8 74 金沢大学 十 全 医 学 会雑 誌 第94巻 第5号 8 74−8 9 7 く1 9 8 引
正常胸 部側面像の X 線解 剖学的検討
− C T による解析と統計 学 的分析 一
食沢大 学 医学 部放射 線 医 学 教 室く主 任二高 島 力 教 授ン
小 西 啓 子
く昭 和6 0年9 月3 日受付I
正常 胸部 単 純X 線 側 面像 く側 面像I にお け る諸構 造の描 出の有 無の 理由を 70 例のC T を 用いて解 析 し, さ らに正常3 0 0例にお け る側 面像正常X 線解 剖に つ いて統 計 学 的 分 析を行なった. C T で諸構 造と肺 乳 脂 肪及び他の縦 隔構 造と の関 係を型 分 類し側 面 像での描 出の有 無と 比較し, 以下の結 論が得ら れ た.
右 腕 頭 静脈 一上大 静 脈複 合 体 後 緑, 下大 静 脈 前後 緑, 上行大 動脈 前 縁, 下行 大 動 脈 前後 緑, 及び大動 脈弓 は そ れ ぞ れ の最前 線あ るいは最 後 緑が肺野 と接す る場 合に高 率に描 出さ れ た. 上 行 大 動脈 前 縁は その前方
に少 量の縦 隔 旗肪が存 在し て も描 出さ れ ること があっ た. 右 室 流 出路は最 前繚が肺 野と接し 上行 大 動脈よ り前 方にある場合に描 出さ れ た. 気 管 前 帯は気 管 前 方の縦 隔月旨肪が多い場 合に描 出さ れ た. 中 間 気 管支幹 後壁, 左 主気 管 支遠 位 部 後 壁 及び気 管 後 帯は肺 野と接す る場 合に描 出さ れ た. 気 管 内 空気と食 道 内 空気の 間に気 管 壁と食 道壁が描 出さ れ, 気 管 後 帯あ るいは左 主気 管 支 遠位 部 後 壁よ り厚み の あ る陰 影と し て描出 さ れ得ること が 示 さ れ た. 食 道 内空 気と脊 椎の間で食 道壁がpr e spin al inte rfa c e類 似の陰影を形 成し得る こと が 示 さ れ た, 心 切 痕は前 縦 隔脂 肪の多い場 合 高率に描 出さ れ た. X 線 解 剖に関す る統 計学 的分 析で は 諸 構造の側 面像で の描 出率を調べ, さ らに これ ら の形 態と厚さに つ いて統 計 学 的評 価を行い, 日本 人に お け る側 面像正常X 線 解 剖の目 安と し た. 描 出率に つ いて は, 欧 米人 で の報 告と の比 較, 年 令 別比較, 性別 比 較を行なった. 欧 米 人では脂 肪によって形 成さ れ る陰 影の描 出 率に高い傾 向が み ら れ, 逆に多量 の皮下 脂肪や縦 隔膜 肪が障 害 陰 影と な る部 位で は 日本人の描 出率が高かっ た.5 0 才 以上では動脈 系 構 造の描 出率 が 5 0 才 以下に比し て高く,動 脈 硬化の進 行によ る肺野 への突 出が そ の原 因と考え ら れ た. その他,年令 別,
性 別にいくつか の構 造で有 意に描 出率の差 異が認め ら れ た. 側 面 像の正常X 線 解剖に関す る検 討はこれ ま で我 国で は ほ と ん ど な さ れ て お らず, 著 者の検 討は今後 側 面 像の 正 しい読 影の指 標と なるものと考えら れ た.
E ey w o rds r o e nt ge n a n ato m y,1ate r al che st r adiogr aph, C T .
胸 部 単純X 線 側 面像 く側 面像ンは 日常診 療のル ー チ ン検 査と し て広く 施 行さ れ ている が, その正常 像の解 析に関す る報 告は少な く, 特に我 国に お いて は, 松林 らり2や小 林3Iの側面 像で み と め ら れ る構 造の 一 部の解 析に つ いて の報 告 以外には殆ん ど な さ れ ていない. そ の理由と し て は, 従 来の撮 影 技 術で は客 観 的な評 価に 耐え う る側 面 写 真が得ら れにく かったこと や, 描 出さ れ る諸 構 造の本 体を決 定す る方 法に乏し かったこと な ど が挙 げら れ る. 特に後 者が大き な障 害と なっていた が Heitz m a n4や Pr oto ら51 別によっ て, 死 体 横 断解 剖 所 見との詳 細な対比 や血 管 造 影側 面 所 見との対 比で側
A b br e viatio n s ニA P C S, a nte rio r pe ric a rdial
面像で描 出さ れ る諸構 造の決 定が な さ れ, 飛躍 的な発 展が も た ら さ れ た. しかし な が ら彼らの方 法でも個々
の例で の諸 構 造の描 出の有 無の原 因の解 析は困難であ る.
一 方, 1 9 7 3年に開発さ れ たコ ンピュ ータ ー 断層法 くc o mputed to mogr aphy, C Tl71は, 横 断像が得られ ること及び約0.5%の X 線 吸 収 値の差 異を画 像とし て描 出 可能で,単 純X 線 像の解 析には極め て優れ てい る鋸.さ らに,生体で X 線 撮 影 時と ほ ぼ同 時期にその解 析が可 能であ る という利 点が あ る. C T によ る胸部X 線 像の解 析について はこれ まで いくつか の報 告があ
stripeニA T S
, a nte rio r tr a che al stripe三C T,
c o m puted to m ogr aphy ニD P L M B ,d istal po rtio n of the left m ain br o n chu sニ工P C S,infe rio r pe ric a rdi al stripe3I S A C,in n o min ate a rte ry−righ t s ubcla via n a rte ry c o m ple x iI V C ,infe rio r
胞 都側画像の C T によ る解 析と X 線 解 剖 学 的検 討
り9 卜 1 2I,その価 値は高く評 価さ れ ている が,正常 側 面像
の解析に関す る報 告は ほ と ん ど なかった.
著者は, 正常側 面 像にお け る諸構 造の描 出の有 無の 理由を C T 像を用いて解析し, さ らに正常日本人に お ける その統計 学 的 分析を行なった.
対象およ び 方法 工. 対象およ び撮影 条 件
暇和57 年か ら 5 9年の間に金 沢大 学 医 学 部 附属 病 院 中央放射線 部で撮 影さ れ, 胸 部 単純 撮 影で 正面像も側 面像も異常な し と判 定さ れ た 3 0 0例の側 面 像とこれ と ほぼ同時 期に績 影さ れ た 70 例の胸 部C T 像を対 象と し て用いた. 側 面像 対 象 者は男 性1 8 4例,女 性116イ札 年令分布は 21 才へ8 4 才 く2 1 へ3 0才, 4 4 こ3 1 句4 0才,
51ニ 4 1 へ5 0 才,5 9 こ5 1 ル6 0 才,7 4 こ6 1 句7 0 才,5 3 こ70 才以上, 19I で, 平 均 年 令6 6 才であ る. 体 型に大き
い変形のある ものは除 外し た. 側面 像は立位 右 左 方 向 撮影で, 右肋 骨が左 肋 骨の外 側に投 影さ れて いる の を 選 ん だ. 撮 影条 件は電 圧1 2 0 E V,フ ォト タ イマ ー, 移 動型散乱線 除 去格子 1 0こ1, 増 感紙E M を使用 し, 焦 点フ イ ル ム間距 離は 2 4 5c m で, 拡 大 率は 1,08 0 であ る. な お, 撮 影は深吸気で行なった. 胸 部C T 像 対 象 者は男性4 2例, 女 性2 8例, 年令2 1 才旬8 4才,平 均 年 令5 7才であ る. 使用 し た C T 装 置 は G E C TIT 88 00X − 2で仰 臥位でスラ イス厚10 m m , スキャ ン時 間4.8 秒, マト リックス3 20 X3 20 で あ る.
工I. 検 討項 目 お よ び検討方法
側面像と C T が ほ ぼ同 時 期に撮 影さ れ た 70 例に つ
いて, 側 面像にお け る諸 構 造の描 出の有 無と C T 所 見 の関 連及び側 面像に お け る諸 構 造の統 計 学 的 分 析を 行った. 側 面像にお け る検 討項 目は, 右 腕 頭 静脈 一 上 大静脈複合体 くright br a ch io c ephalic v ein−S uperio r V e n a c a v a c o mple x, R B−S V Cl, 下 大静 脈 くinfe rio r
V e n a c a v a, I V Cl, 腕 頭 動 脈一右 鎖 骨下 動 脈 複合 体
tin n omi n ate a rte ry−righ t s ubclavi a n a rte ry C O mple x, I S A Cl, 右 室 流 出 路 くrigh t v e ntric 。1a r O utno w tr a ct, R V O Tl, 左鎖骨 下 静脈 く1eft s ub.
Clavia n v einl, 上行大 動 脈 くa s c e nding a o rtal, 大 動 脈弓くa o rtic a r ch,, 下 行 大動脈 くde s c e nd ing a o rtal,
左鎖骨下動脈 く1eft s ubcla via n a rte ryl, 気 管 前帯 くa nte rio r tr a che al stripe, A T Sl , 気 管 後 帯 くpo ste rio rtr a che al stripe,P T Sl,中 間気 管 支幹 後 壁 くpo ste rio r w all of the br o n chu s inte r m ed iu s,
V e n a c a v ai P T S
, PO Ste rio r tr a che al stripei
8 7 5
P W B Il, 左主 気 管 支遠 位部 くd istalpo rtio n oftheleft m ain br o n chu s,
.D P−L M BJ, 右上葉 気 管 支 くright
up pe rlobebr o n chu sl, 左 上 葉 気管 支く1eftup pe r
.lobe
br o n chu sl, 両 側 下葉 気 管 支 くb ilate r al lo we r l。be
br o n chu sl ,肺 門部血管くh ila r v a s cul atu r eJ,pr e Spinal inte rfa c e, 葉 間 裂 Cinte r lobe r fis s u r el, 肺 間 膜 くinfe rio r pulm o n a ry liga me ntI, 後 胸 骨 線 条 くr etr o ste r n al stripel, 傍 胸 骨 線 条 くpa r a ste rn al
Stripel, 心切 痕 くc a rdia c in cis u r a, 及び前心 膜線 条 くa nte rio r pe ric a rdial stripel で, いずれ も判 定は Pr oto ら5糊の判 定 基 準に準じ て行なっ た.
m . 統 計 学 的処理
各種 描 出 率の差の検 定は X 之検 定,厚みの羞の検 定に はstude nt,st.te stで行ない, p く0.0 5 以 下 を有 意と し た. 尚Pr otoの描 出率と の 比較には臨 界比 法によ り行 ない, p く0.01 以下を有 意と し た.
各計 測値の分 布 型に つ いて は,
一般に各階 級での度
数のば らつき が大きいた め, 統 計 学 的 検 定は試み な かった が, 度 数 分布 図よ り推 定 出来る ものはこれ を行 なった.
成 横
王. 側 面優に おける諸 構 造の描 出の有無のC T によ る解 析
検 討 項目ご とに対 象例数に差 異が あ るのは, 検 討に
耐え う る C T 像が得ら れ な かった もの を除いた た め で ある.
1 . R B−S V C の後藤 及び前縁
側 面像において気 管透 亮 像にほ ぼ 平行し て前 方に凸 な居い弧 状陰 影を R B−S V C後 緑と し,後緑の前 方にほ ぼ 平行す る線 状 影を前 縁と し たく写 真1フ. C T で は大 動脈弓直上 のレベ ル でR B.S V C 後緑 及び前 線と肺野 及 び縦 隔と の関 係を そ れ ぞ れ 3 型に分類し た 個1,
2l. R B−S V C 後 緑の側 面 像にお け る型 別 描 出率は表 1 のと お り で, 工 型 7 8%,工工型 8 %, m 型 0 %で あっ
た. 工 型で描 出さ れ なかった もの5例 中3 例で は肥 満
によ る腋 窟部 軟 部 陰 影の増 強が み ら れ た. ま た, R B. S V C 前 縁の側 面 像にお け る 型別 描 出率は表2 の ご と く で, 工 型 2 例, 王工型 2 5例, m塾3 9例であ る が, 側 面 像で R B−S V C 前 縁の描 出さ れ た も の は1 例も な かった. 前 腋 蘭線によ る軟 郡陰影 との鑑 別が 一 般に困 難であった.
2一 王V C の後 線およ び前縁 P W B I
, pO Ste rio r w all of the br o n chu s inte r− m ediu sニR B −S V C,righ t br a ch io c ephalic v ein −S uPerio r v e n a c a v aニR V O T ,righ t v e ntric ula r O utflo w tr a ct 3 X−P ,thelate r al ch e st r adiogr aphy.
8 7 6 小 西
P hoto.1. Late r al r ed iogr aph sho wing a nte rio r m a rgi n ofs upe rio r v e n a c a v a くa r r o whe adsI. T he c o n v e x m a rgin of the in n o min ate a rte ry−
s ubcla via n a rte ry c o m ple x くbla ck a r r o w sl pr oje cts with the po ste rio r a spe ct of the righ t br a ch io c ephalic v ein−S upe rio r v e n a c a v a くwh ite
a r r o w sI.
Fig.1. C T cla s sific atio n ofpo ste rio r m a rgin of R B−S V C atle v el of l c m abo v e a o rt ic a r ch−
I,1u ng o utlining m o r e tha n h alf of po ste rio r m a rgin of R B.S V C くa r r o wlニII,1u ng o utliningle ss tha n h al f ofpo ste rio r m a rgi n of R B −S V C JII,m ed ia stin altis s u e o utlining alm o ste ntir e po ste rio r
m a rgin of R B−S V C,
F ig.2. C T cla s sific atio n of a nte rio r m a rgin of R B−S V C atle v el of lc m abo v e a o rtic a r ch− I ,1u ng o utlining m o r e tha n half of a nte rio r m a rgin of R BuS V C くa r r o wl三II,1u ng o utliningle s s
tha n half of a nte rio r m a rgi n of R B−S V CニIIl, m ed ia stin al tis s u e くホン o utlining alm o st e llt ir e a nte rio r ln a rgl n Of R B−S V C.
胞 部 側面像の C T− によ る解 析と X 線解 剖 学 的検 討
Tab le l− V is u aliz atio n r ate of C T find ings at po ste rio r m a rgin of R B−S V C
X−P
十 vis u aliz atio n
C T r ate
ロ 田 5 7 8% 田 田 35 8%
m 田 7 0%
Total 2 1 47 3 0%
+,Vis u aliz edニ ー,n Ot vis u aliz ed
87 7
Tab le 2− Vis u alizatio n r ate of C T findings at a nteri−o r m a rgl n Of R B−S V C
言モP + vis u ar alitz ae tio n
ロ 田 2 0%
田 田 2 5 0%
田 0 3 9 0%
Total 0 6 6 0%
P hoto.2■ Late r al r adiogr aph sho wing a nte rio r m a rgin くbla ck a r r o wl
a ndt y pic al c o n c a v e po ste rio r m a rgin くwh ite a r r o w sl of infe rio r v e n a C a V a.
P hoto.3. Co mputed to m ogr a m of the s a m e patie nt a s P hoto.2. de mo n str atinglu ng o utlininga nte rio r a nd po ste rio r m a rgin s of in fe rio r V e n a C a V aくI V CJ atle v el of l c m abo v ethe top of diaphr agm a. R,
right side三L,1eft side.