九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
中性子照射した熱鋭敏化ステンレス鋼の力学的特性 に関する研究
秀, 耕一郎
https://doi.org/10.11501/3151017
出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
つ
中性子照射した熱鋭敏化ステンVス鋼の 力学的特性に関する研究
秀 耕 一 郎
nU今,bウ釘勺ん司コ司コミJA『
nyti--2Ititi--titi
次
第1章 緒論
1.1 本研究の背景
1.2 本研究の円的と意義 1.3 本研究の構成と内容 第2章 試験方法
2.1 供試材
2.2 中性照射
2.3 照射後試験
2.3.1 ミク口組織観察
2.3.2 粒界腐食試験
2.3.3 引張試験
2.3.4 ミクロ硬さ試験
2.3.5 照射後焼鈍試験
2.3.6 SCC試験
唱1/O勺/
第3章 熱鋭敏化材のミク口組織に及ぼす中性子照射の影響
3.1 はじめに 16
3.2 金属組織への影響 17 3.3 結晶粒界近傍の元素分布への影響 18 3.4 粒界腐食特性への影響 24
3.5 まとめ 29
第4章 熱鋭敏化材の力学的特性に 及ぼす中性子照射の影響
4.1 はじめに 30
4.2 引張特性への影響 30 4.3 ミクロ硬さへの影響 37 4.4 照射後焼鈍硬化への影響 40
4.5 まとめ 44
第5章 熱鋭敏化材のSCC特性に及ぼす中性子照射の影響
5.1 はじめに 45
5.2 中性子照射量の影響 45 5.3 溶存酸素濃度の影響 53 5.4 SCC挙動の供試材聞の相違に 関する検討 56 5.5 中性子照射した熱鋭敏化材のSCC発生機構 57
5.6 まとめ 60
第6章 総括 61
参考文献 64
謝辞 69
論文中略号一覧
AES オージェ分光分析器 Auger Electron Spectrometry ATR 材料試験炉(米国) Advanced Test Reactor BWR 沸騰水型原子炉 Boiling Water Reactor DO 溶存酸素(溶存酸素濃度) Dissolved Oxygen
EF 破断伸び Elongation to Failure
EPR 電気化学的再活性化率 Eelectrochemical Potentiokinetic Reactivation Ratio
FE-TEM 電界放出型透過電子顕微鏡Field Emission type TEM GB
GC IASCC IGC J恥1TR MS
結品粒界 結品粒内
照射誘起応力腐食割れ 粒界割れ
材料試験炉 最大応力(水中時) PWR 加圧水型原子'炉 SA ?容体化材
SCC 応力腐食割れ
sens. 熱鋭敏化材
SSRT (test)低歪速度引張(試験)
TGC 粒内割れ
UTS 最大引張応力
UE 均一伸び
YS 降伏応力
%IGC 粒界割れ破面求
vd rl a
d - n u u n o e B C n n a a
ra ra
G G
Irradiated Assisted Stress Corrosion Cracking Intergranular Cracking
J apan Material Testing Reactor Maximum Stress
Pressurized Water reactor Solution Annealed Material Stress Corrosion Cracking Thermally-sensitized Material Slow Strain Rate Tensile (Test) Transgranular Cracking
Ultimate Tensile Strength Uniform Elongation Yield Stress
Percent of Intergranular Cracking
- 11・
第1章 緒論
1.1 研究の背景
原子炉の炉内構造材料としては耐食性に優れているためオーステナイト系ステン レス鋼が呈に用いられている。 しかし1960年代、 米国のオーステナイト系ステンレ ス鋼の原子炉配管のj容疑熱影響部において、 応力腐食割れ(SCC : Stress COITosÎon Cracking)が発生し、 この原因および対策を明らかにする研究が数多く実施された [1, 2] 0 その結果SCCは材料因子、 応力因子、 環境因子の3つが重畳した場合に発生 することが判明した。 すなわち炭素濃度の高いステンレス鋼(高炭素ステンレス 鋼)の溶接入熱時のCr炭化物の粒界析出によるCr欠乏層の形成、 溶接残留応力の存
在、 高濃度の浴存酸素による酸化性の環境と高温高圧水の環境がステンレス鋼の SCC発生には必須であることが判明した。 これに対する抑制策が研究された結果、
材料面からは低炭素ステンレス鋼の採用、 応力面からは溶接時の温度履歴を制御す る溶接方法の開発、 環境面からは溶存酸素濃度の低下等を基本とした水環境の改良 が実施され、 現在では原r-炉配管のSCCは解決された過去の問題となっている。
これに対して近年、 米同やヨーロッパなどの軽水炉においてステンレス製の燃料 被覆管や中性子源ホルダ一、 ボルトなどにSCCの事例がみつかり報告された[3]0 こ の割れは本来SCC感受性を有しない溶体化処理を施こされたステンレス鋼が、 中性
一照射に曝されるうちにSCC感受性を生じるもので、 照射誘起応力腐食割れ(以下 IASCC : Irradiation Assisted Stress Corrosion Cracking)と呼ばれている[4]0 これらの機 器は炉内で中性子照射を受ける位置、 すなわち燃料の領域もしくはそれに非常に近 い位:置である。
凶1.1.1に沸騰水型原子炉(以下BWR : Boiling Water Reactor)と加圧水型原子炉 (以下PWR: Pressurized Water Reactor)の一般的な構造を示す。
また最近同内外でBWRの炉内構造物であるシュラウドの溶接部近傍の割れ発生事 例が報告された[5,6]0 シュラウドは図1.1.2に示すように原子炉圧力容器内部に取り 付aけられた円筒状のステンレス製構造物(隔壁)で、 溶接により組立られている。
構造としては内部に燃料集合体を上下で支えるための上部格子板と炉心支持板が組 み込まれ、 ジェットポンプによりシュラウドの下部から炉心部に導かれた冷却水の j走路を確保するしきり板の役同も果たしている。 大きさの1例としては高さ約7m、
直径約4.5m、 電量34トンの大型の炉内構造物である。 材質は初期に作製されたもの は高炭ぷType304ステンレス鋼であり、 溶接により熱鋭敏化する可能性を有してい る。 今Inlシュラウドに見つかった割れは溶接線の近傍にのみ存在し、 配管の溶接部 近傍に発生したSCCと同じ形態であることから、 溶接熱影響部に発生したSCCと判
断された[5]0
上飢冷却住ホノスル
、、 〆
,
ヲ�r4%,合体
今ド
制御'.7ラスタ I!J.HII7 .rプF
E子炉お�上$�;
図1.1.1 軽水炉の構造
刈1.1.2 BWRの循環系統図とシュラウド
-2 -
断j御1事7ラスタ案内管 制御怜7ラスタ�動他 次冷却H出口)�J"
御1事7ラスタ
!*パット
.L・パy71レ fγ71レ支li仮
炉内計義周シンプル
これまで高炭素ステンレス鋼の溶接熱影響部は本来SCC感受性を有していること もあり、 特に中性子照射を意識した研究は特に実施されてこなかった。 わずかに高 久[7]が熱鋭敏化ステンレス鋼を中性子照射すると感受性が増加する可能性を指摘し たのみであった。 しかし実際に軽水炉においてSCC発生事例が認められたことか ら、 その対策の研究が実施され、 ビーニング等による溶接残留応力の緩和や水処理 条件の改良等の対策法の開発、 さらにはシュラウド自体の耐SCC材への交換が一部 ですでに実施[5]されている。 このように現状で実路されているシュラウドのSCC研 究は対策法の開発が主であり、 中性子照射の溶接熱影響部に及ぼす影響に関する研 究はなされていない。 しかし先に述べたように中性子照射はこれまで感受性を有し ていない材料に新たにSCC感受性を発生させることから、 溶接熱影響部の中性子照 射の影響を明らかにする必要性が生じてきた。
ここで中性子照射を受けた溶体化材に発生する可能性が指摘されているIASCCの 特徴について簡単にまとめる。 表1.1.1に海外で発生したIASCCの事例[3]を示す。
表1.1.1 海外で発生したIASCCの事例[3]
Component Fuel Cladding Fuel Cladding Fuel Cladding
Fuel Cladding Ferrules Neutron Source Holders Instrument Dry Tubes Control Rod Absorber Tubes Fuel Bundle Cap Screws Control Rod Fol1ower Rivets Control Blade Handle
Control Blade Sheath Plate typc Control Blade Various Bolts
Steam Separator Dryer Bo1ts*
Shroud Head Bolts*
Various Bolts
Guide Tube Support Pins Jet pump Beam牢
Various Springs
Material Reactor Source of stress
304SS BWR Fuel Swel1ing
304SS PWR Fuel Swelling
20%CrI25%NilNb SGHWR Fuel Swelling 20%Cr/25%NilNb AGR Fuel Swelling
304SS BWR Fabrication Welding & Be Swelling
304SS BWR Fabrication
304SS BWR B4C Swelling
304SS BWR Fabrication
304SS BWR Fabrication
304SS BWR Low stres
304SS BWR Low stress
304SS BWR Low stress
A-286 BWR& PWR Service
A-286 BWR Service
6∞ BWR Service
X-750 B WR & PWR Service
X-750 PWR Service
X-750 BWR Service
X-750 BWR&PWR Service
Various Springs 718 PWR __ ��vic�
* Cracking of Core Internal Occurs Away from High Neutron and Gamma Fluxes
これまでにIASCCが確認された機器はすべて供用中に応力の発生があり、 材料の 照射と電畳した結果IASCCが発生したと考えられている。 一万上部格子板のような 大型構造物についてはIASCCの発生事例の報告はなく、 これまでに報告されたもの
は全て交換を前提としたものに限られている。 ただし今後軽水炉の高経年化に伴 い、考えられる劣化事象としてはIASCCも考慮されるべきものであり、そのデータ が不足していることから、高照射を受ける機器の、点検・検査を継続する必要性が 指摘されている[8]0
ここで配管等の溶接熱影響部に発生する従来のSCCと中性子照射により溶体化材 に発生するIASCCについて比較する。 図1.1.3に従来のSCCとIASCCの発生を模式的 に示す[9]。 先に述べたが従来のSCC'ま図中のハッチングの部分に相当する条件がそ
ろったとき、すなわち材料の熱鋭敏化、溶接残留応力および、酸化性の高温高圧水環 境の因子が重畳効果した際に発生する。 一方IASCC'ま中性子照射を受けた溶体化材 に発生する点がSCCとは大きく異なる。 照射前は図に示されるように材料因子が小 さく、かつ他の因子と交差しないためSCC感受性は存在しない。 しかし供用中の中 性子照射により材料因子が大きくなりかつ環境因子も照射により大きくなると、 3 因子が重畳しIASCCが発生すると考えられている。
①
SCC (Heat Affected Zone)
M : Material S : Stress E : Environment IASCC (Solution Annealed Material)
chemical composition change at GB
Irradiation 圃圃・ー
Neutron
y-ray
図1.1.3 溶接熱影響部のSCCと溶体化材のIASCCの発生の模式図
IASCCiま本来SCC感受性を有しない溶体化材が中性子照射により材料因子 と環境因子が変化することにより発生すると考えられる。
SSRT (Slow Strain Rate Tensile)試験法によるIASCCの照射量依存性を図1.1.3に示す が、IASCC感受性は特定の照射量から現れ、その後は照射量とともに増大する。 例 えばJacobsら[10]は、Type304鋼の溶存酸素濃度32ppmで、のSSRT試験の結果から、
-4・
IASCCの発生のしきい照射量は5x1 024 n/m2で、3x1025n/m2を越えると急激に感受性が増 加する可能性を報告している。 Kodamaら[11]も同様の試験結果から、 1. 2x10おn/m2か ら感受性が発生し始め、 6x102、1m2を越えると感受性が急激に増加する可能性を報止 している。 同様の傾向はいくつかの文献で報告されている[12,13,14,15]。
100
SSRT test in 32 ppm 00 口 304 Jacobs
l:J. 304 Clarke
8T。…何
ぇ言E:》3
0 3凶間SA Jacobs(A T町
⑦ 304 Kodama 田 304CP Chung
ω 旨C伺四コC 面 60
40 õ
a V C G0 』3 o
20
。
10 23 10 10 25
Neutron fluence (n/mイE>1MeV)
10
凶1. 1.4 Type304溶体化ステンレス鋼のIASCC感受性(溶存酸素濃度3 2ppm) と中性子照射量の関係[10,11, 20, 21]
Type304i容体化ステンレス鋼のIASCC感受性は照射量5xlぴ'n/m2で発生し始め、 照射量 3xl Q2'n/m2を越えると急激に増加する。
方SSRT試験法によるIASCCの溶存酸素濃度依存性については、 図1.1.4に示すよ
うlこ32ppmの酸化性環境で、はもとより、 O.4ppm水素を注入した還元性環境において
も3x102sn/m2を越えるとIASCCが発生するとJensenら[16,17]が報告している。 また 3ppmまで水素を注入したPWR環境においてもIASCCが発生する報告[18,19]もある。
以ヒのことからSSRT試験法によるType304溶体化ステンレス鋼のIASCC感受性 は、 酸化性環境下では5x1 024 n/m2から生じ始め、 還元性の環境下においても 3x102月n/m2以上で生じる可能性が示された。
現在IASCC発生機構としてはCr欠乏層説、 粒界不純物偏析説、 水素脆化説、 ヘリ ウム脆性説、 照射脆化説あるいはそれぞれの重畳効果等、 さまざまなものが提案さ れている[10,11,14,15,2 2,23,24,25]。 しかしこれまでの溶存酸素濃度依存性に関する デー タを見ると、 照射量lx10おn/m2まで、はCr欠乏層説でかなりの部分を説明できる。
方3xl0おn/m2を越えると還元性の環境でもIASCCが発生することから、 その他の因
子が追加して作用している可能性が高い。
以上のように溶体化材のIASCCに関しては発生機構やその対策に関する研究が精 J]的になされている。- ゾJで溶接熱影響部の研究は対策を中心に実施されており、
今後溶接熱影響部の中性f照射による影響について明らかにする研究が求められて し3る。
( ) \ M 、《
時ω何‘コーー
‘。(.)回,
てコC コ z o
1 00
80
60
20 r
0 1 0 23
SSRT test by Janssen
o Oxdizing environment
• Reducing environment
。 。 θ。 。
。 。
2 3 4 56 10
2 3 4 5 6 1 025
Neutron fluence (n/m 2 , E> 1 MeV)
。
αコ
2 3 4 56 1 0 26
災11 . 1.5 Type304溶体化ステンレス鋼のIASCC感受性に及ぼす中性子
照射量と水質の関係[17]
IASCCは照射量3xlσn/m2以下では酸化性環境でのみ発生するが、 照射量 3xlぴn/m2を越えると還元性環境においても発生する。
1.2 本研究の目的と意義
溶接熱影響部への中性子照射の影響を明らかにすることは、エンジニアリング的 にはもとより、学問的にも重要な意義を持つ。 本研究では溶接熱影響部を模擬した 熱鋭敏化ステンレス鋼を用いて中性子照射が及ぼす影響を検討することを目的とし て実施した。
試験の中性子照射量は、IASCC感受性が顕著になる3x l025n/ばまでとし、溶体化材 についても比較のため試験を実施した。
照射効果の評価は、軽水炉で、照射されたデータと比較でき、かつ軽水炉の溶接熱 影響部の評価にも資することも考慮して、 ミクロ組織の変化、力学的特性の変化、
SCC特性の変化について実施することとした。 これにより溶接熱影響部に対する中 性子照射の影響に関する基礎的なデータを取得し、かっその影響を明らかにして、
溶接熱影響部の健全性評価のための基礎資料とし、軽水炉に対する信頼性の向上、
- 6・
運転の高度化に資する。 一方金属材料の中性子照射効果を明らかにすることで、 照 射損傷のようなミクロな現象と力学的特性やSCC現象といったマクロな現象の橋渡 しを可能とし、 照射効果の理解を深める。 以上のような目的の基に本研究を実施し
アこO
1.3. 本研究の構成と内容
本論文は第l章から第6章より構成されている。 第l章は緒論、 第2章は試験方 法、 第3章は熱鋭敏化材のミク口組織変化に及ぼす中性子照射の影響、 第4章は熱 鋭敏化材の力学的特性変化に及ぼす中性子照射の影響、 第5章は熱鋭敏化材のSCC 特性変化に及ぼす中性子照射の影響、 第6章は総括、 の構成とした。 以下に各章の 概略を記す。
第l章では本研究の背京、 目的と意義、 構成と概要についてとりまとめた。
第2章では、 本研究の試験方法について、 供試材、 照射試験、 照射後試験に関し てまとめて記述した。
第3章では、 熱鋭敏化材のミク口組織変化に及ぼす中性子照射の影響を検討した 結果をとりまとめた。 5x1024n/m2まで照射された材料のミクロ組織観察の結果から熱 鋭敏化材と溶体化材の中性子照射による金属組織変化の差は小さく、 7xl0九1m2照射 材までは照射前とほぼ同じで、 5x10Dn/m2で、ブラックドットが生じることが示され た。 粒界微小領域分析の結果からは熱鋭敏化材のCr濃度およびNi濃度の変化が約
1 x 1021n/m2の照射量から始まること、 溶体化材は文献値から約5x 1024n/m2の照射量から 始まること、 また粒界腐食試験の結果からは熱鋭敏化材の腐食特性の劣化は
1 x 1 02ìn/m2で、始まり、 1x 1 024n/m2照射まで照射量とともに大きくなることが示された。
これらの結果からlxlO九1m2以下の低照射量の範囲で、は、 熱鋭敏化材は溶体化材と比 較して、 その粒界特性が変化し易いことが示唆された。
第4章では熱鋭敏化ステンレス鋼の力学的特性に及ぼす中性子照射の影響につい て検討した結果をとりまとめた。 引張試験を兼ねたAr中のSSRT試験の結果から、 降 伏強度は4xlO九1m2照射材で、は照射前の値に近く、 この照射量を越えると照射量の増 加とともに増加すること、 一方伸びは照射とともに低下することが示された。 ミク ロ硬さ試験からは熱鋭敏化材の粒内硬さと溶体化材の硬さの照射量依存性の差が、
熱鋭敏化材と溶体化材の降伏強度の照射量依存性を支配している可能性が示され た。
第5京では熱鋭敏化ステンレス鋼のSCC特性に及ぼす中性子照射の影響について 検討した結果をとりまとめた。 SCC感受性を示すと考えられる粒界割れ破面率の中 性子照射量の依存性については、 溶存酸素濃度O.2ppmの試験の結果から、 lxl0九1m2
以下の低照射量領域においては照射量の増加に伴い、 粒界割れ破面率が増加するこ
と、 -)j3x 102月n/m2で、は熱鋭敏化材の粒界割れ破面率が未照射のものより低下するこ
とが示された。 また溶存酸素濃度依存性については、 溶存酸素濃度が高い場合の粒 界割れ破凶i率は大きく、 溶存酸素濃度が下がるにつれて破面率が低下すること、 ま た一部の供試材を除くと、 全ての供試材のSCC感受性は溶存酸素濃度O.OOlppmで、消 失することが示された。 この粒界割れ破面率の変化について考察した結果、 低照射 量領域での粒界割れ彼面率の増加は、 中性子照射による粒界Cr濃度の低下と不純物 冗素の濃縮の影響、 -)子高照射領域での破面率低下は中性子照射による材料の力学 的な特性変化がSCC挙動に作用した可能性が高いことが示唆された。
第6章は本研究の結果を取りまとめた。
-8・
第2章 試験}j法
本章では本研究の試験方法をまとめて記述した。 なお個々の詳細な試験条件等に ついては必要に応じて各節に記述した。
2.1 供試材
供試材は比較的高炭素の商用純度SUS304ステンレス鋼を用いた。 材料は初期の軽 水炉で、用いられた304ステンレス鋼の組成を参考に、 特にCとP、 S、 Siの組成を重要 視した。 溶解に用いた原料は高純度の電解鉄等であり、 不純物元素は添加元素とし て加えた。 Coは照射後試験時の被爆の低減を図るため、 特に低下させた。 溶解は真 グロ溶解炉を用いて行い、 造塊後、 熱問鍛造、 熱間圧延を施し、 1cm厚さの板とした。
用いた溶解炉には容量に制限があるため、 2回に分けでほぼ同一組成になるように 2ヒート作製した。 各供試材の化学組成を表2.1.1に示す。 表中には微量不純物元素 についても合わせて記載している。 本表から、 2つのヒートにはわずかな違いはあ るものの、 実JTJ上の差はないと考えられた。
表2.1.1 供試材の化学組成
M句or 剖loying and impurity elements (wt%)
Element C Si Mn P S Ni Cr N Co B
Material X,Z 0.063 0.49 0.95 0.026 0.016 9.93 18.49 0.032 く0.01 く0.0003 Material V,O 0.060 0.49 0.98 0.028 0.016 9.92 18.39 0.046 0.01 <0.0003
Minor trace elements (Wl%)
Element Ti AI Cu Zn Sn 内 As Sb Mg Ca
Material X,Z く0.003 0.001 く0.003 <0.0005 <0.003 く0.0003く0.0003 O.∞03 <0.0005く0.0003 Material V,O く0.003 0.001 く0.003 <0.0005 <0.003 <0.0003く0.0003 0.0003 <0.0005く0.0003
Minor trace elements (wt%)
Element Ag Cd Ge Bi Se Be
Material X,Z く0.0002く0.0002 く0.01 く0.0005 <0.005 <0.005 Material V,O <0.0002 <0.0002 <0.01 <0.0005 く0.005 く0.005
供試材の熱処理は溶体化処理を施した後、 溶接熱影響部を想定した熱鋭敏化処理 を行った。 溶体化処理は1373Kx 1 hr→水冷、 熱鋭敏化処理は1023K x 1 OOmin→空 冷、 773Kx 24hr→空冷、 の2段鋭敏化処理とした。 この2段鋭敏化処理の前段は溶 接入熱の模擬で、 粒界にCr炭化物を析出させCr欠乏層が形成される。 後段は軽水炉
温度で、約40年間の使用した場介の低温鋭敏化模擬である[26] [27]0 なお一部の未照射 材については照射材の熱履歴を模擬するため照射時間と同じ時間の熱時効(563Kx 22 days、 563Kx 11 Odays)を施した。
イ共試材のID番号は溶解された各ヒートおよび熱処理毎に、 熱鋭敏化材のX材とj容 体化材のZ材、 熱鋭敏化材のV材と溶体化材のD材というように区別し略記する。
各供試材の千均結晶粒径は熱鋭敏化処理の前後でほとんど変化せず、 X、 Z材が 120ドm、 V、 D材が40ドmで、あった。 各ヒートの製作工程はほぼ同じであり、 両ヒー
トに粒径の差が生じた理由は不明である。
試験片は引張試験とscc試験で共通とした。 試験片形状を図2.1.1に示す。 なお各 試験片のグリップ部に供試材ID番号を刻印した。
R5.5
図2.1.1 本研究に用いた試験片形状
2.2 中性子照射
中性子照射は日本原子力研究所大洗研究所の材料試験炉(JMTR : Japan Material Testing Reactor)で、行った。 表2.2.1に各試験片の中性子照射条件をキヤプセル毎に示 す。 また図2.2.1にJMTRの炉心と各キャプセルの位置を示す。 本研究の中性子照射 は、 X、 Z材については新たに開発した飽和温度照射キャプセル[28] [29]を用い、 燃 料領域で、軽水炉温度で、行った(キャプセル番号: 86M-44Jと89M-44J)。 一方V、 D材 は燃料領域から離れたy線遮蔽板の外側でガスキヤプセル[30]を用いガス雰囲気中で
同じく軽水炉温度で、照射された(キャプセル番号: 91M-35J、 91M-36J)。
照射中の温度は引M-35Jキャプセルと91M-36Jキャプセルの低照射量側および86M- 44Jキャプセルの材料についてはBWRの代表的な混度である2900C(563K)であっ た。 しかし、 91M-36Jキャプセルの高照射量側(1x 1024n/m2)は照射キャプセルの不 λ合により所定の温度より500C高い340t: (613K)で照射された。 また89M-44Jキヤ プセルは照射の初期に熱電対の温度指示値が一時5000C(773K)まで上昇した。 その 後の温度は2900C(563K)で安定した。 なお500C高い温度で照射された試験片と、
89M-44Jキャプセルの試験片については、 本研究への適用の可否について第3章で軽
- 10・
水炉で照射された材料や試験炉で照射された材料の文献データと比較し、 軽水炉温 度で照射された材料として取り扱える範囲内にあることを確認した。
表2.2.1 中性子照射条件
Material
Irradiation environment
戸、J-3一D
M一v
ny- ζu-3一DM一ukny-
86M-44J 89M-44J X,Z boiling water
(563)牢 7 5 Temperature (K)
Pressure (kgf/cm2) Fast neutron (> 1 Me V)
fluence (nlm2) f1ux (nlm2/s)
Neutron fluence (<0.68 eV)
fluence (nlm2) 2E+23 7E+23 2E+24 8E+24 6E+23 flux (nlm2/s) 1 E+ 17 4E+ 17 3E+ 17 1 E+ 18 2E+ 18 Max. gamma ray flux (arbitrary unit) 5E-06 8E-06 1 E-04
* : Thermocouples indicated with elevated nearly 773 K once during irradiation . mert gas
563 563
mert gas 563 613
X,Z boiling water
563 75
2E+ 16 4E+16 5E+ 16 lE+ 17 1E+18
3E+25 lE+18 4E+22 7E+22 5E+23 1 E+24 3E+23
6E+25 2E+18 1E-04
Material X, Z 89M・44J 86M-44J
Material V, 0 89M-35J 89M-36J
00000。
刈2.2.1 JMTR炉心と照射キャプセルの位置
2.3 照射後試験
照射後試験として、 ミク口組織観察、 粒界腐食試験、 引張試験、 微小硬さ試験、
SCC試験を実施した。 なお放射能レベルによって試験が制約される場合があり、 特 に3x1 025n/m2照射材については実施できないものがあった。 各試験法について以下に 述べる。
2.3.1 ミク口組織観察
ミクロ組織観察はホットラボ内の透過型電子顕微鏡(JEOL-200CX)を用いて実施し た。 TEM試料はほとんど変形していないと考えられる引張試験後のつかみ部分から 切り出した。 試料はエメリー紙を用い湿式で'200�m厚さまで研磨し、 直径3mmのデ ィスクに打ち抜いた。 電解研磨は5%過塩素酸95%酢酸溶液中で、 室温、 約20Vでテ ヌポール3を用いて行った。 粒界組成を明らかにする粒界微小領域分析には電界放 出型分析電顕(FE-TEM、 HF-3000)とオージェ分光分析器(AES)を用いた。 分析 電顕分析にはCr炭化物が連続しておらず、 大傾角粒界であり、 分析時に粒界面を電 子線方向に垂直にできるものを選択した。 分析時のスポットサイズは約1nmで、 粒 界の両側を2 ---5nm毎に最大50nmまで分析した。 AESは、 水素チャージした供試材 を超高真空中で破断させ、 粒界面を発生させ、 AES分析と表面スパッタを繰返し、
粒界から最大50nm深さまで実施した。 なお分析装置の放射性物質対応の関係で未照 射試料についてはFE-TEMとAESの両方、 照射材についてはAESのみの分析となっ た。
2.3.2 粒界腐食試験
試験片の粒界腐食特性の測定は電気化学的再活性化率試験(以下EPR法:
Electrochemical Potentiokinetic Reactivatation Ratio)と5N硝酸中粒界腐食試験の2種類 の方法によって実施した。
EPR試験はJISG 0508に準じ、 303Kの0.5M- H2S04 + 0.01 M-KSCN溶液で、 関始電位 -45叩OmV仏SI川11,,, 逆掃引電{位立+30∞OmV仏SI川l日E" 掃引速度10∞Or口mV/mi叩1甘1nで、行つたO 測定に用いた試料 は引張試験終了後の試験片で、 ほとんど変形していないと考えられる面を#600のエ メリー紙で湿式研磨し測定面とした。
5N硝酸中粒界腐食試験は5Nの沸騰硝酸中に試験片を浸漬して行った。 腐食試験片 は引張試験後の試験片から、 変形していない部分を切り出し、 表面を#600のエメリ ー紙で湿式研磨して作製した。 試験は試験片を浸漬して48時間後に取り出し、 精密 天秤を用い1/100mgまで測定し、 その差を腐食減量とした。 なお測定に用いた試験片 は放射能を有しており、 面積の正確な測定が難しいため、 腐食減量を試験開始時の
- 12・
試験片の重量で除して、 腐食減量割合で結果を示した。 試験後は試験面の走査型亀 子顕微鏡(以下SEM)観察を実施した。
2.3.3 引張試験
引張試験はホットラボに設置されたSSRT試験装置の試験部分の雰囲気をArガ、スと して実施した。 試験条件を表2.3.1に示す。 今回の引張試験はSCC試験で得られる応 力ー歪曲線と比較するため、 通常の引張試験の歪速度ではなく、 SSRT試験時の歪速度 とした。
試験中は荷重と変位を記録紙に記録し、 試験終了後記録紙上の応力一歪曲線から、
降伏強度(YS: Yield Stress)、 引張強さ(UTS: Ultimate Tensile Strength)、 均一伸び(UE:
Uniform Elongation)、 依断伸び(EF: Elongation to Failure)を測定した。 試験の終了した 試験片は破面状態を確認するために、 SEM観察を実施した。
表2.3.1 引張試験条件
Tensile test condition Environment
Strain rate (l/s) Temperature (K) Pressure (kgf/cm2)
2.3.4 ミクロ硬さ試験
Ar gas 4.2E-7 563
イ共試材の局所的な力学的性質を知るためにマイクロビッカース試験機を用いた微 小硬さ試験を行った。 試験は試料表面をアルミナ研磨で鏡面に仕上げた後、 表面を わずかに腐食させ粒内(GC)と粒界(GB)を区別して測定した。 溶体化材につい ては表面が腐食されなかったため粒内(GC)と粒界(GB)を区別せず、 全体の硬 さ(whole grain)として測定した。 試験の荷重は可能な限り小さな圧こんで硬さを測 定するために最小の5gとした。 荷重付加時間は30秒とし、 室温で測定した。 測定は
各]0点行い、 最大値と最小値を除いた8点の予均を求めた。 なお実際に測定された圧 こんの大きさは5---10いm程度で、あった。
2.3.5 照射後焼鈍試験
照射後焼鈍は未照射材と5x10B、 1x 1024n/m2のV材と1x 1024n/m2のD材について行つ
た。 焼鈍には点空熱処ヱ型炉を川い、 623K ----773Kまで50K刻みに1時間の等時焼鈍を 実施した。 各温度での焼鈍の後に、 力学的特性を知るために微小硬さ試験機を用い て硬さを測定した。
2.3.6 SCC試!検
材料のSCC感受性はSSRT試験法を用いて測定した。 試験条件を表2.3.2に示す。 こ の試験法は水質を調整した高温高圧水中で、 試験片を非常にゆっくりヲ!張り破断さ せる方法で、 比較的短時間でSCC感受性を判定することが可能で、ある。 この試験の 代表的な歪速度は、 割れ先端へ転位が供給され新生面が形成される速度と腐食に よって新生面が溶解する速度の釣り合う10-7s-1程度が一般的で、ある。
試験装置を凶2.3.1に示す。 試験条件のlつである溶存酸素濃度はArとAr+02ガスを 調整タンク内でバプリングすることで調整した。 試験中はループの温度、 圧力、 溶 存酸素濃度と電気伝導度および試験片の荷重、 伸びを常時モニターして記録した。
試験結果はチャート紙上の応力歪曲線から、 降伏応力(YS: Yield Stress)、 最大応力 (MS : Max. Stress)、 均一伸び(UE : Uniform Elongation)、 破断伸び(EF : Elongation to Failure)を測定した。
SSRT試験後の試験片は割れ形態を確認するため、 SEM観察を実施した。 SCC感受 性を確認するために破面写真から、 粒界割れ破面率(lGC : IntergranuIar Cracking)、 粒 内割れ破面不(TGC: Transgranular Cracking)、 延性割れ破面率(Dimple)を面積比として 求めた。
表2.3.2 SSRT試験条件
SSRT test condition
Dissolved oxygen (ppm) Conductivity (μS/cm) Strain rate ( l/s) Temperature (K) Pressure (kgf/cm2)
本: unirradiated materials only
-14・
8, 1 *, 0.2, 0.02牢,0.001
< 0.1
4.2E-7 563 100
lon exchange resin Valve
Dissolved Hydrogen
Dissolved Oxygen
刈2.3.1 SSRT試験装置のフロー
第3章 熱鋭敏化材のミクロ組織変化に及ぼす中性子照射の影饗
3.1 はじめに
軽水炉温度域における中性子照射によるミクロ組織変化は、 格子間原子や原子空 Jしの集合体からなるブラックドットや小さなループの形成として現れる。 転位ルー プの密度、 大きさは照射量と共に増加し、 ついには転位ネットワークが形成され、
マトリックスが硬化することが知られている[24,31]0
方オーステナイト系ステンレス鋼中の構成元素であるFe、 Ni、 Crや不純物元素 のP、 Si、 S等は、 照射により発生した格子関原子や原子空孔のシンクへの流れによ り再分配され非平衡偏析する[32,33]0 結果としてNiは粒界に濃縮し、 Fe、 Crは粒界 で欠乏する。 またアンダーサイズの不純物元素やSi、 Pは格子問原子と結合し、 シン クに移動していく結果、 粒界に濃縮する。 これらの欠乏や偏析は照射量とともに大
きくなることも知られている[34]0 しかしこれらのデータは溶体化材でかつ高照射量 の場合の結果であり、 照射開始時にすで、にCr欠乏層を有している熱鋭敏化材のミク 口組織への中性子照射の影響は明らかでない。 このため本章では、 中性子照射の影 響を粒界近傍の変化に絞って、 金属組織観察、 粒界の元素分析、 粒界腐食試験を実 施した結果について検討し、 組織および組成の変化を明らかにする。
3.2 金属組織への影響
熱鋭敏化材(V材)と溶体化材(D材)の中性子照射前と最大5x1023n/ばまで照射 後のミク口組織を図3.2.1に示す。 1x 1 024n/m2照射材についてのTEM観察は、 薄膜試料 作製時の放射性物質取り扱いの制約のため実施していない。 この写真から、 熱鋭敏 化材には照射前に粒界にM2JC6型のCr炭化物が形成されているが、 溶体化材には析出 物が認められないことがわかる。 中性子照射後の組織変化をみると、 両供試材とも 7xlO九1m2照射材までは照射前の組織とほとんど変わらないが、 5x1023n/m2で、照射に よって導入されたブラックドットが観察されるようになる。 転位ループはほとんど 観察されない。 また熱鋭敏化材の粒界のCr炭化物についても変化は認められなかっ た。 今回の低照射量での観察では大きな組織の変化は認められないが、 観察不能な オーダーの変化が生じている可能性は十分に考えられる。 したがって次節では粒界 の極微小領域の元素濃度分布を測定し、 照射後の元素分布の変化について検討す る。
-16・
thermally-sensitized solution annealed
unirrad.
4x1022
7x1022
5x1023
(n/m2,E>1 MeV) 200 nm 圃園田園圃圃圃
図3ユ1 熱鋭敏化ステンレス鋼と溶体化ステンレス鋼の中性子照射 前後のミクロ組織の変化
熱鋭敏化材には粒界Cr炭化物が観察されるが、j容体化材には析出物がない。 ま た中性子照射後は、 両供試材とも照射量7xlび�/ばまでは未照射材とほとんど変 わらないが、 照射量5xlゲn/m2で、は結晶粒内に黒点(ブラックドット)が観察さ れた。 熱鋭敏化材の粒界Cr炭化物の照射前後の変化は認められなかった。
3.3 結晶粒界近傍のj己素分布への影響
FE-TEMを用いて未照射の供試材の粒界の極微小領域の元素分析を行った結果を|災 3.3.1と関3.3.2にぷすo [三13.3.1はX材およびZ材の結果であるが、 構成元素であるCr、
Ni、 Feは熱鋭敏化材(sens.)と溶体化材(SA)で粒界の元素分布が異なっており、
Crは熱鋭敏化材で、は欠乏し、 溶体化材では濃縮している。 Niは熱鋭敏化材では濃縮 し、 溶体化材では特に変化が見られない。 不純物元素については、 熱鋭敏化材でP の粒界濃縮が見られ、 sとSiについては濃度のバラツキはあるが、 溶体化材と比較す ると、 粒界付近の濃度は高い傾向が認められる。 図3.3.2は別ロットのV材およびD 材についての結果で、 各元素濃度の絶対値は先のV材およびD材と異なるが、 濃縮 および欠乏挙動には同様の傾向が認められる。
試料放射能による制約のため、 照射材のFE-TEM分析は不可能であった。 このた め未照射材の粒界面をAES分光分析(Auger Electron Spectrometry)し、 Chung[35]によ る照射材のAESによる牧界分析の結果と比較した。 その結果を図3.3.3に示す。 AES 分析は構成厄ぷで、あるCr、 Ni、 Feの他にP、 S、 0、 Nについても実施したが、 微量 7じ素の絶文打lt!に信頼性がないこと、 また同 ーの装置で照射材と未照射材を分析して いないことから相対比較も不可能なため、 ここではCr、 Ni、 Feのデータのみを示し た。 この凶で、未照射材のCrとNiの分布はFE-TEM分析の傾向と一致し、 粒界にCr欠乏 とNi濃縮が認められる。 一一万照射後のCr、 Niの分布からはCr欠乏とNiの濃縮がさら に進んで、いることがポされる。 ここでは粒界の組成を知ることを主な目的としたた めに、 Cr欠之およびNi濃縮の幅に関する情報は得られていないが、 少なくとも測定 された10nmの範囲全てで;Cr欠乏とNi濃縮が進んでいる。
- 18・
FE-TEM analysis -0- Mateiral X (sens.) 一口- Material Z (SA)
1.2 1.0 0.8 0.6
(ポ伊豆)仏
25
〈 20
15
(示室)』O
0.4
0.0 0.8
0.4 0.2
0.6
(Jr v〉〉 )ω
自 10
5 18
12 16
)一Z (J主主
140.2
0.0 1.2 10
8 80
1.0
0.8
(ポ V〉〉 )一ω
吋肝 メk
75
70
(示室)£
0.6 65
。 40 0.4 -40
40
。 60 ・40
Distance from GB (nm)
z材の粒界近傍の元素分布
Distance from GB (nm)
FE-TEMによる未照射のX、
図3.3.1
FE-TEM analysis -0- Material V (sens.) 一口- Material 0 (SA)
1.2 1.0
0.0 0.8 0.8 0.6 0.4 0.2
(示室)仏
日開
25
5 18 20
15
10
(ポ 担〉〉 )』Q
0.6
0.4
(示室)ω
16
14
12
(ポ冨)一Z
0.2 10
0.0 1.2
1.0
0.8
0.6
(ポ芸)一ω
75
t-ハぬヘー
噌b
『70ト
65ト 8 80
(ポ伊豆)ω比
i 40 i
o よ
・40 0.4 -40 。 40
60
Distance from GB (nm)
D材の粒界近傍の元素分布
Distance from GB (nm)
FE-TEMによる未照射のV、
ヌ13.3.2
25 25
20 20
AES analysis Material V (sens.)
V1・unirrad V59: 1x1024n/rri'
215
同
ま冨 15む10 。10
L一一」 5
。 。
25 30
20 25
20 i妄� 15
=主君
15乏10 z 10
5 5
。 。
100 100
80 90
lE E 6O 80
手芸 70
ε40 Lω .L 60
20 50
。 40
。 10 20 30 40 50 。 10 20 30 40 50
Distance from GB (nm) Distance from GB (nm)
災13.3.3 AES分析による照射後のX,V材の粒界近傍の元素分布[35]
未照射材のCrとNiの分布はFE-TEM分析の傾向と一致し、 粒界にCr欠乏とNi濃 縮が認められる。 一方照射後はCr欠乏とNiの濃縮が未照射材よりさらに進んで いることが示される。
粒界におけるCr、 Ni濃度の照射による変化を図3.3.4に示す。 この図では各供試材 の未照射と照射後の濃度を直線で結んでいる。 この直線からCrの欠乏とNiの濃縮の 進行は明らかである。 Crは粒界の初期濃度が異なるX材とV材でその直線の傾きが ほぼ等しく、 一方Niについては初期濃度がほぼ等しく、 照射による濃度変化の傾き もほぼ等しい。
30 25
詰 妄�
。由
<<í
15 10 5
。0.0 0.5 1.0 1.5 2.0xHj'4
Neutron fluence (n/m �E> 1 MeV)
図3.3.4 粒界の化学組成の照射量依存性[35]
供試材X、 Vとも中性子照射量の増加とともに粒界のCr欠乏とNi濃 縮が進行している。
ここで、熱鋭敏化材の粒界Cr欠乏に及ぼす照射の影響を明らかにするために、 照射 された溶体化材の場合と比較する。 図3.3.5は今回のデータにAsanoら[34]による溶体 化材の粒界分析の結果を加えたものである。 なおこの図では熱鋭敏化材と溶体化材 のみを区別し、 ヒートの違いは無視している。 またAsanoらは未照射状態の粒界分析 を実施していないため、 今回のZ材およびD材のFE-TEM分析データを未照射データ として取り扱った。 この図から熱鋭敏化材の粒界のCr濃度およびNi濃度の変化は約
1 x 1021n/m2の照射量から始まり、 一方溶体化材は5xl024n/m2の照射量から開始すること がわかる。 照射量に対する濃度変化の直線の傾きは、 Crではほぼ等しく、 Niでは熱 鋭敏化材の方が大きい。 この図で熱鋭敏化材と溶体化材の濃度変化の直線の傾きが 等しいとした場合、 同一の照射量に対する濃度変化の割合は熱鋭敏化材の方が約l 桁大きいことになる。 この差の生じた原因として照射された炉型の違いも考慮する 必要があるが図3.3.5中のJacobsら[36]の試験炉(ATR: Advanced Test Reactor、 米国)
- 22・
のデータがBWRの直線上に分布していることから炉型の違いではなく、 熱鋭敏化材 の特徴である可能性が高いと推定された。
本節で、は結品粒界近傍の元素の再分布に及ぼす中性子照射の影響について検討し た。 その結果、 熱鋭敏化材と溶体化材とでは挙動が異なる可能性があることが明ら かになった。 この差の原因が粒界Cr炭化物の影響か、 照射前からの偏析にあるの か、 あるいはその他にあるのか、 現段階では判明していない。 しかし熱鋭敏化材の 粒界組成は低照射量域から変化するため、 溶体化材とは異なる現象が生じている可 能性は十分考えられる。 今後は不純物の影響についても調査し、 先のCr, Niの挙動と ムわせてステンレス鋼の照射効果の理解を深める必要がある。
30
25
芸 20
由。 êtí
ιz o a c 。E 3 』s o 15
10
5
。
Cr Ni
o D. Material X,V (sens,) by AES Z 回 MaterialZ,O (SA) by FE-TEM
M 口 Asano (SA) by FE・TEM + none Jacobs (SA)by FE-TEM
三 一 | 一一 丘二 四 一 一 一一戸 - M \
mM問、引 +
、す三 口.
2
,/�.
" Æ-TEM
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_!千三--�
---一一一一口一γ :羽Æ花M "' ん」
22
unirrad. 10 10 23
口J 口
10
Neutron fluence (n/m 2 I E> 1 MeV)
10 25 10
災13.3.5 熱鋭敏化材と溶体化材の粒界のCr、 Ni濃度の中性子照射に よる変化[34,35,36]
熱鋭敏化材の粒界Crおよび、Ni濃度の変化は約lxlゲn/mlの照射量から始まり、 溶 体化材の粒界CrおよびNi濃度の変化は約5xlCY'n/mlの照射量から始まる。
3.4 粒界腐食特性への影郷
これまでの節ではミクロ組織観察と粒界微小部分の組成分析を基に、 熱鋭敏化材 への中性子照射の影響を論じてきた。 この中で照射された熱鋭敏化材に特徴的な現 象をいくつか示したが、 全ての粒界が同様の特性を有するかについては不明であ る。 このため、 本節では粒界腐食試験を基に、 表面のすべての粒界についてこれま
での結果が適用できるかを検討し、 熱鋭敏化材の粒界の特徴であることを確認す る。 ここでは電気化学的再活性化率測定法 (以下EPR法 : Electrochemical
Potentiokinetic Reactivatation Ratio)による粒界腐食試験と5N沸騰硝酸中粒界腐食試験 を実施して粒界腐食特性を測定した。
図3.4.1 に未照射から照射量1x 1 024n/ばまでの試験片についてのEPR法による測定結 果を示す。 このEPR試験は供試材のCr欠乏層をとらえる方法で、 EPR値の増加はCr欠 乏の進行を示す。 この凶から本供試材は未照射状態でも十分鋭敏化していること、
またわずかではあるが照射によりEPR値が増加していることから、 熱鋭敏化材の粒 界Cr欠乏が進行していることが示される。
EPR試験後の表面状態のSEM観察の結果を図3.4.2に示す。 表面には粒界腐食の跡 と、 わずかに粒内の腐食された跡が観察された。 しかし粒内の腐食の跡は、 粒界部 分に比較すると少なく、 今回のEPR試験結果は粒界腐食特性の劣化を示すと考えら れる。
旨\内
80
60
è( 40
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20
。
。
EPR test
f:j, Marerial X (sens.) o Material V (sens.)
0.5 1.0 1.5 2.0x10
Neutron fluence (n/m 2 , E> 1 MeV)
刈3.4.1 熱鋭敏化材の中性子照射量とEPR値の関係
本供試材は両材料とも未照射状態で十分鋭敏化しているが、 中性子照射に伴い EPR値が増加することから、 さらに粒界Cr欠乏が進行していると考えられる。
EPR test (irradiated to 1x1024 n/m2) thremally-sensitized solution annealed
図3.4.2 中性子照射された熱鋭敏化材と溶体化材のEPR試験後の表面
熱鋭敏化材の表面には粒界腐食の跡が観察されるが、 溶体化材には粒界腐食は 観察されない。
5Nの沸騰硝酸中で粒界腐食試験を実施した結果を図3.4.4に示す。 EPR試験では 1 x 1024n/m2未満の粒界腐食は未照射と同程度であったが、 5N硝酸中試験では、
1 x 1 021n/m2程度の比較的低照射量から劣化を示し、 その後照射量の増加に伴い腐食減 旦は大きくなる。 図に示すように1x 1 024n/m2で、は急激な腐食減量の増加が見られる が、 これは結晶粒の抜け落ちも加算された結果と考えらえれる。 同時に試験した溶 体化材では1x 1 024n/ばまで腐食減量の増加は認められなかった。 この照射量による粒 界腐食特性の変化は、 図3.3.5の粒界分析によるCr濃度の照射量による変化のグラフ
軽水炉で、照射されたType304溶体化ステンレス鋼についてEPR試験を実施した Katsuraら[37,38]の結-呆と今[IJIの結果とあわせて図3.4.3に示す。 両供試材のEPR値の 違いは熱鋭敏化の有無によるものであり、 溶体化材も中性子照射が進むと鋭敏化 し、IASCC感受性を示すことは緒論で述べたとおりである。 Katsuraらの溶体化材の
照射量依存性をみると、 EPR値は1x 1 024n/m2を超えてから増加する傾向を示すが、 今 日lの熱鋭敏化材の結果も、 先の図3.4.1に示したようにlx l024n/m2で、わず、かに増加した ため、 両{共試材のEPR値が中性子照射により変化し始める照射量はほぼ1x 1024n/m2で、
致していると結論できる。
熱鋭敏化材と溶体化材のEPR値の変化の照射量依存性[37,38]
j容体化材のEPR値は約lx町、/m�から増加するが、 熱鋭敏化材は未照射材と比較 すると約lxlぴ'n/m1から増加している。
10 26
10 25
10 24
Neutron fluence (n/m 2 ,E> 1 MeV)
- 26・
10 23
EPR test
o Material X, V (sens.) 阿 304SA
unirrad. 10 22
。
。 10 100
0.1
0.01
0.001
同3.4.3
(ポ)江仏凶
8
の傾向と一致する。
10
Material V (sens.) 口 Material0 (SA)
/
(mbE)OZE22E白石〉〉
6
4
2
。
n � � �
unirrad. 10 10 10 10
Neutron fluence (n/m � E> 1 MeV)
|幻3.4.4 中性子照射された熱鋭敏化材と溶体化材の腐食減量の照射亘 依存性
熱鋭敏化材はIx町、njm2程度の比較的低照射量から腐食減量が増加するが、j容体 化材は1 x 1 (f4n/m2まで腐食減量の増加は認められなかった。 このことは熱鋭敏化 材の粒界腐食特性の劣化が比較的低照射量から起こることを示している。
5Ni弗騰硝酸'1•1粒界腐食試験後の表面状態、のSEM写真を図3.4.5に示す。 熱鋭敏化材 は未照射材および照射材とも明らかに粒界が侵されており、 lx 1024n/m2で、は先に述べ たように脱粒がみられた。 - �-方溶体化材には粒界腐食は認められなかった。
5N-HNOっ corrosion test 、.
thremally-sensitized
irradiated to 1 x1 024 n/m2) solution annealed
図3.4.5 中性子照射された熱鋭敏化材と溶体化材の5N沸騰硝酸中粒 界腐食試験後の表面
熱鋭敏化材は明らかに粒界が侵されており、 一方溶体化材には粒界腐食は認め られなかった。 なお熱鋭敏化材には一部脱粒も観察される。
-28・
本節の腐食試験による粒界腐食特性の劣化の照射量依存性と先に示したAES分析 による粒界Cr濃度の中性子照射による変化は照射量やその傾向が両者でほぼ一致し ており、 照射による熱鋭敏化材のCr欠乏の進行については確認できた。 しかしFE
TEM分析では粒界腐食特性を劣化させると考えられるP、 S、 Siの濃縮も未照射の状 態で検出されている。 今回は照射による不純物元素の影響を明らかにできなかった が、 Fukuyaら[39]はP、 Si濃度を変化させたType304溶体化ステンレス鋼を573Kで 5.3x 1 0九/m2まで照射しその後HN03+Cr6+中で腐食試験を行い、 供試材中のP、 Si濃度 が増加するに伴い粒界腐食特性が劣化することを報告している。 このような報告も 考慮すると今後は不純物の影響について明らかにする必要があると考えられる。
3.5 まとめ
本章では照射前にすでにCr欠乏層を有している熱鋭敏化材のミク口組織への中性 子照射の影響を、 金属組織の変化、 粒界の元素分布の変化の観点から検討した。 熱 鋭敏化304ステンレス鋼を4x1022n/m2から1x 1024n/ばまでの範囲で中性子照射した供試 材(V、X材)について、 透過電子顕微鏡観察、 粒界の微小部分の元素分析、 粒界腐 食試験を実施した。 主な結果は以下の通りである。
(1) ミクロ組織観察の結果、 中性子照射による熱鋭敏化材と溶体化材の金属組織変化 には大きな違いは見られず、 7x1022n/m2照射材までは照射前の組織とほとんど変 わらず、 5x102'n/m2で、照射によって導入されたブラックドットが観察された。 こ の他の金属組織の変化はこの照射量の範閲では観察されなかった。
(2)粒界微小領域分析の結果、 熱鋭敏化材のCr濃度およびNi濃度の変化は約1x 1023n/m2 の照射量から始まる可能性が示され、 溶体化材は文献値から約5xl024n/m2の照射 夏から始まる可能性がポされた。 これは熱鋭敏化材の粒界の元素濃度変化が、 溶 体化材より照射量で約l桁早く進展する可能性を示唆している。
(3)粒界腐食試験として実施した、 EPR試験と5N沸騰硝酸中腐食試験結果を総合する と、 熱鋭敏化材の粒界腐食特性の照射による変化は1x 1 02Jn/m2を越えると始ま り、 1x 1024n/m2照射までは照射量とともに大きくなる傾向があることが示され た。