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ブ空港そして国境をまたがる高速道路、鉄道のネットワックの整備が急務である。これも 中日両国の協力分野の一つである。日本は優れた鉄道技術を有している。しかし、国内の 新規建設が少い、大きく制限されている。一方、中国の鉄道路線は全長約7万3000キ ロであったが、なかなか輸送の需要をかなえなかった。中国政府は2020年まで、内陸 部を中心に新路線を建設し、合計10万キロに延ばす計画を作った。新線の長さは日本全 国の鉄道路線全体に匹敵する。それと同時に在来線の高速化も進め輸送能力を一段と高め る。車両、通信設備及び線路整備などの面で、日本からの援助を探し求めっている。 第四、環境保護の協力。東北アジア地域おいては経済発展につれて、環境保護は益々注 目されてきている。日本は環境保護のため、世界中、一番優れて、成熟した技術を持って いる。中国も環境保護が持続可能な経済成長の欠かせない一環として重要視している。こ こ数年、中日両国は環境保護の分野で緊密に協力し、大きな成功を勝ち取っている。これ からも、東北アジア地域全般の環境保護を促進するため、更なる協力が必要である。 第五、観光の協力。 日本は昔から観光大国と呼ばれ、数多くの観光者を海外に送り出 した。一方、中国は経済発展に伴い、多くの人々が海外へ観光に行くようになった。統計 により、1997年から2004年にかけて、中国の出国観光者数が累計1億1000万 人に達した。2004年には2885万人を超え、アジア一の海外観光大国となった10 しかし中国の観光業は未熟で、色々な問題で悩んでいる。もし、中日両国は協力できれば、 きっと東北アジア地域全体の観光業は大きく促進され、同地域の経済発展にも寄せられる と思う。 1 外務省のホームページより。http://www.mofa.go.jp/area/korea/pdfs/keizai.pdf 2 中国商務部の統計より。http://gcs.mofacom.cn/tongji/shtml 3 同2. 4 同2. 5 最近、ロシア側の発表により、「太平洋ルート」の中国国境付近までの支線が先に着工されるという。 6 馬凱・国家発展 改革委員会主任の発言。2005年3月21日の「人民日報」より。 7 中国は現在、旧満州地区を「東北」と言う。その範囲は、遼寧省、吉林省、黒竜江省など三つの省 から構成する。東北は長い間、中国の工業基地として知られている。 8 蕭何は、秦代末期の英雄豪傑の一人だ。劉邦(後ほど、漢王朝を創立し、高祖と呼ばれた)の参謀と して、競争相手の項羽を滅ぼすために一番の功労者であったのに対し、漢高祖がなくなった後、後継者 争いの中で、混乱を助長してしまった責任者でもあった。 9 呉儀:「アジアの振興と中日両国の共通の責任」。2005年5月23日に、日本経済新聞社主催の特 別セッションでの講演。 10 「経済日報」、2005年7月3日。

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