44th Symposium on Human-Environment System
HES44 in Nara, 5-6 Dec., 2020
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大便器ブースの内装色と寸法の違いが感覚時間ならびに印象評価に
及ぼす影響
ヘッドマウントディスプレイを用いた仮想空間による検討
石井 仁
名城大学
Effect of color and dimensions of toilet stall in sense of time and impression of toilet stall
Experiment in virtual reality space using head mounted display
Jin Ishii
Meijo University
Abstract: The purpose of this study is to examine the effects of color and dimensions of toilet stall in sense of time and
impression of toilet stall. A virtual reality head mounted display was used to evaluate these effects. The dimensions of toilet
stall have an effect on the sense of time, and the color and dimension have an effect on the impression of toilet stall.
Key words: Toilet stall, Sense of time, impression, virtual reality space
要旨:大便器ブースの内装色と寸法の違いが感覚時間ならびに大便器ブースの印象評価に及ぼす影響について,
ヘッドマウントディスプレイを用いた仮想空間により検討した。その結果,大便器ブースの寸法は感覚時間に,
内装色と寸法は大便器ブースの印象評価に影響を及ぼすことを明らかにした。
キーワード:大便器ブース,感覚時間,印象評価,仮想空間
1.はじめに
公共トイレの大便器ブース(個室)は,利用するた
めに待たなければならないことがある。待っている人
数が多いと利用するまでの時間が長くなることへのス
トレス,また行列が長いと次の利用者を意識して落ち
着いてトイレを利用できないことは想像に難くない。
そこで,大便器ブース利用者の主観的な経過時間であ
る感覚時間を実際の経過時間よりも長くする空間要素
を明らかにすれば利用時間を短くし,かつ落ち着いて
利用することができる。永留ら(2010)は純色に近い高
彩度の壁面は感覚時間に影響を及ぼすことを明らかに
している。また,柳瀬ら(2006)は,大便器ブースの床面
積が快適さや落ち着きといった評価に影響を及ぼすこ
とを明らかにしている。以上のことを踏まえ本研究で
は,大便器ブースの内装色と寸法の違いが感覚時間な
らびに大便器ブースの印象評価に及ぼす影響について,
ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を用いた仮
想空間により検討した。
2.方法
2.1 実験概要
実験条件は内装色 2 条件(白色,黒色)と寸法 3 条件
(W800×D1200 mm,W1000×D1500 mm,W1200×D1800 mm)
を組み合わせた 6 条件とした。ブースの高さは統一し
て 2200mm とした。HMD には Oculus GO (Oculus)を用い
た。実験は 2019 年 11 月 20 日から 12 月 20 日の期間に
空調された実験室にて実施した。実験には,青年男性 7
名,女性 3 名(年齢 22 歳)が参加した。
2.2 測定項目
感覚時間の測定には産出法と言語的見積もり法(辻,
2008)の 2 種類を用いた。産出法では課題時間(経過時
間)を 180 秒,言語的見積もり法では課題時間を 40 秒
から 90 秒の 10 秒間隔で設定し,この中から無作為に
抽出して設定した。産出法では産出された時間(感覚
時間)が課題時間よりも短いと主観的な経過時間を長
く感じたことになる。一方,言語的見積もり法では見
積った時間(感覚時間)が課題時間よりも長いと主観
的な経過時間を長く感じたことになる。印象評価は SD
法による,7 段階の評定尺度を持った 19 項目の形容詞
対を用いて行った。
2.3 実験手順
参加者は実験室内で 5 分間安静した後に便器に座り,
G-3
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大便器ブースの仮想空間を提示した HMD を 5 分間装着
した。装着時には実際にトイレを利用していることを
想起するよう指示した。5 分間経過した後に HMD を装着
した状態で感覚時間の測定を行った。感覚時間の測定
中は計時しないよう指示した。測定後,HMD を外して印
象評価を行った。
3.結果および考察
3.1 感覚時間
図 1 に産出法による感覚時間の平均値と標準偏差を
寸法条件ごとに示す。W1200×D1800 mm の感覚時間は課
題時間の 180 秒を超過していた。母平均の検定の結果,
W1200×D1800 mm の感覚時間は課題時間よりも有意に
長い(p<0.05)。この結果から W1200×D1800 mm の大便
器ブースでは主観的な経過時間は短く感じられ,本研
究の目的に則すると好ましくないブース寸法といえる。
図 1 産出法による感覚時間(寸法条件)
言語的見積もり法による感覚時間には,すべての条
件で有意差は認められなかった。設定した課題時間(40
秒〜90 秒)が短かったことが要因として考えられる。
3.2 印象評価
評価項目「開放的な・圧迫的な」の平均値と標準偏
差を内装色および寸法条件ごとに図 2 と図 3 にそれぞ
れ示す。内装色では,白色は開放的な,黒色は圧迫的
な印象を受ける側に評価された。寸法では,W800×
D1200 mm は圧迫的な,他の 2 条件は開放的な印象を受
ける側に評価された。対応のある二元配置分散分析を
行 っ た と こ ろ , 内 装 色 条 件 (p<0.01) と 寸 法 条 件
(p<0.05)の主効果は有意であった。有意な交互作用は
認められなかった。寸法条件はボンフェローニの方法
による多重比較の結果,W800×D1200 mm と W1000×
D1500 mm 間(p<0.05)および W800×D1200 mm と W1200×
D1800 mm 間(p<0.01)で有意差が認められた。この結果
から,黒色内装色の大便器ブースは白色よりも圧迫的
な印象を受け,また,W800×D1200 mm の大便器ブースは
他の 2 つの寸法よりも圧迫的な印象を受けることが示
された。
図 2 「開放的な・圧迫的な」の評価結果(内装色条件)
図 3 「開放的な・圧迫的な」の評価結果(寸法条件)
謝辞 本研究の実験にご協力頂きました参加者の皆様
に深謝の意を表します。本研究の実験,データ整理に
ご協力いただきました,当時,名城大学学生の生駒亮
平氏に深謝の意を表します。
4.文献
永留芙美,大井尚行,高橋浩伸 2010. 異なる壁面色が
及ぼす感覚時間の変化. 日本建築学会大会学術講演
梗概集: 57/58.
辻正二 監修 2008. 時間学概論, 恒星社厚生閣
柳瀬亮太,難波明日香 2006. 床面積の違いが空間の印
象評価に与える影響:公共の洋式トイレブースに関
する実験的研究. 日本建築学会計画系論文集,604,
47/52.
<連絡先>
石井 仁
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口 1-501
名城大学 理工学部 建築学科
[email protected]