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経年劣化を考慮したコンクリート構造物の維持管理方針に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

経年劣化を考慮したコンクリート構造物の維持管理方針に関する研究

研究予算:研究方針研究 研究期間:平 19~平 20 担当チーム:基礎材料チーム

(旧構造物マネジメント技術チーム)

研究担当者:渡辺博志

【要旨】

コンクリート構造物の劣化機構は多岐にわたるものであり、劣化機構によってその進行速度は異なる。コンク リート構造物の維持管理にあたっては、劣化進行速度を踏まえた補修計画を立てる必要がある。ここでは劣化進 行速度の速い塩害の場合について、補修計画を立てる上で配慮すべき点について、過去の実態調査を元に考察し た。また、塩害以外の劣化機構については、劣化進行速度に関する定量的な情報が十分でないことから、特に中 性化と溶脱について古いコンクリート構造物の調査事例を元に、劣化進行速度について考察した。

キーワード:コンクリート構造物、塩害、長期耐久性、溶脱、ポゾラン反応

1.はじめに

コンクリート構造物の劣化機構に関しては、劣化 による影響度が非常に大きい塩害やアルカリ骨材反 応が研究の主たる課題として、精力的な検討が進め られている。一方、コンクリート構造物の長期にわ たる劣化機構としては、塩害やアルカリ骨材反応だ けではなく、例えば乾湿繰り返しや溶脱、硫酸塩に よる侵食など、多岐にわたることが知られている。

しかし、このような劣化機構に関する情報は十分に 得られておらず、長期耐久性能評価において、どの ような着眼点に基づいた検討が必要か、十分な共通 認識が得られていない状況にある。

いずれにしても、コンクリート構造物の維持管理 方針を決定する上で、劣化進行速度は大きな意味を 持ち、劣化速度の大小に応じた柔軟な対応が求めら れるところである。

そこで、本課題においては、

①劣化進行速度が速くかつ構造物の性能に深刻な影 響が生じる塩害について、補修実態に基づく維持管 理方針のありかたをまず整理し、

②劣化速度の非常に緩やかなものについては、十分 な知見が得られていないことから、第1段階として これまでに調査された古い構造物の事例を元に、長 期的なコンクリートの劣化状況に関する考察を行い、

どのような観点から長期耐久性を論じるのか、

を検討課題に据えて調査を行った。

2.研究方法

2.1 塩害を生じたコンクリート構造物

塩害に対するコンクリート構造物の維持管理手法 を考える上で注意が必要な点として、鋼材腐食の兆 候が顕在化した時点ではコンクリート中の塩化物イ オン量が大きくなっていることである。

図-1は、塩害によって劣化したコンクリート構 造物について、補修を実施したにもかかわらず後に 再劣化を生じたものの割合を示したものである。こ こで再劣化の確認は、各構造物の補修実施後5~1 0年に外観目視調査を実施し、腐食発生など変状が あったかどうかの判定によって行っている。

補修後の目視調査結果によると、塩害環境の厳し い立地条件の場合、構造物の再劣化率は高かったこ とがわかる。

健全 再劣化 42% 58%

図-1 再劣化した構造物の割合

(海岸線から 100m 以内)

(2)

次に、これらの補修を実施した構造物において、

補修を行った時点での構造物の損傷状況について判 断した結果について調査した。ここで、補修を行っ た時点(補修実施前の健全度)での構造物の健全度 は、表-1に示す評価基準に基づいて判断した。

図-2は、補修実施前の健全度と補修後の再劣化 の発生率の関連性を示したものである。この結果か ら明らかなとおり、 補修実施前の損傷が軽微なほど、

補修後の再劣化発生率が小さいことが分かる。ここ で、調査対象となった構造物の補修方法は断面修復 系のものであった。

このことから、塩害系の劣化を生じたコンクリー

ト構造物の補修計画を立てるにあたっては、補修を 実施するタイミングが大きな鍵になる事が分かる。

図-3は、一例として非常に過酷な塩害環境にお かれたコンクリート構造物のライフサイクルコスト を示したものである。再劣化を生じた場合、維持管 理コストの上昇が避けられない。塩害を生じる構造 物に関しては、予防保全の導入が有効であると考え られる。

2. 2 一般劣化パターンにおけるコンクリートの長

期挙動

2.2.1 劣化機構の分類

コンクリート構造物が長期間供用された場合、そ の劣化メカニズムは多岐にわたるが、これまでに報 告事例が挙がっている主なものは、塩害・アルカリ 骨材反応を除くと、

①乾湿繰り返し作用によるコンクリート組織の脆弱 化(特に粘土鉱物を含む骨材が使用されている場 合)

②水分の影響によるコンクリート中のセメント硬化 組織の溶脱(最初に水酸化カルシウムの溶脱が起 こり、その後 C-S-H ゲルの溶出) 、

③硫酸塩による侵食(海岸線付近の構造物や温泉地 帯に建造されるコンクリート構造物で発生しやす い)

④ Delayed Ettringite Formation ( DEF :蒸気養生され る工場製品に発生しやすいもので、やはりセメン ト中に含まれる石膏から供給される硫酸イオンが 関与) 、

⑤凍結融解作用

⑥ Thaumasite (コンクリート中の骨材が硫酸塩に反

応して発生。主として地中構造物かつ低温状況で 発生)

⑦中性化(空気中の炭酸ガスによりかぶりコンクリ ートのアルカリ性の低下)

が挙げられる。その他、短期的なものとしては火災 表-1 目視調査による健全度判定基準

健全度 状況

1 鋼材の腐食の進行により部分的あるいは連続的な鋼材の露出または破断が認められたり、コンクリ ートの断面欠損が著しく認められる場合

2 鋼材の腐食の進行により、連続的なコンクリートのひび割れ、錆汁および剥落、剥離が認められる 場合

3 ひび割れ、錆汁あるいはコンクリートの剥離が認められるが、その範囲や程度が小さい場合 4 ごく軽微なひび割れ、錆汁が認められる場合

5 損傷が認められる場合

0%

20%

40%

60%

80%

健全度2以下 健全度3 健全度4 再劣 化の 生 じ た 割 合

100m以上100m以内

図-2 補修前健全度と再劣化割合の関係

0 50 100 150 200 250 300

0 16 17 18 19 22 26 27 28 35 完成後の経過年

コスト(初期コスト=100) 表面塗装 耐荷力調査(12)

初期建設(100) 修復・表面塗装(8) +再建(126)

表面塗装(13) 防水工(1) 修復・中間 支柱(20) 外ケーブル耐荷力 調査・塗装(13) 修復・表面塗装(6)

耐荷力調査・修復(3) 撤去(67)

0 50 100 150 200 250 300

0 16 17 18 19 22 26 27 28 35 完成後の経過年

コスト(初期コスト=100) 表面塗装 耐荷力調査(12)

初期建設(100) 修復・表面塗装(8) +再建(126)

表面塗装(13) 防水工(1) 修復・中間 支柱(20) 外ケーブル耐荷力 調査・塗装(13) 修復・表面塗装(6)

耐荷力調査・修復(3) 撤去(67)

図-3 厳しい塩害環境に置かれたコンクリート

構造物の LCC 例

(3)

による損傷がある。

ここでは、実際に長期間供用されたコンクリート 構造物及び長期にわたる暴露試験結果に基づき、実 際には、どのメカニズムによる劣化がクリティカル であったかを検討した。

2. 2. 2 調査対象の概要

ここでは、コンクリートの挙動について比較的長 期間のデータが報告されているもの以下の事例を収 拾した。

(1) 寒冷地で五十数年供用されたコンクリート橋

1)

(2)100 年ほど経過したドック

2)

(3)100 年ほど経過した上水道構造物

3)

(4)材齢 34 年経過したダムコンクリート

4)

検討項目としては、 コンクリートの外観及び強度、

中性化や水和の進行状況である。構造物の建造され た時代背景や施工方法、使用材料特性が異なってい るため、単純な比較は困難であるが、少なくともそ れぞれの構造物において顕著に進行していた劣化機 構の特定は可能であると考えられる。

2. 2. 3 調査結果から導かれた方向性

事例 (1) は第二次世界大戦が始まる直前に建造さ れていたことから、セメントの製造にも世相が反映 されたものとなっている。使用セメントは普通ポル トランドセメントとなっているものの、セメント製 造工程における焼成温度の低下、粉砕行程の簡略化 などの影響を受け、現行の JIS 規格を当てはめると 中庸熱ポルトランドセメントに分類されるものであ る。また、細骨材には火山灰が混入していたものと 考えられ、このことは、火山灰のポゾラン反応によ る長期強度の増進が見込まれるものである。 28 日水 中養生によるコンクリート供試体の圧縮強度試験結 果が現存しており、 50 数年経過後の圧縮強度と比較 すると、約 23MPa であった圧縮強度が 46MPa と 2

倍の強度に増加していたことが判明している。 一方、

中性化深さの測定結果から、中性化速度係数も得ら れている。これを、構造物マネジメント技術チーム で 1999 年に実施した全国のコンクリート構造物の 実態調査結果で得られた中性化速度係数と比較した。

その結果を図-4に示す ( 赤丸が事例1のもの ) 。 この結果、中性化速度は小さいものの、圧縮強度

が 46MPa のコンクリートとしては、比較的大きな値

になっていることが分かる。表層近傍では水酸化カ ルシウムは非常に少なくなっている一方、炭酸カル シウムの生成が認められ中性化が生じていたことが 分かる。すなわち、長期的なポゾラン反応によって コンクリートの圧縮強度は増進したものの、水酸化 カルシウムの消費により中性化速度はやや速いこと が分かる。

次に事例 (2) は明治時代に構築されたコンクリー ト構造物であり、寒冷かつ海洋環境にさらされてき た。セメントの製造が次第に拡大しつつある黎明期 の構造物であり、やはりセメントの粒子は現在のセ メントと比べ粒子が粗いものとなっている。海水に 没する時間が長いと考えられるドック底板では、圧

縮強度が 30MPa 程度と十分な値であったにもかか

わらず、コンクリート中の水酸化カルシウムは検出 できない状態であった。また、炭酸カルシウムの生 成もなかったことから、 中性化によるものではなく、

長期的な水分の供給による溶脱が起こっていたこと が分かる。この結果は、事例 (3) の上水道構造物にも 認められることから、常時水分の供給があるコンク リート面では溶脱現象がコンクリートの品質低下の 主たる原因であることが推測される。

事例 (4) は中庸熱セメントをベースにフライアッ シュを 30% 置換したダム用コンクリートの性状につ いて調査されている。

この結果によると、 30 年間の内に、混入されたフ ライアッシュの内、約 70%が水和反応を生じている。

長期的な強度増進も一年材齢と比較すると、約 1.5 倍の強度を示しており、長期的に安定した性能が確 保されていることが分かる。ただし、セメント硬化 体の水酸化カルシウムの残量は非常に少なく、ポゾ ラン反応はほぼ終結しており、以後の強度増進は余 り多くを見込めないと推定できる。

3.まとめ

本研究では、特に一般環境に置かれるコンクリー ト構造物の長期的な耐久性について、これまでの調

圧縮強度と中性化速度係数

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

0 20 40 60 80

コア圧縮強度(N/mm2)

中性化進行速度

図-4 中性化速度の比較

(4)

査事例を元に、劣化機構に関する検討を行った。

検討の結果、現存する長期材齢のコンクリートの 劣化機構として、 常に水分の影響を受ける部位では、

硬化セメント中からの水酸化カルシウムの溶脱によ る劣化が最も可能性の大きいものと思われる。 一方、

例えば、多少の雨水にあたる程度のコンクリート面 においては、溶脱の影響は比較的少ないと考えられ る。

圧縮強度の確保の観点から考えると、粗大粒径の セメントの使用や、火山灰・フライアッシュなどの ポゾラン材の混入は有効であり、長期的に安定した 強度を確保することが可能となる。ただし、ポゾラ ン反応の進行は、一方で、水酸化カルシウムの消費 に伴う中性化速度の増加が懸念されるところである。

今回調査を行った構造物は、セメントの粒径が現 在よりも荒く、かつビーライトの含有量も現行の市 場に流通するセメントよりも多いものである。この ようなセメントを用いたコンクリートでは、特に初 期養生の影響を受けやすく、十分な養生が長期耐久 性を確保する上で必要不可欠となる。

今後、長期耐久性を実現する目的で、新たな考え 方に基づいたコンクリートの材料選定や配合設計と しては、初期強度の確保と、長期強度の確保の両面 を視野においた手法を確立することが重要となる。

例えば、フライアッシュなどのポゾラン材を用いる 場合では、初期強度の確保については、ポゾラン材 を除いたセメントのみを有効とした水セメント比の 設定を行うと共に、長期材齢の確保にあたっては、

ポゾラン材を含めた水結合材比を指定する方法など が考えられる。

なお、今回の検討にあたって、コンクリートの長 期耐久性に及ぼす乾湿繰り返しの影響について、詳

細なデータを収集することが出来なかった。今後は 乾湿繰り返し作用の影響についても検討を加える予 定である。

参考文献

1)熊谷他:50 数年経過したコンクリートの物理化学的特

性と耐久性、 土木学会論文集 No 686/V152,41-54,2001.9.

2 ) 星野他 : 100 年以上供用されているコンクリート 構造物の分析と評価、 コンクリート工学年次論文 集 , Vol.28, No.1, pp707-712, 2006.

3) 横関他:100 年以上経過した地下コンクリート構造物

の耐久性、コンクリート工学年次論文集、 Vol.20, No.1, pp.251-256, 1998.

4) 佐藤他:材齢 34 年を経た中庸熱フライアッシュダムコ ンクリートの硬化体組織と物性、コンクリート工学年 次論文集、Vol.21, No.3,pp.877-882, 1999.

Fundamental Study on maintenance program for concrete structures

Abstract:

Deterioration rate of concrete structures is dependent on their causes and mechanisms. For the cost effective planning of rehabilitation on existing concrete structures, it is essential to take into account for the rate of the progress of deterioration.

From the inspection results of repaired concrete structures deteriorated by chloride induced corrosion, the following conclusion was obtained. In case of chloride induced corrosion, the decision of window of an opportunity for the operation of repair work has serious impact on the performance of the structures in long term.

Keyword: Concrete structures, Chloride induced corrosion, Durability, Leaching, Pozzolan

(5)

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