• 検索結果がありません。

証券の流通性を存続させるには

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "証券の流通性を存続させるには"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

      野 口 明 宏

はじめに

 流通証券法の研究者はこの数十年の間、証券の流通性に消極的姿勢を とってきた。2012年、流通証券法の著名な研究者が「流通証券の終わり」 という書物を出版した。本書の趣旨は、流通性を創設して規制する統一商 事法典(UCC)第三編に見られる規定の大部分が、かなり前から現実社 会との関連性を失い、残存する定めも、ほとんど価値を持たないという。 そのため、現行流通証券法は、生ける法でなく、死滅した法と理解しなけ ればならないと主張する1 ) 。証券の流通性は、それが破棄されるべきか否か、 最低でも大幅に制限され、もしくは完全に改められるべきか否かの議論が なされるほど、干からびて古くさく、無用であるといわれる2 ) 。本稿にお いては、証券の流通性の役割と、それに対する批判をふまえて、現代米国 法における流通性の可能性を模索することにしよう。

1.流通性への批判

 流通性は不適当なほど古びて、老朽化していると批判される。現在、統 一商事法典の不注意に維持された、無用な一連のルールが、非難の対象と される。たとえば統一商事法典第三編に対して、古代の博物館、つまりそ の使用と役割がかなり以前に忘れ去られた、古代工芸品で満ちあふれた宝 庫という、巧みな表現の批判がなされた3 )。その上、電子証券の時代に突 入するにつれて、法律学者の主張は、インクで署名した紙の証券の物理的 所持にもとづく流通性が、一層無意味で古びていることに向けられた。流 通証券法は一方で、それ自体の古代文化と、他方で電子的通信技術も取り

(2)

込んでいる4 ) 。  そこで、流通性は譲渡抵当市場を混乱させたので、その不合理で機能不 全の制度を変える最も簡単な方法は、譲渡抵当証券の譲渡を認めないこと であると主張される5 )。しかし法的にいえば、流通性は二十世紀最後の十 年間に、活気ある時代を迎えた。流通性の最もとらえにくい点も、合衆国 では活発に議論される。たとえば、法律学者は白地式裏書について、流通 性の側面を検討している6 ) 。多くの金融会社の経済的健全性は、長い年月 を経た流通証券法による譲渡機能のルールが適切であるか否かに依存する であろう。  現代米国において、流通証券の適法で有効な譲渡は、米国政府や、譲渡 抵当支払の背後にいる住宅所有者の間で、話題にされなかった。訴訟手続 もしくは請求に依存する借主は、貸付金を化体する手形が適法に譲渡しう るか否か、その手形が適切に裏書されるか否か、そして貸主は正当な所持 人であるか否かに挑戦する7 )。裁判所もかつては、流通性の側面に焦点を 合わせていた。裁判所は次第に、多くの条項と条件を備えた、譲渡抵当手 形が流通証券であるか否かを判断するために、標準的住宅譲渡抵当手形を 詳細に評価した。そして、一部の流通証券法研究者がこの法分野の存続に 消極であるとはいえ、流通性は少なくともアメリカの住宅抵当貸付にとっ て、これまでの数十年間より活気があり、注目すべき状態にあるといわれ る。  流通性と流通証券法は数世紀の間、さまざまな形態で存続した。流通性 は、信用証券をより簡単に譲渡しうるようにすることを目的とした特定の ルールを前提とし、流通証券以外には適用されない、信用証券の特性であ る。厳密な定義を示すより、流通性の伝統的特性を述べる方が容易であろ う。ここで、現代法における流通性の特質を述べておくことは有益であろ う。流通性の特性はつぎの三つに要約できる。  (1)流通証券は、持参人に支払うべきであれば、交付によって、指図人

(3)

に支払うべきであれば、裏書と交付によって、譲渡される。交付を受けた 譲受人は、証券について彼の名前で訴えを提起しうる。(2)約因は推定さ れる。(3)その証券を善意かつ有償で取得する譲受人は、彼の譲渡人が瑕 疵のある権利を有するか、またはまったく権利を持たない場合でも、有効 な権利を取得する8 ) 。  流通性に関する伝統的見解は、流通証券法を英米商法の最も顕著な制度 と評価することから、流通性は商法の栄光の一つといわれる9 ) 。近時の法 律学者が問題にしたのは、流通性が未だに重要であるか否か、もしくは流 通性はかえって面倒で古くさく、時代遅れであるか否かである。流通性に 対する批判は、つぎの三つに分類可能である。  第一の批判は、流通性を規制する法を時代遅れと評価する。その著名な 言い回しにつぎのものがある。すなわち、流通証券に適用される統一商事 法典第三編は、古代遺物の博物館、すなわち、その使用と機能がとっくの 昔に忘却された、古代の多くの工芸品を詰め込んだ宝庫で、琥珀に閉じ込 められたハエのように、過去を保存する法の法典化である10 ) 。前述した「流 通証券の終わり」という著作は、明白な目的がないように見える第三編の ルールの根源を掘り起こしながら、読者を流通証券の終わりというその著 作に述べられた博物館の見学に駆り立てる11 )  第二の批判によれば、流通性はもはや重要でなく、有力な支払制度でも なく、まだ流通性を用いる支払制度は、それほど矛盾したものでないとい う。この学説は、現代米国の商業上の必要性と、流通証券法の適用を探究 し、その見解を主張する12 )  第三の批判は、古くからの定義、紙にもとづく制度である流通性は、電 子商取引が引き起こす世界において次第に有効に機能しなくなるという。 その上、紙の証券の作成と保有を要求すれば、流通性はおそらく商取引を より煩雑で、高価なものにし、それを減速させる原因になるであろう。流 通性の根底にある基本的概念は、債務が証券それ自体に表章されているこ

(4)

とである。  流通性の譲渡制度における基本的要素は、流通証券当事者の責任が、紙 片に表章される、つまりその書面が、当事者の責任に不可決な具体的表現 となる。それゆえ、書面に化体された権利を譲渡する適切な方法は、書面 それ自体の譲渡によって行われる13 ) 。金融業界は、紙にもとづく流通証券 自体を有効に保有して交付せず、もしくはその譲渡を記録する有形の裏書 を行わず、そのため投資家は、紙による流通性の要件が引き起こす損害を 負担させられる14 )。この学説を支持する主張は、根底にある債務を流動さ せることを意図するのが流通性であるから、抵当貸付けの証券化は、単な る流通性よりすぐれた流動性を付与されており、もはや流通性は必要でな いという15 ) 。  流通性に対する決定的批判は、長い間最も中心をなす明確な側面と考え られてきた正当な所持人ルールが16 ) 、単なる借主に適用された場合、予想 外の損害を引き起こすという。最初の取引で欺された借主は、その手形が 一度正当な所持人に譲渡されると、その請求権と抗弁のすべてを失うこと に気づくであろう。正当な所持人ルールが批判される理由は、消費者の売 買について、流通証券の署名によって最初に支払がなされ、そのため消費 者が破産し、もしくは譲渡されない時に、消費者はなおもその貸付金を支 払わねばならないことにある17) 。  流通証券の主要な形態は、分割払い商品の買主が、代金の未払分を表章 するために交付する約束手形である。このような手形は通常、商品の売主 から銀行、もしくは金融会社に一度だけ譲渡された。その約束手形は銀行 が所持したので、権利、所有権、もしくは手形を強行する権利の連鎖に疑 う余地はほとんどなかった。流通性の唯一の目的は、譲受人に対する抗弁 を切断することにあった。それゆえ、流通性は、貸主が疑わしい売主と協 力している場合には、明らかに不公平であった18)  正当な所持人理論は、消費者売買契約で批判されたものの、それは譲渡

(5)

抵当の事件においては無害と考えられた。なぜなら、消費者が流通性理論 によって切断される、住宅ローンに対する抗弁をほとんど持たなかったか らである。住宅ローンに関する流通性の議論は、つぎのようである。すな わち、抗弁の維持は、譲渡抵当事件の重要な要素ではない。その理由は、 抵当証券の支払に対する抗弁はほとんどないが、借主の債務不履行の危険 に重大な懸念があるからとされる19)  近時話題になった1997年発表の論文は、譲渡抵当業界で使用される手形 が、流通証券の大部分の付属物を有していても、譲渡抵当業界は手形が譲 渡しうるか否かに関心を持たなかったという。この主張を支える主要な根 拠は、つぎの三つである。  第一の根拠は、近代においては、証券化された貸付金と、証券化された 譲渡抵当のプールの投資家が有する利益について、譲渡抵当制度は、信用 証券を所有する人々が、有形の手形を所持する点で、伝統的な流通証券の 世界に類似していなかったという20 )。実際に、手形の最終所持人、すなわ ち手形が支える証券の投資家は、その手形の実際の所在について、知る見 込がなく、ましてそれら手形に責任を負う個人に関する情報を知りようが ない。  しかし、譲渡抵当を強行する権利が、譲渡によって信頼できる者に譲渡 され、その上信頼できる者に対する所有権が、証券化によって売却しうる ように、証券化が流通性に融合されたとしても、その複合した制度は、流 通性を破壊しないであろう。むしろ複合した制度は、信頼できる者が保持 する価値を流通性に依存する。貸付金を保有する信頼できる者が、それを 強行できなければ、彼は何も保持していないことになる。それゆえ、証券 化は、信頼できる者に対する抵当証券を強行する権利の譲渡制度であり、 それは流通性に依存する。  第二の根拠は、現代の証券化において、流通性に必要な最初の手形の物 理的移転は、行うのがあまりにも困難であったという21) 。米国の住宅譲渡

(6)

抵当市場は、あまり大規模かつ複雑に発展し、流通を予定した有形の証券 の移転と評価に、依存することができない22)。このような根拠は、近時も その特異性がくり返し主張される。  第三の根拠は、連邦抵当協会と連邦住宅金融抵当公社が考案した、合衆 国で使用される抵当証券の支配的形態は、譲渡抵当業界の使用する証券が 譲渡しうるか否かに注意しないですむことを示し、譲渡できないようにす る文言を包含するという。これらの形態の手形は、私は証券の満期前にい つでも、本人に支払をさせる権利を有する、と記載する。本人の支払は、 期限前弁済として知られる。私が期限前弁済を行う時は、手形所持人に書 面で、私は期限前弁済を行う旨を告げるであろう23)  統一商事法典3-104条(a)項(3)号に成文化された歴史的理由から、約 束手形が、つぎのような約束を含む場合は、流通証券となりえない。流通 性のルールは、金銭を支払う約束のみに適用され、別の金銭以外の約束に は適用されない。通知を確実にするのは、金銭の支払以外の行為であり、 約束手形の文言は、確実な条件にもかかわらず、その行為を履行する約束 を構成する。それゆえ、連邦抵当協会と連邦住宅金融抵当公社の形態は、 流通しうるとみなされないであろう24) 。  このように、1997年の論文は、全住宅ローン業界がその債務契約を譲渡 するために流通証券を使おうとしていると主張して、さまざまな非難に挑 戦した。しかし実際に、それは概して失敗した。1997年の論文の非難は長 い間、弁護士から無視されている。借主の弁護士は、手形の正当な所持人 の抗弁に対抗しようとして、法廷でこの論文を引用して、その根拠を主張 したと人々は考えるであろう。しかし、この論点について、1997年の論文 が初めて判決に引用されたのは、2012年である25)。この根拠が、1997年の 論文を引用せずに、初めて言及されたのは、2010年であった26) 。  連邦抵当協会と連邦住宅金融抵当公社の手形形態が、金銭を支払う以外 に、条件付債務を明確に述べていれば、1997年論文の根拠は、挑戦的であ

(7)

る。しかし困難は、借主が前払を請求する場合に、この債務が生じること である。統一商事法典は、このような条件付要件を定めていない。そのた め、裁判所がある程度、この空白を埋めなければならない。  裁判所はこれまで、1997年論文の主張する根拠を拒んできた。HSBC銀 行事件で、この争点に最初に正面から取り組んだ裁判所は、つぎのように 述べた。すなわち、約束手形の被告の、つまり主たる債務者の前払する権 利は、手形の流通性に不利に影響する、追加の約束、もしくは指図とはな らない。まったく逆に、前払の権利は、被告がその自由裁量で行使を選択 しうる、任意の選択権である。実際に、これを認めることは、その機会の 拒否を自由に選択しうる被告に、負担でなく、利益を与える27)。HSBC銀 行事件の判決理由は、前払する意思に関する注意の要件が、追加の債務に なるという、1997年論文の主張する根拠に言及するすべての裁判所に支持 された28) 。  ケイン事件において、裁判所はつぎのように強調した。すなわち、統一 商事法典3-106条の公式の注釈は、手形の振出時に支払金額が一定しない という理由で、満期前の支払には減額する旨の文言のある手形の流通性を 否定する判決を拒絶する、と述べていると。またその裁判所は、判例法の 指摘に言及して、債務者が自ら追加の有利な支払選択権を利用するか、も しくは計算に誤りが生じた場合に賠償金を受け取る資格は、証券の流通性 を破壊しないとした29)。裁判所はつぎのように理由づけた。このような満 期前支払の文言は、「一定金額」もしくは「無条件の約束」について、手 形の流通性に影響を及ぼさないので、裁判所は、同じ文言が追加の約束を 包含することを理由に、手形の流通性に影響するように説得される30 ) 。  また1997年論文の根拠は、ウェルズファーゴ銀行事件で、明白に拒絶さ れた。この事件で裁判所は、その論文の根拠を詳細に考察して、「他の約束」 は、統一商事法典、もしくはその起草者の注釈に定義されていないと述べ た31 ) 。裁判所は、前払いの注意要件が、追加の約束となり、その代わり、

(8)

それを借主が任意に前払いしうる指図とみなすという考えを退けた。占有 する財産の浪費、もしくは滅失を抑える、財産に対する保険の維持、そし て財産に関する損害を貸主に通知するような、他の抵当証券の要件が、手 形を譲渡しえないものにするという根拠も拒絶された32 )  このように、住宅ローン業界の標準的住宅抵当証券の流通性に関する多 数の抗弁にもとづいて、裁判所は従来1997年論文の主張を退けてきた。そ の論文は、住宅ローン業界が譲渡しえない手形を使用することが、同業界 が流通性に関心をもたない理由であると主張した。その代わり、住宅ロー ン手形の流通性について成功した抗弁は、住宅ローン業界が、その信用証 券の流通性に関心をもつだけでなく、その流通性を守るために尽力しうる ことを示している。

2.流通性の弊害

 借主にとって流通性の大きい弊害は、正当な所持人理論である。この理 論は、借主が欺されて、その貸付金が善意取得者に売却された場合、借主 は貸付金に対するほとんどの抗弁を喪失するものである。正当な所持人理 論は長い間、法学研究者の支持を得てきた。この理論の主要な目的は、潜 在的譲受人が、その証券の振出をめぐる事実を調査するのに過度の費用を 必要とする場面で、流通証券に流動性を与えることにある。  正当な所持人理論は、約束手形と為替手形が主に貨幣形態をとっていれ ば、第三者が手形の最初の振出人も、信用を提供する当事者も知りえない 場合に、第三者が手形を取得するのを助長するために必要であった。買主 は売主の商人に手形を交付する。商人はその手形を、供給者から供給物を 購入するために使用するであろう。つぎに供給者は、同じ手形をより遠方 の当事者から商品を買うために、使用するであろう。為替手形や約束手形 が本質的に通貨として機能した時、手形は最初の取引における詐欺の抗弁 から、遠く離れた当事者を保護するために意味を有した。他方で、はるか

(9)

に少ない商人が、彼らの知らないその手形を自発的に引き受け、商取引は 損なわれたであろう33 )  正当な所持人理論の重要性は、流通証券法の一部として、かなり誇張さ れてぎた。この理論は、流通証券法が発展していた間はそれほど重要でな かった。なぜなら、為替手形や約束手形の振出人は、切断されうるほど抗 弁を持たなかったからである34 )。商品代金の支払に為替手形、または約束 手形を交付した者が、担保責任などの違反を理由に抗弁しうるのは、相殺 や反訴に関する十九世紀末の手続法の発展までなかった。  このように、流通性がその解決策になるとみられる問題は、為替手形・ 約束手形に関する法が確立されてからかなり経過するまで、発生しなかっ た。しかし、しばしば指摘されるように、抵当証券の譲受人は今日、その 証券を作成した最初の取引について大量の情報を入手できる。抵当証券の 譲受人は、その証券を担保する不動産、借主の信用度、地元不動産市場の 状況、証券の価値に影響しうる大抵の要因について、十分な情報を有す る35 ) 。その上、売買市場は、貸付実行者が詐欺、もしくは他の形態の略奪 を目的とする貸付に備える36 )。こうした情報の豊かさと、それ自体の複雑 化ゆえに、投資家と売買市場は、譲渡抵当の開始における詐欺から身を守 るため、住宅の借主より上手に備えている。  最新版の第三編自体は、法律が所持人を正当な所持人とみなすことを禁 止する場合でさえ、手形が譲渡されることを認めているので、正当な所持 人理論は流通性に必要でないと説明する。連邦取引委員会(FTC)が、消 費者の取得を安全ならしめるために、手形に注意書きを要求した時、最初 は注意書きが手形を譲渡しえなくするか否か、多少問題があった。そのよ うな注意書きが法律によって要求される場合に、所持人、もしくはの譲受 人の権利は、借主が最初の受取人に主張しえたすべての主張、もしくは抗 弁に支配されるという文言を証券が包含していても、証券はなおも譲渡し うると定めるために、第三編は改正された37 ) 。

(10)

 正当な所持人理論は、流通性に必要でないとはいえ、その理論は抵当市 場における多くの問題の原因となった。破綻の原因となるサブプライムバ ブルの理由の一つは、多くの形態の詐欺に対する譲受人の責任が欠缺して いれば、売買市場が、低所得者向けの貸主による詐欺の危険から極端に保 護されたことである。正当な所持人理論を含む、これらの保護すべてに よって、売買市場は、主な抵当市場における濫用から必要以上に保護され た38 ) 。サブプライムの崩壊には、多くの原因があったが、一つは闇取引、 狡猾な実務、そしてサブプライム貸主による要注意の貸付、つまり正当な 所持人理論を原因とする欠缺を調査すべき、売買市場が欠如したことで あった。

3.流通性の利点

 洗練された研究者の多くが、流通性を法律史のゴミ箱入りとみているの に、譲渡抵当業界はなぜ今でも流通証券を使用するのか。そして、費用を 払ってでも、譲渡抵当業界は、なぜ多くの金銭と労力を費やし、最初の手 形証券を維持し、裏書し、譲渡し、そして保存するのか。その答えが、私 どもが古い形式に執着して、不本意な市場関係者がいかに手形を放棄する のかにあるとみるのは、正しいであろう39 )。流通証券法の歴史は、覆いを 取り外して証券の新しい形態とルールを生みだす、市場関係者が創りだし てきた。  最初は約束手形でなく、為替手形だけが譲渡しえた。金細工商が証券を 創りだし、それを大胆に譲渡しうると述べた。ホールト裁判官は、金細工 商の手形が為替手形の形態でなかったため、その流通性を巧妙に否定し た40 )。英国国会はこのような流通性の制限に、約束手形を譲渡可能にして、 同手形を為替手形と同じ立場に置く、法律を成立させる反応を示した41 ) 。 譲渡抵当の貸主は、約束手形が譲渡抵当に結びついていても、もしくは信 託証書が手荷物を持たぬ添乗員でなくても、それを譲渡しうると言明して、

(11)

譲渡抵当によって担保された約束手形を使用した。また一部判例法が約束 手形は譲渡しえず、譲渡抵当によって担保されえないと判決したにもかか わらず、譲渡抵当の貸主は、譲渡抵当によって担保された同手形を使用し た42 )  銀行、手形交換所、そして連邦準備制度理事会の代表がほとんど支配す る起草過程で、統一商事法典第三編は、変動金利の貸付を譲渡しうること を認めるように改正された43 ) 。貸主は何度も、流通性を新しい形態に適用 して、その使用を拡大させ、そのたびに貸主は優勢であった。裁判所がそ の努力を抑制しようとするたびに、銀行業者は議会、もしくは統一商事法 典起草委員会に、その新しい形態の証券が譲渡しうると言明するのを保証 するよう求めた。このような歴史を考えると、銀行業者と融資業界が流通 性を戦いもなしに捨て去ることは、考えられないといえよう。  正当な所持人理論は、抵当市場における流通性の不可解な存続の十分な 説明にならない。連邦住宅譲渡抵当公庫(Fannie Mae)と連邦住宅金融 抵当公社(Freddie Mac)は、融資業界の主要な監督者と統治者の間にあっ た。サブプライム市場の崩壊した現在もそれは同じである。連邦住宅譲渡 抵当公庫と連邦住宅金融抵当公社は概して、貸付を返済する可能性がある 借主に市場金利で行われる最良の融資を扱うので、双子の巨獣はともに、 借主がほとんど抗弁を持たないので、正当な所持人理論の著しい影響を受 けそうにない。  流通性が、連邦住宅譲渡抵当公庫と連邦住宅金融抵当公社に著しい支出 もしくは困難をもたらす場合は、これらの機関は、各手形上に譲渡しえな いという文言を印刷して、既存の法を何ら変更せずに、手形から流通性を 排除しうるであろう。譲渡抵当業界、投資家、もしくは連邦住宅譲渡抵当 公庫と連邦住宅金融抵当公社が、非流通性は住宅ローン証券に好ましいと 考えれば、それらは、法律を変更せず、統一商事法典自体の指図に従って、 すべての手形を直ちに譲渡しえないものとして作成することを要求しうる

(12)

であろう。すべての手形に、譲渡しえないというスタンプを押すか、印刷 をすれば十分であろう44 )  連邦住宅譲渡抵当公庫、連邦住宅金融抵当公社、そして譲渡抵当投資家 が一般に、譲渡しえない手形への転換を要求しなかった事実は、連邦住宅 譲渡抵当公庫と連邦住宅金融抵当公社、そして売買市場が、最初の手形と その裏書などを保護する必要性を含む、流通性のルールに従う方を選ぶこ とを示唆している。譲渡抵当の譲受人は、譲渡抵当の権利を安価かつ速や かに証明できることを望む。それゆえ、譲渡抵当の譲受人が、その申立を できるだけ少ない証明で認めるよう、裁判官を納得させるものを裁判所に 提出できる、証拠の確実な部分を持つことは重要である。権利に関するわ ずかな証拠は、妥当な裏書を備えた、債権者の所有する手形ほど説得力が ある。  たとえば、ドイツ銀行ナショナル・トラスト社事件において、借主が抵 当流れに挑戦した。裁判所は、流通性を理由に、たとえ手形の所有者が存 在しなくても、受戻権喪失は妥当であると判決した45 ) 。換言すれば、流通 証券法によって手形を強行する権利の請求権は、手形の所有者が存在しな い場合でさえ、存続するほど強力である。  債権者も証明について、最初の権利の証明に失敗しても、第二の証拠を 提出しうるように、二重安全の制度を望む。これについて、債権者は、契 約の条項を証明するためにこれまで用いられた、証拠の形態に頼るべきで あるという主張がある46 ) 。しかし、サブプライム崩壊以後の裁判は、債権 者に抵当流れにすることを望む場合は、そのための複数の道が必要なこと を示した。債権者は、手形を自ら強行する権利を与えられることを、容易 かつ効果的に証明し、抵当流れにすることを認められた、譲渡抵当を支配 することを望む。このような譲渡抵当業界の姿勢は、投資家と証券化業者 が代表であると主張する、業界団体の白書に見られる47 )  譲渡抵当業界は、債務契約の譲渡制度が重複して、二重安全の譲渡方法

(13)

になるよう、その譲渡制度を企てた。これによって、一つの方法が崩壊し ても、もしくは当事者が一つの譲渡制度を適切に利用できなくても、住宅 ローンの譲受人は、代わりの方法を用いて、そのローンの取立を強行でき る。  また流通性は、抵当流れを迅速、確実、そして費用をかけずに可能にす る推定を、手形譲受人と投資家に提供する。流通証券法によって、裏書を 含む、手形上のすべての署名は、有効と推定される48 ) 。証券化、証券の譲渡、 そして破産した多数の金融機関にとって、有効性の推定は、とくに価値が ある。その上、証拠に関する連邦ルールによって、商業証券は自ら真正さ を証明している49 )。真正さの推定は、証券所持人が自己の事件の重要な要 素を証明する必要がないとを意味し、大きな価値を有する。  流通性はさらに、借主にも多少利益を与えている。流通性は債権者に、 最初の手形を保有することを強制する。最初の手形は、借主の当初の署名 を包含し、それは借主が手形の文言によって拘束される、最善の証拠であ る。所持人の手中にある手形に強行する権利を与えて、流通性は、手形が 抵当流れ、もしくはローンを変更すべき時に達した場合、一方で借主に報 告することを認めて、すべての潜在的手形の権利者、もしくは債権者の間 で、強行する権利の分裂を防いでいる。

4.流通性の欠陥

 譲渡抵当に関する権利を証明する重複する方法についても、一部の債権 者は、彼らが抵当流れにする権利を有することを証明するのを、今でも困 難と考えており、それゆえ現在の制度は単純ではない。信託財産やローン の譲受人が直面した困難は、十分に分類、整理されてきた50 )。たとえば裁 判所は、喪失された手形の所有者を支持する略式判決の申立を退けている。 その手形は、裏書に不連続部分があり、その所有者は、最初の貸主からの 手形譲渡の連続を立証できなかった。

(14)

 裁判所はつぎのように述べた。すなわち、連邦銀行は、原告が裏書の欠 如にもとづいて抵当流れを回避することを、不公正であると強く主張した。 しかしその議論は、抵当流れの訴訟を続けるために、問題の手形と譲渡抵 当権を有する現在の証拠から、当事者が抵当流れを要求する確立した判例 に直面して決着した51 ) 。  抵当流れで債権回収会社と手形の所持人が直面した困難の多くは、流通 証券法の欠陥でなく、むしろ州譲渡抵当法が原因となった。たとえば、ロー ンの所有者が、債務不履行にもとづいて抵当流れにできなかった、最も著 名な事件は、アイバニーズ事件である。そこにおいて、マサチューセッツ 最高裁は、住宅譲渡抵当を取消し、その中で過去の多くの譲渡抵当の確信 をおびやかした52 ) 。しかし、アイバニーズ事件において、抵当流れにする 者は、白地裏書された最初の手形を所持していたので、第三編によってそ の手形を強行する権利を与えられた。  アイバニーズ事件の裁判所は、手形を強行する権利の他に、マサチュー セッツ法によって、抵当流れにする者は、手形とは別に譲渡抵当権が譲渡 されたことを証明しなければならないと判示した53 )。債権者は、売却の通 知とその後の譲渡抵当流れの時点で、譲渡抵当の譲受人であった場合だけ、 従属する譲渡抵当に包含された、売却権を行使する権限を有する54 )。大抵 の州において、譲渡抵当は手形に従った。それゆえ、空白のある最初の手 形の所持人は、譲渡抵当流れにするために譲渡抵当の分離した譲渡を必要 としなかった55 ) 。  譲渡抵当は手形に従うというルールにもかかわらず、裁判による譲渡抵 当流れの制度について、一部の州の裁判所は、譲渡抵当流れにする者が手 形にいかなる権利を保持しているか以外に、その者が譲渡抵当の譲受人に ならねばならないことを要求する。これについては、つぎのような見解が ある。すなわち、裁判によって譲渡抵当流れを認める大抵の州の好ましい 実務は、前の記録がある譲渡抵当権者からの有効な譲渡を記録するか、も

(15)

しくは譲渡抵当流れの申立を登録する前に、譲渡抵当にする者への譲受人 を記録することである。あるいは、少なくとも裁判上の売却の前に、権利 の連続の完全な記録を保証することであるという56 ) 。しかしこれは、第三 編と流通性に由来せず、譲渡抵当流れに適用される州法に由来する要求で ある。  裁判以外の譲渡抵当流れを認める多くの州において、譲渡抵当流れにす る者は、彼らが手形を所持すること、もしくは手形が彼らに裏書されたこ とを、証明することさえ必要としない。なぜなら、州の譲渡抵当流れ法は、 それぞれ完璧であり、譲渡抵当にする者が手形を所持する要件を包含しな いと、裁判所が判断したからである57 )。このような州の手形所持人は、手 形所持人による譲渡抵当流れを困難にしたと、流通証券法に苦情をいうこ とができない。

5.流通性問題への対応

 債務の所有権を譲渡する最善の方法は、紙にもとづく流通性制度と譲渡 抵当業界が確信している限り、商事法典第三編を書き直すか、もしくは削 除して流通性を消滅させることは、好ましくない。銀行業者はこれまで、 第三編の起草と改正を支配してきたので、銀行業者が彼らにとって大きい 意味がある法分野の徹底した支配を断念する可能性は低い。その結果、法 律学者は、第三編の改正の断念、もしくは大規模な改正を要求しうるのに 対して、その要求は、ほとんど聞こうとしない耳に向けられることになる。  表明される流通性の不利な面の多くは、銀行、債権回収会社、譲渡抵当 の投資家に向けられる。これらは、紙にもとづく譲渡抵当債務の制度に関 する費用、労力、そして損害の危険を負担しなければならない。これら市 場関係者が、そのような権利承認制度の結果に満足であれば、借主はどの ような不満を持つのか。もちろん、借主の主な不満は、有害な正当な所持 人理論にある。この理論は、主にその存在を知らず、また譲渡抵当の譲受

(16)

人が阻止するのに有利な立場にある、詐欺の矢面に立つ借主にとって不公 平である。しかし、銀行業者は強制されない限り、正当な所持人理論を放 棄する見込はないであろう58) 。  以前は銀行監督機関が、もっぱら銀行の財政健全化に重点を置き、統一 商事法典第三編の改正過程は、銀行が支配したので、抵当貸付を表章する 手形について正当な所持人理論を排除すると考えることは、困難であった。 しかし最近の改正は、その目標を一層まことしやかにしている。通貨監査 官と金融機関監督庁は、住宅借主の利益保護に過失があり、略奪目的の巨 額な貸付を許し、借主に対する貸付は、連邦が監督する金融機関による返 済ができないため、連邦議会は新しい金融監査機関を創設した。消費者金 融保護局(CFPB)は、主として個人の借主に融資業界を利用させないこ とを確実にするために、創設された。  正当な所持人理論は、住宅譲渡抵当業界でこのように問題があったとす れば、消費者金融保護局が、禁止することは害悪であろう。住宅所有者、 つまり借主の保護を目的とした機関である消費者金融保護局は、連邦取引 委員会が消費者金融ついて正当な所持人理論を排除したように、住宅貸付 でも同理論を排除するために活動すべきである。そうすれば、消費者金融 保護局は、手形が譲渡される場合でも、借主がすべての抗弁を保持する手 形を包含することを監督するすべての金融機関に要求して、同じ方法をと りうるであろう。  米国財務省も、迅速な対応が可能であろう。連邦住宅譲渡抵当公庫と連 邦住宅金融抵当公社は目下、米国財務省の下に置かれる。それゆえ、財務 省は住宅譲渡抵当公庫と住宅金融抵当公社が、正当な所持人についてさえ、 借主が請求と抗弁のすべてを保持する手形上に、印刷するように要求し、 その上、住宅譲渡抵当公庫と住宅金融抵当公社が、そのルールに適合する 手形のみを取得し、証券化し、もしくは保証するように要求する規制を出 しうる。このような規制を行うことは、もちろん、この規制がなされた後

(17)

に行われる貸付についてのみ、正当な所持人理論を排除するであろう。  それゆえ、サブプライムの大暴落以前の、悪い状態の過去の日々に貸付 を受けた借主には、保護を与えないであろう。しかし、裁判所は長い間、 正当な所持人理論の厳しい結果を回避する手段を用いていた59)。裁判所は、 かつて正当な所持人理論が、住宅譲渡抵当で広く退け、また将来の貸付で 排除した、それら回避手段を進んで活用するであろう60 )  双方の場合の正当な所持人理論の排除は、法律が要求するので、同理論 は影響を受ける譲渡抵当手形を譲渡しえないものとしないであろう。この ように借主は、流通性、つまり正当な所持人理論の最も不健全な効果を免 れるであろう。他方で、譲渡抵当業界と債権回収会社、そして投資家は、 この紙にもとづく制度のよりよい代用が考案されるまで、この制度の利益 をすべて保持しうるであろう。  正当な所持人理論を排除する以外に、住宅融資業界が借主の債務を譲渡 するのに、紙にもとづく制度を用いなくなるのは、避けられないであろう。 銀行業者は、紙にもとづく流通性が与えてきた利益のすべて、もしくは大 部分を提供しない限り、このような新しい制度に同意しないであろう。借 主は少なくとも、新しい制度によって、これまでと同じ程度の保護を受け るべきである。そこにはせめて、債権者が最初に署名された手形を保有す る要件と同様の効力を有する、偽造に対抗する制度と、一人のみに手形を 強行する権利を与える制度を包含すべきである。このような制度をいかに 立ち上げるかが、さらに検討すべき問題である。

むすび

 さまざまな批判を受けてきた流通性について、住宅譲渡抵当業界は数十 年間、意外な反発力を示した。正当な所持人理論を排除すれば、住宅貸付 債権の流通性は、最大の弱点を放棄する反面、その長所を維持できる。い ずれ金融業界は、紙にもとづく手形と裏書について効果的な電子代替を生

(18)

み出すことが予測される。しかし、金融業界が電子代替を実施する際は、 新しい制度に流通性の利点を維持すべきである。新しい制度に包含するの は、債権者の権利を効率的に証明する複数の方法、偽造による損害の保護、 そして、貸付の所有権が崩壊しても、借主の相手方と交渉しうるように定 めることである。このように、紙にもとづく流通性が消滅した場合でも、 流通性の本質を維持しうるであろう。 注

1) J. ROGERS, THE END OF NEGOTIABLE INSTRUMENTS: BRINGING PAYMENTS SYSTEMS LAW OUTOFTHE PAST 241 (2012).

2) See Gilmore, Formalism and the Law of Negotiable Instruments, 13 CREIGHTON L. REV. 441, 448 (1979).

3) Id. at 461.

4) See Cohen, The Calamitous Law of Notes, 68 OHIO ST. L.J. 161, 161(2007). 5) See Whitman, How Negotiability Has Fouled up the Secondary Mort-gage

Market, and What to do about It, 37 PEPP. L. REV. 737, 766(2010).

6) See Eggert, Lessons Learned from The Mortgage Foreclosure Crisis: Symposium Article: Not Dead Yet: The Surprising Survival of Negotia-bility, 6 ARK. L. REV. 145, 146 (2013).

7) See Matreal v. Bank of Am., N.A., 2012 WL 3257790, at 3 (E.D. Mich. 2012).

8) 8 W. HOLDSWORTH, A HISTORYOF ENGLISH LAW 113-14 (1926).

9) See Holdsworth, The Origins and Early History of Negotiable Instru-ments, 31 L.Q. REV. 173, 173 (1915).

10) Gilmore, supra note 2, at 461. 11) See J. ROGERS, supra note 1, at 241.

12) See Mann, Searching for Negotiability in Payment and Credit Systems, 44 UCLA L. REV. 951, 971-72 (1997).

13) Rogers, Negotiability As a System of Title Recognition, 48 OHIO ST. L. J.197, 200 (1987).

14) See Whitman, supra note 5, at 758. 15) See Mann, supra note 12, at 969.

16) ホールズワースは、正当な所持人が抗弁から保護されることが、流通性の 特色の中で最も重要で特徴的と述べた。See W. HOLDSWORTH, supra note 8,

(19)

at 165.

17) See Countryman, The Holder in Due Course and Other Anachronisms in Consumer Credit, 52 TEX. L. REV. 1, 1-2 (1973).

18) See Rosenthal, Negotiability - Who Needs It?, 71 COLUM. L. REV. 375, 378-79 (1971).

19) See Rubin, Learning from Lord Mansfield: Toward a Transferability Law for Modern Commercial Practice, 31 IDAHO L. REV. 775, 793 (1995). 20) See Mann, supra note 12, at 970-71.

21) See Id. at 989. 22) Id. at 969. 23) Id. at 971.

24) See Eggert, supra note 6, at 159.

25) In re Walker, 466 B.R. 271, 283 (Bankr. E.D. Pa. 2012). 本件を本稿では ウォーカー事件と称する。他の法律雑誌の論文に広く引用されていた、マン による1997年の論文は、ウォーカー事件が最初に引用した。1997年の論文は 近時、コネチカットの事件でも議論された。

26) See HSBC Bank USA, N.A. v. Gouda, 2010 WL 5128666, at 2-3 (N.J. Super. Ct. App. Div. 2010). 本件を本稿ではHSBC銀行事件と称する。

27)See HSBC Bank USA, 2010 WL 5128666, at 3.

28)See Picatinny Federal Credit Union v. Federal National Mortgage Ass’n, 2011 WL 1337507, at 7 (D.N.J. 2011).

29) In re Kain, 2012 WL 1098465, at 5 (Bankr. D.S.C. 2012). 本件を本稿では ケイン事件と称する。

30)裁判所はさらに、本件手形が支払うべき無条件の約束を示し、満期前支払 の文言は、追加の約束、指図、もしくは債務にはならないと判示した。 31)See Wells Fargo Bank, N.A. v. Clegg., 2013 WL 452790, at 5 (Conn. Super.

Ct. 2013). 本件を本稿ではウェルズファーゴ銀行事件と称する。 32)In re Knigge, 472 B.R. 808, 814-15 (Bankr. W.D. Mo. 2012). 33)See Whitman, supra note 5, at 742-43.

34)Rogers, The Myth of Negotiability, 31 B. C. L. REV. 265, 293-94 (1990). 35) Whitman, supra note 5, at 744-45.

36)See Eggert, Held up in due Course: Predatory Lending, Securitization, and the Holder in due Course Doctrine, 35 CREIGHTON L. REV. 503, 616 (2002).

37)U.C.C.§3-106(d)(2002). 3-106条の公式の注釈は、つぎのように述べてい る。第三編のほとんどの規定は、正当な所持人理論の影響を受けない。正当 な所持人の権利が関係しなければ、第三編を連邦取引委員会の表示のある約 束手形に適用すべきでない理由は、存在しない。他方で、約束手形が3-104

(20)

条(a)項の要件. を満たす場合、その手形の正当な所持人が存在しえないこ とを除き、それは流通証券になる。U.C.C.§3-106(d) cmt. 3. 拙稿・流通証 券と注意書きの記載、法学新報107巻(平成13)11・12号437頁以下参照。 38)See Eggert, The Great Collapse: How Securitization caused the

Sub-prime Meltdown, 41 CONN. L. REV. 1257, 1307 (2009). 39)See Eggert, supra note 6, at 173.

40)Clerke v. Martin, (1702) 92 Eng. Rep. 6 (K.B.). このような手形に関する 訴えの主張は、コモン・ローのルールの革新であった。その手形は、コモン・ ローには未知で、英国金融界で発明された、新しい種類の流通証券の立ち上 げであった。この企ては、英国国会に法律を制定させるため、為替手形に関 する問題のなかで行われた。

41)1704, 3 & 4 Ann., c. 9 (Eng.).

42)See Gilmore, The Commercial Doctrine of Good Faith Purchase, 63 YALE L. J. 1057, 1082(1954). 裁判所は、Strong v. Jackson, 123 Mass. 60, 63(1877) において、不動産の譲渡抵当付きという文言を有する約束手形は、商人が通 常商業証券と呼ぶものではなく、商業証券でなければ、衡平法が適用される と述べた。

43)See Lawrence, What Would be Wrong with a User-Friendly Code?: The Drafting of Revised Articles 3 and 4 of the Uniform Commercial Code, 26 LOY. L. A. L. REV. 659, 669-70(1993).

44)See U.C.C.§3-104(d)(2002). すなわち、小切手以外の約束、もしくは指 図は、それが発行され、もしくは最初に所持人の占有に帰する時に、約束あ るいは指図が譲渡しえないか、証券に第三編の適用がないという効果につい て、顕著な文言を包含する場合は、証券にならないと定める。

45)See Deutsche Bank Nat’l Trust Co. v. Brock, 2013 WL 1164508, at 2 (Md. Mar. 22, 2013). 本件を本稿では、ドイツ銀行ナショナル・トラスト社事件と 称する。

46)See Rogers, supra note 34; Whitman, supra note 5.

47)See Am. Securitization Forum, Transfer and Assignment of Residential Mortgage Loans in the Secondary Mortgage Market 3 (2010). 譲渡抵当業 界の白書は、つぎのように説明する。すなわち、一般的問題として、代表的 な共同出資、またはサービスを提供する合意にもとづく貸付の証券化は、譲 渡しうる譲渡抵当手形の譲渡(証券化の受託者への裏書と占有の移転による) と、譲渡抵当手形と譲渡抵当すべての完全な売却と譲渡を提供する。このよ うに、一定の共同出資による証券化が、譲渡しうるか、譲渡しえないとみな されるか否かは、手形の譲渡の有効性に関する統一商事法典による実質的効 果を有しないであろう。典型的な証券化過程は、統一商事法典第三編と第九 編の規定による、譲渡抵当手形と、関連する譲渡抵当の有効な譲渡をもたら

(21)

すという。

48)See U.C.C.§3-308 cmt. 1(2002). 原告は、ある証拠が署名の偽造、もしく は無権限という認定を支持するまで、署名の有効性の立証を要求されないと される。

49)See Fed. R. Evid. 902; United States v. Pang, 362 F.3d 1187, 1192 (9th Cir. 2004).

50)See Whitman, supra note 5, at 754-57.

51)See Gee v. U.S. Bank Nat’l Ass’n, 72 So. 3d 211, 212-14, 216 (Fla. Dist. Ct. App. 2011).

52)U.S. Bank Nat’l Ass’n v. Ibanez, 941 N.E. 2d 40, 55 (Mass. 2011). 本件を 本稿ではアイバニーズ事件と称する。

53)See Ibanez, at 50-51. 54)Id. at 51.

55)See Am. Securitization Forum, supra note 47, at 16-21.

56)See White, Losing the Paper - Mortgage Assignments, Note Transfers and Consumer Protection, 24 LOY. CONSUMER L. REV. 468, 489 (2012). 57)See Gomes v. Countrywide Home Loans, Inc., 121 Cal. Rptr. 3d 819, 825

(Ct. App. 2011).

58)See Eggert, supra note 6, at 181.

59)See J. ROGERS, supra note 1, at 88. 最も一般的な裁判所の反応は、私ども がさまざまな場面で一世紀を超えて見てきたもののようである。裁判所は、 正当な所持人理論が借主の抗弁を切断しても、それら理論の適用を拒む方法 を判決するといわれる。 60)Id. at 89. 金融証券化の実務が複雑である場合は、裁判官が、裁判を提起 した者を物理的な手形の所持人でないと判決することは、困難でないであろ う。これに対して、裁判官は、譲渡抵当を強行しようとする者が、正当な所 持人の資格を喪失させる、融資の開始に関係する者の不正な実務を十分に 知っていたと判決する技術に依存しうるとする。

参照

関連したドキュメント

90年代に入ってから,クラブをめぐって新たな動きがみられるようになっている。それは,従来の

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認め

この節では mKdV 方程式を興味の中心に据えて,mKdV 方程式によって統制されるような平面曲線の連 続朗変形,半離散 mKdV

・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

ハイデガーがそれによって自身の基礎存在論を補完しようとしていた、メタ存在論の意図

 ところが、転換証券を使った伝統的ではない資金調達手法には、転換によって発行され