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惑星形成の物理

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Academic year: 2021

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539 第108巻 第8号

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専門書

近年,太陽以外の恒星の周りに惑星が見つかり つつある.これらは系外惑星と呼ばれ,今日に至 るまでに数千個が見つかっている.探査の初めの うちは,質量が大きい木星型の惑星の発見が主で あったが,最近では地球よりも小さなサイズの惑 星も見つかりつつある.系外惑星が見つかる以前 のわれわれの惑星に対する理解は,太陽系を基準 としていた.太陽系は,太陽の近傍を回る小質量 の岩石惑星とそれを取り囲むようにして回る大質 量の巨大ガス惑星,そしてそれよりも大きな軌道 長半径をもつ中質量の氷惑星から構成されてい る.この構造は既存の惑星形成理論から大まかな 理解が可能で,この理論に基づいた物理から構築 されるほかの惑星系も同様の姿をしていると考え られてきた.しかし,実際に発見された惑星の一 部は,至極奇妙な軌道を巡っていた.あるもの は,木星程度の質量をもちながら,太陽系の水星 軌道よりも中心星に近い軌道を回っている.また あるものは,同様に木星程度の質量をもちなが ら,彗星のような極端な楕円軌道を巡っている.

これらは,太陽系の理解を念頭に構築された上記 理論では一概に説明することは難しく,理論に対 する新しい物理過程の追加か,新理論の構築が必 要となってしまった.本書では,惑星系を支配す る物理を大学卒業程度の知識で理解し,それを用 いて既存の惑星形成理論の概要を理解する.さら に,理論に不足している物理を見つけるための,

惑星分布生成モデルについても触れる.本書の構 成は,1章で現在の惑星観測技法や発見された惑 星などについて触れ,2章では惑星系で見られる 基本的な物理について理解する.ここまでは非常

に直感的に理解できるよう書かれており,使われ ている数学にも難しいところは少ないので,太陽 系で起きる諸現象について学びたいと考えている 高校生などの一般読者にも読むことをお勧めした い.3章以降は,惑星形成の理論を,式を追って 厳密に理解していく.特に3章は入門書としては 多少難しさを感じるかもしれないが,ほかの惑星 形成に関する副読本などとともに読み進めると,

より深い惑星形成に対する理解を得られるように なっている.文章だけを追っていると,表面的に すら理解することは難しいが,式の美しさや,そ の中に隠れている物理現象の発見を楽しみたい方 にはぜひ最後まで読んでいただきたい.最後まで 読み切った方には,体系的な惑星形成に関する知 識と,物理的直感が備わるものと期待できる.4 章では,惑星分布生成モデルという惑星系形成理 論構築の手法についてまとめてある.前述したと おり,続々と見つかりつつある系外惑星を既存の 理論で一概に理解することは困難であり,それぞ れの奇妙な惑星を理解するための物理の追加が必 要となる.このモデルでは,既存の理論に基づい てランダムに惑星系を生成する.これにより,発 見された惑星の分布との比較が可能になり,既存 の理論に足りない物理に気づくことができる.現 在はさまざまな方法で理論の不足点を補足する作 業が続いているが,すべての惑星系を完全に理解 できる理論の構築には至っていない.この本の読 者が今後この分野にかかわり,さらなる理論の発 展に貢献することを願っている.

柴田雄(国立天文台理論研究部)

惑星形成の物理

井田茂・中本泰史 著

共立出版 2,000円+税 144頁,A5判

☆☆☆☆★

4

参照

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