秋 田県山内村 における酒造出稼 ぎ者 の労働実態
長 谷 川 尚 志
キーワー ド:酒造出稼 ぎ 分立指数 ジニ係数 秋田県山内村
Ⅰ は じめに
秋田県山内村に関する研究 は、佐々木順誠 (1968) や佐々木智 (1991) にみ られる。 しか し、 いずれ も 酒造出稼 ぎ者供給側農村の分析であ り、全国の酒造
出稼 ぎ者需給分布 に触れた上で、山内村を位置づけ た研究ではない。
そこで、本研究では全国の酒造出稼 ぎ者の需給分 布か ら秋田県の特徴を明 らかに し、山内村を対象地 域 として、酒造出稼 ぎ者供給側農村の就労先 との結 びつ き、および酒造出稼 ぎ者の労働実態を明 らかに す る。
研究の方法 として、全国的な出稼 ぎ者の居住地 と 就業地のデータをもとにクラスター分析を行なった。
また、秋田県山内村 における酒造出稼 ぎ者就労先の 変化を把握す るために、分立指数 (ii)・(iv)を用 いた。 このデータの結果を踏 まえた上で、労働実態 を明 らかにす るために、 2つの集落で聞 き取 り調査 を実施 した。
Ⅱ 全国における杜氏の出稼ぎ状況
1. 杜氏の出稼 ぎデータによる地域分類
日本杜氏組合連合会編 (1992)に掲載 された全国 各地の杜氏組合 (23組合) (第1表)か ら資料を郵 送 にて入手 し、2000年現在の杜氏1)の居住地 と就業 地を整理 した (第2表)。
この結果、1,641人の杜氏の出稼 ぎ状況が明 らか になった。杜氏を居住地別 にみると、青森県など9 県には杜氏が1人である。一方、岩手県、新潟県、
兵庫県では杜氏がそれぞれ300人を超えている。
就業地 は、居住地 に比べて地域的なば らっ さはな い。先 に上 げた3県 について、岩手県 は3人、新潟 県 は11人が就業す るのに対 し、兵庫県 は異なる。兵 庫県では154人が就業 してお り、 うち144人が兵庫県
‑ 7‑
第1表 全国における杜氏組合名および所在地
(2000年)
南部杜氏組合 山内杜氏組合
新潟県漕遣従業員組合連合会
長野県醸友会 能登杜氏組合 越前糠酒造杜氏組合 大野杜氏酒造組合 丹後杜氏組合 丹波杜氏組合 但馬杜氏組合 城崎都杜氏組合 南但杜氏組合 岡山県杜氏組合連合会 出婁杜氏組合 石見杜氏組合 広島杜氏組合
山口杜氏組合 大津杜氏組合 越智都杜氏組合 西宇和島部杜氏協同組合 高知県杜氏組合 九州漕造杜氏組合
岩手県石鳥谷町 秋田県山内村 新潟県新潟市 長野県長野市 石川県珠洲市 福井県河野村 福井県大野市 京都府丹後町 兵庫県篠 山市 兵庫県村山町 兵庫県香住町 兵庫県和 田山町 岡山県岡山市 島根県松江市 島根県益田市 広島県安芸津町 山口県田布施町 山口県 日置町 愛媛県宮窪町 愛媛県伊方町 高知県高知市
荏)創立年 の空欄 は不明であることを示す。
(日本酒造杜氏組合連合会編 (1992) :『日杜連30年 のあゆ
み一平成3酒造年度全国杜氏名簿‑』より作成)
に居住 している杜氏である。
2.各変数を用 いたクラスター分析
4変数、 6変数、16変数を用 いてそれぞれに主成 分分析 を行 ない (第3表)、次 に主成分得点 を用 い て、 クラスター分析を行 った。 4変数を用 いたクラ スター分析か ら、秋田県は就業地近接型のクラスター に区分 される。実際に山内杜氏の60%が秋 田県内の 酒蔵2)へ出稼 ぎを している。 6変数を用いた分析で は、山内村の杜氏数が全国的には平均 した位置にあ ることがわか った。 また、16変数の分析 (第 1図) では、秋 田県の酒蔵が山内杜氏の就業先 として単 に 多数あるだけではな く、清酒の製造数量 も多い大規 模な酒蔵を有す る県であることがわか った。
3種類の分析の中で秋 田県 と常 に同 じクラスター に所属 していた都道府県 は5県である。 それは、長
第2表 酒造出稼 ぎ者 (杜氏)の都道府県別居住者 数および就業者数 (2000年)
都道府県 駅 ^? 就 業者
名 敬 (人)
北海道 1 10 青森県 193 山一 3ー4
石 ′、
宮城県
秋 田県 2 377
山形県 19 19
福島県 68
茨城県 1ー 16
栃木県 39
群馬県 埼玉県
ー 307 50 千 県
東京都 31ー2
神奈川県 18
新潟県
富 山県 1 17
I 67 1
福井県 28 44 山梨県 ー 17 長野県 73 92 岐阜県 2 5334
′ヽ 3501321
愛知県 64
54
■‑‑ ′
滋賀県 49
京都府 707 大阪庶
兵庫県 154
奈良県 50
和歌山県鳥取県 2627 島根県 73 45 岡山県 54 78 広島県山口県 75 77
331
48 35
14
′ヽ
香川県 13
愛媛県 48
′
高知県 12 25 福岡県 66 55 佐賀県長崎県 1819 239 熊本県 59 10
大分県 21
注)空欄 は居住者数が0で あ る ことを示 す。
(全国各杜氏組合 の資料 よ り作成)
第3表 主成分分析 における変数一覧
白市町村内出持ぎ宰 県内出稼 ぎ率 他 県‑の 出稼 ぎ率 他 県か ら(r)出韓 ぎ率 (n居住者教
〔2'j就業者数 Gi?春引i三地内の出稼 ぎ音数 Cij同府 県内U)出稼 ぎ音数 :言,11出都道府 県への出稼 ぎ音数 I
:G)他都道府 県か らの出稼 ぎ音数 清酒 の移 出教 典
清酒 の製造数貴 清酒の消 費数 量 組 合員数
成 人 1人当た り酒類洞 野孟 成人1人 当た り清酒消費敏
全 国各杜氏組合の資料 よ り 全国各杜氏組合a)資料 よ り 全 lj3各杜氏組合 の資料 よ りI 全国各杜氏組 合の資料 よ り 全国 各杜氏組 合の資料 よ り 全国各杜氏組合 の資料 よ り 国税庁 資料 よ り 国税朽=資料 よ り 国税庁資料 よ り 国税 庁資料 よ り EEl税庁資料 よ り 国税庁 資料 よ り
柑変教主成分分析
‑8‑
野県、岡山県、広島県、愛媛県、福岡県であった。
Ⅲ 秋田県山内村における酒造出稼ぎ者の集落別分 布 とその変化
1. 研究対象地域の概要
秋 田県山内村 は、秋田県の東南部 に位置 し、北 は 六郷町、南 は東成瀬村、東は岩手県、西 は横手市 に 接す る (第2図)。村 の総面積 は205.87km2である が、耕地率が4.4% と非常 に低 く、88.4%が山林原 野で占め られている。2000年現在の村の総人 口は4, 659人である。
2,秋田県における酒蔵の状況
2000年現在で秋田県内には54の酒蔵があ り、 これ らの市町村別分布を第3図に示す。酒蔵の数 は秋田 市 と湯沢市が最 も多 く、 それぞれ9蔵である。 しか し、両市の場合、山内村か らの出稼 ぎ杜氏 は秋田市 が8人、湯沢市が4人 と差異がみ られ る。つ ぎに、
県外か らの出稼 ぎ者 は7人であるが、 この中には、
県外資本の酒蔵2社が含まれる。
3.山内村 における酒蔵別酒造出稼 ぎ者 の分布 とそ の変化
ここか らは、杜氏 と蔵人を区別せず、両者を酒造 出稼 ぎ者 として分析す る。
酒蔵 と出稼 ぎ者の結 びつ きの程度を明 らかにする ために、山内杜氏組合3)資料である 「酒造講習会受 講 申込書綴」を もとに、酒造出稼 ぎ者の出身集落お よび出稼 ぎ先酒蔵名を調査 した4). ここでは、1972 年度、1982年度、1991年度、2000年度の4年度 にわ たる資料を入手 した5)。
4.分立指数の適用 と分析
酒蔵 と出稼 ぎ集落の結 びっ さの変化を明 らかにす るため、酒蔵別出稼 ぎ者の集落分布を年度別 に整理 し、1972・1982・1991・2000年度それぞれにおいて 分立指数 (ii)・(iv)を算出 した6)。 山内村全体か ら出稼 ぎ者が向か った秋田県内の酒蔵数 は、1972年 度が37蔵、1982および1991年度が30蔵、2000年度が 18蔵である。
5.年度別比較 による酒蔵 と出稼 ぎ者 の結 びっ きの 変化
(%)
05
情報損失量
北 神 大 東宮千 和 香 茨 奈 三 滋福 愛京 山鳥 福 群 青 高 佐 静 秋 石 島長 広 岡 山 愛 福 長 官 鹿 沖 栃 岐 埼 富 山徳 熊 大 岩 新 兵 海 奈 阪 京城 葉 歌 川 城 良 重 賀 島知 都 形取 井 馬 森 知 覧 岡 田川 根 野 島 山 口嬢 岡 崎 城 児 縄 木 阜 玉 山梨 島本 分 手 潟 庫 道 川 府 都県 県 山県 県 県 県 県 県 県 府 県県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 島 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県
県 県 県
第1図 16変数主成分分析 に基づ くテ ン ドログラム (2000年)
(主成分得点 (6主成分) を もとにウォー ド法 にて作成)
第2図 研究対象地域 の概観 (2000年) (山内村発行2万5千分 の1『山内村全図』 よ り作成)
各年度 を比較す るために加重平均 を用 いた (第4 図)。酒蔵 によ って受 け入れ る出稼 ぎ者数 にば らつ きがあるためである。
分立指数 (ii)の加重平均値 は徐々に低下 してい る。 これは出稼 ぎ者 の受 け入れに関 して酒蔵間に特 徴が な くな って きた ことを示す。 また、 分立指数
‑ 9‑
第3図 秋田県 における酒蔵の市町村別分布図 (2000年) (秋 田県酒造組合資料 および山内杜氏組合資料 よ り作成)
(iv)の加重平均値 は1972年度 か ら1991年度 まで は 減少 しているが、2000年度 は1991年度 に比べて15ポ
イ ン ト上昇 している。 これ は最近 にな って、 ある集
0.7
06
0.5
指 04
数 oョ
02
01
0
〉■ 一‑‑‑‑‑‑‑‑甲lr
1972年度 1982年度 1991年度 2000年度
第4図 分立指数 (ii)・(iv)の年度別変化 (1972・1982・1991・2000年度) (山内杜氏組合資料 の計算結果 によ り作成)
落か ら以前 より多 くの酒蔵へ出稼 ぎ者がいることを 示 している。 よ って、出稼 ぎ者 は以前 はど村内に分 散 していない一方で、特定の集落か ら以前 より多 く の酒蔵へ出稼 ぎを していることが推測 される。
Ⅳ 秋田県山内村 における酒造出稼ぎ者の労働実態
1. 調査集落の選定
第4表 によると、集落 ごとのば らっ さの割合 は近 年、大 きくなっている。つまり、筏や南郷集落では、
村内における出稼 ぎ者の割合が高 く、他の7集落で は低下 している。
そ こで、 この割合が高 い南郷集落 と、割合が低下
第4表 山内村における酒造出稼 ぎ者の集落別割合 (1972.1982・1991・2000年度)
年度 大松)I 大沢 土測 小松JE集落筏 平野沢 黒沢 三 又 南郷
1972 8% 3% 15% 1■) 13% ー7% 12% ー3% ー9% ー982 8% 4% 18% 1% 11% 19% 6% 16% ー8% 1991 3% 2% 21% 2% 15% ー8% 5% ー5% ー9% 2000 2% 2% 18% 0% 20% ー5% 8% 13% 2一%
(山内杜氏組合資料 よ り作成)
してきた三又集落において現地調査を行 うことに し た。 この根拠 は秋田県内の酒造出稼 ぎ者数の1位、
2位の集落が南郷 と三又集落7)であるためである。
また、地理的距離を考えた時、両集落 は隣 り合 うこ とか ら、比較検討す るには有効な集落であると考え
た 。
2.南郷集落における酒造出稼 ぎ者の労働実態 南郷集落にて調査 したのは26人である。酒造労働 者のみでな く、就労 している世帯員について も就労 状況を聞 き取 り調査 した (第5表)。26世帯の うち、
農業収入のある世帯 は16世帯で、販売額1位 の農産 物 は16世帯すべてが米であった。酒造出稼 ぎ者の平 均年齢 は60.7歳であった。 出稼 ぎ期間 は11月か ら4 月 という例が多 い。山内村 にいる夏場の間は、農業 に従事す る人が多 く、農業収入のない世帯であって も農業 に従事 し、 自給的な農業を営んでいる。夏場 の通勤場所 は、山内村 と横手市 に限 られてお り、全 員が自動車で通勤を していた。
第5表 南郷集落における酒造出稼 ぎ者の夏場の就労状況 (2000年度)
世帯 .農業収入版1位の 世帯 性別禿領 年齢 農業従事 農某社事期聞 夏場の通勤の 夏場の通勤鳩 京£ 期也 倫考 4 5 6 7 8 9 10 日 121 4 5 6 7 8 9 10不定
番号 の有無 農産物 負数 の有無 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 有無 所 月 月 月 月 月 月月 期間
1 ● 栄 2. 男勇第一 ●× + + + ++ 十+ ● 山内村 +◆+ ++ + + + 夏確 は 林業
4 ○ 栄一 4 ‑貫男IP 毎i1"〜0〜十+++++ 了++ ○
【
一打 両 帝 一
‑L + +5 ○ 栄 4 盲i.○0 + +章二十十 +++ + ○
肺 肝 一 一
‑I + 雷 琴 は天 王叫 ‑u6 rwー6 pO 叩 莱 5 輿 56 Lj= +〟++ l十 享二 ○
山 鮒
++ + ++ 書簡 博 一ー〉一一7 5 寡 …由 ○ ++ +‑ i 十 × ー
8 ○ 5 男 人73 ○ ++ +̲十 +++十 ×
9 ○ 6 負+61 ○ ++ ★ +++ ×
10 0 莱 6 嘗ー男罪 72 ○ + +̲i+ + + 7 X
ーj「 0 莱 7 6‑4 ○ 十 + + + + + ○○ 革室重き垂両 .++ + + + ◆ + 帆
12 ○ 莱 8 6‑6tI X ++l 十 ‑師 一一一 十出棺ぎほ葡萄IL‑TTi%
T3ー4 ○() 栗 h ノ阜8甘輿 6154 (○⊃ +I++十i +十 十 ++十 十+‑ ×× ¶
てす m一百 、一ー‑ A‑ 9 罪 +55 ○ I++ +++十 ○ p一一面丙帯ー + + + +
‑"TT I 2 第一 面 × ○ ‑ ‑ー 領事帯 ー +
‑昔 X 2 罪 84 × ×
× 3 罪 69 × キー ×
fr × J5t‑‑罪 52 ○++ + 十十 1踊 WM…ー+++ + + ++ 秦
24 〉く 6 ■75" 0 + + +M + +̲. 〉く ¶
25 × 6 罪 ラ6 × Xメ
(2002年9・10月の聞 き取 り調査 によ り作成)
‑ 10‑
第6表 三又集落における酒造出稼 ぎ者の夏場の就労状況 (2000年度)
世帯 農業収入版1位元点の 世帯性別 年齢 農業従 1‑I美 早期fVT 夏租の通勤の 夏格の乱勤切 配 期闇 1曲者
4 5 6 7 8 910ll121 4 5 6 7 8 910不定
の め 月 月 月 月
● 1 ㌢二甘翠 二甘栄栄栗一 65 + + 山 内 村 + + + ◆
1‑百○一一 6755 Ie○0 ++‑+++ +十 ++ + + +
○ 舞 59 + +++ +
7 ○ 8 A 66 0 +十 + + + +
8 ○ たーこ 1喜界 ‑65 0 + ++ 十手ー+++ i+ + X
9 ○ たぽ三 3 60 ○ ++ + + + + + × 10 ○ たぼ三たtこ p5 52 ○ ++ 十 + 十 +‑+ + +17 ×
● た‑野野藁r富三 4.二育一葛男寡勇育二 ㌻○ キー+ 十十 十i ++ ××
I1314 (⊃ +++ +i ++ ×
15 )( 2 58 ○ ++ ̲± ++ + ×
ー6 × 2 Li3× ○× 踊 、+■沢市 +
3.三又集落における酒造出稼 ぎ者の労働実態 三又集落において調査 したのは17人である (第6
義 )。17世帯の うち、農業収入のある世帯 は14世帯 であった。販売額1位の農産物 は米 とたばこ、野菜 に分かれ、それぞれ7、 5、 2世帯であった。酒造 出稼 ぎ者の平均年齢 は62.3歳であった。出稼 ぎ期間 は11月か ら4月 という例がほとんどである。山内村 にいる夏場の間は、農業に従事する人が多いが、ll 月以降 も農業 に従事す る人 はたば こ栽培が販売金額 の1位である出稼 ぎ者5人のみであった。 また、 こ の5人の場合、夏場の通勤 は全 くしていない。5人 はたばこ栽培を含めた農業 にのみ夏場 は従事 してい る。
4.南郷・三又集落における出稼 ぎ先酒蔵数の変化 現地調査での聞 き取 り、および山内村出稼 ぎ互助 会の資料 によって、1972年、1982年、2000年の酒造 出稼 ぎ者出稼 ぎ先の酒蔵を把握できた。それによる と、三又集落か らは1972年が2蔵、1982年が4蔵、
2000年が10蔵である。一方、南郷集落か らは、1972 年が6蔵、1982年が10蔵、2000年が9蔵であった。
1991年の資料が十分 に揃え られなか ったため、 この 年の正確な酒蔵数 は不明である。三又集落 は南郷集 落 と比べて流動的であ り、1982年の4蔵か ら2000年 の10蔵 は大 きな変化である。 この理由の1つは農業 収入 にあるといえる。三又の人々は、農業収入のあ る世帯が多い。 とくにたばこ栽培者の夏場 は専業で ある。世帯員 は年間を通 して専業である。以上の こ とか ら、農業収入 により重点をおいた世帯や集落 は ど出稼 ぎ先の酒蔵が個々に違 う傾向がある。
(2002年10・11月の聞 き取 り調査により作成)
Ⅴ おわ りに
秋 田県山内村を対象地域 とす る酒造出稼 ぎ者 と県 内就業先酒蔵 との結 びつ きを含め、労働実態 ににつ いて分析を行なって きた結果、次のことが明 らかに なった。
秋田県の酒造出稼 ぎ者の多 くは秋田県内で就労 し、
これは全国的に高い位置にある。杜氏の数では中規 模であ り、酒蔵数 とその規模 は全国的に上位であっ
た 。
分立指数 (ii)(iv)を用 いて、酒蔵 と集落の結 びっ きの変化を調べた結果、酒蔵別の特徴がみ られ な くなった一方で、集落別の地域差がみ られた。
この結果 と現地調査 によって、現在の山内村 にお ける酒造出稼 ぎ者の労働実態 として、酒造出稼 ぎ者 の集落別の分散 は以前 に比べて大 きくなる傾向にあ り、そのような集落では、必ず しも多 くの酒蔵へ分 散 して出稼 ぎを しているわけではないことがわか っ
た。む しろ出稼 ぎ者割合 とは関連のない、別の要因 で多数の酒蔵へ出稼 ぎをす る集落 も存在す る。 それ は出稼 ぎ以外の収入 と関係す ると考え られる。
すなわち、山内村 において酒造出稼 ぎ者割合の上 昇 と、出稼 ぎ先の酒蔵数 は全 く逆の関係 にあると考
え られる。
本稿の作成 にあたっては、秋田大学教育文化学部 の松村公明先生をは じめ、肥田 登先生、篠原秀一 先生か ら終始貴重な御指導をいただいた。 また、資 料収集や聞 き取 りに際 して、秋田県出稼 ぎ互助会、
秋田県酒造組合、山内杜氏組合、そ して南郷 ・三又 集落の方々にご協力いただいた。末筆なが ら、 ここ
‑ ili1‑
に深 く感謝致 します。
注
1) 杜氏 とは日本酒を造 る上で頭 とな って働 く人の ことであ り、 この下で働 く人々を蔵人 という。
2) 酒造 りをす る場所 は、蔵、酒蔵、製造場、酒造 会社 と様々な言 い方があるが、本稿では 「酒蔵」
とした 。
3) 山内杜氏 とはかつて山内村 に居住す る杜氏のみ を指 したが、現在 は組合か ら杜氏の免許を与え ら れた杜氏を指す。 したが って、山内村に居住 して いない杜氏 も含まれる。
4) 山内村か ら 秋 田県内に出稼 ぎをす る人 々のみ を扱 った。
5) 4カ年 で延べ780人 のデータを収集す ることが で き、その結果、集落 ごとの人数 は大松川集落が 46人、大沢集落が22人、土測集落が139人、小松 川集落が7人、筏集落が109人、平野沢集落が135 人、三又集落が113人、南郷集落が147人、黒沢集 落が62人であった。
6) 高野 (1985)が考案 した分立指数 とジニ係数 に
おいて、完全な集中の値が1、完全均等 な分散の 値が 0となるように修正 した。 これをそれぞれ分 立指数 (ii)・(iv)とする0
7)南郷集落では32人の うち30人、三又集落では21 人の うち18人が秋 田県内の酒蔵へ出稼 ぎを してい
る。
文 献
佐 々木服誠 (1968):秋 田県山内村 における酒造 出 稼 ぎの地理学的考察一山内杜氏を中心 として‑.
秋大地理,第15号,ll‑18.
佐々木 智 (1991):秋 田県山内村 における酒造 出 稼 ぎ者の発展 と変容.秋大地理,第38号,23‑28. 高野岳彦 (1985):漁船員 の地縁集団性か らみた漁
業労働市場の地域的開放 ・閉鎖性の分析‑三陸地 方の主要漁港を例 として‑.地理学評論,第58巻, 80‑96.
日本酒造杜氏組合連合会編 (1992):『日杜連30年の あゆみ一平成3酒造年度全国杜氏名簿‑』 日本酒 造杜氏組合連合会,309p.
‑ 121