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歯に矯正カを加えた際の圧迫側歯周組織の三次元的様相

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 佐 藤 嘉 晃

学 位 論 文 題 名

歯に矯正カを加えた際の圧迫側歯周組織の三次元的様相

― 初 期 変 化 に 続 く 経 時 的 な 修 復 機 転 に つ い て 一

学位論文内容の要旨

  矯正的 歯の 移動を 行った 際の歯 周組 織の変 化は, 歯根と 歯槽骨 の間 に生じる圧カに対応する,

あるい は適応 しよ うとす る組織 の変化であり,加える荷重や歯周組織の解剖学的な形態等により,

三次元 的に多 様な 様相を 示す。 最近, 金子は 歯に 矯正カ を加え た際の 圧迫側歯周組織の初期変化 をコン ピュー タグ ラフィ クスを もちい て三次 元的 にとら えた研 究を発 表した。今回この手法を用 いて , 作 用 期 間 を2週 間,4週 間と延 長し, 長期 間にわ たる圧 迫側歯 周組織 の変 化を, 特に組 織 の 修 復 機 転 の 観 点 か ら 三 次 元 的 か つ 経 時 的 に と ら え る こ と を 目 的 と し て 実 験を 行 っ た 。

〈 材料と 方法 〉

  雄の成 ネコ の上顎 犬歯を 実験歯 とし ,第3前臼 歯を固 定源と して矯 正用ス プリ ングで 遠心に 傾 斜 移 動 さ せ た。 実 験 条 件 は,1匹 に は 右側 を 対 照歯, 左側 を1009 14日間 ,1匹 には 左側を100g 7日 間 , 右 側を1009 14日 間 ,2匹 に は 左 側を1009 14日 間, 右 側 を それ ぞれ50gま たは200 914 日 間 ,2匹 には 左 側 を100 928日間 ,右側 を50gまたは2009 28日間と した 。なお 荷重は 初期荷 重 と し,実 験中 荷重の 調整は 行わな かっ た。ま た実験 前後に 模型を 採得 し実験歯の移動量の計測を 行 った。

  所 定 の 期間 終 了 後 , ブア ン 液 に て 灌流 固 定 し,Plank―Rychlo液 にて脱 灰し, セロイ ジン に 包 埋 し た 。 セロ イ ジ ン ブ口 ックに 薄切面 と垂直 に穴を 開け 三次元 再構築 の基準 点と し,30umの 連 続 横 断 切 片を 作 製 し ,H. A.染色 を 行 っ た 。切 片を5枚ま たは2枚お きに顕 微鏡写 真撮 影し,

歯 根,歯 槽骨 ,歯根 膜変性 領域, 破骨細胞の分布および基準点をトレースし,これらをコンピュー タ に入カ して 三次元 再構築 像を作 成し た。

〈 結  果〉

1)対 照 歯と14日 間 例に っい て

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  金 子は圧 迫側 歯根膜 には, 内変性 帯と それを はさむ 無細胞 帯が変 性領 域として分布すると報告 し ている 。本実 験で も14日間 例では 同様 の所見 が得ら れた。 また, この 変性領域に面する歯槽骨 に 活発な 吸収を 行う 部位を 認めた 。

2)7日間 と14日 間での 経時的 な比較 (初期 荷重100g例)

  組 織切片 によ る顕微 鏡像で は14日 間例で 変性領 域の一 部は すでに 修復さ れ縮小する傾向にあっ た 。 変 性 領域 に 面 す る 歯 槽骨 に お い て は7日 間 例より も広範 に歯 槽骨が 吸収さ れてい る部位 が あ った。 三次元 再構 築像で は14日間 例で 変性領 域の分 布が狭 くなっ てい た。直接性骨吸収と背部 骨 吸収を 行う破 骨細 胞の分 布が減 少して いた。 変性 領域に 面する 歯槽骨 の吸収はいずれも歯槽頂 付 近で はわず かであ ったが ,こ れより 根尖側 よりで は7日間例 に比 して14日 間例で は広 範に吸 収 さ れてい た。

3)初 期荷重 の違 いによ る14日問 例で の比較

( 初期荷 重50g,100g例 および100g,200g例)

  顕 微鏡像 で14日 間例に はすべ て変 性領域 に面す る歯槽 骨の 吸収を 認めた 。三次元再構築像では 同 一個体 内で初 期荷 重の大 きいものほど変性領域は頬舌的に広い分布を′ふした。また破骨細胞は 初 期荷重 の大き いも のほど より深 部にま で分布 して いた。

4)初 期荷重 の違 いによ る28日間 例の 比較

( 初期荷 重50g,100g例 および100g,200g例)

  顕 微鏡像 では28日間例 すべて で歯 槽骨の 吸収が 進み, 歯根 膜は広 範囲に 修復されていた。残存 す る変性 領域か らは なれた 歯槽壁 には破 骨細胞 がす でにみ られな かった 。三次元再構築像ではす べ ての例 で遠心 側歯 頚部歯 槽骨頂 付近で 変性領 域が 残存し ていた 。また 同一個体内では初期荷重 が 大きい もので ,そ れより 根尖側 よりの 舌側面 でも 島状に 残存し ており ,さらに近心側根尖齢に も 残存し ていた 。破 骨細胞 は,遠 心側歯 頚部で は残 存して いる変 性領域 付近の歯槽骨に認められ た 。また 近心側 根尖 部では 初期荷 重の大 きい例 で変 性領域 付近に わずか に分布し,初期荷重の小 さ い 例 で は , 近 心 側 歯 頚 部 か ら 近 心 側 根 尖 部 ま で 幅 広 く 分 布 し て い た 。

〈 考  察〉

1)歯 周組織 の修復 機転と 歯の 移動に っいて .

  破 骨細胞 に矯 正カを 加えた 場合, 圧縮 された 歯根膜 に変性 領域が 出現 し,その周囲に破骨細胞 が 分布す ること は一 般的に 認めら れてお り,ま た経 時的に 歯槽骨 の吸収 と変性領域の修復がおこ り ,その 後破骨 細胞 は消失 すると の報告 も多い 。今 回の実験において7日から14日に至る過程で,

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す でに 変性領 域が三 次元的 に縮 小して いることがわかった。また破骨細胞の分布も滅少していた。

こ のこ とから 変性領 域の一 部は 修復さ れ,必 要な歯 槽骨の 吸収 を終え た部位 で破骨細胞はすでに 消 失し ている と考え られる 。一 方,変 性領域に面した歯槽骨には広範な吸収がみられたことより,

今 後, この部 位から も修復 は進 むもの と考え られる 。次に14日間 例で検 討する と初期荷重の大き い 例で は遠心 側歯頚 部の変 性領 域は比 較的広 く,ま た破骨 細胞 の分布 は初期 荷重の最も大きい20 Og例 で は 歯槽 骨 内 深 く にも み ら れた。 変性領 域に面 する歯 槽骨 にも吸 収がみ られた 。さ らに28 日 間例 で検討 すると 変性領 域は 大部分 で修復 され縮 小して いた 。しか しどの 例でも遠心側歯頚部 歯 槽骨 頂付近 では変 性領域 は残 存して おり, さらに 初期荷 重の 大きい 例では それよりやや根尖側 よ りの 舌側面 でも島 状に点 在し ,近心 側根尖 部にも 残存し ていた。破骨細胞fまこれらの領域付近 に みら れ,そ の他の 部位で はわ ずかで あった 。また 初期荷 重の 小さい 例では ,近心側に幅広い破 骨 細胞 の分布 を認め た。以 上よ り,14日から28日に至る過程で変性領域は大部分が修復されたが,

こ れは 変性領 域に面 する歯 槽骨 の比較 的浅い 部位で の吸収 が関 与して いるも のと考えられる。こ れ らの ことを 模型計 測と比 較す ると14日間例ではほとんと.歯が傾斜移動しなかったのに対して初 期 荷重 の小さ い28日間 例で は歯頚 部より 尖頭で の移 動量が 大きく ,根尖 部の近 心移動による傾斜 移 動が 生じた ものと 考えら れる 。

2)破 骨細胞 の出 現と吸 収形態 にっい て

  金子は 破骨細 胞の出 現形 態を, 無細胞 帯の外 側に 接して 出現し 穿下性 骨吸収 を行う破骨細胞,

穿 下性 骨吸収 よりさ らに外 側に 出現し 直接性 骨吸収 を行う 破骨 細胞, 変性領 域に面する歯槽骨内 の 骨髄 腔に出 現し背 部骨吸 収を 行う破 骨細胞 の3種に分 類した 。

  今回14日 問例 すべて で変性 領域に 面する 歯槽 骨に, 広範な 吸収が 認め られた 。この部位は骨髄 腔 か ら 歯 根 膜 腔へ の 閉 口 部 であ りReitanの い うOpen cleftに 相 当 す る 。こ の吸 収形態 は穿 下 性 骨吸 収やい わゆる 背部骨 吸収 とは独 立して おり, また破 骨細 胞の出 現は穿 下性骨吸収を行う破 骨 細胞 と同様 に歯根 膜の圧 縮に 関連し たもの と考え られる 。し かし, 変性領 域に面した歯槽骨骨 髄 内で 生じる ため, この吸 収形 態を背 部骨吸 収のー っとし ,変 性領域 に面す る歯槽骨の骨髄腔開 部 口付 近に出 現し浅 部での 背部 骨吸収 を行う 破骨細 胞,お よび 変性領 域に面 する歯槽骨内深くの 骨 髄腔 に出現 し深部 での背 部骨 吸収を 行う破 骨細胞 に再分 類し た。

3)応 力分布 と深 部での 背部骨 吸収を 行う 破骨細 胞の関 連

  深部で の背部 骨吸収 を行 う破骨 細胞の 出現に っい ては, 組織学 的な所 見から はその機序が不明 で あヮ た。そ こでこ の破骨 細胞 の分布 を詳細 に検討 すると ,初 期荷重 が大き い例でより深部に分 布 して いた。 一方歯 に加え た矯 正カの 歯槽骨 内への 伝達に っい て,三 次元有 限要素解析を行って

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検討 した結果,歯に加 えた荷重が大きい程 ,より深部にまで 応カが分布していることがわかった。

以 上 より 深部 で の背 部骨吸 収を行う破骨細胞 の出現は,歯槽骨に 分布する応カに深 く依存してい るも のと考えられる。

学位論文審査の要旨

  審 査 は脇 田, 吉 田お よび中村審 査員全員の出席の もとで口頭試問に より提出論文の内容 とそれ に関連する学科 目の知識にっいて 行った。

  矯 正 カに よる 歯 の移 動に伴う歯 周組織変化は矯正 歯科臨床において もっとも関心の深い 問題で ある 。 昨年 度本 学 部大 学院生が学 位論文において矯 正カを加えた際の 歯周組織の初期変化 をコン ピュータグラフ アクスを用いて三 次元再構築し圧迫 但I亅歯根膜の変性組織および破骨細胞の分布状 態を三次元的に 明らかにした。

  本 論 文は この 手 法を 用いて長期 間にわたる圧迫側 歯周組織の変化を ,特に修復機転の観 点から 三次元的にとら えて検討を行って いる。

〈材料 と方法〉

  6匹の 雄成 ネ コ上 顎犬 歯 に矯 正カ を 加え 遠心 に 傾斜 移動 さ せた 。ネ コAでは右側を対照 歯,左 側 を100 914目 間 , ネ コBで は 左 側 を10097目 間, 右側 を1009 14日 間, ネ コC,Dで は 左側 をl 00 914日 間, 右側 を それ ぞれ50gま た は200 914日間 , ネコE,Fで は左 側を1009 28日間 ,右 側 を50gま たは2009 28日間 とし た 。実 験中 荷 重の 調整 は 行わ なか っ た。 実験後,固定,脱 灰を行 い セ 口 イ ジ ン に 包 埋 し ,30〃mの 連続 横 断切 片を 作 製し た後H.A.染 色を 行い , 切片 を顕 微 鏡 写真撮 影し,歯根,歯槽 骨,歯根膜変性領域,破骨細胞それぞれの分布,および基準点をコンピュ一 夕に入 カして三次元再構 築像を得た。

〈 結  果 〉

治 稔

進  

  重

村 田

中 脇

授 授

教 教

査 査

主 副

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1)7日間と14日間 例

  歯頚 部の圧 迫側 歯根膜 に生じ た変性領域は,すでに14日間例では,一部で縮小していた。また,

変性 領域に 面する 歯槽 骨には 活発な 骨吸収 を行う 部位 がみら れ,7日間 例より も広範 な歯 槽骨の 吸収 が行わ れてい た。 この様 な部位 は骨髄 腔開口 部に 相当し ていた 。根尖 部でも変性領域の分布 は 滅 少し て い た 。 直接 性 と 背 部 骨 吸収 を 行 う破 骨紬 胞の分 布は7日間 例より も減少 して いた。

2)初期 荷重の 違い による14日問例

  すべ ての例 で歯 頚部の 変性領 域に面 する 歯槽骨 の吸収 を認め た。ま た同一個体で初期荷重の大 き い もの ほ ど 変 性 領域 は頬 下的 に広い 分布を 示し, 破骨細 胞は より深 部にま で分布 して いた。

3)初期 荷重の 違い による28日間例

  すべ ての例 で歯 槽骨の 吸収が 進み, 歯根 膜は広 範に修 復され ていた が遠心側歯頚部歯槽骨頂付 近で は変性 組織が 依然 残存し ていた 。また 同一個 体で 初期荷 重の大 きい例 で,これより根尖部よ りの 舌側面 と近心 側根 尖部に も変性 組織か 残存し てい た。破 骨細胞 は遠心 側歯頚部の残存する変 性組 織付近 にのみ みら れた。

〈 考  察 〉

1)歯周 組織の 修復 機転に っいて

  7日から14日に至 る過 程で, 変性領 域が三 次元 的に縮 小し, 破骨細 胞の分 布も 減少し たこと か ら, すでに 変性領 域の修 復機 転が始 まり, 歯周組 織の 圧の解 放によ り破骨 細胞は滅少したと考え られ る。ま た変性 領域に 面し た歳槽 骨の広 範な吸 収か らも今 後修復 は進む ものと考えられる。14 日か ら28日に 至る 過程で 変性領 域は大 部分消 失し たが, 遠心側 歯頚部 歯槽骨頂付近では変性組織 が依 然残存 し,初 期荷重 の大 きい例 では, これに 加え てやや 根尖部 よりの 舌側面と近心側根尖部 にも 変性組 織が残 存して いた 。これ より,14日か ら28日に 至る過 程で 変性組織は大部分が修復さ れ, この修 復には 変性領 域に 面する歯槽骨内の浅い部位からの背部骨吸収が大きナょ役割をしたも のと 考える 。また ,遠心 側歯 頚部で の破骨 細胞の 分布 が変性 領域付 近のみ になったことから歯周 組 織 の圧 の 解 放 が 考え ら れ , こ の時 期 が 矯 正 カ の再 荷 重 の 時 期の 目 安にな ると考 えられ る。

2)破骨 細胞の 出現 部位と 歯槽骨 吸収形 態にっ いて

  14日間 例で 変性領 域に面 する歯 槽骨 に,広 範な吸 収が認 められ た。 この部位は骨髄腔から歯根 膜腔 への開 口部で あり, 穿下 性骨吸 収や歯 槽骨の 深部 での背 部骨吸 収とは 異なった働きをしてい た。 またこ の吸収 を行う 破骨 細胞は ,穿下 性骨吸 収や 直接性 骨吸収 を行う 破骨細胞と同様,歯根 膜の 圧に関 連して 出現し たも のと考えられる。これより背部骨吸収を行う破骨細胞の出現部位を,

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変性領 域に面 する 歯槽骨 の骨髄 腔閉口 部付 近に出 現し浅 部での 背部骨 吸収を行う部位と,変性領 域 に面 す る 歯 槽 骨内 深 く の 骨 髄腔 に 出 現 し 深部 での背 部骨吸 収を行 う部 位との2種 に再分 類し た。

3) 応力分 布と深 部での 背部 骨吸収 を行う 破骨細 胞の 関連

  歯槽 骨深く の骨髄 腔での 破骨細 胞の 分布を 検討す ると, 初期 荷重が 大きい例でより深部に分布 してい た。一 方歯 に加え た矯正 カの歯槽骨内への伝達を三次元有限要素解析を行って検討すると,

歯に加 えた荷 重が 大きい 程,よ り深部 にま で応カ が分布 してい た。以 上より深部での背部骨吸収 を 行 う 破 骨 細 胞 の 出 現 は , 歯 槽 骨 に 分 布 す る 応 カ に 依 存 し て い る も の と 考 え ら れ る 。   本研 究は前 記学位 論文に 加えて 矯正 カによ る歯の 移動に 伴う 歯周組 織変化にっき,初期変化に 続く修 復機転 を立 体的に 解明し ,矯正 装置 の再活 性化の 時期や 至適矯 正カに対する考え方に多く の示唆 を与え た点 矯正歯 科臨床 に非常 に役 立っも のと考 える。

  よ っ て 申 請 者 は 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を も っ も の と 認 め ら れ る 。

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