日本管理 会 計 学 会 誌 管理会計 学1997 年 第 5巻 第1号 論 文
設
備 投
資
案
評 価
のた
め
の
実
効
税
率
に
関
す
る
研 究
山 下 裕 企
* 〈論 文 要 旨〉 将来 ,確実に支出 を もた らす租税は,企 業が設備投資 案を評 価 する際に考 慮 すべ き重 要 な ファ ク ターの一つ である.特に,法人税 ,道府 県民税の 法人税割,市町 村 民 税の法人 税 割お よ び事 業 税 か ら なる法 人 所 得 税 は, 法 人の 所得に対 して 変 動 し,かつ その 所得に対 して占め る割合が大きい の で 無視で き ない 要 素であろ う.そ れゆ え, 設備 投資に よ る法人所得税の 実 質的な負担 額 を計算する た めの実効税 率は重 要な概念で ある とい える.設 備 投 資案を評 価 す る際に は資金の 時間的価値を考慮 し な け ればな ら ない の で,法人所得税の 支払時期や事 業税 の損 金 算 入 時 期が重 要となるが,これ まで の 実 効 税 率の 考え 方で は,中 間 申 告 制 度 を 十 分に 考慮して い ない た め,それ らの時期が現 実 と は異な っ て扱わ れて い た.そこ で本 研 究で は, 仮 決算方式に よ り 中間申告を行 う場 合につ い て , 中 間 申 告お よ び支払時 期を考慮 し た実 効 税 率の 計算方法を提案 する と ともに,提案する方 法と従 来の方法との比較 ・検討を行 う.これ に よ り, 設 備 投資案 評 価の た めの実 効 税率の大き さ は, 資本コ ス ト率や法人所得税の各税率 の他に対 象 となる期の事 業 税 控 除 前 課 税 所 得の増 分の う ち上半 期の 占め る割 合に も影 響 を 受 ける こ と が わ か る.ま た資本コ ス ト率が大 きい程,あるいは上 半 期 と下 半 期で 事 業 税 控 除 前 課税所 得の増 分の 差が大きい 程,従 来の 方法は現実と は異なっ た税負担を示 すこ と が わ か る. 〈 キーワー ド 〉 法 人 所 得 税, 実 効 税率, 設 備 投資 ,事 業 税損金算入, 中 間申告 1995 年12月受付 1996 年 6月受理 宰東 京 理 科 大 学 経 営 学 部 講 師NII-Electronic Library Service 管理 会 計 学 第 5巻 第 1号
1
. は じめに 将来, 確実 に支出 を もた らす租税は,企 業が経営計画 をた て る際に考慮 すべ き重要なフ ァ ク ターの 一つ で ある .特に, 法人 税, 道府県民 税 の法 人 税 割 と市町 村 民 税の 法人税 割(
以下, こ の2
つ を合 わ せ て住 民 税の法 人 税割とい う)
, お よ び事業税 とい っ た法人 所得税 は,法人 の所得の 大きさ に応 じ て変動 し,かつ その 所得に対し て占め る割合 が大 きい の で 無視するこ との で きない 要素で ある.これまで 経営計画に租 税 を考 慮し た もの として, 例 え ば,Merville
・Petty
[2
】 , 山下 [4
], [5
], [61
等 が ある.こ れ ら法 人所 得 税は設 備 投資計 画で , 設 備投資案の評 価 を行 う場合に も考慮さ れ るべ き で ある. 設備投 資を行 うこ とに よっ て増加 するある期の 法人所得税は , その 期の 設備投資 に よ る課 税所得の 増 加 分 に税 法 上 定め ら れた税 率 を乗 じて計 算 される が, こ の計 算 結 果は 設 備 投 資 に よ る企 業の実 質 的 な税 負 担 を表 さ ない 。 それ は法 人所 得 税の一部で ある事業 税 が債 務の確 定 し た期 問の損 金 に算 入 され, その 影響で それ 以 降の 各期の法人所得税が増 減 する た め である.そ こで, こ の ような事 業税損金算入の 影響を考慮 し た実 質的 な税負担を 計算 する た めの , 実効 税率 とい
う
概念が重要となる.本研 究で は実効 税率を, 「事 業税損 金 算 入の 影響を考慮し た 上 で , 設 備 投資を行 うこ とに よ る 企業の長 期 的かつ 実質的な法人 所得税額を決 定する た め に, 設備 投資に よ り引き起 こ さ れ た事業税 控除前課税所 得の増 分 に乗 じられ る率」と定義し, こ れ に よっ て決定され る法人所得税額を実効税 額と呼ぶ こ と にする。 実 効 税 率の研 究は, こ れ まで 片 岡 田 や千 住 ・伏 見 [3
】等に よ りな され て い る が , 設備 投 資案評 価の た めの 実効税 率につ い て 議論 して い る の は千住 ・伏 見[3
】以外ほ とん ど見あ た らない .設備投 資案
を評価 する際に は資金の 時間的価値を考慮 しなければな らない の で , 法 人 所 得 税の 支 払 時 期や事業 税の損 金 算 入 時 期 が 重 要 となるが, これまで の実 効 税率の 考 え方で は, 中 間 申告 制 度 を十 分に考 慮 して い ない た め, それ らの 時 期が現 実 と は異 なっ て 扱わ れて い た. そこ で本 研 究で は, 仮 決算 方 式 に より中 間 申告 を行 う場 合 につ い て, 中 間 申告お よび支払時期 を考慮し た実効税率の 計算方法を提 案する とと もに, 提 案する方法と 従来の 方法と を比較 ・検討するこ とを 目的とする.2
. わ が国
の税 制 と従 来
の実効 税 率
の考 え方
に つ い て 税 法 上, 第 t期の 法 人 所得税は第t 期の期 首 か ら半期 経過 時 点 よ り2
カ月以内に中 間申 告 と して 納 付 をする こ と と, 第 t 期 末か ら2
ヵ 月以内に確 定 申告 と して 納 付 をする こ と が 義務づ け ら れて い る (法人税法第74
条). ま た中 間 申告の 方 法 として , 前 年 度 (こ の場 合16
N工 工一Eleotronlo Llbrary設備 投資 案評価のための実 効税 率に関 する研究 は, 第
t
−1
期)
に確 定し た法人所得税 額の2
分の1
を申告する方 法 と,6
カ 月 を1
事
業年 度 と みな して仮 決算に よっ て税額 を決 定 す る方 法 が あるが, 前 述の ように, 本 研 究で は後 者の方法を前提 と して 議論をす すめ る. 次に法人所得税の 計算方法につ い て述べ る. 法人税 と事 業税 は課 税 所 得 に そ れ ぞ れ税率 を乗 じ た もの で あ り,住 民 税の 法 人 割は, 法人税に税 率 を乗 じ た もの で あ るので ,これ ら は直接的にあるい は間接 的に課 税 所得を基礎とし て計算さ れ る.資 本金1
億 円以下 の普通 法 人の 場 合, 現 在の 法 人税 率は課 税 所 得800
万 冂以 ドの部 分 に はO
.28
,800
万 円 を超え た 部 分に は0
.375
が適用 さ れ る. 同様に事業税 も課税所得が350
万 円お よび700
万 円 を境に 税率が変 化 する . とこ ろが , ある設 備 投 資 案の 評 価 を行 う際に, その投 資 にかかわらず 課 税所 得が800
万 円 を超 えて い る場 合は, 投 資 を行 うこ と に よる増 分の税 額はそ れ ぞ れの 最 高 税 率 を用い て 計 算で きる.本 研 究で はその ような状 況 を前提 と し, それぞれ最 高 税 率 と して の法 人税率を λ,,住民 税の法人 割税率を λ2,事業税率をλ,とお く.こ の とき, 設備 投資に よる課税 所得の 増分をa’とすると,申告法 人所得 税の 増分は ,T
={(1
十 λ2)λ1 十 λ3}a, ニ λヱ・a , (1
) と計 算 さ れ る. こ こで λT を実効税率に対 し て 単純 合 算 税 率と呼ぶ . 現行で は, λ, =0
.375
, λ2 =O
.173
, λ3 =0
.12
で ある の で, λ T =O
.559875
で ある .ζ
賊下
2ケ月 2ケ 月 2ケ月 6ケ 月 期首》
第 t−1
期 確 定 申告 経 過 時 点》
第 t 期 中間申告 期 末▽
第 t 期 確定 申告 図1
法人 所 得 税の 申告 時 期NII-Electronic Library Service 管理会計学 第5巻 第1号 図
2
課税所得がa だけ増 加 し た場合の各期の税 額の増 分 (従来の方法)つ ぎに課 税 所 得 は益 金か ら損 金 を控 除して 求め ら れ る が , 重 要な こ とは, 第‘期中 に納 税 申告するこ とに よっ て債務が確 定 し た事業税は,第 醐 の損金 に算入 さ れ るこ とで ある. し た が っ て, 第’期の損金に算入 され る事 業税 は, 第
t
−1
期の確 定 申告 分 と第∫期の 中 間 申告 分 となる . とこ ろが従 来の計 算 方 法で は, 第 t 期の 中 間 申告 分お よ び確 定 申告 分が第 t +1
期の損金で ある が ご とく扱われて い る. また従 来の 方法で は納税は 各期末を仮定し て い る.これ ら は前述し た ような現行の税制とは異なる. 従 来の 考 え方に基づ くと実 効 税 率は, 次の ように求め ら れ る .まず 設 備 投 資に よっ て , 第 ‘期 に事業 税控除前課税所得の 増 分 (設 備 投資に よ る課 税 所得の 増 分 に設 備 投資に よ る 事 業税損金算入額の 増 分 を加えた もの)がa だ け生 じ る もの と仮 定する と, 第 瑚 末 に増 分 税 額が λTa だけ生 じ る.こ の 法 人 所 得 税 λTa の うち事 業税λ3 a は第t +1
期の損 金に 算入 さ れ るの で , 第t
+1
期 の課税所得をλ3a だ け減 少さ せ , し たがっ て法人所得税をλT λ3a だけ減 少 さ せ る.つ ぎに第 t +2
期で は, 第t +1
期の増 分法人所得税(
一λT λ3a)
に含まれ る増 分事業税 (一λ32a )が損金に算入 さ れ るの で, 課税所得を λ32a だけ 増加 さ せ, したが っ て,法人所得税 をλ7 λ32a だけ増 加させ る.この よ うな税 額の増 減は, その後の 期 間におい て , 理論 上, 無 限に繰 り返さ れ る。 したが っ て , 設備投 資に よっ て第 t期 の 事業 税 控 除 前 課 税 所 得が a だ け増 えた こ とに よ る実 質 的な税負担 (実 効 税 額)は, これ ら税 額の 増 減の 通算として とらえるこ とがで きる. そこ で資 本コ ス ト率を ‘(
1
年複 利 )と して 勦 期期末 時点で の 実効税額丁。 。 を求め る と, 次の よ うになる.18
N工 工一Eleotronlo Llbrary設備投 資案評 価の た めの 実 効 税率に関 する研 究
Te
。= λ。a . λ・λ・a + λTA32
a . . . . (1+i
)21
+i
λT (1
+i
) a1
+i
+ λ3 (2
) は事
業 税控除前 課 税 所 得 の 増 分で ある の で , 式(2
)をa で 除 して , 実効税 率 λ, 0 は次の よ うに求め ら れ る.A
. ■(1
+i
) λe 。 =1
+i
+ λ3 (3
) こ こで実効 税率を考える際に課税所得の 増分で は な く事業税控除前課税所得を用い なけ れ ばな らない 理 由は , 損 金 算 入さ れる事業 税の性 格に ある. 第 潮 に損金算 入さ れ る事業 税の増 分は, 第t期以前に申告し た事 業税が 第t期の 課税所得にあた える影響の 総和であ る. とこ ろ が実 効税率の 考え方で は,前述 の ように,第t期が そ れ以降の 期に与える影響 は, 第 t 期の 実 効 税 額の 計 算 に含 まれて お り, こ の ような計 算は第 醐 以外 で も同様 に行 われる . したがっ て事業税 控 除 前 課 税 所 得の 増 分 を用い ない と, 事 業 税 損 金 算 入の 影 響 を 二 重計算して しまうこ とに な る.3
.中
間
申
告
お よび
支
払
時
点
を考慮
し た実
効税率
前述の ように ,2
. で述べ た実効 税 率の 考え方 は, 現 行の税 制 を反映して い ない .そこ で , こ こ で は中 間申告 および法 人所得税の 支 払時点 (第‘期期 首 か ら8
ヶ月後の 中 間申告 と第t
期 期 末 か ら2
ヶ月 後の確定 申告)を考慮 し た実 効 税率の 考え方 を述べ る。まず仮決算 方式に よ る中 間申告で は, 第t期の 上半期 (第’期期 首か ら
6
ヶ月 間)を1
事 業年度とみ な して法人所得 税を計 算し申告を行 う. そ こ で設備投 資に よる第t期の 上半期 に生 じた事 業 税 控 除 前 課 税 所 得の増 分 をa1 とお くと, 第’期の 中 間 申告で は, λTai の 法 人 所 得 税が増 加 する .ま た , 第t期 の 下半期 に 生 じ た事業 税控除 前 課 税 所 得の 増 分 をa2 (た だ し, a1 + a2 = a, a ≠0
)とする と, 第t期の確 定 申告で は, 中間申告分の事業税λ3a1 が損金に算入 さ れ るの で, 課税 所得の 増分は (a2 一λ3 a1 )とな り, (a2 一λ3 al )λT の 法 人所得税 が増 加 する. さ らに, 第t
期の確
定申
告 分の事
業 税は, 第彡+1
期の 中間 申告時に 損金算入 さ れ るの で , (λ 32a1 一λ 3a2 )λT だけ税 額 を増 加 さ せ る. こ の ような税 額の 増 減は, そ の後に期聞に お い て, 理論上, 無 限に繰 り返 さ れ るこ とに な る. 図3
は, 第t期 の上 半期 に生 じた事業税 控 除 前 課 税 所得の増 分 a1 に起 因する法 人所得税の 増減と, 下半期 の増 分 a2 に起因 する法人所 得 税の増 分 を分 離 して記 述 して い る. 図2
お よ び図3
を み る と,NII-Electronic Library Service 管理 会 計学 第5巻 第 1壕 図
3
課 税 所得が a (= a1 + a2 )増加し た場合の各 期の税額の 増分 (提 案す る方法) 従 来の 実効税率の 考え方で は, 第彦期に生 じた事業 税の 損金 算入 の 影響 が 最 初に現れ るの が 第 t+1
期の確 定 申告 時 点で ある の に対 し, 現 行の税 制 (提案する実 効 税 率の 考 え方)で は, それ が 第t期の上 半期に生 じ た事 業税 に関 して は第’期の 確 定 申告 時点に , 第t期の 下 半期に生 じた事業税に関して は第彦+1
期の 中 間申告時点におい てあ らわれてい る こと がわ かる. こ の ように 中 間 申告を考慮 する と, 実 質 的に半 年 決 算 に よっ て納 税 する こ と になる の で , 従 来の 実効 税 率の 考 え 方に比べ て , 事業 税 損金算入の 影響が よ り早 くあら わ れ るこ と が わ か る.こ こ で, 支 払時点 を月単位で
考
慮 して い るた め ,1
月複利の資 本コ ス ト率r を導
入する. た だ し, (1
+ r) 12 = (1
+i
)とする.この とき , 第彦期期 末時点で の 実効税額Tel
は, 税額の 増 減を第 瑚 期 末 時点の価 値 に変 換 して和 を とっ た もの で あるの で , 次の よう
に な る. ・・・… a ・(・・ r・4 ・ (a2〒
牆
1
協 + (λ ’ a謠
詳
2’λT + … ・ λ3 = λ Tal (1
+ r)4 {1
− (1
+ r )6 λTa2 十 (1 + r)2 λ32 十 (1
+ r)12 {1
一 λ・ + λ32 一 … } (1 + r)6 (1 + r)12 一 … } (4
) こ こ で ・ 日 内は初 項 ・・ 公 比 {一 (、峯
斈
ア}嘸 騰 匕灘 の和で あ・ の で ・20
N工 工一Eleotronlo Llbrary設 備 投 資 案 評 価のた めの実 効 税 率に関 する研 究
Te
・一 ・・a ・… r・4 、、呈
識
、 + 、、蒲
呈
識
、、 ・ 、器 雛
・・i(・・ r・6+ a ・・ (5
) となる .これは伝 統的 な方式で は第t
+ n 期の税額の 増分 を1
/(1
+ r)12 n で割 引くの に対 し, 提 案 す る方 法で は中 間 申告 分は1
/(1
+ r) 12n −4 , 確定 申告 分は1
/(1
+ r) 12n + 2 で そ れ ぞ れ割 引 くこ と を示 して い る. し た が っ て , 第‘期期 末時点で の 実 効 税 率 は, 式(5
)を第 t 期の 租税控 除前課税所得の増分a (= a1 + a2 )で 除 して , 次の ように求め ら れる. λT (1
+ r)4 λ e1 = (1 + r)6 + λ3 {1
十 α {(1
十 r)6−1
}} (6
) こ こで α ==a1
で あ り, これ は第彦期の事 業税控除前課税所得の 増分の うち上半期の a1 十 a2 占める割 合 を表 して い る.こ の ように, 中 間申告 を考慮 する と実 効 税率は, 資 本 コ ス ト率 や法 人 所得税の税率と同様に, α にも影 響 を受ける こ とがわかる. 次 に, 従 来の 実 効 税率と提 案 する実 効 税率の 比 較 を行 う .資本コ ス ト率は
1
年複利で0
か ら20
% まで 変化さ せ, 提案する実 効 税 率は α が0
(下 半 期 に の み事業 税 控 除 前 課 税 所 得 が 生 じ た場合 ),0
.5
(上半期と下半期 に同 じ だけ事業 税 控 除 前 課 税 所 得が 生 じ た場 合)
,1
(上半期にの み事業 税控除前課税所得が 生 じ た場合 )の3
つ を考えた. 結 果 を ま と め る と 表1の ようになる . またそ れ を図示した もの が図4 で ある . これ らか ら読み と れる こ と は, まず資本 コ ス ト率i
がゼロ の 場 合は, 全 て の 実効税率は 一致 する とい うこ と で ある。こ の こ と は,i
=0
な らばr =0
なの で ,式(3
)と式(6
)で そ れ ぞ れの 資 本 コ ス ト率 を ゼ ロ と おい て計 算 する と,A
. T λe 。 = λe1 =1
+ λ3 (7) と な り,一致する こ と か ら明 ら か で あ る.ま たこ の 式 (7
)は, 税 効 果 会 計で 用い ら れ て い る実効税率に ほ か な ら ない.式(3
)と式(6
)が資本コ ス ト率ゼ ロ の場合に一致するの は , 両 者の 差 異が事 業 税 の損 金 算入 時 期や法人所 得 税の 支 払 時 期にの み依 存 して い る か らで あ る.次 に, 図
4
を み る と, 提案す る実効 税 率は, い ずれの ケ ース も資本 コ ス ト 率の 増 加 と とNII-Electronic Library Service 管理会計 学 第5巻第 1号 表
1
実効税率の比較 (単位 : %) . λ ε1 ‘ λ。σ α= 0 α= 0.5 α 騾 1 o 49 。989 49 .989 49 .989 49 .989 250
.094 49 .877 50 .125
50373
4 50 .196 49 .767 50 .260 50 .752 6 50294 49 .65950
.393
51
.127
8 50 .389 49 .552 50 .524 51 .496 10 50 .481 49 .448 50 .654
51
.861
12
50
.569
49 .345
50
,78352222
14
50
.655
49244
50
.911
52
.578
16
50
.739
49 .144
5LO37
52
.930 18 50 .819 49 .046 51ユ62 5327820
50
.898
48
.950
51
,286
53
.622
実 効 税率
Ol54
0
.53
0
.52
OL51
0
.5
0
.49
0
.48O
.OO
0
.05
図4
α10
0
.15
資
本コ ス ト率 実効税率の比較020
(
1
年 複 利)
22
N工 工一Eleotronio設 備 投 資 案 評 価のため の実 効 税率に関 する研究 もに, 従 来の 実 効 税率との 差が広が っ てい るこ と がわか る. し か し な が らα =
0
の場合は, 資 本 コ ス ト率の 増 加 と と もに従 来の 実 効 税率に対 し て小 さくなっ てい くの に対 し, α =O
.5
お よ び α =1
の場合は大 きくなっ て い く.そ こ で ,r >0
の範 囲 (r =O
の場 合は , 前 述 の ご と く差は ゼ ロ で ある)で, 提 案する実効税率と従 来の実効税率 との 差を とっ て み る と 次の ように なる. △λe = λel 一λe。 = λT (1
+ r)4{(1
+ r)6−1
} (α一A
) (1
+ r)6 + λ3 (8
) ただ し,A
{(1
+ r)8−1
}λ3 + {(1
+ r)2−1
}(1
+ r)12A
= {(1
+ r)6−1
}{(1
+ r)12 + λ3} (9
) で ある.式(8
)で , (α 一A
)の係数は 正 で あるの で, α >A
の ときは,提案する実 効 税 率が従 来の もの よ りも大き くな り, α <A
の ときは, その 逆となる. したが っ て , 従来の 実効税 率は, α >A
の と きは, αが大 き くな れ ば な る ほ ど設 備 投 資 に関わ る法 人 所 得 税 額 を過 小 評価 し, 逆に α < .4
の ときは,α が 小 さくな れ ば なる ほ ど過大評価して しまう.こ のA
は 資本 コ ス ト率と事業 税 率 によ っ て 影 響 を受けるが, 事 業税率は12
% であるの で ,資本コ ス ト率が一年 複 利で30
% くらい まで の範 囲 (た だ し資 本 コ ス ト率が ゼ ロ の 場 合を除 く) で は,O
.40 〜0
.44
の 間で ある,以 上の こ と を まと め る と,資本コ ス ト率
i
(1
年複 利)が非常に小さい と見な せ る場合, あるい はi
が大 き くて も, α ≒A
(例 えば,0
くi
〈0
.3
の 範 囲で は,O
.4
くらい )で ある場 合に は, 法人所 得 税 を従 来の実 効 税 率 を用い て計算して も, 提 案 する もの を用い て計算し て も,その差異は極めて小 さく, し た が っ て誤 っ た意思 決 定を行 うこ と は少 ない で あろ う. また事業税控 除前課 税所得が半年ご とに見積 もれ ない 場合は,提 案する実 効 税率を計算す る こ と がで きない が , もし季節 変 動が少 ない こ とがわ かっ て い れば, α がO
.4
に比 較 的 近 い 値を とる と考えら れ るの で, 従来の実効税 率を用い て も, それ ほ ど大 きな誤差は 生 じな い で あろ う.4
.設備 投
資
問題
へ の適
用こ こで は,
3
. で提案し た実効税率を具体的な 設備投 資問題へ 適用 し, 従来の方法と 比 較検討 を行う.まず投
資
期 間は3 年
と し, 設備 へ の 初期投 資額は ,3
,500
万 円 とす る.こ の投 資は季節NII-Electronic Library Service 管 理 会 計 学 第 5 巻 第 1 号 変動の 影 響を受け るた め , 第
1
年 度 , 第2
年 度 とも半 期 経 過 時 点で1
,000
万 円 , 期末に500
万 円の正 味 キャ ッ シ ュ フ ロ ーをもた らす . ま た第3
年度 に は, 半期 経過時 点に800
万 円, 期 末 に400
万 円の 正味キャ ッ シ ュ フ ロ ー を もた らす (図5
参照 ). またこ の 設 備は定 率法(
償 却率0
.369
)で 減価償 却さ れ, 第3
年 度期 末に550 万円で 売却さ れ る.だ だ しi
=0
.1
とし,単純合 算税率λT およ び事 業 税率λ3 は前 述の値 を用い る. まず 設備 投 資 に よる法 人 所 得税の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ーは,そ れ ぞ れ表2
の ように計算さ れ る .まず事業 税 控 除前 課 税 所 得の増 分は,税 引前正味キャ ッ シュ フ ロ ー (設備の取得 ・売 却 に よ る もの は除 く)に設 備の売却に よ る キ ャ ッ シュ イン フ ロ ーを加 え, そこか ら滅価 償 却 費と設備の 譲渡原価 を控除し て求め られ る.つ ぎに従 来の 実 効 税 率は, 式(3
)を用い て 計算され,各
年度 と も0
.50481
と な る. し た がっ て こ の 税率に各年度の 事業税 控 除前課税 所 得 を乗 ずれ ば, 従 来の方 法に よ る法人所 得 税の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ーが求め ら れ る (図6
参 照). また提案 する方法に よ る実効税 率は , まず 上 半 期の事業 税 控 除前 課 税 所 得の増 分 を その 年度の 総額で除 して α の 値 を求め, 式 (6
)に代 入 する こと に よっ て , 第1
年 度か ら順に0
,53548
,0
.51535
お よ び0
.53124
と計算され る.これ をそれ ぞ れ の年度の 事 業税控除前 課税 所得に乗 ずれ ば,提案する方 法で 計算し た法人所得 税の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー が求め られ る (図7
参照),図6
と図7
を比較 する と従来の 実効 税率を用い た場合の税額の 和は631
.0
万 円で あ り, 提 案 する実 効 税 率を用い た場 合は654
.0
万 円 と な り,その 差は23
.0
万 円で あ る. ま た 正味 現在価値は, 従 来の実効税率を用い る と,15
,5
万円であ り,提案す る実効税率 を用い る と一3
.4
万 円で ある. し た がっ て こ の よ うな場 合は, 中 間 申告や法 人 所 得 税の 支払 時 期 を考慮し ない と , 誤 っ た意思決定を導 くこ と に な るで あろう. し か し な が ら 正味現在 表2
法人 所得税 キャ ッ シュ フ ロ ーの 計算 第1年度 第2年度 第3年度 上半期 下半期 合計 上半期 下半期 合計 上半期 下半期 合計 税引前正味キャッシュフロー諏 得・売却1こよる ものは除 く) 1,0005001 ,5001 ,0005001 ,5008004001 ,200 設備の 売却に よ る キャッ シュ イン フロ ー o000000550550 減 価 償 却 費 645.8645 .81291 ,5407 .5407 .58149257 .1257 .15142 設 備の譲渡原 価 00D0oo0879 、3879 、3 事業税控除前課税 取得の増 分 [= + 一 一 ] 354.3 一145、8208 、5592 .592 ,5685 ユ 542.9 一186.4356 ,5 事業税控除前課税取得の増分のうち上半期の占める割合 (の 1.70 0,86 1,52 従 来の実効税率 [(3)式に よっ て計算 ] 0.50481 0.50481 0.50481 を用いて計算した法入取得税キヤッシュ フロー[≡ x ] 105β 345.8 179.9 提 案 す る実 効 税 率 [ 式 に よっ て計 算 ] O.53548 O.51535 0.53124 を用い て計算 した法人取得税キャッシュ フ ロー[= × ] 11L6 353.0 189.424
N工 工一Eleotronlo Llbrary設 備 投 資 案 評 価の た め の実 効 税率に関する研 究 図
5
税引前正味キャ ッシュ フ ロー (売 却に よ るもの は除く) 345 .8万円 図6
従 来の 実 効 税率を用い た法人所得税キ ャ ッ シュ フ ロ ー 353 .0万 円 図7
提 案 する実効税率を用い た法人 所得税 キャ ッ シュ フロ ー 第1年度 第2
年度 第3
年 度 105 .3万 円 179 .9 第1年 度第2年 度
第3 年度 111 .6万 円 189 .4
NII-Electronic Library Service 管理会 計 学 第5巻第1号 価値の 差は
18
.9
万 円で ある が , 税額を現在価 値 に割引い た ため, 前 述 し た税額の 差22
.9
万 円より も小 さ くなっ て い る。こ の こ と は資 本 コ ス ト率の 増 加 と と もに顕 著 になる . した がっ て ,前述 し た よ うに資本 コ ス トが増加す る と と もに ,従来の 実効 税率と提案する実 効 税率の 差は大き くな り, 各期の 実効税額の 差も大きくな る が, そ れ が投資 案の 正味現在価 値を計 算する際に はその 差ほ どインパ ク トを与え ない こ とが わ かる.5
. おわ り
に 本研 究で は, まず 中 間申告お よ び法人 所得税の 支払時期を考慮した設 備投資 案評価の た めの実 効 税率を提 案 した. これ を用い る こ と に よっ て, 現 行の 税 制 の下 で , よ り正確に法 人 所 得 税 (実 効 税 額)を把 握で きる ように な っ た と考 えら れ る . また中 間 申告 を考慮 する と, 実効税率はα に依 存す るの で , これ が 見積 もれ ない 場 合 に は, 正 しく実 効 税 率を計 算 する こ とがで きない こ とがわ かっ た.つ ぎに, 従 来の 実効税率 との 比較を行 うこ とに よ り, 資本 コ ス ト率が大 きくなる に つ れ て , ま た α とA
(通常は 0 .4 ぐらい の 値をと る)の 差が 大き くな る につ れて , 従 来の実 効 税率 と提案する実効 税 率 との 差が大 き くなるこ と が わ か っ た.さ ら に具体的 な設備投資問 題 を用 い て検討 するこ と で,従来の 実効税 率が誤っ た意 思 決 定 を導 く可 能 性 が ある こ とを示 した .こ の ようなこ とが起 こ りうる以上 , 設備投資の 評価を行 う際に は, 中 間申告や支払時期を考慮し た実 効 税率を用い る こと が有用で ある と 考え られ る. 謝 辞 本論 文を作成する にあた り,東京理科大学経 営学部の片岡洋一教授に は有益な ご意見 ・ご指 摘 を 頂 き まし た.また東京理科 大 学 経営学 部の諸 先生方には学 内の研 究 会 等を通 じて有 益 なコ メ ン トを 頂き ました.さらに論文の審査段階に お い て,2人の レ フ ェ リーの先生 か ら は表現 上, 不 十 分 な 点に つ い て貴重 なご指 摘 を頂き ました.こ こ に記 し て感謝の意を表します.参考
文 献ll
】 片 岡 洋一 :“発 生 基 準に も とつ く法人所 得 税とその 実 効税率”, 会 計, pp.587 −601 , Vol .142 , No .4, (1992)【2】Merville,LJ . and J .William Petty .:“Transfer
Pricing fer the Multinational Firm ”, THE
ACCO UiVTI2>G REVIEW
, VD].53, No .4,(1978) [3]千 住 鎮 雄 ・伏 見多美雄 : 「経済性 工学の 応用」,日本 能 率 協 会, (1990 ) [4]山 下 裕 企 : “損 益 分岐分 析へ の租税関数の導入”,日本 経 営工学 会 誌,pp .439 ・445 ,VoL43 , NO .6, (1993 )
26
N工 工一Eleotronlo Llbrary設 備 投 資案評価の た め の実効税 率に関 する研究
[5】 山下裕企 : “租税 を考 慮し た 経 済 寿 命 決 定 問 題”,日 本 経営工学 会 誌,pp.127 −134, Vo廴45 , NO .2,
(1994)
[6] 山 下 裕 企 : “全 部 原 価 計算の 下で の損益 分岐 分 析へ の租 税関数 と目標 達 成 領 域 分 析の 導入 ”, 日本 管 理会 計 学 会 誌 『管理 会計 学』,pp27 −41,VoL3 , No .2,(1995 )
NII-Electronic Library Service
The Journalof Managernent Accounting,Japan
Vol.5,No. 1 1997
A
Study
ofEffective
Tax
Rate
for
the
Economic
Evaluation
of
Investment
Projects
Hiroki
Yamashita
*
Abstract
In
the
economic evaluation of investment projects, one of relevant considerations isthe impact of taxation,Especially,theimpact
of corporateincome
taxes,which vary with the corporate taxableincome,
shouldbe
considered. To compute theamount of the taxes
from
the projecteffectively, the efftictive taxe rateis
used.[Vherefore,
it
is
also animportant
factor
in the economic evaluation of investment projects.The traditionalmethod of computing efTbctive tax rate, however, does not reflect thepresent taxationsystemin
Japan,
principally,the prepayment system of taxes.The purpose of this paper isto:
(1)
show the method of computing effbctive tax rate which reflects present ation system; and
(2)
comparethe
proposed method with the traditionalmethod.We
can conclude that,the traditionalmethed rnakeslarge
errors concerning the estimation of taxesfrom
the project,when thediscount
rateis
re}ativelyhigh,or
when the differenceof taxable incomebefore
corporate enterprise taxbetween
thefirst
half
and thelatter
half
of theyearis
large.
Key
Words
Corporate
income taxes,Effbctivetax rate,Investment
projects,Corporate
enter-prise
tax,Prepayment system of the taxesSubmittedDecember 1995.
AeceptedJune 1996.
*Lecturer ofManagement Accounting, SchoolofManagement, Science Universityof Tokyo