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都市と交通の関わりがわかる博物館”New York Transit Museum”

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Academic year: 2018

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136 運輸と経済 第77巻 第2号 ’17. 2

海外トピックス

はじめに

 弊誌 2017 年1月号では「交通の博物館」を特 集テーマとして,国内外の様々な博物館について, 各館の特徴などを紹介した。そのような中,このた び ア メ リ カ・ ニ ュ ー ヨ ー ク に あ る New York Transit Museum(ニューヨーク交通博物館)を訪 れる機会を得た。当博物館は,London Transport Museum(ロンドン交通博物館)と同様に都市交通 をテーマとした博物館で,日本とは異なる展示方 法等に触れることができた。そこで本稿では,そ の概要や特徴について紹介したい。

1

.博物館の歴史

 New York Transit Museum はマンハッタンと はイーストリバーを挟んだブルックリンに位置する。  元々この博物館は,1936 年に開業したものの, わずか 10 年あまりで廃止された Court St. 駅の設 備をそのまま活用している。この駅は廃止後,訓 練や車庫・倉庫,映画の撮影などに使用されてい たが,1976 年にアメリカ建国 200 周年の記念行事 の一環として「New York Transit Exhibit」とし てオープンした。当初は期間限定の予定であった が,好評を博したことから,1984 年に名称が変更 さ れ,現 在 に 至 っ て い る。 運 営 は,当 初 New York City Transit Authority(NYCTA:ニューヨ ーク市都市交通局)が行っていたが,現在はその上 位 組 織 で あ る Metropolitan Transportation Authority(MTA:ニューヨーク州都市交通局)が 行っている。

2

地下

1

階:改札コンコースを活かした

展示フロア

 道路上にある入口から階段を利用して地下に下 りると,まず改札コンコースのフロアに着く(写真1)。 このフロアには,都市交通にまつわる様々な資料 やパネルが展示されている。展示品には,歴代の 地下鉄の自動改札機や駅の看板,運行管理装置の ように大型のものから,乗車券(トークン)など小 型のものまで実に様々なものがある。

 パネルの展示では,単に 100 年以上にわたる地

下鉄の出来事だけではなく,もともと私鉄であっ た地下鉄が公営化されるまでの経緯やネットワー ク拡大のための資金調達に常に苦労してきた歴史, さらには労働組合が果たしてきた役割などについ ても紹介されている。また,バスの一日の流れを 紹介するパネル展示は,日本のバスの一日(詳し くは幣誌 2016 年 10 月号のインタビュー「バス車両整 備の現場」を参照)と驚くほど類似していて興味深 い。

 さらに,バスのモックアップやエンジンの展示 装置なども置かれており,子どもが楽しみながら 学べるよう工夫されたスペースもある。

3

地下

2

階:プラットホームには動態 

保存車がずらり

 展示フロアからさらに一階降りると,そこには 1面2線のプラットホームがあり,高架鉄道時代 から活躍した車両たちが所狭しと並べられている

写真2)。展示車両は,いずれも車内に入ること ができ,車内の広告や路線図はその車両が活躍し ていた当時のものが再現されているため,車両ご とに当時の世相などの違いを知ることができる。  また,驚くべきは,この線路が現在も MTA の 地下鉄ネットワークと接続されているということ である。さらに展示車両もそのほとんどが動態保 存である。そのため,保存車両を搬入する際には, この線路が使われているほか,展示車両を本線上 へ持ち出し,運行されたこともある。

都市と交通の関わりがわかる博物館

New York Transit Museum

わた

なべ

  亮

りょう

 

情報センター主任研究員

(2)

137 海外トピックス

運輸調査局

 さらに,他の地下鉄駅と同等の規格のプラット ホームを有していることを活かし,視覚障害者を 招き,プラットホームを安全に利用するための講 習を MTA と協力して実施している。このような 取り組みは日本ではまず見られないものだろう。

4

.日本の博物館にない二つの特徴

 この博物館には,大きく二つ,日本の博物館に は見られない特徴がある。

 一つは,都市の発展の歴史とそれに対する交通 の関わり方を展示している点である。展示スペー スには,ニューヨークの街の誕生から現在に至る までの歴史と,その時々の地下鉄が開業する以前 を含めた都市交通の歴史があわせて詳細に紹介さ れている。また,都市交通の整備が街の成長や変 化(急激なスプロール化)とどう関係してきたのかや, 当時の人々の暮らしに交通がどのような影響を与 えたのかも詳しく触れられていて興味深い(例えば, 地下鉄のネットワークが急速に拡大する前後の 1910 年と 1940 年を比較すると,ブルックリンの人口は 9.2 倍, クイーンズは 5.1 倍,ブロンクスは 5.7 倍になったのに 対し,マンハッタンは 63% 減少したことなどが紹介さ れている)。

 この博物館のもう一つの大きな特徴は,自然災 害やテロに関する展示を積極的に行っている点で ある。具体的には,911(アメリカ同時多発テロ)や ハリケーン・サンディ,ニューヨークを襲った大 停電や豪雪に関する展示がある(写真3)。スペー スが限られることから,実物の展示品は少ないが, その代わりにパネルや関係者の証言インタビュー の映像などを交えながら,当時の様子や,それら の災害やテロに関係者がどのように立ち向かった のかを紹介している。さらに,災害やテロ直後の

代替輸送の状況,復旧の進捗状況,その教訓をそ の後どのように活かしたかについても詳しく紹介 されている。

 日本の交通関係の博物館では,このような展示 を目にする機会は限られる。しかし,ニューヨー クの展示を見ると,事業者の安全・安定輸送を目 指して努力する姿勢を強く感じることができる。 事業者の活動や考え方を広く社会に知ってもらう 意味でもこういった展示は有効ではないだろうか。 なお,これらの展示スペースの入口には,人によ ってストレスを感じる可能性がある旨を断ってお り,来館者への配慮もされている。

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人々が楽しく安心して集える博物館

 館内では,1日に数回ガイドツアーが開催され ている。こういったものに参加すれば,この博物 館に対する理解はより深まると思われる。これを 支えているのがスタッフやボランティアである。  当博物館では,このほかにもスタッフやボラン ティアが支える子ども向けのイベントが頻繁に開 催されている。著者が訪問した日も,会議室で子 どもの誕生日会が開かれており,大勢の子どもた ちが楽しみながら,ごく自然に公共交通とその歴 史に触れていた。

 このイベントには子どもの親も来館しているが, 館内にいる間はガイドがいるため,親はその間, 子どものことを気にする必要がない。その結果, 地域のコミュニティセンターとしての機能も自然 と果たしている様子が窺えた。

 この博物館は,ただ都市とその交通に関する歴 史を伝えるだけでなく,今とこれからの都市とそ の交通を支える役割も果たしているのかもしれな い。

写真2 プラットホームに保存されている車両 写真3 アメリカ同時多発テロの模様を伝える

参照

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