アラビアンジャスミン(別名 マツリカ,Jasminum sambac (L.) Ait.,Arabian jasmine)は,モクセイ科ソケイ属の常 緑低木で,芳香のある白色の花を着ける。元来,花を乾燥 させたものは香料として広く活用されており,ジャスミン ティーなどの原料の一つとしても利用されているが,近年は 鉢花や植栽としての需要が高まっている。 2013年9月に東京都小笠原村母島において,展示試験栽 培中のアラビアンジャスミンの葉に斑点症状の発生を初めて 確認した。
また,Elaeagnus × ebbingei cv. Gilt Edge(以下グミ「ギ ルトエッジ」と表記する)は,グミ科グミ属のマルバグミ(オ オバグミ,Elaeagnus macrophylla Thunb.)とナワシログミ (Elaeagnus pungens Thunb.)の交配種であり,葉縁の美し い黄色斑入りが特徴の常緑低木で,生け垣やカバープランツ として広く植栽されている。2012年11月に東京都立川市の 試験圃場において葉枯れ症状を確認した。 アラビアンジャスミンの葉の斑点症状およびグミ「ギルト エッジ」の葉枯れ症状について,その原因について究明し たので報告する。なお,グミ「ギルトエッジ」の葉枯れ症 状については,著者の一人竹内(2008)が農林水産省所管 の先端技術を活用した農林水産研究高度化事業委託事業課 題「花き類病害の双方向型総合診断・防除システムの開発 および公開」(主査:花き研究所)の中で取り上げた。その 成果の一部は,花き研究所のホームページにおいて「花き 病害図鑑」のグミ類の項に炭疽病(病原菌:Colletotrichum gloeosporioides)として登載されたが,その症状と今回確認 した症状が酷似することから併せて検討した。 材料および方法 1.発生状況および病徴 アラビアンジャスミンの斑点症状およびグミ「ギルトエッ ジ」の葉枯れ症状について,それぞれ圃場での発生状況を調 査,記録し,さらに実験室において採集したサンプルの病標 徴などを詳細に観察,記録した。その後,各罹病葉は,さ く葉標本とし,アラビアンジャスミンは標本番号13O-0009, グミ「ギルトエッジ」は同13-B0207として法政大学植物医 科学センターに保管した。 2.病原菌の分離 両植物の病斑,枯死組織に形成された分生子層から分生子 をかき取り,滅菌水と0.1%硫酸銅水溶液の等量混合液に懸 濁させた。分生子懸濁液を,先端をループ状に成形した白金 耳で素寒天(WA)平板培地に塗付し,24時間20℃暗黒条件 下で培養した発芽分生子単体を円筒形白金耳で培地ごと釣り 上げ,ジャガイモ煎汁ブドウ糖寒天培地(PDA)に1個ず つ移植して菌株を得た。以下の試験では13O-0009(アラビ アンジャスミン分離菌株),13-B0207(グミ分離菌株)を供 試菌株とした。 3.接 種 試 験 分離菌の病原性の有無を確認するために,アラビアンジャ スミン苗およびグミ「ギルトエッジ」苗に対する接種試験を 行った。 アラビアンジャスミンについては,供試菌株をPDA 平板 培地上に25℃暗黒下で7日間培養後,培養菌叢に熱したメ スで約1cm 角のマス目状の焼き傷を付け,さらに7日間培 養し,鮭肉色の分生子粘塊を形成させた。分生子粘塊が豊富
アラビアンジャスミンおよびグミ類交配種
Elaeagnus × ebbingei に
発生した炭疽病(新称)
(法政大学生命科学部・*東京都小笠原亜熱帯農業センター・**東京都農林総合研究センター・ ***法政大学植物医科学センター)First Report of Anthracnose on Arabian Jasmine and Elaeagnus × ebbingei in Japan
Mari K
ONDO, Remi I
CHINOSE, Kotone M
ORITA, Yuji S
UGAWARA, Tsuyoshi O
NO, Hideo H
OSHI,
Jun T
AKEUCHI1, Seiju I
SHIKAWAand Hiromichi H
ORIEAbstract
Two severe leaf spot diseases were observed on Arabian jasmine and Elaeagnus × ebbingei in Japan. Fungal isolates were obtained from acervuli on these diseased leaves. Based on morphological and ITS sequence data, the isolates were identified as Colletotrichum tropicale on Arabian jasmine and C. siamense on Elaeagnus × ebbingei. This is the first report of Arabian jasmine and Elaeagnus × ebbingei causing Anthracnose in Japan.
1 Address:Edogawa Branch, Tokyo Metropolitan Agriculture and Forestry Research Center, 1-15-22 Shishibone, Edogawa, Tokyo 133-0073, Japan
2015年5月14日受領 2015年9月28日登載決定
近藤まり・市之瀨玲美・森田琴子・菅原優司
*・小野 剛
*・星 秀男
**・竹内 純
**・
に形成されたことを確認後,シャーレ内に滅菌水(DDW) を注ぎ,面相筆で分生子をよく懸濁した。ビーカーにガーゼ を二重に張り,上記懸濁液中の菌糸片などを濾し取り,9.1 ×105個/ml の分生子懸濁液を作製し,展着剤として Tween 20を0.02%添加したものを接種源とした。接種に供試した 株数は接種区2株,対照(無接種)区は1株とし,接種株に は4号昆虫針を約100本まとめた針束(直径約4mm)を押 し当てた有傷区と,熱した金属棒を押し当てることによる焼 傷区の異なる2つの付傷区を設けた。それぞれの付傷は1株 あたり2葉,1葉あたり2か所とした。無接種株(対照区) にも同様に,有傷区,焼傷区,無傷区とも各2枚の葉を供し た。これら接種用の株に,上記で作成した分生子懸濁液を9 cm ポット植え1株あたり25ml 噴霧接種した。無接種区は, DDW に同濃度の Tween 20のみを添加して,同様に25ml を 噴霧した。接種後3日間,ポリエチレン袋で湿室に保ち,温 室内(25 ~ 30℃の自然光下)で経過観察をした。さらに, アラビアンジャスミンと同じソケイ属に所属するハゴロモ ジャスミンとリンゴ果実に対しても同様の接種試験を行った。 グミ「ギルトエッジ」については, PDA 培地上で25℃ 暗黒下6日間培養した菌叢をコルクボーラー(2号;直径 5.5mm)で打ち抜き,貼り付け接種を行った。対照区には PDA 平板培地を同様に打ち抜いたものを使用した。供試株 数は18cm ポット植えのものを接種区2株,対照区1株とし, アラビアンジャスミンと同様の方法で有傷区,焼傷区,無傷 区を設け,1株あたり2枚の葉に2か所(黄色の斑の部分と 緑色の部分各1か所)ずつ貼り付けた。リンゴ果実に対して も同様の方法で接種試験を行った。グミ「ギルトエッジ」の 病徴は葉の周縁部に発生することが多いため,葉縁から溢出 する分泌液を通しての感染も考慮し,葉の周縁部を上下から 菌叢で挟む接種も同時に行った。この接種は,1株あたり2 枚の葉を供試し,対照区4枚にはPDA 平板培地で挟んだ。 接種後3日間は接種部分を滅菌水で湿らせた脱脂綿で覆って 鉢ごとポリエチレン袋で湿室に保ち,温室内(25 ~ 30℃の 自然光下)で経過観察を行った。 4.病原菌の形態 菌体が形成された病斑部をピスに挟み込んで,徒手切片 を作製し,菌体断面形状,大きさなどを観察した。また, PDA 平板培地で,20℃,暗黒下で7日間程培養して形成さ れた分生子の形態を観察・測定した。さらに,約1cm 角に 切り取ったジャガイモ・ニンジン煎汁寒天(PCA)平板培 地を滅菌したスライドグラスの中央に置床し,その四隅に分 離菌の菌糸を載せ,20℃,暗黒条件下で7日間程培養した スライドカルチャー法により,菌糸上に形成された付着器の 形状と大きさを観察,記録した。以上の結果を既知の文献の 記載および,グミについては竹内(東京都,2008)のデー タとも比較検討し,供試菌株の分類学的所属を明らかにした。 5.菌叢生育と温度反応 菌糸生育の温度特性を明らかにするため,PDA 平板培地 で培養した菌叢先端部を直径5.5mm のコルクボーラーで打 ち抜き,PDA 平板培地の中央に置床した。培養温度は5, 10,15,20,22.5,25,27.5,30,32.5,35,37.5お よ び 40℃の12区を設け,各温度区にシャーレを3枚ずつ供試し, 13O-0009(アラビアンジャスミン)は6日後に,13-B0207 (グミ)は5日後に各温度区における培養菌叢の直径を測定 した。 6.病原菌の遺伝子解析 両分離菌株の培養菌叢上の気中菌糸をかき取り,PrepMan Ultra Reagent(ライフテクノロジーズジャパン株式会社, 東 京 ) を 用 い て 全DNA を抽出した。ITS 1および ITS 4 (White et al.,1990)を用いて PCR を行い,rDNA-ITS 領 域を,また,大腸菌を用いたクローニングにより,ACT 領域, CAL 領域および TUB 領域も増幅した。得られた塩基配列 をNCBI(National Center for Biotechnology Information) のホモロジー検索プログラム(BLAST)により既知菌株と の相同性を調査した。 結果および考察 1.発生状況および病徴 アラビアンジャスミン葉に発生した斑点症状(第1図① ②):2013年9月に東京都小笠原村母島の展示試験圃場にお いて,アラビアンジャスミンの葉に大小様々な円形~不整形 病斑を多数生じ,激しい場合は葉枯れに至る症状を認めた。 病斑は初め直径3mm 程度であるが拡大・融合し大型不整斑 となった。病斑周縁部は褐色で,周囲との境界は明瞭である が,その外側は病斑部を囲むように黄変していた。病斑内部 は灰白色で葉組織は薄くなり,その上には褐色~黒色の小点 (分生子層)がやや盛り上がって群生した。 グミ「ギルトエッジ」に発生した葉枯れ症状(第1図⑤): 2012年11月に東京都農林総合研究センター(東京都立川 市)の試験圃場においてマルバグミとナワシログミの交配種 Elaeagnus × ebbingei の斑入り品種である「ギルトエッジ」 (Gilt Edge)に葉枯れ症状の発生を確認した。本症状は9 ~10月にかけて葉周縁の黄色斑入り部分が淡褐色に変色し, 変色部分には淡褐色~褐色の小点(分生子層)が多数生じた。 症状が進行すると病斑部は次第に拡大するとともに,乾燥し てくすんだ褐色となり,病斑部組織が崩れて虫食いのように 欠けるようになり,激しい場合には,落葉も認められた。 2.分離菌株の病原性 アラビアンジャスミン分離菌株の接種:アラビアンジャス ミンに対して,葉の焼傷区では噴霧接種5日後に接種部が薄 い鮭肉色を呈し,接種11日後には,より明瞭な鮭肉色となっ た。焼傷を付けた部分からは鮭肉色の粘塊(分生子の集塊) が押し出されるように溢出しており,この粘塊から単胞子分 離を行ったところ,接種菌と同一の形状の菌株が得られた。 有傷区では,接種11日後に接種部位が薄く変色したものの, 分生子粘塊の形成は観察されなかった。また, 無傷区は発病 しなかった。ハゴロモジャスミンに対しては,アラビアンジャ スミン同様に,焼傷区のみで接種3日後に病斑を生じ,徐々 に拡がり,接種11日後には病斑上に鮭肉色の分生子塊が形 成された。リンゴに対する接種では,焼傷区,有傷区におい て褐色~黒色の変色とくぼみが生じ,焼傷区では黒色の斑点
を形成した。ハゴロモジャスミン,リンゴ果実とも対照区(無 接種区)では発病しなかった。 グミ「ギルトエッジ」分離菌株の接種:グミ「ギルトエッ ジ」に対して,菌叢貼り付け接種では4日後に有傷区、焼傷 区において接種部分周辺が薄く褐変した。7日後には変色部 分が拡がり,病斑が形成され始めた。9~11日後には褐色 の程度が濃くなり,両区とも病斑上に鮭肉色の分生子塊が形 成された。無傷区では貼り付け部周辺にわずかな褐変が認め られたが,病斑形成には至らず,また,無傷区では病徴は認 められなかった。菌叢挟み込み接種では3日後に病斑の形成 が認められ,発病部からはいずれも接種菌と同一形状の菌が 分離された。無接種区では発病を認めなかった。発病葉は接 種2週間程で,落葉した。以上の結果,原病徴の再現と接種 菌の再分離に成功し,供試菌株のグミ「ギルトエッジ」に対 する病原性が確認された。ナワシログミに対しては,分生子 懸濁液の接種において有傷区と焼傷区で病徴が発現し,付傷 部から病斑が拡大したが,落葉は確認されなかった。リンゴ 果実に対する接種では,焼傷区,有傷区,無傷区の試験区に おいて,いずれも本菌株の病原性が認められた。 3.病原菌の形態的特徴 アラビアンジャスミン:自然発生の病斑上において,分生 子層は表皮下に形成されており,暗褐色~暗灰色,皿状~ レンズ状(第2図①)で,剛毛を有する(第2図②)。大き さは直径130 ~ 189µm,高さ54 ~ 99µm であり,PDA 培 地上では鮭肉色~橙色の分生子粘塊を形成した(第1表)。 分生子は,無色,単胞,両端に向かいやや細まる円柱形~長 楕円形で,時にやや湾曲,両先端部は丸みがあり,分生子内 部には数個の油滴が観察された(第2図③)。分生子の大き さは,(11 ~)12 ~ 17.8×3.6 ~ 7.6(8.1)µm,長径と短 径の比(L/B 比)は2.4であった。また,菌糸上に形成され た付着器は茶褐色~暗褐色で,棍棒状,ときに不規則(第2 図④)で,大きさ(7.3 ~)8 ~ 11.6(~ 14)×3.7 ~ 6.6(~ 8.1)µm であった。 グミ「ギルトエッジ」:病斑上の分生子層は,茶褐色で皿 状~レンズ状(第2図⑤),剛毛を有し(第2図⑥),大きさ は直径111 ~ 176µm,高さ68 ~ 117µm であった(第1表)。 第1図 アラビアンジャスミンおよびグミ「ギルトエッジ」の症状 アラビアンジャスミン:①罹病葉 ②病斑部拡大(黒点は分生子層) グミ「ギルトエッジ」:③罹病葉 ④病斑部拡大(同上) 第2図 アラビアンジャスミンおよびグミ「ギルトエッジ」病斑上の分生子層と各分離菌株の分生子および付着器(bar 20µm) アラビアンジャスミン(上段)①分生子層の断面 ②剛毛 ③分生子 ④付着器 グミ「ギルトエッジ」(下段)⑤分生子層の断面 ⑥剛毛 ⑦分生子 ⑧付着器
PDA 培地上では鮭肉色~淡橙色の分生子粘塊を形成した(第 1表)。分生子は無色,単胞,両端に向かいやや先細る円柱 形~長楕円形で両先端部は丸みがあり,分生子内部には0 ~3個の油滴が観察された(第2図⑦)。大きさは,12.5 ~ 16.5(~ 17.5)×3.2 ~ 5.4µm であり,長さと幅の比(L/B) は3.3であった。また,菌糸に形成された付着器は茶褐色~ 暗褐色で棍棒状,ときに不規則で(第2図⑧),大きさ6.1 ~12×3.8 ~ 7.5µm であった。 以上のアラビアンジャスミンおよびグミ「ギルトエッジ」 病斑上の分生子層および培養上の菌体の特徴から,両菌と も,Sutton(1980), 我 孫 子(1992) お よ び 堀 江(2014) におけるColletotrichum 属の特徴の記述と一致し,同属に所 属すると判断される。Sutton(1980)および Arx(1987) のColletotrichum 属の種分類検索表および種の記載をもとに, 分離菌株の分類学的所属を検討したところ,分生子および 付着器の形態的特徴はColletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig & Saccardo 種複合体の記載とほぼ一致した(第1 表)。 4.菌叢生育と温度反応 アラビアンジャスミン分離菌株の菌叢生育は10 ~ 37.5℃ で認められ,生育最適温度は27.5℃であった。また,グミ「ギ ルトエッジ」分離菌の菌叢生育は10 ~ 37.5℃で認められ, 生育最適温度30℃付近であった。 5.分離菌の遺伝子解析 アラビアンジャスミン分離菌株:調査した4領域の塩基配 列について相同性を調査した結果,rDNA-ITS 領域におい てはC. gloeosporioides と同定されている既知の登録塩基配列 AB981196他,C. siamense と同定されている同 KJ813612他, C. tropicale と同定されているKC702962とそれぞれ99%の 相同性を示した。ACT 領域では C. tropicale と同定されてい
るKC533726(Lima et al., 2013)他,C. gloeosporioides と 同定されているKF712382(Ma et al., 2014)他と 99%の 相同性を示した。また,TUB 領域では C. tropicale と同定さ れている登録塩基配列JX010407(Weir et al., 2012)他と 100%,C. siamense と同定されている GQ849441(Yang et al., 2010)他と99%の相同性を示した。CAL 領域では,C. tropicale と同定されている登録塩基配列JX009719(Weir et al., 2012)と100%の相同性を示した。 グミ「ギルトエッジ」分離菌株;各領域の塩基配列相同 性 検 索 の 結 果,rDNA-ITS 領域において C. gloeosporioides と同定されている既知の登録塩基配列KM889666他と99% の相同性を示した。ACT 領域においては C. siamense と同 定されている登録塩基配列JX009435(Weir et al., 2012), C. gloeosporioides と同定されている登録塩基配列KF712382 (Ma et al., 2014)とそれぞれ100%の相同性を示した。また, TUB 領域では,C. siamense と同定されている登録塩基配列 GQ849441(Yang et al., 2010)他と99%の相同性を示し, CAL 領域では,C. siamense と同定されている登録塩基配列 KC296961(Liu et al.,2013)と100%の相同性を示した。 6.病原菌の所属および病名の提案 上記のように,アラビアンジャスミンおよびグミ「ギルト エッジ」から分離された菌株は,宿主植物への接種により病 原性を示したことより,病原菌であることが確認された。 宿主上の分生子層および培養上の分生子,付着器等の形 態的特徴から,両菌はColletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig & Saccardo 種複合体と同定される。同複合体は近 年,遺伝子の複数領域の解析により多数の種に分割されて いる。そこで,Weir et al.(2012)による C. gloeosporioides 種複合体の新分類体系に準拠するとrDNA-ITS 領域,ACT 領 域,CAL 領域,TUB 領域の塩基配列の解析結果から, 第1表 アラビアンジャスミンおよびグミ「ギルトエッジ」分離菌株と既知Colletotrichum gloeosporioides との形態比較 高さ×幅µm 形態 長さ×幅µm(L/B比) 形態 長さ×幅µm 形態 (9.5~)12.5~16.5(~21.2) ×(4.0~)4.8~5.5(~6.5) 4.7~15.3×3.5~5.3 棍棒形 7~18.3×3~6 (4.7~)7.0~11.0(~20.0) ×(4.0~)5.2~7.2(~11.5) 類球形 ~棍棒形, 紡錘形 真直,円筒形, 先端に丸みがある 6~20×4~12 C . tropicaled) C . siamensee) 無色,単胞,紡錘形 やや円筒形, 稀に棍棒形 (11~)12~17.8 ×3.6~7.6(~8.1) (2.4) 無色,単胞, 楕円形~長い楕円形, 両端に丸みがある (7.3~) 8~11.6(~14) ×3.7~6.6(~8.1) 棍棒形 ~不規則形 130~189 ×54~99 表皮下に形成, 褐色~黒色, 皿状~レンズ状, 剛毛を有す 13O-0009a) (アラビアンジャスミン) C . gloeosporioidesc) 11~21×4~6 円筒形 あるいは楕円形 棍棒形 ~不規則形 Colletotrichum gloeosporioides groupb) 9~24×3~4.5 付着器 菌株(分離植物名) 菌名 無色,単胞, 楕円形~長い楕円形, 両端に丸みがある 12.5~16.5(~17.5) ×3.2~5.4 (3.3) 13-B0207a) (グミ 「ギルトエッジ」) 6.1~12×3.8~7.5 111~176 ×68~117 表皮下に形成, 褐色~黒色, 皿状~レンズ状, 剛毛を有す 分生子層 棍棒形 ~不規則形 菌叢生育可能温度 (最適温度)℃ 菌叢の特徴 10~37.5 (27.5) 気中菌糸は 白色~明灰色, 分生子塊は鮭肉色~橙色 10~37.5 (30) 気中菌糸は白色, 分生子塊は鮭肉色 ~淡橙色 気中菌糸は 白色~明灰色, 分生子塊は橙色 綿毛状の菌叢, 気中菌糸は 密集し濃灰白色, 分生子塊は淡黄色~桃色 分生子 a) 分生子層は植物体の病斑上,分生子は PDA 培地上,付着器はジャガイモ・ニンジン煎汁寒天 (PCA) 培地上 b) Sutton (1980) c) Arx (1987) d) Rojas et al. (2010) e) Prihastuti et al. (2009)
ア ラ ビ ア ン ジ ャ ス ミ ン 分 離 菌 株 はColletotrichum tropicale E. I. Rojas, S. A. Rehner & Samuels,グミ「ギルトエッ ジ」分離菌株はColletotrichum siamense Prihast., L. Cai & K. D. Hyde に該当する。両分離菌株の形態的および培養的 特徴の記載はそれぞれRojas et al.(2010),Prihastuti et al.(2009)ともほぼ一致することから,アラビアンジャス ミン分離菌株はC. tropicale,グミ「ギルトエッジ」分離菌 株はC. siamense と同定した。 わが国におけるアラビアンジャスミンの病害記録につい て,日本植物病名目録第2版(日本植物病理学会・農業生 物資源研究所,2012;以下「病名目録」)には登載されてな いが,同じソケイ属であるハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum)には C. gloeosporioides による炭疽病が記録され ている(梶谷ら,2009)。C. gloeosporioides は,アラビアン ジャスミン分離菌株であるC. tropicale と同じ種複合体に包 括され,本研究においてアラビアンジャスミン分離菌株がハ ゴロモジャスミンにも病原性を示したことから,今後,両菌 の異同を確認する必要がある。なお,外国においては,アラ ビアンジャスミンに対してC. capsici(インド; Sarbhoy and Agarwal, 1990),C. gloeosporioides( 中 国;Zhuang, 2005) による病害が報告されている。 グミ「ギルトエッジ」に関しては,竹内(2008)が東京 都秋川市の露地ポット栽培グミ「ギルトエッジ」で類似症状 の発生を確認している。「平成19年度 花き類病害の双方向型 総合診断・防除システムの開発および公開委託事業に関する 委託研究実績報告書」(東京都農林水産振興財団,2008)に よると,“葉身に暗褐色~灰褐色,不整形の病斑が拡大し, 葉枯れを起こした。病斑部には黒色小粒(分生子層)が多 数形成された。分離菌接種により病徴が再現し,接種菌が 再分離された。分生子は無色,単胞,楕円形~長楕円形,円 筒形,10 ~ 22×4 ~ 6µm(図2)。付着器は,暗褐色,不 整棍棒形で,切れ込みが多く,7.5 ~ 19×4~ 13µm。菌叢 生育は10 ~ 35℃で認められ,生育適温は25 ~ 27℃であっ た”とし,病原菌をC. gloeosporioides と同定している。この 成果は,花き研究所のホームページで公開されている「花き 病害図鑑」のグミ類の項に炭疽病として登載されている。同 報告書に記載された菌の形態は今回のグミ「ギルトエッジ」 の記載,ならびにSutton(1980)および Arx(1987)によ るC. gloeosporioides の記載とほぼ一致することから同種と同 定できる。しかし,竹内(東京都農林水産振興財団,2008) の分離菌株が残っておらず,遺伝子解析ができないため,C. gloeosporioides sensu lato(Sutton, 1980)に留めることになる。 グミ類にはグミ「ギルトエッジ」交配親のナワシログ ミ に 矢 口 ら(2004) が 炭 疽 病 を 報 告 し た が, 病 原 菌 は Colletotrichum sp. とし,種の同定は保留している。今回のグ ミ「ギルトエッジ」分離菌株はナワシログミに対しても病原 性を有することから,両菌の異同についても検討する必要が ある。なお,外国においては,Alfieri Jr. et al.(1984)が フロリダにおいて,グミ属へのColletotrichum sp. による被 害を報告している。 今回報告したアラビアンジャスミン斑点症状およびグミ 「ギルトエッジ」葉枯れ症状はわが国では未記録である。こ のため,Colletotrichum 属菌による病害の慣行的な命名に従 い,病名として,「アラビアンジャスミン炭疽病」および 「Elaeagnus × ebbingei 炭疽病」(いずれも英名「Anthracnose」)
を提案する。 謝辞:本報告をまとめるにあたり,有益なご助言をいただ いた法政大学生命科学部鍵和田聡博士ならびに廣岡裕吏博士 に厚く御礼申し上げる。 引 用 文 献 我孫子和雄 (1992) 植物病原菌類図説 (小林享夫ら編). 全国農 村教育協会, 東京. pp. 408-409.
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