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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

On the occurrence and paragenesis of argentian tetrahedrite from the Shigekuma Mine, Tsushima Island, Japan

島田, 允堯

九州大学理学部

https://doi.org/10.15017/4706180

出版情報:九州大学理学部研究報告. 地質学. 11 (1), pp.49-54, 1971-12-20. Faculty of Sciences, Kyushu University

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九大理研報(地質)111号,49‑54頁, 1‑3図版, 197112

対州しげくま鉱山の含銀四面安銅鉱の産状と鉱物共生について

島 田 允 亮

On the occurrence and paragenesis of argentian tetrahedrite from  the Shigekuma Mine,  Tsushima Island,  Japan 

Nobutaka SHIMADA  Abstract 

Argentian tetrahedrite has been found as large  crystals  attaining  1.  0 x 1. 5 m m  in  size,  in the  zinc‑lead‑silver  veins of  Shigekuma  and Nihongi ore  deposits in Tsushima  Island,  Nagasaki  Prefecture.  They are formed in the  Taishu  Group of  Paleogene age,  consisting mainly of mudstone with some intercalations of sandstone and shale.  Constituent  ore minerals from the deposits are sphalerite, pyrite, tetrahedrite, chalcopyrite, bournonite,  and galena,  and  associated  with  small  amounts of  gangue  minerals,  such  as  siderite,  calcite,  quartz,  Fe‑chlorite,  and sericite. 

There are three kinds of occurrence of argentian tetrahedrite: (1)  as tetrahedrite‑ chalcopyrite  veinlets  cutting  sphalerite‑pyrite ores,  (2)  as relic minerals in the massive  galena with flow‑like structure,  and (3)  as captured fragments in siderite vein. 

On the basis of the  microscopic  and  field  observation,  the  sequence of  sulfide  mineralization is  presented  from ealier to later  stages as follows:  sphalerite‑pyrite‑tetra‑ hedrite‑chalcopyrite‑bournonite‑galena.  Bournonite  occurs  as  a reaction  rim  between  tetrahedrite and galena. 

Unit cell edges for fifteen tetrahedrite range from 10. 414 to 10. 564 

A .  

These values  are larger than those of other  localities.  It is  inferred  from  crystallochemical  point  of  view that the variation of unit cell edge is  markedly  affected by substitution of Ag for  Cu in tetrahedrite, according to the qualitative analysis by the electronprobe microanalyser.  However,  any. regular  relationship  between  the  variation of a。ofthis  mineral  and its  distribution in the ore body has not been recognized. 

1.  ま え が き

四面銅鉱系鉱物 (tetrahedriteseries)の一般式は,

(Cu, Ag, Fe, Zn, Hg) 12 (Sb, As, Te, Bi) 4S13のよう に示され,半金属元素の量によって次のような鉱物名 が与えられている*.

Sb>As, Te,Bi……四面安銅鉱 As>Sb, Te, Bi……四面ヒ銅鉱

Te> As, Sb, Bi……ゴールドフィールド鉱**

本邦における四面銅鉱系鉱物については,高熱交代 鉱床,鉱脈鉱床,黒鉱鉱床および含銅硫化鉄鉱床などか

19717月20日受理

*さらに, Cuを置換する元素によっても種々の 変種が与えられている.例えばAgを含む四面安 銅鉱はフライベルグ鉱, Agを含む四面ヒ銅鉱は ビンナイトと称されている.

**加藤 (1970)

ら産出することが報告されている(片山, 1934;桜井・

杉山, 1943;渡辺,1943; HARADA and KIT AHAMA,  1952; 石橋, 1953;郷原, 1955)が銀を含む四面銅鉱 系鉱物についてはあまり報告されていない.含銀四面 銅鉱についての最近の研究は次のようなものがある.

原田・児玉 (1963)は,秩父鉱山大黒鉱床の晶洞中 のフライベルグ鉱について,その産状, X線的性質,

分光分析値などを報告した.山岡 (1969), 松隈・由 井 (1970)は,黒鉱鉱床および金銀鉱床に伴なう四面 銅鉱を EPMAによって分析し, Agの量は,黒鉱鉱 床では 0.2,....,11. Owt%, 金銀鉱床では3.5‑‑..,21. 5wt% 

含まれ,前者では含銀四面ヒ銅鉱および含銀四面安銅 鉱として,後者では含銀四面安銅鉱として存在してい ることを明らかにした.また芦木他 (1969)は,四面 安銅鉱および含銀四面安銅鉱を合成し,天然産との比 較をおこなった.一方,牛沢 (1969)は,北海道およ

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50  島 田 允 亮

び東北地方の黒鉱鉱床,鉱脈鉱床に伴なう四面銅鉱の 格子常数を多数測定し報告した.

筆者は,数年前から対州しげくま鉱床における Ag の賦存について検討をおこなってきたが, Agの大部 分が含銀四面安銅鉱として多量に存在することを認め た.本小文では,この鉱物の産状,共生関係ならびに 鉱物学的性質の概要を報告する.

この研究に際し,多大のご協力とご支援をいただい た東邦亜鉛株式会社対州鉱業所の神出福吉所長をはじ め, 大浦坂末竹副所長, 佐々木伝ー前地質調査室々 長, 郷原範造地質調査室々長, 松橋秀郎氏,桐生清 氏,巻田公氏,福元勝治氏に心から厚く感謝の意を表 します.また,現地にて多くの便宜を計っていただし、

た白銀鉱業株式会社対州しげくま鉱山探鉱所の加納広 信前副所長,大橋栄一郎副所長,鳥羽国敏氏,そして 職員の方々に感謝致します. さらにまた, EPMAの 分析をおこなっていただき,懇切なるご教示,ご鞭撻 をいただいた九州大学理学部の広渡文利助教授,適切 なるご助言と励ましをいただいた片山信夫教授,白水 晴雄教授,桃井斉助教授に感謝いたします.

なお,本研究に要した費用の一部は,文部省科学研 究費奨励研究によることを明記し,当局に感謝いたし

ます.

2.  鉱 床 概 説

対州しげくま鉱山探鉱所は,長崎県上県郡上県町大 字佐護に位置し(第1図), 昭和38年から開発がおこ なわれている鉱山である.鉱床は,しげくま鉱床とニ

129'  1吟30'

30

→ 

3・ヽ

3430' 

10Km 

第 1図 鉱 床 位 置 図

本木鉱床とからなり,いずれも亜鉛,鉛,銀を主とす る低熱水性鉱脈鉱床である*. 昭和46年3月現在で,

両鉱床からの出鉱量は2,000t/月,品位はAg200g/t,  Pb 2%, Zn 4%である. 特に銀はしげくま鉱床に 多く産し, 部分的に 3,000,...,5, OOOg/t程の濃集が認

められる.

鉱床付近の母岩は, 一般走向 N50°...60°Eを示す 泥岩および頁岩からなり,その間に層厚40m以内の砂 岩頁岩細互層が数枚挟在する. 岡田 (1969) によれ ば, この地域は対州履群(古第三系) の中部層に当 り,この中部層は全体として大きな背斜構造(しげく ま背斜)を示し, それ自体多くの小摺曲(波長300"‑' 400m)および微摺曲(波長100m以下)の集合からな る複背斜構造を形成している.

しげくま鉱床は,しげくま背斜軸付近の小背斜の南 東側翼部に発達した2系統の断層, すなわち N50°E 系走向断層と NS系横ずれ断層中に鉱石を胚胎してい

る.両断層の落合部および砂岩頁岩細互層と各断層と の落合部では, 小規模のサイモイドループあるいは 2次剪断性の裂かを伴って富鉱部が形成されている.

N50°E系走向断層に伴う主脈は,走向方向約100m, 傾斜方向300m以上,平均脈幅90cmである.

二本木鉱床は, しげくま鉱床の東方約1.2kmのとこ ろに位置し, N W系と NS系の2系統の断層中に胚 胎する.

鉱石鉱物は,しげくま鉱床では閃亜鉛鉱を主とし,

部分的に黄銅鉱, 四面安銅鉱, 方鉛鉱が密雑してい る. 黄鉄鉱は下部 (‑210mレベル)でわずかに認め られる程度である.一方,二本木鉱床では黄鉄鉱が最 も多く,次いで閃亜鉛鉱を主とし,黄銅鉱,四面安銅 鉱,方鉛鉱を伴っている.

脈石鉱物は,炭酸塩鉱物,石英,鉄緑泥石,絹雲母 からなるが,炭酸塩鉱物以外は極めて少ない.炭酸塩 鉱物には,菱鉄鉱および方解石などが認められるが,

これらの産状ならびに鉱化作用との関係については目 下検討中である.

3.  四面安銅鉱の産状

四面安銅鉱の産状を肉眼的に観察すると次の3種類 が認められる.すなわち,

①  閃亜鉛鉱や黄鉄鉱の割れ目や間隙を充たす細脈 として産する場合,

*この他に現在休山中の金山鉱床がある. この鉱 床は,黄鉄鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,菱鉄鉱を主と する鉱脈鉱床である.

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対州しげくま鉱山の含銀四面安銅鉱の産状と鉱物共生 51 

1

2

3

区巫

5 ‑ 6  

第 2図 鉱石スケッチ(産状①)

1 : 閃亜鉛鉱, 2 : 四面安銅鉱, 3 : 黄銅鉱,

4: 方鉛鉱, 5 : 石英, 6 : 泥岩

⑨  方鉛鉱中の島状交代残晶として産する場合,

③  炭酸塩鉱物脈中に捕獲される場合,

である.

①の産状は,特にしげくま鉱床に多く認められ,そ の代表的な鉱石スケッチを第2図に示す.四面安銅鉱 は黄銅鉱を密接に伴っており,巾1cm以下の細脈をな す.色調は帯緑暗灰色を呈し,黄褐色〜茶褐色の閃亜 鉛鉱とは明らかに異なるが,両者とも断口が比較的類 似している.

③の産状では,流理に似た構造(剪開による)を示 す方鉛鉱中に浮遊する形で,やや円味を帯びた四面安 銅鉱が認められる. この代表的スケッチを第3図に示 す.四面安銅鉱は肉眼的に単独で方鉛鉱中に存在する 場合もあるが,一般に閃亜鉛鉱,黄銅鉱を伴っている ことが多い. この産状は,方鉛鉱が閃亜鉛鉱を脈状に 切る場合,①の産状と連続的に認められることなどか ら,交代残晶と考えられる.四面安銅鉱は,①に較べ

1 cm 

.'.. ―"'" 

第 3図 鉱石スケッチ(産状③)

(凡例は第2図と同じ)

て緑色味が強くまた裂開に富む. この裂開の原因につ いては, a)四面安銅鉱が方鉛鉱中に捕獲, 交代され る際生じたものか, b)鉱床生成後の構造運動により 方鉛鉱は塑性変形を,四面安銅鉱は破壊歪を生じたも のと考えられるが,断層面付近の鉱石に鏡肌が観察さ れることから, b)の影糠が強いと思われる.

③の産状は,菱鉄鉱質の炭酸塩鉱物脈(巾15cm前後)

中に多くの泥岩や頁岩の角礫(l"‑'5cm径)を伴うのが 特徴である.四面安銅鉱は長径1cm以下の礫状で,③ と同様に閃亜鉛鉱や黄銅鉱を伴っているので,①の鉱 石が炭酸塩鉱物の晶出の際捕獲されたものと思われる.

上記の産状のうち,①の産状が大部分であり,③は

①と近接する方鉛鉱中に局部的に認められる.また③ は,しげくま鉱床に部分的に少量認められる.

4,  鉱 物 学 的 性 質

反射顕微鏡, X線粉末回折装置, EPMAによって 検討をおこなった結果,四面安銅鉱は銀を含むことが 判明し,また車骨鉱を伴うことが明らかになった.以 下各性質について述べる.

1)反射顕微鏡による性質

四面安銅鉱は,褐色味を帯びた灰白色を示し,反射 多色性,異方性,内部反射は全く認められない.琢磨 性は極めて良好である.琢磨硬度は,閃亜鉛鉱より軟 かく黄銅鉱より硬い.すべて他形で自形結晶は認めら れないまた光腐蝕反応は,照明光ならびに太陽光線 下でも認められない.

車骨鉱は,青味を帯びた灰白色を示す.反射能は,

四面安銅鉱より高いが,方鉛鉱よりわずかに低い.極 く弱い反射多色性と強い異方性を示す.特有の双晶が 認められる.琢磨性は良好で,琢磨硬度は黄銅鉱より 軟かく方鉛鉱より硬い.

閃亜鉛鉱は2種類認められる. 大部分の閃亜鉛鉱 は,黄白〜黄褐色の内部反射を示し,鉄の含有量が少 ないものである.一方,四面安銅鉱と黄銅鉱との境界 付近に認められる微細な内亜鉛鉱(第1図版5)' ぉ

よび車骨鉱とミルメカイト組織を示す閃亜鉛鉱(第1 図版6)は,反射能がやや低く,内部反射も認めがた ぃ. これは鉄の含有量が前者に較べて多いためと思わ れる.

2) EPMAによる定性分析

産状で述べた③の型,すなわち方鉛鉱中の交代残晶 を構成する四面安銅鉱一車骨鉱一閃亜鉛鉱の共生につ いて, EPMAによる定性分析をおこなった.測定は,

日本電子製 JXA‑3A型を使用し, 加速電圧 15KV,

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試料電流 0.07μAでおこなった. 試料の前処理とし てアルミニウム蒸着をおこなった.

分析の結果,四面安銅鉱は, Cu,Ag, Fe, Sbおよ びSが主成分であり, Znを微量に含むが, Hg,Pb,  Bi, As, Teはほとんど認められなかった. また車骨 鉱は, Pb,Cu, Sb, Sを主成分とし,それ以外の元素 はほとんど認められない. 閃亜鉛鉱 (内部反射を示 す)は,少量の Feを含んでいる.分析した試料の反 射顕微鏡写真と特性X線像を第2図版,第3図版に示 す.

3) X線 的 性 質

四面安銅鉱を手選によりとりだし, X線粉末回折を おこなった. その結果, BERRY and THOMPSON  (1962)のargentiantetrahedrite (a

=10.48A)

比較的よく一致する. しかしながら,試料によって2 0の値にかなり変動があることから,格子常数の精密 測定をおこなった. 測定は20で69‑‑‑‑...82゜の間の Cu Ka1による6本のヒ゜ーク*を, siliconを内部標準と

して補正し,算術平均して格子常数 a。を求めた.得 られた15個の試料の ao値を第4図および第5図に示 す. a。は 10.414‑‑‑‑...10. 564Aの広範囲にわたってお り,また従来の報告値と比較してはるかに大きな値の ものが少ない.

なお,同様にして閃亜鉛鉱(内部反射を示す)の格 子常数を算出した.その結果a。=5.408‑‑‑‑...5. 413A (17  個)であった.

Dana  Strunz  Berry 

Thompson  Lattice 

constant 

Harada&: 

Korlam•

1963 

Ushizawa  1969 

Ten.  Tet.  Frei. 

10.2  10.3  1 Of.+  10.5  10.6 , :.

心●11•

' I I ' , .   疇 . . . .

第 4図 四面銅鉱系の格子常数

Shigekuma  Nihongi 

Nakase  Chichihu 

Shalranai  11th  Furutobe 

Teine  Yakumo  Zemgame‑

*試料によっては Siliconのヒ°ークと重複するの で,必ずしも6本のヒ゜ーク全部は測定できない.

5.  共 生 関 係

四面安銅鉱は,閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,車骨鉱 および方鉛鉱と共存している.鏡下の観察から,上記 鉱物の関係を述べると次のようである.

早期の晶出鉱物は閃亜鉛鉱であり,やや遅れて黄鉄 鉱が晶出し,閃亜鉛鉱を交代している.この関係は黄 鉄鉱中の閃亜鉛鉱の残存組織から判断される.

四面安銅鉱と黄銅鉱は,閃亜鉛鉱および黄鉄鉱の割 れ目を充填しさらに交代している(第1図版1). 四 面安鉱銅は黄銅鉱を密接に伴っており,両者の関係は 次のようである. すなわち, a) 四面安銅鉱の細脈

(幅o.01,....,o.06mm)が黄銅鉱の細脈によって切られ,

その交差部では黄銅鉱が優勢で四面安銅鉱を交代して いる(第1図版 2). b) 両者の境界が明瞭な場合,

その境界は四面安銅鉱側が凹型を示し,黄銅鉱によっ て交代されている(第1図版3, PARK et al. , 1964,  fig,  4‑34).  C)黄銅鉱中に四面安銅鉱が点在する場 合,その境界は極めて不規則であり,四面安銅鉱の周 縁は 栗のいが状"を示す(第1図版4). これらのこ

とから,黄銅鉱がやや後期の晶出で,四面安銅鉱を交 代しているものと考えられる.なお,上記b)のよう な場合,両者の境界付近に微粒の閃亜鉛鉱(内部反射 認められず)が数珠状に連なっている場合がある(第 1図版5).これは,両者が反応した際余剰のFe,Zn  が閃亜鉛鉱を形成したものと考えられ,早期の閃亜鉛 鉱とは晶出時期が異なるものであろう.

方鉛鉱は晩期の晶出であって,閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,四 面安銅鉱,黄銅鉱を交代している.四面安銅鉱が方鉛 鉱中に島状交代残晶をなす場合,四面安銅鉱の周縁に は車骨鉱と閃亜鉛鉱のミルメカイト組織が発達してい る(第1図版6). これは明らかに四面安銅鉱と方鉛 鉱との反応によって生じた反応縁鉱物と考えられる (RAMDOHR, 1969,  fig.  134a).  この場合,閃亜鉛鉱 を伴わず車骨鉱のみの場合も少なくない.

6.  考 察

四面安銅鉱の産状,共生関係ならびに鉱物学的性質 について述べたが, 2• 3の考察をおこなってみたい.

今回報告した四面安銅鉱は,前述したように他の産 地のものに較べて格子常数 a。が極めて大きな値を示 すことが特徴である.この a。を大きくする要素とし て結晶化学的に考えられることは,イオン半径の大き さから, Cu2十の位置を Pb2+,Ag+, Hg+が置換する 場合と, Sb3十の位置を Bi3十が置換する場合が考え

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られる. EPMAの定性分析では, Pb,Hg, Biは検 出されず, Agが多量に検出されたことから,本鉱物 の a。は, Agの量に最も強く影響されているものと 考えられる.そこで,理想組成(Cu12Sb4 Sia)の四面 安銅鉱のa。を10.34A (STRUNZ, 1970), Agを6wt%

含む四面安銅鉱の a。を 10.42A (MACHATSCHKI, 

1928)として,今回の試料の格子常数が一義的に Ag の量に支配されているものと考えると, Agは5‑‑‑.,16 wt%含まれていることになる.

つぎに,産状と格子常数の関係について検討してみ た.その関係は第5図に示す通りである.aoは鉱脈の 上下あるいは水平方向に規則的な変化を示していな

ぃ .

NS系, N50°E系の裂か系統別にみても特徴的 領向が見い出せない.一方,試料によってはX線回析 のヒ°ークの拡がりが相対的に大きなものがあり, 1つ の試料の中でも a。の値は多少の幅をもっていると考 えられる. これらのことから,四面安銅鉱の化学組成 は多様でしかも微妙な変化を示す傾向が認められる.

EPMAによる特性X線像では,単結晶と考えられる 四面安銅鉱銅鉱の中で, CuとAgが不均質な濃度分 布を示しているものがあり(第2図版3,4), また四 面安銅鉱と方鉛鉱との反応縁に種々の場合があること は,上記のような理由によるものかもしれない.鏡下

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●  02 

SOM 

I  I  I  I  I  I 

第 5 図 しげくま鉱床透視断面における四面安 銅鉱の格子常数

C A )

と産状との関係

(凡例1,2, 3は,それぞれ産状①,

R ,  

⑧を示す.)

で同一に認められる四面銅鉱の化学組成が不均質な場 合があることは, SPRINGER (1969),  山岡 (1969), YUI (1970)によっても報告されている.

四面銅鉱系鉱物は,広範な化学組成の変化を示すこ とから,鉱化作用における元素の移動,拡散などの挙 動を知る上で有効な指標となりうる可能性がある.さ らにまた,牛沢 (1969)の報告からも判断されるよう に,鉱体あるいは鉱床の型式によっても化学組成の領 域に特徴があることから,四面銅鉱系鉱物の産状と化 学組成との関係の把握は重要である.今後EPMAに よる定量分析を数多く実施して,詳細なしかも系統的 な研究をおこなう必要があろう.

1.  結 ぴ

対州しげくま鉱山探鉱所のしげくま鉱床および二本 木鉱床の含銀四面安銅鉱について,その産状,共生関 係ならびに鉱物学的性質を報告した.簡単に要約する

と次のようである.

1.  鉱床は,対州層群(泥岩,頁岩および砂岩頁岩 細互層)中に胚胎する低熱水性亜鉛ー鉛ー銀の鉱脈鉱 床である.鉱石鉱物は,閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,四面安銅 鉱,黄銅鉱,車骨鉱,方鉛鉱である.脈石鉱物は一般 に少ないが,菱鉄鉱,方解石,石英,鉄緑泥石,絹雲 母などが認められる.

2.  四面安銅鉱は3種類の産状を示す.すなわち,

①閃亜鉛鉱および黄鉄鉱の割れ目を充たす細脈(巾1 cm以下)として産する場合;四面安銅鉱は閃亜鉛鉱,

黄鉄鉱を交代し,また四面安銅鉱と密接に伴う黄銅鉱 は,閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,四面安銅鉱を交代している.

R流理に似た構造を示す方鉛鉱中の島状交代残晶とし て産する場合;①の産状を示す四面安銅鉱が方鉛鉱中 に捕獲され,さらに交代されている.四面安銅鉱と方 鉛鉱との反応縁として,車骨鉱および一部閃亜鉛鉱が 認められる.③菱鉄鉱質細脈中に捕獲される場合,で

ある.

3.  四面安銅鉱の格子常数は, a0=10.414‑10. 564 

AC

試料15個)であり, 他の産地のものに較べて極め て大きな値を示す.・EPMAによる定性分析では, Sb の端成分に近くしかも Agが多量に検出されたことか

ら, a。は Agの量に強く支配されているものと考え られる. a。の値から推定される Agの量は, 5....̲̲,16  wt%である.

4.  鉱脈内における a。の分布は,上下および水平 方向に明瞭な規則性を示さない. これは, a。の広範な 値, X線回折ヒ°ークの拡がりの大きさなどから,四面

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安銅鉱の化学組成が多様でしかも微妙な変化を示すこ とによるものであろう.

5.  四面安銅鉱は,鉱化作用における元素の挙動を 知る上で有効な指標と考えられ, 今後 EPMAによ る定量分析などの詳細かつ系統的な研究が必要である.

引 用 文 献

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山岡一雄 (1969) : 東北地方の黒鉱鉱床産金銀鉱物に ついて.黒鉱鉱床の構成鉱物ならびに熱水鉱床産硫 化鉱物の結晶学と地球化学シンポジウム, 1‑37. Ym,  S.  (1970): Heterogeneity  within  a single 

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(8)

島 田 允 亮

対州しげくま鉱山の含銀四面安銅鉱の産状と鉱物共生について

第 1 " "   3 図 版

(9)

1

図 版 説 明

1.  黄 鉄 鉱 (Py)を交代する四面安銅鉱 (T)および黄銅鉱 (Cp).

2.  閃亜鉛鉱 (Sph)を切る四面安銅鉱(淡灰色)および黄銅鉱(白色)の細脈. 両細脈の交差部で は黄銅鉱が優勢で,四面安銅鉱を交代する.

3.  閃亜鉛鉱 (Sph)を交代する四面安銅鉱 (T)および黄銅鉱 (Cp).四面安銅鉱は黄銅鉱によって 交代されている.

4.  四面安銅鉱 (T) は,黄銅鉱 (Cp)によって交代されている.

5.  四面安銅鉱 (T) と黄銅鉱 (Cp)との境界付近に数珠状をなす閃亜鉛鉱(暗灰色).

6.  四面安銅鉱 (T) と方鉛鉱 (Gn) との反応縁をなす車骨鉱 (B) と閃亜鉛鉱(暗灰色) のミルメ カイト組織.

(10)

九 州 大 学 理 学 部 研 究 報 岩 ( 地 質 学 ) 第11巻 第1号 第1図 版

Cp  ー 、 .

0  . 2   mm 

島田 含 銀 四 面 安 銅 鉱 の 産 状 と 鉱 物 共 生

(11)

2

図 版 説 明

1.  反射顕微鏡写真(平行ニコル)

枠 内 ( 一 辺 200μ)は EPMAによる分析個所を示す. 白色:車骨鉱,淡灰色:四面安銅鉱,灰 色:閃亜鉛鉱.

2.  化 学 組 成 像

3.  特性X線 像 CuKa

4.  11  AgLa 

5.  11  FeKa 

6.  11  ZnKa 

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九 州 大 学 理 学 部 研 究 報 告 ( 地 質 学 ) 第11巻 第1号 第2図 版

0 . 1   m m  

島田 含 銀 四 面 安 銅 鉱 の 産 状 と 鉱 物 共 生

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3

図 版 説 明

7.  特性X線 像 SbLa

8.  11  AsLa 

9.  11  PbMa 

10.  11  SKa 

(14)

九州大学理学部研究報告(地質学)第11巻 第1号 第3図版

0 . 1   mm 

島田 :含銀四面安銅鉱の産状と鉱物共生

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参照

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