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膝十字靱帯のバイオメカニクス的研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

医 学 博 士 黒 沢 秀 樹

膝十字靱帯のバイオメカニクス的研究

学位論文内容の要旨

I研究目 的

  膝関 節は 大きな 可動域 と体重 の数 倍に及 ぶ大き な負荷 にも耐 え得 る巧妙 な機能 を持つ6自 由度 の運 動系で ある 。膝関 節構成 体の重 度損傷 によ ってそ の安定 性や可 動域 が失われることは臨床的 に は 今 世紀 初 頭 よ り 認識 さ れ て お り, 特 に 前 十 字靱 帯(ACL) は 臨 床的 機能障 害の結 果より 膝 関節 の運動 と安 定性に 関して 最も重 要な構 成体 のひと っと考 えられ た。 解剖学的観察などより両 十字 靱帯の 各線 維群に おける 機能の 相違も 指摘 されて きたが ,これ らの 定量的検討はされていな い 。 本 研 究 の 目 的 はACLお よ びPCLの 各 線 維 束に お け る 膝 関節 運 動 に 伴 う長 さ 変 化 を 定 量的 に同 時計測 し, それら の機能 を解析 評価す るこ とであ る。さ らに膝 関節 屈伸運動における関節内 お よ び 関 節 外 再 建ACLの 長 さ 変 化 に っ い て も 計 測 し 等 尺 性 の 観 点 か ら 検 討 を 行 な っ た 。

H実験 方法

  計 測に使 用し たトラ ンスデ ューサ は,外 径l mn, 内径O.65mmのシリコンチュ―ブに導電体であ るGalium. Indium合 金を 封入し て作製 された もの である 。沮lJ定 原理 漣,チ ューブ の伸び によ る 抵抗変 化を電 気的に 計損Ijするもので,このデータをパーソナルコンピュータで処理・記録し,

そ れを再 び長さ 変化と して 換算し た。こ のトラ ンス デュー サの伸 び剛性 はO.02 N/mmと極めて小 さ く,靱 帯伸び 機能に 対す る影響は無視できると考えられる。十字靱帯の長さ変化計測実験には,

凍 結 新 鮮 屍体3膝 を 室 温に て解凍 し,実 験に供 した 。本実 験ではACL線 維を前 内側 ,前外 但lI, 後 内 側 , お よ び 後 外 側 の4線 維 束に , 後 十 字 靱帯(PCL)線 維 を 大 腿骨 付 着 部 で 前方 , 中 央 , お よび 後方の3線 維束に 分類し ,トラ ンス デュー サは各 線維束 の中央 を通 るよう にした 。脛骨 は 実 験 机 上 の固 定 台 に2本のSteinmann pinで 固定 し , 不 動 とし た 。 大 腿骨を 徒手的 に動か して 膝 関 節 単 純屈 伸 運 動 を 行なっ た。次 いで ,大腿 四頭筋 筋カと して膝 蓋骨 近位端 に10N〜80Nの負 荷 を与 え,屈 曲10°よ り10回 膝関節 屈伸運 動を 行なっ た。最 後に,ACLを 切除 した膝 に対し ,同 様 の 実 験 を行 っ た 。 次 いで , 関 節 外ACL再 建 靭 帯に 関 す る 実 験で は6膝関節 を使 用し, 大腿骨

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夕ト側に5カ所,および脛骨のGeIIdy結節周囲に3カ所の靱帯錨着骨孔位置を設定した。関節内 に関する実験に1膝を使用し,lO通りの再建方法を設定した。

m結  果

  大腿四頭筋に張カを与えない膝関節単純屈伸運動において,ACL中の全トランスデュ―サは,

屈曲30°付近までは屈曲と共に次第に短くなったが,ここでは後方線維は前方線維に比較して約 2倍の長さ変化を示した。その後,屈曲と共に前方線維は長くなり続けるが,後方線維はほば同 じ長さを維持し続けた。PCLにおいては前方線維は屈曲約50°までほぼ直線的に長くなり,その 後次第に短くなっていた。一方,後方線維は屈曲約70°までほぼ直線的に短くなり,その後は同 様の長さを維持し続けた。中央の線維の長さ変化は他の線維束と比較して少なく,前方線維と後 方線維の中間の 長さ変化であった。大腿四 頭筋に張カを与えた場合,ACLおよびPCLの線維 群はカの大きさに対応して長さ変化を示したが,屈曲90°を越えるとACLの後内側線維束を除 いた他の線維束の長さ変化は大腿四頭筋筋カの影響が少なくなった。ACLを切除した膝関節で は,PCLの各線維束は屈曲60°までは大腿四頭筋筋カの影響を大きく受けるが,それ以降影響は 小さくなった。関節外再建ACLの錨着骨孔間距離の変化に関しては,どの組み合わせにおいて も,膝関節の屈曲と共に大きくなる傾向にあった。再建靱帯の等尺性という観点からは,関節内 再建における「ACLの脛骨付着部中央」と「大腿骨付着部近位後方」の組み合わせが今回の再 建靱帯錨着位置間距離変化測定の結果の中で最も良好であった。

IV考  察

  膝関節は骨・軟骨・関節包のほか,靭帯,筋腱などより構成されており,両十字靱帯tま膝関節 の前後方向の安定性に強く関与している。外傷による十字靱帯損傷,あるいはその結果としての 十字靱帯不全に起因する機能障害は近年大きな関心の対象となっており,特に,最近ではACL 損傷に対して積極的に手術治療が行なわれている。今回の実験でも大腿四頭筋筋カとACLとは 拮 抗し,ACLを切除すると大腿 四頭筋筋カによる影響をPCLは強く受け,膝関節に不安定性 が 強く示 された。今回のACLおよびPCLの長さ変化の実験結果より ,ACLは前方の線維群と 後方の線維群に分けられ,またPCLは前方,中央,及び後方の線維群に分けられ,機能の分担が 示された。この両十字靱帯の機能は靭帯線維が緊張の弛緩の相互作用で行なう膝関節運動の誘導 機構の存在を示す。さらに膝関節運動に伴い,靱帯線維に生理的な緊張と弛緩が連続的に作用す ることが,靱帯組織の恒常性維持にも欠かせないことも推定された。今回の実験結果では,等尺

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性と いう観 点か ら考え ても関 節外再 建術は 関節 内再建 術より 劣るこ とが 示された。現在行なわれ て い るACL再 建 術で も 再 建 靱 帯の 等 尺 性 に カ 点が 強く 置かれ ている が, 膝関節 運動の 誘導機 構 と し て のACLを 理解 し 再 建 靱 帯に こ の 機 能 が 付与 され ない限 り,そ の他 の膝関 節構成 体への 再 建 靱 帯 に起 因 す る 長 期的 影 響 は 避 けら れ な い と 考えら れる。ACL再 建の 成績不 良例の 原因論 の 研究 はまだ 報告 されて おらず ,今回 の基礎的研究結果と今後の臨床成績研究との比較は興味深い。

V結  語

  新 鮮屍体 膝の 十字靭 帯を合 計7っの線 維束に 訳,膝 関節 運動に 伴う線 維束内 各ト ランス デュー サ の 長 さ 変化 を 同 時 計 測し , さ ら にACL再 建 におけ る再 建靱帯 の骨錨 着骨孔 位置 間距離 変化に っ いても 計測し た。長 さ変 化測定 の結果 ,十字 靱帯 線維束 はそれ ぞれが 機能を分担していること が 理 解 さ れた 。ACL再建 術 に お い て, 関 節 内 再建は 関節 外再建 と比較 して, 等尺 性とい う観点 か らは優 れてい たが, 十字 靱帯の 膝関節 運動を 誘導 すると いう機 能にも 十分配慮を払うべきであ る と推察 された 。

学位論文審査の要旨

  膝関 節は ,構成 体の重 度損傷 により その 安定性 や可動 域が失 われ ること は臨床的には今世紀初 頭 よ り 認 識 され て い た 。 特 に前 十 字 靱 帯(ACL)は臨 床 的 機 能 障害 の 結 果 よ り膝 関 節 の 運 動 と 安定 性に関 しても 最も 重要な 構成体 のひと っと 考えら れた。 両十字 靱帯の 各線維群における機能 の 相 違 も 指 摘 さ れ て き た が , こ の 量 的 検討 は さ れ て いな い 。 本 研 究の 目 的 はACLお よ びPCL の各 線維束 におけ る膝 関節運 動に伴 う長さ 変化 を定量 的に同 時測定 し,そ れらの機能を解析評価 す る こと で あ る 。 さ らに 関 節 内 お よび 関 節 外 再 建ACLの長 さ変化 にっい ても計 測し ,等尺 性の 観点 から検 討を行 なっ た。

実 験 方法 : 計 測 に 使 用し た ト ラ ン スデ ュ ー サ は ,シ リ コ ン チ ュー ブ に 導電 体であ るGalium. Indium合 金を 封 入 し て 作成 され たも のであ る。測 定原理 は,チ ュー ブの伸 びによ る抵抗 変化 を

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志 厚

清 和

田 部

金 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

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電気 的に計 測す るもの で,こ のデー タをパ ーソ ナルコ ンピュ 一夕で 処理 ・記録し,それを再び長 さ変 化とし て換 算した 。この トラン スデュ ―サ の伸び 剛性はO. 02N/mmと極めて小さく,靱帯及 び機 能に対 する 影響は 無視で きると 考えら れる 。十字 靭帯の 長さ変 化計 測実験には,凍結新鮮屍 体膝 を室温 にて 解凍し ,実験 に供し た。本 実験 ではACL線維 を前内 側,前 外但l亅,後内側,およ び 後 外 側 の4線 維 束 に , 後 十 字 靭帯(PCL)線 維 を 大 腿骨 付 着 部 で 前方 , 中 央 , およ び 後 方 の 3線維 束に分 類し ,トラ ンスデ ューサ は各 線維束 の中央 を通る ように 設置 した。 脛骨は 実験机 上 の 固 定 台に2本 のSteinm ann  pinで固定 し,不 動とし た。大 腿骨 を徒手 的に動 かして 膝関 節単 純屈 伸運動 を行 なった 。次い で,大 腿四頭 筋筋 カとし て膝蓋 骨近位 端に10N〜80Nの負荷を与え,

膝 関 節 屈伸 運 動 を 行 なっ た 。 最 後 に,ACLを 切除 した膝 に対 し,同 様の実 験を行 なった 。次 い で , 関 節 外ACL再 建 靱 帯 に 関 す る 実 験 で は , 大 腿 骨 外 側 に50所 , お よ び 徑 骨 のGerdy結節 周 囲 に30所 の 靭 帯錨 着 骨 孔位置 を設 定した 。関節 内に関 する 実験で は,10通 りの 再建方 法を設 定し た。

結 果 お よび 考 察 : 膝 関節 単 純 屈 折 運動 に お い て,ACL中 の全 トラン スデュ ーサは ,屈曲30°付 近ま では屈 曲と共 に次 第に短 くなっ たが, ここ では後 方線維 は前方 線維に 比較 して約2倍 の長さ 変化 を示し た。そ の後 ,屈曲 と共に 前方線 維は 長くなり続けたが,後方線維tまほぼ同じ長さを維 持 し た。 こ れ よ りACLは 機 能 的に 前 方 の 線 維群 と後 方の線 維群に 分ける こと が可能 と考え られ た。PCLに おいて 撒前 方線維 憾屈曲 約50° までほ ぼ直線 的に長 くなり ,そ の後次 第に短 くなっ て いっ た。一 方,後 方線 維は屈 曲約70° まで ほば直 線的に 短くな り, その後は同様の長さを維持し 続け た。中 央の線 維の 長さ変 化は比較的少なく,前方線維と後方線維の中間の長さ変化であった。

大 腿 四頭 筋 に 張 カ を 与え た 場 合 ,ACLは 大 腿四 頭筋 筋カと 拮抗す ること が示 された 。しか し,

屈 曲90° を 越 え るとACL線 維束 の 長 さ 変 化に 対 するは 大腿四 頭筋筋 カの 影響が 少なく なった 。 ACLを 切 除 し た 膝関 節 で は ,PCLの 各 線 維束 は 屈 曲60° ま で は 大 腿四 頭筋筋 カの 影響を 大きく 受 け ,膝 関 節 の 不 安 定性 が 示 さ れ た。 関 節 外 再建ACLの錨 着骨孔 間距離 の変 化に関 しては ,ど の 組 み合 わ せ に お い ても , 膝 関 節 の屈 曲 と 共 に大き くなる 傾向に あった 。ACL再建 靱帯と 等尺 性と いう観 点から は, 関節内 再建は 関節外 再建 より優 れてい た。

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参照

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