物理学C4(’10)・期末試験 解答例
I.
(1)
各辺がdx, dy, dz の微小直方体を考える。まずx 軸に垂直な2平面上の面積積分は
{Vx(x+dx, y, z)−Vx(x, y, z)}dydz = ∂Vx
∂x dV (dV =dxdydz :直方体の微小体積) となる。他の面の寄与も同様に考えて加えると 直方体の表面での面積積分は,
(∂Vx
∂x +∂Vy
∂y +∂Vz
∂z )dV = divV~ ·dV と表わされる。
(2) 磁気単極子(モノポール)が存在しない事を表す式は(4) 式である。
(3)
まず、(3), (4)式に平面電磁波の式を代入すると~k·E~0 cos (~k·~r−ωt) =~k·H~0 cos (~k·
~r−ωt) = 0 即ち~k·E~0 =~k·H~0 = 0 が言え、電場、磁場の方向は、いずれも電磁波の 進行方向と直交する事(横波)が分かる。更に、(1) より
~k×E~0cos (~k·~r−ωt) = µ0ω ~H0cos (~k·~r−ωt)
即ち|~k×E~0|=µ0ω|H~0|が得られるがE~0 は上述のように~k と直交するので|~k×E~0|= kE0 となる(E0 =|E~0|, k =|~k|、等)。よって
kE0 =µ0ωH0 →H0 = k
µ0ωE0 = 1 cµ0E0 =
√²0
µ0E0 →√
²0E0 =√ µ0H0
のようにE0, H0 の間の関係式が得られる。ただし、この式変形においてω =ck, c =
√²10µ0 (c:光速度)を用いた。
II.
(1) 長さL0 の時計が速さu でアルバートから遠ざかるヘンリーのトロッコの上に立てら れているとする。ヘンリーから見ると当然時計は止まっていて、下の鏡から発せられ た光のパルスが上の鏡に達するまでの時間はt0 = Lc0 (c:光速度)である。一方、アル バートから見るとパルスは斜めに“運動”するように見え、一方光速度は誰から見ても cなので、要する時間は長くなるように見える。具体的には、アルバートから見たとき に下から上に達するのに要する時間をt3 とすると、ピタゴラスの定理より
√
L20+ (ut3)2 = (ct3)2 → t3 = t0
√
1− uc22
となり、動いている時計はガンマ因子γ = √ 1
1−uc22
倍だけ遅れる事が分かる。
1
(2) ここではローレンツ変換の式を用いて説明しよう。ヘンリーから見て一端Pが原点に、
他端Qがx0 座標がL0 の位置にある棒(つまりヘンリーから見て長さがL0の棒)があ るとする。アルバートから見ると点Pの運動を表す事象の時空座標(ctP, xP)は、ロー レンツ変換の式においてx0 = 0 とおいて得られる
xP −utP
√
1− uc22 = 0 → xP =utP
の関係を満たす事が分かる。同様に点Q の運動を表す事象の時空座標を(ctQ, xQ) と すると、これらは
xQ−utQ
√
1− uc22
=L0 → xQ =utQ+
√
1−u2 c2L0
を満たす。アルバートから見た時の棒の長さは同一時刻におけるP, Q の間の距離なの で、tP =tQ とおいてxP, xQ の差をとると
xQ−xP =
√
1− u2 c2L0
となり、確かにアルバートから見ると棒の長さはガンマ因子の逆数
√
1− uc22 倍に短く 成る事(ローレンツ収縮)が分かる。
(3) 質量はガンマ因子γ = √1
1−uc22
倍に増加する。
III.
(1) 例えば、気体分子の場合の様に、分子の種類によらず、各分子にはkT (k :ボルツマ ン定数, T :絶対温度)程度のエネルギーが分配されることを言う。
(2) エネルギー量子の考え方に従い、絶対温度T における振動数f の電磁波のエネルギー の平均値hEi を求めると
< E >=
∑∞
n=0(nhf)e−nhfkT
∑∞
n=0e−nhfkT = hf ekThf −1 となる。
(3) (2) で求めた結果を用いると、振動数f が大きい場合(正確にはhf À kT (k : ボル ツマン定数)の場合)にはehfkT が非常に大きくなるためにエネルギーの平均値が小さく なる。また(2) で求めた結果において振動数f が小さい場合(正確にはhf ¿kT の場 合)にはekThf '1 +kThf の近似を用いると< E >'kT となり等分配の法則に帰着する。
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