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石川幸一・馬田啓一・清水一史編著『アジアの経済統合と保護主義――変わる通商秩序の構図――』 (紹介)

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(1)

石川幸一・馬田啓一・清水一史編著『アジアの経済

統合と保護主義――変わる通商秩序の構図――』 (

紹介)

著者

梅? 創

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

61

3

ページ

127-128

発行年

2020-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00051857

(2)

20-07-158 127_紹介-梅崎様.mcd Page 1 20/09/04 14:26 v5.51

石川幸一・馬田啓一・清水一史編著

『アジアの経済統合と保護主

―変わる通商秩序の構図―

文眞堂 2019 年 x ⅲ+ 219 ページ 梅 創 アジア諸国は直接投資を媒介にした「事実上の経 済統合」を深めながら経済成長を実現してきた。そ の過程で構築された国際的生産ネットワークは「制 度上の経済統合」を誘発し,21 世紀に入るとアジア 域内での二国間・多国間 FTA が活発に形成されて いった。しかし,2017 年 1 月に成立したトランプ政 権が「順調な経済統合の流れを一変させ混乱をもた らした」(i ページ)。本書は,そのような認識のも と,揺らぐアジアの国際秩序(第Ⅰ部),多層化する アジアの経済統合(第Ⅱ部),変容するアジアの経済 相互依存(第Ⅲ部)に関する 14 編の論文を取りまと めたものである。 第Ⅰ部,第 1 章(馬田啓一)は,TPP(環太平洋 経済連携),RCEP(東アジア地域包括的経済連携), FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の関係性を整 理し,米国の TPP 離脱,その後の米中貿易摩擦が アジアの通商秩序に及ぼしている影響,とくにデ カップリングによるサプライ・チェーン分断のリス クなどに警鐘を鳴らす。第 2 章(真家陽一)は「中 国製造 2025」のもとで産業高度化を目指す中国との 覇権争いが米中貿易戦争の核心にあると論じる。第 3 章(高橋俊樹)は,トランプ政権が推進する保護主 義的通商政策が,アウトソーシングのコストを高め ることで米国企業の競争力に悪影響を及ぼしかねな いと指摘する。第 4 章(高安雄一)は,米韓 FTA の再交渉の経緯を概説し,韓国がより多くの譲歩を 迫られた点を強調する。第 5 章(清水一史)は域内 での経済共同体,および周辺国との FTA ネット ワークの構築を進める ASEAN に焦点を当て,東ア ジアの通商秩序の再構築における ASEAN の役割 を論じている。第 6 章(中島朋義)は,米中摩擦の 争点となっている競争政策,知的財産権保護,国有 企業政策などに関する TPP の規定を解説し,多国 間でのルール作りの必要性を説く。 第Ⅱ部,第 7 章(助川成也)は,難航している RCEP 交渉の経緯を整理するとともに,日系企業に とっての意義を強調する。第 8 章(石川幸一)は, 2015 年末に設立された AEC(ASEAN 経済共同体) が 2025 年に向けてどのような変貌をとげているの か,その内容と現状を解説している。第 9 章(菅原 淳 一)は,米 国 の TPP 離 脱 後 に 再 構 築 さ れ た CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括 的及び先進的な協定)の意義,概要および今後の展 望を示している。第 10 章(大西康雄)は,中国が推 進する一帯一路構想の実像とそのアジア諸国への影 響,さらに日中間協力の可能性を論じている。 第Ⅲ部,第 11 章(椎野幸平)は,インドの通商政 策を詳説したうえで「インドがアジアの広域経済圏 形成に残れるか,RCEP 交渉は大きな試金石となる」 (169 ページ)と結んだが,本書の出版と同時期, 2019 年 11 月に開催された RCEP 首脳会議での交渉 は不調に終わり,最終的にインドは RCEP から離脱 することになった。その要因と意義を理解し,今後 を展望するために必読の論考である。第 12 章(春 日尚雄)は,メコン地域における経済回廊開発,お よびミャンマーの道路インフラ整備の現状と課題を 解説している。第 13 章(百本和弘)は,韓国に焦点 を当てて対日,対中関係を分析し,前者が相互補完 的,後者は競争的であることを示す。第 14 章(大木 博已)は日中韓台の貿易分業構造を分析し,とくに 日中韓の間の緊密性が増すなかで,日韓両国の中国 への依存が強まっていることを明らかにし,是正の 必要性を説く。 アジア諸国が恩恵を受けてきた自由貿易体制が国 際公共財たりえたのは,それが効率的な資源配分を もたらし全体の経済厚生を最大化するという経済学 の命題が広く共有されていたからであろう。世界の 通商秩序を揺るがした米国の通商政策の転換は,自 由貿易体制を維持するための費用負担,便益配分に 対する米国民の異議の表明である。「パンドラの箱」 は開き,FTA 交渉も選挙を通じて表明される民意 をより強く反映させることが必要になった。インド の RCEP 離脱もその一例といえよう。自由貿易体 制を維持・強化していくためには,アジア諸国は, 便益に応じた費用を負担するとともに,国内での再 『アジア経済』LⅪ-3(2020.9) ⓒ IDE-JETRO 2020 https://doi.org/10.24765/ajiakeizai.61.3_127 紹 介

(3)

20-07-158 127_紹介-梅崎様.mcd Page 2 20/09/04 14:26 v5.51 分配・構造調整政策を推進することが求められる。 2020 年半ば現在,猛威を振るう新型コロナウイル ス感染症(COVID-19)は文字通り世界中の人々の 生活や企業行動を揺るがし続けている。この混沌か らの回復過程においては,世界的な通商秩序の再構 築を避けて通ることはできない。本書は,今なお激 化し続ける米中対立の核心,対中貿易依存の深化と そのリスク,広域的な通商秩序形成の主導権争い, 各 国 が 直 面 す る「両 刃 の 外 交」(double-edged diplomacy)の諸相など,アジアのみならず世界の 通商秩序の今後を展望するために有用な情報や示唆 を数多く提供している。 (アジア経済研究所開発研究センター) 128 紹 介

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