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日本の商品別国・地域別貿易指数

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(1)

日本の商品別国・地域別貿易指数

[2006 年版]

貿易指数データの作成に関する調査研究

平成 18 年 11 月

財団法人 国際貿易投資研究所

(2)

2002年2月から始まった日本の景気拡大は5年近く続き、戦後最長となった。国内需要も個 人消費の伸びは十分ではないものの、設備投資を中心に拡大し、雇用情勢も大きく改善してい る。こうした国内需要の伸びを反映して輸入数量も順調に拡大していることに加え、原油価格 の高騰などから2005年は輸入金額が対前年比15.7%と大きく伸びた。この結果、日本の貿易黒 字は2002年以来、再び10兆円を下回り8.7兆円となっている。一方、輸入の急増が続く米国の 貿易赤字は、2005年に7,675億ドル(通関ベース)、2006年には8,000億ドルを超える水準にな ろうとしている。そうした中にあっても日本の対米黒字はそれほど拡大していないが、その背 景には、日本、中国、米国の間の貿易構造の変化がある。

こうした認識のもと、本報告書では、日本の品目別、地域別の輸出入の数量指数、価格指数 を作成し、これらの指数を用いて日本の貿易構造を分析した。上記のような日本の貿易構造変 化の実体は、金額ベースだけでは正確に把握できず、数量と価格の要因に分けて分析すること が重要である。これによって地域ごとの輸出入変化がより明確となると同時に、国別の貿易構 造変化などの分析が可能となる。

本報告書では、付表1として部品類も含めた機械類を中心に、機械種別に輸出入数量指数、

金額指数、価格指数を掲載した。また、付表2、3にはそれぞれ商品特殊分類別、製品と主要 商品分類基準別の貿易指数を掲載した。いずれも、対世界、米国、EU15、NIEs、ASEAN4、

中国、東アジアの7地域別に指数を算出している。さらに、付表4には、アジア主要8ヶ国(韓 国・台湾・香港・シンガポール・タイ・マレーシア・フィリピン・インドネシア)別の主要商 品の貿易指数も掲載した。また暦年データは1998年~2005年を円ベースとドルベースで、四 半期データは2002年~2005年を円ベースでそれぞれ示してある。

これらのデータが日本の貿易構造の現況を理解する上での基礎資料として役立てば幸甚で ある。

平成18年11月

(財)国際貿易投資研究所

(3)

目 次

アメリカの企業内貿易に関する実証分析

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

1. 貿易品目別の企業内貿易比率

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

2.アメリカの貿易収支における企業内貿易

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

3.企業内貿易と比較優位

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

(1) 企業内貿易における比較優位構造

(2)米系多国籍企業の貿易収支は、なぜ黒字傾向なのか (3) 親会社側の輸出超過傾向の要因

4.相対価格の変化が企業内貿易に与える影響

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

5.まとめと残された課題

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

[補論] アメリカの輸出入の所得弾力性、価格弾力性に関する推計結果

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

付表1 機械類を中心とする地域別貿易指数

‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥‥

付表2 商品特殊分類基準による地域別貿易指数

‥‥‥‥‥‥‥‥‥

付表3 製品と主要商品分類基準による地域別貿易指数

‥‥‥‥‥

付表4 主要品目における対アジア 8 カ国別貿易指数

‥‥‥‥‥‥

(韓国・台湾・香港・シンガポール・タイ・マレーシア・フィリピン・

インドネシア)

(4)

1

アメリカの企業内貿易に関する実証分析

近年アメリカの貿易構造は、様々な面で変化している。例えば、2005年の7,820億ド ル(国際収支ベース)を超える大幅な貿易赤字、中国を中心とする対アジア輸入の急増、

NAFTA以降の対メキシコ貿易の拡大などである。こうしたアメリカの貿易構造の急激な変

化の中で、多国籍企業による企業内貿易はどのように位置付けられるのだろうか。アメリ カの貿易に占める企業内貿易の比率は、現在、輸出入とも約1/3と重要な位置を占めている が、企業内貿易に関しては理論的にも実証的にも必ずしも十分な研究が進んでいるとは言 い難い。

そこで本稿ではアメリカの企業内貿易に関して、四つの側面から実証的な分析を試みた。

第1は、企業内貿易比率(企業内貿易が貿易総額に占める比率)の品目別の特性、第2は 企業内貿易がアメリカの貿易収支に果たす役割、第3は企業内貿易と比較優位との関連性、

そして第4は、企業内輸出入の所得弾力性、価格弾力性、という視点である。

なお、本稿で扱う企業内貿易とは、米系多国籍企業が在外子会社との間で行う貿易なら びに外資系の親会社が在米子会社と行う貿易を意味する1。なお、「子会社」に関しては、原 則的には、過半数株所有の非銀行子会社(直接投資家が 50%以上の株を所有)とした。た だし、在米外資系企業に関しては、利用可能なデータに制約があるため、(2001年以前のデ ータを含む)長期データを使用する場合には、通常(直接投資家が 10%以上の株を所有)

の非銀行子会社のデータを用いた2。また、分析対象期間は、1983~2003年とした。

1 企業内貿易という場合、親子会社間の貿易取引を意味するが、「親会社」と「子会社以外の企 業」との貿易取引や、「子会社」と「親会社以外の企業」との貿易取引も多国籍企業に関連す る貿易取引としてアメリカでは統計が公表されている。また、子会社間の貿易も概念的に企業 内貿易に入るが、これに関してのアメリカの公表された統計はない。また、外国多国籍企業の 在米子会社が海外に持つ(10%以上株式所有)海外孫会社と行なう貿易は1987年から公表さ れているが、それらが貿易全体に占める比率は、2003年においても輸出で3.1%、輸入で2.2%

にすぎず、今回の分析対象とはしなかった。

2 米系多国籍企業においては、企業内貿易に関する詳細なデータは、Benchmark 年を除き、主 としてMOFA(Majority Owned Foreign Affiliates、外国の直接投資家が50%以上の株を所 有の子会社)に関して公表されている。一方、在米外資系企業に関する企業内貿易の詳細なデ ータは、1996年までは主として通常(10%以上の株式所有)の子会社に対して公表され、1997

~2001年には通常の子会社と過半数株所有の子会社(Majority Owned U. S. Affiliates)との 両方に関して公表され、2002年以降は過半数株所有の子会社のみに関して公表されている。

本稿では、2002年以降の在米外資系企業の通常の子会社の値は、過半数株所有の子会社のデ ータに2001年における両種のデータの比率を乗じた推計値としている。

なお、過半数株所有の子会社に関する企業内貿易の値と通常(10%以上の株式所有)の子会 社に関するそれとの間に大きな差はなく、過半数株所有の子会社の値でそのほとんどがカバー されている。例えば、通常の子会社の企業内貿易の値を100としたとき、過半数株所有の子 会社の企業内貿易の値は次の通りである。米系多国籍企業の場合、輸出で97.6、輸入で96.7

(1999年)であり、在米外資系企業の場合、輸出で97.8、輸入で97.8(2001年)である。

(5)

2 1. 貿易品目別の企業内貿易比率

企業内貿易比率は品目によって差があるのか、あるとすればどのような品目で企業内貿 易比率が高いのか。品目別の企業内貿易に関して最新のデータが得られる 1999年と2002 年について、内外の多国籍企業の企業内貿易比率を品目別に見たものが、表1である3。表 に示されるように、企業内貿易比率は品目によって大きな違いがある。興味深いことに、

アメリカからの輸出面で企業内貿易比率が高い(低い)品目は、輸入面でも高い(低い)

傾向があり、企業内貿易比率の大小と取引される品目特性との間に密接な関係があること を示している4。企業内輸出比率と同輸入比率との関係を図示したのが図1である5が、両者 の間には強い相関関係(相関係数 0.87)があることが示されている。企業内貿易比率の最 も高い品目である自動車・同部品では企業内輸出は約60%、同輸入比率は約80%と高率で、

これに次ぐ化学品、事務機・コンピュータ、通信機器・電子部品でも企業内輸出入比率は 40~60%と高水準にある。これに対して、食料品、原油等を除く原材料、その他の製造業 品は、企業内貿易比率が輸出入ともに 25%以下である。日本の企業内貿易に関しても、電 気機械、輸送機械、精密機械で高いとの指摘もあり(通商産業省(1986))、企業内貿易比 率の高い品目に日米で一定の共通性がある。

   表1 品目別の企業内貿易比率 (%)

企業内輸出比率 企業内輸入比率 企業内輸出比率 企業内輸入比率

全 品 目 22.8 15.5 9.3 23.0

食料品、飲料、タバコ 7.9 9.6 15.6 14.8

燃料以外の非可食原材料 6.9 4.4 16.0 16.7

鉱物性燃料 20.3 11.8 13.3 12.4

化学品 32.9 23.6 13.1 30.7

産業用機械機器 21.3 12.6 5.7 20.0

事務機器・コンピューター 41.3 22.0 3.4 18.1

通信機器・その他の電子機器 29.5 18.8 11.1 41.1

自動車・同部品 44.2 34.5 15.8 45.4

その他の輸送機器 1.8 9.6 8.7 18.2

その他の製造業品 14.1 4.9 5.0 11.6

  注) 品目別の企業内貿易比率=当該品目の企業内輸出額(輸入額)/当該品目の総輸出額(輸入額)

  資料) Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of Commerce のデータより作成。

米系多国籍企業 (1999年) 在米外資系企業 (2002年)

       企業内貿易比率   品 目

このような品目による企業内貿易比率の違いは、何に起因しているのであろうか。一つ の見方は、こうした企業内貿易が産業内貿易と強く関連しているという仮説である。例え ば、1970年代初めまで企業内分業は産業内分業の一種(中間財取引のシェアが圧倒的な産

3 アメリカ商務省からは品目別の十分なデータは公表されていない。毎年公表されるデータでは、

子会社や親会社の産業別(業種別)のデータは示されるものの、それらがどのような品目を輸 出入しているのかに関しては、特定の年に、しかも粗い品目分類で明らかにされているにすぎ ない。現在入手しうる最も新しいデータは、米系多国籍企業に関するものでは1999年、在米 外資系企業に関するものでは2002年で、それぞれ10品目での分類によるデータが公表され ている。いずれも対象となる子会社は、過半数株所有の非銀行子会社。

4 企業内貿易を、①米系多国籍企業の企業内輸出、②同輸入、③在米外資系企業の企業内輸出、

④同輸入、の4つのカテゴリーに分けると、このうち、①、②、④の間には、相互に高い相関 がある。③と他の3種の企業内貿易との間の相関係数は小さいが、これは、在米外資系企業の 企業内輸出では、食料や原材料品の比率が相対的に高く、事務機器・コンピュータの比率は相 対的に低いためでもある。こうした傾向には、③のカテゴリーで大きなウェイトを占める日本 企業、特に商社の行動も影響していると考えられる。

5 米系多国籍企業による企業内輸出(輸入)比率と在米外資系企業による企業内輸出(輸入)比 率を加えたもの。米系多国籍企業の品目別データは1999年、在米外資系企業によるデータは 2002年で、両者はデータの年度が異なるが、ここでは3年程度では品目別の企業内貿易比率 に大きな変化はないと仮定して両者の値を加算した。

(6)

3 業内貿易)として取り扱われていたとの指摘もある(岩田(1993, p. 96))。また現在でも 企業内貿易と産業内貿易とが同列に扱われることもある。こうした観点に立てば次のよう な仮説が立てられるだろう。

【仮説1】産業内貿易の進んでいる品目ほど企業内貿易比率も高い。

しかし、こうした見方に対する反論もある。例えば木村(2002, p. 39)は、企業内貿易 は一種の垂直的工程間分業であり、「企業内貿易を産業内貿易の一形態であるかのように議 論することも多いが、概念上は全く異なる次元で整理すべきである」としている。

図1 品目別の企業内輸出比率と企業内輸入比率

食料品、飲料、およびタバコ 燃料以外の非可食原材料

鉱物燃料

化学品

産業用機械機器

事務機器・コンピューター 通信機器・その他の電子機器

自動車・同部品

その他の輸送機器

その他の製造業品

企業内輸出比率(%) 企業内輸入比率(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

0 10 20 30 40 50 60 70

注)企業内輸出(輸入)比率=米系多国籍企業の企業内輸出(輸入)比率+在米外資系企業の企業内輸出(輸入)比率 資料) 表1 のデータより作成。

(傾向線)

そこで企業内貿易比率と産業内貿易指数6との関連性を検討してみた(表2)。表にも示さ れるように両者の間の相関係数は、0.179 に過ぎず、今回のアメリカのデータで見る限り、

企業内貿易比率の大小と産業内貿易の大小との間には明確な相関関係は見られない。

6 k を「全体の貿易」もしくは「企業内貿易」とし、品目グループI に含まれる品目i の輸出 額をxk,i、輸入額をmk,iとすると、品目iのグルーベル=ロイドの産業内貿易指数は次のように 定義される。

i k i k

i k i k

m x

m x

, ,

,

, |

1 |

+ - -

なお、(全体の貿易もしくは企業内貿易の)貿易不均衡からくる指数のバイアスを修正するた

め、AquinoのQと同様の方法で不均衡のバイアスを調整した(野田(2006, pp.43-44)を参照)。

すなわち、

I k I k I k i e k

i

k x x m x

x , = , ( , + , ) 2 , , mke,i =mk,i(xk,I +mk,I) 2mk,I ここで、

å

Î

=

I

i ki

I

k x

x , , ,

å

Î

=

I

i ki

I

k m

m , , として、

e i k e

i k

e i k e

i k

m x

m x

, ,

,

, |

1 |

+

- - で産業内貿易指数を算定している。

(7)

4

Helleiner (1981)も、より詳細な品目分類(SITCの3桁)を用いて1975年の企業内貿易の

比率と産業内貿易指数との順位相関を求め、両者にはほとんど関連が無いことを示してい る。

   表2 企業内貿易と産業内貿易

食料品、飲料、およびタバコ 47.9 0.759

燃料以外の非可食原材料 44.1 0.939

鉱物燃料 57.7 0.317

化学品 100.3 0.743

産業用機械機器 59.6 0.693

事務機器ならびにコンピューター 84.7 0.921 通信機器およびその他の電子機器 100.6 0.826

自動車ならびに部品 139.8 0.780

その他の輸送機器 38.4 0.450

その他の製造業品 35.7 0.921

注) 企業内貿易比率は、表1における企業内輸出入比率を合算したもの。

資料)表1と同。

相関係数=0.179

産業内貿易指数   (2002年)

企業内貿易比率  

  品  目

もちろん、企業内貿易比率や産業内貿易指数の値は、産業分類の仕方にも依存するので 一般的な結論として断定することはできないが、以上の分析結果に基づけば、仮説1に示 したような企業内貿易比率の品目ごとの違いを産業内貿易の程度によって説明することは 難しい。確かに企業内貿易が産業内貿易の一部を構成することはあるだろうが、両者の間 にはそれほど密接な関係はない。

それでは、自動車、化学、コンピュータ、通信機・電子部品などの品目でなぜ企業内貿 易比率が高いのか、逆に同じ機械産業でも産業用機械ではなぜ企業内貿易比率が低いのか。

完全な理由をここで示すことは難しい。しかし、これら企業内貿易比率の高い品目を製造 する産業に共通する一つの特徴は、技術革新のスピードが速い産業や製造・販売のための 垂直的な統合が合理的である産業が多く含まれていることである。この場合、自社の技術 を守るためや、価格調整に伴う交渉コストを考えると、国際取引を一般市場で行うよりも 企業内部で行う方が合理的になる。これは多国籍企業論で「内部化理論」と呼ばれる範疇 に属する議論である。利用可能な品目分類が粗いためこれ以上の分析には一定の限界があ るが、今後、こうした観点からより詳しい研究が必要であろう。

2.アメリカの貿易収支における企業内貿易

米系多国籍企業が海外進出することが、アメリカの貿易赤字を拡大しているのではない かと懸念する議論がある。すなわち、これまで輸出していた企業が海外に生産拠点を設け ることで当該親企業からの輸出が減少し、あるいは在外子会社からの逆輸入によって貿易 赤字が拡大するなどの主張である。こうした議論にしたがえば、例えば米系多国籍企業は、

労働集約的な財の生産のために中国に直接投資を行うが、こうした在中国子会社からの逆 輸入の増大は、アメリカの貿易赤字を拡大させる一因となる。同様のことがアメリカの対 メキシコ貿易についても言えるかもしれない。NAFTA締結後、米墨間の貿易は顕著に拡大 しているが、これも米系多国籍企業が安い賃金や緩い環境基準を求めてメキシコに直接投 資したことによるものであり、在メキシコ製造子会社からの企業内輸入は、貿易赤字をさ らに拡大する要因となるだろう。実際、アメリカの対中国、対メキシコ貿易収支の赤字は

(8)

5 近年急速に拡大している。こうした見方に立つならば次のような仮説を立てることができ るだろう。

【仮説2】アメリカの貿易赤字の拡大は、米系多国籍企業による企業内貿易によって主導 されている。

ただし、対外直接投資によって貿易赤字が増えるか減るかといった議論はそれほど単純 ではない。製造業の直接投資によって、完成品が逆輸入されこともあるが、資本財や部品・

中間財の輸出が促進される面もある。また、それまで輸出製品を作っていた国内工場を海 外に移転した場合でも、そこで働いていた労働者が他の輸出産業に回って輸出を拡大した り、輸入競合産業に従事して輸入を減らしたりすることは十分に考えられる7。したがって、

マクロ的に見た貿易収支への影響は不明である8

図2 アメリカの貿易収支の推移(1983-2003年)

-600,000 -500,000 -400,000 -300,000 -200,000 -100,000 0 100,000

1983 1984

1985 1986

1987 1988

1989 1990

1991 1992

1993 1994

1995 1996

1997 1998

1999 2000

2001 2002

2003

資料) 図1と同。

(100万ドル$)

① 企業内貿易収支(米系多国籍企業)

② 企業内貿易収支(在米外資系企業)

③ 企業内貿易以外の貿易収支 アメリカの貿易収支

実際に、アメリカの貿易収支の中で企業内貿易はどのような位置を占めているだろうか。

仮説2が妥当かどうかは、企業内貿易とそれ以外とに分けてアメリカの貿易収支を見るこ とである程度判断できる。図2は、1983年以降の企業内貿易収支の推移を①米系多国籍企

7 実際には、直接投資が企業内貿易に与える影響はもっと複雑である。海外に新たに製造拠点を

設けるgreenfield型の直接投資だけでなく、米欧間で一般的なM&A型の直接投資によっても、

企業内貿易は影響を受ける。一般に、国際的なM&Aは企業内貿易の大きさに二つの方向で作 用する。一つは、自社の子会社(関連会社)が、外国の企業に買収されるケースで、仮に買収 後も従来通りの貿易取引を継続した場合は、それまで企業内貿易に分類されていた当該取引は、

定義上、企業内貿易取引から外れることになり、企業内貿易を減らす方向に作用する。もう一 つは、これまで海外子会社を持たなかったアメリカ国内企業が、従来から貿易取引のある外国 の企業を買収したケースで、その貿易取引は新たに企業内貿易に分類されることになり、企業 内貿易を増やす方向に作用する。このように、M&A型の直接投資は、新たな貿易を生むとい うより、定義上の分類の変更によって企業内貿易の大きさに影響を与える。

8 マクロ経済的には、直接投資が国内や海外の所得(貯蓄)や投資にどのような影響を与えるか に依存する。また、国内経済が完全雇用か、不完全雇用か、によっても直接投資の貿易収支に 与える効果は異なってくる。

(9)

6 業の企業内貿易、②在米外資系企業の企業内貿易、③ ①、②以外の一般の貿易9、の3つ に分けて見たものである。図から企業内貿易に関して、いくつかの傾向を読み取れる。第 1は、米系多国籍企業による企業内貿易収支が概ね黒字傾向を示している点である。1999 年以降は赤字に転じたものの、アメリカ全体の貿易赤字が5,800億ドルに拡大した2003年 でも、その赤字幅は300億ドル程度に過ぎない10。確かに米系多国籍企業の海外製造子会社 からの逆輸入は急増しているが、同時に海外製造子会社向けの企業内輸出も堅調に伸びて きている11。第2に、これとは対照的に在米外資系企業による企業内貿易収支は恒常的に赤 字であり、2000年代には、毎年2,000億ドルを超える大幅な赤字を示している。第3に、

1991年以降、今日に至る大幅な貿易赤字の拡大に最も大きく貢献したのは企業内貿易以外 の貿易収支の悪化である12。実際1999~2003年でアメリカ全体の貿易赤字は4,940億ドル 拡大したが、その内訳は、米系多国籍企業の企業内貿易によるもの 480 億ドル、在米外資 系企業の企業内貿易によるもの 1,240 億ドル、企業内貿易以外の貿易によるもの 3,220億 ドルであり、寄与度は、それぞれ9.7%、25.1%、65.1%である。

上には米系多国籍企業の企業内貿易収支は黒字もしくは小幅赤字に留まることを示した が、そうした貿易収支の「水準」だけでなく、貿易収支の「変動の方向」も米系多国籍企 業の企業内貿易とそれ以外の貿易とではかなり異なっている。例えば、アメリカ全体の貿

易赤字は1991~1997年で1,240億ドル悪化したが、この間の米系多国籍企業の企業内貿易

黒字は逆に 230 億ドルも改善しているのである。これに対して、在米外資系企業による企 業内貿易赤字は490億ドル、企業内貿易以外での貿易赤字は970億ドル、それぞれ拡大し ており、同期間の貿易収支の悪化が、米系多国籍企業の企業内貿易以外で生じていること は明らかである。同様の現象は、1983~1987年のレーガン政権下でアメリカ全体の貿易赤 字が急拡大した時にも生じている。すなわち、当時アメリカの貿易赤字が 1,020 億ドルも 悪化したのに対して、米系多国籍企業の企業内貿易黒字は逆に60億ドル近く改善している のである。

以上の傾向から判断すると、仮説2に示したような見方、すなわち、近年のアメリカの 貿易赤字の悪化の主因を米系多国籍企業の企業内貿易に帰するという見方を支持するのは

9 ③のほとんどは独立企業間の貿易取引であるが、一部には子会社間の貿易取引も含む。

10 米系多国籍企業の企業内貿易の収支は1998年まで黒字基調を維持してきたが、これに対して は、次のような見方もありうる。すなわち、アメリカの親会社が輸出する相手は、必ずしも外 国の子会社とは限らない。海外へ進出することによって、これまで子会社以外に輸出していた ものを子会社への輸出に振り替えることもあり得る。このような場合、在外子会社向けの輸出 が増えた分、子会社以外への輸出は減っているため、企業内輸出だけを見ていたのでは、アメ リカの親会社の輸出を過大評価することになる。また、在外子会社からの輸入も必ずしもアメ リカの親会社を経由するとは限らない。親会社以外のアメリカ企業が、在外子会社から直接輸 入することもありうるからである。この場合は、企業内輸入だけを見ていたのでは、在外子会 社からの輸入を過小評価することになるだろう。そこで、企業内貿易よりも範囲を拡げて、こ れらの米系多国籍企業関連の貿易(①企業内貿易、②「米国親会社」と「在外子会社以外」の 貿易、③「在外子会社」と「米国親会社以外」の貿易、の合計値)の貿易収支を計測すること もできる。このように範囲を拡大して米系多国籍企業関連の貿易の収支を見ても、その赤字は 2003年で400億ドル未満にすぎない。

11 米系多国籍企業の製造業子会社に対する輸出は1997年以降停滞気味であるが、同時に製造業 子会社からの輸入も2000年以降停滞もしくは減少する傾向にある。

12 一般的に企業内貿易収支は、企業内貿易以外の貿易収支と比較して変動が少ない。これは米 系多国籍企業、在米外資系企業に共通して見られる傾向である。さらに貿易収支が悪化する時 だけでなく、アメリカの貿易収支が改善した1986、87年から1991年にかけても同様の傾向 が見られ、当時の貿易収支の改善幅の大部分は企業内貿易以外の貿易収支の改善によるものだ った。

(10)

7 難しい。貿易収支の水準ならびに時間的変化の状況から見て、アメリカの貿易赤字の拡大 は、むしろ米系多国籍企業以外で生じているのである13

3.企業内貿易と比較優位

前節でも見たように、米系多国籍企業による企業内貿易は、それ以外の貿易と比較して むしろ貿易黒字の傾向を持っていた。こうした傾向は、企業内貿易の品目構成と何か関係 があるのだろうか。本節では、企業内貿易と比較優位構造との関係を分析してみたい。

(1) 企業内貿易における比較優位構造

最初に、企業内貿易の比較優位構造とアメリカ貿易全体の比較優位構造とが同じかどう か、という問題を検討する。この問題に対しては、二つの可能性が考えられる。第1の可 能性は、もともと企業内貿易は多国籍企業内部での国際分業に基づく貿易であり、一般市 場を介さない貿易であるから、一般市場を介する普通の貿易とは比較優位構造が異なると いうものである。例えば、アメリカ全体では比較優位を持たない品目でも、米系多国籍企 業の企業内貿易だけで見ると輸出競争力をもっていることもあるかもしれない。多国籍企 業が独自の技術を持っていれば、この傾向はさらに強まるかもしれない。この立場に立っ た仮説は次のようなものになろう。

【仮説3】企業内貿易は、アメリカの貿易全体でみた比較優位構造とは異なる特有の比較 優位構造を持つ。

これに対して第2の可能性は、企業内貿易といえども一般の貿易と同様、比較優位構造 は基本的に同じだというものである。多国籍企業が独自の技術を持つとしても、賃金コス トや資本蓄積の違い、各国の経済インフラなどの差によって生ずる比較優位構造から離れ ることはできない。そもそも多国籍企業が様々な国に直接投資をするのは、ある意味で他 国の比較優位構造を利用するためでもある。

13 本節の冒頭で見たアメリカの対メキシコや対中国の貿易赤字に関する企業内貿易の寄与度は 次の通り。2003年のアメリカの対メキシコ貿易赤字422億ドル(国際収支ベース、以下同)

のうち、米系多国籍企業の企業内貿易赤字は119億ドル(28.3%)である。また、対中国(香 港を含む)貿易赤字1,306億ドルのうち、米系多国籍企業の企業内貿易赤字は18億ドル(1.4%)

にすぎない。

(11)

8 図3 貿易特化係数の相関(米系多国籍企業、1999年)

(45度線)

その他の製造業品

その他の輸送機器 自動車・同部品

通信機器・その他の電子機器

事務機器・コンピューター

産業用機械機器 化学品

鉱物性燃料

燃料以外の非可食原材料 食料品、飲料、タバコ

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

アメリカ貿易全体の貿易特化係数 企業内貿易の貿易特化係数

資料) 図1と同。

図4 貿易特化係数の相関(在米外資系企業、2002年)

その他の製造業品

その他の輸送機器

自動車・同部品

通信機器・その他の電子機器

事務機器・コンピューター

産業用機械機器 化学品

鉱物性燃料

燃料以外の非可食原材料 食料品、飲料、タバコ

(45度線)

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

アメリカ貿易全体の貿易特化係数 企業内貿易の貿易特化係数

資料) 図1と同。

(12)

9 そこで品目ごとの比較優位の指標として貿易特化係数 を使い、仮説3を検証してみた。

図3には1999年のアメリカ貿易全体の貿易特化係数と米系多国籍企業による企業内貿易の 貿易特化係数との関係を図示した。図には 45 度線を示してあるが、全ての品目がこの 45 度線上にあれば、アメリカ貿易全体の貿易特化係数と企業内貿易の貿易特化係数が等しく、

両者の比較優位構造は同じであるとみなすことができる。図3で多くの品目は45度線の近 傍にあり、両者には一定の相関関係(0.42)が認められる。ただし、「その他の製造業品」

や「その他の輸送機械」は45度線から乖離している。特に「その他の輸送機械」は下方に 大きく乖離しており、アメリカ全体の貿易に比べて、米系多国籍企業の企業内貿易では同 品目の輸入傾向が強いことを示している。これは、このカテゴリーに航空機や二輪車、船 舶など、多様な品目が含まれるため、企業内貿易とそれ以外の貿易とでは、取引されてい る品目が異なるためと思われる。実際、「その他の輸送機械」のカテゴリーを除いた相関係 数は0.84で、アメリカ貿易全体の貿易特化係数と米系多国籍企業の企業内貿易の貿易特化 係数との間には強い相関関係があることが分かる。

同様に、図4には、2002年のアメリカ全体の貿易特化係数と在米外資系企業の企業内貿 易の貿易特化係数との関係を示したが、これにも強い相関関係(0.76)があり、アメリカ貿 易全体の貿易特化係数と企業内貿易の貿易特化係数が近似していることを示している。た だし、図4を詳細に見ると、「食料品・飲料・タバコ」「燃料以外の非可食原材料」は45度 線から上方に乖離しており、これらの品目では企業内貿易の方が、アメリカ全体の貿易に 比較して輸出傾向が強いを持つことを示している。逆に「事務機器・コンピュータ」「通信 機器・その他の電子機器」は下方に乖離しており、企業内貿易の方が、輸入傾向が強いこ とを示している15。これらの乖離部分は、それぞれのカテゴリーに含まれる品目構成がアメ リカ全体の貿易と企業内貿易とで異なっているために生じている面もあるだろうが、企業 内貿易特有のものとも考えることができる。その意味では仮説3に示されるような多国籍 企業に特有の比較優位構造も(特に在米外資系企業の企業内貿易では)ある程度存在して いると考えられる。しかし、全体としてみると、アメリカの比較優位品目と内外多国籍企 業の比較優位品目とは、近似していると言えるだろう。すなわち、アメリカ全体として輸 出超過(輸入超過)傾向にある品目では、内外多国籍企業の企業内貿易でも概ね輸出超過

(輸入超過)傾向にあることを、図3や図4は示しているのである。

14 k を「全体の貿易」もしくは「企業内貿易」とし、品目グループI に含まれる品目i の輸出 額をxk,i、輸入額をmk,iとすると、品目iの貿易特化係数は次のように定義される。

i k i k

i k i k

m x

m x

, ,

, ,

+ -

なお、(全体の貿易もしくは企業内貿易の)貿易不均衡からくる係数のバイアスを修正する ため、産業内貿易指数と同様の方法で不均衡のバイアスを調整した(脚注6を参照)。すなわ ち、

I k I k I k i e k

i

k x x m x

x , = , ( , + , ) 2 , , mek,i =mk,i(xk,I +mk,I) 2mk,I ここで、

å

Î

=

I

i ki

I

k x

x , , ,

å

Î

=

I

i k i

I

k m

m , , として、

e i k e

i k

e i k e

i k

m x

m x

, ,

, ,

+

- で貿易特化係数を算定している。

15 在米外資系企業のかなりの部分は日本企業であり、「食料品・飲料・タバコ」「燃料以外の非 可食原材料」は日本の商社が、「事務機器・コンピュータ」「通信機器・その他の電子機器」は 日本の電気・電子メーカーが関与しているウェイトが高いと思われる。

(13)

10 (2)米系多国籍企業の貿易収支は、なぜ黒字傾向なのか

さて、前節でも見たように、企業内貿易収支を米系多国籍企業と在米外資系企業とに分 けてみると、前者は黒字もしくは小幅赤字、後者は恒常的に赤字傾向にある(前出図2参 照)。これを別の角度から見たのが、図5、6である。両図は、米系多国籍企業と在米外資 系企業とについて、輸出(輸入)総額に占める企業内輸出(輸入)の比率の推移を示した ものである。

図5 米系多国籍企業による企業内輸出入比率の推移

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

1983 1984

1985 1986

1987 1988

1989 1990

1991 1992

1993 1994

1995 1996

1997 1998

1999 2000

2001 2002

2003

注)企業内輸出比率=企業内輸出/総輸出、企業内輸入比率=企業内輸入/総輸入 資料) 図1と同。

米親会社から在外子会社への 輸出比率

米親会社の在外子会社からの 輸入比率

EX

IM

図6 在米外資系企業による企業内輸出入比率の推移

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

1983 1984

1985 1986

1987 1988

1989 1990

1991 1992

1993 1994

1995 1996

1997 1998

1999 2000

2001 2002

2003

注)企業内輸出比率=企業内輸出/総輸出、企業内輸入比率=企業内輸入/総輸入 資料) 図1と同。

在米子会社から外国親会社への 輸出比率

在米子会社の外国親会社からの 輸入比率

EX IM

図5から、米系多国籍企業の企業内貿易については、輸出比率が輸入比率を恒常的に上 回り、逆に在米外資系企業の企業内貿易(図6)に関しては、輸入比率が輸出比率を大幅 に上回っていることが分かる。言わば、米系多国籍企業は輸出超過の傾向を持ち、在米外

(14)

11 資系企業は輸入超過の傾向を持つ 。何故こうした違いが生じているのだろうか。考えられ る一つの仮説は、米系多国籍企業はアメリカの比較優位品目で大きなウェイトを占めるた め、その企業内貿易も輸出超過の傾向を持つが、在米外資系企業はアメリカの比較劣位の 品目で大きなウェイトを占めるため、その企業内貿易も輸入超過の傾向を持つというもの である。仮説としてまとめると次のようになろう。

【仮説4】米系多国籍企業は、アメリカが比較優位のあるような品目で活発に企業内貿易 を行っている。逆に在米外資系企業は、アメリカに比較劣位の(比較優位の無い)品目で 活発に企業内貿易を行っている。

実際にそうした命題が成り立つかを検証したのが表3、4である。表には、比較優位の 指標としてアメリカ貿易全体の貿易特化係数をとり、企業内貿易の品目別構成比(輸出構成 比+輸入構成比)とともに示してある。表には貿易特化係数と品目別構成比との相関係数も 示した。両者の相関係数は、米系多国籍企業に関しては-0.246とマイナスの相関であり(表 3)、貿易特化係数の大きい(輸出に偏った)品目で米系多国籍企業の企業内貿易のウェイ とが高いとは言えない。また、在米外資系企業に関しては-0.169 であり(表4)、相関係 数はマイナスだが、その値は小さく、貿易特化係数の小さい(輸入に偏った)品目で在米 外資系企業の企業内貿易のウェイトが特に高いとは言えない。こうした結果は、アメリカ をめぐる企業内貿易の状況が、仮説4に示されるような状況にはないことを示している。

すなわち、米系多国籍企業の企業内貿易は、アメリカの比較優位品目(貿易特化係数の大 きい品目)で特に大きなウェイトを占めるわけでもなければ、在米外資系企業の企業内貿 易もアメリカの比較劣位品目を中心に行われているわけでもない。

16 ここでの輸出超過の傾向とは、輸出入「比率」の大小について述べているのであり、絶対値 での大小を意味しているわけではない。別言すれば、もし輸出総額と輸入総額が一致した状態 であれば、輸出超過傾向は貿易黒字となることを意味するが、実際に企業内貿易収支が黒字に なるかどうかは、輸出総額と輸入総額との相対的な大きさに依存する。

(15)

12   表3 米系多国籍企業の企業内貿易 (1999年)

輸出金額

輸出構

成比① 輸入金額

輸入構 成比②

企業内貿 易構成比

(①+②)

アメリカ貿易全体 の貿易特化係数 食料品、飲料、およびタバコ 4,014 ( 2.5 ) 4,614 ( 2.9 ) 5.4 0.217 燃料以外の非可食原材料 1,046 ( 0.7 ) 1,196 ( 0.8 ) 1.4 -0.095 鉱物性燃料 2,404 ( 1.5 ) 9,029 ( 5.7 ) 7.2 -0.628

化学品 19,542 ( 12.3 ) 12,826 ( 8.1 ) 20.4 0.233

産業用機械機器 16,561 ( 10.4 ) 8,708 ( 5.5 ) 15.9 0.245 事務機器ならびにコンピューター 20,518 ( 12.9 ) 19,331 ( 12.2 ) 25.1 -0.091 通信機器およびその他の電子機器 31,526 ( 19.9 ) 21,977 ( 13.8 ) 33.7 0.148 自動車ならびに部品 33,456 ( 21.1 ) 62,453 ( 39.3 ) 60.4 -0.238 その他の輸送機器 831 ( 0.5 ) 1,790 ( 1.1 ) 1.7 0.562 その他の製造業品 28,676 ( 18.1 ) 17,032 ( 10.7 ) 28.8 -0.070

全品目 158,575 ( 100.0 ) 158,958 ( 100.0 )   相関係数=-0.246

 資料)表1と同。

  表4  在米外資企業の企業内貿易 (2002年)

輸出金額

輸出構

成比① 輸入金額

輸入構 成比②

企業内貿 易構成比

(①+②)

アメリカ貿易全体 の貿易特化係数 食料品、飲料、およびタバコ 8,210 ( 12.7 ) 7,959 ( 3.0 ) 15.7 0.241 燃料以外の非可食原材料 2,648 ( 4.1 ) 4,097 ( 1.5 ) 5.6 0.061 鉱物性燃料 1,804 ( 2.8 ) 14,910 ( 5.6 ) 8.4 -0.683

化学品 8,968 ( 13.9 ) 20,906 ( 7.8 ) 21.7 0.257

産業用機械機器 4,488 ( 7.0 ) 13,873 ( 5.2 ) 12.1 0.307 事務機器ならびにコンピューター 1,377 ( 2.1 ) 14,389 ( 5.4 ) 7.5 -0.079 通信機器およびその他の電子機器 10,648 ( 16.5 ) 46,446 ( 17.4 ) 33.9 0.174 自動車ならびに部品 12,453 ( 19.3 ) 93,914 ( 35.1 ) 54.4 -0.220 その他の輸送機器 3,644 ( 5.6 ) 3,690 ( 1.4 ) 7.0 0.550 その他の製造業品 10,333 ( 16.0 ) 47,107 ( 17.6 ) 33.6 -0.079

全品目 64,572 ( 100.0 ) 267,291 ( 100.0 )   相関係数=-0.169

 資料)表1と同。

(3) 親会社側の輸出超過傾向の要因

それでは何故、米系多国籍企業は輸出超過の傾向を持ち、在米外資系企業は輸入超過の 傾向を持つのだろうか。以上の分析は、米系多国籍企業の輸出超過傾向や、在米外資系企 業の輸入超過傾向を、貿易品目構成の偏りで説明するのは難しいことを示している。実際、

貿易品目ごとの企業内貿易比率を見ると、表1に示されるように米系多国籍企業では大多 数の品目で企業内輸出比率が企業内輸入比率を上回っている。逆に、在米外資系企業では、

ほとんどの品目で企業内輸入比率が企業内輸出比率を上回っている。また、表5は国ごと に企業内貿易比率を見たものである。ここでも国によって企業内貿易比率自体にはかなり の違いがあるが、米系多国籍企業では、少数の例外国を除くほとんどの国で企業内輸出比 率が企業内輸入比率を上回っており、逆に在米外資系企業では、ほとんどの国で企業内輸 入比率が企業内輸出比率を上回っている。

米系多国籍企業の輸出超過傾向や、在米外資系企業の輸入超過の傾向は、米系企業であ れ、外資系企業であれ、多国籍企業の企業内貿易では、親会社側が輸出超過となる傾向と 見ることもできる。上に見たように、こうした傾向は、貿易品目、貿易相手国などに依存 しない。親会社側が輸出超過となる傾向はこれらの要因ではなく、むしろ多国籍企業特有 の企業特性に依存していると考える方が妥当なのかもしれない。こうした傾向が生まれる 企業特性としては、次のようにいくつかのケースが考えられる。

(16)

13

表5 国別の企業内貿易比率(2003年)

(a) 米系多国籍企業 (b) 在米外資系企業

企業内 輸出比率

企業内 輸入比率

企業内 輸出比率

企業内 輸入比率

世界 20.8 13.9 9.3 22.2

先進国 24.6 17.4 先進国 13.2 36.3

カナダ 25.9 27.9 カナダ 5.5 12.6

ヨーロッパ 26.0 16.1 ヨーロッパ 12.9 31.1

フランス 20.8 10.0 フランス 11.9 31.4

ドイツ 20.0 5.9 ドイツ 26.2 53.6

イタリア 16.4 3.7 イタリア 13.3 12.6

スイス 34.4 15.0 スイス 22.5 83.0

英国 29.8 19.4 英国 9.8 18.6

日本 16.4 1.8 日本 37.3 83.7

オーストラリア 29.5 17.8 オーストラリア 7.2 10.0

ニュージーランド 18.7 3.1 ニュージーランド 3.5 32.6

発展途上国 16.1 10.4 発展途上国 4.4 8.3

中南米 21.6 19.5 中南米 4.0 7.7

メキシコ 25.9 26.6 メキシコ 3.6 5.3

アフリカ 7.1 2.9 アフリカ 2.6 0.7

中東 3.7 1.9 中東 2.0 15.3

アジア太平洋 13.7 7.1 アジア太平洋 5.8 9.1

韓国 6.5 0.7 韓国 12.8 52.2

台湾 13.9 3.5 台湾 3.2 7.1

シンガポール 36.8 52.0 シンガポール 7.2 8.4

タイ 10.8 5.8 タイ - -

マレーシア 12.7 28.6 マレーシア 3.6 2.6

フィリピン 15.5 5.7 フィリピン 1.5 3.4

インドネシア 5.3 0.4 インドネシア 5.5 2.7

中国+香港 11.0 3.7 中国+香港 4.5 3.1

(参考) (参考)

EU15 25.2 16.0 EU15 13.0 30.8

資料) 表1と同。

注2)輸出国は仕向け地(Country of Destination)、輸入国は出荷国

(Country of Origin)

注1)当該国の企業内輸出額(輸入額)

   /当該国の総輸出額(輸入額)

注3)(a)、(b) ともに子会社は過半数 株所有の子会社。

・例えば子会社が製造業の場合、親会社側に技術的な優位性があるならば、そうした技術 やノウハウを守るために子会社を海外に設立して中間財を親会社側から企業内輸出する 意味がある。しかし、他の海外の企業に比較して子会社に特別の技術的優位性が無い限り、

親会社が中間財を調達するのに子会社から企業内輸入をする必要はない。むしろ市場を介 して一般の企業から低価格で調達した方が合理的かもしれない。つまり、親会社側に守る べき技術やノウハウがあるならば、中間財の販売は現地に工場を設立して企業内貿易を通 じて行ない、親会社の調達は一般市場を通じて直接行なうことになるだろう。これによっ て企業内貿易では、親会社側が輸出超過となる傾向を持つ。

・子会社が販売子会社である場合、現地の顧客情報の確保や販売後のメンテナンスなどの 面から、親会社が現地の子会社を通じて商品を企業内輸出することに合理性がある。しか し、部品や完成品を調達する場合は、必ずしも現地に子会社を設ける必要は無く、親会社 が市場を通じて一般企業から直接購入すればよい。なぜなら、調達に必要な基本情報であ る価格と品質の情報は市場から入手することができるからである。しかし、販売に必要な

(17)

14 上記したような情報は、必ずしも市場を介しては得られない。現地のディーラーに販売を 委託しても、販売やメンテナンス、製品開発に必要な顧客情報をディーラーは外に出そう とはしないだろう。このように、親会社にとって販売に必要な情報と調達に必要な情報と が異なる場合、親会社は、販売は子会社を通じて行ない、調達は市場から直接行なうこと に合理性がある。この場合、企業内貿易では親会社側が輸出超過となる傾向を持つ。

もちろん汎用的な工業製品などのように、守るべき製造ノウハウが少ない場合や、顧客 情報を製品開発やメンテナンスに使う機会が少ない品目では、ここで問題にしているよう な親会社側の輸出超過傾向は生まれない。ただし、そもそもそうした品目では企業内貿易 比率も小さいだろう。また、調達に際して何らかの理由で、市場では得られない現地情報 が必要な場合は、調達子会社を通じた企業内輸入をすることに合理性がある。しかし、商 社などの場合を除き、そうしたケースは多くないと思われる。結果として、アメリカでは 親企業側が輸出超過の傾向を持つことが多くなるのではないだろうか。

4.相対価格の変化が企業内貿易に与える影響

企業内貿易は、需要(所得)や相対価格の変化に対してどのように反応するだろうか。

一般に多国籍企業は複数国に亘って経営資源の最適配置を図り、為替変化、インフレ、所 得変化などに機敏に反応して世界全体での経営資源の最適配置に向けた経営資源の再配置 を行うと考えられる。こうした観点に立てば、企業内貿易に関しても国際経済環境の変化 に対応してより柔軟に輸出入を変化させると考えられる。したがって、次のような仮説を 考えることができる。

【仮説5】多国籍企業は世界全体の経営資源の最適配置によって利潤最大化を追及するた め、相対価格の変化や需要の変動に対して各国の企業内輸出入を敏感に変化させる。

ただし、これに対しては反論もありうる。例えば、第 1 に、企業内貿易は、税制や投資 相手国の規制(利潤の送金制限等)などに対応するため多国籍企業が市場での取引価格と は異なる価格付け(移転価格)をする可能性がある。第2に、(ブランド製品などで)市場 によって異なる価格付け(価格差別)をするために、海外市場を国内市場から分断する目 的で海外子会社を設けて販売ルートを独占することもある。こうした場合には、相対価格 の変化には敏感に反応しないだろう。そして第3として、M&Aの動向で企業内貿易とし ての貿易額が変動する可能性もある(脚注7を参照)。もし企業内貿易を行う主たる目的が これらの理由の場合、企業内貿易は税制や市場構造(市場の集中度)などの動向に左右さ れても、需要(所得)や相対価格の変化に対してはあまり敏感に反応ないだろう。

(18)

15

表6 企業内貿易の所得弾力性,価格弾力性(子会社業種別)

(a)輸出

所得弾力性

企業内輸出(製造業) 2.300 1.584

うち米系多国籍企業 1.967 1.503   在米外資系企業 4.374 0.709

企業内輸出(卸売り等) 1.894 -1.482

うち米系多国籍企業 2.674 -0.420   在米外資系企業 0.981 -3.083

企業内輸出以外 2.419 -0.793

総輸出 2.320 -0.412

(参考)

企業内輸出(全業種) 2.133 0.267

うち米系多国籍企業 2.202 0.873

  在米外資系企業 1.984 -1.240

(b)輸入

所得弾力性

企業内輸入(製造業) 3.083 -0.810

うち米系多国籍企業 2.603 -0.279   在米外資系企業 4.082 -2.198

企業内輸入(卸売り等) 1.257 0.968

うち米系多国籍企業 0.803 1.179   在米外資系企業 1.355 0.933

企業内輸入以外 1.917 1.970

総輸入 1.987 1.324

(参考)

企業内輸入(全業種) 2.097 0.319

うち米系多国籍企業 2.223 0.059   在米外資系企業 2.030 0.463 価格弾力性

価格弾力性

資料)Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of Commerce のデータより作成。

注1)「レ」は理論的に予測される符号条件に合わないもの。

注2)「卸売り等」とは、全業種から製造業を除いたもの。

表6は、企業内貿易と企業内貿易以外の貿易とに分けて、所得弾力性、価格弾力性を推 計したものである17(推計の詳細は補論を参照)。さらに企業内貿易に関しては、子会社の 業種によってそれを「製造業」と「卸売り等18」とに分けて、それぞれに関して所得弾力性 と価格弾力性とを推計したものである。表に示されるように、価格弾力性に関しては貿易 の種類によってかなりの相違が観察される。

17 基本的には、輸出に関しては「世界GDP」と「相対価格」、輸入に関しては「国内GDP」と

「相対価格」を独立変数とする推計式で所得弾力性と価格弾力性を求めている。なお、企業内貿 易に関連が深いと考えられる子会社の「金融資産以外の資産(土地、工場、設備、採掘権等の権 利)」を独立変数として加えた推計式でも推計を試みたが、「金融資産以外の資産」の係数は有意 にならないものが多いため、本稿の推計式ではこうした変数は除いている。推計結果の詳細は補 論を参照。

18 正確には、「製造業以外の業種」であるが、製造業以外の企業内貿易のかなりの部分は、卸売 り(wholesale)である。

(19)

16 すなわち、輸出入ともに(米系多国籍企業、在米外資系企業にかかわらず)製造業子会 社との企業内貿易においては、価格弾力性が理論的に予想される符号条件を満たさない19。 製造業子会社の場合は、貿易摩擦の回避や製造ノウハウの漏出防止、垂直的統合による取 引費用の低減など、市場価格以外の要因が強く働いて海外に子会社を設けたと考えられる。

このため、製造業子会社との企業内貿易が相対価格変化に対して通常の貿易のようには反 応しないことは不思議ではない。

これに対して卸売り等の子会社との企業内貿易に関しては、値のばらつきはあるものの、

符号条件は理論的に予想される条件を満たしている。これは子会社の業種が卸売り等の場 合は、相対価格の変化に対して一般の貿易とそれほど変わらない動きをすることを意味し ている。ここから判断すると、移転価格目的や流通ルートを独占する目的で販売子会社を 設立するのは全体からみれば少ない割合なのかもしれない。大多数の販売子会社は市場競 争にさらされ、親会社との取引といえども、一般の独立企業間の貿易と同じように相対価 格には反応しているようである。

以上から、仮説5は、製造業子会社との企業内貿易では成り立たないが、卸売り子会社 等との企業内貿易には当てはまると言うことができる。

5.まとめと残された課題

以上、いくつかの側面からアメリカの企業内貿易に関して実証的な分析を試みた。企業 内貿易は、国際貿易としての側面と市場を介さない企業内の取引としての側面とを併せ持 っている。このため、当然のことながら、企業内貿易のそうした二つの側面が上の実証分 析の結果にも反映されている。すなわち、企業内貿易といえども一般の国際貿易と同様に

①基本的にはアメリカ貿易全体の比較優位構造に従い、②子会社が卸売り等の場合は相対 価格に通常の貿易と同じ様に反応して輸出入量が変化する、という点が示された。しかし、

同時に③企業内貿易比率の大きい(小さい)品目の特性や④多国籍企業の親会社側が輸出 超過傾向を持つこと、⑤製造業子会社との企業内貿易量が相対価格の変化に対しては通常 の貿易のようには反応しないこと、などに関しては企業内の取引としての側面がより強く 示されており、直接投資における内部化理論で示されるような要因によって説明されると 考えられる。

また興味深いことに、米系多国籍企業の企業内貿易と在米外資系企業のそれとを比較す ると、両者は差異よりも、むしろ共通点の方が多い。上の①~⑤の特徴は、それが米系多 国籍企業であるか在米外資系企業の企業内貿易であるかに拘らず基本的に成立するようで ある。

ただし、以上の分析結果はあくまでもアメリカにおける企業内貿易に関するものであり、

多国籍企業の企業内貿易一般に成立するかどうかはここの結果だけからは不明である。ま た、品目区分の仕方を変えると上記したいくつかの命題は成り立たないかもしれない。以 上は残された研究課題である。

19 ここでは相対価格が、自国の相対価格が上がれば増大、下がれば減少するようにとっている。

このため、相対価格の係数(価格弾力性)の理論的に予想される符号条件は、輸出の場合はマ イナス、輸入の場合はプラスとなる。

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