山梨赤十字病院に於ける肺癌症例
山梨赤十字病院 大西司 今井俊道 川合耕治 石原潤一 内田潤 斉藤恵男 今回我々は、山梨赤十字病院に於て2年間に渡り経験した肺癌症例について検 討し、若干の考察を加え報告する。山梨赤十字病院は富士北麓1市、2町、8ヶ村人口10万の地域のほぼ中央に
位置し、富士吉田市立病院と共に地域医療の一端を担っている。 (内科〔ット数80、 CT装置を備え毎週気管支鏡検査を施行している。なお、肺癌症例の手術、及び 放射線治療は、他院への紹介により行っている) 表1山梨赤十字病院に於ける
胸部腫瘍性病変(88.6.1∼90.5.20)
原発性肺癌 転移性肺腫瘍 悪性リンパ腫 Fibrosis Mesothelioma 組織診不明26例
4例
1例
1例
3例
計35例
表1は過去2年間に当院で診断された胸部腫瘍性病変の内訳である,原発性肺 癌26名、転移性肺腫瘍4名、気管支内腔に広汎に病変を認めた悪性リンパ腫、 増大傾向の見られたFibrosis Mesothelioma、組織不明例は高齢かっ全身状態不原発性肺癌の組織型と性別、年齢を表2、表3に示す・
表2
原発性肺癌の組織型
腺癌
編平上皮癌 小細胞癌 大細胞癌12例
10例
3例
1例
表3 年齢分布
最低齢
最高齢
計37歳
82歳
26例
以下に、富士北麓地域に於ける患者分布を示す。 に位置し、富士吉田市、河口湖町を中心に富士北麓一帯より患者の受診を認めて いる。図1 富士北麓地域に於ける患者分布
平均 69歳
性
男 性 17例
女性 9例
山梨赤十字病院は河口湖の南 ①富士吉田市 ②河ロ湖町 ③足和田村 ④西桂町 ⑤上九一色村 ⑥忍野村 ⑦都留市 8例 6例 3例 3例 2例 2例 1例 ⑥匂
次に発見動機を示す(表4)。 咳噸、熱発、呼吸困難などの自覚症状を訴え当 院受診し発見された症例が最も多く、次に開業医より紹介で当院受診したものが 多かった。これらはいずれも自覚症状のために医療施設を受診した例であり、検 診により発見された例よりも多かった。 表5に各症例の病期分類を示す。 初診時すでにstageIIIを越える症例が大半 を占めたが、stage Iの症例を4例認めた。
表4
発見動機
自覚症状あり当院受診 開業医より紹介 検診にて異常影指摘 他疾患で入院中発見9例
8例
5例
4例
表5
病期分類
Stage StageStage
Stage
Stage
Stage
0期
1期
II期
皿A期 皿B期IV期
なし4例
2例
3例
9例
7例
表6 治療及び予後
手 術 絶対的治癒切除 5例 相対的治癒切除 1例絶対的非治癒切除2(2)例
化学療法 放射線療法 全身的 局所的 ワクチン療法 12(4)例 2(1)例 2(1)例1←)例
表6は治療及び予後についてのまとめである。 手術可能であった症例として は絶対的治癒切除が5例、 相対的治癒切除が1例、 絶対的非治癒切除は2例で、 この2例はいずれも1年半以内に死亡した。 化学療法を施行した症例では、全身的に施行したものユ2例のうち、非小細胞 癌例では有効例がなく、小細胞癌では1例が著効を示し、1例は治療を開始した ばかりで未評価である。 死亡確認された症例は4例であるが、他院に転院とな り、その後の経過が不明である症例は含めていない。 局所的化学療法の2例は、いずれも癌性胸膜炎を伴った症例であり、高齢であ るため胸腔内への抗癌剤注入のみを行い、胸水はほとんど消失し、胸水内の癌細 胞も消失した。 放射線療法は単独では行わず、化学療法と併用して行った。 他に一例は家人がワクチン療法を強く希望したため転院となった。 対症療法のみの症例は高齢かつ全身状態不良例であり、全例1年以内に死亡し ている。 以上が当院に於ける原発性肺癌症例のまとめであるが、これに疫学的考察を加 えると、現段階では原発性肺癌を治癒に至らすには特に非小細胞癌に於いては手 術療法が不可欠である。 特にStage Iの症例で絶対的治癒切除の行われた症例 では、5年生存率が80%といわれている。 このためできる限り病期の早い段階で発 見することが必要である。 当院にて発見された原発性肺癌で、治癒切除に持ち 込めた症例は5例であるが、そのうち3例は検診にて発見された症例である。 すなわち検診にて発見された原発性肺癌5例のうち3例は治癒切除に持ち込めた。 これは、十分肺癌検診の有用性を示すものである。 しかしながら富士北麓地域に於ける肺癌検診は近年行われ出したものの、まだ 十分なものとはいえない。 結核検診と平行して行われているもので、対象も十 分網羅されたものではなく、また喀たん細胞診は施行され始めたがまだ絶対数は 少数である、今後肺門部肺癌の早期発見を行うためにも、ヘビ一ス{一”一を対象とした 喀たん細胞診の施行が期待される。 最後に検診により発見され、絶対治癒切除に持ち込めた肺癌症例の胸部レ線 写真を示して稿を終える。
(症例1) 60歳女性 自覚症状無し 右S3の腫瘤影 を指摘され、経気管支的組織診にて腺癌 と診断、TINIMO StageIIであり、右上 葉切徐術が施行された。 (症例2) 73歳女性 自覚症状無し 右S8の腫瘤影 を指摘され、経気管支的組織診にて腺癌 と診断、T2NOMO Stagelであり、右下 葉切徐術が施行された。
(症例3) ◎ 52歳男性 自覚症状なし 心陰影に 重なって左S工0の腫瘤影を指摘された。 経気管支的組織診にて扁平上皮癌と診 断、T2NIMO Stagellであり左下葉切 徐術が施行された。 今回は2年間のまとめであるが、肺癌に於ける早期診断の重要性を痛感させら れた。 特に肺癌検診の有用性を再認識すると共に、今後5年10年とprospect iveに当病院に於ける肺癌患者のfollow upを行い、肺癌の増加傾向にある日本 の現状にあわせ地域の医療に貢献して行きたいと願っている。 (参考文献) 1.坪井 栄孝: 肺癌集団検診 ;呼吸8〔2) 189−198(1989) 2.今野淳、鈴木修治: 肺癌の早期発見の実際;MP 3(1ユ) 1912−1915 〔1986) 3.森 享: 肺癌の集団検診の有効性とその実際;MP 16(2) 175−178 (1989) 4.松田実、鈴木隆一郎: 肺癌の早期発見と集団検診;内科59(3) 420−425 (1987) 5.肺癌取扱規約: 日本肺癌学会編 (1987)