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凍 結 ア サ ク サ ノ リ糸 状 体 の 生 存 と 殻 胞 子 放 出

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33

凍 結 ア サ ク サ ノ リ糸 状 体 の 生 存 と

Viability and Spore—liberation of Conchocelis—phase, Porphyra tenera, Freeze—preserved in Sea Water

Seiji MIGITA

There are distinct differences between thallus- and Conchocelis- phases of Porphyra tenera KJELLMAN in general ecological aspects, especially in degree of drying injury. Though the thallus-phase of this alga shows high frost-resistance, it may be considered that the Conchocelis-phase is affected unfavorably by freezing and freeze-pre-

servation.

The present report deals with the frost-resistance of Conchocelis of Porphyra tenera, using the free- and shell-living materials. The liberation of conchospores from the shell-living Conchocelis freeze- preserved at low temperatures was also observed. The results obtained are summarized as follos:

When the Conchocelis-filaments were frozen and freeze-preserved in sea water, they showed lower frost-resistance than the leafy thalli. In the freezing of free- and shell-living Conchocelis-filaments, the former showed higher survival-rates of branches and conchosporangial cells.

On the other hand, conchosporangial cells showed higher resis- tivity than cells of branches against freezing injury. Of those concho- sporangial cells, mature divided sporangia survived well after freeze preservation at -20°C, and could tolerate without remarkable damage at least for 1 month.

In the freezing at various cooling rates, ranging from 0.05°C/min to 40°C/min, the survival of Conchocelis-cells was less in rapid cooling than in slow cooling.

The survival of Conchocelis-cells frozen at various low tempera- tures decreased according as temperature lowered. Furthermore, the survived cells of long preserved Conchocelis gradually decreased in number during freeze-preservation.

Some shell-living Conchocelis, freeze-preserved for 1 month at -20°C and then thawed, liberated numerous conchospores for the following several days.

(2)

54 右田;凍結アサクサノリ糸状体の生存と殻胞子放出

 アvノリ葉体が凍結に対し妬い抵姉性を示すことはすでによく知られていて1−3),ノリ 養殖では採苗海苔網を短期聞凍結冷蔵し養殖後期の壷網として利用する新しい技術が各地 に普及されっつある.また最近同じ凍結冷蔵法はえり糸状体の抑制培養にも利用できると いう見解がもたれている4).

 しかし,アマノリ属の葉体と糸状体の両世代は,形態はもちろんその生態がかなり相違 し,とくに面出に対する抵抗性には極端な強弱の差がある.このような生態の相違は,ノ

リの葉体と糸状体の耐凍性にもあらわれる筈であり,葉体の凍結の知識がそのまま糸状体 に適用で.きるとは老えられない.

筆者は,葉体の凍結冷蔵の研究と同時に糸状体の凍結についても2,3の実験をしてき たので,これまでにえられた結果をとりまとめて報告する.

材唱料および方法

 実験に用いたアサクサノリ糸状体は,貝回(vガキ殼)穿孔糸状体・無i基質糸状体:とも に1965,1966年の2〜3月に果胞子付けして,秋まで普通の培養を行なってきたものであ

る.

 実験はおもに1965年9月から11月にかけて実施し1,2の項目については1966年同;期に 追試した.

 試料は,径3 em,高さ8 onの海水を入れた管命中で凍結したが,各項目の個々の実験で は誤差を少なくする目的で,穿孔糸状体は1枚の出超を切断し無基質糸状体は同一容器の 生育群塊を分離して使用した.凍結には電気冷蔵壷,冷凍庫を用い,凍結後の冷蔵には温 度を調節したアイスストッカt一一 を利用した.また急速冷却や一30。C以下の凍結実験には

ドライアイ入・アルコrルを使用した.なお解凍は室温に放置して行なった.冷却速度の 影響をみる実験では,試料を入れる管瓶の大きさやその中の海水量をかえて,速度を加減

した.

 解凍後の生死の判定は,貝殼穿孔糸状体ではi数時・間から1日間培養した後Perehyi液 で脱灰し,そのまま検鏡して,細胞内の色素体の退色,原形質の凝固・崩壊したものを死 細胞とみなした.一方,無基質糸状体では,エリスロシγ溶液(濃度i! ii o o 6)で短時間生体 染色すると凍死細胞は赤く染まり,その結果が培養後の細胞の凍死変化とよく一致するの で,この方法で生死を識別した.

 生存能力の表示は,糸状体の枝ではその一部分を・殼胞子嚢枝では胞子嚢細胞を単位に して,顕微鏡下で生,死細胞を計数し,全体に対する生存部や生存細胞の百分率で示し た.なお,結果は各項目の個々の実験論に3〜4例の糸状体について観察し,機械的にそ れらの総平均値で表わした.しかし,凍結後の糸状体の生存率は,凍結前の培養条件や各 個体によって差があり,しかも顕微鏡での増血的な観察であるため,ある程度の誤差はや むをえず,とくに生死の判定が困難であった貝殼素子諏体の枝の生存率にはかなりの判定 の誤差も見込まれる.ただ,このような判定の結果は,解凍時の肉眼的な色調の変化や培 養後の生存状態とはよく一致した.

(3)

長崎大学水産学部研究報告 第22号.(196ワ) 55

 本実験では凍死細胞の形態変化を生死判定の一つの基準としたので,まずその観察結果 について述べてみる.

 糸状体の枝や殼胞子嚢枝が凍死すると,肉眼的にははじめ赤榿色に変色し,やがて退色 していく.この凍死過程を検鏡すると,糸状体の枝では細胞内容が貧弱なため凍死細胞の 変化は詳細にはみられず,色素体などの崩壊と色の退色が認められるにすぎなかったが

灘、

蕪輔

難1

Fig. 1 Free−living Conchocelis of Porphyra tenera after freeze−preservation in     sea water.

    A, Survived branches. B, Dead branches. C,・ Survived conchospo−

    rangia. D, Dead conchosporangia. A・B,×500. G・D,×ユ80.

(Fig.1..B),.その径過は次の殼胞子嚢の変化と本質的には一致するようである.殼胞子 嚢細胞では,凍死後細胞の周辺部に穎粒がみられ,色素体は中央に凝集するようになり,

やがて穎粒は小さく崩壊し,凝固した色素体も次第に小さくなり退色する(Fig.1.D,

(4)

56 右田:凍結アサクサノリ糸状体の生存と殼胞子放出

Fig.2.A).しかし,葉体の細胞でみられるような色素体の凝固後の死細胞の膨大・萎 縮の過程5 6)は,穿孔糸状体では明瞭に観察できなかった.

騒襲

節騨

Fig. 2 Shell−living Conchocelis of PorPhyra tenera after freeze−preservation     in sea water.

    A, Survived (s) and dead (d) conchosporangia. B, Survived mature      (m) and immature (i) sporangia, after 10 days preservation at     −200C. C, Survived mature sporangia and dead immature sporangia,

    after 20 days preservation at 一200C. D, After 50 days preservation at     −200C. A,×600. B. C,×500. D,×120.

 なお,凍死した糸状体の色は解凍前にすでに赤変している場合もあるが,短期間の凍結 では変色しないものもあり,それらはしばらく海水中に放置すると徐々に赤榿色を呈する ようになる.

(5)

長崎大学水産学部研究報告 第22号(ユ96ワ) 5ワ

冷却速度の影響

 無基質糸状体および貝殻穿孔糸状体を海水中で,いろいろの冷却速度で一20。Cまで凍 結し直ちに解凍した場合,それらの生存率はTable 1,Table 2のようになった.一般に 糸状体の枝の部分と殼胞子嚢細胞では耐凍性にかなりの差があり,無基質糸状体,貝殻穿 孔糸状体ともに殼胞子嚢細胞が凍結に強い傾向がみられる.したがって,解凍後は殻胞子 嚢枝のみ生き残る場合が多く,肉眼的には赤い胞子嚢枝集団がはっきりみられ,その他の 部分は退色する,

Table 1 Effect of cooling rate on per cent survival of free−living Conchocelis.

Parts of  plant

Branch

Concho一一

sporanglum

40

Cooling rate (OCImin)

 4    0.5    0.ユ O. 05

46 1 1よ 41∴ Ωり 70 87

8りム8◎ノ にU8Q!∩フ

Minimum cooling temperaure was 一一200C.

Thawed at about 10CImin.

Table 2 Effect of cooling rate on per cent survix al of shell−living Conchocelis.

Parts of  plant

Branch Concho−

sporangium

40

Cooling rate (OC/min)

 4 O.5 O.1 O. 05

o o

07Q 2 4口UZUKU にUlη18 0り乙∩フ∩フ

Minimum cooling temperature was 一一一200c.

Thawed at about l OC/min.

 冷却速度の生存に及ぼす影響は大きく,品題穿孔糸状体では4Q,40。C/minの急遠凍 結で枝は完全に死滅し殻胞子嚢細胞の大部分も凍死したのに0.1。,0.050C/minの緩慢凍 結では約80%以上が生き残っている.無基質糸状体でも同じ傾向がみられるが,貝殻穿孔 糸状体に比べて生存が多く,急速凍結でも比較的高い生存率を示しているようである.

 凍結温度の影響凍結温度と糸状体の生存との関係を知るため,一一5。〜一50。Cの段階 的な温度まで約5。C/minの冷却速度で凍結した.所定の温度に達した後で直ちに解凍し た結果をFig.3に示した.

 貝殼穿孔糸状体では枝の部分,殻胞子嚢細胞ともに一5。Cまでの凍結で80%以上の生存 がみられるが,一10。Cでは50%以下になり,糸状体の枝は一20。Cで殻胞子嚢細胞は 一30。Cでほとんど凍死している.一方,無基質糸状体では各温度でより高い生存率を示 すが,一40。Cではほとんどの細胞が凍死した. この実験でも,前項の実験結果と同様 に?無基質糸状体と貝殼穿孔糸状体とで生存率に差がみられ,前者の生き残りが多くなつ

(6)

58 右田:凍結アサクサノリ糸状体の生存と殼胞子放出

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Fig. 5

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 50一蓼Σお

 ;o 一50−」 b一一一一go i60−

   Temperatv re Oc

Survival of Conchocelis frozen at various low temperatures. Frozen at about 50C/min, thawed at 10 C/min.

TO一 Conchosporangia of free−

   living Conchocelis.

…O… Branches of free−living    Conchocelis.

一e一一 Conchosporangia of shell−

   living Conchocelis.

…e… Branches of shell−living    Conchocelis.

× X>Ae,

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      、●、一20    \        、    \       、、

      、     ●        、、

       、

ている.また同じ糸状体では殼胞子嚢細 胞が枝より強い耐凍性を示すのも前項の 結果と同様である、.

 凍結期間の影響似上の実験は凍結後 直ちに解凍した結果であるが,ここでは ある日数凍結冷蔵した場合の凍死につい てしらべた.約5。C/minの冷却速度で 一5。,一100,一20。Cまで凍結した試料 を,それらの温度に調節したアイススト

ッカーに移して保存した.解凍後の生存 率は無基質糸状体でFig.4,庶民穿孔糸 状体でFig.5の執よになった.

 両者の糸状体ともに日数の径過にとも なって,生存率は徐々に低下している.

また各冷蔵温度についてみると,一5。C の生存率が最:も高く,低温ほど死滅する ものが多い傾向があらわれている.

 ところで,これまでの実験試料につい て生死判定の観察をしているうちに,成 熟した殼胞子嚢細胞が未熟なものに比べ てとくに生存が多いことがわかったので 2,3の試料についてその比率を測定し

た.

 その結果はTable 3のようになり,

一20。Cで1日間凍結したA,10日間凍    結冷蔵したB,Cの場合で,各胞    子嚢細胞が分裂して殻胞子形成を    はじめた成熟胞子嚢7)が未分裂の

Fig. 4

     iO 一 20 30

       Days

Survival of free−living Conchocelis during freeze−preservation. Frozen at about 50 C/min, thawed at I CCfmin.

一e一 Conchosporangia. …e…Branches.

未熟胞子嚢より生存細胞が多く,

練死細胞が少ない.この傾向は, 凍害の程度がひどくなるほど顕著 にあらわれ(Fig.2. B〜D),

明らかに成熟殼胞子嚢細胞が未熟 なものより耐凍性が強いという特 徴を示している.

 このような事実から,凍結前の 糸状体における成熟殼胞子嚢の多 少は当然その耐凍性と関係がある ことが考えられる.Fig.6. a,

b,cは培養経歴が同じ貝殼穿孔

(7)

長崎大学水産学部研究報告 第22号(1967) 5X ・

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Fig. 5

      20 30

    10

       Days

Suryival of shell−living Conchocelis during  freeze−preservation. Frozen at abgut 50

C.(inin, thaWrbd at 10C/mip, :.

一一LL ?黶@Coneh6sPorangia. ・・ ・Pe… Br anches.

糸状体を時期をかえて約40C/minの冷却速度で一20。 Cに凍結冷蔵した場合の結果である が・各実験例の生存率に相違があるのも以上の理由にようと.みなされる・なお・Fig・6・

d.9誠熟殼胞子勤多V)糸面繹びQ・05℃/minの面一を行なった結果で・ζの

実験を通じて最も高い隼存率を示しだ例である.

Table 5 Number of survived and dead cellS of mature and      immature sporangia  in shell−living・ Conc/zocelis      freeze−preserved at ,一20 C.

Exp.

A B c

Mature sporangia

Surv・ival Dead

Immature sporangia

Survival Dead

]90

(29)

224

(29)

126

(50)

6

(1)

ユ5

(2)

55

(8)

205

(50)

ワ8

(10>

54

(15)

268

(40)

462

(59)

204

(49)

A… Frozen at about 50CImin, thawed after 1 days freeze−preservation.

B.C.….Frozen at about 10C,min, thawed after 10 days freeze−preservation.

( )… Per cent.

 凍結冷蔵後の殼胞子放出 凍結冷蔵した糸状体の殼胞子放出は貝回穿孔糸状体について 9月から11月にかけて数回実験した.

「.棟結後の糸状体ではかなり多くの凍死細胞があるため,放出実験で試料を入れた容器内 あ海水は2,3日白濁する.放出殼胞子数は実験例によって差があり,前述したように未 熟な糸状体を凍結した場合は殻胞子嚢細胞が凍死して放出がみられないこともあり,また 成熟しだ糸状体では多量の放出が行なわれることもあった,数回試みたこれらの実験のう

(8)

40 右田:凍結アサクサノリ糸状体の生存と殻胞子放出

oo

至,。

・\:〜3こごこS

    0

       20 30

       10        Days

Fig. 6 Survival of conchosporangia in various shell−living    Conchocelis during freeze−preservation.

   Starting date of freeze−preservation :

   a, Sept. 15, 1965. b, Sept. 20,1965, c, Oct. 12, 1865.

   d, Oct. 2, 1966.

   a−c, Frozen at about 40C/min.; d. at about O.050C/min.

ち2例の結果をFig.7に示した.

 Fig.7.Aは,すでに胞子を形成した成熟殼胞子嚢をもつ糸状体を4QC/minの冷却 畑鼠で凍結し,一5。,一10。,一20。Cの温度にそれぞれ5,10,30日間冷蔵した後,海 水中で放出量を測定した結果であり,凍結温度が高く冷蔵期間が短かいなど,凍害の程度 が過度でないと思われるものではより多くの殼胞子放出カミみられた.しかし,この実験で は冷却速度が速くかなりの凍害を受けたものと思われ,そのためか50日後の放出は少なく なっている.

 Fig.7. Bは,殻胞子放出期にある糸状体を0.050 C/minの冷却速度で緩慢凍結し,

一200Cの温度に10,20,50日聞冷蔵した後の放出の様子を示したものである.この緩慢 凍結後の冷蔵では糸状体の生存状態は良好で,20,30日後の殼胞子放出量も前実験よりは

るかに多くなっている.

 ところで,Fig.7。の殻胞子放出をみると, Aでは5日より10日の冷蔵で, Bでは10日 より20日の冷蔵で放出量が増加している例が多い.このことから適度の凍結冷蔵は殼胞子 の形成・放出を促進するようにもみなされるが,冷蔵期間を通じて胞子を形成した分裂殻 胞子嚢の出現率はかわらなかった.

 なお,これらの実験に関連して,凍結後生き残った未熟殼胞子嚢はその後胞子形成・放 出を行なうこと,冷蔵後の放出殼胞子は正常な発芽を示すことなどが観察された.

 アサクサノリ糸状体が凍死する際の細胞の変化は,葉体細胞の凍死6)の場合と似ている が,貝殼穿孔糸状体では原形質の凝固に引続く細胞の膨大・萎縮の過程が明瞭にみられな い.爵沢ら5)は原形質分離による細胞の致死過程について,傷害の程度が違うと死細胞の 形態変化も相違することを認めており,この凍死の場合も無基質糸状体と貝殼穿孔糸状体

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長崎大学水産学部研究.報告 第22号(196ワ)

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Fig.ワ Liberation of conchospores from she11−living Conchocelis       freeze−preserved at low temperatures.

      A,Materials Were.frozen at about 4』。C/min on Sept.1ワ,

      1965, and thawed after 5, 10 and 50 days preservation.

      B, Materials were frozert at about O.050C/min on Oct. 18,

      1966, and thawed after・10, 20 and 50 days preservation.

      Figures show the number of spores liberated from       Conchocelis perforated in 1 cm2 of the oyster shell.

とでは,その受ける.影響に差があるものと考えられる.    . ・  

 室内培養の糸状体は,海で養殖された葉体と違って,培養条件により諸環境要因の変化 に対する抵抗性が相違するのは当業者の培養でよく知られていることである.この実験で も凍結前の培養条件や各個体によって,解凍後.の生存率には大きな差がみられた.実験結

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42 右田:凍結アサクサノリ糸状体の生存と殼胞子放出

果に示した生存率の値は,それらの個々の結果を平均値で表わしたもので,数値そのもの はかなりの誤差が見込まれるが,同一材料を細分して使用したため各項目の実験について 凍害の傾向は表現できたと思う.

 一般に,アサクサノリの糸状体は葉体に比べて凍結の傷害を受け易く,海水申凍結で 葉体の細胞は短期間ほとんどすべてが生存するが8),糸状体ではかなり多くの凍死がみら れ,糸状体と葉体の両世代ではその生育生態に差があるように,明らかに耐凍性にも相違 があると考えざるをえない.また葉体は半乾燥状態で凍結すると海水中よりはるかに強い 耐凍性を示すことが知られている48).そこで糸状体を海水中より取上げて水分を酒面で 拭いたり,少し乾燥させて凍結してみたが,生存率は海水中凍結に比べて高い値を示さ ず,全体としてはむしろ不安定な結果しかえられないようであった.

 冷却速度と生存率の関係について,従来多くの研究で指摘されているように,極度の急 速凍結で凍死が多い傾向は,この糸状体の凍結でもみられた.また糸状体で生存が多い凍 結は葉体の場合8)よりさらに遅い緩慢凍結であった.この緩慢凍結で生存が多い傾向は,

無基質糸状体より貝殼穿孔糸状体で顕著にあらわれており・これは貝殼内層で鉢糸状体細

胞灘齢繋繋隠魚無難摯聯灘灘雛膿論

葉体では一20。C前後までほとんどの細胞が生存するのに8),糸状体ではより高い温度で 凍死が多い.このことからも糸状体が葉体より耐凍性が低いことがうかがわれる.

 ところで,この実験を通じて,糸状体の枝より殼胞子嚢細胞が凍結に強ぐs、とくに胞子 形成をはじめた分裂殼胞子嚢7)はさらに強い耐凍性を示す特徴が認められた, これは.糸 状体が干出されるときの乾燥に対する抵抗性にもみられる現象であって,おそらく糸状体 の世代が殼胞子嚢,殻胞子という過程を経て,その生態的性質が徐々に葉体の性質に変化 していくためと推察される.また殼胞子が短期の凍結冷蔵にたえること9),葉体では幼芽 より成体が凍結に強く,果胞子を形成した山雨が弱いこと6)などは,アマノリの葉体,糸 状体の両世代が生育段階によって,その性質が幾らかつつ相違することを示唆しているよ

うに思う.

 凍結冷蔵の期間が長くなると,生存率は徐々に低下する.しかし冷蔵期間中に多くの殼 胞子嚢細胞が凍死するが,貝殼穿孔糸状体では解凍後なお正常の糸状体と同様に多数の殼 胞子を放出する場合がある.このことは,生存殼胞子嚢の比率よりみれば矛盾するが,胞 子形成の成熟殼胞子嚢が耐凍性が強く多く生き残ること,正常の糸状体でも成熟殼胞子嚢 の多少でその後の放出量が左右されること7)などを考え合せると必ずしも不当とはいえな い.この殼胞子放出の実験で,冷蔵日数が長いものが短かいものより放出量が多い場合が あり,凍結冷蔵が殼胞子放出を促進するような現象がみられた.しかし凍結冷蔵中に殼胞 子形成は全く進行しないので,もしそういう効果があるとすれば,低温にさらされたり糸 状体の一部が凍死することにより,生存殼胞7嚢の成熟が解凍後促進されるものと考えら れる.これについてはなお今後の検討をまたねばならない.

 成熟殼胞子嚢が多い糸状体を緩慢凍結し一20。C以上の温度で短期間冷蔵した場合は,

その後なお多量の殼胞子がえられるので,産業上も後期採苗などの特殊な目的に凍結冷蔵 法が利用できるわけである.しかし,当業者の培養糸状体は活力にかなり強弱があること 未熟殼胞子嚢は凍結に対し弱いこと,また生存率の高い緩慢凍結の遠度は制御しにくいこ

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長 崎 大学 水 産 学 部 研 究 報告 第22号(1967) 43

とな ど を考 慮 す る と,単 に培 養 期 聞 を短 縮 し省 力 化 す る 目的 て糸 状 体 の 冷 蔵 を行 な うの は 危 険 て あ る  た た ,一 時 的 な殼 胞 子 放 出 の 抑 制 に は,大 内l011)の 試 み た0℃ 前 後 の 冷 蔵 と同様 に , 凍 結 冷 蔵法 も十 分活 用 て きる と考 え るか,な お 普 通 培養 の抑 制法 と比 較 し長 所,短 所 を検 討 す る必 要 か あ る

アサ クサ ノ リの無 基 質 糸 状 体,貝 殼 穿 孔 糸 状 体 を海水 中て 凍 結 し,糸 状体 の枝 や 殼 胞 子 嚢 細 胞 の生 存 率 を し らへ た  また 短 期 聞 凍 結 冷 蔵 した貝 殻穿 孔 糸状 体 て解 凍 後 の 殼 胞 子 放 出 数 を測 定 した

1凍 結 に対 して,糸 状 体 は葉 体 よ り抵 抗 性 か低 く,ま た貝 殼 穿 孔 糸 状 体 は無 基 質 糸状 体 に比 へ て凍 害 を受 け易 い

2糸 状 体 の殻 胞 子嚢 細 胞 は枝 よ り凍 結 に強 く,と くに内 容 か 分 裂 した成 熟 殼 胞 子 嚢 細 胞 は強 い 耐 凍 性 を示 した

3冷 却 速 度 と生 存 率 の 関係 は,急 速凍 結 て凍 死 か 多 く緩 慢凍 結 て 生 存 か 多 い 傾 向か み られ た

4凍 結 温 度 か低 くな る に つ れ て,糸 状 体 の凍 死 細 胞 は増 加 す る  ま た凍 結 冷蔵 の期 間 か長 くな る と,生 存 率 は 徐 々 に低 下 す る

5貝 殼 穿 孔 糸状 体 を短 期 間(1ケ 月以 内)凍 結 冷蔵 した場合 は,解 凍 後 多 く の殼 胞 子 を 放 出 す る もの か み られ た

終 りに,本 研 究 を行 な うに あ た り,種 々便 宜 を与 え られ た本学 部 高 良 夫 教 授 に厚 く御 礼 申 し上 け る

1)殖 田 三郎  生 海 芽 冷 蔵 試 験,水 産 講 習所 試 験 報告,23(1),〜8(1927)

2)照 動  冬 の 潮 間 滞 に生 育 す る海 藻 の耐 凍 性,低 温科 学,生 物 篇,22,19〜28(1662) 3)照 動  スサ ヒ ノ リの 凍結 と乾 燥,低 温科 学,生 物 篇,23,11‑20(1965)

4)倉 掛 武雄  海 苔網 冷 蔵 の手 引,全 海 苔 連(1966)

5)野 沢 倫治 ・野 沢 ユ リ子  海 藻 の原 形 質 に 関す る研 究 一1日 水 誌,20,878〜880(1955) 6)右 田 清冶  ア マ ノ リ葉 体 の生 体 凍 結 保 存 一1,本 誌,17,44〜54(1964)

ワ)右 田 肩治 ・安 部 昇  ア マ ノ リ糸 状体 の殻 胞子 形 成 に っ い て,本 誌,20,1〜15(1966) 8)右 田 清治  ア マ ノ リ葉 体 の生 体 凍結 保 存―Ⅱ,本 誌,21,151〜158(1966)

9)本 田 信夫 ・石 田公 行  ノ リ単 胞 子 の 附 着 と水温 の 関係 並 に ノ リ単 胞子 の貯 蔵 につ い て の考 察, 岡 山水 試(1964)

10)大 内康 敬  の り糸 状 体 の 冷蔵 につ い て(第1報),福 岡 有 明 水 試 事業 報 告(1961) 11

)大 内康 敬  の り糸 状体 の冷 蔵 に関 す る研 究(第2報),福 岡 有 明 水試 事 業 報 告(1962)

Table 2 Effect of cooling rate on per cent survix al of shell−living Conchocelis. Parts of  plant Branch Concho− sporangium 40 Cooling rate (OC/min) 4 O.5 O.1 O. 05oo07Q 24口UZUKUにUlη180り乙∩フ∩フ Minimum cooling temperature was 一一一200c. Thawed at about l OC/mi

参照

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