• 検索結果がありません。

効率賃金 と国際労働移動

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "効率賃金 と国際労働移動"

Copied!
20
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

効率賃金 と国際労働移動

島 田 章

(2)

Abstract

Usingatwo‑countrymacroeconomicmodelwllerenominalwagesare determinedbytheefficiencywagehypothesis,weinvestigatehowwork‑

ersmovebetweentwocountriesandhowmlgrationaffectstheworker recelVlngandworkersendingcountries.Forthispurpose,Weassume thatafirm ineachcountrydeterminesnominalwagestokeepworkers from shirking,giventheeffortexertedbytheworkersinthatcountry.

Wealsoassumethatworkersmovebetweentwocountriesduetodiffer encesinreaトconsumptionwages(nominalwagesdividedbythecon‑

sumerpriceindex).Weshow thatnominalwagesarehigherinthe countrywhereworkersexerthighereffort,andtheworkersmovefrom thecountrywhoseworkersexertlowerefforttothecountrywhosework‑

ersexerthighereffort.Wealsoshowthattheunemploymentrateinthe homecountrybecomeshigherastheworkersinthehomecountryexert moreeffortandtheworkersintheforelgnCOuntryexertlesseffort.Un‑

dernon‑cooperationbetweenpolicyauthorities,theunemploymentrate andtheconsumerpriceindexarehigherinthereceivingcountrythanin thesendingcountry,lmplyingthatthepolicyauthorityintherecelVlng countryhasthelowerutilitythantheoneinthesendingcountry,while therealconsumptionwagesarehigherintherecelVlngcountrythanin thesendingcountry.

Keywords:efficiencywages;internationalmigrationoflabor;two‑

countrymacroeconomicmodel

1 は じ め に

本論文の 目的は,効率賃金仮説 にしたがって名 目賃金率が決定 される2 経済を仮定 し,労働者の努力(effort)の違いによって どの ような国際労働移 動 が し ょうじ,国際労働移動が労働 の受け入れ国や送 り出 し国に どの よう

(3)

な影響をおよぼすかを明 らかにすることである.

国際労働移動はさまざまな方法で研究 されているが,国際労働移動は労働 市場をつ うじて総供給に影響をおよほ し,民間需要や政府支出の変化をつう

じて総需要に影響をおよばすから,マクロ経済全体 とかかわっている.にも かかわ らずマクロ経済モデルをもちいた国際労働移動の研究は, これまでほ とん どお こなわれなかった1). したがってAgiomirgianakisZervoyianni な どによる2国マクロ経済モデルや小国開放経済モデルに国際労働移動 を組 み込んだ一連の研究 (Agiomirgianakis1996,1998,1999, 2000,Agiomir gianakisandZervoyianni2001)は,マクロ経済モデルをもちいた国際労働 移動の先駆的研究 といえよう2).

ところでAgiomirgianakisZervoyianniなどによる一連の研究では,非 競争的な労働市場をモデル化するさい労働組合が仮定 され 労働組合 と企業 monopolyunionmodel(Dunlop1944,Oswald1985)な どにしたがった交 渉によって名 目賃金率 と雇用量が決定 された・このためAgiomirgianakis Zervoyianniな どによる一連の研究では,労働組合が存在することによって 労働者の一部が非 自発的に失業 した.

しかし現実の労働市場では,労働組合 と企業がmonopolyunionmodel したがって交渉をおこなわな くて も,名 目賃金率や雇用量が決まった り非 自 発的失業がしょうじた りする.また労働組合の存在を仮定 して労働市場を説 明しても,労働組合の存在や働 きが主体の最適化行動か ら導 き出されないか ぎ り,この ような説 明は完全なもの とはな らないだろう.

そこで本論文は,労働市場における労働者や企業の最適化行動 を名 目賃金 率や雇用量の決定に反映させるために,効率賃金仮説を仮定する.そしてこ

1) これ までの国際労働移動のお もな理論 研究 は, ミクロ経済学的研究 ,移 民の新 しい経 済学 に よる研究,部分均衡論的研究 な どであ った.国際労働移動 の理論研究の展望 につ いては

,Masseyetal.(1998)

な どを参照せ よ・

2)

島田

(2003)

Shimada(2004)

は, これ らに もとづいた研究であ る.

(4)

れを もちいて労働市場 をモデル化す ることによりマクロ経済モデルを構築 し,効率賃金仮説 を仮定 した2国経済で どの ような国際労働移動 が しょうじ るかを調べる3).

本論文では,おもにつぎの結果が得 られる.まず一方の国での労働者の努 力が他方の国での労働者の努力 よりも高ければ,一方の国の実質消費賃金率 が他方の国の実質消費賃金率 よりも高い.このため仮 に2国の名 目貨幣ス ト

ックが等 しければ,労働者は労働者が低い努力を発揮する国か ら労働者が高 い努力を発揮する国へ移動する.また労働者が自国で高い努力を発揮するほ ど,あるいは労働者が外国で低い努力を発揮するほ ど,自国の失業率は高い.

さらに2国の政策当局が非協調的に行動 し,名 目貨幣ス トックが政策当局の 効用最大化から決定されると,労働の受け入れ国の失業率や消費者物価指数 は,労働の送 り出し国 よりも高い.このため労働の受け入れ国の政策当局の 効用は,労働の送 り出し国の政策当局の効用 よりも低い.一方,労働の受け 入れ国の実質消費賃金率は,労働の送 り出し国の実質消費賃金率 よりも高い.

本論文は以下,2節で2国経済の構造 と国際労働移動をしょうじさせる要因 を仮定する. 3節は,効率賃金仮説 にしたがって名 目賃金率を決定する.4 節は,モデルを解 く.そしてそれぞれの国での労働者の努力の違いが どの よ

うな国際労働移動をしょうじさせ,労働の受け入れ国 と労働の送 り出し国に どの ような違いが しょうじるかを調べる.5節は本論文 をま とめ,今後検討 し改善すべ き点をあげる.

3)効率賃金仮説を仮定 した国際労働移動の研究は, もちろん存在する.た とえばCarter (1999)は,効率賃金を仮定 した二重労働市場モデルをもちいて非合法移民の問題を分析 している.またMtiller(2003)も効率賃金 を仮定 した二重労働市場モデルを もちいて移民 が小国開放経済 におよはす影響を分析 している.しか しこれ らの研究の多 くが労働市場 を分析対象 とした ものであ り,効率賃金仮説 を仮定 した うえで開放マクロ経済 を視野 に 入れた分析はほ とんどお こなわれていない.

(5)

2

節 モ デ ル

本論文 は,J国 とA国か らなる2国経済を仮定す る.J国 とA国の経済構 造はほぼ対称的で,輸出入 と労働移動 によって依存 しあっている4).それぞ れの国の経済主体は,複数の労働者,1つの企業お よび政策当局 か らなる.

労働組合は存在 しない.

それぞれの国の企業は,ShapiroandStiglitz(1984)な どによる効率賃金仮 説 にしたがって,雇用 している労働者の怠業(shirking)を防 ぐように名 目賃 金率を決定する5).

労働者は,J国 とA国のあいだを移動できる.それぞれの国の完全雇用量 (Agiomirgianakis1998な どでは有効労働力effectivelaborforceとよばれ る)は,外国か ら労働者が流入するばあい労働の初期保有量 (国際労働移動が ないばあいの完全雇用量)よりも大 き く, 自国か ら労働者が流出するばあい 労働の初期保有量 よりも小さい6).

それぞれの国の企業はそれぞれの国で労働を需要 し,1種類の財を生産す .J国企業 (A国企業)によって生産 される財,すなわちJ国財 (A国財)は, J(A国)で需要 されるばか りでな く,輸出されA(J国)で も需要される.

それぞれの国は,1つの貨幣市場を もつ.貨幣が唯一の金融資産であ り,

J

国通貨 (A国通貨)は

J

国居住者 (A国居住者)によってのみ保有 される.

2国経済の構造方程式をつぎの ように仮定する.本論文の構造方程式は,

4

)ただ し

J

国での労働者の努力 と

A

国での労働者の努力は,等 しい とはか ざらない.労 働者の努力については

,3

節 を参照せ よ.

5)ShapiroandStiglitz(1984)

な どによる効率賃金仮説 に よる名 目賃金率の決定 について は

,3

節 を参照せ よ.

6

)国際労働移動 を し ょうじさせ る要因や完全雇用量の定義 については,本節の後述を参

照せ よ.

(6)

Jensen(1993),Zervoyianni(1997),Agiomirgianakis(1998),島田(2003)

5章およびShimada(2004)な どと同 じである.変数は特 に断 らないかぎ り, 自然対数表示である.

y‑al,y*‑al

e

,0<a<1. (1)

I ‑一二 ( W ‑p)・古

na・l*‑三 (W*ザ )+ 1na・ (2)

Z…ex+p*‑2・

y‑y*‑bz,b>0・

q…p+cz,q*p*‑cz,0<C<1/2.

*

̲ * *

u

J c

= W ‑q,W

c

= u) q ・

m‑2+y,m*‑p*+y

* .

(3)

(4) (5)

(6)

(7)

(1)式は,J国企業 の生産関数 とA国企業の生産関数である.ここで

,y

J国企業の生産高(J国の国内所得),y*A国企業の生産高(A国の国内 所得),JJ国の雇用量,J*A国の雇用量であ る.また

α

は, 自然対数 表示 されていない定数 である.(2)式は,J国企業の労働需要関数 とA国企 業の労働需要関数であ る.ここで,WはJ国の名 目賃金率, u)*はA国の名 目賃金率,少はJ国財価格,♪*はA国財価格である.J国企業の労働需要関 数はJ国企業の利潤最大化か ら導 き出された ものであ り,A国企業の労働需 要関数はA国企業の利潤最大化か ら導 き出された ものである.(3)式は,実 質為替 レー トZの定義式である.ここでexは,A国通貨1単位あた りのJ

通貨の単位数で測 った名 目為替 レー トである.(4)式は,J国の貿易収支均 衡条件式 とA国の貿易収支均衡条件式である.ここで あは, 自然対数表示 さ れていない定数である.実質為替 レー トの変化が2国の国内所得の差の変化

(7)

よりも貿易収支に大 きな影響をおよぼすな らば,あは1よりも大 きい7).(5) 式は,J国の消費者物価指数

q

の定義式 とA国の消費者物価指数 q*の定義 式である.ここでCは, 自然対数表示 されていない定数である.(6)式は,

J国の実質消費賃金率u)Cの定義式 とA国の実質消費賃金率wc*の定義式であ る.(7)式は,J国の貨幣市場の均衡条件式 とA国の貨幣市場の均衡条件式 である. ここで,mJ国の名 目貨幣ス トック,m*はA国の名 目貨幣ス ト

ックである.それぞれの国の名 目貨幣ス トックは政策変数 として,それぞれ の国の政策当局によって操作される.

本論文は,国際労働移動がJ国 とA国の実質消費賃金率の違いによってし ょうじる と仮定する8).具体的には,つぎの ような仮定をお く.J国の実質 消費賃金率がA国の実質消費賃金率 よりも高ければ,A国出身の労働者がJ

国へd(wcwc*)だけ移動する.またA国の実質消費賃金率がJ国の実質消費

賃金率 よりも高ければ

,J

国出身の労働者がA国へd(u)C*‑wc)だけ移動する.

7

) J国の貿易収支

TB

および

A

国の貿易収支

TB

*は,

TB‑‑TB*‑ αl

l

‑ α2by*), α1,α2>0,

と表 され る, ここで

α1,α2

は 自然対数表示 されていない定数 であ る. J国の貿易収支 と

A

国の貿易収支が均衡 するためには,

y‑y*‑(α1/α2)

a,

が成立 しなければな らない.(

4)

式 は

, α1/α2

を あで置 き換 えた ものであ る,実質為替 レー トの変化 が

y‑y*

の変化 よ りも貿易収支 を大 き く変化 させ るな らば

, α1>α2

よ り

b>

1で あ る.本論文 は, この ようなばあいを仮定 する.

8)Shimada(2004)

脚注

6

で述べた ように,労働者 が実質消費賃金率 を どの ように評価す る

かは,労働者 の リス クにたいす る態度 に依存 してい る. も し労働者 が危険 回避的であれ

ば,実質 消費賃金率 だけではな く雇用確率 も考慮 し, 自国 と外 国の予想実質消費賃金率

( 実質消費賃金率 ×雇用確率)を比較 して外 国へ移動 す るか どうかを決定す るだ ろう. し

か しもし労働者 が危険 回避的でなければ,雇用確率 が低 くて も実質消費賃金率の高い国

へ移動 す るか もしれない.本論文 は,労働者 は危険回避 的 ではな く, 自国 と外 国の実質

消費賃金 率 を比較 して外 国へ移動 す るか どうかを決定 す る, と仮定す る.ただ し本論文

のお もな結論 は,労働者 が実質消費賃金率だけでな く雇用確率 も多少考慮 し危険回避的

であ って も成 り立 つ.

3

節 を参照せ よ.

(8)

ここでdは,自然対数表示 されていない正の定数である.

国際労働移動 にかんする仮定か ら,J国の完全雇用量IfA国の完全雇 用量はそれぞれ,

lf=l+d(wc‑u';)

,

l*f=lL*+d(wc*‑u)C),

と定義 される.ここで,tはJ国の労働の初期保有量,l*A国の労働の初 期保有量である.本論文は,2国が初期 に保有 している労働者は量的に等 し

(ll*)ばか りでな く質的にも等 しい, と仮定する.本論文はまた, 自発 的に失業する労働者は存在 しない, と仮定する.

(1)式か ら(7)式をもちいて,J国 とA国の雇用量,J国企業 とA国企業の 生産高(′国 とA国の国内所得),J国財価格 とA国財価格,実質為替 レー ト,

J国 とA国の消費者物価指数,J国 とA国の実質消費賃金率を ′国 とA国の 名 目賃金率 とJ国 とA国の名 目貨幣ス トックの関数 として表す.

l‑m‑u)+lna.

l*‑m*‑u)*+1na.

y ‑

a(m u

J )

+al

na ,

y *

a(m

*

W*)

+

alna.

p

(

a)

m+aw

alna.

p

*(1‑a)m*+a

w*

uln

a

. a‑芸〈m‑W‑(m*‑W*))・

q‑(‑a+

筈)

(m‑W)・m

一 筈( m* ‑ W * )

‑alna

q*‑(‑a

・ 筈) ( m

*‑W*)+

‑* 一

等(m‑W)

alna

(9.1) (9.2) (9.3) (9.4) (9.5) (9.6) (9.7)

(9.8)

(9.9)

(9)

wc

‑ ( 1 1

a

・ =)

(W‑‑)

‑ %( W * ‑ m

*)・alna・

wc*‑(1‑a

・ i C ) ( W * ‑ ‑* ) ‑

iC(W‑‑)・alna・

(9.10 )

(9.ll) 以下では必要に応 じて(9.1)式か ら(9.ll)式をもちいる9).

政策当局は,完全雇用の達成 と消費者物価指数の 目標値の達成 を 目指 して 行動する と仮定する. J国の政策当局の効用関数 VpAとA国の政策当局の 効用関数 V*pAをそれぞれ,

VpA‑‑(l‑lf)2‑hq2,h>0, Vp*A‑‑(l*‑l*f)2hq*2

,

と仮定す る. ここで, J国 とA国の消費者物価指数の 目標値 は0であ り,h は雇用量にかんする目的 と消費者物価指数にかんする目的の政策当局に とっ ての重要性の違いを反映 している.(10.1)式 と(10.2)式によると,政策当局 は現実の雇用量が完全雇用量か ら乗離することや消費者物価指数が 目標値か

ら諦離することを嫌 っている.

3節 効率賃金仮説による名 目賃金率の決定

本節は,ShapiroandStiglitz(1984)な どによる効率賃金仮説 にしたがって 名 目賃金率を決定する.具体的にはすでに述べたように,それぞれの国の企 業は,雇用 している労働者が怠業 しているかどうか不完全にしかわからない ため,雇用 している労働者が怠業 しないような水準に名 目賃金率を設定する.

労働組合が存在 しないので,雇用されている労働者はその国で どれだけの 労働者が雇用 されているかに関心をもたない.雇用 されている労働者は,も

9)(9.

1 )式か ら

(9.ll)

式の経済学的解釈 については

,Shimada(2004)pp.9卜92

を参照せ よ.

(10)

っば ら賃金 に関心をもつ.そこで本論文はJ国またはA国で雇用 されている 代表的な労働者の瞬間的な効用を, もし彼が怠業 しないな らば実質消費賃金 率か ら努力を引いた ものによって表 し, もし彼が怠業するな らば実質消費賃 金率によって表す.ただ しJ国またはA国で雇用 されている代表的な労働者 は,もし怠業するな らば,p,ただ し0<p<1,の確率(pは非 自然対数表 示)で怠業が見つか り解雇 される.またJ国またはA国で雇用 されている代 表的な労働者は怠業 による解雇以外の理 由で, β,ただ し0≦ β<1,の確 率 (βは非 自然対数表示)で離職する・

J国で雇用 され怠業する代表的な労働者の予想生涯効用 VESは,

rVES‑u)C+(p+p)(v U‑VES), ( ll ) と表 される.ここで 再ま割引率 (非 自然対数表示)を表 し,J国 とA国で等 し い.また VUは, J国で雇用 されていない代表的な労働者の予想生涯効用を 表す10). (ll)式は,

YESwc+(P+p)vU γ+

β+

と書 き換え られる.

一方,J国で雇用 され怠業 しない代表的な労働者の予想生涯効用

V E

Nは,

rvE"‑Wc‑1ne+P(VU‑ VE"), (12) と表 される.ここでeは, J国で雇用 され怠業 しない代表的な労働者の努力 を表す.βはJ国での労働者の働 きやすさなどに応 じて外生的にあたえられ, 自然対数表示 されていない.(12)式は,

Y

E

N

u ) C

lne+PVU

γ+β

換 え

れる.

1 0)

vUの定義については,本節の後述を参照せ よ・

(11)

J国で雇用 されている代表的な労働者はVENとVESを比較 して,怠業するか どうかを決定する. J国企業は, J国で雇用 されている代表的な労働者が怠 業 しない ようにVEN≧vESを成 り立たせ るような水準 に名 目賃金率 を設定す る.しか しJ国企業は怠業を防 ぐために必要以上 に賃金を支払 う必要がない ので,非怠業条件VEN

‑Y E S

(≡vE)を成 り立たせ るように名 目賃金率を決定す

る.(ll)式 と(12)式を非怠業条件に代入すると,

wc

‑ r v U ・ (

rp

・ p

)S (13) が得 られる.

J国で雇用 されていない代表的な労働者の予想生涯効用VUをつぎの よう に定義す る.

r

v U ‑ l n 晋

+α(vE‑VU)I

ここで, 扉 はJ国での失業手当 (非 自然対数表示)を表 し外生的 にあたえら れ 餅ま消費者物価指数 (非 自然対数表示, したが ってQ=expqをみたす)を 表す.またα,ただ し

0

≦ α<1,はそれぞれの国で新たに仕事が見つかる 確率は非 自然対数表示)を表 し,それぞれの国での新たな雇用者数の失業 者数にたいする比率である. αは, J国 とA国で等 しい.

本論文 は分析の簡単化のために,雇用されている労働者は怠業 による解雇 以外の理 由で離職せず,また失業 している労働者が新たに仕事を見つけるこ とはない,と仮定する・言い換 えれば,

β ‑ α ‑ 0

を仮定する・また本論文は, 秤‑扉 *‑1を仮定する.ここで扉 *は,A国での失業手当(非 自然対数表示) を表す. これ らの仮定のもとでは, J国の名 目賃金率は,

W‑(1

号) . n e ・

(14J )

と決まる.(14.1)式 によるとJ国の名 目賃金率は, J国での労働者の努力の 増加関数であ り,解雇確率の減少関数である.言い換 えればJ国企業は,J

(12)

国で労働者が高い努力を発揮するほど名 目賃金率を高 く設定 し,怠業を見つ けやすいほ ど名 目賃金率を低 く設定する.

同様の議論か らA国の名 目賃金率は,

W* ‑( 1 号) . n

e*・ (14.2)

と決 まる. ここでβ*は,A国で雇用 され怠業 しない代表的な労働者の努力 を表す.β*はA国での労働者の働 きやすさな どに応 じて外生的 にあたえ ら 自然対数表示 されていない.J国での労働者の努力 とA国での労働者の 努力は,等 しい とはかざらない.なぜな ら2国が初期 に保有 している労働者 が同質であって も,一方の国が他方の国よりも働 きやすければ,一方の国で の労働者の努力は他方の国での労働者の努力 よりも高いだろう.言い換 えれ ば,同 じ労働者であ って も労働条件 が よければ,高い努力を発揮す るだろ

ラ.

(14.1)式 と(14.2)式か ら明 らかな ように,J国での労働者の努力がA国で の労働者の努力 よりも高ければ (低ければ),J国の名 目賃金率はA国の名 目 賃金率 よりも高い(低い).

4

節 国際労働移動

本節は,名 目賃金率が効率賃金仮説によって決定 されると, どのような国 際労働移動がしょうじ,それが労働の受け入れ国や送 り出し国にどの ような 影響をおよぼすかを調べる.

(14.1)式 と(14.2)式を(9.10)式 と(9.ll)式に代入 した式を(8.1)式 と(8.2) 式に代入する.J国の完全雇用量 とA国の完全雇用量はそれぞれ,

f‑l

・ d

(1‑a

・ B H(

1号 )1ne‑‑‑‡(1

号) l n e * ‑ ‑ 1

], (151)

(13)

f‑l

・ d ( 1 ‑

a

・ %)

]

(

1

号) l n e

‑‑・‑((1

f) . n e ) ]

(15・2,

と決 ま る

11). (15.

1)式 と

(15.2)

式 に よ る と, も

しm ‑m *

か つ

e>e*

な らば

If>l‑,l*f<l‑*

で あ り, もしm ‑m * か つ

e<e*

な らば

行<l

‑,

l*f>l*

であ る

12).

した が って仮 に

2

国 の名 目貨 幣 ス トックが等 しい な らば ,労働 者 は低 い努 力 を発 揮 す る国 か ら高 い努 力 を発 揮 す る国 へ移 動 す る. なぜ な ら労 働 者 が 高 い 努 力 を発 揮 す るほ ど非 怠業 条 件 をみ た す名 目賃 金 率 が高 く,名 目賃 金 率 が高 い ほ ど実 質 消費 賃 金 率 が高 く,労働 者 に とって この よ うな国 へ移 動 す る こ と が有 利 とな るか らで あ る.

この結 果 は,現 実 の途 上 国 か ら先 進 国 へ の労働 移 動 をあ る程 度 説 明 して い る とい え よ う.なぜ な ら先進 国 は途 上 国 よ りも労働 条 件 が恵 まれ て い るため , 同 じ労働 者 で あ って も先進 国 で働 くば あ いは途 上 国 で働 くば あ い よ りも高 い

ll)

労働者が国際労働移動にかんする決定をおこなうさい,実質消費賃金率だけでな く雇 用確率 も考慮するならば,J国の完全雇用量

(8.1

式)と

A

国の完全雇用量

(8.2

式)はつぎ のように定義し直される,

lf=l+d(e

( l‑l f)

+wcle(l*‑l*f)‑wcn,0<0<1. l*f…l*+d(0(l*‑l*f)+wc*‑0

( l‑l f)

‑wc).

労働者が実質消費賃金率 とともに雇用確率も多少考慮するならば

β<1

であ り

,2

国の予想 実質消費賃金率の差にもとづいて国際労働移動を決定するならば

β‑1

である.これらの 定義式を解 くと,J国の完全雇用量 と

A国の完全雇用量は,

lf‑l+(d(lla+Zac/ble)/

( 1

+20d))[

(

I+r/p)lne‑m‑((1+Y/p)lne*‑m

* I L

l*f‑l*+(d(lla+2ac/b‑e)/(1+20d)Il(1+r/p)lne*‑m*‑((1+r/p)lne‑m

と決まる.ここで

b>

1 ならば

,0<1‑a+2ac/b<1

である.もし

1a+2ac/b>0

ならば, 自国の完全雇用量は自国での労働者の努力の増加関数であ り,外国での労働者の努力の 減少関数である.したがって労働者が雇用確率を多少考慮するはあいにおいても

,2

国の 名目貨幣ストックが等しければ,労働者は努力の低い国から努力の高い国へ移動する.

12)

ここでは名 目貨幣ス トックが外生的にあたえられている.名目貨幣ス トックの内生的

な決定については,本節の後述を参照せよ.

(14)

努力を発揮するだろう.このため先進国の実質消費賃金率は,途上国の実質 消費賃金率 よりも高い.そ して途上国の労働者が 自国 と外国の実質消費賃金 率を比べて国際労働移動を決定するな らば,彼 らは先進国へ移動する.

(9.1), (9.2)式,(15.1)式および(15.2)式か ら,それぞれの国の失業率 は,

H

f

1

1

・ d (

1

a% C))( (1

)lne‑ ‑ )

d (1

‑ a

%

) (

(1

)lne

*

‑lf 1 1・d(1‑a・%C))((1+i).ne♯‑‑1

・d(1‑a・%

)

((1

)lne‑‑

) ,

(16.1)

(16.2)

である13). (16.1)式 と(16.2)式によると,(l‑lf)

/∂

e<0,∂(l*1*f)/e*<

0であ り,(卜 〝)/β*>0,∂(J*一g*′)/β>0である.言い換 えれば 自国で労 働者が高い努力を発揮するほど,自国の失業率は高い.なぜな ら自国で労働 者が高い努力を発揮するほど自国の名 目賃金率が高 く, 自国の名 目賃金率が 高いほ ど自国の雇用量が小さ く自国の完全雇用量が大 きいか らである.また 外国で労働者が高い努力を発揮するほど, 自国の失業率は低い.なぜな ら外 国で労働者が高い努力を発揮するほ ど外国の名 目賃金率が高 く,外国の名 目 賃金率が高いほど外国か ら自国への労働者の流入が少ないかあるいは自国か ら外国への労働者の流 出が大 きく, 自国の完全雇用量が小さいか らである.

本節のこれまでの部分では,名 目貨幣ス トックは所与 とされた.しかし名 目貨幣ス トックは政策変数であ り,本来,政策当局によって操作 される変数 である.そ こで本節の以下の部分では,政策当局は 自分の効用最大化を 目指

13)本論文をつうじてl‑l*‑1naが仮定されている.また非 自然対数表示のJ国の失業率u

u…(LfL)/Lf

,ただ し

If≡lnLf,l…lnL と定義する と,l‑lf‑ln(1‑u)が成 り立つ.

(15)

して名 目貨幣ス トックを決定すると仮定 し,その ようなばあいにどのような 国際労働移動がしょうじ,労働の受け入れ国 と労働の送 り出し国にどのよう な違いが しょうじるかを調べる.

J国の政策当局 とA国の政策当局は,非協調的に行動すると仮定する.こ の ようなばあいJ国の政策当局はA国の名 目貨幣ス トックを所与 として, 冒 分の効用を最大にするようにJ国の名 目貨幣ス トックを決定する.すなわち

J国の名 目貨幣ス トックは,つぎの最大化問題を解 くことによって決まる.

m m

axv pA Su

b j e

c t to (9 .1),(8 .1) ,(9 .10 ),

a

m'/a

m

‑ 0. この間題を解 くことにより,

( 1 ・d ( 1 ‑a

%

C ) ) ( l ‑l f

)・h(1‑a・iC)q‑o・ (17.1)

が得 られる.またA国の政策当局はJ国の名 目貨幣ス トソクを所与 として, 自分の効用を最大にするようにA国の名 目貨幣ス トックを決定する.すなわ A国の名 目貨幣ス トックは,つぎの最大化問題を解 くことによって決まる.

mm a ・

xV subjec t

t

o (92),(82) ,(9 ・ 11),

∂m

/∂m

*

‑ 0・

この問題を解 くことにより,

(1・d(1a・%C))(l‑l

h

(lla

i

C ) q *

o・

が得 られる.

(10.1)式 と(17.1)式,(10.2)式 と(17.2)式か ら, VpA‑Vp*A ‑

(

1 +

d(lla

+

2ac/b))2

h(1la+ac/b)2

× (∫‑∫/一g*+〟 )

(ト J′十g*一打 )

(17.2)

(18)

が得 られる.l‑lf<0, l*‑l*f<0より,VpAV;A7‑lf‑l*+l*fと同符号で ある.そ して(16.1)式 と(16.2)式か ら,

(16)

l‑1f‑l*

+

l*f

(1

2

d (1a% C )

)

h (1a

i C )

[ (

1

2d (lla%

C

) )(

1

d (1

a

% C)) h (11a%

C

) (1ai

C

) ] 11

xI ( 1 号) l n e * ‑ ( 1 号) l n e L

(

1 9,

が得 られる・ したがって (

1+

r/p)1ne*‑(1+r/

p

)lne, l‑lf‑l*+l*fと同 符号である.

(18)式 と(19)式によると, J国での労働者の努力がA国での労働者の努力 よりも高ければ (低ければ),J国の政策当局の効用はA国の政策当局の効用 よりも低い(高い).この ことは,労働の受け入れ国の政策当局の効用が労働 の送 り出し国の効用 よ りも低いことを意味 している.このような結果が しょ

うじることは,つぎの ように説明される.

自国での労働者の努力が外国での労働者の努力 よりも高ければ, 自国の名 目賃金率は外国の名 目賃金率 よりも高い(14.1式および14.2式参照).自国の 名 目賃金率が外国の名 目賃金率 よりも高ければ, 自国の名 目貨幣ス トックと

自国の名 目賃金率の差は外国の名 目貨幣ス トック と外国の名 目賃金率の差 よ りも小さい14).この ようなばあい(9.1)式 と(9.2)式か ら,自国の雇用量は外 国の雇用量 よりも小さい.一方,この ようなばあい(15.1)式 と(15.2)式か ら,

自国の完全雇用量は外国の完全雇用量 よりも大 き く, 自国は労働の受け入れ 国 とな り外国は労働の送 り出し国 となる.これ らの ことか ら, 自国での労働

14) (17.1)式 と(17.2)式か ら, m‑

u)

‑(m*‑W*)

‑‑h(1‑a+ac/b)[(1+2d(lla+2ac/b)Hl+d(1‑a+2ac/b)) +

h(

i‑a+2ac/b)(1la+ac/b)]11(wIW

* ),

が得 られる.

参照

関連したドキュメント

が66.3%、 短時間パートでは 「1日・週の仕事の繁閑に対応するため」 が35.4%、 その他パートでは 「人 件費削減のため」 が33.9%、

3.仕事(業務量)の繁閑に対応するため

正社員 多様な正社員 契約社員 臨時的雇用者 パートタイマー 出向社員 派遣労働者

[r]

その他 2.質の高い人材を確保するため.

[r]

4 アパレル 中国 NGO及び 労働組合 労働時間の長さ、賃金、作業場の環境に関して指摘あり 是正措置に合意. 5 鉄鋼 カナダ 労働組合

問 11.雇用されている会社から契約期間、労働時間、休日、賃金などの条件が示された