異 文化経営 の制度分析 序 説
企 業内経 営 システムの比較制度分析
丹 野 勲
は じ め に
本稿 の研 究課題 は,異 文化 での企業経営 を比較制度 分析 の視 点で考察す る
こ とで あ る.本 研 究 で は,繍 学 を中 心 として::し て きた制 度 分 彪 援 用 し て,企 業 内 経 営 シ ス テ ム の 制 度 分 析 を 行 う。 特 に,本 稿 で は,ト ッ プ マ ネ ジ メ ン ト,資 本 構 造 と コ ー ポ レ ー トガ バ ナ ン ス,組 織 と組 織 行 動,人 的 資 源 と い っ た 企 業 内 経 営 シ ス テ ム の 制 度 分 析 を 中 心 と し て 考 察 す る 。 ま た,オ ー ス トラ リア の 企 業 経 営 に 関 して,制 度 分 析 の 視 点 か ら ケ ー ス研 究 を 行 う。
第1節 制 度 分 析 の ア プ ロ ー チ
(1)経 済 シ ス テ ムの 比 較制 度 分 析
制 度 分 析 の代 表 的 理 論 と して,経 済 シス テ ム の比 較制 度 分 析 とい う経 済 学
ラ
の ア プ ロ ー チ が あ る。 こ の 理 論 の 概 要 を見 て み よ う。
経 済 シ ス テ ム の 比 較 制 度 分 析(comparativeinstitutionalanalysis)は,
経 済 シ ス テ ム や 経 済 制 度 を さ ま ざ ま な 制 度 の 集 ま り と考 え る こ とで,経 済 シ ス テ ム の 多 様 性 とダ イ ナ ミズ ム を 理 論 的 ・実 証 的 に分 析 し よ う とす る経 済 学
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の
の 新 しい 分 野 で あ る。 そ の 研 究 対 象 は,市 場 経 済 の 比 較 分 析 の み な らず,社 会 主 義 経 済 か ら市 場 経 済 へ の 移 行 の 問 題 等,多 岐 に わ た っ て い る。
比 較 制 度 分 析 の 重 要 な 鍵 概 念 は,制 度(institution)で あ る。 制 度 は,社 会 に お け る ゲ ー ム の ル ー ル で あ る。 さ ら に,制 度 は,人 々 に よ っ て 考 案 さ れ た
4)
制 約 で あ り,相 互 作 用 を形 づ く り,ま た,イ ン セ ン テ ィ ブ構 造 で もあ る。 制
5)
度 は,日 常 生 活 に構 造 を与 え る こ とに よ り不 確 実性 を減 少 させ る。 す なわ ち, 人 間 は,意 思決 定 の相 当部 分 を埋 め込 まれ た 制 度 集 合 に よっ て決 定 す る こ と に よ り,不 確 実性 を低減 させ よ う とす るの で あ る。
比 較 制 度 分 析 は,経 済 シス テ ム を次 の よ うな新 しい視 点 か ら分 析 し よ う と 6)
す る。
第1は,同 じ資 本 主義 経 済 シス テ ム で あ って も,ど の よ うな制 度 が その 内 部 に成 立 して い るか に よ って,さ まざ まな資本 主 義 シ ス テム が あ り得 る とい う 「資本 主義 経 済 シ ス テム の 多様 性 」 の視 点 で あ る。 これ は,経 済 シ ス テ ム に は理 想 的 な,普 遍 的 な モ デ ルが 存 在 しな い と考 え,地 球 規 模 で 多様 な シス テ ムが 共 存 ・競 争 す る とい う多様 性 の経 営 利 益 を重 視 す る とい う考 え方 で あ る。
第2は,1つ の制 度 が安 定 的 な仕 組 み と して存 在 す るの は,社 会 の 中 で あ る行 動 パ ター ンが 普遍 的 に なれ ば な る ほ ど,そ の 行 動 パ ター ンを選 ぶ こ とが 戦 略 的 に有利 とな り,自 己 拘 束 的 な制 約 と して定 着 す るか らで あ る とす る制
7)
度 の もつ 「戦 略 的 補 完 性(strategiccomplementarity)」 と い う視 点 で あ る。
シ ス テ ム の 中 で1つ の 仕 組 み の 割 合 が 増 え る ほ ど,そ の 仕 組 み を選 ぶ こ とが 有 利 に な る こ と を,「 戦 略 的 補 完 性 」が 存 在 す る とい う。1つ の 社 会 の 中 で 成 立 して い る制 度 の 体 系 が 比 較 的 同 質 的 な の は,こ れ らの 制 度 に戦 略 的 補 完 性 が 存 在 して い る か らで あ る 。 現 実 の 経 済 シ ス テ ム は,経 済 シ ス テ ム の 内 部 で は 対 象 ご と に比 較 的 同 質 的 な 制 度 が 成 立 し て い る の に 対 し て,異 な る 経 済 シ ス テ ム の 問 に は 大 き な 制 度 の 違 い が 存 在 し,お 互 い の 経 済 シ ス テ ム の 異 質 性 が 際 立 っ て い る理 由 と し て,こ の 補 完 性 が あ る。
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第3は,多 様 な シ ス テ ム が 生 まれ る の は,1つ の シ ス テ ム 内 の さ ま ざ ま な 制 度 が お 互 い に補 完 的 で あ り,シ ス テ ム 全 体 と し て の 強 さ を生 み 出 して い る か ら で あ る と す る経 済 シ ス テ ム 内 部 の 「制 度 的 補 完 性(institutiona王comple ‑
ラ
mentarity)」 とい う視 点 で あ る。 制 度 的 補 完 性 とは,複 数 の制 度 間 の相 互 補 完性 す なわ ち一 方 の制 度 の存 在 が,他 方 の制 度 の シ ス テム全 体 に もた ら
9)
す 価 値 を 高 め る 関 係 一 一 を 意 味 す る 。
第4は,そ の た め 経 済 シ ス テ ム に は1貫性 が あ り,経 済 の 置 か れ た 外 部 環 境 と蓄 積 され た 内 部 環 境 の 変 化 と共 に徐 々 に進 化 ・変 貌 す る とす る 経 済 シ ス テ ム の 深 化 と 「経 路 依 存 性(pathdependence)」 とい う視 点 で あ1(1). mow依 存 性 と は,小 さ な 出 来 事 や 偶 然 の 事 情 の 結 果 が 解 を決 定 し,そ れ が 支 配 的 に な
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る と,人 をあ る特 定 の 経路 に向 か わ せ る事 で あ る。
以 上 の よ う に,比 較 制 度 分 析 で は,経 済 シ ス テ ム の制 度 の 多様 性 とそ の論 理 を世 界 的 な視 点 よ り分 析 す る。 比 較 制 度 分 析 で は,制 度 に対 して二 面 的 な 関 心 を払 う。1つ は現 存 す る経 済 制 度 の安 定 性 ・固定 性 で あ り,も う一 面 は さ ま ざ まな制 度 の 存 在 可 能 性 や 可 変性 お よび進 化 に まつ わ る もの で あ る。比 較 制 度 分 析 は現 存 の制 度 が なぜ 安 定 的 に機 能 して い るの か を明 らか にす る に
とど ま らず,制 度 の生 成 ・変容 に対 して もダ イ ナ ミック な分 析 を行 お う とす る試 み で あ る。
本 稿 で は,以 上 の よ うな比 較 制 度 分 析 の ア プ ロー チ を基礎 と して,企 業 経 営構 造 の 制 度 分析 を行 う。
② 文化 と制 度
制 度 と並 ん で そ の経 済 や企 業経 営 構 造 を規 定 して い る と思 わ れ る もの に文 化 が 存 在 す る。 文 化 は そ の社 会 に属 す る人 々 が 共 有 す る価 値 観,選 好 とい え る。 これ に対 して 「制 度 」は その社 会 で 広 く認 め られ て い る… 定 の ル ー ル(き ま り),行 動 パ タ ー ンで あ る。
企 業 経 営 と文化 を考 察 す る際 に重 要 な視 点 は,文 化 を どの レベ ル で と らえ 異文化経営の制度分析序説27
るか とい う こ とで あ る。 マ ク ロ文 化 とい う視 点 に立 つ と,ア ジア の 文化,日 本 の文 化 とい った 国 や地 域 レベ ル の 文化 が対 象 に な る。 これ に対 して,ミ ク
ロ文化 とい う視 点 に立 つ と,企 業 文 化,組 織 文 化 とい う企 業 や職 場 レベ ルで の文 化,風 土 とい う こ とが 研 究 対 象 に な る。
文 化 と制 度 の関 係 を考 え る場 合,文 化 と制 度 に は=補完 性 が存 在 す る視 点 が 重 要 で あ る。 あ る文 化 に適 合 す る制 度 が構 築 され,そ の制 度 が一 般 化 す る と・
制 度 が文 化 を強 化 す る とい う作 用 が働 くの で あ る。 例 え ば,日 本 は集 団 主 義 的文 化 を もって い る とされ るが,そ の集 団 的 文 化 に適 合 す る経 営 制 度 が 作 ら れ る と,そ の 制 度 が,人 間 を集 団 主 義 の文 化 に適 合 す る こ とを強 制 す るの で あ る。 集 団 主 義 的 意 思 決 定,稟 議 制 度,大 部 屋 主 義,チ ー ム プ レー に よ る仕 事,職 務 の無 限定 性,等 の集 団 的文 化 に適 合 す る経 営制 度 が,戦 略 的補 完性 に よ り制 度 と して一 般 化 す る と,こ の制 度 が,個 人 主 義 の 文 化 を抑制 し,集 団 主 義 の文 化 を強化 す る よ うな働 くの で あ る。 集 団 主 義 の経 営 制 度 の元 で, 個 人 主義 的行 動 を行 う こ とは,組 織 か ら阻 害,排 除 され る可 能 性 が高 い ので
あ る。
第2節 ト ッ プ マ ネ ジ メ ンhの シ ス テ ム ー一 一トッ プ マ ネ ジ メ ン ト制 度 ・構 造 一 一
トップ マ ネ ジ メ ン トの制 度 ・構 造 は,国 に よ り若 干 相 違 が あ る。 株 式 会 社 制度 の場 合,ほ とん どの 国が 取締 役 会 ・株 主 総 会 ・監 査 役 会 を トップ マ ネ ジ メ ン トの 機 関 として い るが,こ れ ら以 外 の機 関 が 存 在 して い る国 もあ る。 例 え ば,ア メ リカや イ ギ リス を中心 とした広 く西 欧 諸 国 や一 部 の ア ジア諸 国 の 企 業 に存 在 す る経 営 執 行 委 員 会 とい う トップ マ ネ ジ メ ン ト機 関 や,中 国等 の 社 会 主義 国 の 国営 企 業 に まだ存 在 す る企 業 内 の 共産 党 委 員会 の存 在 が あ る。
12}
コ ー ポ レ ー トガ バ ナ ン ス(企 業 統 治)の 視 点 か ら見 る と,ト ッ プ マ ネ ジ メ ン トの 各 機 関 の パ ワ0や 構 造 が 国 に よ り微 妙 に 相 違 し て い る。 ま た,取 締 役
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の選 任 につ い て は,株 主 総 会 で選 任 され る国 や,監 査役 会 で 選任 され る国 が あ り,国 に よ り相 違 が あ る。
取締 役 の経 歴 に つ い て も,国 際 的 に見 る と相 違 が あ る。 取締 役 の ほ とん ど が企 業 内部 の 出 身 か,ま た は親 会 社 ・関 連 会 社 出 身 の いわ ゆ る内 部 取締 役 で あ るケ ー ス と,か な りの 割 合 で 内部 出身 以 外 の取 締 役 で あ る外 部 取 締 役 を置 い て い るケ ー ス が あ る。 また ,取 締 役 は,企 業 内部 の昇 進 に よ る内部 昇 進 取 締 役 と,企 業 の外 部 の人 材 を採 用 した外 部 ス カ ウ ト取締 役 の ケー ス が あ る。
国 際 的 に見 る と,ト ップ マ ネ ジメ ン トの制 度 ・構 造 は,以 下 の3つ の モ デ ル に分 類 で き よ う。
(a)ト ップマネジメ ン トのアメ リカモデル
第1は,ア メ リカ モ デ ル で あ る。 ア メ リカの場 合 は,株 主 総 会 に よっ て専 任 され た取 締 役 会 が,会 社 の業 務 執 行 を行 う機 関 と して 法律 上 定 め られ て い るが,現 実 に は,取 締 役会 に よ っ て選 任 され た最 高 経 営 責 任 者(chiefexecu ‑ tiveofficer:CEO)を 代 表 とす る経 営執 行 委 員 会(executivecommittee)
が業 務 執 行 を担 当 す る形 が 一 般 的 で あ る。 取 締 役 会 は,実 質 的 に は株 主 の意 向 を反 映 して,経 営執 行 員 会 を モ ニ タ リング し監 督 す る とい う機 能 を果 た し て い る。 取 締 役 は,会 社 の 内部 か ら選 任 され た 内 部 取締 役 と,か な りの割 合 で 存 在 す る会 社 外 部 の人 材 か ら登 用 す る社 外 取 締 役 に よ っ て構城 され る。 経 営執 行 委 員 会 代 表 は取 締 役 会 の会 長 を兼 任 す る場 合 が 多 く,経 営 執行 委 員 会 の メ ンバ ー につ い て は,取 締 役 で あ る ケ ー ス とな い ケ ー ス が あ る。 ア メ リカ は,こ の経 営 執 行 委 員 会 が,ト ップ マ ネ ジ メ ン トの業 務 執 行 機 関 と して機 能 して い る とい う特 徴 が あ る。 アメ リカモ デ ル は,イ ギ リス を始 め か な りの 国 で採 用 され て い る。
(b)hッ プマネジ メン トの ドイツモデル l3)
第2は,ド イ ツモ デ ル で あ る。 ドイ ツの 場 合 は,他 の 国 と比 較 して監 査 役 会 の権 限 が 強 い。 大 会 社 につ い て は,監 査 役 会 の 半 数 を株 主 総 会 で選 任 し, 残 りの半 数 を従 業 員代 表 として従 業 員 が選 任 す る形 とな っ て い る。 さ らに,
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監 査役 会 は,取 締 役 を選 任 す る権 限 を もち,取 締 役 会 をモニ タ リング し,監 督 す る とい う機 能 を果 た して い る。 取 締 役 会 は,実 質 的 に,経 営 の業 務 執 行
を担 う機 関 と して位 置 づ け られ て い る。 また,取 締 役 と監査 役 の 兼任 は認 め られ て い ない 。 ドイ ツ は,業 務 執 行 機 関 と して の取締 役 会 と監 督 機 関 と して の監 査 役 会 を明 確 に分 離 して,別 個 の機 関 とす る シス テ ム で あ る。
(c)ト ップマネジメ ン トの 日本 モデル
第3は,日 本 モ デ ル で あ る。 日本 の場 合 は,ア メ リカの よ うな経 営執 行 委 員会 が存 在 せ ず,取 締 役 会 が,実 質 的 に業 務 執 行 機 関 で あ る形 が 一 般 的 で あ る。 ア メ リカ の場 合 と同 じ く,取 締 役 は,株 主 総 会 で直 接 選 任 され る。 取 締 役 は,会 社 の 内部 の人 材 を登 用 す る取 締 役 が ほ とん どで,い わ ゆ る社 外 取 締 役 は少 な い。 日本 で は,業 務 執 行 機 関 で あ る取 締 役 会 をモ ニ タ リ ング監督 す る トップマ ネ ジ メ ン ト機 関 として,監 査 役 会 に そ の役 目が 期 待 され る制 度 と な っ て い る。 しか し,現 実 に は,監 査 役 の多 くが企 業 内部 出身 の監 査 役 で あ る こ と,監 査 役 の社 内 ラ ン クが低 い こ と,監 査 役 が名 誉 職 的 な地 位 に あ る こ
と等 に よ り,監 査 役 会 が取 締 役会 をモ ニ タ リン グ し監督 す る機 能 を果 た しに くい構 造 とな って い る。
第3節 資 本 構 造 と コー ポ レー トガ バ ナ ン ス の シ ス テ ム
企 業 が 大 規 模 化 し,経 済 が 産 業 化 す る に つ れ て,株 主 構 造 が 個 人 ・家 族 を 中 心 と した 構 造 か ら,法 人 や 機 関 に よ る所 有 に 移 行 し,所 有 と経 営 が 分 離 す
る とい う動 き は,国 際 的 視 点 で 見 て もほ ぼ 同 様 で あ る。 た だ,国 に よ り,大 企 業 に お い て も所 有 形 態 が 個 人 ・家 族 所 有 の 傾 向 が 強 い 国 が 存 在 す る 。個 人 ・ 家 族 所 有 とい っ て も,直 接 出 資 す る の で は な く,持 ち株 会 社 を 通 して の 間 接 投 資 と い う形 態 で の 支 配 と い う形 も多 い 。 例 え ば,ア ジ ア で は,い わ ゆ る 華 僑 ・華 人 企 業 で 典 型 的 に 見 ら れ る支 配 構 造 で あ り,ヨ ー ロ ッパ で も フ ラ ン ス な ど で 見 られ る。 所 有 と経 営 の 分 離 は,同 じ程 度 の 経 済 的 発 展 レベ ル の 国 で
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あ っ て も,若 干 そ の進 展 が相 違 して い る。
私企 業 以 外 の企 業 形 態 として,社 会 主 義 国 の み な らず資 本 主 義 国 にお い て も,い わ ゆ る公 営 企 業 ・共 同 組 合 企 業 が 多 く存 在 して い る。 現在,公 営 企 業 の民 営 化 の動 きが社 会 主義 国 だ けで は な く資 本 主 義 諸 国 で も共 通 す る世 界 的 趨 勢 として存 在 して い る こ とは注 目 され る。
国 際 的 にみ る と,企 業 の資 本 構造 とコー ポ レー トガ バ ナ ン ス に関 して,以 下 の3つ の モ デ ル に分 類 で き よ う。
(a)ア メ リカモデル
第1は,ア メ リカ モ デ ル で あ る。 ア メ リカの大 企 業 で は,所 有 と経 営 が 分 離 が進 展 して い るが,株 主 の力 が 相 対 的 に強 く企 業 経 営 にお いて も株 主 の利 益 を最 大 化 す る行 動 を と りや す い。 ア メ リカで は,年 金 基 金 や投 資 信 託 な ど の機 関 投 資 家 に よ る株 式 保 有 割 合 が 高 く,こ れ らの機 関 投 資 家 は,ど ち らか
とい う と短 期 的 視 点 で 自己 の利 益 の最 大 化 す る こ と,す なわ ち その ポ ー トフ ォ リオ か らの 短期 的 な収 益 を最 大 化 す る とい う行 動 を志 向 す る傾 向 が 強 い。 また,機 関 投 資 家 は,株 式 を短期 間 で 売 買 す る行 動 を とる傾 向が あ る。 アメ リカ の機 関 投 資 家 は,長 期 的 に株 式 を保 有 し,安 定 株 主 と して会 社 の経 営 を 見 つ め る とい う意 識 は希 薄 で あ る。
(b)日 本 ・ドイツモデル
第2は,日 本 ・ ドイ ツモ デ ル で あ る。 日本 の 大 企 業 で は,所 有 と経 営 の分 離 は進 展 して い るが,グ ル ー プ の企 業 や長 期 的 な 取 引 関係 に あ る他 の企 業 の 株 式 を保 有 す る株 式 の 相 互 持 ち合 い が か な り存 在 して い る。 また ,銀 行 や保 険 会 社 とい った 金融 機 関 が,そ の グル0プ 企 業 や長 期 的 な取 引先 の企 業 の株 式 を所 有 す る こ と も行 わ れ て い る。 この 法人 所 有 の形 態 は,ど ち らか とい う
と長 期 的 視 点 に立 っ た投 資 で あ り,安 定 株 主 とい う傾 向 が あ る。 ドイ ツ に お
14)
い て も,主 に大 銀 行 を 中 心 と し て,産 業 企 業 の 株 式 所 有 が 広 範 に行 わ れ て い る。 ドイ ツ で は,大 銀 行 が}メ イ ン バ ン ク と し て ,役 員 派 遣,経 営 モ ニ タ リ ン グ ・コ ンサ ル テ ィ ン グ,保 険 機 能 等 の 広 範 な機 能 を 果 た し て お り
,金 融 機 異文化経営の制度分析序説31
関 と産 業 企 業 と は相 互 に密 接 な 関 係 が 存 在 す る 。 (c)ア ジ ア華 僑 ・華 人 型 フ ァ ミ リー ビジ ネ ス モ デ ル
第3は,ア ジ ア 華 僑 ・華 人 型 フ ァ ミ リー ビ ジ ネ ス モ デ ル で あ る。 こ の 形 はy 所 有 構 造 に お い て 個 人 ・家 族 支 配 が 強 く,所 有 と経 営 の 分 離 が あ ま り進 展 し
て い な い,い わ ゆ る フ ァ ミ リー ビ ジ ネ ス の 色 彩 が 強 い形 態 で あ る 。 個 人 ・家 族 に よ る直 接 出 資 に よ る 支 配 と,持 ち 株 会 社 を通 し て の 間 接 投 資 とい う支 配 の 形 態 も多 く存 在 す る。
第4節 人 的 資 源 管理 の シ ス テ ム
(1)人 的 資 源 管 理 シ ス テ ム の 類 型 化
国 際 的 に み る と,企 業 の 人 的 資 源 管 理 の シ ス テ ム は,以 下 の よ う に類 型 化 で き る で あ ろ う。
第1に,人 的 資 源 管 理 の 全 般 的 方 針 と し て,従 業 員 の 身 分 ・待 遇 等 で 均 一 性 を重 視 す る制 度 を と る か,そ れ と も身 分 ・待 遇 等 で 格 差 を設 け る制 度 を と
る か の 決 定 で あ る。
イ ギ リ ス は,歴 史 的 に ブ ル ー カ ラ ー とホ ワ イ トカ ラ ー の 格 差 が 存 在 し,階 級 社 会 の 傾 向 が 依 然 と し て 濃 厚 で あ る。 イ ギ リス の 企 業 の 賃 金 体 系 に お い て
は,ホ ワ イ トカ ラ ー と ブ ル ー カ ラ ー の 賃 金 制 度 が 異 な っ て い る の が 一 般 的 で あ る 。 ホ ワ イ トカ ラ ー は,月 給 制 や 年 俸 制 が 中 心 で あ る の に 対 し て,ブ ル ー カ ラ ー は,日 給 や 週 給 が 基 本 とな る賃 金 制 度 で あ る。 昇 進 に お い て も,ブ ル ー カ ラ ー の 昇 進 経 路 と,ホ ワ イ トカ ラ ー の 昇 進 経 路 が 異 な っ て い る企 業 が 多 い 。 ま た,ブ ル ー カ ラ ー が ホ ワ イ トカ ラ ー に職 種 転 換 す る の は,一 般 的 に 困 難 で あ る 。 さ ら に,食 堂,駐 車 場,ト イ レ,制 服 等 の 格 差 を 設 け る 企 業 も あ
る。
日本 を代 表 とす る 国 で は,従 業 員 の 身 分 ・待 遇 等 で 出 来 る だ け格 差 を設 け ず,身 分 の 均 一 性 を重 視 す る制 度 を と る企 業 が 多 い 。 賃 金 体 系 で は,ホ ワ イ
32国 際経営論集No151998
トカ ラ ー とブ ル ー カ ラ ー が 同 一 の 月 給 制 度 や 年 俸 制 度 を基 本 とす る
。 ま た, ホ ワ イ トカ ラ ー とブ ル ー カ ラ ー との 職 種 転 換 を も実 施 す る
。 そ の 他 の 労 働 条 件 を も出 来 る だ け 同 一 に し,身 分 の 均 一 性 を重 視 す る政 策 を採 っ て い る
。 こ の 従 業 員 に対 す る 身 分 の 均 一 性 や 格 差 の 制 度 に は
,当 然 国 に よ る相 違 の み な らず,企 業 に よ る相 違 もあ る。 ア メ リカ の 企 業 で も
,身 分 の 均 一 性 を 方 針 と して い る ヒ ュ ー レ ッ ト ・パ ッ カ ー ド社,IBM社 等 が 存 在 す る
。 特 に 近 年,ハ イ テ ク企 業,優 良 企 業 と い わ れ て い る ア メ リカ 企 業 で 身 分 の 均 一 性 を 方 針 と し て い る企 業 は 多 い 。
第2は,人 的 資 源 の フmの シ ス テ ム に よ るi類型 で あ る。 採 用,キ ャ リア 形 成,配 置 転 換,昇 進,離 職,退 職,教 育 訓 練 ,熟 練 形 成 等,従 業 員 の フ ロ ー に 関 す る人 的 資 源 管 理 シ ス テ ム の 制 度 で あ る
。
採 用 に つ い て は,ス ペ シ ャ リス トを 基 本 に す る採 用 制 度 と,ジ ェ ネ ラ リス トを 基 本 とす る採 用 制 度 に類 型 化 で き る で あ ろ う。 ス ペ シ ャ リス ト的 採 用 制 度 は,ア メ リカ や イ ギ リス の 企 業 で 一 般 的 で,あ る 特 定 の 職 種 に 対 す る補 充 と し て,そ の 職 種 に 最 も適 合 す る 人 材 を採 用 す る形 を と る。 そ れ 故,職 務 が 明 確 化 さ れ た 採 用 とな る た め,そ の 職 務 を 遂 行 す る能 力 や 経 験 を持 つ 人 材 を 採 用 す る こ と に な る。 ジ ェ ネ ラ リス ト的 採 用 制 度 は ,日 本 や ア ジ ア の 一 部 の 企 業 で 一 般 的 で,個 々 の 職 務 内 容 を 必 ず し も明 確 化 せ ず,大 雑 把 な グ ル ー プ と し て 採 用 し,入 社 後 の 研 修 や 配 置 に よ り適 性 を 見 た 上 で 配 置 す る制 度 で あ る 。
キ ャ リア 形 成 に つ い て は,採 用 制 度 と関 連 し て,ス ペ シ ャ リス ト的 キ ャ リ ア 形 成 と,ジ ェ ネ ラ リス ト的 キ ャ リ ア 形 成 に 類 型 化 で き る で あ ろ う
。 ス ペ シ ャ リ ス ト的 キ ャ リア 形 成 は,採 用 後,同 一 の 職 種 や 職 務 を基 本 に した 配 置
, ジ ョブ ロ ー テ ー シ ョ ン,昇 進 を 原 則 と す る制 度 で あ る。 ジ ェ ネ ラ リス ト的 キ ャ リア 形 成 は,採 用 後,多 様 な職 種 を 経 験 させ る こ と を基 本 と した 配 置
,ジ ョ フ ロ ー テ ー シ ョ ン,昇 進 を原 則 とす る制 度 で あ る。
昇 進 に つ い て は,年 功 と業 績 の ど ち ら に よ り比 重 を 置 くか で の 類 型,お よ 異文化経営の制度分析序説33
び 内部 昇 進 を重 視 す るか 否 か に よる類 型 が あ る。 日本 や 儒 教 思 想 の影 響 が強 い ア ジ アの 国 の企 業 は,昇 進 の場 合,年 功 を重 視 す る傾 向 が あ る。 ア メ リカ の企 業 で は,業 績 を よ り重視 す る傾 向 が あ る。 内部 昇 進 を重 視 す るか 否 か に つ い て は,よ り上 位 の ポ ス トが 空 いた 場 合,企 業 内部 の従 業 員 を昇 進 させ る
こ とに重 点 を置 く企 業 と,外 部 の人 材 に よ り補 充 す る企 業 が あ る。
解 雇 に つ い て は,従 業 員 を出来 るだ け解 雇 せ ず 長 期 雇 用 を維 持 し よ う とす る方 針,お よ び,必 要 な場 合 解 雇 す る こ と とし,必 ず し も長 期 雇 用 に こだ わ
らな い方 針 の企 業 とい う類 型 が あ る。
教 育 訓 練,熟 練 形 成 につ い て は,各 種 の 企 業 内 教 育 を重 視 す る企 業 の類 型 と,企 業 外 の 教育 に重 点 を置 く企 業 の類 型 が あ る。 企 業 内教 育 を重 視 す る企 業 は,OJT(オ ンザ ・ジ ョブ ・トレー ニ ング),社 内研 修 とい った企 業 の 内 部 で行 う教 育 訓 練 が 中心 とな る。 企 業 外 の 教育 訓練 を重 視 す る企 業 は,外 部
の教 育 訓練 機 関,労 働 組 合 等 に,教 育 訓 練 を依 存 して い る。
第3は,職 務 シス テ ム の類 型 で あ る。 職 務 の割 り当 て,職 務 の 文書 化 を中 心 とした職 務 設 計 シ ス テム に よる類 型 で あ る。
職 務 の割 り当 て につ い て は,個 々 人 に,職 務 の範 囲,責 任,権 限 を明 確 に 割 り当 て規 定 す る職 務 シス テ ム の類 型,お よび,個 々人 に,職 務 の範 囲,責 任,権 限 を明確 に割 り当 て規 定 す るの で は ない職 務 シ ステム の類 型 が あ る。
前 者 は,職 務 の割 り当て が,個 人 を基 本 とし,職 務 限定 的 な職 務 設 計 シ ステ ム で あ る。 後 者 は,職 務 の割 り当 て をチ ー ム や集 団 を基 本 と し,個 人 の職 務 の範 囲 は状 況 に よ り伸 縮 す るチ ー ム ワー ク を中心 に仕事 を遂 行 す る職 務 設 計
シス テ ム で あ る。
職 務 の 文 書 化 につ い て は,職 務 ・仕 事 の 内容 を,文 書 化 ・マ ニ ュア ル化 す る形 式 知 に重 点 をお く企 業 の類 型,お よび,職 務 の文 書化 よ り,集 団構 成 員 相 互 の組 織 学 習 に よ る暗黙 知 を重 点 とす る企 業 の類 型 が あ る。
34国 際 経 営 論 集No.151998
② 熟 練 形 成 の 制 度
熟 練 形 態 を,企 業(関 係)特 殊 技 能 と一 般 的(機 能 的)技 能 に分 類 す る考 ゆ
え 方 が あ る。
企 業 特 殊 的 技 能(firm〔relation〕‑specificskill)と は,特 定 の 企 業 に対 し て の み 価 値 の あ る知 識,技 能 で あ り,企 業 が 変 わ る と価 値 が 下 が る知 識, 技 能 で あ る 。 例 え ば,「 異 常 へ の 対 応 」の よ う な,あ る企 業 で 使 用 し て い る特 定 の 機 械 に対 す る知 識 や 技 術,ま た,問 題 が 発 生 した 際,ど の 部 署 や 担 当 者 と連 絡 を とっ た ら い い か とい う企 業 内 組 織 に つ い て の 知 識 な ど の 技 能 で あ る
。 な お,こ の よ う な 企 業 特 殊 的 な 意 味 で の 知 識 を ,コ ン テ ク ス ト的 知 識 と呼 ぶ 。 企 業(関 係)特 殊 技 能 の 習 得 の た め の 人 的 投 資 の 費 用 は サ ン ク さ れ る た め
, 一 度 投 資 す る とそ の 費 用 を 回 収 す る に は 同 一 の 企 業 との 関 係 を継 続 す る 方 が 有 利 で あ る。 そ の よ う な 技 能 に は,先 に挙 げ た コ ン テ ク ス ト的 知 識 の よ う な 企 業 特 殊 技 能 と,例 え ば 部 品 メ ー カ ー が 特 定 の 組 立 メ ー カ ー 専 用 で あ る た め 他 社 の 車 に は使 え な い 部 品 製 造 技 術 を蓄 積 す る,と い っ た 企 業 間 取 引 に お け
る 関 係 特 殊 技 能 が あ る。 こ れ に対 し一 般 的 技 能(機 能 的 技 能)(generalskil1) と は,他 の 企 業 に 移 っ て も価 値 が 変 わ らず ,外 部 労 働 市 場 で価 値 が 決 ま る技 能 で あ り,サ ン ク ・コ ス トは か か ら な い 。
1fi}
小 池 に よ る と,技 能 形 成 の キ ャ リア を,横 の 広 が り と,縦 の 広 が りに分 類 し て い る。 「横 の 広 が り」と は,幅 広 い キ ャ リア と い う こ と で あ り,前 後 の 工 程 な ど を 経 験 し て,職 務 の 遂 行 が 可 能 な 範 囲 を拡 大 す る技 能 形 成 の キ ャ リア で あ る。 これ に よ り,従 業 員 は,工 程 や 生 産 の 仕 組 み や 技 術 を よ り理 解 で き る こ とに な る。 「縦 の 広 が り」と は,内 部 昇 進 に よ る技 能 形 成 の キ ャ リ ア で あ る。 現 場 の 従 業 員 が,技 能 蓄 積 に よ り,職 長,班 長 ,管 理 職 等 の 上 位 の 階 層 に 昇 進 し て い く技 能 形 成 の キ ャ リア で あ る。 ま た,小 池 は,技 能 を 形 成 す る 基 礎 と し て の 作 業 に つ い て,2つ に 分 類 し て い る 。 「ふ だ ん の 作 業(usual operations)」 とrふ だ ん と違 っ た 作 業(unusualoperations)」 で あ る。 ふ だ ん の 作 業 と は,規 格 化 され,繰 り返 しの 多 い作 業 で あ る 。 これ は,サ イ モ ン
異文 化 経 営 の 制 度分 析 序 説35
の 言 うプ ロ グ ラム 化 され た 意 思 決 定 に よる作 業 で あ ろ う。 ふ だ ん と違 っ た作 業 は,「 変 化 へ の対 応 」 と,「 異 常 へ の対 応 」 に分 類 され る。 変 化 へ の対 応 と
は,新 製 品 の登 場,製 品構 成 の変 化,生 産 量 の変 化,生 産 方 法 の変 化,労 働 力構 成 の変 化,等 の作 業 現場 の 変 化 に よる対 応 で あ る。
第5節 意 思 決 定 論 に よ りみ た組 織 と組 織 行 動 の シス テ ム
異 文化 経 営 の視 点 よ り企 業 経 営 を み る と,国 に よ り最 も差 異 が あ る と考 え られ るの は,組 織 行 動 の側 面 で あ る。 異 文 化 に お け る企 業 経 営 を考 察 す る場 合,組 織 行 動 の分 析 が重 要 とな る。 また,比 較 制 度 分 析 の視 点 で企 業 経営 を
み る場 合 にお いて も,組 織 組 織 行 動 の側 面 は重 要 で あ る。 本 節 で は,異 文 化 環境 で の組 織 ・組 織 行 動 に関 して,意 思 決 定 を 中心 とした視 点 か ら考 察 す
る。
(1)個 人 の 意思 決 定 と集 団 の 意思 決 定
日本 企 業 の 意 思 決 定 の特 徴 は,集 団 主 義 的 意 思 決 定 で あ り,ボ トム ア ップ の傾 向 に あ るの に対 して,ア メ リカ企 業 の意 思 決 定 は,個 人 主義 的意 思決 定 で,ト ップ ダ ウ ンの傾 向 にあ る とす る研 究 が 多 い。 異 文化 にお け る意 思 決 定 に関 して,集 団 主 義 的意 思 決 定 と個 人 主 義 的 意 思 決 定 の パ ター ンに分 類 で き る。
理 論 的 に考 え る と,個 人 の意 思 決 定 と集 団 の意 思 決 定 につ い て,お 互 い に 欠点 と利 点 が存 在 す るの で あ って,ど ち らが優 れ て い るか とい う もの で はな い 。意 思 決 定 理論 か ら,個 人 の意 思 決 定 と集 団 の意 思 決 定 の 問題 につ い て考
17) え て み よ う 。
個 人 に よ る意 思 決 定 の 利 点 は,理 論 的 に 考 え る と以 下 の 点 を指 摘 で き る。
第1は,時 間 が 速 く,敏 速 な 意 思 決 定 が 出 来 る こ とで あ る。 環 境 の 変 化 が 激 しい よ う な状 況 下 に お い て は,個 人 的 意 思 決 定 の 強 み と な る場 合 が あ る。 こ
36国 際経営論集N〔}.151998
れ に対 して,集 団 に よ る意 思 決 定 で は,集 団 の合 意 を得 るた め に 時 間 が か か る。
第2は,責 任 の明 確 さで あ る。 誰 が 決 定 を下 した か が 明 確 で あ るた め,結 果 に対 す る責 任 が わ か りや す い。 集 団 的意 思 決 定 で は,責 任 が 最 もあ い まい
にな る。
第3は,個 人 に よ る意 思 決 定 は,一 貫 した価 値 観 を維 持 す る傾 向 が 強 い こ とで あ る。 集 団 に よ る決 定 は,集 団 内 のパ ワー闘 争 の犠 牲 とな りか ね な い。
集 団 に よ る意 思 決 定 の利 点 は,以 下 の点 を指 摘 で き る。 第1に,集 団 は, よ り完 全 な情 報 と知 識 を持 つ 可 能性 が 高 い こ とで あ る。 個 々 の人 材 が持 つ 各 種 の資 源 を利 用 す る こ とに よ り,意 思決 定 プ ロ セ ス に お い て よ り多 くの イ ン プ ッ トを もた らす こ とが 出来 る。
第2は,集 団 に よ る意 思 決 定 で は よ り多様 な見解 が 提 示 され るた め に,よ り多 くの 手 法 や 選 択 肢 の検 討 が 可能 とな る。
第3は,集 団 に よ る意 思 決 定 で は,解 決 策 が よ り多 くの人 に受 け入 れ られ る。 意 思 決 定 に参加 した集 団 メ ンバ ー は,決 定 事 項 を支持 し,他 の 人 々 に も そ れ を受 け入 れ る よ う促 す可 能 性 が高 い。
個 人 に よ る意 思 決 定 か 集 団 に よ る意 思 決 定 か は,状 況 と,ど れ を優 先 す る か の判 断 に よ るで あ ろ う。 個 人 に よ る意 思 決 定 は,そ の意 思 決 定 の 重 要性 が 比 較 的 低 く,そ の成 功 に部 下 の 協 力 が 必 要 で な い場 合 に適 合 的 で あ る。 また, 個 人 が 十 分 な情 報 を有 して お り,部 下 が 事 前 に相 談 を受 けて い な くて も結 果
に協 力 して くれ る場 合 に も,個 人 に よる意 思 決 定 が 適 合 的 で あ る。 結 局,個 人 と集 団 の い ず れ が意 思決 定 を行 うべ きか は,有 効 性 と効 率 に関 す る判 断 に
よ る。 有 効 性 の点 で は,集 団 に よ る意 思 決 定 の ほ うが優 れ て い る傾 向 にあ る。
集 団 は個 人 よ り多 くの代 替 的選 択 肢 を想 起 し,そ の 予 測 も よ り正 確 で,質 の 高 い 意 思 決 定 を下 す 可 能 性 が高 い。 しか し効 率 で は個人 が 集 団 に優 る。 集 団 は解 決 策 を見 いだ す た め に よ り多 くの時 間 と資 源 を費 や す た め,効 率 性 が 劣 る傾 向 に あ る。
異文化経営の制度分析序説37
組 織 行 動 学 者 ら は,集 団 に よ る意 思 決 定 の2つ の 副 産 物 に大 い に注 目 して き た 。 そ れ は,グ ル ー プ シ ン ク と グ ル ー プ シ フ ト と い う概 念 で あ る。 グ ル ー プ シ ン ク(groupthink)と は,集 団 の メ ン バ ー一た ち が 意 見 の 統 一 に夢 中 に な る あ ま り,コ ン セ ン サ ス を つ く らね ば な ら な い と い う規 範 に よ っ てaさ ま ざ ま な 行 動 の 選 択 肢 の 現 実 的 評 価 や,と っ ぴ な 意 見 や 少 数 派 の 意 見,不 人 気 な 意 見 の 十 分 な 表 現 が 妨 げ られ る 現 象 で あ る。 そ れ は,個 人 の 知 的 効 率 性,現 実 検 証,道 徳 的 判 断 が,集 団 の 圧 力 に よ っ て 衰 え て し ま う こ と を意 味 す る。
グ ル ー プ シ フ ト(groupshift)と は,メ ンバ ー の 見 解 が,議 論 の 前 か らす で に傾 い て い た 方 向 の よ り極 端 な 見 解 へ と,大 幅 に シ フ ト して い く現 象 で あ る。
集 団 の 決 定 は,そ の 集 団 の 議 論 の 過 程 で つ く り上 げ られ た 支 配 的 な意 思 決 定 規 範 を反 映 す る。 集 団 の 決 定 が よ り慎 重 な 方 向 に シ フ トす る か,よ り リ ス ク
の 高 い 方 向 に シ フ トす る か は,議 論 前 の 支 配 的 な 規 範 に よ る 。 ど ち らか と い う と,リ ス ク の 高 い 方 向 に シ フ トす る確 率 の ほ うが 高 い と さ れ て い る 。 す な わ ち,高 リス ク へ の シ フ トの 最 も妥 当 と思 わ れ る 理 由 は,集 団 で は 責 任 が 拡 散 さ れ る こ とで あ る。 集 団 に よ る 決 定 で は,個 々 の メ ンバ ー一は 集 団 の 最 終 的 選 択 に対 す る説 明 責 任 を 負 わ ず に す む 。 よ り大 き な リス ク を 冒 せ るの は,そ
の 決 定 が 失 敗 に終 わ っ て も,1人 の メ ンバ ー が 全 面 的 責 任 を 負 わ され る こ と は あ り得 な い か らで あ る 。
② 満足基 準 ・最適基準
18)
マ ー チ とサ イ モ ン は,人 間 の意 思 決 定 を満 足 基 準 と最 適 基 準 に分 類 した。
最 適 基 準 とは,一 定 の価 値 ・選 択 基 準 に照 ら して,い くつ か の代 替 的 選 択 肢 の 中 か ら,そ の結 果 を予 想 して比 較 し,選 択 す る意 思決 定 で あ る。 あ る代 替
19}
的 選 択 肢 が 最 適 で あ る とい う こ と は,次 の2つ の 条 件 の と き で あ る。 す な わ ち,(1)す べ て の 代 替 的 選 択 肢 を比 較 し う る諸 基 準 の 集 合 が 存 在 して お り,② 当 該 の 選 択 肢 が そ れ ら諸 基 準 か ら見 て 他 の す べ て の 代 替 的 選 択 肢 よ り良 い と い う こ とで あ る。
38国 際経営論集No.ユ51998
マ ー チ とサ イ モ ン は,人 間 の 多 くは満 足 基 準 で意 思 決 定 を行 って い る と仮 定 した。 す なわ ち,満 足基 準 とは,意 思 決定 プ ロセ スで仮 定 され た諸 代 替 案 の 中 か ら主観 的 に最 も優 れ た もの を選 択 す るの で はな く,一 定 の 満 足 で き る 価 値 ・選 択 基 準 を引 き,そ れ以 上 で あれ ば,そ の代 替 案 を選 択 す る とい う意 思 決 定 で あ る。 代 替 的 選 択 肢 が,満 足 で き る とい う こ と は,次 の2つ の条 件
の あ る と きで あ る。 す なわ ち,(1)満 足 で き る ぎ りぎ りの代 替 的 選 択 肢 を,は っ き りさせ る諸基 準 の 集 合 が 存 在 して お り,② 当該 選 択 肢 が ,こ れ らの諸 基 準 の すべ て に適 合 す るか,も し くは それ を越 え て い る とい うこ とで あ る。 現 実 に は,最 初 に満 足 基 準 を満 た す こ とを確 認 した代 替 案 を実 行 す る こ とに な る。 それ ゆ え,満 足 基 準 で の意 思 決 定 は代 替 案 を1つ ず つ検 討 す る とい う逐 次 的 な決 定 とな る。 あ る代 替 案 が 満 足 基 準 を満 た して い るか否 か ,満 た して いれ ば そ れ で決 定 で あ り,否 の と き,次 の代 替 案 の検 討 に入 る とい う,合 否 の判 定 の連 続 の 形 で な され る。 これ に対 して 最 大効 用 の場 合 に は,検 討 対 象 の代 替 案 す べ て を一 度 に検 討 しな けれ ば な らない。 その 意 味 で ,最 大 効 用 に よ る意 思 決 定 は,手 間 や 費 用,時 間 が か か る こ とにな る。 一 方 ,満 足 基 準 に よる意 思 決 定 は,逐 次 的 な意 思 決 定 の た め,手 間 と時 間 が か か らな い可能 性 が 高 い。 マ ー チ とサ イ モ ン は,人 間 の 意 思 決 定 の特 徴 に つ い て,以 下 の よ う
21)
に述 べ て い る。「た い て い の人 間 の意 思 決足 は,そ れ が個 人 的 な もの で あ って もまた組 織 内 の もの で あ っ て も,満 足 で き る代 替 的選 択 肢 を発 見 し,そ れ を 選 択 す る こ と と関 係 して お り,例 外 的 な場 合 に の み,最 適 の選 択 肢 の 発 見 と
その 選 択 に関 係 して い る。J
この 意 思 決 定 の 最 適 基 準 ・満 足 基 準 につ いて,国 際 比 較 の視 点 か らの研 究
ヨの
が あ る。 ア メ リカ等 の西 欧 諸 国 は,個 人 的意 思 決定 ・ トップ ダ ウ ンの意 思 決 定 の志 向が 強 い こ とか ら,満 足 基 準 に よ る意 思 決 定 の傾 向 が あ る。 これ に対 して,日 本 の場 合,集 団 に よ る意 思 決 定 の志 向 が 強 い こ とか ら,ど ち らか と い う と,限 られ た数 で は あ るが,い くつ か の代 替 案 を同時 に比 較 し,そ の な か で相 対 的 に最 も望 ま しい もの を選 択 す る傾 向 に あ る。 これ は不 完 全 で は あ
異文化経営の制度分析序説39
るが,最 大 基 準 で選 択 しよ う と して い る意 思 決 定 で あ る。
(3)プ ロ グラム 化 され た意 思 決 定 とプ ロ グラ ム化 され な い 意思 決 定
サ イ モ ン は,意 思決 定 につ い て,プ ロ グ ラム化 され た 意 思 決 定 とプ ロ グ ラ
23)
ム 化 さ れ な い 意 思 決 定 に 分 類 し て い る 。 プ ロ グ ラ ム 化 さ れ た 意 思 決 定 (programmeddecision)と は,環 境 か ら の 刺 激 が 加 え ら れ た 場 合,意 思 決 定 者 の 記 憶 の 中 か ら,特 定 の 選 択 肢 し か 想 起 さ れ ず,そ れ を意 思 決 定 す る場 合 で あ る。 あ る刺 激 と一 連 の 行 動 とが プ ロ グ ラ ム 化,一 体 化 さ れ て 人 間 に記 憶 さ れ て お り,そ の 刺 激 が 加 え られ た と き に は 自 動 的 に そ の行 動 が 想 起 さ れ, そ の 行 動 が 実 行 さ れ る こ と に な る。 こ の プ ロ グ ラ ム 化 され た 意 思 決 定 の 例 と し て,人 間 の 習 慣 的 行 動 や,工 場 内 の 流 れ 作 業 に よ る ふ だ ん の 作 業 な どが あ る。 企 業 の 中 の 流 れ 作 業 現 場 で 働 い て い る 人 は,作 業 手 順 や マ ニ ュ ア ル に従 っ て 決 め られ た 作 業 を して お り,刺 激 に対 す る選 択 肢 は た っ た1つ しか 想 起 さ れ な く,そ れ を行 動 す る で あ ろ う。 この プ ロ グ ラ ム 化 さ れ た 意 思 決 定 は, 人 間 の 生 活 の 中 で きわ め て 一 般 的 な も の で あ る。
プ ロ グ ラ ム 化 さ れ な い 意 思 決 定(non‑programmeddecision)と は,意 思 決 定 過 程 と同 様 の プ ロ セ ス で 行 わ れ る意 思 決 定 で あ る。 す な わ ち,環 境 か ら 何 らか の 刺 激 が あ っ た と き,代 替 的 選 択 肢 が 想 起 され,そ の 結 果 を 主 観 的 に 予 測 して,一 定 の 選 択 基 準 に よ っ て評 価 し,1つ の 行 動 を 選 択 す る と い う意 思 決 定 過 程 に 忠 実 に 従 う の で あ る。 こ の よ う な プ ロ グ ラ ム 化 さ れ な い 意 思 決 定 は,そ の 人 間 に と っ て 過 去 に経 験 の な い か つ 知 識 と して も学 ん だ こ との な い タ イ プ の 刺 激 が 環 境 か ら与 え られ た と き で あ る。 ま っ た く新 しい 状 況 に対 応 す る と き に は,プ ロ グ ラ ム 化 さ れ な い意 思 決 定 が 行 わ れ る こ と に な る 。 し
た が っ て,い わ ゆ る 革 新 的 な行 動 は,プ ロ グ ラ ム 化 され た 意 思 決 定 か ら は 生 まれ ず,こ の プ ロ グ ラ ム 化 さ れ な い 意 思 決 定 に よ っ て の み 生 ま れ る の で あ る。
プ ロ グ ラ ム 化 さ れ た 意 思 決 定 を す れ ば,す べ て 革 新(innovation)と な る わ け で は な い が,革 新 的 な 行 動 が 生 ま れ る 可 能 性 は あ る 。 プ ロ グ ラ ム 化 さ れ た 意
40国 際経営論集No.151998
思 決 定 か らは革 新 は生 じな いの で あ る。 プ ロ グ ラ ム化 され た意 思 決 定 とプ ロ グ ラ ム化 され な い意 思 決 定 と両 方行 う立 場 に同 一 の人 間 が立 った とき,一 般 に グ レ シ ャム の法 則 が はた ら き,容 易 にで きる プ ロ グ ラ ム化 され た意 思決 定 ばか りを行 い,プ ログ ラ ム化 され な い意 思 決 定 は後 回 しに な る傾 向 が強 い と いわ れ る。 これ が,革 新 が 容 易 に は起 こ りえな い1つ の 理 由 とな っ て い る。
以 上 の よ うな,サ イ モ ン理 論 に よ る意 思 決 定 論 か らr前 述 した技 能 形 成 の 国 際比 較 に関 して,新 た な理 論 が構 築 で き よ う。 技 能 を形 成 す る作 業 に つ い て,ヂ ふ だ ん の作 業 」 と 「ふ だ ん と違 った作 業 」に分 類 した。 この ふ だ ん の作 業 とは,規 格 化 され,繰 り返 しの 多 い作 業 で あ る こ とか ら,サ イ モ ンの 言 う プ ロ グ ラム化 され た意 思決 定 を主 とす る作 業 で あ ろ う。 しか し,作 業 現 場 で は,過 去 に経 験 の な い か つ知qと して も学 んだ こ との な い タ イ プ の刺 激 が環 境 か ら与 え られ る ときが あ る。 例 え ば,工 場 内 の 何 らか の トラブ ル に対 す る 対 処 の よ うな異 常 へ の対 応 の一 部 は,ま った く新 しい状 況 に対 応 す る仕 事 と しての,ふ だ ん と違 っ た作 業 へ の対 処 で あ る。 ま った く新 しい状 況 に対 応 す る と きに は,プ ロ グ ラ ム化 され な い意 思 決 定 が行 わ れ る こ とに な る。 日本 の 場 合,異 常 へ の対 応 は,生 産 労 働 者 が 自 ら行 う統 一 方式 が一 般 的 で あ り,ア
メ リカの場 合 は,異 常 へ の対 応 は技 術 者 な ど別 の グ ル ー プ に分 け る とい う分 離 方 式 が一 般 的 で あ る。 この こ とか ら,日 本 で は作 業 労 働 者 か ら革新 的 な行 動 が生 ず る可能 性 が 高 い こ とに な る。 す なわ ち,プ ロ グ ラム化 され た意 思 決 定 か ら は革 新 は生 まれ ず,こ の プ ロ グ ラ ム化 され な い意 思 決 定 に よ って の み 革 新 は生 まれ るの で あ るか ら,日 本 企 業 の作 業 者 は,現 場 で 異 常 へ の対 応 と い うプ ログ ラム化 され な い意 思 決 定 を現 場 で 行 っ て い る こ とに な り,革 新 的 な行 動 が 生 まれ る可 能 性 が 高 い こ とに な る。 一 方,ア メ リカ の現 場 作 業 者 は, 異 常 へ の 対 処 等 が 行 わ れ ず,多 くが プ ロ グ ラム 化 され た 意 思 決 定 に よ る作 業 の た め,現 場 作 業 者 か ら革 新 は生 じ に く くな るで あ ろ う。 ア メ リカで は,生 産 現場 の 作 業 者 か らで は な く,技 術 者 な ど他 の グル ー プか らの革 新 が 生 まれ
る可能 性 が 高 い こ とに な る。 この説 明 は,日 本 は,生 産 現場 の 改 善 に よ るイ 異文化経営の制度分析序説41
ン ク リ メ ン タ ル ・イ ノベ ー シ ョ ン が 強 み でsア メ リ カ は,独 創 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン が 強 み で あ る とい う考 え 方 と も一 致 す る 。
(4)リ ス ク と不確 実性 ・あ い まい さ
意 思 決 定論 にお い て,リ ス ク,不 確 実 性 ・あ い まい さ は重 要 な鍵 概 念 で あ る。
意 思 決 定 は,な ん らか の不 確 実 性 を含 ん で い るた め,不 確 実性 下 で の意 思 決 定 に お い て,リ ス クに対 す る態 度 が意 思 決 定 者 に とって重 要 で あ る。 意 思 決 定 論 で は,リ ス ク を出来 るだ け避 け よ う とす る意 思決 定 が リス ク回避 的 で あ り,リ ス ク回避 度 が ゼ ロの場 合 が リス ク中立 的 で あ る。
心 理 学 者 は,多 くの実 証 研 究 に よ り,人 間 の リス ク に対 す る程 度 につ いて
24)
研 究 して い る。 例 え ば,女 性,年 長 者,既 婚 者 は そ うで な い人 び と と比 べ て リス ク を回避 す る傾 向 が あ る こ と,リ スク回避 は職 業 を選択 す る際 に も影 響 を与 え る傾 向 に あ る こ とを な どを指 摘 して い る研 究 が あ る。 す なわ ち,歩 合 給 の セ ー ル ス マ ンが 平均 よ り も リス ク回 避 的 で なか っ た り,ま た 公務 員 や 銀 行 員 が 平均 よ り も リス ク回避 的 で あ る こ とが 発 見 され た。 ア メ リカ とカ ナ ダ の経 営 者 の リス ク態 度 につ い て調 べ た 研 究 で は,ト ップ経 営 者 は下 位 の管 理 者 層 よ りも,ま た 中 小 企 業 の経 営 者 は大 企 業 の経 営 者 よ りも,そ して大 学 院 を出 た 経 営 者 は大 卒 や 高 卒 の経 営 者 よ りも,進 ん で リス クに挑 戦 す る傾 向 に あ る こ とを指 摘 して い る。 た だ,こ の研 究 で は,リ ス ク回避 と国 民 性 の関 係 を系 統 的 に説 明 す る証 拠 は見 つ け られ な か っ た。
不 確 実 性,あ い まい さ に対 す る認 知 とは,あ い まい さ に対 す る寛 容 さの程 度 で あ る。 人 に よっ て は,情 報 を組 み立 て て,あ い まい さ を最 小 限 に した い とい う欲 求 が 強 い人 が い る。 一 方,あ い まい さ を極 力 避 けた い とい う欲 求 の 強 い人 が い る。
ホ フス テ ッ ドは,こ の不 確 実性 ・あ い まい性 に対 す る許 容 が,国 民 文化 に
25)
よ り相 違 す る と主張 して い る。 彼 は,文 化 と組 織 の 実証 研 究 か ら,不 確 実性
42国 際 経 営 論 集No.151998
の 回避 が,権 力格 差,個 人 主 義 一 集 団主 義,男 性 ら しさ 一一女性 ら しさ の次 元 に続 い て見 い出 され た4番 目の 次 元 で あ る とす る。 不 確 実性 に対 処 す る方 法 は,ど の 国 にお い て も人 間 を取 り巻 くあ らゆ る制 度 の本 質 的 な要 素 にな って い る。 人 間 社 会 は,こ の不 安 を和 らげ る方 法 を生 み出 して きた。 これ らの 方 法 は,科 学 技術,法 律,宗 教 とい った領 域 に含 まれ て い る。 また,不 確 実 で あ る とい う こ とは,本 質 的 に主 観 的 な経 験 で あ り感 情 で あ る。 しか し,不 確 実 で あ る とい う感 情 は,個 人 的 な もの ばか りで は な い。そ れ は社 会 の 他 の 人 々 と,あ る程 度 共 有 され て お り,不 確 実 で あ る とい う感 情 も獲 得 され学 習 され る もの で あ る。 そ の よ うな感 情 お よび それ に対 処 す る方 法 は,社 会 の文 化 遺 産 の 一一部 で あ っ て,家 族,学 校,国 家 とい った基 本 的 な制 度 を通 して受 け継 が れ 強化 され て い く。
不 確 実 で あ る とい う感情 はsそ れ ぞれ の社 会 の メ ンバ ー が 共通 して抱 い て る価 値 観 に反 映 され て い る。 それ ぞれ の 社 会 で 集 合 的 に保 持 され て い る価 値 観 に応 じて,な ん らか の集 合 的 な行 動 パ ター ンが 生 まれ る こ とに な るが,そ の よ うな行 動 パ タ ー ンは他 の社 会 の メ ンバ ー に は奇 異 で 理 解 しが た い もの に 思 え るか も しれ な い。 彼 は以 上 の よ う に,不 確 実性 に関 して説 明 して い る。
さ らに,ホ フ ス テ ッ ドは,不 確 実 性 へ の 回避 と組 織 に関 して以 下 の よ うな 仮 説 を提 示 して い る。 不確 実性 回 避 の強 い社 会 で は,雇 い 主 と社 員 の権 利 や 義 務 が 多 くの法 律 や規 則 に よって 定 め られ て い る。 この社 会 で は,心 情 的 に 法 や 規 則 が 必 要 とされ て い るの で,規 則 を定 め た り,規 則 を遵 守 しよ う とす る行 動 が 取 られ る。 一 方,不 確 実性 の 回避 が非 常 に弱 い国 は,フ ォー マ ル な 規 則 が 弱 い社 会 で あ る。 不 確 実 性 回避 が組 織 に どの よ うな影響 を与 える か は, 個 人 主 義 一集 団 主義 の 文 化 の程 度 に よ って も左 右 され る とす る。 不 確 実性 の 回避iが強 く個 人 主義 的 な国 で は,規 則 は明 瞭 で成 文 化 され て い る(低 コ ンテ ク ス トの コ ミュニ ケ ー シ ョン)が,不 確 実 性 の 回避 が強 く集 団 主義 的 な国 で は,規 則 は暗 黙 の 了解 で あ り伝 統 に根 ざ して い る(高 コ ンテ クス トの コ ミュ ニ ケー シ ョ ン)と して い る。 ホ フス テ ッ ドは,後 者 の例 として 日本 を挙 げて
異文化経営の制度分析序説43
い る 。
(5)時 間
時 間 の視 点 か ら,意 思 決 定 を と らえ る こ と もで き る。
第1に,文 化 や人 間 の価 値 観 が,未 来 志 向 か 過 去 志 向 か に よ り,意 思 決 定 のパ ター ンが 相 違 す る可 能 性 が あ る。 例 え ば,ア メ リカ の よ うな未 来 志 向的
26)
文 化 で は,過 去 に とらわ れ な い よ り新 しい代 替 案 が生 み 出せ る傾 向 が あ る。
イ ギ リス の よ うな,か な り保 守 的 で,過 去志 向 の 文化 で は,代 替 案 の基 礎 に な る歴 史 的パ ター ン を探 求 す る傾 向 が あ る。 未来 志 向 か過 去 志 向 か とい う文 化 ・価 値 観 が,想 起 され る代 替 的選 択 肢 に対 して 影 響 を与 え るの で あ る。
この よ うな,文 化 ・価 値 観 の み な らず,制 度 も,意 思 決 定 の未 来 志 向 ・過 去 志 向 の あ り方 に大 き く関 係 す る で あ ろ う。 例 えば,日 本 企 業 の 多 くが採 用 して い る,い わ ゆ る年 功 を重 視 した賃 金 体 系 は,意 思 決 定 の未 来 志 向 と適 合 的 で あ る。
第2は,意 思 決 定 の 際 に考 慮 す る時 間 の 長 さで あ る。 どの よ うな タ イム ス パ ン を持 って,意 思 決 定 を行 って い るか とい う点 で あ る。例 え ば,企 業 にお
け る戦 略 的 意 思 決 定 にお い て,ど の程 度 の時 間 で考 えて い る のか 。2〜3年 とい う短 期 的 視 点 で戦 略 的 意 思 決 定 を行 って い るの か,そ れ とも10年 程 度 と い う長 期 的 視 点 に立 っ て戦 略 的 意 思 決 定 を行 うか に よ って,意 思 決 定 の 内容 は変 わ る可 能 性 が あ る。 長 い将 来 の事 業 成 果 を最 大 限 にす るた め に,現 在, そ の事 業 の可 能 性 に投 資 し,短 期 的 に利 益 を最大 化 しない とい う意 思 決定 も 当然 あ り うるで あ ろ う。人 間 の意 思 決 定 にお いて も,将 来 の 楽 しみ を最 大 限
にす るた め に,短 期 的 に は我慢 して,大 き な喜 び を後 回 しにす る とい う意 思 決 定 もあ るで あ ろ う。
この 意 思 決 定 の際 の考 慮 す る時 間 の 長 さ は,文 化 ・価 値 観 の み な らず,制 度 の あ り方 に大 き く関 係 す るで あ ろ う。 ア メ リカ の企 業 の経 営 者 は,比 較 的 短 期 的 視 点 で経 営 を行 う との指 摘 が あ るが,こ れ は制 度 の あ り方 が1つ の 原
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因 で あ る。 す な わ ち,前 述 した よ うに,ア メ リカの 大 企 業 で は,株 主 の力 が 相 対 的 に強 く,企 業 経 営 にお い て も株 主 の利 益 を最 大 化 す る行 動 を と りや す く,年 金基 金 や 投 資 信 託 な どの機 関投 資 家 に よ る株 式保 有 割合 が 高 く,こ れ らの機 関 投 資 家 は,そ の ポ ー トフ ォ リオ か らの 短期 的 な収 益 を最 大 化 す る と い う行 動 を志 向 す る傾 向が 強 い。 以 上 の よ うな,制 度 的 要 因 か ら,ア メ リカ の経 営 は,ど ち らか とい う と短 期 的視 点 に よ り意 思 決 定 を行 いや す い とい う 傾 向が 生 じて い るの で あ る。 これ に対 して,日 本 の大 企 業 で は,現 在 変 化 し つ つ は あ るが,グ ル ー プの 企 業 お よび銀 行 や保 険 会 社 とい った 金 融機 関 が 長 期 的 な取 引 関 係 に あ る他 の企 業 の株 式 を保 有 す る株 式 の相 互 持 ち合 いが か な り存 在 して お り,こ の法 人 所有 の形 態 は,ど ち らか とい う と長 期 的視 点 に立 った投 資 で あ り,安 定株 主 とい う傾 向が あ る。 ま、た,日 本 の経 営 者 は,内 部 昇 進 に よ る経 営 者 が 多 く,経 営 者 の業 績 評 価 は,比 較 的 長 期 的 視 点 で判 断 さ
れ る。 以 上 の よ うな,制 度 的 要 因 か ら,日 本 の経 営 は,ど ち らか とい う と長 期 的視 点 に よ り意 思 決 定 を行 いや す い とい う傾 向 が生 じて い るの で あ る。
そ の他,こ の意 思 決 定 の時 間 に対 す る考 慮 で,好 例 と思 わ れ るのが,ア ジ ア の い わ ゆ る華 僑 ・華 人 資本 家 の 経 営 行 動 で あ る。 華 僑 ・華 人 資 本 家 は,投 資 の 回収 を短 期 的 に志 向 す る傾 向が 強 い。 い わ ゆ る商 業 資本 家 的 と呼 ばれ る 経 営 行 動 が,現 在 で も依 然 と して 多 く見 られ る。 ア ジ ア華 僑 ・華 人 資 本 家 は,
5年 程 度 で事 業 投 資 を回収 し,追 加 投 資 を た め ら う とい う行 動 が 多 く見 られ る。 華 僑 ・華 人 資 本 家 は,戦 略 的意 思 決 定 の 時 間 的 スパ ンが,日 本 や 他 の西 欧諸 国 の経 営 者 に比 較 す る と短 い の で は な いか と考 え られ る。
また,社 会 主義 国 の 中 国 や ベ トナ ム で は,外 資 企 業 に対 す る合 弁期 限 が 設 定 され て い る。 これ は,制 度 と して の企 業 経 営 存 続 の期 限 へ の規 定 で あ り,
この合 弁 期 限 の視 点 か ら戦 略 的意 思 決 定 を行 わ な け れ ば な らな い こ とに な る。
中 国 や ベ トナ ム の 外 資 系 企 業 は,合 弁 期 限 とい う制 度 の制 約 か ら,比 較 的 短 期 的 視 点 で の戦 略 的決 定 を行 わ ざ る を得 ない ので あ る。
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⑥ モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け
組 織 内 の 人 間 の 意 思 決 定 を 考 察 す る 際,モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け の側 面 も重 要 で あ る。 組 織 行 動 論 に お い て,代 表 的 な モ チ ベ0シ ョ ン ・動 機 づ け理 論 と し て,一 体 化 理 論,期 待 理 論,公 平 理 論 の3つ が あ る。
ま ず,モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け の代 表 的 理 論 と し て 一 体 化 理 論(identifi ‑ cationtheory)を と りあ げ る。 一 体 化 と は,組 織 の メ ンバ ー が,あ る対 象 に 忠 誠 心 を 抱 い て い る状 況 の こ と を い う。 サ イ モ ン は,一 体 化 の 主 要 な対 象 と して以 下 の4つ を挙 げて い る。「す なわ ち,① 当該 組 織 に とっ て外 在 的 な組 織
(す な わ ち組 織 外 へ の一 体 化)i② 当該 組 織 そ れ 自体(組 織 へ の 一体 化) ,③ 職 務 に含 まれ て い る仕事 で の 活 動(課 業 へ の一 体 化) ,お よ び④ 当 該組 織 内 の 下 位 集 団(下 位 集 団 へ の一 体 化)で あ る。 さ ら に,サ イ モ ン は,一 体 化 の メ カ ニ ズム に つ い て,以 下 の 仮 説 を提 示 して い る。
① 知 覚 され た集 団 の威 信 が 高 けれ ば高 い ほ ど,個 人 が その 集 団 に一体 化 す る傾 向 は よ り強 くな り,そ の逆 の関 係 も成 り立 つ。
② 集 団 の メ ンバ ー の 問 で,目 的 が 共 有 され て い る と知 覚 され て い る程 度 が高 けれ ば高 い ほ ど,個 人 が その集 団 に一 体 化 す る傾 向 が よ り強 くな り , また そ の逆 の 関係 も成 り立 つ。
③ 個 人 と他 の 集 団 メ ンバ ー との 間 で の相 互 作 用 の頻 度 が 大 で あれ ば大 で あ るほ ど,個 人 が そ の集 団 に一 体 化 す る傾 向 が よ り強 くな り,ま た そ の 逆 の 関係 も成 り立 っ 。
④ 集 団 の 中 で充 足 され る個 人 の欲 求 の数 が 多 けれ ば多 い ほ ど,個 人 が そ の 集 団 に一体 化 す る傾 向 が よ り強 くな り,ま た そ の逆 の関 係 も成 り立 つ。
⑤ 個 人 と他 の集 団 メ ンバ ー との 間 で の競 争 の量 が 少 な けれ ば少 な い ほ ど, 個 人 が その 集 団 に一 体 化 す る傾 向が よ り強 くな り,ま た逆 の関 係 も成 り 立 っ。
第2の モ チベ ー シ ョン ・動 機 づ け理 論 として,期 待 理 論 が あ る。 期 待 理 論 (expectancytheory)で は,あ る行 為 レベ ル に対 す るモ チベ ー シ ョン は
,①
46国 際 経 営 論 集No,151998
そ の 行 為 レ ベ ル が 達 成 で き る と い う 主 観 的 確 率 と し て の 「期 待(expec ‑ tancy)」 と,② そ の 行 為 レ ベ ル を 達 成 す る こ と の 魅 力 度 と し て の 「誘 意 性
(valence)」 との 関 数 で あ る と仮 定 す る。 し た が っ て,あ る 行 為 レ ベ ル に 関 し て,達 成 の 確 信 を強 く持 て ば持 つ ほ ど,ま た そ の 行 為 レベ ル の 達 成 に魅 力 を 感 じ高 い 価 値 を お け ば お くほ ど,そ の 行 為 レベ ル 達 成 に 強 く動 機 づ け ら れ る
こ と に な る 。
第3の モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け 理 論 と し て,公 平 理 論 が あ る。 公 平 理 論 (equitytheory)で は,自 分 の 置 か れ た 状 況 が 他 者 の 同 様 な 状 況 と比 べ て 「公 平 」 か ど うか が,満 足 ・不 満 足 の 規 定 要 因 と な る の で あ る。 公 平 理 論 で は, 各 人 が 置 か れ た イ ン プ ッ ト し て の状 況 とア ウ トプ ッ ト と して の 結 果 を 考 え る
。 具 体 的 な イ ン プ ッ ト と して は,① 性 ・年 齢 ・勤 続 年 数 ・学 歴 ・経 験 な どの 個 人 属 性,② 努 力 ・工 夫 ・創 造 性 な どの 個 人 の 行 動,③ 仕 事 の 難 し さ,責 任 の 重 さ ・厳 し さ,な どが 考 え られ る 。 一 方,ア ウ トプ ッ トは
,給 与 ・ボ ー ナ ス.
昇 進 そ の 他 の 待 遇 上 の 諸 条 件,職 務 条 件,承 認 や 協 力 な どの 人 間 関 係
,な ど が 考 え られ る。 公 平 理 論 は,自 分 に と っ て の イ ン プ ッ ト と ア ウ トプ ッ トの 割 合(例 え ば 努 力 に 対 す る給 与 の 割 合)が,比 較 上 の 他 者 の 同 様 な 割 合 とバ ラ
ン ス して い る,と 認 知 さ れ て い る状 態 を 意 味 し て い る
。 そ し て,こ の よ うな 認 知 が 成 立 し て い る と き,そ の 本 人 は 結 果 の 配 分 が 公 平 に な され て い る と感 じ,結 果 と し て 満 足 感 を経 験 す る。 しか し,イ ン プ ッ トと ア ウ トプ ッ トの 比 率 が 不 均 衡 で,か つ 自 分 に と っ て 不 利 とな っ て い る と き は,不 公 平 と い う感
じ を 持 つ こ と に な り,そ の 結 果 と し て 不 満 足 感 に 陥 る。
以 上 の よ う な3つ の モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け理 論 に つ い て,そ の 異 文 化 環 境 で の 妥 当 性 に 関 し て 多 くの 実 証 研 究 が 行 わ れ て い る。
一 体 化 理 論 に つ い て は
,日 本 企 業 の 従 業 員 の モ チ ベ ー シ ョ ン ・動 機 づ け の メ カ ニ ズ ム を 考 察 す る際,有 効 な説 で あ る と さ れ て い る
。 す な わ ち,日 本 企 業 の 従 業 員 の 会 社 に対 す る愛 社 精 神 の よ う な 忠 誠 心 は,一 体 化 の 理 論 に よ り 説 明 で き る。 日本 の 大 企 業 で は 長 期 雇 用 慣 行 がm般 的 で あ り,従 業 員 の 相 互
異文化経営の制度分析序説47
交 流 が盛 ん で あ る。 また,会 社 ・職 場 内 の情 報 共有 等 に よ り,企 業 の 目的 が 共 有 され て い る と知 覚 され て い る程 度 が 高 い。 さ らに,同 期 入 社 組 の従 業 員 の競 争 は,最 初 は な るべ く差 をつ けず,長 期 的視 点 で競 争 が行 われ て い る。
以 上 の よ うな 日本 企 業 の特 徴 は,組 織 へ の一 体 化 を強 め る メ カニ ズム に働 い た の で あ る。
期 待 理 論 につ い て は,ア メ リカ人 の個 人 主 義 重 視 の文 化 に影 響 され た理 論 で あ り,個 人 業 績 を重 視 し,そ の遂 行 に高 い 関心 を持 つ,合 理 的 で個 人 的 な
価 値 観 を持 つ 人 間 が 仮 定 さ れ て い る 理 論 で あ る,と す る意 見 が あ る。 た だ, 期 待 理 論 で は,従 業 員 を 動 機 づ け る報 酬 の タ イ プ を特 定 化 し て い な い の で, そ の 意 味 で は 普 遍 的 で あ る とい え る。 報 酬 の タ イ プ の 選 好 は,文 化 に よ り相 違 す る とす る 実 証 研 究 が 多 い 。 古 典 的 な研 究 で は,シ ロ タ(Sirota)と グ リー一
をめ
ン ウ ッ ド(Greenwood)の 研 究 が あ る。 こ の 研 究 で,文 化 間 で 大 き く異 な っ て い た も の に,次 の よ う な も の が あ っ た 。
① 英 語 圏 の 国 で は,個 人 の 業 績 が か な り重 視 さ れ,安 全 欲 求 が 低 い 。
② フ ラ ン ス語 圏 の 国 は,英 語 圏 の 国 と類 似 し て い るが,安 全 が 非 常 に 重 視 さ れ,仕 事 へ の 挑 戦 が そ れ ほ ど重 視 さ れ て い な い 。
③ 北 欧 の 国 々 は,「 立 身 出 世 」や 仕 事 の 報 酬 目標 に は そ れ ほ ど関 心 を示 さ な い が,仕 事 の 達 成 感 を よ り重 視 して い た 。 さ ら に,彼 ら は 人 間 に は か な り関 心 を 示 した が,組 織 に は そ れ ほ ど関 心 を 示 さ な か っ た(彼 ら に と っ て 仕 事 が 個 人 生 活 を妨 害 しな い こ とが 重 要 で あ る)。
④ ラ テ ン 系 の 国 々 は,個 人 の 業 績 を そ れ ほ ど重 視 して い な い 。 特 に南 欧 の 人 々 は 仕 事 の 安 全 性 を 最 も重 視 し て い た 。 ラ テ ン系 の 国 々 の 両 グ ル ー
プ は,付 加 給 付 を重 視 し て い た 。
⑤ ド イ ツ は,安 全 性 と付 加 給 付,と り わ け 「出 世 」 を 重 視 し て い た 。
⑥ 日本 は,昇 進 を重 視 して い な い が,挑 戦 が2番 目 に 重 視 さ れ る 目標 で あ る 。 しか も 自律 性 が 最 も重 視 され ず,良 好 な 労 働 条 件 と親 し み や す い 労 働 環 境 が 非 常 に 重 視 さ れ て い た 。
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公 平 理 論 につ い て は,賃 金 や 労働 条 件 とい っ た他 人 や他 の集 団 と客観 的 に 比 較 しや す い賃 金 や労 働 条 件 とい った報 酬 の動 機 づ け メカ ニ ズ ム を解 明 す る 理 論 と して は,極 め て有 効 な説 で あ ろ う。 た だ,人 間 の 動機 づ け は,こ の よ うな報 酬 の他 との比 較 だ けで は な い メ カ ニ ズ ム が存 在 す るの で(例 え ば一 体 化,愛 社 精 神 の感 情 や人 間 関係 の 満足,仕 事 へ の誇 り等 の感 情) ,そ の点 に限 界 が あ ろ う。 人 間 の満 足 ・不 満 足 は,他 人 や他 の 集 団 との比 較 に よ って もた
らせ れ る とい う人 間 観 は,人 間 の あ る側 面 の み 妥 当 す る考 え方 で あ ろ う。
第6節 オ ー ス トラ リア の 企 業 経 営 の ケ ー ス
企 業 環 境 と して の オ ー ス トラ リア の 社 会 と文 化 に つ い て み て み よ う。 1788年,流 刑 人 を含 む キ ャ プ テ ン ・ア ー サ ー ・フ ィ リ ッ プ ス の 指 揮 す る移 民 が シ ドニ ー ・コ ー プ に上 陸 し,オ ー ス トラ リ ア の 歴 史 が 始 ま っ た 。 オ ー ス トラ リア の 歴 史 は,ま だ200年 あ ま り しか た っ て い な い 。 オ ー ス トラ リア は, イ ギ リ ス の 植 民 地 と して 建 設 され た とい う事 情 か ら,オ ー ス トラ リア の 社 会 . 文 化 に は イ ギ リス の 影 響 が 多 く見 られ る 。 企 業 経 営 に お い て も,労 使 関 係 な
ど は イ ギ リス の 影 響 が 強 く見 ら れ る。
オ ー ス トラ リア は,人 口 が 約1700万 人 と少 な く,国 土 面 積 は 日本 の21倍 と 広 い 。 企 業 経 営 か ら見 る と,人 口 が 少 な い こ とは 国 内 市 場 が 小 さ い こ と を 意 味 す る し,国 土 面 積 が 広 く人 口 密 度 が 少 な い こ と は輸 送 コ ス トや 販 売 コ ス ト が 高 い こ と を意 味 す る。 こ の 広 い 国 土 と人 口 の 少 な さ は,オ ー ス トラ リア の 企 業 経 営 に と っ て 大 き な 制 約 とな っ て い る。
オ ー ス トラ リア 社 会 を特 徴 づ け る 重 要 な 側 面 は,世 界 各 国 か らの 移 民 の 流 入 に 伴 う急 速 な 多 民 族 社 会 化 で あ る。 オ ー ス トラ リア は ,歴 史 的 に み る と移 民 に よ っ て 成 立 した 国 で あ る が,第2次 世 界 大 戦 前 まで は ヨ ー ロ ッパ か ら の 移 民 が 中 心 で あ っ た 。 しか し,大 戦 後 ヨ ー1コ ッパ 以 外 の 国,特 に ア ジ ア 諸 国 か ら の 移 民 が 急 速 に増 加 した 。 現 在,オ ー ス トラ リア 人 口 の 約20%以 上 が 海
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