種数 1 の open book 分解をもつ 3 次元多様体の 量子 SO (3) 不変量
望月 厚志 (京都大学数理解析研究所) ∗
概 要本稿では種数
1
のopen book
分解をもつ3
次元多様体の量子SO(3)
不変量の 具体的な計算結果について報告する.1. 量子不変量
Witten の Chern-Simons 理論を背景として,Reshetikhin と Turaev により,3 次元多様 体の surgery 表示に基づいて, 3 次元多様体 M の量子不変量が導入された.単純 compact Lie 群 G と 3 以上の整数 r に対し,この不変量は τ r G (M ) で表され, 3 次元多様体の量子 G 不変量と呼ばれる.特に量子 SO(3) 不変量 τ r SO(3) (M ) は 3 以上の奇数 r に対し, Kirby と
Melvin[1] により定式化された.量子不変量の値の計算例について,現在のところ lens 空
間, Seifert 多様体に関して具体的な値が計算されている. lens 空間 L(a, b) の量子 SO(3) 不変量は,r が奇素数で a が r で割り切れない場合は,τ r SO(3) (L(a, b)) = ( a
r
) q − 3s(b,a) [a]
( s(b, a) は Dedekind 和で, [ · ] は q 整数, a は ( Z /r Z ) × における逆元)で表されることが 知られており ([2]) ,これは lens 空間の 1 つの特徴づけを与えている.一方,河野は 3 次 元多様体の Heegaard 分解に基づいて,3 次元多様体の量子不変量を構成した.この構 成において閉曲面の写像類群の表現を用いて量子不変量の値が記述される.
2. 種数 1 の open book 分解と surgery 表示
任意の 3 次元多様体は open book 分解と呼ばれる表示をもつことが知られている. open book 分解とは境界つき曲面の自己同相写像の maping torus と solid tori の合併とし て 3 次元多様体を表示することであり, 2000 年代以降 Giroux らにより contact 構造の 研究において有用であることが明らかになった.種数 1 ,境界数 1 の open book 分解 をもつような 3 次元多様体を考えるとき,その surgery 表示は下図のような円環鎖状 の N-component framed link によって表される.図において n 1 , n 2 , · · · , n N は各成分の framing を表し,長方形は m half twists を表す.この framed link を L n
1,n
2, ··· ,n
N;m とお く.またこの framed link に沿って S 3 を surgery してできる 3 次元多様体を M n
1,n
2, ··· ,n
N;m とする.
L n
1,n
2, ··· ,n
N;m
n
N
n
N 1 n
1
n
2
n3
mhalf twists
half twist
∗
e-mail: [email protected]
3. 主結果
r を奇素数として, q = exp( 2π √ r −1 ) とする.種数 1 の open book 分解をもつ 3 次元多様 体 M n
1,n
2, ··· ,n
N;m の量子 SO(3) 不変量は次の式で表示される.
定理
1.
τ r SO(3) (M n
1,n
2, ··· ,n
N;m ) = 1 c σ +
+c σ −
−∑
k
∑
i
1,i
2, ··· ,i
N[i 1 + 1][i 2 + 1] · · · [i N + 1][2k + 1]
× q 4 · i
1(i
1+2)n
1q 4 · i
2(i
2+2)n
2· · · q 4 · i
N(i
N+2)n
N× ( − 1) km q 2 · k(k+1)m C i (k)
1
i
2C i (k)
2
i
3· · · C i (k)
N−1
i
NC i (k)
N
i
1ただし 4 , 2 は ( Z /r Z ) × における 4 , 2 の逆元を表す.
M n
1,n
2, ··· ,n
N;m を与える surgery 表示 L n
1,n
2, ··· ,n
N;m の linking matrix は,以下のように half twists m が偶数のとき A N , m が奇数のとき A ′ N となる.
A N =
n
1− 1 − 1
− 1 n
2− 1
− 1 n
3− 1
... ... ...
− 1 n
N−1− 1
− 1 − 1 n
N
, A ′ N =
n
1− 1 1
− 1 n
2− 1
− 1 n
3− 1
... ... ...
− 1 n
N−1− 1
1 − 1 n
N
このとき r = 5 の M n
1,n
2, ··· ,n
N;m の量子 SO(3) 不変量の値は以下のようになる.
定理