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キノイド型π共役系ユニットを用いた新反応開発と機能性分子の創製 

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Academic year: 2021

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キノイド型π共役系ユニットを用いた新反応開発と

機能性分子の創製 

著者

戸澤 仁志

(2)

2016 年度 博⼠論⽂要旨

キノイド型π共役系ユニットを用いた新反応開発と機能性分子の創製

関⻄学院⼤学⼤学院理⼯学研究科

化学専攻⽻村研究室 ⼾澤 仁志

有機π電⼦系の化学は、独特の構造を持つ多様な分⼦の合成を軸に、新規物性・機能の開拓を⽬指し て⼤きく進展している。しかしながら、芳⾹族分⼦を適切に連結して多環式芳⾹族⾻格を合成する⼿法 は乏しく、また、機能性発現に重要な官能基を選択的に導⼊する⽅法は限定されており、新物質創製へ の展開が阻まれている。このような背景の下、本博⼠課程研究では多環式芳⾹族化合物の構成ユニット であるキノイド構造に着⽬し、潜在的に⾼い反応性を有するキノイド型π共役ユニットを合成素⼦とす る反応集積化法の開拓と機能性π共役系分⼦の創製を⽬指した。 【イソベンゾフラントリマーの多重環化付加反応とスターフェン型芳⾹族ポリケトンの合成】 イソベンゾフランの三量化体に相当するイソベンゾフラントリマー 1 を合成ブロックとして、これの 三⽅向への連続的環化付加反応を駆使した迅速な⾻格構築とこれを利⽤したスターフェン型芳⾹族ポ リケトンの合成を試みた。その結果、トリスエポキシトリナフチレン 2 がイソベンゾフラントリマー 1 の合成等価体として機能することを⾒出し、これをナフトキノン 3 の共存下で加熱 すると、1 の発⽣とともに環化付加反応が連続的に進⾏し、三重環化付加体 4 が収 率良く得られた。この際、3 回の環化付加反応はいずれも⽴体選択的であり、1H NMR による構造解析の結果、主⽣成物 4 は 2 回の endo 付加と 1 回の exo 付加がそれぞれ 進⾏した⽴体構造を有していることが明らかになった。さらに、このようにして合 成可能になった三重環化付加体 4 を酸性条件に付し、脱⽔・芳⾹族化することによ って、対応するトリナフチレン 5 に収率良く変換することができた。 この反応で重要なことは、反応条件を適切に選択することによって⼆重環化付加体を合成できること、 さらにこれを⾜がかりとしてさらなる⾻格の伸⻑が可能なことである。例えば、上述の反応の加熱時間 を短縮すると⼆重環化付加体を選択的に与える。そこで、これの芳⾹族化によって⽣じる化合物 6 を⽤ いて、これより発⽣させたイソベンゾフランをベンゾキノンで捕捉した後、酸性で芳⾹族化することに よって蝶々型構造を有する巨⼤芳⾹族ポリケトン 7 の合成に成功した。 O O O Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph O O O 2 O O O O O O C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 O O O H H H H H H endo-endo-exo/syn-anti 4 chlorobenzene reflux O O C12H25 C12H25 3 toluene, 50 ºC TsOH C12H25 C12H25 O O C12H25 C12H25 O O C12H25 C12H25 O O 5 O O O O C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 Ph Ph Ph Ph O O TsOH・H2O toluene, 50 ºC O O O O C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 O O C12H25 C12H25 C12H25 C12H25 O O O O chlorobenzene 120 °C 6 7 O O O O O isobenzofuran trimer 1

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【芳⾹族ポリケトンを正極活物質に⽤いたリチウム⼆次電池の創製】 芳⾹族ポリケトンの機能性分⼦としての可能性を調査するために、リチウム⼆次電池の正極活物質に 利⽤し、そのデバイス作製と性能評価を⾏った。有機活物質(スターフェン型分⼦ 5)、導電剤(炭素)、 結着剤(PVDF)を 1/7/2 の重量⽐で混合してペレット状電極を作成し、充放電特性(電圧 1.5-4.2 V、電 流速度 0.1 mA)を調べた。その結果、初回の放電容量 は 161 mAh/g を⽰し、すべてのカルボニル基が還元さ れた場合の理論容量(91 mAh/g)を⼤きく超え、しか も 100 サイクル⽬の測定においても⼤幅な容量の低下 は⾒られなかった(127 mAh/g)。このように、スター フェン型芳⾹族ポリケトンは容量及びサイクル特性の ⾯で優れ、新たな正極活物質として有望であることが ⽰された。 【イソベンゾヘテロールの合成と機能性分⼦への応⽤】 キノイド型構造を機能性発現のための重要なπスペーサーとして利⽤するべく、これにπ共役ブロッ クを導⼊した新しい⾊素分⼦の合成と機能性材料の創製を検討した。具体 的には、所属研究室で既に開発しているイソベンゾフランのワンポット合 成法を基盤として、芳⾹環上に電⼦供与性および電⼦求引性置換基を持つ D–p–D、A–p–A、および D–p–A 型のイソベンゾヘテロールの合成を可能 であることを明らかにした。 まず、⽔溶性の D–p–D および A–p–A 型のイソベンゾヘテロールを合成することに成功した。すなわ ち、上述のワンポット反応を利⽤して合成できる D–p–D 型のジアリールイソベンゾフラン 8 に対して ヨウ化メチルを作⽤させると、トリメチルアンモニウム塩 9 が得られ、同様の⽅法で、⽔溶性のイソベ ンゾチオフェン 10 およびイソベンゾセレノフェン 11 を合成することもできた。⼀⽅、A–p–A 型の分 ⼦を⽤いて塩基と反応させることにより、カリウム塩構造を有する⽔溶性⾊素 12 及び 13 の合成も達成 した。これらの分⼦は、⽔への溶解性に優れ、蛍光量⼦収率も⾼いことから、分⼦イメージングや蛍光 プローブとしての利⽤が期待できる。 さらに、上述の D–p–A 型のイソベンゾヘテロールを⾊素とする⾊素増感太陽電池の作製とその性能 評価を⾏った。その結果、ドナー基としてジアリールアミノ基、アクセプター基としてシアノアクリル 基を有する⾊素分⼦を⽤いた場合に、太陽電池の性能が向上することが明らかになった。特に、芳⾹環 上に⽴体的に嵩⾼いアルキル基を導 ⼊すると、その性能はさらに向上し た。例えば、s-Bu 基と hexyl 基を導⼊ した⾊素 18 において、光電変換効率 は、6.28%(短絡電流密度 Jsc = 13.30 mA/cm–2、開放電圧 V oc = 0.71、曲線 因⼦ FF = 0.67)を⽰した。 CHO CO2Me BrMg NMe2 O NMe2 NMe2 O NMe3 I– NMe3 I– MeI S NMe3 I– NMe3 I– Se NMe3 I– NMe3 I– 6 8 9 10 11 7 + + + + + + THF, –40 → 0 ºC; then TFA acetone, r.t. O COOK COOK S COOK COOK 12 13 12.21 0.66 0.70 5.61 12.05 0.68 0.69 5.66 短絡電流密度 Jsc (mA/cm2) 開放電圧 Voc (V) 曲線因子 FF 光電変換効率 η (%) 14 15 12.65 0.66 0.72 5.99 17 13.30 0.71 0.67 6.28 18 dye R1 R2 H H nBu hexyl hexyl sBu 16 sBu 10.96 0.66 0.70 5.09 H H H S N R1 R1 NC COOH R2 R2 X X π π π π X = O, S, Se

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