平成28年度 学内研究助成金 研究報告書
研 究 種 目
□奨 励 研 究 助 成 金 □研究成果刊行助成金
■21世紀研究開発奨励金
(共同研究助成金)
□21世紀教育開発奨励金
(教育推進研究助成金)
研 究 課 題 名 筋萎縮性側索硬化症の孤発例における遺伝子解析および治療法の開発
研究者所属・氏名
研究代表者:医学部堺病院 神経内科 准教授 平野 牧人 共同研究者:医学部 高度先端総合医療センター再生医療部
教授 福田 寛二 医学部 高先端総合医療センター再生医療部
助教 竹原 俊幸
1.研究目的・内容
家族性・孤発性ALSの遺伝子解明は進んでおり、最近発見されたMATR3, ERBB4, CHCHD10遺伝 子、さらに今後報告される遺伝子について、上述の孤発性ALS患者で解析する。それぞれの遺伝子産 物の機能から、孤発性ALSの分子機構を推定する。また、ALS患者のiPS細胞を神経細胞に分化し、
ヒト細胞の疾患モデルを構築する。蛋白分解機構や細胞内シグナリング解析を行い、ユビキチンープ ロテアソームまたはオートファジーの促進・抑制剤、さらに酸化ストレスや抗酸化剤などにより細胞 の形態・機能障害、p62やVCPその他関連蛋白の凝集観察を検討する。以上により、病態機序の解明 と効果的な薬物の探索を行い、治療薬候補を見出す。
2.研究経過及び成果
① 患者iPS 細胞の神経への分化と疾患モデルの確立 (平野牧人、福田寛二、竹原俊幸、実験助手数 名)
iPS 細胞の樹立および神経幹細胞さらに神経細胞へ分化誘導までは、これまで対照と筋萎縮性側索
硬化症(ALS)患者合計2名で成功している。ALS 患者線維芽細胞は新たに3例分、iPS 細胞は1例分
樹立した。
② P62陽性凝集体の解析(平野牧人)
また、免疫染色により、 p62の凝集が形成される細胞の特徴を、他のALS凝集マーカー蛋白(VCP, FUS, Ubiquilin2)、iPS細胞や神経細胞特異的遺伝子を示すマーカー蛋白(Tuj-1)発現の関連を検討し た。p62の凝集体には、p62の凝集のみがみられた。また、p62遺伝子異常のないALSにおいても、
同様の凝集が観察したところ、凝集は軽度見られた。その凝集の蛋白発現がp62遺伝子異常のあるALS と同様であるのか否かを観察する。また、野生型p62やVCP はNF-κBシグナルカスケードに関与 しているので、これに関連する蛋白の免疫染色も行った。現時点では、NF-κBの染色性にp62の凝 集には関連していなかった。
③ 患者のALS原因遺伝子解析(平野牧人)
線維芽細胞を提供した患者を中心として、これまで判明している遺伝子解析を行った。新規の1症 例でSOD1の変異を検出した。
3.本研究と関連した今後の研究計画
① iPS 細胞由来神経細胞での蓄積蛋白の解析と蛋白除去促進薬負荷 (平野牧人、福田寛二、竹原俊 幸、実験助手数名)
プロテアソームの活性化剤であるIU1(Nature 2010;467:179)、あるいはオートファジー促進作用の あるラパマイシン、その他判明しているオートファジーの促進剤(amiodarone, perhexiline, rottlerin, niclosamide,valproate, minoxidil)などを用いて、 ALS患者のiPS細胞由来神経細胞における細胞障 害( Hoechst/PIアッセイ)、神経突起伸展への影響やp62, ubiquilin2,その他蓄積蛋白の発現量(ウエス タンブロットや免疫染色)を検討する。また、飢餓(低栄養)という最も普遍的なオートファジーの賦活 も行う。反対に、プロテアソーム阻害剤(lactacystin, MG132)やオートファジーの阻害剤(chloroquine) で、促進効果の逆が生じるかを確認する。
②患者のALS原因遺伝子解析(平野牧人)
前年度に引き続き、線維芽細胞を提供した患者を中心として、新規の遺伝子解析を行う。
4.成果の発表等
発 表 機 関 名 種類(著書・雑誌・口頭) 発表年月日(予定を含む)
臨床神経学 雑誌 e-pub
日本人類遺伝学会 口頭 2015年10月17日